説明

電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法

【課題】放射光発生装置において、電子周回部の周長又はその一部を測長し、その変化量から放射光パルス時間を制御する装置及び方法を提供。
【解決手段】入射した電子ビームを加速し偏向電磁石7により電子周回部を周回させるエネルギー回収型リニアック1と、前記電子周回部に設けた複数の電磁石からなる周長補正用シケイン10と、偏向電磁石7で発生した放射光を2台のスライド移動可能なステージに設置した回転ミラーに斜入射させることにより光軸を変えずに放射光の光路長を変化させる光学遅延機構11とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクロトロン放射光などの光源装置において、光パルスの時間(タイミング)を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シンクロトロン放射光は、加速器の一種であるシンクロトロンの軌道中にある偏向電磁石において高エネルギーの電子が曲げられるときに円軌道の接線方向に発生する電磁波である。
【0003】
まず、線形加速器(リニアック)により電子を光速に近い速度まで加速し、次に、加速した電子ビームを電子蓄積リングで周回させることで、偏向電磁石またはアンジュレータなどの挿入光源から高強度の白色パルス光を生成することができる。
【0004】
また、線形加速器で加速された電子ビームを、周回部で一回周回させ、再び線形加速器に減速位相で導入し、エネルギーを回収するエネルギー回収型リニアック(ERL)も利用されている。
【0005】
ただし、エネルギー回収型リニアックにおいては、開発過程で周長を補正する際のターゲット(基準)が曖昧であると、振動や温度による電子周回リングの周長変動が光パルスの時間的な精度を悪化させる懸念がある。
【0006】
尚、従来のシンクロトロン放射光発生装置においては、シンクロトロン放射光の光パルスを検出・監視しながら、シンクロトロンの電子周回部の電子の軌道を補正することで、安定した放射光パルスを発生させるものもある。
【0007】
特許文献1に記載されているように、簡単な方法で電子ビームを蓄積しながら電子ビームの軌道を正確な設計軌道に補正できる電子ビームの軌道補正装置及び補正方法の発明も公開されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の方法では、電子周回部の周長又はその一部が振動や温度ドリフトなどにより位置や長さが変動し、光パルスのタイミングにばらつきが出るおそれがあり、また、電子周回部が長い場合には測長が困難である。
【0009】
そこで、本発明は、放射光発生装置、特にエネルギー回収型リニアックにおいて、電子周回部の周長又はその一部を測長し、その変化量から放射光パルス時間を制御する装置及び方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、入射した電子ビームを加速し偏向電磁石により電子周回部を周回させるエネルギー回収型リニアックと、前記電子周回部に設けた複数の電磁石からなる周長補正用シケインと、前記偏向電磁石で発生した放射光を2台のスライド移動可能なステージに設置した回転ミラーに斜入射させることにより光軸を変えずに放射光の光路長を変化させる光学遅延機構と、レーザー光を測定光と参照光に分割し、前記リニアックを構成する機器に設置したミラーにより前記電子周回部に沿って進むように前記測定光を斜入射させ、終端光学素子で反射した前記測定光と前記参照光を干渉させることで、前記測定光の光路長を計測するレーザー干渉計と、前記測定光の光路長と前記機器の位置から電子周回部の周長を算出し、前記周長と予めデータベースに登録しておいた周長の基準値とを比較して電子軌道長の変化量を予測し、前記変化量を基に前記周長補正シケインの印加磁場の補正値を算出し、前記補正値を基に前記光学遅延機構のステージ移動量及びミラー回転角度を算出する手段とからなり、前記周長補正シケインで電子の周回軌道長を補正し、前記光学遅延機構で光パルスのタイミングを調整することを特徴とする放射光パルス時間制御装置、及び、当該装置により電子周回部の周長又はその一部を測長し、その変化量から放射光パルス時間を100フェムト秒のオーダーで制御することを特徴とする放射光パルス時間制御方法の構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、エネルギー回収型リニアックなどの放射光源において、光パルスの時間的な繰り返し精度を向上させることができる。これにより、放射光源装置の長時間運転において生じる電子軌道変動や光ビームの位置変動などのドリフトの原因の解明にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法で使用するエネルギー回収型リニアックの概要を示す図である。
【図2】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における制御の流れを示す図である。
【図3】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における制御を行う測長システムの構成を示す図である。
【図4】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における測長システムの測定装置の構成を示す図である。
【図5】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における測定装置のレーザー測長器の構成を示す図である。
【図6】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における測長システムの情報処理を示す図である。
【図7】本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における光学遅延機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置は、入射した電子ビームを加速し偏向電磁石により電子周回部を周回させるエネルギー回収型リニアックと、前記電子周回部に設けた複数の電磁石からなる周長補正用シケインと、前記偏向電磁石で発生した放射光を2台のスライド移動可能なステージに設置した回転ミラーに斜入射させることにより光軸を変えずに放射光の光路長を変化させる光学遅延機構と、レーザー光を測定光と参照光に分割し、前記リニアックを構成する機器に設置したミラーにより前記電子周回部に沿って進むように前記測定光を斜入射させ、終端光学素子で反射した前記測定光と前記参照光を干渉させることで、前記測定光の光路長を計測するレーザー干渉計と、前記測定光の光路長と前記機器の位置から電子周回部の周長を算出し、前記周長と予めデータベースに登録しておいた周長の基準値とを比較して電子軌道長の変化量を予測し、前記変化量を基に前記周長補正シケインの印加磁場の補正値を算出し、前記補正値を基に前記光学遅延機構のステージ移動量及びミラー回転角度を算出する手段とからなり、前記周長補正シケインで電子の周回軌道長を補正し、前記光学遅延機構で光パルスのタイミングを調整することを特徴とする。
【0014】
また、電子周回部測長による放射光パルス時間制御方法は、当該放射光パルス時間制御装置により、電子周回部の周長又はその一部を測長し、その変化量から放射光パルス時間を100フェムト秒のオーダーで制御することを特徴とする。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法で使用するエネルギー回収型リニアックの概要を示す図である。
【0016】
エネルギー回収型リニアック1は、線形加速器とリング型加速器の利点をあわせ持った加速器であり、周回部2、電子銃3、主加速器5、偏向電磁石7、ビームダンプ8等からなる。
【0017】
周回部2は、直線部と湾曲部を設けることにより環状に繋いだ真空ダクトであり、内部を電子バンチと呼ばれる電子集団が通過する。合流部2aから電子ビームを入射し、1回又は複数回周回させて取出部2cから取り出す。
【0018】
合流部2aでは、電子銃3で生成した電子ビームを入射用加速器4を介して加速することで周回部2の電子軌道に乗せる。また、取出部2cでは、周回する電子を減速してビームダンプ8に送る。
【0019】
電子銃3は、固体中の電子を高熱や高電界、あるいはレーザースパッタリングにより空間に放出させ高電圧で加速すると共にビーム状に収束させる。入射用加速器4は、周回部2に入射するための前段加速器であり、超伝導の線形加速器等を使用する。
【0020】
周回部2において合流部2aのすぐ後の直線部には、主加速器5を1台又は複数台配置して電子を加速し、その先の湾曲部には偏向電磁石7を配置して電子の軌道を曲げ放射光7aを発生させる。
【0021】
主加速器5は、超伝導の線形加速器等であり、入射した電子ビームのエネルギーが200MeV程度もしくは5GeV程度になるまで加速する。また、周回した電子を減速してエネルギーを回収することで、次の電子ビームの加速に利用することができる。
【0022】
主加速器5の加速空洞5aは、ニオブ等により形成される。高周波電力を投入し高周波電場を発生することで、電子ビームを加速するが、超伝導技術を用いることで高電界かつ高効率の加速が可能となる。
【0023】
偏向電磁石7は、磁場の力を利用して電子が進む向きを変える。偏向電磁石7を数回介すことにより電子の進行方向を徐々に反対側に向ける。尚、偏向により発生した放射光7aを取り出しビームライン9にて放射光をユーザ9bに提供する。
【0024】
また、その後の長直線部2bには、周長補正用シケイン10やアンジュレータ光源を設置することができる。周長補正用シケイン10は、複数の電磁石を配置して磁場の力で電子の軌道を調整するものである。
【0025】
周回部2には、電子集団が真空ダクトの軸上近傍を通るように、何箇所かに収束用電磁石6が設けられる。収束用電磁石6は、4極電磁石や6極電磁石を組み合わせる等して中心への収束作用を持たせたものである。
【0026】
加速及び収束させた電子集団にはエネルギー分布があり、エネルギーが大きい電子は磁場の力が効きにくく、湾曲部などにおいては中央よりも外側を通りやすく、エネルギーが小さい電子は磁場の力により中央よりも内側を通りやすい。
【0027】
周長補正用シケイン10では、逆に、エネルギーが大きい電子は磁場の力が効きにくいため直進するように近道をし、エネルギーが小さい電子は磁場の力により軌道が湾曲し遠回りをするので、エネルギーの大小による電子軌道長の誤差を相殺することができる。
【0028】
また、アンジュレータ光源は、複数の永久磁石をN極とS極が交互になるように配置することで、電子ビームが細かく蛇行し放射光を発生する。放出される光同士が干渉するためエネルギーの揃った光を得ることができる。
【0029】
ビームライン9では、放射光7aを分光器9aで必要な波長を選別してユーザ9bに提供するが、光パルスのタイミングを安定させるために、分光器9aに通す前に光学遅延機構11で光パルスのタイミングを調整する。
【0030】
本発明は、光パルスのタイミングをリアルタイムに制御するにあたり、電子周回部を測長するために測長システム12を設け、周長補正用シケイン10及び光学遅延機構11をフィードバック制御する。
【0031】
図2は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における制御の流れを示す図である。
【0032】
測長システム12による制御方法13は、電子周回部測長13a、機器位置測定13b、電子軌道長変化量予測13c、周長制御13d、及び光路長制御13eの手順により行われる。
【0033】
電子周回部測長13aは、電子ビームが周回する周回部2の長さを計測するが、まず周回部2に沿ってレーザー光を照射しレーザー光の光路長を計測し、基準となる位置との関係から周回部2の長さを換算する。
【0034】
機器位置測定13bは、周回部2の長さを計測するにあたり、計測の基準となる周回部2に設置された主加速器5、収束用電磁石6、偏向電磁石7、合流部2a、アンジュレータ光源などの機器の位置、長さ、間隔等を測定する。
【0035】
機器位置の測定器としては、ホモダイン方式又はヘテロダイン方式のレーザー干渉計、レーザートラッカー、非接触3次元計測装置、光コム干渉を使用して絶対距離を計測する光コム距離計などが挙げられる。
【0036】
電子軌道長変化量予測13cは、温度ドリフト及び振動による機器自体の位置や長さのずれ、電子のエネルギーの大きさにより磁場から受ける影響の違いなど様々な要素を考慮して電子の軌道長の変化量を予測する。
【0037】
周長制御13dは、電子の軌道長の変化量を補正すべく周長補正用シケイン10を利用する。また、光路長制御13eは、電子軌道の補正に伴い生じた時間的なずれを光学遅延機構で放射光7aの光路長を調整することで放射光パルス時間制御する。
【0038】
尚、本発明は、予め当該制御方法13を行ってから電子ビームを入射して放射光7aを取得しても良いし、連続的に電子ビームを入射しながら当該制御方法13も随時行ってリアルタイムに調整しながら放射光7aを取得することもできる。
【0039】
図3は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における制御を行う測長システムの構成を示す図である。
【0040】
測長システム12を構成するコンピュータ14は、測定装置15から入力したデータを基に、周長補正用シケイン10及び光学遅延機構11を制御するための出力データを算出する。
【0041】
尚、測定装置15には、周回部2を計測するレーザー干渉計16や、周回部2上の機器位置を測定する装置などがあり、周回部2の測長値や機器の位置情報などが入力データとなる。
【0042】
図4は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における測長システムの測定装置の構成を示す図である。
【0043】
周回部2を計測する測定装置15として、周回部2上の機器に対し、レーザー干渉計16と終端光学素子15bを両端とし、間に複数のミラー15aを周回部2を構成する各機器に配して、周回部2を1周するように設置する。
【0044】
レーザー干渉計16から照射した測定光15cをミラー15aで次々と斜入射により周回部2に沿って反射させ、終端光学素子15bで反対側に反射させてレーザー干渉計16まで戻し、光の干渉を利用して測定光15cの光路長を測定する。
【0045】
尚、終端光学素子15bとしては、ミラーの他に、コーナーキューブプリズムなどを利用することができる。コーナーキューブプリズムは、反射する性質を持った平面を直角に組み合わせることで、光を元の方向に反射する素子である。
【0046】
図5は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における測定装置のレーザー測長器の構成を示す図である。
【0047】
レーザー干渉計16は、光源16aから発したレーザー光16bをビームスプリッタ16cで測定光15cと参照光16eに分割し、測定光15cを終端光学素子15bで反射させ、参照光16eを光学素子16dで反射させる。
【0048】
尚、レーザー光16bの例としては、波長633nmのHeNeレーザー等があり、光コム干渉の場合にはフェムト秒レーザーを使用する。
【0049】
そして、終端光学素子15bで反射した測定光15cと光学素子16dで反射した参照光16eとを光検出器16fで干渉させ、干渉縞の数と位相を読むことで、測定光15cの光路長を測る。
【0050】
参照光16eと測定光15cを干渉させると、波長の整数倍で強め合い、その間で弱め合う干渉縞が現れることから、その干渉縞の数と位相を読むことで、測定光15cの相対的な光路長を求めることができる。
【0051】
図6は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における測長システムの情報処理を示す図である。
【0052】
コンピュータ14は、中央処理装置17、記憶装置18、入力装置、出力装置等からなり、測長システム12が導入される。尚、入力装置と出力装置については、外部機器とのデータのやり取りとなる。
【0053】
入力装置としては、測定装置15が該当する。電子周回部測長13aにより測長値18aが入力され、機器位置測定13bにより機器位置18bが入力されて、記憶装置18に保存される。
【0054】
記憶装置18には、データベース等を作成して、予め必要な基準値18cと演算に必要な式や値などを蓄積しておき、また、電子軌道長変化量予測13cの処理において必要に応じて一時的にデータを保存する。
【0055】
基準値18cは、予め設定しておく初期値やリアルタイム制御時の前回値であり、機器の規定位置、電子軌道長の規定値、周長補正用シケイン10の電磁石の初期値又は前回値、光学遅延機構11の初期位置及び初期角度又は前回制御後の位置及び角度などがある。
【0056】
中央処理装置17では、電子軌道長変化量予測13cの処理が行われるが、周長算出17a、変化量予測17b、補正値算出17c、制御値算出17dの各ステップが順次実行される。
【0057】
周長算出17aは、記憶装置18に保存された測長値18aと機器位置18bを入力し、機器の規定位置と機器位置18bの誤差を求め、測長値18aに反映することにより、周回部2の実際の周長に換算し、一時記憶する。
【0058】
変化量予測17bは、算出した周回部2の周長から実際にどのような電子軌道長になるかを推測し、電子軌道長の規定値と比較して、変化量がどの程度になるかを予測し、一時記憶する。
【0059】
補正値算出17cは、算出した電子軌道長の変化量を修正するのに必要な電圧を求め、周長補正用シケイン10の電磁石の初期値又は前回値からどの程度磁場を調整すれば良いか補正値を算出し、一時記憶する。
【0060】
制御値算出17dは、算出した補正値を基に、光学遅延機構11の初期位置及び初期角度又は前回制御後の位置及び角度からどの程度調整すれば良いか各制御値を算出し、一時記憶する。
【0061】
出力装置としては、周長補正用シケイン10と光学遅延機構11が該当し、補正値算出17cのステップで算出された補正値18dが周長補正用シケイン10に送られ、制御値算出17dのステップで算出された移動量18e及び回転角度18fが光学遅延機構11に送られる。
【0062】
尚、リアルタイムで制御する場合には、処理を実行した時間を記憶しておくと共に、各実行時間ごとに各ステップにおいて一時記憶したデータを履歴としてデータベース等に蓄積し、次回の実行時に利用する。
【0063】
図7は、本発明である電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置及び方法における光学遅延機構を示す図である。
【0064】
光学遅延機構11は、放射光7aをスライド移動可能なステージ19aに設置した回転ミラー19cと、スライド移動可能なステージ20aに設置した回転ミラー20cに斜入射させることにより、光軸を変えずに放射光7aの光路長を変化させる仕組みである。
【0065】
まず、2つの土台となるベース19とベース20を設ける。ベース19とベース20とは互いに平行だが位置を前方又は後方にずらして、ベース19の斜め方向にベース20が来るようにする。
【0066】
ベース19上には位置を把握できるように目盛りを付けたスケール19dを貼付する。同様に、ベース20上にも位置を把握できるように目盛りを付けたスケール20dを貼付する。
【0067】
ベース19上にスケール19dに沿うようにレール等を敷いて、その上にステージ19aを載置し、モータ19bを動力としてステージ19aがレール上をスライド移動できるようにする。
【0068】
同様に、ベース20上にスケール20dに沿うようにレール等を敷いて、その上にステージ20aを載置し、モータ20bを動力としてステージ20aがレール上をスライド移動できるようにする。
【0069】
ステージ19aにはスケールヘッド19eを取り付け、スケールヘッド19eでスケール19dを読み取れるようにし、ステージ19aの移動に伴い、ステージ19aの位置を取得する。
【0070】
同様に、ステージ20aにはスケールヘッド20eを取り付け、スケールヘッド20eでスケール20dを読み取れるようにし、ステージ20aの移動に伴い、ステージ20aの位置を取得する。
【0071】
ステージ19a上に回転ミラー19cをロータリーエンコーダスキャナ19f付きで載置し、ロータリーエンコーダスキャナ19fで回転ミラー19cを回転させると共に、回転ミラー19cの角度を取得する。
【0072】
同様に、ステージ20a上に回転ミラー20cをロータリーエンコーダスキャナ20f付きで載置し、ロータリーエンコーダスキャナ20fで回転ミラー20cを回転させると共に、回転ミラー20cの角度を取得する。
【0073】
回転ミラー19cと回転ミラー20cは、常に、放射光7aが、回転ミラー19cに向かって進み、回転ミラー19cで反射して回転ミラー20cに向かって進み、回転ミラー20cで反射して分光器9aに向かって進むような角度になる。
【0074】
即ち、コンピュータ14から、ステージ19aの移動量18e及び回転ミラー19cの回転角度18fと、ステージ20aの移動量18e及び回転ミラー20cの回転角度18fが送られても、光軸が変わらないように制御され、光路長のみが変化する。
【符号の説明】
【0075】
1 エネルギー回収型リニアック
2 周回部
2a 合流部
2b 長直線部
2c 取出部
3 電子銃
4 入射用加速器
5 主加速器
5a 加速空洞
6 収束用電磁石
7 偏向電磁石
7a 放射光
8 ビームダンプ
9 ビームライン
9a 分光器
9b ユーザ
10 周長補正用シケイン
11 光学遅延機構
12 測長システム
13 制御方法
13a 電子周回部測長
13b 機器位置測定
13c 電子軌道長変化量予測
13d 周長制御
13e 光路長制御
14 コンピュータ
15 測定装置
15a ミラー
15b 終端光学素子
15c 測定光
16 レーザー干渉計
16a 光源
16b レーザー光
16c ビームスプリッタ
16d 光学素子
16e 参照光
16f 光検出器
17 中央処理装置
17a 周長算出
17b 変化量予測
17c 補正値算出
17d 制御値算出
18 記憶装置
18a 測長値
18b 機器位置
18c 基準値
18d 補正値
18e 移動量
18f 回転角度
19 ベース
19a ステージ
19b モータ
19c 回転ミラー
19d スケール
19e スケールヘッド
19f ロータリーエンコーダスキャナ
20 ベース
20a ステージ
20b モータ
20c 回転ミラー
20d スケール
20e スケールヘッド
20f ロータリーエンコーダスキャナ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特許第4085176号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した電子ビームを加速し偏向電磁石により電子周回部を周回させるエネルギー回収型リニアックと、
前記電子周回部に設けた複数の電磁石からなる周長補正用シケインと、
前記偏向電磁石で発生した放射光を2台のスライド移動可能なステージに設置した回転ミラーに斜入射させることにより光軸を変えずに放射光の光路長を変化させる光学遅延機構と、
レーザー光を測定光と参照光に分割し、前記リニアックを構成する機器に設置したミラーにより前記電子周回部に沿って進むように前記測定光を斜入射させ、終端光学素子で反射した前記測定光と前記参照光を干渉させることで、前記測定光の光路長を計測するレーザー干渉計と、
前記測定光の光路長と前記機器の位置から電子周回部の周長を算出し、前記周長と予めデータベースに登録しておいた周長の基準値とを比較して電子軌道長の変化量を予測し、前記変化量を基に前記周長補正シケインの印加磁場の補正値を算出し、前記補正値を基に前記光学遅延機構のステージ移動量及びミラー回転角度を算出する手段とからなり、
前記周長補正シケインで電子の周回軌道長を補正し、前記光学遅延機構で光パルスのタイミングを調整することを特徴とする電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置。
【請求項2】
レーザー干渉計として光コム干渉計を使用し、レーザー光としてフェムト秒レーザーを用いることを特徴とする請求項1に記載の電子周回部測長による放射光パルス時間制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放射光パルス時間制御装置により、電子周回部の周長又はその一部を測長し、その変化量から放射光パルス時間を100フェムト秒のオーダーで制御することを特徴とする電子周回部測長による放射光パルス時間制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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