説明

電子回路形成方法、電子回路及び電子回路形成用銅張積層板

【課題】銅層のエッチングによるダレを防止し、均一な回路幅を形成して、配線の直線性を良好にする。
【解決手段】銅層のエッチング面側に、銅よりエッチングレートの遅い層を形成すると共に、前記銅層の非エッチング側の面を樹脂基板に張付け、エッチング面に回路形成用レジストパターンを形成する。銅よりエッチングレートの遅い層を先にエッチングした後、次に銅層をエッチングして、樹脂基板上に電子回路を形成することで回路形成時のサイドエッチングを抑制し、高いエッチファクタを可能であるだけでなく、エッチングに先立ち、エッチングされるべき銅箔の直上にある表面処理層を予め除去するプリエッチング工程を導入することで、目的とする回路幅の、より均一な回路を形成でき、パターンエッチングでのエッチング性の向上、ショートや回路幅の不良の発生を防止できる銅箔及び電子回路形成用銅張積層板並びにこれを用いた電子回路基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板に張付けた銅箔をエッチングし回路形成を行う電子回路形成方法、電子回路及び電子回路形成用銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気機器に印刷回路用銅箔が広く使用されているが、この印刷回路用銅箔は、一般に合成樹脂ボードやフイルム等の基材に接着剤を介して、あるいは接着剤を用いずに高温高圧下で接着して銅張積層板を製造し、その後目的とする回路を形成するためにレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を経て、またさらに各種の素子が半田付けされて、エレクトロデバイス用の印刷回路が形成されている。
【0003】
このような印刷回路に使用する銅箔は、その製造方法の種類の違いにより電解銅箔及び圧延銅箔に大別されるが、いずれも印刷回路板の種類や品質要求に応じて使用されている。これらの銅箔は、樹脂基材と接着される面と非接着面があり、それぞれ特殊な表面処理(トリート処理)が施されている。また、多層プリント配線板の内層に使用する銅箔のように両面に樹脂との接着機能をもつようにされる(ダブルトリート処理)場合もある。
【0004】
電解銅箔は一般に回転ドラムに銅を電着させ、それを連続的に剥がして銅箔を製造しているが、この製造時点で回転ドラムに接触する面は光沢面で、その反対側の面は多数の凹凸を有している(粗面)。しかし、このような粗面でも樹脂基板との接着性を一層向上させるために、0.2〜3μm程度の銅粒子を付着させるのが一般的である。
さらに、このような凹凸を増強した上に銅粒子の脱落を防止するために薄いめっき層を形成する場合もある。これらの一連の工程を粗化処理と呼んでいる。このような粗化処理は、電解銅箔に限らず圧延銅箔でも要求されることであり、同様な粗化処理が圧延銅箔においても実施されている。
【0005】
以上のような銅箔を使用してホットプレス法や連続法により、樹脂基板に銅を張付けて銅張積層板が製造される。この積層板は、例えばホットプレス法を例にとると、エポキシ樹脂の合成、紙基材へのフェノール樹脂の含浸、乾燥を行ってプリプレグを製造し、さらにこのプリプレグと銅箔を組合せプレス機により熱圧成形を行う等の工程を経て製造されている。これ以外にも、銅箔にポリイミド前駆体溶液を乾燥及び固化させて、前記銅箔上にポリイミド樹脂層を形成する方法もある。
【0006】
一方、銅張積層板の製造方法として、前記の銅箔にポリイミド前駆体溶液を乾燥及び固化させて、前記銅箔上にポリイミド樹脂層を形成するキャスト法の他に、熱融着型ポリイミドフィルムに銅箔を連続ラミネートするラミネート法があり、その他に、特にファインピッチに対応した無接着剤フレキシブル銅張積層板の製造方法としては、ポリイミドフィルム上にスパッタリング、CVD、蒸着などの乾式めっき法により金属層を予め形成し、次いで湿式めっき法により導体層となる金属層を製膜する、いわゆるメタライジング法(スパッタ/めっき法)などがある。
【0007】
このようにして製造された銅張積層板は、目的とする回路を形成するためにレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに銅層の不要部分を除去するエッチング処理を経るが、エッチングして回路を形成する際に、その回路が予め表面に形成されたマスクパターン通りの幅にならないという問題がある。
それは、エッチングすることにより形成される銅回路が、銅層の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)ことによる。大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある。
【0008】
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えた。
しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。
電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
【0009】
本発明者らは、これらを改善するために、エッチング面側の銅箔に各種金属又は合金層を形成した銅箔並びに銅張積層板を検討した。この各種金属又は合金としては、ニッケル、クロム、コバルト及びニッケル合金、クロム合金、コバルト合金の他、貴金属類として、金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属又はこれらを主成分とする合金の表面処理層を、銅回路厚みよりも十分に薄い厚みで形成することにより、形成された回路が痩せ過ぎることなくダレの小さいエッチングが可能である。
【0010】
すなわち、回路設計に際しては、マスクパターンとなるレジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下に前記表面処理層を所定の厚さで形成することにより、初期エッチング過程において、表面処理層近傍へのサイドエッチングが抑制され、垂直方向へのエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらした。この結果は、従来技術から見ると、大きな進歩があった。
【0011】
しかし、表面処理層は銅箔をエッチングするためのエッチング液に対し、エッチング速度が遅い金属又は合金であり、回路形成の際、最初にエッチングされる表面処理層が不均一に溶解した場合、その下の銅箔のエッチングも不均一になり、結果として形成される回路の「ダレ」を小さくしても、回路の直線性が悪く、電子回路の自動外観検査の工程で不良と判断されることもあり、或いは、ICのような実装部品そのものとの接続信頼性を悪化させるような問題を引き起こすこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、銅張積層板の銅層をエッチングにより回路形成を行うに際し、エッチングによるダレを防止し、目的とする回路幅の均一な回路を形成でき、さらにパターンエッチングでのエッチング性の向上、ショートや回路幅の不良の発生を防止でき、同時に配線の直線性を良好にする電子回路形成方法、電子回路及び電子回路形成用銅張積層板を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記の表面処理層を有する銅箔を用いた電子回路形成用銅張積層板に回路を形成する際、エッチングされるべき銅箔の上に形成した表面処理層を、予めプリエッチングにより除去し、その後銅箔をエッチングにより回路を形成することにより、回路の直線性を優先させ、その後に銅箔のサイドエッチングを抑制して、垂直方向にエッチングすることにより、ダレが少なく、かつ直線性の良い均一な回路を形成することで問題を解決できるとの知見を得た。
【0014】
本発明はこの知見に基づいて、
1)圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅層のエッチング面側に、銅よりエッチングレートの遅い層を形成すると共に、前記銅層の非エッチング側の面を樹脂基板に張付けて銅張積層板とし、前記銅よりエッチングレートの遅い層を形成した面に回路形成用レジストパターンを形成した後、エッチングにより電子回路を形成する方法であって、銅よりエッチングレートの遅い層を先にエッチングした後、次に銅層をエッチングして、樹脂基板上に電子回路を形成することを特徴とする電子回路形成方法
2)前記エッチングレートの遅い層が、ニッケル、クロム、コバルトのいずれか1種以上からなる金属の層若しくはこれらを主成分にする合金の層又は金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属の層若しくはこれらを主成分にする合金の層であることを特徴とする上記1)に記載の電子回路形成方法
3)前記エッチングレートの遅い層の厚さが、1〜50nmの層であることを特徴とする上記1)又は2)に記載の電子回路形成方法、を提供する。
【0015】
また、本発明は、
4)樹脂基板上に形成された40μmピッチ以下の電子回路であって、該電子回路のエッチファクタが2以上であり、かつ100μm×100μmの範囲で、任意の10点の回路ピッチ(P)とトップ幅(W)を測定した場合、銅厚(T)を用いて表現される(P−W)/Tの標準偏差が0.1以下であることを特徴とする電子回路
5)上記1)〜3)のいずれか一項に記載の電子回路形成方法により樹脂基板上に形成された40μmピッチ以下の電子回路であって、該電子回路のエッチファクタが2以上であり、かつ100μm×100μmの範囲で、任意の10点の回路ピッチ(P)とトップ幅(W)を測定した場合、銅厚(T)を用いて表現される(P−W)/Tの標準偏差が0.1以下であることを特徴とする電子回路、を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、
6)圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅層のエッチング面側に、銅よりエッチングレートの遅い層を形成すると共に、前記銅層の非エッチング側の面を樹脂基板に張付けたことを特徴とする電子回路形成用銅張積層板
7)前記エッチングレートの遅い層が、ニッケル、クロム、コバルト若しくはニッケル合金、クロム合金、コバルト合金又は金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分にする合金の層であることを特徴とする上記6)に記載の電子回路形成用銅張積層板
8)前記エッチングレートの遅い層の厚さが、1〜50nmの層であることを特徴とする上記6)又は7)に記載の電子回路形成用銅張積層板、を提供する。
【発明の効果】
【0017】
以上により、本願発明は、銅張積層板の銅層をエッチングにより回路形成を行うに際し、エッチングによるダレを防止し、目的とする回路幅の均一な回路を形成でき、さらにパターンエッチングでのエッチング性の向上、ショートや回路幅の不良の発生を防止でき、同時に配線の直線性を良好にする電子回路形成方法、電子回路及び電子回路形成用銅張積層板を得ることが可能であるという優れた効果を有する。
【0018】
これにより、銅張積層板の銅箔をエッチングにより回路形成を行うに際し、エッチングによる「ダレ」の発生を防止し、エッチングによる回路形成の時間を短縮することが可能である。またエッチングに先立ち、エッチングされるべき銅箔の直上にある表面処理層を予め除去(プリエッチングと呼ぶ)する回路形成方法により、回路の直線性を良好にすることができるという著しい効果を有する。
【0019】
目的とする回路幅の、より均一な回路を形成でき、パターンエッチングでのエッチング性の向上、ショートや回路幅の不良の発生を防止できる銅箔及び電子回路形成用銅張積層板並びにこれを用いた電子回路基板を提供することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】樹脂基板、銅箔及びス表面処理層を備えた銅張積層板の断面を示す説明図である。
【図2】エッチファクタと直線性の計算方法を示す説明図である。
【図3】銅張積層板にフォトレジストの塗布、露光・現像、表面処理層プリエッチング、銅箔のエッチング及びフォトレジスト層の剥離という工程の説明図である。
【図4】比較例1のトップ幅が狭くなっている様子を示す図である。
【図5】比較例10の直線性に乱れが生じている回路の様子を示す図である。
【図6】実施例1の回路の優れた直線性を有する回路の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本願発明の具体例について説明する。なお、以下の説明は本願発明を理解し易くするためのものであり、この説明に発明の本質を制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
【0022】
本発明の銅箔は圧延銅箔、電解銅箔のいずれにも適用可能であり、該銅箔のエッチング面側に、ニッケル、クロム、コバルトのいずれか1種以上からなる金属の層若しくはこれらを主成分にする合金の層又は金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属の層若しくはこれらを主成分にする合金の層を形成する工程については、銅箔の段階で処理することも、或いは銅張積層板になった段階で処理することも可能である。また、銅張積層板の作成方法もプレス法、キャスト法、ラミネート法、メタライジング法のいずれでも可能である。
【0023】
前記表面処理層の形成方法としては、湿式めっき法、スパッタリングや蒸着のような乾式めっき法のいずれでも可能である。
ニッケル合金、クロム合金、コバルト合金、金合金、白金合金、パラジウム合金については、それぞれニッケル、クロム、コバルト、金、白金、パラジウムを主成分又は成分の合計が50質量%以上含有する合金であって、副成分は特に制限されない。既存の合金であれば全て適用できるものである。スパッタリングにより薄膜の表面処理層を形成した場合、ターゲットの成分組成が直接反映され、同成分が成膜できる。
【0024】
前記表面処理層は、銅箔をエッチングして回路形成する際のサイドエッチングを抑制してエッチングによる「ダレ」の発生を防止し、高いエッチファクタ(後述する)を可能とする機能を有するものである。
この表面処理層の厚さは、高いエッチファクタを発現させるには、1nm未満では効果が低く、また50nmを超えると効果が飽和するので、厚さ1〜50nmが適当である。
電子回路形成方法により樹脂基板上に形成された40μmピッチ以下の電子回路において、該電子回路のエッチファクタが2以上であることは、本願発明の指標となるものであり、また本願発明は、これを容易に実現することができる。
【0025】
前記表面処理層を有する銅張積層板は、まずはフォトレジストを施した後、回路パターンを露光、現像して、エッチング工程に投入される。一般的な塩化第二鉄、塩化第二銅のようなエッチング液に対し、本願発明の表面処理層は1〜50nmと薄く、表面処理層の金属、或いは合金自体が溶解、または表面処理層内にエッチング液が浸透することで、銅箔と表面処理層の界面での剥離を促進し、エッチング中に膜としてレジスト開口部から除去される。
【0026】
しかし、銅箔と表面処理層の界面での剥離後、レジスト開口部に現れた銅箔をエッチングする際、不均一な表面処理層の剥離が発生することがあり、銅箔の不均一な溶解を引き起こし、回路の直線性を劣化させることがある。
それを解決する手段として、エッチング工程では、レジスト開口部に露出した表面処理層を予め溶解させることにより、その後、塩化第二鉄、塩化第二銅のようなエッチング液でエッチングすることが、回路の直線性を維持する上で、重要な役割を有する。
【0027】
この場合、銅箔の上に形成した表面処理層を、予めプリエッチングにより除去することが必要である。短時間でこの表面処理層を除去することにより、回路の直線性を保持できる。この場合、銅層のエッチング液と異なるエッチング液を使用することが望ましい。
例えば、ニッケル、クロム、コバルトやそれらの合金系には硫酸−塩酸系の液、貴金属系には硝酸に塩化物イオン、カチオン性ポリマーを含む液等のエッチング液を使用できる。一旦、直線的な回路を形成できれば、その後にその下層である銅層を塩化第二鉄、塩化第二銅のようなエッチング液で除去する場合にも、この直線性は維持できる。
なお、回路の直線性を若干犠牲にすれば、後述する実施例に示すように、表面処理層を除去するプリエッチングと回路を形成する銅層のエッチングを、同一のエッチング液を用いて行うことが可能である。この場合、例えばプリエッチングの際の温度等を調節してエッチングの条件を変更することにより、表面処理層の除去が可能となる。
【0028】
100μm×100μmの範囲で、任意の10点の回路ピッチ(P)とトップ幅(W)を測定した場合、銅厚(T)を用いて表現される(P−W)/Tの標準偏差が0.1以下であることが電子回路の直線性を評価する上で、指標となるものである。
しかし、電子回路のエッチファクタが良好であることが、電子回路の形成においては、ショートや回路幅の不良の発生を防止する上で、より重要であり、優先される必要がある。この意味で、標準偏差が0.1以下という条件に、必ずしも適合していない場合であっても、電子回路として有効であることは、容易に理解されるであろう。勿論(P−W)/Tの標準偏差が0.1以下であることは、より有効な条件であることは言うまでもない。
本願発明は、エッチング工程において、レジストと銅箔間に存在する表面処理層がエッチング液による銅のサイドエッチングを抑制するため、結果として異方性のエッチングを可能とすることにより、高いエッチファクタを得ることができる大きな理由となる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。なお、対比のために比較例も同様に説明する。
【0030】
表面処理層を備えた銅張積層板の作製方法としては、特に制限はない。表面処理層を備えた銅箔を使用する場合、プレス法、キャスト法、ラミネート法が適用でき、銅張積層板に表面処理層を形成する場合、プレス法、キャスト法、ラミネート法の他、メタライジング法も適用できる。本実施例おとび比較例では、メタライジング法で銅張積層板を作製し、その後、表面処理層を形成する方法を適用した。
【0031】
樹脂基板としてはポリイミドフィルムを使用したが、上市されているポリイミドフィルム、例えば、宇部興産製ユーピレックス、DuPont/東レ・デュポン製カプトン、カネカ製アピカルなどがあるが、いずれのポリイミドフィルムにおいても本発明は適用できる。このような特定の品種に限定されるものではない。本実施例及び比較例では、ポリイミドフィルムとして宇部興産製ユーピレックス‐SGAを使用した。
【0032】
まず、最初にポリイミドフィルムを真空装置内にセットし真空排気後、酸素をチャンバー内に導入し、チャンバー圧力を10Paに調整し、プラズマ処理をした。
次に、上記のプラズマ処理したポリイミドフィルム表面にスパッタリングにより、めっきの種層となるシード層を300nm形成した。
さらに、前記のシード層の上に電気めっきにより銅箔(厚さ8.5、12μm)を形成することにより、銅張積層板を作製した。
この銅張積層板に対し、その銅箔表面上にスパッタリングにより、1〜50nmの表面処理層を形成した。
【0033】
前記のように作製した銅張積層板の断面を図1に示す。図1に示すように、銅張積層板は、樹脂基板、銅箔及び表面処理層を備えている。次に、エッチファクタを評価するため、試料を準備した。試料は液体レジスト(東京応化工業製OFPR−800)を約1μmの乾燥後厚さになるようにスピンコートし、乾燥した後、各種回路ピッチのガラスマスクを用い、マスクアライナー(ミカサ製MA−60F)にて露光し、現像液(東京応化工業製NMD−W)で処理し、乾燥した後、エッチングに供した。エッチングに先立ち、表面処理層を選択エッチングするために、プリエッチングを実施したものとしないものを準備した。
【0034】
選択エッチング液としては、ニッケル合金用に硫酸−塩酸系のメック製CHシリーズ、同じく硫酸-塩酸系の日本化学産業製フリッカー、塩酸系のアデカ製NRシリーズ、有機酸−リン酸-塩酸系の荏原ユージライト製シードロン等が上市されているが、これらを任意に選択して使用でき、特に限定されるものではない。
ニッケル用としては、メック製NH−1860シリーズ、メルテックス製HN−841、日本化学産業製NC等が上市されており、特に限定されるものではない。
【0035】
一方、貴金属系の選択エッチング液としては、金用にメルテックス製AU−78M、パラジウム用にメック製PJ−9720のようなものが上市されており、特に限定されるものではない。銅を溶解しない、或いは十分に銅のエッチングが遅く、目的の金属および合金を選択的に溶解できる液であれば、特に限定されるものではない。
本実施例では、銅箔を溶解することなく、表面処理層の種類に応じて選択エッチングが可能である選択エッチング液を使用した。
【0036】
また、銅箔のエッチングには、塩化第二鉄、塩化第二銅が適用できるが、本実施例及び比較例では、塩化第二鉄(40°ボーメ、50°C)、塩化第二銅(2mol/L、塩酸3mol/L、50°C)を使用した。その後、フォトレジストは剥離液(東京応化工業製104)で剥離してエッチファクタの評価を行った。
【0037】
エッチファクタは、図2のように定義することができる。図2に示すように、エッチファクタは、T/((B−W)/2)として計算する。表1に、下記実施例及び比較例のエッチファクタの評価結果を示すが、本発明では実施例に示すように、エッチファクタが2以上であることを条件とした。
エッチング時間は、回路ピッチ(P)や表面処理層の種類により異なる。回路ピッチ(P)は30μmピッチではライン21μm/スペース9μmのマスクを使用し、25μmピッチではライン20μm/スペース5μm、40μmピッチではライン25μm/スペース15μmのマスクを使用し、評価サンプルを作製した。
【0038】
スペースのレジスト開口部から浸入したエッチング液が、ボトムに向かってエッチングが進むだけでなく、サイドエッチングも同時に起こすため、エッチファクタの低いサンプルはボトム幅(B)が大きくなる。
一方、サイドエッチングが抑制されたサンプルでは、ボトム方向へのエッチングが優先的に進行するため、トップ幅(W)とボトム幅(B)の差は小さくなる。
【0039】
なお、回路直線性の評価は、光学顕微鏡、または走査型電子顕微鏡を用い、倍率50倍で回路形状を観察し、観察画面中の100μm×100μmの範囲で、任意の10点で回路ピッチ(P)とトップ幅(W)を測定する。直線性は銅厚(T)を用いて図2のように、(P−W)/Tで表現する。この数値のばらつきが小さいほど、回路の直線性は良いことになり、表1には直線性の良否の指標として、(P−W)/Tの10点での標準偏差を使用した。本発明では、この標準偏差が0.1以下であることを条件とした。
【0040】
【表1】

【0041】
図3は、比較例及び実施例のエッチングの工程図である。図3に示すように、表面処理層を施した銅張積層板にフォトレジストの塗布、露光・現像、表面処理層プリエッチング、銅箔のエッチング及びフォトレジストの剥離という工程からなる。
【0042】
(比較例1)
まず、比較例から説明する。比較例1は、21/9の30μmピッチで銅厚8.5μmの表面処理層がない場合である。塩化第二鉄でエッチングした場合、トップ幅(回路上端の幅)が7.0μm、ボトム幅(回路の下端の幅)が16.6μmで、エッチファクタは1.78となり、回路の側面が末広がりにエッチングされた。また、(P−W)/Tの標準偏差は0.079となり、0.1以下であった。このように、回路の直線性は良好であったが、エッチファクタは不良であった。この結果を、表1に示す。
また、図4(写真)に、エッチングにより回路を形成した場合の様子を示す。この図4に示すように、「ダレ」があるために、回路間の幅が狭くなっているが、回路の直線性は良好であることがわかる。
【0043】
(比較例2)
比較例2は、比較例1の塩化第二鉄を塩化第二銅に変えた場合であり、トップ幅が7.4μm、ボトム幅が16.2μmで、エッチファクタは1.92となり、回路の側面が末広がりにエッチングされた。また、(P−W)/Tの標準偏差は0.096となり、0.1以下であった。このように、回路の直線性は良好であったが、エッチファクタは不良であった。また、表面処理層がない場合、エッチング液が異なっても、エッチファクタと(P−W)/Tの標準偏差に大きな差は見られなかった。この結果を、表1に示す。
【0044】
(比較例3)
比較例3は、比較例1の21/9の30μmピッチを20/5の25μmピッチに変えた場合であり、塩化第二鉄でエッチングした。この結果、トップ幅が2.4μm、ボトム幅が18.9μmで、エッチファクタは1.03となり、回路の側面が末広がりにエッチングされた。また、(P−W)/Tの標準偏差は0.082となり、0.1以下であった。このように、回路の直線性は良好であったが、エッチファクタは不良であった。回路ピッチがファインになると、(P−W)/Tの標準偏差には大きな差はなかったが、エッチファクタはより小さくなる傾向が見られた。この結果を、表1に示す。
【0045】
表1に示す比較例1から比較例3のように表面処理層がない場合、回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は、0.1以下の値であったが、エッチファクタは回路ピッチに影響されるという問題があった。
【0046】
(比較例4)
比較例4は、比較例1と表面処理層を施した以外は同じである。すなわち、銅厚8.5μmに10nmのニッケル合金(Ni/Cr=80/20)の表面処理層を形成した場合であり、塩化第二鉄でエッチングした。この結果、トップ幅が8.8μm、ボトム幅が12.1μmで、エッチファクタは5.13と高くなり、(P−W)/Tの標準偏差は0.155となった。表面処理層によりエッチファクタが高くなる効果が得られたが、その反面、回路の直線性が悪くなった。この結果を、表1に示す。
【0047】
(比較例5)
比較例5は、比較例4の表面処理層を30nmにした場合であり、表面処理層が厚くなることにより溶解、剥離に時間を要した結果、スパッタ層がなくなった時点で、銅箔の溶解も既に進行しており、回路が流れてしまうような現象となった。回路形成は不能であり、エッチファクタ、回路の直線性の評価はできなかった。この結果を、表1に示す。
【0048】
(比較例6)
比較例6は、比較例4の表面処理層をクロムにした場合であり、クロムは塩化第二鉄に対し、殆ど溶解が進行しないため、回路形成は不能であった。よって、エッチファクタ、回路の直線性の評価はできなかった。この結果を、表1に示す。
【0049】
(比較例7)
比較例7は、比較例4の表面処理層をコバルト合金(Co/Cr=80/20)にした場合であり、塩化第二鉄でエッチングした。この結果、トップ幅が11.0μm、ボトム幅が15.1μmで、エッチファクタは4.20と高くなり、(P−W)/Tの標準偏差は0.200となった。表面処理層によりエッチファクタが高くなる効果が得られたが、その反面、回路の直線性が悪くなった。この結果を、表1に示す。
【0050】
(比較例8)
比較例8は、比較例1と表面処理層を施した以外は同じである。銅厚8.5μmに1nmの金の表面処理層を形成した場合であり、塩化第二鉄でエッチングした。この結果、トップ幅が12.9μm、ボトム幅が16.6μmで、エッチファクタは4.62と高くなり、(P−W)/Tの標準偏差は0.278となった。金の表面処理層は1nmのような薄膜でエッチファクタが高くなる効果を得られたが、その反面、回路の直線性が悪くなった。この結果を、表1に示す。
【0051】
(比較例9)
比較例9は、比較例8の表面処理層を白金(Pt)にした場合であり、塩化第二鉄でエッチングした。この結果、トップ幅が11.8μm、ボトム幅が14.7μmで、エッチファクタは5.77と高くなり、(P−W)/Tの標準偏差は0.177となった。白金の表面処理層は1nmのような薄膜でエッチファクタが高くなる効果を得られたが、その反面、回路の直線性が悪くなった。この結果を、表1に示す。
【0052】
(比較例10)
比較例10は、比較例8の表面処理層をパラジウム(Pd)にした場合であり、塩化第二鉄でエッチングした。この結果、トップ幅が11.4μm、ボトム幅が15.1μmで、エッチファクタは4.62となり、(P−W)/Tの標準偏差は0.238となった。パラジウムの表面処理層は1nmのような薄膜でエッチファクタが高くなる効果を得られたが、その反面、回路の直線性が悪くなった。この結果を、表1に示す。
また、図5(写真)に、本比較例10のプリエッチングを施していない場合の回路の様子を示す。この図5に示すように、回路の直線性が劣っており、回路の幅に乱れが生じていることがわかる。
【0053】
比較例8から比較例10は貴金属系の表面処理層を施した場合であり、1nmのような薄膜でもエッチファクタが高くなるが、(P−W)/Tの標準偏差は大きくなり、回路直線性は表面処理層がない比較例1から比較例3と比較し、悪くなる結果であった。
貴金属の表面処理層が薄膜のため、塩化第二鉄のエッチング液が薄膜を通過し、界面の銅を溶解する結果、薄膜が剥離し、剥離した場所から銅箔が更に溶解すると推定されるが、薄膜の剥離が不均一なため、回路の直線性は悪くなる傾向にあった。
【0054】
(実施例1)
次に、実施例について説明する。実施例1は、比較例5にプリエッチングを行ったものであり、ニッケル合金を日本化学産業製のフリッカーで選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。
プリエッチングにより回路スペース部の表面処理層を除去した後、塩化第二鉄によるエッチングが進行した結果、トップ幅が9.2μm、ボトム幅が11.4μmで、エッチファクタは7.70と高くなり、回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.062となった。このように、プリエッチングにより、エッチファクタと回路直線性の両方が良好になった。この結果を、表1に示す。
また、図6(写真)に、本実施例1の表面処理層にプリエッチングを施した場合の様子を示す。この図6に示すように、「ダレ」がないために、回路間の幅が広く、かつ回路の直線性が良好であることがわかる。
【0055】
(実施例2)
実施例2は、実施例1の塩化第二鉄を塩化第二銅に変えた場合であり、エッチングが進行した結果、トップ幅が9.6μm、ボトム幅が12.1μmで、エッチファクタは6.60と高くなり、回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.078であった。プリエッチングで表面処理層を選択エッチング後、銅のエッチングを行った場合、エッチング液が異なっても、エッチファクタと(P−W)/Tの標準偏差に大きな差は見られず、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0056】
(実施例3)
実施例3は、実施例1のニッケル合金の厚みを30nmから50nmにした以外は実施例1と同じ場合であり、エッチングが進行した結果、トップ幅が9.6μm、ボトム幅が11.8μmで、エッチファクタは7.70となり、回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.074となった。表面処理層を厚くしてもプリエッチングを行い、スペース部の表面処理層を選択エッチングすることにより、エッチファクタと回路直線性の両方が良好になった。但し、エッチファクタが更に大きくなるようなことはなかった。この結果を、表1に示す。
【0057】
(実施例4)
実施例4は、比較例6にプリエッチングを行ったものであり、クロムを日本化学産業製のフリッカーで選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。
プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が9.6μm、ボトム幅が12.9μmで、エッチファクタは5.13と高くなり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.087となり、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0058】
(実施例5)
実施例5は、比較例7にプリエッチングを行ったものであり、コバルト合金を日本化学産業製のフリッカーで選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が10.3μm、ボトム幅が14.0μmで、エッチファクタは4.62と高くなり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.061となり、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0059】
実施例1から実施例5は、10〜50nmの表面処理層を予めプリエッチングにより、スペース部を選択エッチングし、その後銅箔をエッチングした場合であるが、全てエッチファクタが大きく、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.1以下の値となり、いずれも良好な結果となった。
【0060】
(実施例6)
実施例6は、比較例8にプリエッチングを行ったものであり、金をメルテックス製AU−78Mで選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が13.6μm、ボトム幅が16.2μmで、エッチファクタは6.60と高くなり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.062となり、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0061】
(実施例7)
実施例7は、比較例9にプリエッチングを行ったものであり、金と同様、白金をメルテックス製AU−78Mで選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が14.0μm、ボトム幅が16.2μmで、エッチファクタは7.70と高くなり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.050となり、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0062】
(実施例8)
実施例8は、比較例10にプリエッチングを行ったものであり、パラジウムをメック製PJ−9720で選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が13.2μm、ボトム幅が15.8μmで、エッチファクタは6.60と高くなり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.062となり、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0063】
(実施例9)
実施例9は、実施例8のパラジウムをパラジウム合金(Pd/Ag=60/40)にした以外は実施例8と同じ場合であり、塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が10.7μm、ボトム幅が14.7μmで、エッチファクタは4.20となり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.087となり、いずれも良好な結果となった。この結果を、表1に示す。
【0064】
実施例6から実施例9は、貴金属系の表面処理層を予めプリエッチングによりスペース部を選択エッチングし、その後銅箔をエッチングした場合であり、プリエッチングを行わなかった場合と比べ、回路の直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は小さくなり、全て0.1以下となり、いずれも良好な結果となった。
【0065】
(実施例10)
実施例10は、実施例1の銅厚を8.5μmから12μmにした以外は実施例1と同じ場合であり、塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が7.4μm、ボトム幅が12.9μmで、エッチファクタは4.35となり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.061となった。
銅厚が厚くなっても、プリエッチングを行い、スペース部の表面処理層を選択エッチングすることにより、エッチファクタと回路直線性の両方が良好になった。この結果を、表1に示す。
【0066】
(実施例11)
実施例11は、比較例3に10nmのニッケルの表面処理層を形成した場合であり、20/5の25μmピッチである。加えてプリエッチングを行い、ニッケルを日本化学産業製のフリッカーで選択エッチングし、その後塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が7.1μm、ボトム幅が14.2μmで、エッチファクタは2.40と高くなり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.093となった。プリエッチングにより、エッチファクタと回路直線性の両方が良好になった。この結果を、表1に示す。
【0067】
(実施例12)
実施例12、実施例1の21/9の30μmピッチを20/5の25μmピッチに変えた場合であり、塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が9.0μm、ボトム幅が14.7μmで、エッチファクタは3.00、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.062であった。エッチファクタと回路直線性の両方が良好になった。この結果を、表1に示す。なお、回路ピッチがファインになると、エッチファクタは小さくなるが、(P−W)/Tの標準偏差には大きな差は見られなかった。
【0068】
(実施例13)
実施例13は、実施例1の21/9の30μmピッチを25/15の40μmピッチに変えた場合であり、塩化第二鉄でエッチングしたものである。プリエッチングにより回路スペース部は表面処理層が無くなり、塩化第二鉄でのエッチングが進行した結果、トップ幅が18.4μm、ボトム幅が20.2μmで、エッチファクタは9.24となり、また回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.061であった。
エッチファクタと回路直線性の両方が良好になった。この結果を、表1に示す。回路ピッチが大きくなると、エッチファクタは大きくなり、(P−W)/Tの標準偏差には大きな差は見られなかった。
【0069】
(実施例14)
実施例14は、実施例13と同様、25/15の40μmピッチの場合であるが、実施例13とは異なり、エッチング工程として、塩化第二銅エッチング液で二回処理したもので、一回目の塩化第二銅液は、ニッケル合金を除去するプリエッチング液として作用させ、二回目の塩化第二銅液は銅箔のエッチング液として作用させた場合である。すなわち、一回目は表面処理層をエッチングするため、エッチングが遅くなるよう30°Cの液温で処理し、二回目は銅箔のエッチングのため、通常の50°Cの液温で処理した。
【0070】
その結果、エッチファクタは7.70となり、回路直線性の指標である(P−W)/Tの標準偏差は0.151であった。回路の直線性に関しては、表面処理層の選択エッチング液を用いた場合ほど良くはないが、一段で表面処理層と銅箔をエッチングする場合より良好な直線性が得られた。
表面処理層は、銅よりエッチングレートの遅い層から構成されているので、銅層と同一のエッチング液を使用すると、プリエッチングの際に銅層のエッチングに影響を与える。しかし、回路の直線性を若干犠牲にすれば、表面処理層を除去するプリエッチングと回路を形成する銅層のエッチングを同一のエッチング液を用いて行うことが可能である。
また、ニッケルクロム合金のような表面処理層をプリエッチングで除去するためには、エッチング液を適宜選択するか又は上記のように温度等を調節してエッチングの条件を変更するのが望ましいと言える。
【0071】
表面処理層は厚くなるほどエッチファクタが高くなるが、フォトレジストを剥離後、当該表面処理層は、図3のように残っている。当該表面処理層の除去処理は必要なので、むやみに厚くすべきものではない。表面処理層はその除去処理の経済性とエッチング特性を考慮すると、1〜50nmが望ましい。
【0072】
本願発明は、銅張積層板の銅箔上に表面処理層を形成することで、回路配線のファインピッチ化の妨げとなるサイドエッチングの抑制することにより、上記の問題を解決するものであり、かつ銅箔のエッチングに先立ち、エッチングされるべき銅箔の直上にある表面処理層を予め除去することで配線の直線性を良好にするものであり、上記から本願発明の有効性が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本願発明は、エッチングにより回路形成を行う電子回路用の銅箔において、該銅箔のエッチング面側にニッケル、クロム、コバルト及びニッケル合金、クロム合金、コバルト合金の他、貴金属類として、金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属又はこれらを主成分とする合金の表面処理層のいずれか1種を形成させた電子回路形成用銅張積層板において、当該の表面処理層は回路形成時のサイドエッチングを抑制し、高いエッチファクタを可能であるという優れた効果を有する。
【0074】
また、当該表面処理層を施した銅張積層板の銅箔をエッチングする際、エッチングされるべき銅箔の直上にある表面処理層を予め選択エッチングすること、つまりプリエッリングの工程を導入することにより、回路の直線性を良好にすることができるという優れた効果を有する。
【0075】
目的とする回路幅のより均一な回路を形成でき、パターンエッチングでのエッチング性の向上、ショートや回路幅の不良の発生を防止できる電子回路用の銅張積層板を提供することができる効果を有するので、フレキシブルプリント基板、TAB、COF等の電子部品の実装素材として用いられるフレキシブルラミネート、リジット及びフレキのパッケージ基板として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅層のエッチング面側に、銅よりエッチングレートの遅い層を形成すると共に、前記銅層の非エッチング側の面を樹脂基板に張付けて銅張積層板とし、前記銅よりエッチングレートの遅い層を形成した面に回路形成用レジストパターンを形成した後、エッチングにより電子回路を形成する方法であって、銅よりエッチングレートの遅い層を先にエッチングした後、次に銅層をエッチングして、樹脂基板上に電子回路を形成することを特徴とする電子回路形成方法。
【請求項2】
前記エッチングレートの遅い層が、ニッケル、クロム、コバルトのいずれか1種以上からなる金属の層若しくはこれらを主成分にする合金の層又は金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属の層若しくはこれらを主成分にする合金の層であることを特徴とする請求項1に記載の電子回路形成方法。
【請求項3】
前記エッチングレートの遅い層の厚さが、1〜50nmの層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子回路形成方法。
【請求項4】
樹脂基板上に形成された40μmピッチ以下の電子回路であって、該電子回路のエッチファクタが2以上であり、かつ100μm×100μmの範囲で、任意の10点の回路ピッチ(P)とトップ幅(W)を測定した場合、銅厚(T)を用いて表現される(P−W)/Tの標準偏差が0.1以下であることを特徴とする電子回路。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子回路形成方法により樹脂基板上に形成された40μmピッチ以下の電子回路であって、該電子回路のエッチファクタが2以上であり、かつ100μm×100μmの範囲で、任意の10点の回路ピッチ(P)とトップ幅(W)を測定した場合、銅厚(T)を用いて表現される(P−W)/Tの標準偏差が0.1以下であることを特徴とする電子回路。
【請求項6】
圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅層のエッチング面側に、銅よりエッチングレートの遅い層を形成すると共に、前記銅層の非エッチング側の面を樹脂基板に張付けたことを特徴とする電子回路形成用銅張積層板。
【請求項7】
前記エッチングレートの遅い層が、ニッケル、クロム、コバルト若しくはニッケル合金、クロム合金、コバルト合金又は金、白金、パラジウムのいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分にする合金の層であることを特徴とする請求項6に記載の電子回路形成用銅張積層板。
【請求項8】
前記エッチングレートの遅い層の厚さが、1〜50nmの層であることを特徴とする請求項6又は7に記載の電子回路形成用銅張積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−216528(P2011−216528A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80478(P2010−80478)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】