説明

電子式扉開閉システム

【課題】 安定した電源供給が可能でセキュリティーに強く、使い勝手に優れた電子式扉開閉システムを提供する。
【解決手段】 鍵部100に充電式電池15を組み込み、かかる鍵部100を錠部200の鍵差込口7に挿入した状態で、充電式電池15より認証回路17、19に電力を供給し、認証用データの相互通信により鍵部100の正当性の認証を行い、認証が取れた時点で、充電式電池15よりモータ21に電力を供給するとともに、モータ制御部20によりモータ21を駆動し、ロック機構22を介してデットボルト13による扉6の施錠/解錠を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式電池を内蔵した電子鍵を用いた電子式扉開閉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるピッキングなどによる犯罪が急増しており、これら犯罪への対策として鍵形状の新たな開発や複数の錠の設置によるセキュリティー強化などが行われている。しかし、現状では、完全な犯罪防止までに至っていない。
【0003】
一方、これら鍵の形態に代わるものとして、電子的な認証を行うようにした様々な電子式扉開閉システムも考えられており、例えば、暗証番号を使用したもの、ICカードによる電子認証を行うもの、あるいは生態認証を利用するものなどが知られている。これらの方法を用いたシステムはセキュリティーとしては優れており、基本的にピッキングなどにより鍵を用いずに開錠することは困難とされている。
【0004】
ところで、これら電子認証を用いたシステムでは、電子的な認証を実行するための電源を必要とし、さらにシステムによっては電子認証後に扉を開錠するための電源を必要とすることがある。このため、このようなシステムを設置した扉では、扉内部に専用の電源を設ける必要があり、このことが既存の扉への設置を難しくしている。また、このようなシステムでは停電により電源からの給電が止まると、扉の開閉ができなくなり、不便を生じるとともに、場合によってはこれがセキュリティーの弱点となることがあった。
【0005】
従来、このような問題を解消するものとして、扉内部に設ける電源に電池を用いたものも考えられている。しかし、電池を電源とするものでは、定期的な電池交換が必要となり、予備として用意しておく電池の費用、作業に要する人件費などコストがかかり、特にホテルなど多数の部屋が存在する場所においてシステムを運用する業態ではその影響は極めて大きい。
【0006】
そこで、従来、特許文献1に開示されるように鍵と錠本体との間で識別照合のためのデータの相互通信を行う電子錠であって、鍵側にバッテリを設け、このバッテリを鍵と錠本体の電源として用い、また、錠本体にバッテリの電力で充電されるコンデンサを設け、このコンデンサの電力により錠本体から鍵への送信やロック機構のアクチュエータの駆動を行うようにしたものがある。
【特許文献1】特開平9−132977号公報
【特許文献2】特開2005−123183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このような特許文献1のものは、鍵側のバッテリの寿命がくると、交換又は充電するようにしているが、バッテリを交換するのでは、上述したのと同様に、予備として用意されるバッテリの費用、作業に要する人件費などコストがかかってしまう。また、バッテリを充電するのにも、通常の二次電池の場合で1〜2時間程度を要するため、この間、電子錠として使用できなくなることがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、安定した電源供給が可能でセキュリティーに強く、使い勝手に優れた電子式扉開閉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、鍵部と、該鍵部が着脱される錠部を有し、前記鍵部が装着された際に前記鍵部の正当性の認証を行う認証手段を有する電子式扉開閉システムにおいて、前記鍵部は、10C以上の電流で急速充電可能な充電式電池を有し、前記錠部は、前記認証手段の認証結果に応じて扉開閉を行う扉開閉手段を有し、前記鍵部の前記充電式電池より前記認証手段及び前記錠部の扉開閉手段に対しそれぞれの動作に必要な電力を供給可能としたことを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記鍵部は、少なくとも前記錠部に電力を供給する電源用端子を有し、前記錠部は、前記鍵部が挿脱される鍵挿脱部を備え、該鍵挿脱部に前記鍵部の電源用端子に接続可能な電源用端子を有し、前記鍵挿脱部への前記鍵部の装着の際に前記鍵部の電源用端子より前記錠部の電源用端子を介して前記充電式電池より前記錠部の扉開閉手段に対し動作に必要な電力を供給可能としたことを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記鍵部を保管する鍵保管部をさらに有し、該鍵保管部は前記鍵部が保管された状態で前記充電式電池を急速充電する充電手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記鍵部は複数の部屋に対応して複数個用いられ、前記鍵保管部は、前記複数の部屋ごとの鍵部に対応して複数個配置され、これら複数の鍵保管部は、対応する鍵部が保管された状態で前記充電式電池を急速充電する充電手段を各別に備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記鍵部は、少なくとも前記電源用端子を外部から保護する保護手段を有することを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記充電式電池は、リチウムイオン二次電池からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安定した電源供給が可能でセキュリティーに強く、使い勝手に優れた電子式扉開閉システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図面に従い説明する。
【0017】
図1(a)(b)は、本発明の一実施の形態にかかる電子式扉開閉システムの概略構成を示している。図において、100は鍵部で、この鍵部100は、カード状の鍵本体1を有している。この鍵本体1は、一方板面に電池収納部2が設けられている。この電池収納部2には、後述する充電式電池15が収納される。また、鍵本体1は、前記一方板面の端部に電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4が配置されている。電源用端子3a、3bは、後述する錠部200への電力供給及び充電式電池15の充電を行うのに用いられる。データ通信用端子4は、錠部200との認証用データの相互通信を行うのに用いられる。
【0018】
錠部200は、錠本体5を有している。この錠本体5は、扉6の側縁部に設けられている。錠本体5には、鍵挿脱部として鍵差込口7が設けられ、この鍵差込口7より前記鍵部100を挿脱可能にしている。鍵差込口7の奥部には、電源用端子8a、8b及びデータ通信用端子9が配置されている。これら電源用端子8a、8b及びデータ通信用端子9は、前記鍵部100の電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4に対応するもので、鍵差込口7に鍵部100が挿入された状態で、これら電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4と電気的に接続される。
【0019】
錠本体5には、認証確認用の表示部10が設けられている。この表示部10は、鍵本体1の正当性の認証取得の可否を表示するもので、例えば、認証が取れたときは青色、認証が取れないときは赤色の発光体を点灯する。ここでの発光体としては、例えばLEDが用いられる。
【0020】
扉6には、ドアノブ11が設けられている。このドアノブ11は、扉6を開閉する際に操作されるもので、不図示の開閉機構を介してラッチボルト12が連結されている。また、錠本体5には、ラッチボルト12と並んでデットボルト13が設けられている。このデットボルト13は、錠部200の後述するモータ21、ロック機構22とともに扉開閉手段を構成するもので、これらモータ21、ロック機構22に連動して扉6の施錠又は解錠を行なう。
【0021】
図2は、このように構成された電子式扉開閉システムの回路構成を示している。なお、図2は、上述した図1と同一部分には同符号を付している。
【0022】
鍵部100は、充電式電池15を有している。この充電式電池15には、大電流により急速充電が可能なリチウムイオン二次電池が用いられる。リチウムイオン二次電池は、例えば、図3(a)(b)に示すように肉薄で矩形状をした電池本体151を有している。この電池本体151は、正極端子15aと負極端子15bが同一側部から突出して設けられ、また周囲にはアルミラミネート外装が施されている。
【0023】
ここで、リチウムイオン二次電池について詳細に説明する。かかる、リチウム二次電池は、リチウムチタン酸化物を活物質として含む負極を備えている。活物質であるリチウムチタン酸化物は、特許文献2に開示される通り、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、リチウムイオンの挿入・離脱が1.4Vから1.7V/Li付近で行われる。このため、この二次電池は大電流での急速充電を行っても、従来の負極活物質に炭素材料を用いた場合と比べてリチウムの析出が起こらずに安全性を確保できる。また、リチウムの吸蔵放出に伴う膨張収縮が生じるのを抑制することができるため、20C電流の急速充電を繰り返し行った際にも負極活物質の構造破壊を抑えることができる。その結果、充放電を繰り返し行った場合においても長い寿命を維持できる。電池の電位としては2.4V程度であることから、従来のニッケル水素蓄電池やニッケルカドミウム蓄電池の2本直列分に相当するため、使用本数で50%の減量化が達成できる。
【0024】
具体的には、以下のような方法で組み立てたリチウムイオン二次電池は20Cで3分間充電することにより約80%電池容量まで充電することが可能な急速充電二次電池であることが確認されている。ここで、『C』は充放電率を表す単位であり、完全放電から完全充電(または完全充電から完全放電)までを定電流充電した場合に計算上1時間で行えるレートを1Cとして表現する。1/10時間の場合、10Cと表現する。したがって、例えば20C充電とは、1C充電の20倍の電流が必要になる。
【0025】
<負極の作製>
活物質として、平均粒子径5μmでLi吸蔵電位が1.55V(vs.Li/Li+)のチタン酸リチウム(Li4Ti512)粉末と、導電剤として平均粒子径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で90:7:3となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。
【0026】
なお、活物質の粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社 型番SALD−300)を用いた。まず、ビーカー等に試料約0.1gを入れた後、界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌し、攪拌水槽に注入した。2秒間隔で、64回光強度分布を測定し、粒度分布データを解析し、累積度数分布が50%の粒径(D50)を平均粒子径とした。
【0027】
次いで、厚さ10μmのアルミニウム箔(純度99.99%)を負極集電体に前記スラリーを塗布し、乾燥した後、プレスを施すことにより電極密度2.4g/cm3の負極を作製した。
【0028】
<正極の作製>
活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)と、導電材として黒鉛粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で87:8:5となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させてスラリーを調製した。厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%)にスラリーを塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極密度3.5g/cm3の正極を作製した。
【0029】
<二次電池の組み立て>
容器(外装部材)の形成材料として、厚さが0.1mmのアルミニウム含有ラミネートフィルムを用意した。このアルミニウム含有ラミネートフィルムのアルミニウム層は、膜厚約0.03mmであった。アルミニウム層を補強する樹脂には、ポリプロピレンを使用した。このラミネートフィルムを熱融着で貼り合わせることにより、容器(外装部材)を得、さらに金属アルミニウムの容器に収めた。
【0030】
次いで、前記正極に帯状の前記正極端子15aを電気的に接続すると共に、前記負極に帯状の前記負極端子15bを電気的に接続した。厚さ12μmのポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを正極に密着させて被覆した。セパレータで被覆された正極に負極を対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回して電極群を作製した。この電極群をプレスして扁平状に成形した。容器(外装部材)に扁平状に成形した電極群を挿入した。
【0031】
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチルラクトン(GBL)が体積比(EC:GBL)で1:2の割合で混合された有機溶媒にリチウム塩であるLiBF4を1.5mol/L溶解させ、液状の非水電解質を調製した。得られた非水電解質を前記容器内に注液し、リチウム二次電池を組み立てた。このようなリチウム二次電池は、満充電時電圧2.8V、放電終止電圧1.5Vで使用することができる。
【0032】
この実施の形態では、前記充電式電池15として、10C以上の電流で急速充電可能なリチウムイオン二次電池が使用される。勿論、かかる充電式電池15は、上述した20Cで3分間充電することにより約80%電池容量まで充電可能なものである。
【0033】
図2に戻って、充電式電池15の出力端子には、電源用端子3aが接続されるとともに、スイッチ16を介して他の電源用端子3bが接続されている。また、充電式電池15の出力端子には、認証手段としての認証回路17が接続されている。認証回路17には、データ通信用端子4が接続されている。認証回路17は、前記データ通信用端子4を介して後述する錠部200の他の認証手段としての認証回路19との間で認証用データの相互通信を行い、鍵部100の正当性の認証を行うもので、正当性を判断するとスイッチ制御部18により前記スイッチ16をオンさせる。
【0034】
一方、錠部200は、電源端子8aに認証回路19が接続されている。認証回路19には、データ通信用端子9が接続されている。認証回路19は、前記認証回路17と同様にデータ通信用端子9を介して鍵部100の認証回路17との間で認証用データの相互通信を行い、鍵部100の正当性の認証を行うもので、正当性を判断するとモータ制御部20によりモータ21を駆動させる。モータ21には、他の電源端子8bが接続され、鍵部100側の充電式電池15よりスイッチ16を介して電力が供給可能になっている。モータ21には、ロック機構22が接続されている。ロック機構22は、モータ21を駆動源として動作するもので、前記デットボルト13による扉6の施錠又は解錠を行う。
【0035】
次に、このように構成した扉開閉システムの作用を説明する。
【0036】
図4は、扉開閉の動作を説明するためのフローチャートである。まず、ステップ401で鍵部100を錠部200の鍵差込口7から挿入する。すると、鍵部100の電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4と、錠部200の電源用端子8a、8b及びデータ通信用端子9が各別に接続され、図2に示す電気回路が構成される。
【0037】
この状態で、充電式電池15より錠部200の認証回路19に電力が供給される(ステップ402)。この場合、鍵部100の認証回路17には、充電式電池15より常時電力が供給されている。
【0038】
これら認証回路17、19は、データ通信用端子4、9を介して認証用データの相互通信を行い、鍵部100の正当性の認証を行う(ステップ403)。ここで、鍵部100の正当性が判断できない場合は、扉開閉は不許可となり、スイッチ制御部18によるスイッチ16のオン動作は阻止される(ステップ404)。また、鍵本体1の正当性の認証が取れないことで、表示部10の赤色のLEDが点灯し、扉開閉の不許可の旨が表示される。
【0039】
一方、認証回路17、19で、鍵部100の正当性が判断されると、スイッチ制御部18によりスイッチ16がオンし、充電式電池15よりスイッチ16を介してモータ21に電力が供給され(ステップ405)、これと同時に、モータ制御部20によりモータ21が駆動される。モータ21が駆動されると、ロック機構22が動作し、デットボルト13による扉6の施錠又は解錠が行われる(ステップ406)。この場合、ロック機構22は、例えば最初に鍵部100を錠部200の鍵差込口7に差し込んだときに扉6の施錠を行い、次に鍵部100を錠部200の鍵差込口7に差し込んだときに扉6の解錠を行う。また、鍵本体1の正当性の認証が取れると、表示部10の青色のLEDが点灯し、扉開閉の許可の旨が表示される。
【0040】
その後、鍵部100を錠部200の鍵差込口7から抜き取ることで、処理を終了する(ステップ407)。
【0041】
ところで、このような鍵部100に内蔵される充電式電池15は、一度満充電にすれば、鍵の開閉動作が数十回〜百回程度可能であるが、安全を考えて常に満充電状態にしておくのが望ましい。
【0042】
そこで、この実施の形態では、例えば室内の扉6近くに、鍵部100を常時保管する鍵保管部として鍵置き場を設け、この鍵置き場に充電器の機能を付加するようにしている。図5は、このような鍵置き場の一例を示すものである。図において、23は鍵置き場で、この鍵置き場23は、平面上に載置される据置き型をしており、上部に鍵差込口23aが設けられている。この鍵差込口23aには、上述したカード状の鍵部100が差し込まれる。鍵部100は、鍵差込口23aに差し込まれた状態で前記電源用端子3a、3bを介して充電手段である充電器24に電気的に接続される。充電器24は、電源コード25を介して不図示のAC電源に接続され、充電式電池15を満充電まで充電する。
【0043】
鍵置き場23の前面には、充電ステータス表示部26が設けられている。この充電ステータス表示部26は、充電式電池15の充電状態を表示するもので、充電式電池15の充電中は発光体を点灯し、満充電になると消灯する。ここでの発光体としては、例えばLEDが用いられる。
【0044】
したがって、このようにすれば、鍵部100に充電式電池15を組み込み、かかる鍵部100を錠部200の鍵差込口7に挿入した状態で、充電式電池15より認証回路17、19に電力を供給し、認証用データの相互通信により鍵部100の正当性の認証を行い、認証が取れた時点で、充電式電池15よりモータ21に電力を供給するとともに、モータ制御部20によりモータ21を駆動し、ロック機構22を介してデットボルト13による扉6の施錠/解錠を行わせるようにした。また、鍵部100に組み込まれる充電式電池15として10C以上の電流で急速充電できるリチウムイオン二次電池が用いられことも特徴としている。これにより、かかるシステムでは、充電式電池15を内蔵する鍵部100が無ければシステムを起動することができず、しかも、扉6の施錠/解錠は、モータ21を使用して電動で行われるため、いわゆるピッキングのような道具で鍵穴を操作して開閉する操作は全くできなくなり、セキュリティーを向上させることができる。また、停電となっても充電式電池15を使用することで、扉6の開閉は可能であり、停電によるセキュリティーの低下を防ぐことができる。
【0045】
また、鍵部100は、携帯可能なので、充電式電池15を充電するための充電器は何処にあってもよく、このため扉内部に電源を設ける必要がなくなり、既存の錠との交換も容易に行うことができる。
【0046】
さらに充電式電池15を用いることで、電池交換のコストがかからず経済的である。特にホテルのように多数の部屋が存在し、夫々の部屋に鍵を使用しているような場合は、さらに有用で、多大な電池交換費用を無くし、コストの削減につなげることができる。また、多量の廃棄電池を出さずに済むことから、地球環境に対しても好ましい。
【0047】
一方、充電式電池15を用いた場合、電池切れと充電の手間がある。電池切れを起こしてしまった場合は、扉6が開閉不能となることが心配され、また、充電の手間が必要と言うことは、電池切れを誘発する要因となってしまう。これに対し、本発明では、図4で述べたように例えば室内に、鍵部100を常時保管する鍵置き場23を設け、この鍵置き場23の鍵差込口23aに鍵部100が差し込むだけで充電式電池15を充電する充電器24の機能を付加するようにしている。これにより、ユーザの在室中は、鍵部100を鍵置き場23に置くのみで余計な手間をかけることなく常に充電式電池15を満充電状態にできるので、安定した電源供給が可能で、電池切れの心配がなくなるとともに、充電不足で鍵が作動できなくなるような事態を回避できる。
【0048】
さらに、本発明で使用する充電式電池15は、上述した特許文献2で述べたような急速充電を可能にしたものなので、充電の手間がさらに減らすことができ、また、急に充電が必要となった場合、あるいは使用間隔が短く十分に充電の時間が取れないような場合においても迅速に対応することができる。このことは、前記特許文献1で述べたバッテリを充電するのに1〜2時間程度を要するものと比べ、充電式電池15を数分程度の短時間で満充填まで復帰できるので、扉開閉が長時間できなくなるような不都合を回避できる。また、特許文献1で述べたロック機構のアクチュエータの駆動をバッテリにより充電されるコンデンサの電力を用いたものと比べ、扉開閉が頻繁に行われることがあっても、充電式電池15の急速充電により迅速に対応できるので、従来のアクチュエータが繰り返し駆動される結果、コンデンサの放電により充電容量が充分でなくなりアクチュエータの駆動が困難となって、扉開閉が不能に陥るような不都合も回避できる。
【0049】
さらに、電池切れを考慮すると容量の大きな電池を搭載するのが普通で、それによって電池自体が大きくなり、仮に、このような電池を鍵部に組み込めば、鍵部自体も大きくなってしまう。しかし、本発明の充電式電池15のように急速充電が可能で、短い時間で満充電にすることができるのであれば、比較的小さな容量のものであっても、頻繁に充電するような運用を行えばシステムは支障なく運用できる。そのため、通常の充電式電池を使う場合よりも、小さな鍵部を設計することも可能となる。
【0050】
(変形例1)
上述した実施の形態では、室内に鍵部100を常時保管する鍵置き場を設け、この鍵置き場に充電器の機能を付加するようにしたが、例えばホテルにおいてフロントの各部屋ごとの鍵保管部としての鍵置き場にそれぞれ充電器の機能を付加することもできる。図6は、このようなホテルのフロントに設けられる各部屋ごとの鍵置き場の一例を示すものである。図において、31はフロントの壁面で、この壁面31には、各部屋番号ごとに鍵置き場32a、32b、…32nが並べて配置されている。これら鍵置き場32a、32b、…32nは、宿泊客の鍵を各部屋ごとに保管管理するもので、それぞれ鍵差込口33a、33b、…33nが設けられている。これら鍵差込口33a、33b、…33nには、上述したカード状の鍵部100が差し込まれる。図示例では、鍵差込口33aと33nに鍵部100が差し込まれている。また、鍵置き場32a、32b、…32n内部には、不図示の充電器が各別に設けられ、各鍵差込口33a、33b、…33nより鍵部100が差し込まれた状態で、鍵部100に対し前記電源用端子3a、3bを介して充電器が電気的に接続される。充電器は、不図示のAC電源に接続され、各鍵部100の充電式電池15を満充電まで充電する。
【0051】
鍵置き場32a、32b、…32nのそれぞれの前面には、充電ステータス表示部34a、34b、…34nが設けられている。これら充電ステータス表示部34a、34b、…34nは、鍵差込口33a、33b、…33nより差し込まれた各鍵部100の充電式電池15の充電状態を表示するもので、充電式電池15の充電中は発光体を点灯し、満充電になると消灯する。ここでの発光体としては、例えばLEDが用いられる。
【0052】
したがって、このようにすれば、宿泊客の鍵の返却あるいは一次預かりの際に、鍵部100を対応する部屋番号の鍵置き場32a、32b、…32nの鍵差込口33a、33b、…33nに差し込むことで、鍵貸し出し状況の把握と同時に、鍵部100の充電式電池15の充電を行うことができる。この場合、宿泊客の鍵の返却あるいは一次預かりの際に必ず充電式電池15が充電されることになり、しかも、充電式電池15は、急速充電が可能であるから、返却された鍵をまたすぐ使用することがあっても、充電式電池15が充電不足になることがない。また、万が一電池切れとなった場合においても、急速充電によって素早く充電式電池15を使用可能な状態まで復帰させることができる。
【0053】
このことは、ホテルのフロントに限らず、例えばカラオケボックスのように頻繁に利用者が入れ替わるような業態であっても、部屋ごとに用意される鍵置き場に鍵部100を差し込むだけで急速充電ができるので、迅速な対応が可能であり、鍵部100の充電式電池15が充電不足になることがない。
【0054】
(変形例2)
図7(a)(b)は、鍵部100の変形例を示すもので、上述した実施の形態と同一部分には同符号を付している。
【0055】
この場合、カード状をした鍵本体41は、電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4が配置される一方板面の長手方向の両側縁に沿って一対のスライドガイドレール42、43が設けられている。これらスライドガイドレール42、43には、保護手段の端子保護蓋44が設けられている。この端子保護蓋44は、スライドガイドレール42、43に沿ってスライド可能となっており、図7(a)に示すように鍵本体41の電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4上を覆うことで、これら電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4を外部から保護可能にする。
【0056】
このような鍵部100によれば、使用していないときは、端子保護蓋44により電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4上を覆い保護することができるので、不用意に電源用端子3a、3b及びデータ通信用端子4が何かに触れて破損するようなことを確実に防止できる。
【0057】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、鍵部100及び錠部200にそれぞれ認証回路17、19を設けたが、鍵部100及び錠部200のいずれか一方に設けるようにしてもよい。この場合、鍵部100側のみに認証回路を設けた場合は、認証回路が鍵部100の正当性を認証すると、錠部200のモータ制御部20に直接指示を与えモータ21を駆動させるようにすればよい。また、錠部200側のみに認証回路を設けた場合は、スイッチ16を錠部200側に設け、認証回路が鍵部100の正当性を認証したときスイッチ16をオンさせるようにすればよい。また、スイッチ16は、トランジスタなどの半導体スイッチを用いてもよい。さらに、充電式電池15の形状は、矩形状に限らず、鍵部100の形状に合わせて任意の形状のものを用いることができる。さらにロック機構22の駆動には、モータ21に限らず、ソレノイドのようなアクチュエータを用いても良い。
【0058】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる電子式扉開閉システムの概略構成を示す図。
【図2】一実施の形態にかかる電子式扉開閉システムの回路構成を示す図。
【図3】一実施の形態に用いられる充電式電池の概略構成を示す図。
【図4】一実施の形態にかかる電子式扉開閉システムの動作を説明するフローチャート。
【図5】一実施の形態に用いられる鍵置き場の概略構成を示す図。
【図6】本発明の変形例1のホテルフロントに各部屋ごとに設けられる鍵置き場の概略構成を示す図。
【図7】本発明の変形例2の鍵部の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0060】
100…鍵部、200…錠部
1…鍵本体、2…電池収納部
3a.3b…電源用端子、4…データ通信用端子
5…錠本体、6…扉、7…鍵差込口
8a.8b…電源用端子、9…データ通信用端子
10…表示部、11…ドアノブ
12…ラッチボルト、13…デットボルト
15…充電式電池、151…電池本体、15a…正極端子
15b…負極端子、16…スイッチ、17.19…認証回路
18…スイッチ制御部、20…モータ制御部
21…モータ、22…ロック機構、23…鍵置き場
23a…鍵差込口、24…充電器、25…電源コード
26…充電ステータス表示部、31…壁面
32a、32b、…32n…鍵置き場
33a、33b、…33n…鍵差込口
33a…充電ステータス表示部、41…鍵本体
42.43…スライドガイドレール、44…端子保護蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵部と、該鍵部が着脱される錠部を有し、前記鍵部が装着された際に前記鍵部の正当性の認証を行う認証手段を有する電子式扉開閉システムにおいて、
前記鍵部は、10C以上の電流で急速充電可能な充電式電池を有し、
前記錠部は、前記認証手段の認証結果に応じて扉開閉を行う扉開閉手段を有し、
前記鍵部の前記充電式電池より前記認証手段及び前記錠部の扉開閉手段に対しそれぞれの動作に必要な電力を供給可能としたことを特徴とする電子式扉開閉システム。
【請求項2】
前記鍵部は、少なくとも前記錠部に電力を供給する電源用端子を有し、
前記錠部は、前記鍵部が挿脱される鍵挿脱部を備え、該鍵挿脱部に前記鍵部の電源用端子に接続可能な電源用端子を有し、
前記鍵挿脱部への前記鍵部の装着の際に前記鍵部の電源用端子より前記錠部の電源用端子を介して前記充電式電池より前記錠部の扉開閉手段に対し動作に必要な電力を供給可能としたことを特徴とする請求項1記載の電子式扉開閉システム。
【請求項3】
前記鍵部を保管する鍵保管部をさらに有し、該鍵保管部は前記鍵部が保管された状態で前記充電式電池を急速充電する充電手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子式扉開閉システム。
【請求項4】
前記鍵部は複数の部屋に対応して複数個用いられ、
前記鍵保管部は、前記複数の部屋ごとの鍵部に対応して複数個配置され、これら複数の鍵保管部は、対応する鍵部が保管された状態で前記充電式電池を急速充電する充電手段を各別に備えたことを特徴とする請求項3記載の電子式扉開閉システム。
【請求項5】
前記鍵部は、少なくとも前記電源用端子を外部から保護する保護手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子式扉開閉システム。
【請求項6】
前記充電式電池は、リチウムイオン二次電池からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子式扉開閉システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate