説明

電子打楽器用ペダル装置

【課題】操作性の良好な電子打楽器用ペダル装置を提供する。
【解決手段】ウエイト3には、引っ張りコイルバネ10の一端を係止するバネ係止軸3aが備えられている。引っ張りコイルバネ10の一端は、このバネ係止軸3aに回動自在に軸止される。カバー6の上部の内側には、引っ張りコイルバネ10の他端を係止するバネ係止軸6aが備えられている。引っ張りコイルバネ10の他端は、このバネ係止軸6aに回動自在に軸止される。したがって、フットボード2が操作されない場合、フットボード2は、回動軸4とバネ係止軸6aとを結ぶ直線とほぼ平行に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子打楽器用ペダル装置に関し、特に操作感が良好な電子打楽器用ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アコースティックバスドラムを模擬した電子打楽器が提案されている。従来提案されているバスドラムを模擬した電子打楽器用ペダル装置は、アコースティックバスドラムと同様に足でペダルを踏み込むことによりビータを回動させ、ビータが打面を打つ打撃力を検出し、その検出された打撃力に応じた強さの楽音を発生するように構成されている。
【0003】
実開平6−8998号公報(特許文献1)には、上記のようにビータにより、打面を打撃し、打撃面に設けられた圧電センサにより打撃力を検出する電子打楽器が開示されている。
【0004】
また、特開平9−97075号公報には、ペダルを踏み込むことにより、センサが押下される電子打楽器用のハイハットペダル装置が開示されている。このハイハットペダル装置は、図10に示すように、ペダル102が、底板105に回動支持され、ペダル102と底板105との間に設けられた圧縮バネ110によりペダル102と底板105との角度θが大きくなる方向に付勢されている。
【0005】
一方、ペダルの先端部には、ペダル102の初期位置を調整するネジ112が設けられている。ペダル102に固着されているシャフト120の下端には、センサラバー107を押下する板103が設けられ、ペダル102が踏み込まれると、板103がセンサラバー107の先端部を押下する。センサラバー107の下方には、センサパターン108が形成されており、センサラバー107がセンサパターン108に接触する面積に応じた電気抵抗が形成される。圧縮バネ110の下端は、底板105に形成されたボルトに螺合する蝶ナットに支持され、蝶ナットを回転することにより、圧縮バネの強さが調整される。
【特許文献1】実開平6−8998号公報
【特許文献2】特開平9−97075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構造では、ビータが打面を打撃するために、打撃による雑音を発生するという問題点があった。また、特許文献2に開示された構造では、従来のドラム用ペダルとは操作感が異なるという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、操作性の良好な電子打楽器用ペダル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の電子打楽器用ペダル装置は、底板と、その底板との間に回転軸を備えて回動し、略平面の操作面を有するフットボードと、そのフットボードに引っ張り力を引加するバネと、前記フットボードの回動を検出するセンサとを備え、前記バネは、前記フットボードが操作されていない状態において、前記操作面に略平行な方向であって、その方向が前記底板と所定の角度を成す方向へ引っ張り力を引加し、前記フットボードが操作されて回動することにより張力を増加する。
【0009】
請求項2記載の電子打楽器用ペダル装置は、請求項1記載の電子打楽器用ペダル装置において、前記フットボードに固着され前記バネの一端を係止する第1の係止部と、前記底板から所定の高さの位置に固着され、前記バネの他端を係止する第2の係止部とを備えている。
【0010】
請求項3記載の電子打楽器用ペダル装置は、請求項1または2記載の電子打楽器用ペダル装置において、前記センサは、前記底板上に形成された2つの電極と、前記フットボードの回動により前記2つの電極を短絡させる押圧ゴムとを備え、その押圧ゴムは、底板とフットボードの操作面とが成す角度に応じて前記2つの電極に接触する面積を連続的に変化する。
【0011】
請求項4記載の電子打楽器用ペダル装置は、請求項3記載の電子打楽器用ペダル装置において、前記第1の係止部は、回動軸とは反対側の前記フットボードの一端に備えられ、前記フットボードが操作されることにより前記押圧ゴムを前記電極に押圧する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の電子打楽器用ペダル装置によれば、底板と、その底板との間に回転軸を備えて回動し、略平面の操作面を有するフットボードと、そのフットボードに引っ張り力を引加するバネと、フットボードの回動を検出するセンサとを備え、バネは、フットボードが操作されていない状態において、操作面に略平行な方向であって、その方向が底板と所定の角度を成す方向へ引っ張り力を引加し、フットボードが操作されて回動することにより張力を増加する。よって、演奏者がフットボードを足などで操作する場合の操作感が良好であるという効果がある。
【0013】
すなわち、従来のアコースティックバスドラム用のペダル装置の操作感に近いので、特に、アコースティクドラムに慣れている演奏者にとっては、演奏し易い。図9に、アコースティックバスドラム用のペダル装置201を示す。
【0014】
図9に示すように、アコースティックバスドラム用のペダル装置201は、フットボード202と、ビータ206が取り付けられたビータロッドを回転する回転軸の軸受け205と、回転軸に固着されたアーム204と、アーム204の一端に係止される引っ張りバネ203とを主に備えている。
【0015】
フットボード202が操作されていない状態では、引っ張りバネ203がアーム204の一端を下方に引っ張り、ビータ206が打面から離れた距離に保持されるとともに、フットボード202と床面とは、所定の角度で保持される。
【0016】
アーム204は、軸受け205に軸支されているので、引っ張りバネ203が係止されている係止部は、軸の中心を中心とする円弧の軌跡上を動く。引っ張りバネ203は、下方へ引っ張るので、係止部が最下位置にある付近では、回転角の変化に対して、加重の増え方は、小さいが、回転角度が大きくなるにつれて、加重は大きくなる。
【0017】
ビータ206は、ある程度の質量があるため、ビータが停止してい状態から、フットボード202の踏み込みを開始すると、ビータ206の慣性によりフットボード202を強く踏み込まなくても、ビータ206が、打面に向かって回転し、ほどよい操作感が得られるように構成されている。
【0018】
図8は、回転角度θと、加重の大きさfとの関係を示すグラフである。このグラフは、横軸をフットボードと底板との回転角度θとし、縦軸を加重の大きさfとして表す。このグラフにおいて、曲線Aは、従来のアコースティックバスドラム用ペダル装置の特性を示し、曲線Bは、図10に示すペダル装置の特性を示す。
【0019】
曲線Aが示すように、従来のドラム用ペダル装置の場合は、回転角度θを順次大きくすると、回転角度θが小さい間は、加重は小さく、加重の増え方も小さいが、回転角度θが大きくなるに従って、加重の値が増えると共に、加重の増え方も大きくなる。
【0020】
一方、曲線Bは、図10に示す従来の電子楽器用ペダル装置について示す特性であり、回転角度θが0の場合でも、蝶ナットによって設定される初期加重aが、掛けられ、回転角度θが大きくなると比例的に加重が増加する。本発明による電子楽器用ペダル装置は、曲線Aと同様な加重特性をもつので、アコースティックバスドラム用のペダル装置の操作感と近似し、操作感が良好である。
【0021】
請求項2記載の電子打楽器用ペダル装置によれば、請求項1記載の電子打楽器用ペダル装置の奏する効果に加え、フットボードに固着されバネの一端を係止する第1の係止部と、底板から所定の高さの位置に固着され、バネの他端を係止する第2の係止部とを備えているので、従来のペダル装置のように、ビータが回転する機構や、ビータの回転に応じた加重をかけるアームが不要であり、操作感の良好なペダル装置を簡単な構成で製作することができる。よって、安価にペダル装置を提供することができるという効果がある。
【0022】
請求項3記載の電子打楽器用ペダル装置によれば、請求項1または2記載の電子打楽器用ペダル装置の奏する効果に加え、センサは、底板上に形成された2つの電極と、フットボードの回動により2つの電極を短絡させる押圧ゴムとを備え、その押圧ゴムは、底板とフットボードの操作面とが成す角度に応じて2つの電極に接触する面積を連続的に変化するので、フットボードと底板との角度に応じた電気抵抗を得ることができる。よって、電気抵抗を計測することにより、操作状態を検出することができる。
【0023】
また、ビータを有さず、押圧ゴムを押圧するので、ビータの動作により発生する雑音を無くすことができ、静粛なペダル装置を提供することができるという効果がある。
【0024】
請求項4記載の電子打楽器用ペダル装置によれば、請求項3記載の電子打楽器用ペダル装置の奏する効果に加え、第1の係止部は、回動軸とは反対側の前記フットボードの一端に備えられ、フットボードが操作されることにより押圧ゴムを前記電極に押圧するので、バネを係止する部材は、押圧ゴムを押圧するアクチュエータを兼ねているので、部材の数を減らすことができ、構造が簡単で、装置を安価に提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態である電子打楽器用ペダル装置1の外観斜視図である。まず、図1を参照して、電子打楽器用ペダル装置1の外観構成について説明する。電子打楽器用ペダル装置1は、図1に示すように、フットボード2と、ウエイト3と、回動軸4と、底板5と、カバー6と、引っ張りコイルバネ10とを主に備えている。
【0027】
底板5は、床などに載置される板材であって、ペダル装置1の底部をなし、一端(図、右下側)には回動軸4を有する軸受け5aが形成され、他端(同図、左側)には、カバー6が固着されている。
【0028】
フットボード2は、主として足の平により踏み込み操作されるアルミ製板材であり、フットボード2の一端(図において右端)は、底板5に設けられた回動軸4に軸支され、フットボード2が操作されることにより、この回動軸4を中心として回動する。
【0029】
フットボード2の他端の下側面には、ウエイト3がネジにより固着され、このウエイト3からカバー6の内部に引っ張りコイルバネ10が張設されている。ウエイト3は、アコースティックドラム用のペダルのビータの質量を模擬するために、鉄などの金属により形成されて錘としての機能を有すると共に、後述するセンサのアクチュエータとしての機能を有する。
【0030】
図2は、電子打楽器用ペダル装置1の平面図(a)と、その平面図に示すA−A面での断面、すなわち電子打楽器用ペダル装置1の長手方向の断面である断面図(b)とである。図2(b)に示すように、ウエイト3には、引っ張りコイルバネ10の一端を係止するバネ係止軸3aが備えられている。引っ張りコイルバネ10の一端は、このバネ係止軸3aに回動自在に軸止される。カバー6の上部の内側には、引っ張りコイルバネ10の他端を係止するバネ係止軸6aが備えられている。引っ張りコイルバネ10の他端は、このバネ係止軸6aに回動自在に軸止される。
【0031】
したがって、フットボード2が操作されない状態では、引っ張りコイルバネ10の引っ張り力により、回動軸4と、バネ係止軸3aと、バネ係止軸6aとがほぼ一直線になり、その状態でフットボード2が保持される。このとき、フットボード2の操作面と、底板の上面とは、所定の角度(20度〜30度)をなす。フットボード2が、足などにより踏み込まれると、この角度は小さくなると共に、引っ張りコイルバネ10が、伸張され、負荷が大きくなる。
【0032】
ウエイト3の下方の底板5の上面には、センサラバー7とセンサパターン8とが備えられ、カバー6の先端部には、ジャック9が備えられている。センサラバー7は、押圧ゴムにより形成され、一端(右側)を底板5に固定され、他端が自由端であるとともに、底板5から湾曲してウエイト3の方向に弧を描く形状に成形されている。
【0033】
ウエイト3が、降下されると、ウエイト3の下面によりセンサラバー7の自由端が押圧され、センサラバー7の円弧の曲率が大きくなるように変形される。このことにより、底板5の上面に形成されたセンサパターン8(図3参照)が、センサラバー7に接触し、その接触面積は、センサラバー7の変形が大きいほど、すなわち、フットボード2の底板5に対する角度が小さいほど、大きくなる。
【0034】
ジャック9は、カバー6の先端部に備えられ、センサラバー7とセンサパターン8とにより形成されるセンサの出力電気信号を取り出す端子であり、ジャック9に接続コードの一端に設けられたプラグが着脱自在に装着され、センサの出力が音源装置に入力される。
【0035】
図3は、ウエイト3とセンサ部の斜視図であり、図3に示すように、センサラバー7に対向し、センサパターン8が底板5の上面に形成されている。このセンサパターン8の詳細は、図4を参照して後述するが、センサラバー7が押圧され、接触面積が大きいほど、電気抵抗値が小さくなるように形成される。
【0036】
センサラバー7が、センサパターン8に接触していない場合は、抵抗値が最も大きく、フットボード2が踏み込まれて、フットボード2と底板5とが成す角度が小さくなるとセンサラバー7とセンサパターン8との接触面積が大きくなり、センサラバー7がセンサパターン8に押圧される圧力が大きくなるほど、抵抗値は、小さくなる。
【0037】
したがって、この抵抗値を検出することにより、フットボード2の踏み込み位置を検出することができるとともに、抵抗値が変化する速度を検出することにより、フットボード2が操作された速度およびフットボード2が押圧されている圧力を検出することができる。よって、この検出されたフットボード2の位置と速度と圧力とに応じて、ドラムが発生する音の音量や音色を変化させることができる。
【0038】
次に、図4を参照してセンサパターン8の構成について説明する。図4は、センサパターン8を構成する上面フィルム8aと、スペーサ8bと、センサパターンフィルム8cとをそれぞれ示す平面図である。
【0039】
上面フィルム8aは、ポリエステルフィルムにより形成された矩形状の透明フィルムであって、上面フィルム8aの下面の中央部に導電体である銀ペースト8a1が、細長い矩形状に塗布されている。また、上面フィルム8aの左側には、センサフィルム8を底板5とセンサラバー7との間に挟持して固定するための取付孔8a2が形成され、銀ペースト8a1の長手方向の両側には、センサパターン8を底板5に固定するための取付孔8a3が形成されている。
【0040】
スペーサ8bは、同じくポリエステルフィルムにより形成された矩形状の透明フィルムであって、外形は、上面フィルム8aと同一である。スペーサ8bの中央部には、上面フィルム8aに塗布された銀ペーストの外周に対応して、窓8b1が形成され、この窓8b1は、センサフィルム8を底板5とセンサラバー7との間に挟持して固定するための取付孔に連結している。窓8b1の長手方向の両側には、センサパターン8を底板5に固定するための取付孔8b2が形成されている。
【0041】
センサパターンフィルム8cは、同じくポリエステルフィルムにより形成され、矩形状のパターン部とそのパターン部から引き出された接続線部8c6とから成り、パターン部の外形は、上面フィルム8aおよびスペーサ8bの外形と同一である。
【0042】
パターン部の上面には、2本のカーボンが塗布されたカーボン線8c1が形成され、それぞれのカーボン線8c1は、それぞれ銀ペースト8c2により形成される引き出し線に接続され、接続線部8c6へ導出され、2本のカーボン線8c1の先端部は、銀ペースト8c3により接続されている。接続線部8c6の銀ペーストの上面は、絶縁するための被服で覆われている。
【0043】
センサパターンフィルム8cの左側で、上面フィルム8aに形成された取付孔8a2と同一の位置には、センサフィルム8を底板5とセンサラバー7との間に挟持して固定するための取付孔8c4が形成され、カーボン線8c1の長手方向の両側には、センサパターン8を底板5に固定するための取付孔8c5が形成されている。
【0044】
センサパターン8は、センサパターンフィルム8cの下面が底板5に当接し、その上にスペーサ8bが重ねられ、その上に上面フィルム8aの下面が当接するように重ねられて、上面フィルム8a、スペーサ8b、センサパターンフィルム8cにそれぞれ形成された取付孔にビスが螺合されて底板5に固着される。
【0045】
固着された状態では、センサパターンフィルム8cに形成された2本のカーボン線8c1が、スペーサ8bに形成された窓8b1の空間を介して上面フィルム8aに形成された銀ペースト8a1と対向する。
【0046】
センサラバー7が押下されない状態では、上面フィルム8aは、スペーサ8bにより形成される空間で離間し、上面フィルム8aの下面に塗布された銀ペースト8a1は、カーボン線8c1とは、接触しない。したがって、この状態では、2本のカーボン線8c1は、銀ペースト8c3により接続されるので、抵抗値は、2本のカーボン線8c1の抵抗値の和である。
【0047】
センサラバー7が押下されると、銀ペースト8c3の方から順次上面フィルム8aが押下されて、スペーサ8bに形成された窓8b1の空間内に上面フィルム8aが撓み込み、上面フィルム8aの下面に塗布された銀ペースト8a1が、2本のカーボン線8c1に接触するようになる。これにより2本のカーボン線8c1が短絡され、その短絡された位置と、銀ペースト8c2との距離が短くなる。2本の引き出し線の間の抵抗値は、この距離が短いほど小さくなるので、センサラバー7が大きく押下されるほど抵抗値は、小さくなる。
【0048】
図5は、フットボード2が、操作されていない状態(a)と、フットボード2が、操作されて踏み込まれた状態(b)とを示す断面図である。フットボード2が操作されていない状態(a)では、引っ張りコイルバネ10の引っ張り力により、軸4と、バネ係止軸3aと、バネ係止軸6aとがほぼ一直線になり、その位置にフットボード2が保持される。 この状態から、フットボード2を操作して位置を変える場合、フットボード2は、回動軸4を中心として回動し、バネ係止軸3aは、回動軸4を中心とする円弧上を動く。この状態では、バネ係止軸3aの円弧上の移動距離に比べ、バネ係止軸3aとバネ係止軸6aとの距離(バネ長さ)の変化は少ない。よって、フットボード2が操作されていない状態付近では、軽くフットボード2を踏み込むだけで、大きい変位が得られる。
【0049】
一方、フットボード2の踏み込み量を大きくすると、徐々に、踏み込む量とバネ係止軸3aとバネ係止軸6aとの距離とが比例するようになり、負荷が大きくなる。言い換えれば、フットボード2が操作されていない状態付近では、フットボード2の単位変位角度当りの負荷の変化は小さく、フットボード2が操作されて踏み込まれるに従って、フットボード2の単位変位角度当りの負荷の変化は大きくなる。
【0050】
この動作は、図8に示す曲線Aのアコースティックバスドラム用のペダル装置の特性に近似しているので、本発明の電子楽器用ペダル装置の操作感は、良好であり、特に、アコースティックバスドラム用のペダル装置の演奏に慣れている人にとっては、演奏しやすい。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態の電子打楽器用ペダル装置1は、フットボード2が操作されない状態では、引っ張りコイルバネ10が、フットボード2の先端を底板5に対して所定の角度で引っ張り、フットボード2が踏み込まれると、引っ張りコイルバネ10が伸張し、復元力が強くなる。よって、フットボード2が操作されていない状態付近では、負荷が軽く、踏み込むに従って重くなるというアコースティックバスドラムの動作に近似し、操作感が良好である。
【0052】
次に、図6を参照して、変形例である第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態を示す電子打楽器用ペダル1の断面図であり、第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
第1の実施形態では、カバー6の上部内側に第2のバネ係止軸6aが備えられ、この第2のバネ係止軸6aに引っ張りコイルバネ10の他端が係止されて、フットボード2に備えられたバネ係止軸3aに引っ張り力を与えるものであったが、第2の実施形態では、カバー6の上部内側に、プーリ21を備え、引っ張りコイルバネ22の下端は、底板5に固着されたバネ係止部5bに係止され、上端は、プーリ21に掛けられたワイヤ23の一端に固着される。ワイヤ23の他端は、フットボード2の先端に備えられたウエイト3に形成された第1の係止軸3aに係止される。
【0054】
プーリ21は、カバー6の上部から垂下された軸受けに設けられた回転軸に軸支され、周囲にワイヤ23が嵌合される溝が形成された円盤状の滑車である。ワイヤ23は、細い鋼線を寄り合わせ柔軟に折り曲げ可能で引っ張り力に耐える線材である。
【0055】
この第2の実施形態においても、フットボード2が操作されていない状態では、引っ張りコイルバネ22によりプーリ21の方向へ第1の係止軸3aを引っ張るのでプーリ21と、第1の係止軸3aと、回動軸4とが一直線上に位置する。
【0056】
フットボード2が踏み込まれた場合は、ワイヤ23の先端が、下方に引っ張られ、引っ張りコイルバネ22の上端は、上方へ伸張される。よって、第1の実施形態と同様に、アコースティックバスドラムのペダル装置と同様の動作を行い、操作感が良好である。
【0057】
次に、図7を参照して、変形例である第3の実施形態について説明する。図7は、第3の実施形態を示す電子打楽器用ペダル1の平面図(a)と、その平面図におけるA−A線での断面図(b)であり、第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
第1の実施形態では、ウエイト3が、フットボード2にネジにより固着されているものとしたが、フットボード2の質量(慣性モーメント)は、演奏者により演奏し易い重さが異なる。第3の実施形態では、フットボード2の長手方向にフットボード2の表面と裏面とを貫通する長穴2aを設け、この長穴2aに補助ウエイト31をネジ32により固着するようにしたものである。長穴2aの表側の周囲には、ネジ32の頭部がフットボード2の上面から突出しないように、段差を設けている。補助ウエイト31は、ウエイト3と同様に鉄などの金属で形成された直方体であり、その直方体の一つの面にネジ32のネジ部が螺合されるメネジが形成されている。また、ネジ32の頭部には、マイナスドライバの先端が嵌め込まれる溝が形成されている。
【0059】
これにより、ドライバでネジ32を緩め、補助ウエイト31を演奏者の演奏し易い位置に移動し、再度ドライバによりネジ32を締めることにより補助ウエイト31を強固に固着することができる。
【0060】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0061】
例えば、上記実施形態では、引っ張りコイルバネ10により、フットボード2をフットボード2の上面に平行な方向へ付勢するものとしたが、板バネを用いてもよい。
【0062】
また、上記第1の実施形態では、フットボード2の所定の位置にネジ止めされたウエイト3により、質量を持たせるものとし、第3の実施形態では、フットボード2に設けた長穴2aの任意の位置に補助ウエイト31を固着できるものとしたが、フットボード2に、複数の補助ウエイトを取り付ける取付穴や取付用メネジなどを設け、演奏者が任意にウエイトをその取付穴や取付用メネジに着脱できるようにしてもよい。これにより、演奏者がより演奏しやすい質量をフットボードに設定することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、引っ張りコイルバネ10の、一端は、バネ係止軸3aまたは6aに係止されるものとしたが、バネ係止軸3aまたは6aのバネの伸張方向の位置を調節できるようにし、演奏者が任意にバネの張力を調整できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態である電子打楽器用ペダル装置の外観斜視図である。
【図2】ペダル装置の平面図(a)と、長手方向の断面図(b)とである。
【図3】ウエイトとセンサとを示す斜視図である。
【図4】センサパターンの構成を示し、(a)は、上面フィルム、(b)は、スペーサ、(c)は、センサパターンフィルムをそれぞれ示す平面図である。
【図5】フットボードが操作されていない状態(a)と、フットボードが操作されて踏み込まれた状態(b)とを示す断面図である。
【図6】第2の実施形態を示す断面図である。
【図7】第3の実施形態を示す平面図(a)と、断面図(b)とである。
【図8】底板とフットボードとの角度と加重との関係を示すグラフである。
【図9】従来技術であるアコースティックバスドラム用ペダル装置の斜視図である。
【図10】従来の電子打楽器用ペダル装置である。
【符号の説明】
【0065】
1 電子打楽器
2 フットボード
3 ウエイト
3a バネ係止軸(第1の係止部)
4 回動軸
5 底板
6 カバー
6a バネ係止軸(第2の係止部)
7 センサラバー(センサの一部、押圧ゴム)
8 センサパターン(センサの一部)
8c1 カーボン線(電極)
10 引っ張りコイルバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
その底板との間に回転軸を備えて回動し、略平面の操作面を有するフットボードと、
そのフットボードに引っ張り力を引加するバネと、
前記フットボードの回動を検出するセンサとを備え、
前記バネは、前記フットボードが操作されていない状態において、前記操作面に略平行な方向であって、その方向が前記底板と所定の角度を成す方向へ引っ張り力を引加し、前記フットボードが操作されて回動することにより張力を増加することを特徴とする電子打楽器用ペダル装置。
【請求項2】
前記フットボードに固着され前記バネの一端を係止する第1の係止部と、
前記底板から所定の高さの位置に固着され、前記バネの他端を係止する第2の係止部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の電子打楽器用ペダル装置。
【請求項3】
前記センサは、前記底板上に形成された2つの電極と、その2つの電極を前記フットボードの回動に応じて短絡させる押圧ゴムとを備え、前記押圧ゴムは、底板とフットボードの操作面とが成す角度に応じて前記2つの電極に接触する面積を連続的に変化することを特徴とする請求項1または2に記載の電子打楽器用ペダル装置。
【請求項4】
前記第1の係止部は、回動軸とは反対側の前記フットボードの一端に備えられ、前記フットボードが操作されることにより前記押圧ゴムを前記電極に押圧することを特徴とする請求項3記載の電子打楽器用ペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−145464(P2008−145464A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328958(P2006−328958)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】