説明

電子数の多い化学発光性アリール置換1,2−ジオキセタン

【課題】電子数の多い化学発光性アリール置換1,2−ジオキセタン化合物を提供する。
【解決手段】該化合物は、分子の発光パターンが極めて高い発光計数をもたらすようにアリール基が適当な電子供与基で多重置換されており、そのためハプテン、分析物、ポリヌクレオチド等の高感度で正確なアッセイが可能となる。このような置換アリール含有1,2−ジオキセタン化合物はイムノアッセイで直接的標識として使用でき、又は適当な離脱基で誘導体化すればエンザイムイムノアッセイ用の基質として使用できる。該化合物の著しい化学発光は、発光反応の時間の正確な制御を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化学発光性ジオキセタン化合物に関する。本発明は特に、アッセイで使用するための、電子数の多い(electron−rich)特定の置換基で置換したアリール基を含む1,2−ジオキセタン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイ、化学アッセイ、核酸アッセイ及び他の化学的/物理的プローブ技術における1,2−ジオキセタンのような化学発光性化合物の使用はよく知られている。例えば、1990年6月5日公開のBronsteinらの米国特許第4,931,223号、1990年6月5日公開のBrooksらの米国特許第4,931,569号、1991年5月7日公開のSchaapらの米国特許第5,013,827号、1991年11月26日公開のSchaapらの米国特許第5,068,339号及び1992年5月12日公開のBronsteinらの米国特許第5,112,960号参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
周知のように、ジオキセタンの安定性及び化学発光は、該過酸化物環への特定置換基の結合によって変化し得る。Zaklikaら,Photochem.Photobiol.,30,35(1979)、Schaapら,J.Amer Chem.Soc.,104,3504(1982)及びHandleyら,Tetrahedron Lett.,3183(1985)参照。これらの文献では、この種の化合物の室温での貯蔵寿命を延ばし且つ安定化ジオキセタンの化学発光分解を改善する方法として、スピロ融合(spiro−fused)多環式アルキレン基を置換し安定化する様々な方法に焦点が当てられた。関心は特に、1,2−ジオキセタンにスピロ融合したアダマンチル基に集中している。このような方法で生成した化合物には、安定した発光に到達するのに、最適期間より長い期間を必要とするという欠点がある。従ってこれらの化合物は、例えばバイオアッセイのように迅速な光放出が重要なアッセイには不適当である。
【0004】
発光分子(luminescer molecule)の活性化速度(kinetics of activation)を必要に応じて正確に制御できる上に、エネルギーを迅速に放出するという重要な特性を有する1,2−ジオキセタンの例は全く知られていない。従って、制御可能な迅速な光の放出を生起する新規のジオキセタンが得られれば、それは有利なことであろう。このような化合物は、種々の分析物のイムノアッセイで、またジオキセタンにトリガリング(triggering)作用を与えて該分子の発光性部分から光を信号として発生させる酵素もしくは他の化学物質を使用するプローブにおいて有用と思われる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、式(I):
【0006】
【化11】

[式中、Ar−OXはX−オキシ基で置換されたアリール基を表す]
で示される化学発光性化合物を提供する。アリール基は更に、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換される。OXは、活性化剤によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる、化学的置換活性基(chemically labile group)である。Rは二つ以上の融合環(fused ring)を有する炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、これはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した10個以下の基で任意に置換され得、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される。式Iの化学発光は、迅速、制御可能且つ高感度の発光カウントを得るために、酵素的又は化学的に誘発する。
【0007】
本発明は、アッセイで使用するための指示試薬も提供する。該指示試薬は、本発明の化学発光性化合物を特異的結合員に結合したものからなる。このようにして形成した結合体は化学発光測定を妨害しない。
【0008】
本発明の実施態様の一つでは、検査試料中に存在し得る分析物の存在を調べるために本発明の化学発光性ジオキセタン化合物を使用する技術認識された(art−recognized)アッセイを提供する。この種の方法の一つは、(a)前記分析物に特異的に結合し測定可能な信号を発生することができる指示試薬であって、本発明の化学発光性化合物に分析物特異的結合員を結合したものからなる指示試薬に検査試料を接触させ、(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして指示試薬から発生した信号を検出することからなる。
【0009】
別の実施態様では、検査試料中に存在し得る分析物の存在を調べる方法が、(a)前記分析物に特異的に結合する酵素結合体であって、酵素を分析物特異的結合員に結合したものからなる酵素結合体に検査試料を接触させ、測定可能な信号を発生することができる本発明ジオキセタン化合物含有指示試薬を加え、(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして指示試薬から発生した信号を検出することからなる。
【0010】
本発明は、検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイも提供する。この方法は、(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、指示試薬/分析物特異的結合員、及び/又は分析物/分析物特異的結合員からなる複合体の形成に十分な時間及び条件下で、分析物特異的結合員と、(i)前記分析物もしくは前記分析物の誘導体及び(ii)本発明の化学発光性化合物を含み測定可能な信号を発生することができる指示試薬とに接触させ、検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した固相への指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中に存在する分析物の存在を決定することからなる。
【0011】
更に別の実施態様では、検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイであって、(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物特異的結合員と、酵素及び前記分析物もしくは前記分析物の誘導体を含む酵素結合体とに接触させ、指示試薬/分析物特異的結合員−酵素結合体、及び/又は分析物/分析物特異的結合員−酵素結合体からなる複合体の形成に十分な時間及び条件下で、測定可能な信号を発生することができる本発明ジオキセタン化合物含有指示試薬を加え、(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中に存在する分析物の存在を決定することからなる競争アッセイを提供する。
【0012】
本発明の別の実施態様では、検査試料中に存在し得る分析物の存在及び量を決定するための競争アッセイであって、(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、検査試料と固相、及び/又は指示試薬と固相との混合物の形成に十分な時間及び条件下で、分析物特異的結合員が結合している固相と、測定可能な信号を発生することができ(i)前記分析物もしくは前記分析物の誘導体及び(ii)本発明のジオキセタン化合物を含む指示試薬とに接触させ、(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した固相への指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中に存在する分析物の存在を決定することからなる競争アッセイを提供する。
【0013】
本発明は、検査試料中で所期の分析物を検出するためのテストキットも提供する。該テストキットは、本発明の化学発光性ジオキセタン化合物を入れた容器を含む。該テストキットは検出可能な化学発光信号を発生する手段も含み、該手段が酵素又は化学物質である。
【0014】
図面の簡単な説明
第1図Aは、THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【0015】
第1図Bは、THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによってトリガリングされたTHF中4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の検出量を示している。
【0016】
第2図は、アルカリホスファターゼによってトリガリングされた4−(3−ホスフェート−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]、テトラエチルアンモニウム塩の化学発光経時プロフィルである。
【0017】
第3図は、THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【0018】
第4図は、THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【0019】
第5図は、THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる対照化合物4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【0020】
詳細な説明
我々は期せずして、1,2−ジオキセタンのアリール基上で水素にとって代わる電子供与基の置換が、本発明のジオキセタン化合物の発光パターンを激変させることを発見した。このようなパターンは、テトラヒドロフラン中1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドでのトリガリング後に、本発明の化合物の5×10−18モル検査試料から0.1〜0.5秒以内で17,000カウントという値(光全体の95%以上を占める)が検出されることにより実証される(第1図A参照)
【0021】
本発明の代表的な電子数の多いアリール置換ジオキセタンの化学発光プロフィルを、未置換アリールを有する対照ジオキセタン化合物と比較した。公知技術の化合物4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の発光(ルミネセンス)の経時的経過を第5図に示す。該対照は、0〜5秒の発光で広い発光曲線を示している。これに対し、本発明のジオキセタン化合物は極めて短い発光曲線を有する。本発明の化合物の最大発光は、図示のように、いずれの場合も約0.5秒であった。
【0022】
発光反応の時間(タイミング)を正確に制御できる高感度の正確なアッセイを実現するための極めて大きい発光カウントは、式(I):
【0023】
【化12】

[式中、Ar−OXはX−オキシ基で置換されたアリール基を表す]の構造を有するジオキセタンを使用することによって得られる。アリール基は更に、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換される。OXは、活性化剤によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基である。Rは二つ以上の融合環を有する炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、これはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した10個以下の基で任意に置換され、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される。
【0024】
より好ましくは、本発明のジオキセタン化合物は式(II):
【0025】
【化13】

[式中、R、R及びXは前述の定義に従い、RはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ及びアリール−C〜C10アルキルの中から選択した4個以下の基を表す]の構造を有する。
【0026】
より好ましい実施態様では、式IIのRが置換又は未置換のアダマンチル又はビシクロ[2.2.1]ヘプチルであり、Rが位置4にあってC〜C10アルキル又はC〜C10アルコキシを表す。最も好ましい実施態様では、Rがメチル又はメトキシである。
【0027】
本発明の別の好ましい実施態様は、式(III):
【0028】
【化14】

[式中、Rは水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロ−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した0〜9個の基を表し、Rは水素、C〜C10アルキル又はC〜C10アルコキシであり、R、R及びOXは前述の意味を表す]の化合物によって表される。より好ましい実施態様では、Rが位置5にあってメチル又はメトキシである。
【0029】
本発明の更に別の好ましい実施態様は、式(IV):
【0030】
【化15】

によって表される。
【0031】
より好ましくは、式IVのRがC〜C10アルキル又はC〜C10アルコキシであり、Rがメチル、−(CHOH又は−(CHCHO[式中nは0〜9である]であり、R及びOXが前述の意味を表す。最も好ましくは、Rが位置4にあってメチル又はメトキシを表す。
【0032】
本発明の別の好ましい実施態様は、式(V):
【0033】
【化16】

[式中、Rは水素、C〜C10アルキル又はC〜C10アルコキシであり、R及びXは前述の意味を表す]によって表される。最も好ましくは、Rが位置4にあってメチル又はメトキシを表す。
【0034】
一般的には、本発明のアダマンタン含有又はノルボルナン含有ジオキセタンは下記の反応式I及びIIに示すように合成する。
【0035】
反応式Iでは、4個以下の電子供与基で置換されていてもよい3−ヒドロキシ安息香酸のフェノール基を、非限定的ではあるが好ましくはtert−ブチルジメチルシリルエーテルのように選択的に保護する。遊離酸をアルコール(ROH)でエステル化すると、対応するエステルが得られる。該エステルを、任意に置換した二環式ケトン、例えばショウノウ、又は三環式ケトン、例えばアダマンタノンに結合した後で、米国特許第5,013,827号に記載のように光酸化して所望の1,2−ジオキセタンを生成する。
【0036】
あるいは、エノールエーテル中の保護基を除去し、遊離したフェノール基を米国特許第5,013,827号に記載のようにホスホリル化してもよい。このエノールホスフェートを光酸化すれば、アルカリホスファターゼ等のような酵素によってトリガリングできるジオキセタンが得られる。反応式Iは、ショウノウ部分とエノールエーテルとの結合を示している。アダマンタノンとの結合にも類似の条件が適用され、それも本発明の範囲内に包含される。
【0037】
架橋ジオキセタン化合物の一般的生成方法は反応式IIに示す通りである。反応式IIでは、アルコール基を図示の二環式系のような多環式部分内に構築すると結合が分子内結合となり、該反応によって環式エノールエーテルが生成される。結合した化合物を光酸化すれば、反応式IIに示すような化学的開裂又は酵素開裂可能なジオキセタンが生成される。
【0038】
【化17】


【0039】
定義
本明細書で使用する下記の用語は下記の意味を有する:
「OXで置換されたアリール」とは、分解して光エネルギーを発生する不安定な1,2−ジオキセタン誘導体を形成すべく活性化剤によって除去し得るOX基で置換したフェニル、ビフェニル、9,10−ジヒドロフェナントリル、ナフチル、アントリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、フェナントリル、ピレニル、クマリンリニル、カルボスチリル、アクリジニル、フタリル又はこれらの誘導体である。
【0040】
「C〜C10アルキル」は、炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の分枝鎖又は直鎖アルキル基、例えばメチル、n−ブチル又はデシルを意味する。
【0041】
「C〜C10アルコキシ」は、アルキル部分が炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の分枝鎖又は直鎖であるアルコキシ基、例えばメトキシ又はエトキシを意味する。
【0042】
「ハロ−C〜C10アルキル」は、アルキル部分が炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の分枝鎖又は直鎖であるハロアルキル基、例えばヨードメチルを意味する。
【0043】
「ヒドロキシ−C〜C10アルキル」は、アルキル部分が炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の分枝鎖又は直鎖であるヒドロキシアルキル基、例えばヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルを意味する。
【0044】
「アルデヒド−C〜C10アルキル」は、アルキル部分が炭素原子数1〜10の飽和又は不飽和の分枝鎖又は直鎖であるアルデヒド基、例えばヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルを意味する。
【0045】
「炭素原子数6〜30の多環式アルキレン」とは、ジオキセタン環炭素の3−炭素に結合した、安定性を与える融合又は非融合シクロアルキル、シクロアルキリデン又はポリシクロアルキリデン基、例えばアダマンタン、カンホラン、ノルボルナン、ペンタレン等及びこれらの誘導体を意味する。Rで表される発蛍光団部分の融合多環式環部分は、融合多環式芳香族又は非芳香族複素環発蛍光団化合物、例えばベンゾ[b]チオフェン、ナフト[2,3−b]チオフェン、チアントレン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナントロリン、プリン、4H−キノリジン、フタラジン、ナフチリジン、インドール、インドリジン、クロマン、イソクロマン、インドリン、イソインドリン等の残基を前述の非置換活性置換基のうちの一つ以上で置換したもの又は未置換のものであってもよい。
【0046】
「化学的置換活性基」は、酵素開裂又は化学開裂時にアニオンを形成することができる基である。化学的置換活性基の非限定的具体例としては、ヒドロキシル、アルキルもしくはアリールエステル、無機オキシ酸塩、アルキルもしくはアリールシリルオキシ、及び酸素−ピラノシドが挙げられる。
【0047】
「指示試薬」は、本発明の化学発光性ジオキセタン化合物を後述のような特異的結合員に結合することによって形成した結合体である。結合は、アミン、アルデヒド、スルフヒドリル、マレイミド、カルボン酸基、ヒドロキシル基等を介して生起させ得る。
【0048】
「酵素結合体」は、酵素を後述のような特異的結合員又は分析物もしくは該分析物の誘導体に結合することによって形成した結合体である。結合は、アミド、エステル、チオエーテル、シッフ塩基、置換アミン、ジスルフィド等を介して生起させ得る。
【0049】
「特異的結合員」は、特異的結合対の構成員、即ち、一方の分子が化学的又は物理的手段を介してもう一方の分子に特異的に結合する二つの異なる分子である。従って、一般的なイムノアッセイの抗原及び抗体特異的結合対の他に、ビオチン及びアビジン、炭水化物及びレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター分子及びレセプター分子、補因子及び酵素、酵素阻害物質及び酵素等が特異的結合対として挙げられる。また、特異的結合対は、元の特異的結合員の類似体である構成員、例えば分析物類似体を含み得る。免疫反応性特異的結合員としては、抗原、抗原フラグメント、モノクローナル及びポリクローナル抗体及び抗体フラグメント、並びにこれらの複合体、例えば組換えDNA法で形成したものが挙げられる。抗原及び抗原フラグメントとしては、誘導又は産生でき且つアッセイで有用である任意の抗原及び抗原フラグメント、例えばウイルス溶解物及び天然溶解物、合成ペプチド、組換えタンパク質等が挙げられる。
【0050】
「ポリヌクレオチド」は、多数のヌクレオチドのポリマー、例えばRNA及びDNAである。
【0051】
「分析物(analyte)」は、検査試料中に存在し得る検出すべき物質である。分析物は、それに対する天然の特異的結合員(例えば抗体)が存在するか、又はそれに対する特異的結合員の製造が可能な任意の物質であり得る。従って分析物は、アッセイで一つ以上の結合員に結合し得る物質である。分析物は、天然の特異的結合相手(対)を使用することにより、特異的結合対の構成員として検出できる。例えば、ビタミンB12を決定する場合は内因子タンパク質を特異的結合対の構成員として使用し、又は炭水化物の決定の場合にはレクチンを特異的結合対の構成員として使用する。分析物としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、治療目的で投与されたもの及び不法な目的で投与されたものを含む薬剤、細菌、ウイルス並びに代謝物又はこれらの物質に対する抗体が挙げられる。
【0052】
「分析物特異的結合員」は、分析物に特異的に結合する抗体又はレセプターのような結合員を意味する。一般的には、抗原、抗体、ハプテン、ポリヌクレオチド、炭水化物及び低分子量分析物を指す。
【0053】
「ハプテン」は、抗体に結合することができるが、担体タンパク質に結合しない限り抗体形成を誘起することができない、部分的抗原又は非タンパク質結合員を意味する。
【0054】
「固相」は、不溶性であるか、又は後続の反応によって不溶性にされる任意の物質を意味する。
【0055】
「捕捉試薬(capture reagent)」は、サンドイッチアッセイの場合のように分析物に対して特異的であるか、競争アッセイの場合のように指示試薬もしくは分析物に対して特異的であるか、又は間接的アッセイの場合のように、それ自体が分析物に対して特異的である補助的特異的結合員に対して特異的である非標識特異的結合員を意味する。捕捉試薬は、アッセイを実施する前又はアッセイの実施中に、固相物質に直接的又は間接的に結合し得、それによって検査試料からの固定化複合体の分離を可能にする。
【0056】
アッセイの全般的説明
本発明の化学発光性アリール置換1,2−ジオキセタン化合物は、検査試料中の分析物を検出するためのアッセイを含む種々のアッセイで有用であり、これらのアッセイで有用なテストキットの構成部品として有用であり、またこの種の使用及びこの種の使用を達成するための手段に有用である。
【0057】
一般的には、本発明のジオキセタン化合物を用いる技術認識されたアッセイは次のように実施し得る。分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、当該分析物に対する特異的結合員に結合した酵素を含む緩衝溶液と接触させて混合物を形成する。この混合物を、分析物が分析物特異的結合員−酵素化合物に結合して分析物/分析物特異的結合員−酵素複合体を形成するのに十分な時間及び条件下でインキュベートする。洗浄後、分析物特異的結合員−酵素化合物の酵素部分によって開裂できる基を有するジオキセタンを前記混合物に添加する。酵素が酵素開裂可能な基を開裂し、ジオキセタンを二つのカルボニル化合物(例えばエステル、ケトン又はアルデヒド)に分解する。その結果、酵素開裂可能な基が結合していた発色団が励起され、光を発する。発光を、検査試料中の分析物の存在を示すものとして検出する(例えばキュベット、カメラのルミノメーター(luminometer)の光感フィルム、光電池又は光電子倍増管を使用)。分析物の濃度を決定するために発光強度を測定する。
【0058】
このアッセイはイムノアッセイとして実施するのが好ましいが、本発明は免疫反応アッセイには限定されない。特異的結合員を使用する任意のアッセイを実施し得る。特異的結合対の構成員として、前述のような分析物は天然の特異的結合相手(対)を用いて検出し得る。例えば、ビタミンB12を決定する場合は、捕捉試薬及び/又は指示試薬中で内因子タンパク質を使用し、又は炭水化物を決定する場合は、捕捉試薬及び/又は指示試薬中でレクチンを使用する。分析物としては、ハプテン、ポリヌクレオチド、低分子量分析物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、治療目的で投与されたもの及び不法な目的で投与されたものを含む薬剤、細菌、ウイルス並びにこれらの物質の代謝物もしくはこれらの物質のうちのいずれかに対する抗体が挙げられる。
【0059】
検査試料は、哺乳動物の体液、例えば全血又は全血成分、即ち赤血球、リンパ球もしくはリンパ球サブセット調製物を含む白血球、血小板、血清及び血漿;腹水;唾液;便;脳脊髄液;尿;痰;気管吸引液;並びに所期の分析物を含み得る又は含んでいる疑いのある他の身体構成成分であり得る。検査試料は、培養液上清又は培養細胞懸濁液であってもよい。本発明の方法で体液を抗原分析物又は抗体分析物についてアッセイし得る哺乳動物としては、ヒト及び霊長類、並びに所期の分析物を含んでいる疑いのある他の哺乳動物が挙げられる。また、非哺乳動物の生物学的液体検査試料及び非生物学的液体検査試料も使用し得る。
【0060】
指示試薬は、本発明の化学発光性ジオキセタンである標識に結合した分析物の特異的結合員を含む。指示試薬は、検出可能な信号を、検査試料中の分析物の量に関連したレベルで発生する。本発明では、一種類以上の分析物を同時にアッセイすることもできる。例えば、指示試薬は、異なる分析物の特異的結合員を含む一方で、検出可能な信号を発生することができる同じ信号発生ジオキセタン化合物に結合できる。指示試薬は通常、固相物質上に捕捉された後で検出又は測定される。本発明では、指示試薬によって発生した信号全体が、検査試料中の分析物のうちの一つ以上の存在を示す。本発明の化学発光性ジオキセタン化合物のうち任意のものを信号発生化合物として使用し得る。好ましい標識としては下記のものが挙げられる:
【0061】
【化18】

に対応する4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン];
【0062】
【化19】

に対応する4−(3−ホスフェート−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン],テトラ−エチルアンモニウム塩;
【0063】
【化20】

に対応する4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)};
【0064】
【化21】

に対応する4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)};
【0065】
【化22】

に対応する4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4(−ヒドロキシブチル)オキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン];
【0066】
【化23】

に対応する4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ)フェニルスピロ){4,1’−(エポキシメタノ)−1,2−ジオキセタン−3,2’−(7’,7’−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)};及び
【0067】
【化24】

に対応する4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}。
【0068】
種々の発光性化合物を、各指示試薬毎に一種類ずつ、信号発生化合物として使用することもでき、その場合は種々の波長又は種々の時点での読取りにより検出を決定し得る。例えば、本発明のジオキセタン化合物を、例えば米国特許第5,112,960号及び米国特許第4,931,223号に記載のような、作用がより遅い当業者に公知の標識と組合わせて使用することもできる。異なる時点で信号を発生することができる二種類以上の化学発光性化合物を使用する方法は、共有所有権下にあり本明細書に参考として包含される米国特許同時係属出願第636,038号に開示されている。
【0069】
他にも、視覚的に検出し得る手段を用いて検査試料中の特定物質の存在又は濃度を決定する様々な方法が存在する。前記ジオキセタンはこれらのアッセイのいずれでも使用できる。この種のアッセイの具体例としては、抗体もしくは抗原、例えばβ−hCGを検出するためのイムノアッセイ、エンザイムアッセイ、例えばカリウムもしくはナトリウムイオンを検出するための化学アッセイ、並びに例えばウイルス(例えばHIV−Iもしくはサイトメガロウイルス)、細菌(例えば大腸菌)及び特定の細胞機能(例えばレセプター結合部位)を検出するための核酸アッセイが挙げられる。
【0070】
指示試薬の特異的結合員は、特異的結合対の抗原員もしくは抗体員のいずれかであるに加え、任意の特異的結合対の構成員、例えばビオチン又はアビジン、炭水化物又はレクチン、相補ヌクレオチド配列、エフェクター又はレセプター分子、酵素補因子又は酵素、酵素阻害物質又は酵素等であり得る。免疫反応性特異的結合員は、サンドイッチアッセイの場合のように分析物に結合するか、競争アッセイの場合のように捕捉試薬に結合するか、又は間接的アッセイの場合のように補助的特異的結合員に結合することができる抗体、抗原、又は抗体/抗原複合体であり得る。抗体を使用する時はその抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、組換え抗体、これらの混合物又は抗体と別の特異的結合員との混合物であってよい。この種の抗体の製造及び特異的結合員としての使用適性は当業者によく知られている。
【0071】
本発明の捕捉試薬は、少なくとも一種類の固相に結合しており且つ無標識である所期の分析物の各々について特異的結合員を含む。該捕捉試薬はサンドイッチアッセイの場合のように分析物に対して特異的であるが、競争アッセイでは指示試薬もしくは分析物に対して特異的であり得、又は間接アッセイの場合のように、それ自体が分析物に対して特異的である補助的特異的結合員に対して特異的であり得る。該捕捉試薬は、アッセイの実施前又はアッセイの実施中に固相物質に直接的又は間接的に結合し得、それによって検査試料からの固定化複合体の分離を可能にする。この結合は、例えば吸収又は共有結合により固相を特異的結合員でコーティングすることにより達成し得る。コーティング方法及び他の公知の結合手段は当業者によく知られている。
【0072】
本発明の捕捉試薬の特異的結合員は、別の分子と特異的に結合できる任意の分子であってよい。該捕捉試薬の特異的結合員は、抗体、抗原又は抗体/抗原複合体のような免疫反応性化合物であり得る。抗体を使用する時は、その抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、組換え抗体、これらの混合物、又は抗体と別の特異的結合員との混合物であってよい。
【0073】
固相は絶対的に重要なものではなく、当業者によって選択され得る。例えば、ラテックス粒子、微粒子、磁性もしくは非磁性ビーズ、メンブラン、プラスチック管、反応トレーのウェルの壁、ガラスもしくはシリコンのチップ及びタンニン酸処理ヒツジ赤血球はいずれも適当な具体例である。捕捉試薬を固相上に固定する適当な方法としては、イオン結合、疎水結合、共有結合等の相互作用が挙げられる。また、共有所有権下にあり本明細書に参考として包含される1990年8月29日出願の同時係属米国特許出願第574,821号によって例示されているように、本発明ではその範囲内で複数の固相を組み合わせることも可能である。アッセイで複数の固相を組み合わせて使用する場合は、信号の定量中に総ての固相が存在するようにし、それによって信号検出のために固相を分離する必要を省略する。
【0074】
固相は、捕捉試薬を引き付け固定する能力を本来備えているものを選択し得る。あるいは、捕捉試薬を引き付け固定する能力を備えた付加的レセプターを保持する固相を使用してもよい。付加的レセプターとしては、捕捉試薬又は捕捉試薬に結合した帯電物質と反対の電荷を有する帯電物質が挙げられる。あるいは、レセプター分子は、固相上に固定(固相に結合)され且つ特異的結合反応を介して捕捉試薬を固定する能力を有する任意の特異的結合員であってもよい。レセプター分子は、アッセイの実施前又はアッセイの実施中に、捕捉試薬を固相物質に間接的に結合させることができる。従って固相は、試験管、微量滴定ウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ及び他の当業者に公知の構造体のプラスチック、誘導体化プラスチック、磁性もしくは非磁性金属、ガラス又はシリコンの表面であり得る。
【0075】
本発明では、固相は、検出抗体によるアクセスを可能にするのに十分な多孔性と、抗原との結合に適当な表面親和性とを有する、任意の適当な多孔質材料からなりる。通常はミクロ多孔質構造が好ましいが、水和状態でゲル構造を有する物質を使用してもよい。この種の有用な固体支持体としては、天然の高分子炭水化物、並びにこれらを合成的に改質、架橋又は置換した誘導体、例えば寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換及び架橋グアルゴム、セルロースエステル、特に硝酸及びカルボン酸とのエステル、混合セルロースエステル及びセルロースエーテル;窒素含有天然ポリマー、例えばタンパク質及び誘導体、例えば架橋又は改質ゼラチン;天然炭化水素ポリマー、例えばラテックス及びゴム;適当な多孔質構造を有するように製造し得る合成ポリマー、例えばビニルポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ポリビニル、酢酸ポリビニル及びその部分的加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、前記重縮合物のコポリマー及びターポリマー、例えばポリエステル、ポリアミド及び他のポリマー、例えばポリウレタン又はポリエポキシド;多孔質無機物質、例えばアルカリ土類金属及びマグネシウムの硫酸塩又は炭酸塩、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩;アルミニウム又はケイ素の酸化物又は水和物、例えばクレー、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲル又はガラス(これらの物質はフィルターとして前記ポリマー物質と共に使用し得る);並びに前記物質類の混合物又はコポリマー、例えば先在天然ポリマー上で合成ポリマーの重合を開始することによって得られるグラフトコポリマーが挙げられる。これらの物質はいずれも適当な形状、例えばフィルム、シートもしくはプレートの形状で使用し得、又は紙、ガラス、プラスチックフィルムもしくは布のような適当な不活性担体にコーティングするか、結合させるか、又は積層させ得る。
【0076】
ニトロセルロースの多孔質構造は、モノクローナル抗体を含めた広範囲の試薬に対して優れた吸収性及び吸着性を示す。ナイロンも類似の特性を有し、やはり適当な物質である。
【0077】
本明細書に記載の前述のような多孔質固体支持体は、厚さ約0.01〜0.5mm、好ましくは約0.1mmのシートの形状を有するのが好ましい。孔径は広範囲に及び得、好ましくは約0.025〜15ミクロン、特に約0.15〜15ミクロンである。この種の支持体の表面は、支持体への抗原又は抗体の共有結合を生起させる化学的プロセスによって活性化し得る。しかしながら通常は、まだ十分に解明されていない疎水力による多孔性物質の吸着により抗原及び抗体の付可逆的結合が得られる。
【0078】
流動(flow−through)アッセイ装置用の好ましい固相材料としては、多孔質ファイバーグラス材料又は他の繊維マトリクス材料のような濾紙が挙げられる。この種の材料の厚さは決定的に重要なものではなく、通常はアッセイする検査試料又は分析物の特性、例えば検査試料の流動性に基づいて選択すべきものである。
【0079】
固相の本来の電荷を変化又は増加させるために、帯電物質を固相材料に直接コーティングするか、又は微粒子にコーティングし、該微粒子を固相支持材料で保持することもできる。あるいは、微粒子をカラム内に保持するかもしくは可溶性試薬と検査試料との混合物中に懸濁して固相として使用することもでき、又は粒子自体を固相支持材料で保持し固定することもできる。「保持し固定する」という表現は、支持材料の表面もしくは内部の粒子が支持体材料中の他の位置に実質的に移動できないことを意味する。粒子は当業者が任意の適当な種類の粒状物質から選択し得、具体例としてはポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート又は類似の物質からなるものが挙げられる。粒子の大きさは決定的に重要なものではないが、粒子の平均直径は、使用する支持材料の平均孔径より小さいことが望ましい。他の種々の固相を使用する実施態様も本発明の範囲内に包含される。例えば、共有所有権下にあり本明細書に参考として包含される欧州特許公開第0326100に対応する同時係属米国特許出願第150,278号及び米国特許出願第375,025号(欧州特許公開第0406473号)に記載されている、負の電荷をもつポリマーとの固定化可能反応複合体を固定するためのイオン捕捉処理(ion capture procedures)を、高速溶解相免疫化学反応(fast solution−phase immunochemical reaction)の生起のために本発明で使用し得る。負の電荷を有するポリアニオン/免疫複合体と予め処理した正の電荷を有する多孔性マトリクスとの間のイオン相互作用により、固定化可能な免疫複合体を反応混合物の残りから分離し、前述の種々の信号発生システム、例えば共有所有権下にあり本明細書に参考として包含される欧州特許公開第0273,115号に対応する同時係属米国特許出願第921,979号に記載のような化学発光信号測定によって検出する。
【0080】
本発明は、本明細書に記載の新規の化合物を使用するホモジーニアス及びヘテロジーニアスアッセイを提供する。本明細書に記載の多くのアッセイは固相を使用するが、これらのアッセイの多くを実施するのに固相は必要とされない。本発明はサンドイッチアッセイ及び競争アッセイも提供する。例えば、検査試料中に存在し得る分析物の存在を調べるために本発明の化学発光性ジオキセタン化合物を使用する、技術認識されたアッセイを提供する。この種の方法の一つは、(a)前記分析物に特異的に結合し測定可能な信号を発生することができる指示試薬であって、本発明の化学発光性化合物に結合した分析物特異的結合員からなる指示試薬に検査試料を接触させ、(b)前記指示試薬から発生した信号を検査試料中の分析物の存在を示すものとして検出することからなる。
【0081】
検査試料中に存在し得る分析物の存在を決定するための別の方法は、(a)前記分析物に特異的に結合する酵素結合体であって、分析物特異的結合員に結合した酵素からなる酵素結合体に検査試料を接触させ、本発明のジオキセタン化合物を含み測定可能な信号を発生することができる指示試薬を加え、(b)前記指示試薬から発生した信号を検査試料中の分析物の存在を示すものとして検出することからなる。
【0082】
検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイも本発明の範囲内に包含されるとみなされる。この種の方法の一つは、(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物特異的結合員と、測定可能な信号を発生することができ(i)前記分析物もしくはその誘導体及び(ii)本発明の化学発光性化合物を含む指示試薬とに接触させ、検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した固相への指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなる。
【0083】
別の実施態様では、検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイであって、(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物特異的結合員と、酵素及び前記分析物もしくはその誘導体を含む酵素結合体とに接触させ、指示試薬/分析物特異的結合員−酵素結合体及び/又は分析物/分析物特異的結合員−酵素結合体複合体を形成するのに十分な時間及び条件で、本発明のジオキセタン化合物を含み測定可能な信号を発生することができる指示試薬を加え、(c)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性試料から発生した信号と比べた指示試薬の結合の減少を検出することにより検査試料中の分析物の存在を決定することからなる競争アッセイを提供する。
【0084】
本発明の更に別の実施態様では、検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競合アッセイが、(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、検査試料と固相及び/又は指示試薬と固相との混合物を形成するのに十分な時間及び条件下で、分析物特異的結合員が結合した固相と、測定可能な信号を発生することができ(i)前記分析物もしくはその誘導体及び(ii)本発明のジオキセタン化合物を含む指示試薬とに接触させ、(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性試料から発生した信号と比較した指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなる。
【0085】
本発明は、検査試料中の所期の分析物を検出するためのテトスキットも提供する。該テトスキットは、本発明の化学発光性ジオキセタン化合物を入れた容器を含む。該テトスキットは更に、検出可能な化学発光信号を発生させる手段も含み、該手段が酵素又は化学物質である。
【0086】
また、本発明の方法は、固相が微粒子からなる自動又は半自動システムを含む微粒子技術使用システムでの使用に適合させることができる。前記システムとしては、公開済み欧州特許出願EP 0 425 633号及びEP 0 425 633号にそれぞれ対応する係属米国特許出願第426,651号及び米国特許第5,089,424号、並びに米国特許第5,006,309号に記載のものが挙げられる。これらの特許明細書は総て共有所有権下にあり、本明細書に参考として包含される。微粒子を固相として使用すれば、複数の異なる分析物を検査し得る。例えば、一種類以上の分析物を各微粒子に結合し得る。又は、一種類の分析物を一つの微粒子に結合し、個々に結合した異なる分析物を有する微粒子を組合わせてどのアッセイでも使用可能な微粒子の混合物もしくは「カクテル」を形成することにより、一種類以上の分析物を検出し得る。
【0087】
本発明のアッセイフォーマットは他にも色々考えられる。例えば、分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物の分析物特異的結合員が結合している固相と接触させる。特異的結合員は分析物を固相に結合するための捕捉試薬として機能する。特異的結合員は、免疫反応体の場合には、抗体、抗原又はこれらの複合体であり得る。前記混合物を結合反応の生起に十分な時間及び条件下でインキュベートする。分析物が検査試料中に存在していれば、このインキュベーションの結果、捕捉試薬/分析物複合体が形成される。次いで、分析物指示試薬を前記複合体と接触させる。分析物指示試薬は、信号を発生する本発明のジオキセタン化合物で標識した所期の分析物の特異的結合員からなる。この混合物を、捕捉試薬/第一分析物/指示試薬複合体の形成に十分な時間及び条件下でインキュベートする。固相上に形成された複合体に関連して発生した信号を検査試料中の分析物の存在を示すものとして検出することにより、分析物の存在を決定する。標識は、信号の発生に使用した標識の化学発光の測定によって検出し得る。
【0088】
別のアッセイフォーマットでは、所期の分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、第一分析物の分析物特異的結合員が結合している固相と、第二分析物の第一の特異的結合員が結合員している固相とに同時に接触させて混合物を形成する。特異的結合員は分析物を固相に結合させるための捕捉試薬として機能する。特異的結合員は、免疫反応体の場合には、所期の各分析物に対して特異的な抗体、抗原又はこれらの複合体であってよい。特異的結合員が抗体の場合、該結合員はモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、抗体フラグメント、組換え抗体、及びこれらの混合物、又は抗体と別の特異的結合員との混合物であってよい。前記混合物を結合反応の生起に十分な時間及び条件下でインキュベートする。このインキュベーションの結果、第一分析物が検査試料中に存在していれば第一分析物の捕捉試薬/第一分析物複合体が形成され、及び/又は第二分析物が検査試料中に存在していれば第二分析物の捕捉試薬/第二分析物複合体が形成される。次いで、各分析物の指示試薬を前記複合体と接触させる。第一分析物の指示試薬は、本発明の信号発生ジオキセタン化合物で標識した所期の第一分析物の特異的結合員からなる。第二分析物の指示試薬は、第一分析物の指示試薬と同じ信号発生化合物で標識した所期の第二分析物の特異的結合員からなる。このようにして、第二の混合物が形成される。この第二の混合物を、捕捉試薬/第一分析物/指示試薬複合体、及び/又は捕捉試薬/第二分析物/指示試薬複合体の形成に十分な時間及び条件下でインキュベートする。いずれかの分析物の存在は、検査試料中の一種類以上の分析物の存在を示すものとして、固相上に形成された複合体に関連して発生した信号の検出により決定される。標識は、信号の発生に使用した標識の化学発光測定によって検出し得る。
【0089】
捕捉試薬は同一の固相に結合し得、又は複数の異なる固相に結合し得る。総ての捕捉試薬を同一の固相に結合するか、各捕捉試薬を別個の固相に結合するか、又は複数の捕捉試薬を組合わせて別個の固相に結合し得る。例えば、微粒子を固相として選択した場合は、別個の微粒子に一種類以上の捕捉試薬を結合し得る。微粒子(固相)の混合物を使用して、検査試料中に存在し得る種々の分析物を前記微粒子混合物により捕捉することもできる。この種のアッセイでは、分析物の検出を最適化するために、種々の比率の捕捉試薬を固相に結合して使用し得る。
【0090】
更に別のアッセイフォーマットの具体例では、所期の分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、第一分析物の第一の特異的結合員及び第二分析物の第一の特異的結合員が結合した第一固相と、信号発生化合物で標識した第一分析物の特異的結合員からなる第一分析物指示試薬と、信号発生化合物で標識した第二分析物の特異的結合員からなる第二分析物指示試薬とに同時に接触させて、混合物を形成する。特異的結合員は分析物を固相に結合させる捕捉試薬として機能する。特異的結合員は、免疫反応体の場合には、所期の各分析物に対して特異的な抗体、抗原、又はこれらの混合物であり得る。特異的結合員が抗体の場合、該結合員はモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、抗体フラグメント、組換え抗体及びこれらの混合物、又は抗体と別の特異的結合員との混合物であり得る。指示試薬は、信号発生化合物で標識した所期の第一及び第二分析物の特異的結合員からなる。前記混合物を結合反応の生起に十分な時間及び条件下でインキュベートする。このインキュベーションの結果、第一又は第二分析物のいずれか又は両方が検査試料中に存在していれば、第一分析物の捕捉試薬/第一分析物/指示試薬複合体、及び/又は第二分析物の捕捉試薬/第二分析物/指示試薬複合体が形成される。いずれかの分析物の存在は、検査試料中の第一分析物及び/又は第二分析物の存在を示すものとして、いずれか又は両方の固相上に形成された複合体に関連して発生した信号の検出により決定される。指示試薬が信号発生化合物(標識)として酵素を使用する場合には、信号を視覚的に検出するか、又はルミノメーターを用いて分光光度法により測定し得る。ルミノメーターは、MGM Instruments,Inc.Hamade,Ct.06415及び他の製造業者から入手し得る。該アッセイは、ハプテン−抗ハプテンシステムの使用も含み得、その場合は指示試薬がビオチンのようなハプテンも含み得る。アッセイのためのビオチン/抗ビオチンシステムの使用は、共有所有権下にあり本明細書に参考として包含される、公開済み欧州特許出願第0160900号(1985年11月13日公開)に対応する同時係属米国特許出願第687,785号に開示されている。
【0091】
本発明のアッセイは、信頼できる結果を得るために、陽性及び陰性対照を含み得る。陰性試薬対照としては、捕捉試薬が結合していないブランク固相を使用し得る。陽性対照としては、別個に検査される各分析物毎の陽性対照、並びにアッセイで検出すべき総ての分析物の存在が決定される組合わせ陽性対照(combined positive conrol)を使用し得る。
【0092】
本発明では、本発明のジオキセタン化合物と公知の増幅技術とを用いて、分析物のポリヌクレオチド即ちDNA及び/又はRNA配列をアッセイすることも可能である。
【0093】
例えば、米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号は、PCRを用いてDNA配列を増幅する方法を教示している。これら二つの特許明細書に教示されているプロトコル、並びに市販のパッケージ挿入物Gene−Amp(登録商標)キット(Document No.55635−6/89,Perkin−Elmer/Cetus,Emeryville,CA)に記載されているような方法は、現在多くの分子生物学研究所の標準的方法となっている。
【0094】
PCRでは、二つの相補的ポリヌクレオチド鎖を、二つのオリゴヌクレオチドプライマーで、各プライマーの延長産物が各核酸鎖に対して相補的に合成されるように処理することにより増幅する。プライマーは、一方のプライマーの延長産物が鋳型から分離されると、一方のプライマーの延長産物がもう一方のプライマーの延長産物の合成鋳型を形成することになるように選択する。鋳型からのプライマー延長産物を変性し、同一鋳型で産生された一本鎖分子を処理して再アニーリングし、プライマーに別の延長産物を形成させるサイクルによって、連鎖反応が維持される。このサイクルは、標的核酸セグメントが検出可能な濃度まで増加するのに必要な回数だけ繰り返す。
【0095】
増幅した標的配列は、PCRによって形成した二本鎖産物を変性し、これらの産物を延長産物とハイブリダイズする一つ以上のリポータープローブで処理することにより検出し得る。リポータープローブは、本発明のジオキセタン化合物を検出可能な標識として有し得、通常は過剰に加えられる。従って、ハイブリダイズしていないリポータープローブは、分離ステップを用いて、ハイブリダイズしたリポータープローブから分離しなければならない。リポータープローブと分離ステップとを使用しない別の検出方法では、臭化エチジウムで染色したゲルによって延長産物を検出する。診断は、DNAをニトロセルロースにトランスファーし、試料中に存在している疑いのあるタイプに特異的なプローブでプロービングすることにより確認し得る。
【0096】
リガーゼ連鎖反応(LCR)は、DNAセクションをコピーし、前記DNAセクションのコピーを何回も繰り返しコピーすることによってDNAセクションを増幅する。この方法は、本明細書に参考として包含される1989年6月14日公開の欧州特許出願第0 320 308号に記述されている。この方法では、標的配列の隣接領域に対して相補的な二つのプローブ(例えばA及びB)をハイブリダイズし連結する。次いで、連結したプローブを変性して標的から離し、その後、最初のプローブA及びBと逆のセンスの別の二つのプローブ(A’及びB’)とハイブリダイズする。次いで、これら第二のプローブ自体を連結する。後続の変性/ハイブリダイゼーション/連結サイクルで、センス(+)及びアンチセンス(−)両方の二倍の長さのプローブが形成される。
【0097】
LCRでは、試料の核酸が、鎖を分離するために変性される一本鎖DNA又は二本鎖DNAとして与えられる。4個のプローブが使用される:最初の二つのプローブ(A及びB)はいわゆる一次プローブであり、二番目の二つのプローブ(A’及びB’)はいわゆる二次プローブである。第一プローブ(A)は標的ヌクレオチド配列の第一鎖の第一セグメントとハイブリダイズすることができる一本鎖である。第二プローブ(B)は、標的ヌクレオチド配列の第一鎖の第二セグメントにハイブリダイズすることができる。標的の第一鎖の第一セグメントの5’末端は、プローブを標的ヌクレオチド配列の第一鎖にハイブリダイズした時に、第二プローブの5’末端への第一プローブの3’末端の接合を可能にするために、標的の第一鎖の第二セグメントの3’末端に対して配置する。第三プローブ(A’)は第一プローブにハイブリダイズすることができ、第四プローブ(B’)は第二プローブ(B)にハイブリダイズすることができる。ハイブリダイズしたプローブを連結して、再編成した融合プローブ配列を形成する。次いで、試料中のDNAを変性して試料DNAから連結プローブを分離する。連結プローブ及び標的DNAを前述のプロセスにかける連続的サイクルを実施して、試料中の検出可能なDNAの量を増加させる。実施するサイクルの量は、使用する配列と検査に必要な感度とに依存する。通常は、サイクルを15〜60回反復し得る。プローブのうちの少なくとも一つは信号発生化合物に結合し得る。
【0098】
4個のプローブを本発明の化学発光性ジオキセタン化合物のような適当な結合員に結合すれば、当業者に公知の標準的手動又は自動化イムノアッセイ方法を用いて増幅産物の検出を行うことができる。前記イムノアッセイ方法としては、例えばイムノクロマトグラフィー、ELISA、EIA及びMEIAが挙げられる。ハイブリダイゼーションは、当業者に公知の標準的ドットブロット、スロットブロット又はレプリカブロット法に従って実施することもできる。配列は、外部手段によって検出し得る測定可能な信号を発生することができる適当な信号発生化合物(標識)で標識し得る。
【0099】
検査試料中の所期の分析物を検出するために有用なテストキットも提供する。該テストキットは、本発明の化学発光性ジオキセタン化合物を入れた容器と、検出可能な化学発光信号を発生する手段とを含み、前記手段が酵素又は化学物質である。
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を明らかにするためのものであって限定するためのものではない。
【実施例1】
【0101】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の製造
ステップ1:メチル3−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾエートの製造
3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(Aldrich、10g、59.5mmol)とメタノール(250ml)と濃硫酸(1ml)との混合物を一晩撹拌し、得られた生成物を重炭酸ナトリウムと氷との混合物中に注入した。次いで該水性混合物を酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層をまとめて水及びブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。該溶液を回転蒸発にかけると、所望の生成物が無色油状物質として9.5g得られた。NMR(δ):3.89(s,3H),3.95(s,3H)。
【0102】
ステップ2:メチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシベンゾエートの製造
メチル3−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾエート(120mg、0.66mmol、前記ステップ1で製造)と、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(109mg、0.72mmol)と、イミダゾール(98mg、1.24mmol)と、ジメチルホルムアミド(DMF、2ml)との混合物を室温で一晩撹拌した。ヘキサンで抽出処理すると、90mgのメチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシベンゾエートが得られた。NMR(δ):0.18(s,3H),1.00(s,9H),3.88(s,3H),3.89(s,3H)。
【0103】
ステップ3:[(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン]アダマンタンの製造
2−アダマンタノン(Aldrich、55mg、0.37mmol)とメチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシベンゾエート(90mg、0.30mmol、前記ステップのように製造)とを混合し、0.9mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。窒素雰囲気下、THF中の三塩化チタン(Aldrich、440mg、2.85mmol)の氷冷混合物に、撹拌下で水素化リチウムアルミニウム(51mg、1.34mmol)を加えた。氷浴を除去し、前記混合物にトリエチルアミンを加えた。1時間の還流後、2−アダマンタノン−メチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシベンゾエート混合物を5時間にわたりシリンジポンプを介して導入した。該混合物を還流させ更に4時間撹拌した。室温に冷却した後、該黒色混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液と酢酸エチルとの間で3回分配した。抽出物をまとめて水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。該溶液を蒸発させて黄褐色の固体物質を得、これをシリカゲルでフラッシュクロマトグラフィーにかけた。ヘキサン/酢酸エチル(15:1)で溶離すると、[(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン]アダマンタンが無色油状物質として26mg得られた。NMR(δ):0.18(s,6H),1.00(s,9H),3.30(s,3H),3.85(s,3H)。
【0104】
ステップ4:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の製造
高圧ナトリウム灯での照明下で、塩化メチレン中の[(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン]アダマンタン(26mg、前記ステップ3のように製造)とSENSITOX(35mg、J.Am.Chem.Soc.,Vol.97(13):3741,1975に記載のSchaapの方法で製造)との混合物に酸素を静かに吹き込んだ。該混合物を氷温で2時間撹拌した後、照明を消し、酸素添加を終了した。綿での濾過によって触媒を除去し、濾液をストリッピングにかけると、4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]が薄桃色の油状物質として25mg得られた。DCI NH MS m/e:447(M+1)。
【実施例2】
【0105】
4−(3−ホスフェート−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン],テトラエチルアンモニウム塩の製造
ステップ1:[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン)]アダマンタンの製造
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン](1.23g、前記ステップ3のように製造)と10mlの1M テトラ−n−ブチルアンモニウムフロオリドとの混合物を室温で30分間撹拌した後、水とエーテルとの間で3回分配した。有機層をまとめて水及びブラインで洗浄し、蒸発させて油状物質を得、これをシリカゲルでフラッシュクロマトグラフィーにかけた。カラムをヘキサン/酢酸エチルで溶離すると682mgの粘稠油状物質が得られた。約80mgの該油状物質をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィープレート(20cm×20cm×2mm)に塗布し、該プレートをヘキサン/酢酸エチル(2:1)で展開すると広いバンドが得られた。該バンドの上方及び下方部分をかき取り、メタノールで別個に溶離した。NMR分析の結果、これら二つの部分は同じものであり、所望の化合物の構造と一致していた。そこでこれら二つの部分をひとまとめにし、57mgの[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン]アダマンタンを最終生成物として得た。NMR(δ):3.30(s,3H),3.91(s,3H)。
【0106】
ステップ2:[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン)]アダマンタンのホスホリル化
ピリジン2ml中の[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン)]アダマンタン(実施例1の方法で製造、1.57mg)の溶液を、撹拌下で、氷冷塩化ホスホリルピリジン溶液(ピリジン2ml中85mg)に滴下した。添加終了後、氷浴を除去し、混合物を室温で1時間撹拌した。水を加え、得られた水性混合物を1.45mlの20%水酸化テトラエチルアンモニウムで(pH8.0まで)滴定した。得られた混合物をクロロホルムで3回抽出した。有機層をまとめて水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。TLC(シリカゲル、2:1の比率のヘキサン/酢酸エチル)では、原点の上にスポットが一つだけ示された。該溶液を回転蒸発にかけると、表題の化合物が黄褐色粉末として得られた(75mg)。
【0107】
ステップ3:4−(3−ホスフェート−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン],テトラエチルアンモニウム塩の製造
高圧ナトリウム灯での照明下で、塩化メチレン中の[(3−テトラエチルアンモニウム−ホスホ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン]アダマンタン(20mg、前記ステップ1の方法で製造)とSENSITOX(36mg、前記実施例1に記載のように製造)との混合物に酸素を静かに吹き込んだ。該混合物を氷温で2時間撹拌した後、照明を消し、酸素添加を終了した。綿での濾過によって触媒を除去し、濾液をストリッピングにかけると、表題の化合物が油状残渣として10mg得られた。モノテトラエチルアンモニウム塩の電子噴霧(electrospray)質量スペクトル計算値、m/z=541;測定値542(M+1)。
【実施例3】
【0108】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
ステップ1:[3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン](1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)の製造
メチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシベンゾエート(170mg、0.57mmol、前記実施例1、ステップ2で製造)と(1R)−(+)−ショウノウ(Aldrich、120mg、0.79mmol)とを混合し、無水テトラヒドロフラン(THF、1.98ml)に溶解し、三塩化チタン(1.9g、12.32mmol)、LAH(0.22g、5.80mmol)及びTHF(13.8ml)を使用して前記実施例1、ステップ3の手順でカップリングした。生成物を分取TLCプレート(シリカゲル)で精製した。ヘキサン/酢酸エチル(10:1)で展開すると、表題の化合物が二つの異性体の混合物として得られた(58mg)。NMR(δ):0.18(s,6H),1.00(s,15H),1.29(s,3H),3.23(s,1H,少量異性体),3.30(s,2H,多量異性体),3.85(s,3H)。
【0109】
ステップ2:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
[(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)メトキシメチレン]カンホラン(58mg、前述のように製造)を実施例2、ステップ3に記載のようにSENSITOX(80mg、前述のように製造)と共に光酸化した。該混合物を氷温で2時間撹拌した後、照明を消し酸素化を終了した。綿での濾過によって触媒を除去し、濾液をストリッピングにかけると、表題の化合物(55mg)が油状残渣として得られた。DCI NH MS m/e:449(M+1)。
【実施例4】
【0110】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
ステップ1:(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−メトキシ安息香酸の製造
3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸(6.726g、40mmol)とtert−ブチルジメチルシリルクロリド(13.26g、88mmol)とイミダゾール(10.893g、160mmol)とDMF(40ml)との混合物を室温で18時間撹拌した。ヘキサンを加え、得られた混合物を水で洗浄した。水性層をヘキサンで2回再抽出し、抽出物を最初の抽出に由来するヘキサン層に加えた。抽出物をまとめて少量の水で洗浄した。洗浄中に沈殿物が形成された。有機層を前記沈殿物と共に少量のメタノールに溶解し、回転蒸発にかけた。残渣をメタノール(100ml)中にとり、炭酸カリウム(10g)及び水(3ml)と共に室温で1.5時間撹拌した。酢酸エチルと粉砕した氷との混合物を加え、得られた混合物を希塩酸で注意深く酸性化した(水性層の最終pHは3.5であった)。有機相を分離し、水性層を酢酸エチルで2回抽出した。抽出物をまとめてブラインと水との混合物(1:1)で洗浄し、乾燥した。生成物をTLC(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=2:1)にかけると、0.2のRfを有するスポットが一つ得られた。NMR(δ):0.18(s,6H),1.00(s,9H),3.90(s,3H)。
【0111】
ステップ2:3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−メトキシ安息香酸のエステル化
3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−メトキシ安息香酸(2.82g、10mmol、前記実施例4、ステップ1に記載のように製造)と1,4−ブタンジオール(4.5g、55mmol)との塩化メチレン(20ml)中の混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC,2.27g、11mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、122mg、1mmol)を順次加えた。該混合物を室温で18時間撹拌した。水を加え、得られた水性混合物を酢酸エチルで3回抽出した。有機層をまとめて重炭酸ナトリウム、水及びブラインで順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、該溶液を蒸発して粗物質を得、これをシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶離すると、無色油状物質が得られた(1.85g)。NMR(δ):0.18(s,6H),1.00(s,9H),3.74(t,2H),3.89(s,3H),4.35(t,1H)。
【0112】
ステップ3:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)メチレン−2−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)の製造
三塩化チタン(4.47g、29mmol)と、水素化リチウムアルミニウム(0.56g、14.75mmol)と、THF(33ml)と、トリエチルアミン(2.24ml、1.63g、16mmol)と、(1R)−(+)−ショウノウ(304.48mg、2mmol)と、4−(3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−ヒドロキシブチル−4−メトキシベンゾエート(448mg、1.264mmol、前記ステップ2に記載のように製造)と、THF(5ml)とを、実施例1、ステップ3に記載のように混合した。次いで該混合物を氷水と重炭酸ナトリウムとの溶液に注いだ。有機層を分離し、水性層を更に2バッチの酢酸エチルで抽出した。有機層をまとめて水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。該溶液の一部を蒸発して油状物質を得、これを分取TLCプレートで分別し、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で展開すると、表題の化合物が二つの異性体の混合物として得られた。残りの物質をシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶離すると、80mgの無色油状物質が得られた。NMR(δ):0.18(s,6H),1.00(s,12H),3.30−3.50(2t,2H),3.80(s,3H)。
【0113】
ステップ4:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
前記ステップ3で得た異性体混合物(24mg)に45mgのSENSITOXと3mlの塩化メチレンとを加えた。該混合物を実施例2、ステップ3に記載のように酸化して表題の化合物を得た。DCI NH MS m/e:507(M+1)。
【実施例5】
【0114】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ)フェニルスピロ{4,1’−(エポキシメタノ)−1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
ステップ1:7,7−ジメチル−2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造
エーテル中の水素化リチウムアルミニウム(4g、105.4mmol)の氷冷混合物に、前記ステップ1に記載のように製造した塩化ショウノウスルホニル(10g、39.88mmol)とケトピン酸との溶液を滴下した。添加終了後、氷浴を除去し、混合物を室温で2時間撹拌した。該混合物を再度冷却し、湿潤エーテルを注意深く加えた。激しい反応が静まった時点で水を加えた。次いで該混合物を酢酸エチルで3回抽出した。抽出物をまとめて水及びブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。該溶液を蒸発すると、白色粉末が4.8g得られた。NMR(δ):0.90(s,3H),1.20(s,3H)。
【0115】
ステップ2:7,7−ジメチル−1−ヒドロキシメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造
氷酢酸3ml中のジオール(632mg、3.71mmol、前記ステップ2で製造)の溶液に、撹拌下で、5mlの次亜塩素酸ナトリウム溶液を室温で加えた。2時間撹拌した後、更に2.5mlの次亜塩素酸ナトリウムを加え、得られた混合物を一晩撹拌した。水で希釈した後、得られた水性混合物を酢酸エチルで3回抽出した。抽出物をまとめて重炭酸ナトリウム、水及びブラインで洗浄した。該溶液を回転蒸発にかけて粗生成物を得た(516mg)。該生成物はTLC(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)、Rf=0.4)で一つのスポットを示した。NMR(δ)1.00(s,3H),1.01(s,3H),3.56(q,2H)。
【0116】
ステップ3:1−{3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ)ベンゾイルオキシメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]}ヘプタン−2−オンの製造
ケトアルコール(503mg、2.99mmol、前記ステップ3で製造)と3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ安息香酸(実施例4、ステップ1で製造、768mg、2.72mmol)との塩化メチレン中混合物に、DCC(617mg、2.99mmol)及びジメチルアミノピリジン(33mg、0.27mmol)を順次加えた。得られた混合物を室温で18時間撹拌した。該反応混合物を水とエーテルとの間で分配し、エーテル抽出物をまとめて水及びブラインで洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶液を蒸発させて粗生成物を得、これをシリカゲルでクロマトグラフィーにかけた。ヘキサン/酢酸エチル(5:1)で溶離すると、表題の化合物が510mg得られた。NMR(δ):0.17(s,6H),1.00(s,9H),1.05(s,3H),1.14(s,3H),3.89(s,3H),4.49(t,2H)。
【0117】
ステップ4:3−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ)フェニル−4a,6a−ジメチルメタノ−1H,5H,6H−ベンゾ[c]フランの製造
ケトエステル(250mg、0.58mmol、前記ステップ4で製造)を実施例1、ステップ3に記載のように環化した。粗生成物をヘキサン/酢酸エチル(20:1)で溶離すると所望の生成物が37mg得られた。NMR(δ):0.18(s,6H),0.95及び1.00(二つの一重項,15H),3.80(s,3H),4.18(q,2H)。
【0118】
ステップ5:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ)フェニルスピロ{4,1’−(エポキシメタノ)−1,2−ジオキセタン−3,2’−(7’,7’−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
エノールエーテル(37mg、0.092mmol、前記ステップ4で製造)を前記実施例1に記載のようにSENSITOXの存在下で光酸化して、表題の化合物を得た(35mg)。DCI NH MS m/e:433(M+1)。
【実施例6】
【0119】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
ステップ1:メチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルベンゾエートの製造
表題の化合物を、対応するメトキシフェニル誘導体の製造について実施例1、ステップ1及び2に記載したものと類似の方法に従い、3−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸から2ステップで製造した。NMR(δ):0.25(s,6H),1.00(s,9H),2.45(s,3H)及び3.85(s,3H)。
【0120】
ステップ2:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキシメチレン−2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)
表題の化合物を、対応するメトキシフェニル誘導体の製造について実施例3、ステップ1及び2に記載した手順に従い、上記で得たメチル3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルベンゾエートから製造した。NMR(δ):0.25(s,6H),1.00(s,15H),2.20(s,3H),3.30(s,1H,多量異性体)3.50(s,2H,少量異性体)。
【0121】
ステップ3:4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の製造
表題の化合物を、対応するメトキシフェニル誘導体の製造について実施例3、ステップ2に記載した手順に従い、4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキシメチレン−2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)(前記ステップ2で製造)から製造した。DCI NH MS m/e:433(M+1)。
【実施例7】
【0122】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の化学的トリガリング
表題のジオキセタン(実施例1で製造したもの)を下記の表Iに示す量でTHFに溶解し、光子計数ルミノメーター内に配置した。ダークカウント(darkcount)をモニターした。ダークカウントが安定した時点で、THF(100μl)中1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドからなるトリガー溶液を前記反応混合物中に導入した。化学発光反応を5秒間モニターした。計算した比活性を表1に示し、化学発光プロフィル及び感度をそれぞれ第1.1図及び第1.2図に示す。
【0123】
【表1】

【実施例8】
【0124】
4−(3−ホスフェート−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン],テトラエチルアンモニウム塩の酵素トリガリング
1mM MgClを含むpH9.5の0.05Mカーボネート中の表題ジオキセタン(実施例2で製造)の0.4mM溶液90μlをアルカリホスファターゼ(酵素量は下記の表2に記載)と混合し、即座に光子計数ルミノメーター内に配置して、光子出力を2分以上モニターした。酵素を含まない溶液の光子出力を対照とした。表題の化合物のアルカリホスファターゼトリガリング分解の経時プロフィルを第2図及び下記の表2に示す。アルカリホスファターゼの検出可能性は、10−16モル程度の少量の酵素を検出できることを示している。
【0125】
【表2】

【実施例9】
【0126】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)の化学的トリガリング
表題のジオキセタン(実施例3で製造)を2.0×10−14モル含むTHF溶液100μlを光子計数ルミノメーター内に配置した。ダークカウントをモニターした。ダークカウントが安定した時点で、THF(100μl)中1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドからなるトリガー溶液を前記反応混合物中に導入した。化学発光を6秒間モニターした。正味の化学発光計数は67647であったため、比活性計算値は2×10−14モルで3.4×1018であった。化学発光プロフィルは第3図に示す。
【実施例10】
【0127】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシ)フェニルスピロ{4,1’−(エポキシメタノ)−1,2−ジオキセタン−3,2’−(7’,7’−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリング
表題のジオキセタン(実施例5で製造)を2×10−18モル含むTHF溶液100μlを光子計数ルミノメーター内に配置した。ダークカウントをモニターした。ダークカウントが安定した時点で、THF(100ml)中1M テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドからなるトリガー溶液を前記反応混合物中に導入した。化学発光反応を50秒モニターした。比活性の計算値は2×10−18モルで4.0×1021であった。化学発光プロフィルは第4図に示す。
【実施例11】
【0128】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリング
表題のジオキセタン(実施例4で製造)を2×10−16モル含むTHF溶液100μlを光子計数ルミノメーター内に配置した。ダークカウントをモニターした。ダークカウントが安定した時点で、THF(100μl)中1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドからなるトリガー溶液を前記反応混合物中に導入した。正味の化学発光は、比活性4.2×1020で、50秒で84621であった。化学発光プロフィルは第5図に示す。
【実施例12】
【0129】
4−(3−ホスフェート−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン],テトラエチルアンモニウム塩を用いるヒトチロトロピン(hTSH)の酵素触媒化学発光イムノアッセイ
道具:Khalilら,Clinical Chemistry,37,1540−1547(1991A)に記載のAbbott Prism(登録商標)Multichannel Heterogeneous Chemiluminescence Immunoassay Analyzerを使用する。免疫学的反応混合物のインキュベーション及び分離には、Khalilら,Clinical Chemistry,37,1612−1617(1991B)に記載の使い捨て反応トレーを使用する。道具に関する詳細は、Khalilらの米国特許第5,098,424号に記述されている。使い捨て反応トレーの詳細は、米国特許第5,006,309号に開示されている。
【0130】
捕捉抗体:hTSHのβサブユニットに特異的なマウスモノクローナル抗体を共有結合法によってカルボキシル化ラテックスにコ−ティングする。該抗体は、IMx(登録商標)Ultrasensive hTSHキット、リスト番号3A62−20の捕捉抗体としてAbbot Laboratoryから入手し得る。
【0131】
酵素結合体:hTSHに特異的なアフィニティ精製したヒツジポリクローナル抗体を子牛腸アルカリホスファターゼに結合する。この試薬は、IMx(登録商標)Ultrasensive hTSHキット、リスト番号3A62−20の標識として入手し得る。これは、1μg/ml以上の濃度で使用する。
【0132】
基質:前記実施例8に記載の基質化合物を使用する。
【0133】
トランスファー緩衝液:Abbot Laboratoriesから入手し得るMEIA(登録商標)希釈緩衝液、リスト番号8374−04をトランスファー緩衝液及び初期洗浄緩衝液として使用する。
【0134】
洗浄緩衝液:IMx(登録商標)Ultrasensive TSHキット、リスト番号3A62−20の洗浄緩衝液を使用する。
【0135】
プロトコル:前出のKhalilら(1991A)のTSHプロトコルを使用する。
【0136】
【表3】

【0137】
時間0で、30μLの捕捉抗体コーティング微粒子をPrism(商標)使い捨て用品のインキュベーションウェル内に供給する。トレーを約37℃に暖める。9.6分の時点で、100μLの試料(又はカリブレーターもしくは対照)を加える。得られた混合物を37℃で19.2分間インキュベートする。28.8分経過時点で、反応混合物を600μLのトランスファー緩衝液のジェットで反応トレーのパッドにトランスファーする。前記緩衝液は最初の洗浄ステップも提供する。38.4分の時点で、30μlの酵素結合体を使い捨て用品のパッドに捕捉された反応粒子に加える。該結合体を前記粒子と共に37℃で28.8分間インキュベートする。粒子及びパッドを二つの50μlアリコート中100μlの洗浄緩衝液で洗浄する(経過時間67.2分)。更に9.6分間インキュベートした後、85μlのジオキセタン基質をパッドに加えることにより反応を読み取る。光子計数を即座に開始し、6秒間の光子総計数を累加し、メモリに記憶する。カリブレーターの場合は標準曲線を作成する。対照又は患者未知数の場合は、6秒の読取り時間にわたる総計数を標準曲線及び計算した未知数の濃度と比較する。
【実施例13】
【0138】
4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}を用いるhTSHに関する直接的化学発光イムノアッセイ
道具及び使い捨て用品:実施例12に記載の道具及び使い捨て用品を使用する。
【0139】
試薬:実施例12のラテックス微粒子にコーティングした捕捉抗体を使用する。
【0140】
化学発光結合体:実施例12のアフィニティ精製ヒツジポリクローナル抗体を表題のジオキセタンで標識し、指示試薬として使用する。標識操作は2ステッププロセスで実施する。
【0141】
表題の化合物の活性化は、該化合物のアルコール部分をホスゲンと反応させてクロロギ酸エステル誘導体を形成することにより達成する。該化合物2mg(4μmol)を0.5mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ベンゼン中10%ホスゲン0.5ml(100モル以上過剰)と混合する。反応を室温で2.5時間生起させ、次いで窒素を静かに流しながら溶媒を除去する。残渣を200μlのTHFに溶解する。
【0142】
アフィニティ精製ヒツジ抗TSHとの反応は、1.0M NaOHでpH9.0まで滴定した0.1M NaHCO中で実施する。抗体濃度は、炭酸塩緩衝液中1mg/mlに調整する。2mlの抗体溶液をバイアル内に配置し、THF中の表題クロロギ酸ジオキセタンを四つの50μlアリコートに分けて各アリコートを30分間隔で加えながら磁気撹拌機で混合する。最後の添加が終わったら、試料を更に30分間室温に維持する。
【0143】
結合体の精製はSephadex G25排除クロマトグラフィーで行う。前記反応に次いで、バイアルの中味全体を、pH7.4のリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で平衡化したSephadex G25の20mlカラムにかける。結合体を同じ緩衝液で溶離し、1ml画分を回収する。0.05Aより大きいA280を有する画分を結合体としてプールし、該プールの濃度を1.4A/ml/mgの消衰係数を用いて計算し、10mg/mlのサカナゼラチンの存在下で2〜8℃で貯蔵する。該結合体は約1μg/mlで使用し、10mg/mlサカナゼラチンを含むPBS中に希釈する。
【0144】
トリガー試薬:Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI53233から入手したTHF中1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドをトリガーとして使用する。
【0145】
プロトコル:前出のKhalilら(1991A)のTSHプロトコルを使用する。
【0146】
【表4】

【0147】
時間0で、30μlの捕捉抗体コーティング微粒子をPrism(登録商標)使い捨て用品のインキュベーションウェル内に分配する。トレーを約37℃に暖める。9.6分の時点で、100μlの試料(又はカリブレーターもしくは対照)をウェルに加える。得られた混合物を37℃で19.2分間インキュベートする。28.8分経過した時点で、前記反応混合物を600μlのトランスファー緩衝液のジェットで反応トレーのパッドにトランスファーする。前記緩衝液は最初の洗浄ステップも提供する。38.4分の時点で、30μlの酵素結合体を使い捨て用品のパッドに捕捉された反応粒子に加える。結合体を粒子と共に37℃で28.8分間インキュベートする。次いで、粒子及びパッドを二つの50μlアリコートで100μlの洗浄緩衝液で洗浄する(消衰時間67.2分)。更に9.6分間インキュベートした後、THF中0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドを100μl加えることにより反応を読み取る。化学発光出力の読み取りを即座に開始し、6秒間の光子総計数を累加し、メモリに記憶する。カリブレーターの場合は標準曲線を作成する。対照又は患者未知数の場合は、6秒の読取り時間にわたる総計数を標準曲線及び計算未知数の濃度と比較する。
【0148】
当業者には明らかなように、本発明の概念の多くは別のタイプの結合アッセイにも適用し得る。記述した実施態様は具体例であって、本発明の範囲を限定するためのものではない。従って発明の説明は、開示した特定具体例の発明を限定するものではなく、本文及び請求の範囲に記載の本発明の範囲と同等の全てのものを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1A】THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【図1B】THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによってトリガリングされたTHF中4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の検出量を示している。
【図2】アルカリホスファターゼによってトリガリングされた4−(3−ホスフェート−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]、テトラエチルアンモニウム塩の化学発光経時プロフィルである。
【図3】THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メトキシフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【図4】THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4−メチルフェニル)−4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。
【図5】THF中テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドによる対照化合物4−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)スピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(1’,7’,7’−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン)}の化学的トリガリングの経時プロフィルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、Arは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換されたアリール基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基であり、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜10個の基で任意に置換された炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される]
で示される化学発光性化合物で標識された抗体からなる指示試薬。
【請求項2】
式(III):
【化2】

[式中、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択され、Rは水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロ−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択され、RはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ及びアリールC〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜4個の基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基である]
で示される化学発光性化合物で標識された抗体からなる指示試薬。
【請求項3】
検査試料中に存在し得る分析物の存在を決定するための方法であって、
(a)前記分析物に特異的に結合し測定可能な信号を発生することができる指示試薬であって、前記分析物に特異的であり且つ式(I):
【化3】

[式中、Arは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換されたアリール基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基であり、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜10個の基で任意に置換された炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される]
で示される化学発光性化合物で標識された抗体からなる指示試薬に検査試料を接触させ、
(b)酵素又は化学物質を加えて化学的置換活性基OXを開裂してXを除去し、
(c)前記指示試薬から発生した信号を検査試料中の分析物の存在を示すものとして検出することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。
【請求項4】
検査試料中に存在し得る分析物の存在を決定するための方法であって、
(a)検査試料を、前記分析物に特異的に結合し測定可能な信号を発生することができる指示試薬であって、前記分析物に特異的であり、且つ、
式(III):
【化4】

[式中、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択され、Rは水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロ−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択され、RはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ及びアリールC〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜4個の基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基である]
で示される化学発光性化合物で標識された抗体からなる指示試薬に接触させ、
(b)酵素又は化学物質を加えて化学的置換活性基OXを開裂してXを除去し、
(c)前記指示試薬から発生した信号を検査試料中の分析物の存在を示すものとして検出することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。
【請求項5】
検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、指示試薬/分析物に特異的な抗体の複合体及び/又は分析物/前記抗体の複合体を形成するのに十分な時間及び条件で、
前記分析物に特異的な抗体と、
測定可能な信号を発生することができ且つ(i)前記分析物又は前記抗体に特異的に結合する抗原もしくは抗原フラグメント及び(ii)式(I):
【化5】

[式中、Arは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換されたアリール基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基であり、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜10個の基で任意に置換された炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される]
で示される化学発光性化合物からなる指示試薬
とに接触させ、
(b)酵素又は化学物質を加えて化学的置換活性基OXを開裂してXを除去し、
(c)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した固相への指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。
【請求項6】
検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物に特異的な抗体が結合した固相と、(i)前記分析物又は前記抗体に特異的に結合する抗原もしくは抗原フラグメント及び(ii)式(III):
【化6】

[式中、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択され、Rは水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロ−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択され、RはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ及びアリールC〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜4個の基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基である]
で示される化学発光性化合物からなる指示試薬とに接触させ、
(b)酵素又は化学物質を加えて化学的置換活性基OXを開裂してXを除去し、
(c)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。
【請求項7】
検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物に特異的な抗体と、酵素及び前記分析物又は前記抗体に特異的に結合する抗原もしくは抗原フラグメントからなる酵素結合体とに接触させ、指示試薬/分析物に特異的な抗体−酵素結合体の複合体及び/又は分析物/分析物に特異的な抗体−酵素結合体の複合体を形成するのに十分な時間及び条件で、測定可能な信号を発生することができ、式(I):
【化7】

[式中、Arは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換されたアリール基であり、OXは前記酵素による開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素による開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基であり、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜10個の基で任意に置換された炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される]
で示される化合物からなる指示試薬を加え、
(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。
【請求項8】
検査試料中に存在し得る分析物の存在及び/又は量を決定するための競争アッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、
分析物に特異的な抗体と、
酵素及び前記分析物又は前記抗体に特異的に結合する抗原もしくは抗原フラグメントからなる酵素結合体とに接触させ、且つ、
当該検査試料に対して、測定可能な信号を発生することができ、式(III):
【化8】

[式中、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択され、Rは水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロ−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択され、RはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ及びアリールC〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜4個の基であり、OXは前記酵素による開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素による開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基である]
で示される化合物からなる指示試薬を、指示試薬/分析物に特異的な抗体−酵素結合体の複合体及び/又は分析物/分析物に特異的な抗体−酵素結合体の複合体の形成に十分な時間及び条件下で加え、
(b)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。
【請求項9】
検査試料中に存在し得る分析物の存在及び量を決定するための競争アッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある検査試料を、分析物に特異的な抗体が結合した固相と、測定可能な信号を発生することができ(i)前記分析物又は前記抗体に特異的に結合する抗原もしくは抗原フラグメント及び(ii)式(III):
【化9】

[式中、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択され、Rは水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロ−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択され、RはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、C〜C10ジアルキルアミノ及びアリールC〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜4個の基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基である]
で示される化合物、又は式(I):
【化10】

[式中、Arは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルチオ、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アルキルアミノ、ジ−(C〜C10アルキル)アミノ、アリール−C〜C10アルキル及びハロゲンの中から独立して選択した1〜4個の基で置換されたアリール基であり、OXは酵素的又は化学的開裂によりアニオンを形成できる基であって、該酵素的又は化学的開裂によるXの除去がアリールオキシド中間体の形成につながる化学的置換活性基であり、Rは、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン及びハロ−C〜C10アルキルの中から独立して選択した1〜10個の基で任意に置換された炭素原子数6〜30の多環式アルキレンであり、RはC〜C10アルキル、ハロ−C〜C10アルキル、C〜C10アリールアルキル、カルボキシ−C〜C10アルキル、ヒドロキシ−C〜C10アルキル、アルデヒド−C〜C10アルキル、アミノ−C〜C10アルキル及びチオール−C〜C10アルキルの中から独立して選択される]
で示される化合物からなる指示試薬とに、検査試料と固相、及び/又は指示試薬と固相の混合物の形成に十分な時間及び条件下で接触させ、
(b)酵素又は化学物質を加えて化学的置換活性基OXを開裂してXを除去し、
(c)検査試料中の分析物の存在を示すものとして、陰性検査試料から発生した信号と比較した固相への指示試薬結合の減少を検出することにより、検査試料中の分析物の存在を決定することからなり、発生した信号が検査試料中の分析物の量に比例する前記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−164600(P2008−164600A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322868(P2007−322868)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【分割の表示】特願平6−511253の分割
【原出願日】平成5年10月26日(1993.10.26)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】