説明

電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体及び押圧型スイッチ並びにこれを備えた電子時計

【課題】 クリック感に関し製品間のバラツキを最低限に抑え得る電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体、押圧型スイッチ及びにこれを備えた電子時計の提供
【解決手段】 電子時計3の押圧型スイッチ2用ばね構造体1は、時計の静置支持体5に固定される基部10と、該基部10と一体的な第一基端部31A,31Bから延び弾性的に撓み変形可能な第一弾性腕部32A,32B及び該第一弾性腕部の第一先端部の一側に形成された第一係合突起部34A,34Bを備えたクリック感形成腕30と、基部10と一体的な第二基端部21A,21Bから弧状に湾曲して延び撓み変形可能な第二弾性腕部22A,22B、該第二弾性腕部のうちクリック感形成腕30の第一先端部に対面する部位において該第一先端部に向かって突出した押圧用突出部24及び第一係合突起部に対して係脱可能な第二係合突起部28A,28Bを備えた押圧腕とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計のような電子時計に用いられるに適した押圧型スイッチ用ばね構造体及び押圧型スイッチ並びにこれを備えた電子時計に係る。
【背景技術】
【0002】
腕時計のような小型の電子時計において、押しボタンの押圧に応じて作動される押圧型スイッチの作動をユーザが実感し得るように、押しボタンの押圧に応じてクリック感を与えるようにすることは、知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
これらの従来提案されているタイプの押圧型スイッチでは、クリック感を与えるために、大きなU字形レバーの形態のばねが用いられている。このU字形レバーばねは、押しボタンの押圧に従って回動軸のまわりで全体的に回動ないし揺動すると共に地板等から突設されたピンに対して係脱する凹部をUの先端側脚部の先端部に備える。
【0004】
これらのU字形レバーとピンとを組合わせるタイプの従来の押しボタンスイッチでは、所望のクリック感を与え得るようにするためには、U字形レバーばねの形状に対して高い精度が要求されるだけでなく、特に、回動軸やクリック感生成用の係脱ピンについても高い位置精度等が要求される等、複数の部品の相対位置や相対的な向きについても高い寸法精度が要求される。
【0005】
その結果、適切なクリック感を与えるように製品の個体間のばらつきを最低限に抑えることは、容易ではない。
【特許文献1】実願昭57−188151号のマイクロフィルム(実開昭59−91632号公報)(例えば、第4図及びその関連説明部分)
【特許文献2】特公平7−104418号公報(例えば、図25及びその関連説明部分)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記した点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、クリック感に関し製品間のバラツキを最低限に抑えることが容易な電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体及び押圧型スイッチ並びにこれを備えた電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体は、前記目的を達成すべく、電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体であって、電子時計の静置支持体に固定される基部と、該基部に一体的に形成された一の第一基端部から延び弾性的に撓み変形可能な一の第一弾性腕部及び該一の第一弾性腕部の第一先端部の一側に形成された一の第一係合突起部を備えたクリック感形成腕と、前記基部に一体的に形成された一の第二基端部から弧状に湾曲して延び撓み変形可能な一の第二弾性腕部、該一の第二弾性腕部のうち前記クリック感形成腕の前記一の第一弾性腕部の第一先端部に対面する部位において該第一先端部に向かって突出した押圧用突出部及び該押圧用突出部の突出端部のうち前記クリック感形成腕の前記一の第一係合突起部に対面する側の側縁に該一の第一係合突起部に対して係脱可能な一の第二係合突起部を備えた押圧腕とを有し、前記押圧腕の押圧用突出部が押圧されると、該押圧腕の押圧用突出部の前記一の第二係合突起部が前記クリック感形成腕の前記一の第一係合突起部に係合し該一の第一係合突起部を横向きに押して前記一の第一弾性腕部を弾性的に撓ませ、該一の第一係合突起部のところを通過することにより該一の第一係合突起部との係合が解除されるように構成される。
【0008】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、「押圧腕の押圧用突出部が押圧されると、該押圧腕の押圧用突出部の一の第二係合突起部がクリック感形成腕の一の第一係合突起部に係合し該一の第一係合突起部を横向きに押してクリック感形成腕の一の第一弾性腕部を弾性的に撓ませ、該一の第一係合突起部のところを通過することにより該一の第一係合突起部との係合が解除される」ので、該一の第一及び第二係合突起部の係脱がクリック感を与え得る。
【0009】
また、本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、特に、押圧腕及びクリック感形成腕の両方が夫々の一の基端部で基部と一体的に形成され、ばね構造体の全体が一体物で形成されるから、該押圧型スイッチ用ばね構造体を構成する単一部品の寸法形状を高精度に製造するだけでクリック感を安定に与え得るので、クリック感に関し製品間のバラツキを容易に最低限に抑え得る。なお、部品が単一部品ないし単体からなること自体もコスト低減に役立つ。
【0010】
ここで、基部、押圧腕及びクリック感形成腕から押圧型スイッチ用ばね構造体の全体について実際上平面的な形状及び寸法の精度が要求されるだけであるので、本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体は、所望のサイズ及び精度で二次元形状を実現し得るどのような製造手段によって製造されてもよい。即ち、本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体の製造には、好ましくは、例えば半導体集積回路技術を利用したマイクロマシン技術として広義のMEMS(Micro Electro Mechanical System)が用いられる。なお、この場合、MEMSの対象となる材料は、ばね性を備える材料で、典型的には、金属材料である。但し、寸法精度が容易に確保され得る場合(例えば、打抜き部の面の粗さがクリック感に与える影響が許容範囲内になるような打抜きが可能であったり、低コストでの加工が容易であるような場合)には、抜き型による打抜きその他の従来の板状構造体の形成技術が用いられてもよい。なお、本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体は、典型的には、ばね性のある金属からなるけれども、所望ならば、樹脂その他の材料でできていてもよい。
【0011】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体が、腕時計のような電子時計のサイドスイッチ用のばねとして用いられる場合、二次元的に拡がったばね構造体の縦横の各方向の大きさは、典型的には、地板の厚さ程度(すなわち、典型的には、数mm程度)であり、厚さは、典型的には、0.1mmのオーダーである。但し、いずれも、より大きくても、より小さくてもよい。
【0012】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、前記クリック感形成腕の前記一の第一弾性腕部が、先端側ほど押圧腕の押圧用突出部の変位経路に近接するように、押圧腕の押圧用突出部の変位方向に対して斜めに延びている。
【0013】
この場合、クリック感生成腕の一の第一弾性腕部が比較的細くても比較的大きい弾性力を与えることが可能になり、且つクリック感形成腕の第一係合突起部との係合が解除された後、第二係合突起部がクリック感形成腕の第一弾性腕部と干渉する虞れが少ない。
【0014】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、前記押圧腕の前記一の第二腕部の前記第二基端部が、前記基部の一側で該基部に一体的に形成され、前記押圧腕が、前記基部の他側に一体的に形成された別の第二基端部から弧状に湾曲して延在し撓み変形可能な別の第二弾性腕部を更に備え、該別の第二弾性腕部が、その延在端において前記押圧用突出部に一体的につながり、前記一の第二弾性腕部と協働して前記押圧用突出部を弾性的に両持ち支持している。
【0015】
この場合、押圧腕の押圧用突出部が、一対の第二弾性腕部すなわち一及び別の第二弾性腕部により両持ち支持されるので、第二弾性腕部が比較的細くても押圧腕が押圧腕部の変位方向が安定的に規定され、典型的には、直線的に設定され易い。また、押圧の完了後において、押圧腕が比較的強い復元力で元の位置に復帰し得る。
【0016】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、前記クリック感形成腕の前記一の第一腕部の前記一の第一基端部が、前記基部の一側において該基部に一体的に形成され、前記押圧腕が、前記押圧用突出部の前記突出端部のうち前記一の第二係合突起部のある側縁とは反対側の側縁に別の第二係合突起部を備え、前記クリック感形成腕が、前記基部の他側に一体的に形成された別の第一基端部から延び弾性的に撓み変形可能な別の第一弾性腕部、及び該別の第一弾性腕部の第一先端部のうち前記一の第一弾性腕部の前記一の第一係合突起部に対面する側部において該一の第一係合突起部に向かって突出し前記別の第二係合突起部に係脱可能な別の第一係合突起部を備える。
【0017】
この場合、クリック感形成腕が、押圧腕の押圧用突出部の両側縁の第二係合突起部と係合するので、該押圧用突出部の案内がより安定化するだけでなく、両側で確実にクリック感を与え得る。なお、この場合、両側の(即ち一及び別の)第一及び第二係合突起部の係脱のタイミングが実際上同一になるように選択されるけれども、所望ならば、係脱のタイミングを意図的にずらしておいて、二段階のクリック感を与えるようになっていてもよい。
【0018】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、前記クリック感形成腕及び前記押圧腕が前記基部と前記押圧用突出部とを結ぶ中心線に関して、鏡映対称な形状を有する。
【0019】
この場合、外力の横方向成分(鏡映対称線に対して直角な方向の成分)の影響が最低限に抑えられ得るので、押圧型スイッチ用ばね構造体の動作が安定し易い。
【0020】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、前記基部が、前記一及び別の第一弾性腕部の間において、前記押圧用突出部に近接する向きに延びた固定部を含む。
【0021】
この場合、基部の固定的支持が安定に行われ易い。なお、所望ならば、この固定部が、押圧用突出部の最大突出量を規定する度当たり面(係止面)を備えていてもよい。
【0022】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、全体が板状の平面構造体からなる。従って、前述のように高精度の製造ないし加工が容易に行われ易い。但し、所望ならば、厚さが部位によって異なっていることにより、所望部位で所望大きさの弾性力が得られるようになっていても、厚さ方向突出部や凹部が他の部品との関係で利用されるようになっていてもよい。
【0023】
本発明の押圧型スイッチ用ばね構造体では、典型的には、前記基部が電子時計の地板に位置決め固定されるように構成される。即ち、静置支持体が電子時計の地板からなる。これにより、押圧型スイッチ用ばね構造体が安定に且つ強固に支持され得る。なお、静置支持体は、地板の代わりに、通常、輪列受やN番受(Nは数字)その他の名称で呼ばれる他の比較的大形で比較的厚い支持部材であってもよい。
【0024】
本発明の電子時計の押圧型スイッチは、前記目的を達成すべく、典型的には、押圧型スイッチ用ばね構造体と、押しボタンの押圧に応じて、該ばね構造体の前記押圧腕のうち前記押圧突出部とは反対側の側面を押圧し、前記押圧腕の前記第二係合突起部が前記クリック感形成腕の前記第一係合突起部に対して係脱される際に接点との導通が確保されるスイッチ板とを有する。
【0025】
この場合、上述のような利点があるだけでなく、スイッチ板を押しボタンで押すだけで、スイッチのON/OFF動作とクリック感とが実際上同時に得られる。なお、典型的には、スイッチ板の押圧に伴う接点間の導通の後でクリック感を与えるべく係合突起部間の係合解除がなされるようにスイッチ板及びばね構造体が形成される。但し、両者が実際上同時に生起するようにしておいても、クリック感を与えた後で接点間の導通が生じるようにしておいてもよい。前後がある場合、いずれにおいても、一連の動作の中での前後であってそのズレが小さいように、スイッチが構成される。
【0026】
なお、所望ならば、押しボタンがスイッチ板を押し該スイッチ板がばね構造体を押す代わりに、押しボタンが押圧型スイッチ用ばね構造体の押圧腕を直接押し、該押圧腕の変形に伴いスイッチ板が変位されるようになっていてもよい。
【0027】
本発明の電子時計は、前記目的を達成すべく、上述のような押圧型スイッチ用ばね構造体を備え、又上述のような押圧型スイッチを備え、これにより、上述のような利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0029】
図1には、押圧型スイッチ用ばね構造体1が示され、図2(a)〜(c)には、図1のばね構造体1を備えた押圧型スイッチ2を有する電子時計3の一部が示されている。
【0030】
図1の拡大図からわかるように、電子時計3の押圧型スイッチ2用のばね構造体1は、該ばね構造体1を電子時計3の地板5(図2の(c)参照)の如き静置支持体に固定して該ばね構造体1を支持させるための基部10と、該基部10に対して一体的に形成され押しボタン6(図2の(a)〜(c)参照)の押圧に従って変形され変位される押圧腕20と、該基部10に対して一体的に形成され押しボタンの押圧に伴う押圧腕20の変形及び変位が所定の状態に達するとクリック感を付与するクリック感形成腕30とを備え、中心線Mに関して、左右が鏡映対称な形状を有する。なお、押圧型スイッチ用ばね構造体1は、この例では、一定の厚さTを備えた薄板からなり(図2の(a)や(c)参照)、典型的には、MEMSにより製造される。
【0031】
基部10は、中心線Mに沿って位置する基部本体部11を備える。基部本体部11は、中心線Mに沿って内向き即ちM2方向に延びた固定部としての中央突出部12、中心線Mの両側に延びた一対の側方突出部13A,13B、及び中心線Mに沿って外向きすなわちM1方向に突出した小突出部ないし肥大部14を含む。中央突出部12のM2方向端面(図1でみて上端面)が後述する押圧用突出部24のM1方向への最大突出量を規定する度当たり面(係止面)になっていてもよい。基部本体部11の中央突出部12及び肥大部14を含む部分には、位置決め用の小径穴部15と固定用の大径穴部16が形成されている。また、基部本体部11は、一対の側方突出部13A,13Bの夫々と中央突出部12との間に、一対の凹状の切欠部17A,17Bを有する。この切欠部17A,17Bは、後述するクリック感形成腕30の弾性腕部32A,32Bが撓む際にその基端部への応力の集中を避けるべく、滑らかに湾曲している。
【0032】
以上において、基部10の境界ないし外縁は、厳密には規定される必要はないけれども、この明細書では、便宜上、押圧腕20及びクリック感形成腕30の変形の際に、実質的に変形しない部分をもって基部10と看做す。厳密ではないけれども見易さのために大まかな境界を図1において仮想的境界Vを想像線で示してある。但し、基部10の外縁すなわち基部10と押圧腕20及びクリック感形成腕30との境界は厳密には規定される必要はなく、押圧腕20及びクリック感形成腕30の変形の際に、多少変形される部分が基部10に含まれていても、逆に、実質的に変形しない部分の一部が押圧腕20及びクリック感形成腕30に含まれていても(基部10が、押圧腕20及びクリック感形成腕30の変形の際に、実質的に変形しない部分の一部になっていても)よい。
【0033】
また、基部10は、この例では、二つの穴部15,16で位置決め固定される限り、その形状や穴部の配置は、図示したものとは異なっていてもよい。例えば、占有スペース(典型的には、電子時計の厚さ)がより大きくなることが許容される場合、所望ならば、中央突出部12がM2方向に突出する代わりに、M1方向に突出していても、二つの穴部15,16が変形され難い十分な大きさの周壁で囲まれる限り、中央突出部12がなくても複数の突出部が中央又は中心線Mからズレた位置に形成されていてもよい。
【0034】
押圧腕20は、基部10の本体部11の両側縁18A,18Bのうち外側部分18A1,18B1すなわち側方突出部13A,13Bの先端部13A1,13B1に、基端部21A,21Bで一体的につながり弧状に湾曲して延びた一及び別の第二弾性腕部としての一対の弾性腕部22A,22Bと、該弾性腕部22A,22Bの共通延在端23に形成され中心線Mに沿って基部10の方にM1方向に延びた押圧用突出部24とを有する。なお、突出部24は基端24CにM2方向に僅かに膨らむように突出した肥大部ないし膨出部29を備える。この肥大部29は、後述する押しボタン6の押圧に伴いスイッチ板50によるM1方向の押圧力を受ける部分である。
【0035】
突出部24は、M1方向の延在端ないし先端部26の両側縁27A,27Bに、一及び別の第二係合突起部としての一対の係合突起部28A,28Bを備える。この例では、係合突起部28A,28BのM1方向側縁部28A1,28B1は中心線Mに対して直角な一つの直線28Dになっており、反対側の側縁部28A2,28B2は、夫々、外に凹の弧状に湾曲している。但し、突出部24のM1方向のストロークが確保されてクリック感が確実に得られる限り、側縁部側縁部28A1,28B1が全体として、M1方向に凸になるように突出した形状であってもよい。
【0036】
なお、押圧用突出部24が、次に説明するように、クリック感形成腕30の対応する一及び別の第一係合突起部の間に押込まれて該第一係合突起部間をM1,M2方向に通過する際に、対応する第一係合突起部に係合して該第一係合突起部をクリック感形成腕30の弾性腕部の弾性力に抗して押しのけ得、且つ通過により対応する第一係合突起部との係合が解除され得る限り、他のどのような形状であってもよい。
【0037】
クリック感形成腕30は、基部10の本体部11の両側縁18A,18Bのうち内側部分18A2,18B2すなわち側方突出部13A,13Bの内側縁部13A2,13B2に、基端部31A,31Bで一体的につながり押圧腕20の押圧用突出部24の先端部26に向かってM2方向に且つ押圧用突出部24の変位経路としての中心線Mに近接する向きに傾斜して実際上直線的に延びた一及び別の第一弾性腕部としての一対の弾性腕部ないし弾性レバー部32A,32Bを有する。弾性腕部32A及び32Bは、夫々、基部本体部11の対応接続部13A,13Bに対して、GA1,GA2方向及びGB1,GB2方向に弾性的に撓み変形ないし揺動可能である。弾性腕部32A,32Bは、先端部33A,33Bに中心線Mに向かって突出した一及び別の第一係合突起部としての係合突起部34A,34Bを有する。係合突起部34A,34B間の間隔Bは、押圧用突出部24の先端部の幅Dすなわち押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bの先端間の幅Dよりも小さい(図1参照)。
【0038】
係合突起部34A,34Bは、押圧用突出部24がM1方向に変位ないし移動する際、該押圧用突出部24のM1方向側縁部28A1,28B1と係合して、該M1方向側縁部28A1,28B1によって横方向EA,EBに逃げる向きの力を受けるように、中心線Mに近い部分ほどM1方向に位置するように傾斜した側面35A,35BをM2側の側縁に有する。なお、係合解除によるクリック感が確実に得られるように、押圧用突出部24のM1方向変位に対して十分な抵抗を与えるべく、側面35A,35BはM1方向に対して比較的大きい角度になっている。クリック感形成腕30の弾性腕部32A,32Bは係合突起部34A,34BからM1方向に離れるほど相互に離間するように傾斜しているので、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bが係合突起部34A,34Bを越えてM1方向に変位されると、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bとクリック感形成腕30の係合突起部34A,34Bとの係合が確実に解除され且つ押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bとクリック感形成腕30の性腕部32A,32Bとが干渉する虞れがない。
【0039】
係合突起部34A,34Bは、一旦、係合突起部34A,34Bを越えてM1方向に変位された押圧用突出部24の係合突起部28A,28BがM2方向に戻る際、該押圧用突出部24の側縁部28A2,28B2と係合して、該側縁部28A2,28B2によって横方向EA,EBに逃げる向きの力を受けるように、中心線Mに近い部分ほどM2方向に位置するように傾斜した側面36A,36BをM1側の側縁に有する。押圧用突出部24のM2方向の戻りは、押圧腕20の弾性腕部22A,22Bの弾性復元力によるので、戻りの際の抵抗を最低限に押えるべく、側縁部28A2,28B2及び側面36A,36Bは、M2方向に対して比較的小さい角度で延びている。
【0040】
クリック感形成腕30は、係合突起部34A,34Bの夫々の背後に膨出部ないし突出部37A,37Bを有する。突出部37A,37Bは、M2側の側縁に、係合突起部34A,34Bの側面35A,35Bに連続的につながり、中心線Mから離れるほど、M2方向に位置する傾斜面37A1,37B1を有する。該傾斜面37A1,37B1は、押圧用突出部24がM1方向に変位される際に横に(すなわち中心線Mに直交する向きに)多少ズレた場合でも、該突出部24を確実にM1方向に案内する。
【0041】
以上のような構成を有するばね構造体1は、図2の(a)〜(c)に示したように、地板5に組みつけられて、押圧型スイッチ2を形成する。
【0042】
すなわち、押圧型スイッチ2では、図2の(a)〜(c)からわかるように、ばね構造体1が、回路基板40及び電気絶縁性薄板7を介して、地板5に取付けられている。
【0043】
より詳しくは、ばね構造体1は、図2の(c)からわかるように、回路基板40及び電気絶縁性薄板7と共に、地板5に形成されたピン状突起部5Aに小径穴部15で嵌合され、且つ地板5の穴部5Bに回路基板40及び電気絶縁性薄板7と共に固定手段8によって固定されることにより、地板5に対して位置決め固定されている。この例では、固定手段8は、ボルト及びナットからなる。これによって、ばね構造体1は、基部10が地板5に対して不動になるように固定される。なお、図2の(b)では、固定手段8は省いてある。固定手段8は、ばね構造体1の基部10等を地板5に対して不動に保ち得る限り、他のどのようなものでもよい。
【0044】
回路基板40は、外周側縁部ないし外周面41に段部42を備え、該段部42の凹部43に接点44を有する。
【0045】
電子時計3のうち回路基板40の外周側には、スイッチ端子50が延びている。スイッチ端子50は、典型的には、電池プラス端子をなす板状体(以下では、電池プラス端子板ともいう)51の一部をなす。なお、電池プラス端子板51の本体部51Aは、電池(図示せず)のプラス電極の電位を電子時計3の各種電気電子部品に与えるべく電子時計3の主面に平行に板状に拡がっている。
【0046】
スイッチ端子50は、電池プラス端子本体部51Aに対して直角に折り曲げられて電池の厚さ方向Hに延びた基端部52と、該基端部52から地板5の外側面5Eに沿って延びた板ばね状腕部53と、該腕部53の先端側に連続的に形成された幅広の押圧力伝達部54と、該押圧力伝達部54の先端54Aに対して僅かに折れ曲がり且つ該先端54AからL字状に延びた接点腕部55とを有する。L字状接点腕部55のうちLの基端側脚部55Aは地板5の外周面5Eの沿って該地板5の周方向に延び、Lの先端側脚部55Bは地板5の厚さ方向(電子時計3の厚さ方向)Hに延び、接点55B1として働く延在端部が回路基板40の接点部44に近接して対面する位置にある。押圧力伝達部54は、板ばね状腕部53よりもはるかに幅広でばね構造体1の押圧用突出部24の背後の膨出部29に対面するところまで幅方向(電子時計3の厚さ方向)Hに拡がった押圧力伝達本体部56と、該本体部56と腕部53とをつなぐ台形状の遷移部57とを有する。この例では、押圧力伝達本体部56及び遷移部57は実際上変形しないとみなすけれども、ある程度弾性変形されてもよい。
【0047】
なお、図2の(b)からわかるように、スイッチ端子50の板ばね状腕部53は、該スイッチ端子50に押圧力がかかっていない状態S1では、基端部52から押圧力伝達本体部56までばね構造体1の中心線Mの延在方向に直角な方向に対して傾斜している。また、この状態S1では、L字状接点腕部55は、ばね構造体1の中心線Mの延在方向に対してほぼ垂直な面内に位置する。
【0048】
この押圧型スイッチ2では、大まかには、電子時計3のケース(図示せず)に装着された押しボタン6をM1方向に押込むと、該押しボタン6がスイッチ端子50の押圧力伝達部54の本体部56のうち該ボタン6に対面する押圧力受け部56AをM1方向に押し、スイッチ端子50の板ばね状腕部53がJ1方向に撓んで、スイッチ端子50の押圧力伝達部54の本体部56のうちばね構造体1の押圧用突出部24の背後の膨出部29に対面するばね構造体押圧部56BをM1方向に押すと共にスイッチ端子50の先端の接点腕部55の接点55B1が回路基板40の接点部44に押付けられる。
【0049】
次に、以上の如く構成されたばね構造体1を備えた押圧型スイッチ2の動作について、図3の(a)〜(b)及び図4の(a)〜(b)に基づいて、より詳しく説明する。
【0050】
図3の(a)は、押しボタン6がM2方向に変位した初期位置(突出位置)PB1にあって、押圧型スイッチ2が押圧される前の状態S1で、図2の(a)〜(c)に示した状態と同一の状態を示す。
【0051】
この状態S1では、ばね構造体1が変形される前の非変形状態SP1にあり、スイッチ端子50は、その板ばね状腕部53が斜め方向に延びた初期位置SQ1にある。ばね構造体1の非変形状態SP1では、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bは、クリック感形成腕30の弾性腕部32A,32Bの係合突起部34A,34Bに対してM2方向に離間した初期位置(離間位置)SU1を採る。但し、所望ならば、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bとクリック感形成腕30の弾性腕部32A,32Bの係合突起部34A,34Bとが実際上接触しているかほぼ接触する程度にM1,M2方向に近接していてもよい。
【0052】
また、スイッチ端子50が初期位置SQ1にあるこの状態では、該スイッチ端子50の板ばね状腕部53は、その押圧力伝達部54が初期位置PB1にある押しボタン6とばね構造体1の膨出部29との間に遊嵌された位置SR1にあり、接点腕部55が回路基板40の接点部44から離れた位置にあり、OFF状態SS1を採る。なお、スイッチ端子50の初期位置SQ1において、押圧力伝達部54の本体部56の部位56Aが、押しボタン6の内側端部6Aに当接していてもよい。
【0053】
押しボタン6を初期位置PB1からM1方向に押すと、図3の(b)に示したように、押しボタン6の内端6Aがスイッチ端子50の押圧力伝達部54の本体部56の押圧力受け部56AをM1方向に押して、該押圧力伝達本体部56をM1方向に変位させる。押圧力伝達本体部56のM1方向変位に伴い該本体部56のばね構造体押圧部56Bがばね構造体1の膨出部29をM1方向に押してばね構造体1の押圧腕20の弾性腕部22A,22Bを撓ませ、ばね構造体1の押圧用突出部24がM1方向に変位する。これにより、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bがクリック感形成腕30の弾性腕部32A,32Bの先端の係合突起部34A,34Bに当接係合し始める。なお、ばね構造体1が、中心線Mに関して鏡映対称な形状ないし構造を有し、押圧用突出部24や膨出部29が押圧腕20を構成する弾性腕部22A,22Bによって両持ち支持されているので、押圧用突出部24は実際上M1方向に変位され得る。
【0054】
一方、スイッチ端子50の押圧力伝達部54のM1方向押込みに応じて該スイッチ端子50の板ばね状腕部53がJ1方向に撓み、該スイッチ端子50の先端にあるL字状接点腕部55の延在端(接点)55B1が、回路基板40の接点部44に近接する。
【0055】
押しボタン6を更にM1方向に押すと、図4の(a)に示したように、押圧力伝達部54の本体部56の押圧力受け部56Aが押しボタン6の内端6AによりM1方向に押し下げられたスイッチ端子50の接点腕部55の接点55B1が、回路基板40の外側面41の凹部43にある接点44に当接するON位置SS2に設定される。
【0056】
図4の(a)に示した押圧型スイッチ2のON状態S2では、押しボタン6はON位置PB2を採り、スイッチ端子50は一段階変形位置SQ2を採り、ばね構造体1は一段階変形状態SP2を採る。ばね構造体1の一段階変形状態SP2では、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bが、クリック感形成腕30の弾性腕部32A,32BをGA1,GB1方向に撓ませて該弾性腕部32A,32Bの係合突起部34A,34Bの傾斜側面35A,35Bの内端近傍まで嵌り込んだ第一段階押込み位置SU2を採り、押圧力伝達部54は、押しボタン6によってM1方向に押込まれ且つばね構造体1の膨出部29及び押圧用突出部24をM1方向に押込んだ一段階押込み位置SR2を採る。
【0057】
図3の(b)の状態から図4の(a)の状態に達するまで、押圧用突出部24が係合突起部28A,28Bの内側縁部28A1,28B1でばね構造体1の弾性腕部32A,32Bの傾斜側面35A,35Bに沿って押し込まれるので、比較的大きい抵抗力ないし負荷を弾性腕部32A,32Bから受ける。即ち、ユーザが押しボタン6をM1方向に押込んでいる際、比較的大きい抵抗力を受けているときに、押圧型スイッチ2は、接点55B1,44が当接状態SS2になるON状態S2を採る。
【0058】
この状態S2から、押しボタン6を更にM1方向に押込むと、弾性腕部32A,32Bが更に僅かにGA1,GB1方向に撓むだけで、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bが弾性腕部32A,32Bの係合突起部34A,34Bの間に押込まれ、該係合突起部34A,34Bの間をM1方向に通り抜けて係合突起部34A,34Bとの係合が解除される。押圧用突出部24の側縁28A2,28B2では該突出部24の幅が基端側ほど狭くなっているので、押圧用突出部24は弾性腕部32A,32Bの抵抗を受けることなく直ちにM1方向に押込まれ、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bは、弾性腕部32A,32B間に嵌り込んだ最終押込み位置SU3を採る(図4の(b))。ばね構造体1が図4の(a)の状態SP2から図4の(b)に示した最終押込み状態SP3に移るときの抵抗力の急激な低下が、押しボタン6を押込んでいるユーザには、クリック感として感知される。
【0059】
一方、押しボタン6のM1方向への更なる押込みに伴い、押しボタン6が最終押込み位置PB3(例えば、押しボタン6の外側端部が時計ケース(図示せず)の外周面と実際上面一になる位置)に達し、スイッチ端子50が、図4の(b)に示した最終押込み状態SQ3を採る。スイッチ端子50の最終押込み状態SQ3では、スイッチ端子50のL字状接点腕部55は、基端側脚部55Aが回路基板40の段部42の背後においてM1方向に押込まれるので先端側脚部55Bは先端接点部55B1が回路基板40の接点44に当接した状態でM2方向に相対的に撓んだ最終位置SS3を採る。なお、この最終位置SS3においては、典型的には、接点部55B1と接点44との電気的接触が断たれる。ここで、一旦断たれた電気的接触(導通)が、スイッチ端子50のJ2方向への戻り過程で再度生じることを積極的に利用した回路構成をしても、その代わりに、戻り過程での導通に対しては不感になるような回路構成にしてもよい。但し、接点部55B1と接点44との導通が保たれるような形状に接点部55B1及び接点44が形成されていてもよい。
【0060】
以上のようにして、図4の(b)押圧型スイッチ2が最終押込み状態S3になる。
【0061】
この押圧型スイッチ2では、接点55B1,44間がON状態に設定される状態S2になった直後にクリック感を与える状態S3になるので、ON状態になったことが確実に感知され得る。また、この押圧型スイッチ2では、クリック感があったときには接点55B1,44間が既にON状態になっているので、クリック感があった後にON状態になる場合と比較して、誤って押しボタン6の押圧を止める虞れがない。但し、所望ならば、クリック感の生起のタイミングと接点55B1,44の閉成とが実際上同時に生じるように押圧用突出部24や弾性腕部32A,32Bの長さが設定されていても、また、クリック感が与えられた後で接点55B1,44の閉成が行われる(但し、そのズレは小さい)ように押圧用突出部24や弾性腕部32A,32Bの長さが設定されていてもよい。
【0062】
押しボタン6を離すと、時計ケースに組み込んだコイルばね(図示せず)が押しボタン6を押し戻す。また、スイッチ端子50は、板ばね状腕部53の弾性力により板ばね状腕部53がJ2方向に戻って、元の位置に戻る。
【0063】
一方、ばね構造体1では、押圧腕20の弾性腕部22A,22Bが撓み状態から元の状態に復帰する復元力を押圧用突出部24に及ぼすので、押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bがクリック感形成腕30の弾性腕部32A,32BをGA1方向に撓めて弾性腕部32A,32Bの係合突起部34A,34B間を通って、M2方向に変位し、初期位置に戻す。その結果、ばね構造体1も図3の(a)に示した初期状態SP1に戻る。
【0064】
なお、押圧用突出部24の押圧用突出部24の係合突起部28A,28Bが、クリック感形成腕30の弾性腕部32A,32Bに対してM2方向に変位される際、係合突起部28A,28Bは、緩やかに傾斜した側縁28A2,28B2で弾性腕部32A,32Bの係合突起部の傾斜側縁36A,36Bに沿って変位されるので、そのM2方向変位が容易に行われ得る。
【0065】
以上においては、押圧腕20が一対の弾性腕部22A,22Bを備える例について説明したけれども、場合によっては、一方の即ち一の第二弾性腕部22A又は22Bからなっていてもよい。また、以上においては、クリック感形成腕30が一対の弾性腕部32A,32Bを備える例について説明したけれども、場合によっては、一方の即ち一の第一弾性腕部32A又は22Bからなっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の好ましい一実施例の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体の正面説明図。
【図2】図1のばね構造体を備えた本発明の好ましい一実施例の押圧型スイッチを有する本発明の好ましい一実施例の電子時計の一部を示したもので、(a)は電子時計の一部の平面((b)の上面)説明図、(b)は(a)の矢印IIB方向の側面説明図、(c)は(b)のIIC−IIC線断面説明図。
【図3】図2の押圧型スイッチの操作状態ないし動作状態の一部を示したもので、(a)は初期状態についての図2の(b)と同様な説明図であって(b)の矢印IIA方向の説明図、(b)は押圧用突出部の係合突起部がクリック感形成腕の弾性腕部の係合突起部に当接した状態についての(a)と同様な説明図。
【図4】図2の押圧型スイッチの操作状態ないし動作状態の残りの一部を示したもので、(a)は接点がONになった状態についての図3の(a)と同様な説明図、(b)は押圧用突出部の係合突起部がクリック感形成腕の弾性腕部の係合突起部間を通過した状態についての(a)と同様な説明図。
【符号の説明】
【0067】
1 押圧型スイッチ用ばね構造体
2 押圧型スイッチ
3 電子時計
5 地板
5A ピン状突起部
5E 外側面(外周面)
6 押しボタン
6A 内側端部
7 電気絶縁性薄板
8 固定手段
10 基部
11 基部本体部
12 中央突出部
13A,13B 側方突出部
13A1,13B1 先端部
13A2,13B2 内側縁部
14 肥大部
15,16 穴部
17A,17B 切欠部
18A,18B 側縁
18A1,18B1 外側部分
18A2,18B2 内側部分
20 押圧腕
21A,21B 基端部
22A,22B 弾性腕部
23 共通延在端
24 押圧用突出部
26 先端部
27A,27B 側縁
28A,28B 係合突起部
28A1,28B1 内側縁部
28A2,28B2 側縁部
29 膨出部(肥大部)
30 クリック感形成腕
31A,31B 基端部
32A,32B 弾性腕部
33A,33B 先端部
34A,34B 係合突起部
35A,35B 傾斜側面
36A,36B 傾斜側縁
37A,37B 突出部
37A1,37B1 傾斜面
40 回路基板
41 外周側縁部(外周面)
42 段部
43 凹部
44 接点部
50 スイッチ端子
51 電池プラス端子板
51A 電池プラス端子本体部
52 基端部
53 板ばね状腕部
54 押圧力伝達部
54A 先端
55 L字状接点腕部
55A 基端側脚部
55B 先端側脚部
55B1 接点部(延在端)
56 押圧力伝達本体部
56A 押圧力受け部
56B ばね構造体押圧部
57 遷移部
B 間隔
D 幅
EA,EB 方向
GA1,GA2,GB1,GB2 撓み方向
H 厚さ方向
J1,J2 撓み方向
M 中心線
M1,M2 方向
PB1,PB2,PB3 押しボタンの位置
S1 初期状態
S2 接点がONになる状態
S3 クリック感を生じさせた状態
SP1,SP2,SP3 ばね構造体の状態
SQ1,SQ2,SQ3 スイッチ端子の状態
SR1,SR2 押圧力伝達部の状態
SS1,SS2,SS3 接点の状態
SU1,SU2,SU3 押圧突出部の係合突起部の状態(位置)
T 厚さ
V 仮想的境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体であって、
電子時計の静置支持体に固定される基部と、
該基部に一体的に形成された一の第一基端部から延び弾性的に撓み変形可能な一の第一弾性腕部及び該一の第一弾性腕部の第一先端部の一側に形成された一の第一係合突起部を備えたクリック感形成腕と、
前記基部に一体的に形成された一の第二基端部から弧状に湾曲して延び撓み変形可能な一の第二弾性腕部、該一の第二弾性腕部のうち前記クリック感形成腕の前記一の第一弾性腕部の第一先端部に対面する部位において該第一先端部に向かって突出した押圧用突出部及び該押圧用突出部の突出端部のうち前記クリック感形成腕の前記一の第一係合突起部に対面する側の側縁に該一の第一係合突起部に対して係脱可能な一の第二係合突起部を備えた押圧腕とを有し、
前記押圧腕の押圧用突出部が押圧されると、該押圧腕の押圧用突出部の前記一の第二係合突起部が前記クリック感形成腕の前記一の第一係合突起部に係合し該一の第一係合突起部を横向きに押して前記一の第一弾性腕部を弾性的に撓ませ、該一の第一係合突起部のところを通過することにより該一の第一係合突起部との係合が解除されるように構成された電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項2】
前記クリック感形成腕の前記一の第一弾性腕部が、先端側ほど押圧腕の押圧用突出部の変位経路に近接するように、押圧腕の押圧用突出部の変位方向に対して斜めに延びている請求項1に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項3】
前記押圧腕の前記一の第二腕部の前記一の第二基端部が、前記基部の一側において該基部に一体的に形成され、
前記押圧腕が、前記基部の他側に一体的に形成された別の第二基端部から弧状に湾曲して延在し撓み変形可能な別の第二弾性腕部を更に備え、該別の第二弾性腕部が、その延在端において前記押圧用突出部に一体的につながり、前記一の第二弾性腕部と協働して前記押圧用突出部を弾性的に両持ち支持している請求項1又は2に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項4】
前記クリック感形成腕の前記一の第一腕部の前記一の第一基端部が、前記基部の一側において該基部に一体的に形成され、
前記押圧腕が、前記押圧用突出部の前記突出端部のうち前記一の第二係合突起部のある側縁とは反対側の側縁に別の第二係合突起部を備え、
前記クリック感形成腕が、前記基部の他側に一体的に形成された別の第一基端部から延び弾性的に撓み変形可能な別の第一弾性腕部、及び該別の第一弾性腕部の第一先端部のうち前記一の第一弾性腕部の前記一の第一係合突起部に対面する側部において該一の第一係合突起部に向かって突出し前記別の第二係合突起部に係脱可能な別の第一係合突起部を備える請求項1から3までのいずれか一つの項に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項5】
前記クリック感形成腕及び前記押圧腕が前記基部と前記押圧用突出部とを結ぶ中心線に関して、鏡映対称な形状を有する請求項4に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項6】
前記基部が、前記一及び別の第一弾性腕部の間において、前記押圧用突出部に近接する向きに延びた固定部を含む請求項4又は5に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項7】
全体が板状の平面構造体からなる請求項1から6までのいずれか一つの項に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項8】
前記基部が電子時計の地板に位置決め固定されるように構成された請求項1から7までのいずれか一つの項に記載の電子時計の押圧型スイッチ用ばね構造体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つの項に記載の押圧型スイッチ用ばね構造体と、押しボタンの押圧に応じて、該ばね構造体の前記押圧腕のうち前記押圧突出部とは反対側の側面を押圧し、前記押圧腕の前記第二係合突起部が前記クリック感形成腕の前記第一係合突起部に対して係脱される際に接点との導通が確保されるスイッチ板とを有する電子時計の押圧型スイッチ。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか一つの項に記載の押圧型スイッチ用ばね構造体又は請求項9に記載の押圧型スイッチを備えた電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−203037(P2008−203037A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38278(P2007−38278)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】