電子楽器の鍵盤装置
【課題】回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材として、包囲部材により複数の粒子が包囲されたものを用いた場合に、この動作規制部材の長期的な機能保持を実現する具体構造を備えた電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供する。
【解決手段】下限ストッパ5となる移動規制部材71は、傾斜壁71a,垂直壁71b,基底部71cを1単位として、鍵フレーム3aと包囲部材12とで全体を包囲された閉領域に、鍵の配列方向に沿って設けられている。質量集中部28eが衝突したとき、粒子11は傾斜壁71aの面に沿って上昇する。傾斜壁71aと垂直壁71bとの接合部が最上端となって障壁となるため、上昇した粒子11が隣接する領域に移動しにくい。荷重が開放されたとき、複数の粒子11は重力によって下方に移動し元の平らな配置に戻る。
【解決手段】下限ストッパ5となる移動規制部材71は、傾斜壁71a,垂直壁71b,基底部71cを1単位として、鍵フレーム3aと包囲部材12とで全体を包囲された閉領域に、鍵の配列方向に沿って設けられている。質量集中部28eが衝突したとき、粒子11は傾斜壁71aの面に沿って上昇する。傾斜壁71aと垂直壁71bとの接合部が最上端となって障壁となるため、上昇した粒子11が隣接する領域に移動しにくい。荷重が開放されたとき、複数の粒子11は重力によって下方に移動し元の平らな配置に戻る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器の鍵盤装置に関するものであり、特にその鍵や鍵に連動する質量体の回動動作を規制するストッパ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子楽器の鍵盤装置において、押鍵操作したときの鍵の回動動作範囲(初期位置から最大回動位置)は、鍵フレームに配置された上限ストッパ及び下限ストッパにより規制される。
図20は、従来の電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図である。
図中、1は白鍵本体部、2は黒鍵本体部であり、3は鍵フレームである。鍵フレーム3は、鍵の長手方向の前部及び後部に段差部があり、これらの間が水平部3aとなっている。水平部3a後方に鍵支持部3bがある。
【0003】
白鍵本体部1の後端部に鍵支点部1bがあり、鍵支持部3bに取り付けられ、白鍵本体部1を回動可能にしている。
白鍵本体部1は、その上面の左右から下方向に両側面部が形成され、両側面部は、先端部1a寄りの中間位置において、さらに下方向に垂下して左右一対のストッパ片1cとなり、ストッパ片の先端部1dは、鍵の奥行き方向に略直角に曲がっている。
黒鍵本体部2についても、上述した白鍵と同様の位置に、同様の鍵支点部2bとストッパ片2cがある。
鍵フレーム3の前方段差部には、縦に複数本の並行スリット3cが形成され、各スリット3cに、白鍵及び黒鍵のストッパ片の先端部1d,2dが挿入される。
【0004】
鍵フレーム3の水平部3aには、鍵スイッチ4が設置され、これに対向して、白鍵本体部1、黒鍵本体部2の上面裏側に図示しない突部(アクチュエータ)が対向している。
上述したストッパ片の先端部1dの上面に対向して、鍵フレームの水平部3aの下面には、鍵の配列方向に沿って帯状に上限ストッパ182が配置されている。一方、反対側の水平部3bの上面には、下限ストッパ181が帯状に配置されている。図示の例では、これらはすべての白鍵及び黒鍵に共通である。
【0005】
上述した上限ストッパ182及び下限ストッパ181の部材として、衝撃吸収性、消音性、及び、回動範囲の再現性の観点から、弾性復元力を備えたものが必要であり、従来、フェルト又はポリウレタン・エラストマ等が使用されている。
演奏者の押鍵時において、鍵スイッチ4が弾性圧縮されてスイッチをオンとし、さらに鍵が押圧されると、下限ストッパ181は、白鍵本体部1,黒鍵本体部2の左右両側面から衝撃を受けて弾性変形する。弾性変形する際に、内部摩擦により運動エネルギが熱エネルギに変換されることにより制動される。
しかし、下限ストッパ181は、弾性変形から元に戻るときに、弾性復元力を発生し、この弾性復元力が鍵に対する反発力(リバウンドと呼ばれる)となって、鍵本体部1,黒鍵本体部2から演奏者の指に伝わり、演奏者に不快感を与えている。
【0006】
離鍵時においては、図示しない復帰バネの作用等による鍵復帰力により、白鍵本体部1,黒鍵本体部2が元の初期位置に復帰する。このとき、ストッパ片の先端部1dの上面が、上限ストッパ6に衝突する。
このとき、上限ストッパ6の弾性復帰力が、白鍵本体部1に対する反発力となる。この反発力は、鍵復帰力とは相反する方向であり、白鍵本体部1,黒鍵本体部2は、完全に静止するまで振動を繰り返し、演奏者の指が鍵に触れていると、この振動が伝わって演奏者に不快感を与える。
【0007】
また、従来の電子楽器用の鍵盤装置として、押鍵操作に連動して質量体を回動させ、アコースティック・ピアノに似た押鍵感触が得られるものがある。
質量体の回動上限は、慣性モーメント付与部の後方自由端部近傍が上限ストッパに衝突することにより規制される。一方、離鍵後に初期状態に復帰するときは、この慣性モーメント付与部の後端部近傍が下限ストッパに衝突して位置が規制されている。
上述した質量体に対する上限ストッパ及び下限ストッパもまた、質量体の慣性モーメントの衝撃を吸収して制動する。上限ストッパは、質量体が駆動されて衝突したときに反発力を発生し、下限ストッパは、質量体が復帰して衝突したときに、反発力を発生する。
【0008】
そこで、先行技術文献1においては、ハンマー(質量体)の上限ストッパに関し、これに並設する形で、質量体が下側クッションと上側クッションと挟まれた「質量部MB」が設けられている。
この質量体は、エラストマやゴムに金属粉を混合する等により適当な質量と柔軟性とを兼ね備えた弾性材料で構成される。また、金属製の鎖状ワイヤ、又は、砂や金属粉を袋状部材で包んで全鍵幅または複数の鍵幅に亘る長さに形成したものを適用してもよいことが記載されている。
この「質量部MB」は、シャーシ後部に接着等により固定するか、シート部材によって「質量部MB」を下方からくるんで保持する。
【0009】
しかし、この先行技術文献1では、上述した砂や金属粉を袋状部材で包んだ部材の、具体的構造までは検討されていなかった。例えば、包囲部材により包囲された砂や金属粉の長期安定性について検討されていなかった。
【特許文献1】特開2003−195853(図4〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、鍵や質量体などの回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材として、包囲部材により複数の粒子が包囲されたものを用いた場合に、この動作規制部材の長期的な機能保持を実現する具体構造を備えた電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、複数の回動部材と、該複数の回動部材を支持するフレームと、前記各回動部材が衝突することにより当該回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材を有する電子楽器の鍵盤装置において、前記動作規制部材の少なくとも1つは、複数の粒子が包囲部材により部分的に又は全体を包囲されて閉領域に収容された状態で、前記複数の回動部材の配列方向に延在し、前記フレーム又は前記フレーム側の固定部材に配置されているものであり、前記包囲部材により包囲された内部に、前記粒子が移動することを規制する移動規制部材が配設されているものである。
従って、回動部材が衝突したとき、複数の粒子同士が摺動したり衝突したりすることにより、大きな内部損失が得られるから、動作規制部材が回動部材に与える反発力が小さくなる。その結果、鍵盤装置を操作したときの鍵タッチ感がよくなる。
上述した移動規制部材により、粒子が複数の回動部材の配列方向に移動することも規制されるから、動作規制部材の機能が長期にわたって保持される。
【0012】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する各箇所の中間となる複数位置の少なくとも一部に移動規制部が位置するように配設されている。
従って、回動部材が移動規制部材に干渉しないから、動作規制部材の制動機能を損ねない。
【0013】
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する箇所の中間となる複数位置のそれぞれに移動規制部が位置するように配設され、前記各回動部材が衝突する箇所を最下端とし、前記各移動規制部を最上端とする傾斜壁を有するものである。
従って、回動部材が衝突状態でなくなったときに、複数の粒子は、重力の作用により、回動部材が衝突する箇所に向かって移動するから、元の状態に復帰することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記移動規制部材は、略鉛直に配設された壁部材である。
従って、粒子が複数の回動部材の配列方向に移動することを規制するのに最も簡単な構成となる。この壁部材が包囲部材の内部に配置されている動作規制部材を、特に、上限ストッパとして用いれば、回動部材が包囲部材に衝突したときに複数の粒子が上方向に移動する際、及び、複数の粒子が重力により下方向に引き戻される際に、壁部材が移動の障害とならないから、動作規制部材の応答性を損ねない。
【0015】
請求項5に記載の発明においては、請求項1から4までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記壁部材と前記包囲部材とは、部分的に接合されているものである。
従って、壁部材が包囲部材の内部で移動したり、包囲部材そのものが移動したり、閉領域の断面形状が変形されることが防止される。
【0016】
請求項6に記載の発明においては、請求項1から5までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記少なくとも1つの動作規制部材により回動範囲が規制される回動部材は、鍵及び該鍵の押鍵操作に連動して回動する質量体の少なくとも一方である。
鍵盤装置には、押鍵操作に連動して回動する質量体を備えたものと、備えないものとがある。
包囲部材により複数の粒子が包囲された動作規制部材は、鍵及び質量体のいずれの回動範囲の規制に用いてもよいし、両方の回動範囲の規制に用いてもよい。質量体の方が鍵に比べて慣性モーメントが大きいため、質量体の回動範囲の規制に用いた場合に効果が大きい。
包囲部材により複数の粒子が包囲された動作規制部材を用いないことにした動作規制部材については、従来の弾性型動作規制部材を用いればよい。
また、回動範囲の位置規制として、上限の位置規制と下限の位置規制とがある。複数の粒子が包囲部材により閉領域に収容された動作規制部材を、いずれの規制に用いてもよいし、両方に用いてもよい。
特に、押鍵をしたときの回動に対する規制(鍵の場合は一般に下限の位置規制となり、質量体の場合は、一般に上限の位置規制となる)に用いた場合は、演奏者の指が鍵を押している状態であるので、鍵タッチ感が大きく向上する。
包囲部材は、通気性を有していてもよい。また、複数の粒子が基材とこの基材に封着された包囲部材により包囲されて閉領域に収容された状態で、フレーム側に配置されている場合は、包囲部材及び又は基材が通気性を有していてもよい。これらのものが通気性を有していれば、回動部材が動作規制部材に衝突したとき、包囲部材内部の空気圧による反発力が発生しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回動部材が動作規制部材に衝突したときに、反発力が生じないために鍵タッチ感が良好になるという効果がある。この動作規制部材として、包囲部材により複数の粒子が包囲されたものを用いた場合に、この動作規制部材の長期的な機能保持が実現されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本願発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1(a)は、電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図である。
図1(b)は、その下限ストッパ5について、粒子の挙動を右側面方向から模式的に示す説明図であり、図1(c)は、粒子の挙動を正面方向から模式的に示す説明図である。
図中、図20と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
背景技術で説明した図20と比べて、下限ストッパ5(動作規制部材)、及び、上限ストッパ6(動作規制部材)とに、異なる構造の部材を使用している。黒鍵本体部2(回動部材)の動作規制部材についても同様である。
【0019】
図1(b),図1(c)を参照し、白鍵本体部1に対する下限ストッパ5を例に説明する。
下限ストッパ5は、複数の粒子11が通気性を有する包囲部材12により部分的に又は全体を包囲されて閉領域に収容された状態のものである。
下限ストッパ5は、水平部3aを基材とし、この基材上に包囲部材12が封着され、複数の鍵の配列方向に延在し、鍵フレーム3(フレーム)の側である、水平部3aに配置されている。鍵フレーム自体に配置されていなくてもよく、鍵フレームと同様に鍵盤装置を固定的に支持するものに配置されればよい。
粒子11は、固体物であり、球体として図示している。外形寸法は、球体の場合で3mmφ以下が望ましい。先行技術文献1に記載のように、砂や金属粉であってよいが、その他、セラミック球、金属球、プラスチック球などであってもよい。しかし、球体には限られない。
【0020】
包囲部材12は、収容する複数の粒子11の動作を包括的に拘束するものであって、薄くて柔軟性のある素材(薄皮状の素材ということもできる)で形成されている。包囲部材12の柔軟性の度合いに応じて拘束力を任意に設定できるが、衝突を受けたときの運動エネルギが、複数の粒子11に伝わることを阻害しないようなものがよい。
より具体的には、包囲部材の素材が持つ弾性により、包囲部材が受ける力に応じて該包囲部材の表面積が伸縮するものであるか、布のように、自由に変形したりたんだり、弛んだりするものでもよい。
包囲部材12は、接着、融着等により基材である水平部3aに封着されて、粒子11が散逸しないようにしている。
【0021】
白鍵本体部の左側面部1e,右側面部1fの下端が、包囲部材12に衝突したとき、その運動エネルギは、包囲部材12を介して、複数の粒子11に伝達される。粒子11同士が連鎖的に衝突したり、摺動したりして任意の方向に移動する際に、運動エネルギが熱エネルギに変換されて消失する。
従って、弾性エネルギが蓄積されないから、回動部材に対する反発力が発生しない。その結果、不快なタッチ感を排除することができる。
白鍵本体部の左側面部1e,右側面部1fの下端が、包囲部材12を介して直接的に複数の粒子11に衝突するため、複数の粒子11の移動による運動エネルギ消失の効果が高い。
また、包囲部材12の通気性により、複数の粒子11が通気性のある領域に収容されているため、空気圧による弾性反発力が発生しない。
【0022】
上述した説明は、下限ストッパ5(動作規制部材)についてのものであったが、上限ストッパ6(動作規制部材)についても、同様に、鍵フレームの水平部3aの裏面を基材とし、この基材に包囲部材12が封着されている。
ただし、粒子11が衝撃力を受ける方向と重力を受ける方向との関係が、下限ストッパ5とは異なっている。そのため、両者に要求される構造は基本的には一致するが、異なる場合もある。
【0023】
本明細書において、包囲部材12により複数の粒子11が包囲(部分包囲又は全部包囲)された構造を、以下、簡単に、「パーティクル・バッグ」と呼ぶ場合がある。
下限ストッパ5及び上限ストッパ6の少なくとも一方だけを、「パーティクル・バッグ」構造とし、そうでないものは、従来通りのフェルト等を用いた弾性を有する動作規制部材(以下、弾性型動作規制部材という)であってもよい。
【0024】
図2は、本願発明の第2の実施形態を模式的に説明する右側面図である。
図中、21は白鍵本体部(回動部材)、22は黒鍵本体部(回動部材)である。鍵フレーム23(フレーム)は、鍵の長手方向の前部及び後部に段差部があり、これらの間が水平部23aとなっている。水平部23aの後方に鍵支持部23bがある。一方、水平部23aの裏面前方に質量体支持部23cがある。
白鍵本体部21,黒鍵本体部22の後端部に鍵支点部21b,22bがあり、鍵支持部23bに取り付けられ、白鍵本体部21,黒鍵本体部22を回動可能にしている。
【0025】
鍵フレーム23の段差部の前後は、鍵フレーム底板24への取付部23d,取付部23eとなっている。取付部23dの前面は垂直壁23fとなっている。24は鍵フレーム側の固定部材、例えば、電子楽器の下ケース(棚板)であってもよい。
垂直壁23fには、白鍵本体部21に対する鍵ガイド25がある。鍵ガイド25は白鍵本体部の先端部21a近傍の下部に挿入され、鍵の左右方向の位置規制及びローリング規制をする。一方、水平部23aに固定された鍵ガイド26は、黒鍵本体部22に対するものである。
鍵フレームの水平部23a上には、図1と同様の鍵スイッチ4が設置され、これに対向して、白鍵本体部21、黒鍵本体部22の上面裏側に図示しない突部(アクチュエータ)が対向している。
【0026】
白鍵本体部21の下部から力伝達部21cが突き出しており、鍵フレームの水平部23aに設けられた孔23gを貫通している。力伝達部21cの先端に底板を有し、この底板の上部は、鍵の長手方向に抜ける。この底板の上下面に弾性部材27(上面は見えない)が固着されている。
質量体28は、複数の白鍵本体部21,黒鍵本体部22のそれぞれに対して設けられ、各鍵の下方に鍵の配列方向に配置されている。図示の質量体28は、白鍵本体部21に対するもので、質量体支持部23cにより、回動自在に支持され、対応する鍵の力伝達部21cを介して回動される。
【0027】
質量体28は、対応する質量体支持部23cに支持される回動支点部28cと、この回動支点部28cの前方にあって鍵の力伝達部21cに係合する、主被駆動部28a及び副被駆動部28bと、この回動支点部28cの後方にあって慣性モーメントを発生する腕状の慣性モーメント発生部28dを有している。慣性モーメント発生部28dの後端は、質量集中部28eとなっている。
【0028】
主被駆動部28a及び副被駆動部28bは、力伝達部21cの底板を弾性部材27を介して挟み込むようにして力伝達部21cと係合している。
演奏者が鍵を押す操作に連動して質量体28が回動すると、慣性モーメント発生部28dの慣性モーメントに応じた反作用が白鍵本体部21から演奏者の指に与えられる。演奏者が鍵から指を離すと、質量体28は重力の作用により逆回動して図示の位置に戻る。
【0029】
一方、黒鍵本体部22の力伝達部は、図示を省略しているが、力伝達部21cと紙面奥行き方向に重なる位置にある。従って、黒鍵本体部22に対しても、同様に、質量体支持部により回動自在に支持された同様の質量体が設けられ、対応する黒鍵の力伝達部により回動される。
【0030】
水平部23aの上面には、図1と同様に鍵に対する下限ストッパ5が、帯状に配置されている。
30は、質量体28に対する上限ストッパ(動作規制部材)であって、鍵フレームの水平部23aの裏面に配置され、白鍵本体部21の押下に連動して質量体28が回動するときに、質量集中部28eの下面が衝突することにより、質量体28の上限位置が規制される。
一方、29は、質量体28に対する下限ストッパ(動作規制部材)であって、鍵フレーム底板24に配置され、白鍵本体部21の離鍵操作に連動し、質量体28が回動するときに、質量集中部28eの上面が衝突することにより、質量体28の初期位置が規制される。
【0031】
上限ストッパ30及び下限ストッパ29は、図1に示した上限ストッパ6及び下限ストッパと同様に、「パーティクル・バッグ」である。質量体28は鍵に比して衝突時の運動エネルギが大きいことから、「パーティクル・バッグ」を大きくし、エネルギ消失が大きくなるようにしてもよい。
質量体を有する鍵盤構造及び回動方向は、図2に示したものに限らない。初期位置で傾斜状態であった質量体が、押鍵したときに鉛直方向に立ち上がるものもある。この場合、鉛直方向に立ち上がったとき、「パーティクル・バッグ」が水平方向の衝突を受けるようにすればよい。
また、初期位置で質量体が上限にあり、鍵の押し込み位置で質量体が下限にあってもよい。
【0032】
図3は、図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材12の動作機能を示す説明図である。図2に示した下限ストッパ29を例にして説明する。包囲部材12は、内部及び外部から受ける力に応じて表面が伸縮するような弾性を有するものとする。
図3(a)はこのような包囲部材12の初期状態である。
図3(b)に示すように、質量集中部28eが下限ストッパ29に衝突したときの衝撃力により、包囲部材12が水平方向に伸びる結果、包囲部材12は適度な収縮力によって、複数の粒子11を閉領域に拘束するとともに、粒子11の挙動を包括的に拘束する。包囲部材12の柔軟性を調節することにより、演奏者の所望する感触が得られるようにする。
図3(c)に示すように、質量集中部28eが下限ストッパ29から離れたとき、伸びていた包囲部材12は、弾性復元力により縮み、図3(a)に示した初期状態に戻る。
【0033】
次に、図4を参照し、包囲部材の具体例及び基材の構成例を説明する。
図4は、図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材12の具体例を示す説明図である。
図4(a)に示す具体例は、包囲部材12として、網目(メッシュ)状包囲部材41を用いたものである。より具体的には、糸で織られた織布(クロス)、糸を編んだ編み物(ニット)等がある。また、複数本の繊維が交錯した不織布でもよい。
網目状包囲部材41には通気性があるから、複数の粒子42を収容している領域と大気との間で空気の流入・流出がある。
仮に、包囲部材12に通気性がなく、かつ、閉領域に相当量の空気が含まれていると、回動部材(鍵又は質量体)が衝突したとき、包囲部材12の表面が膨らんで空気バネの作用を呈するから、弾性反発力が発生して、所期の効果が得られなくなる。
【0034】
しかしながら、粒子42が網目状包囲部材41を通過してしまうようであれば、粒子42が外部に飛び出てしまう。従って、粒子42の任意の向きの移動に対して、網目の開口部を通過しないようにする。
ここで、図4(b)に示すように、粒子42が球体でない場合、切断する箇所によって断面が異なる。その際、最小断面形状42aを有する面方向が、通過方向43となる。
従って、図4(c)に示すように、目安として、前記網目状の包囲部材の網目の寸法を粒子の最小断面形状42aの寸法よりも小さくしておけば、粒子が網目を通過できなくなる。
なお、網目状包囲部材41は、鍵の配列方向に延在するものであるが、鍵の配列方向の左右両端部は、網目状包囲部材41と同じ素材を当てて粒子42が出ないようにしたり、別の部材を用いて封止してもよい。
【0035】
図4(d)は、包囲部材12として、薄膜(フィルム)44を用いた具体例である。
薄膜44としては、プラスチック、天然ゴム、合成ゴムなどがある。これらが発泡体である場合もある。
薄膜44には、複数の通気孔44aがある。通気孔44aは、回動部材(鍵や質量体)の衝突面を含めて全面に分布するものでもよいが、図示のように、衝突面を避けて分布するものであってもよい。
図4(e)に示すように、通気孔44aの開口部の寸法は、目安として、粒子の最小断面形状42aの寸法よりも小さく設計しておけば、粒子42が通気孔44aを通過することができなくなる。
【0036】
通気孔44aの形状は任意であるが、図示の三角形の他、四角形など、角があるものがよい。粒子42は、丸みを帯びる場合が多いため、同じ断面積であっても、角のある方が、粒子42を塞ぎやすいので、薄膜44を通過させにくい。また、粒子42が通気孔42を塞いでいる状態でも、角の部分に隙間があるから通気性が保たれる。
通気性、言い換えれば、空気の流出・流入特性は、通気孔44aの大きさ及び通気孔44aの個数により調整できる。
【0037】
図4(f)は、「パーティクル・バッグ」の基材に複数の通気孔を設けた例の説明図である。図中、45は基材部、45aはその複数の通気孔、46は台座部である。図1に示した下限ストッパ5について例示する。
台座部46により、基材部45と鍵フレーム3(水平部3a)との間に、空気が流入・流出する隙間が確保される。台座部46は、基材部45又は水平部3aと一体であってもよいし、スペーサなど、別構成であってもよい。
包囲部材11としては、上述した網目状包囲部材41、通気孔44aのある薄膜44であるほか、通気孔を有しない薄膜でもよい。
【0038】
また、上述した基材部45を用いることなく、図1ないし図3において、鍵フレーム3側の固定部材(鍵フレーム3自体でもよい)に複数の通気孔45aに相当する複数の通気孔を設けてもよい。
なお、薄膜44は、鍵の配列方向に延在するものであるが、鍵の配列方向の左右両端部は、薄膜44と同じ素材を継ぎ当てて粒子11が出ないようにしたり、別の部材を用いて封止してもよい。
【0039】
図5は、本願発明の第3の実施形態を示す説明図である。
図1に示した第1の実施形態における下限ストッパ5及び上限ストッパ6に、フェルト等の従来の弾性型動作規制部材が並設されたものである。
図中、図1と同様な部分には同じ符号を付している。51はフェルトであって、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ5に並設され、両者を合わせたものが新たに下限ストッパとなる。
52もフェルトであって、「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ6に並設され、両者を合わせたものが新たに上限ストッパとなる。
【0040】
白鍵本体部1が押下されたとき、白鍵本体部1の左右側面部は、下限ストッパ5とフェルト51の両者に衝突する。その結果、双方の特性の利点を引き出すことができる。
すなわち、「パーティクル・バッグ」は、制動特性は優れるが、形状の再現性(回動部材の初期位置及び動作範囲の再現性)や連打性で劣る部分もある。そのため、鍵の初期位置及び動作範囲の再現性、連打性を、従来の弾性型動作規制部材で補うことにより、鍵の制動特性と演奏性とを向上させる。
一方、白鍵本体部1が離鍵され、白鍵本体部1が元の初期位置に戻ったとき、上限ストッパ6とフェルト52の両者に衝突する。このとき、同様に、双方の特性の利点を引き出すことができる。
【0041】
この実施形態では、その際、図示のように、下限ストッパ5の高さをh1、フェルト51の高さをh2としたとき、h1<h2にする。
その結果、白鍵本体部1が回動するときに、鍵の左右側面部が、最初にフェルト51に衝突した後、これに並設された下限ストッパ5に衝突する。すなわち、フェルト51は、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ5よりも先行して弾性型の動作規制をする。
【0042】
鍵が衝突し、次に鍵が離れた後において、「パーティクル・バッグ」に比べ、フェルト等の弾性型動作規制部材の方が復元力が大きいから、元の高さに戻る。従って、次に鍵の衝突を受けたときにも、フェルト51による動作規制位置が変わらないから、動作規制位置の精度が向上する。これに対し、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ5は、反発力を発生しない制動能力を利用することになる。
同様に、上限ストッパ6の高さをh3、フェルト51の高さをh4としたとき、h3<h4となるようにして、白鍵本体部1が初期位置に復帰したときに、ストッパ片の先端部1dは、フェルト52に衝突し、「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ6より先行して弾性型の動作規制をする。
【0043】
上述した並設構成により、白鍵本体部1の回動動作範囲は、従来のフェルト51,52の間隔により精度良く設定されるから、「パーティクル・バッグ」の高さ位置の再現性が多少不正確であっても回動動作範囲の精度が向上する。
【0044】
図6は、本願発明の第4の実施形態を示す説明図である。
図2に示した第2の実施形態における下限ストッパ29及び上限ストッパ30に、フェルト等の従来の弾性型動作規制部材が並設されたものである。
図中、図2と同様な部分には同じ符号を付している。図5に示した実施形態と同様に、フェルト61が「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ29に並設され、フェルト62が「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ30に並設されたものである。
【0045】
従って、白鍵本体部1が押下されたことに連動して、質量集中部28eの上面部は、上限ストッパ30とフェルト62の両者に衝突する。その結果、図5の場合と同様に、双方の特性の利点を引き出すことができる。
一方、白鍵本体部1が離鍵されたことに連動して、質量集中部28eの下面部が元の初期位置に戻るとき、下限ストッパ29とフェルト61の両者に衝突し、同様に、双方の特性の利点を引き出すことができる。
【0046】
この実施形態でも、図示のように、上限ストッパ30の高さをh1、フェルト62の高さをh2としたとき、h1<h2にする。その結果、質量体28が回動するときに、質量集中部28eに対し、フェルト62は、「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ30よりも先行して弾性型の動作規制をする。
同様に、下限ストッパ29の高さをh3、フェルト61の高さをh4としたとき、h3<h4となるようにして、質量集中部28eが初期位置に復帰したときに、質量集中部28eに対し、フェルト61は、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ29より先行して弾性型の動作規制をする。
上述した構成により、質量体28の回動動作範囲は、従来のフェルト61,62の間隔により設定することができ、「パーティクル・バッグ」の高さ位置が多少不正確であっても、回動動作範囲の精度が向上する。
【0047】
図5,図6を参照した説明では、下限ストッパと上限ストッパの両者に、従来のストッパ部材であったフェルトが並設されて、回動動作範囲の精度を向上させていた。
しかし、図1の上限ストッパ5、図2の上限ストッパ30に関しては、従来のストッパ部材を特に並設しなくても、粒子に対する重力の作用によって、「パーティクル・バッグ」の動作規制位置が定まりやすい。
【0048】
図7は、上限ストッパにおける粒子に対する重力の作用を示す説明図である。
図7(a)は質量集中部28eが初期位置にあるときの鍵盤装置の部分拡大図、図7(b)は質量集中部28eが上限ストッパ30に衝突したときの鍵盤装置の部分拡大図である。図中、図6と同様な部分には同じ符号を付している。
図7(a)において、質量体28が回動するときに質量集中部28eが衝突する上限ストッパ30において、質量集中部28eの衝突箇所(衝突位置)が、この上限ストッパ30が配置されている鍵フレーム3の水平部3bよりも下方に位置する。
【0049】
上限ストッパ30である「パーティクル・バッグ」に収容された複数の粒子11は、重力を受けて下方へ集まるから、包囲部材12の下面の位置が定まる。すなわち、衝突部位の粒子位置は、重力により初期化される性質がある。
図7(b)に示すように、質量集中部28eが上限ストッパ30に衝突すると、粒子11は上方に分散するが、質量集中部28eが上限ストッパ30から離れれば、粒子11は図7(a)示すように下方へと引き戻される。
その際、「パーティクル・バッグ」の上部に、空きスペースができるように、「パーティクル・バッグ」に収容される粒子11の収容密度を小さくしておけば、粒子11が上方に分散しやすくなる。
【0050】
図4を参照して説明した「パーティクル・バッグ」は、鍵の配列方向に長く一様に形成されたものであった。そのため、長期間使用されている間に、粒子11が鍵の配列方向の想定外の場所に移動すれば、ついには制動機能を果たさなくなる。
例えば、図1(c)において、白鍵本体部1の左右側面部1e,1fが包囲部材12に衝突したとき、衝突部の直下が窪む。その後、白鍵本体部1が上方に復帰したとき、粒子11が元に戻って包囲部材12が平らになればよいが、完全には元に戻らなくなる。あるいは、電子楽器を僅かに傾斜した状態で使用していると粒子11の分布が鍵の配列方向に異なるようになる。
そこで、包囲部材12の内部に粒子11の鍵配列方向への移動を規制する移動規制部材を設けることにより、回動部材の配列方向に粒子11が移動しないようにして、動作規制部材(下限ストッパ、上限ストッパ)が長期的に制動機能を保持できるようにする。
【0051】
図8は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図8(a)は下限ストッパ29の斜視図、図8(b),図8(c)は、移動規制部材71の動作を説明する正面図である。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。図8(a)においては複数の粒子11の図示を省略した。
【0052】
71は移動規制部材、71aはその傾斜壁、71bは傾斜壁71aに隣接して接合された垂直壁、71cは垂直壁71bを支持する基底部である。傾斜壁71aの左右が対向し、その間に凹部を形成している。
移動規制部材71は、上述した傾斜壁71a,垂直壁71b,基底部71cを1単位として、基材となる鍵フレーム3aと包囲部材12とで全体を包囲された閉領域に、鍵の配列方向に沿って設けられ、移動規制部材71の断面は略M字形状である。
【0053】
傾斜壁71aの最下端の鉛直線上に、質量集中部28eが衝突する箇所が位置する。図示の例では、凹部が滑らかに湾曲しているが、傾斜壁71aの左右は平面であってもよい。各1単位は、鍵の配列方向に並んでいる各質量体の質量集中部28eに対応する。
その基底部71cは、鍵フレーム3a上に固定されてよいが、単に置かれているだけでもよい。
【0054】
図8(b)に示すように、質量集中部28eが衝突したとき、複数の粒子11には、包囲部材12を介して衝撃荷重が加わる。このとき、粒子11が移動するが、傾斜壁71aのために移動方向が規制される。すなわち、粒子11が傾斜壁71aに衝突すると、傾斜壁71aは粒子11に対し抗力を発生するから、粒子11は傾斜壁71aの面に沿って上昇する。粒子11は流体であるかのように移動する。
傾斜壁71aと垂直壁71bとの接合部が最上端となっており、包囲部材12との間が狭くなっている。この最上端が障壁となるため、上昇した粒子11が、この障壁を超えて隣接する領域に移動しにくい。
【0055】
図8(c)に示すように、荷重が開放されたとき、複数の粒子11は、重力によって、さらに、包囲部材12に弾性復元力があればこれによっても、傾斜壁71aの面に沿って下方に移動し、元の平らな配置に戻る。
その結果、複数の粒子11は鍵の配列方向の左右に、1つの鍵の範囲、言い換えれば、1つの質量体の範囲を超えて移動することが規制される。
上述した傾斜壁71aの凹部の中心は質量体の衝突位置が来るように配置され、傾斜壁71aに接合された垂直壁71bは、隣接する質量体の衝突位置の中間になるように配置されるから、質量体が衝突したときに粒子の移動を妨げない。
【0056】
上述したように、移動規制部材71は、「パーティクル・バッグ」を構成する、鍵フレーム3aと包囲部材12とで形成される内部に配置され、傾斜壁71aと垂直壁71bとの接合部が移動規制部となって、複数の粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制する。加えて、凹部を形成する傾斜壁71aは、荷重が開放されたときに移動した粒子11を復帰させる。
その結果、移動規制部材71は長期的な制動機能の保持を実現する。
【0057】
図9は、図2に示した下限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。いずれも移動規制部材の一単位分のみを切り出して示している。
図9(a)において、81は移動規制部材、81aはその水平部、81bは水平部81aの中心に設けられた開口部、81cは水平部81bを支持する垂直壁、81dは基底部である。
この具体例では、開口部81bの下の領域に入り込んだ複数の粒子11に対し、垂直壁81cが移動規制部となって、鍵の配列方向の移動を規制する。
【0058】
図9(b)において、82は移動規制部材、82aはその水平部、82bは水平部81aの前後(鍵の長手方向)に設けられた「くびれ部」、82cは水平部81bを支持する垂直壁、82dは基底部である。
この具体例では、くびれ部82bの下の領域に入り込んだ複数の粒子11に対し、垂直壁82cが移動規制部となって、鍵の配列方向の移動を規制する。
【0059】
図10は、図2に示した下限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図10(a)において、91は移動規制部材であって、H字形水平断面を有する。91aはそのH字形の横棒をなす垂直壁であって、91bは垂直壁91aの両側面に結合した、H字形の立棒をなすフランジである。この具体例では、垂直壁91a自体が移動規制部となって、粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制する。
移動規制部材91は、垂直壁91a,フランジ91bを単位とし、基材となる鍵フレーム底部24と包囲部材12とで全周が囲まれた内部に、鍵の配列方向に配設されている。
【0060】
移動規制部材91は、基材となる鍵フレーム底部24に固定されていたり、鍵フレーム底部24と一体で成形されていてもよいが、単に載置されているだけでもよい。
図示の例では、フランジ91bの図示ハッチングを施した部分と包囲部材12とを、接着、粘着(例:両面接着テープ)、融着、ねじ止め等の方法で接合している。
その結果、移動規制部材91が単に載置されているだけでも、移動規制部材91が固定される。また、逆に、包囲部材12が移動規制部材91に固着されているため、包囲部材12の断面形状が崩れにくくなる。
【0061】
図10(b)における移動規制部材92の傾斜壁92aは、図8に示した傾斜壁71aと同様のものであって、滑らかな凹部を形成している。92bは水平部であって、傾斜壁92aの最上部と結合して、移動規制部となる。
移動規制部材92は、傾斜壁92aとその左右の水平部92bの各半分とを一単位として、基材となる鍵フレーム底板24と包囲部材12とで囲まれた内部領域に、鍵の配列方向に延在している。
移動規制部材92は、基材となる鍵フレーム底部24上に固定されてもよいが、単に置かれているだけでもよい。水平部92bの図示ハッチングを施した部分と包囲部材12とを、接着、粘着(例:両面接着テープ)、融着、ねじ止め等の方法で接合すればよい。
【0062】
図8〜図10を参照した説明では、図2に示した質量体28の回動に対する下限ストッパ29を前提として説明した。
しかし、図1に示した鍵の回動に対する下限ストッパ5を前提とした場合も同様である。ただし、隣接する鍵の左右側面部の間隔は僅かである。
そのため、ある鍵の左側面部(図1では1e)及びこの鍵の左に隣接する鍵の右側面部(図1では1f)、ある鍵の右側面部(図1では1f)及びこの鍵の右に隣接する鍵の左側面部(図1では1e)というように、隣接する鍵の左右側面部同士を1単位の回動部材と見なし、上述した1本の質量集中部25eと等価に扱えばよい。
【0063】
従って、上述した移動規制部材71,81,82の移動規制部が各鍵の中間(鍵の左側面部1eと右側面部1fとの中間)に位置するように、移動規制部材71,81,82を配設すればよい。
なお、図10に示した移動規制部材91については、衝突箇所との直接的な対応関係がないので、隣接する質量体28(質量集中部28e)の中間位置に設けるのであれば、全ての中間位置に設置するのに代えて、任意の間隔で設置し、移動規制部材91を設置しない中間位置があってもよい。
【0064】
図11は、図2に示した上限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図11(a)は、鍵盤装置の概要を示す平面図である。
図11(b)は、この上限ストッパ30を下から見上げた斜視図であり、図11(c),図11(d)は、この上限ストッパ30の動作を示す説明図である。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。図11(a),図11(b)については、複数の粒子11の図示を省略した。
【0065】
図11(a)において、移動規制部材101は、図10(a)に示した下限ストッパ29の移動規制部材91と同様に、H字形の水平断面形状を有している。101aは垂直壁、101bはフランジ部である。この具体例では、垂直壁101aと重力の作用とによって、粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制する。
移動規制部材101は、基材となる鍵フレーム水平部23aの裏面に固定されているか、鍵フレーム水平部23aと一体で成形される。
【0066】
図11(a)に示すように、質量集中部28eが衝突しない位置、すなわち、隣接する質量集中部28eの中間に移動規制部材101が配設されている。
図11(d)に示すように、初期状態においては、重力の作用により、複数の粒子11は、下方に下がっている。閉領域に対し粒子11の個数を少なくしておけば、天井面となる鍵フレーム水平部23aの側に空きスペース102ができている。
【0067】
図11(c)に示すように、質量集中部28eの衝撃荷重が包囲部材12に加わったときには、複数の粒子11は、重力に反して上方に拡散し、空きスペース102においては、粒子11が跳ね上がる。その際、垂直壁101aの存在により、粒子11は、衝撃力の方向(鉛直方向上向き)を中心に移動し、包囲部材12と垂直壁101aとの間の隙間をくぐって鍵の幅方向に移動しにくい。
図11(d)に示すように、質量集中部28eの荷重が開放されて、初期状態に戻れば、複数の粒子11は、重力に従い再び下方へ引き戻される。
【0068】
上述したように、移動規制部材101の垂直壁101aは、鉛直面で構成されるから、粒子11が上方へ移動する際、及び、再び重力で下方に移動する際に、粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制するものの、粒子11に対する摩擦抵抗は最小限に抑えられている。その結果、質量集中部28eが衝突したときの応答性及び荷重が開放されたときの初期状態に戻るまでの応答性が損なわれない。
【0069】
図12は、図2に示した上限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。いずれも移動規制部材の一単位分を示している。
図12(a)に示す移動規制部材111は、図11に示した移動規制部材101を前提構成として、フランジ111bの高さを低くし、垂直壁111aの包囲部材12に面する側を、包囲部材12の側断面の合わせて丸くしたものである。
【0070】
図12(b)に示す移動規制部材112は、円形の開口部112aを備えた円筒を用いたものである。円筒状の垂直壁112bが略鉛直に配設された壁部材となる。
図12(c)に示す移動規制部材113は、水平断面が逆Z字形となる部材を用いたものであり、鍵の配列方向に対して斜めになった垂直壁113aと、この垂直壁113aの両側を支持するフランジ113bを備えている。
図12(d)に示す移動規制部材114は、なだらかな傾斜面114bを有して窪んだ鞍形の部材であり、この鞍形の前後の半円形状の側面部分が1対の垂直壁114aとなっている。
【0071】
図12に示した移動規制部材111〜114は、いずれも垂直壁を有し、これらの垂直壁が略鉛直に配設された壁部材となって、粒子11がこの垂直壁を超えて鍵の配列方向に移動することを規制している。
上述した移動規制部材111〜114は、基材となる鍵フレーム水平部23a上に固定されているか、鍵フレーム水平部23aと一体で成形される。図示していないが、包囲部材12と部分的に接合してもよい。
【0072】
図13は、図2に示した上限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。下から見上げた斜視図で示す。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。
この移動規制部材121は、図11に示した複数の移動規制部材101を連結して一体化したものである。121aは垂直壁、121bはアーチ形の側板である。垂直壁121a自体が移動規制部となり、側板121bにおけるアーチの凹部の鉛直下方が、質量集中部28eの衝突する箇所となる。
【0073】
上述した移動規制部材121は、基材となる鍵フレーム水平部23a上に固定されているか、鍵フレーム水平部23aと一体で成形される。
包囲部材12を、基材となる鍵フレーム水平部23aに封着する代わりに、アーチ側板121bの、鍵フレーム水平部23a側における側面121cに封着することができる。
【0074】
上述した移動規制部材の移動規制部は、隣接する質量体の質量集中部28eの中間位置に設けるのであれば、全ての中間位置に設置してもよいが、任意の間隔で設置し、移動規制部材を設置しない中間位置があってもよい。
上述した移動規制部材は、質量体28の質量集中部28gに対する上限ストッパ30であった。
しかし、鍵の移動規制をする上限ストッパ6に上述した各種の移動規制部材を設置してもよい。
【0075】
図8〜図13に示した移動規制部材を使用しても、鍵盤装置を壁に立てかけた状態で放置したり、鍵盤装置を縦長にして運んだりした場合に、包囲部材に包囲された粒子が、鍵の配列方向に偏在するおそれがある。そうすると、高音域側の鍵と低音域側の鍵とでは、鍵タッチ感が変化したり、所望の制動機能が得られなくなったりする。
【0076】
そこで、以下に示す具体例では、動作規制部材の閉領域を複数の領域に分割することにより、鍵の配列方向への粒子11の移動を阻止するようにし、使用中に複数の粒子が想定外の領域へ移動しないだけでなく、長期使用や楽器の立てかけ等によっても、動作規制部材が長期的に機能を保持するようにした動作規制部材の具体例を説明する。
【0077】
図14は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、外部に移動阻止部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。複数の粒子11は図示を省略した。
131は移動阻止部材である。131aはアーム、131bはアーム131aを支持する支持部、131cは支持部131bを鍵盤フレーム底部24に固定するための基底部である。
132は、鍵盤フレーム底部24において包囲部材12により包囲された「パーティクル・バッグ」の節部、133はこの「パーティクル・バッグ」の腹部である。
【0078】
アーム131aは、包囲部材12の外側にあって、包囲部材12の外から「パーティクル・バッグ」を押しつぶす移動阻止部材となる。アーム131aは、「パーティクル・バッグ」で形成された下限ストッパ29の閉領域を、複数の部屋に分割する。複数の粒子11は、分割された個々の閉領域(部屋)に閉じこめられているから、粒子11の鍵の配列方向への移動が阻止される。
上述した節部132(分割位置)では制動機能が得られないから、節部132は、制動機能を要しない、隣接する質量集中部28eの中間位置に設定される。
質量集中部28eは、腹部133(分割位置の中間部)の上方に衝突する。
【0079】
図15は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に閉塞部が形成された動作規制部材を示す説明図である。
図15(a)に示すように、先ず、包囲部材141を袋状にする。平面状に形成された矩形の素材を2つ折りにし、対向する上端部141aと下端部141bとを重ね合わせて結合することにより、筒状の包囲部材141を形成する。材料自体の融着、接着材を用いた接着、糸を用いた縫合、クリップ等の挟み込み部材を用いた挟着等、対向する面同士の一般的な結合方法を用いる。
【0080】
次に、筒状の包囲部材141の一端部を密閉し、他端部から粒子11を注入し、図15(b)に示すように、包囲部材141により包囲された粒子11の閉領域を複数の部屋に分割する。
そのために、分割位置の粒子11を移動させ、上下の包囲部材を押しつぶし、略線状に重ね合わせ、端部(上端部141a,下端部141b)と同様の面同士の結合を行う。結合された略線状の分割位置は、扁平な閉塞部141cとなる。
閉塞部141cは、図示のように、端部の線(鍵の配列方向)と直交する方向に形成する。
【0081】
閉塞部141cを形成する際に、包囲部材141を鍵配列の中心軸方向に寄せて縮めた上で略線状に結合し、閉領域の断面が拡張されるようにし、多数の粒子11を収容できるようにするとよい。
なお、袋状となった包囲部材141への粒子11の注入は、閉塞部141cを1つ形成する毎に順次行ってもよい。
【0082】
図16は、図15に示した筒状の包囲部材を作成する他の具体例の説明図である。
図16(a)に示す包囲部材142は、最初、平面状に形成された2枚の矩形素材を用いる。1枚目の左端部142a,右端部142bを、それぞれ、2枚目の左端部142c,右端部142dに重ね合わせ、端部を結合する。その方法は、図15の場合と同様である。
図16(b)に示す包囲部材143は、平面状の素材を丸くして、内端部143aと外端部143bとを重ね合わせて結合する。
図16(c)においては、筒状体144を用いる。例えば、袋織りされた織物、丸編みされた編み物、筒状に射出成形された薄膜である。
いずれの具体例においても、分割位置における略線状の閉塞部は、図15の場合と同様の方法で形成する。
【0083】
図17は、図15に示した略線状の閉塞部が形成された筒状の包囲部材を使用する鍵盤装置を示す説明図である。
図2に示した構造を前提として説明する。図2と同様な部分には同じ符号を付している。
図17(a)は、電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図であり、図17(b)〜図17(e)は、上限ストッパの動作説明図である。
【0084】
図17(a)における下限ストッパ151,上限ストッパ152は、それぞれ、質量体28に対する動作規制をする。いずれも、図15を参照して説明した、略直線状の閉塞部141cを有する包囲部材141を用いた動作規制部材である。
白鍵本体部21に対する動作規制をする下限ストッパ153や黒鍵本体部22に対する動作規制をする図示しない下限ストッパにも同様な動作規制部材を用いてよい。
いずれも、衝突面が水平になるように設置している。各動作規制部材は固定するか、図14に示したアーム131aのような部材で、閉塞部141cを、動作規制部材の原形をとどめたまま支持する。
【0085】
図17(b)に示すように、包囲部材141において、質量集中部28eから衝撃荷重を受けるのは腹部の下面である。この腹部の下面が略直線状の閉塞部141cと略平行になるように、動作規制部材が鍵フレームの水平部23aに設けられている。
同様に、鍵に対する下限ストッパ153についても、衝突面となるその腹部の上面が略直線状の閉塞部141cと略平行になるように配置する。
上述した配置であれば、衝撃荷重が加わったとき、質量集中部28eは、閉塞部141cと略直交する角度から包囲部材141に衝突し、その結果、衝突面がそのまま扁平に近づく。従って、閉塞部141cが形成されていても、節部となる閉塞部141cと腹部となる衝突部との間において、包囲部材141の形状変化が無理なく行われるから、制動が正常に機能する。
【0086】
図17(c)に示すように、図15(a)に示した原形の包囲部材141に対し、上面と下面を開き、端部に直交する方向に扁平とした包囲部材154に、端部の線に略直交する線状の閉塞部154cを形成したものを用いてもよい。
この場合も、この腹部の下面が略直線状の閉塞部141cと略平行になるように、この動作規制部材を鍵フレームの水平部23aに設ける。衝撃荷重が加わったとき、衝突面がそのまま扁平に近づくから、この具体例でも制動が正常に機能する。
【0087】
これに対し、比較例として、図17(c)に示されるように、上限ストッパ152が、その包囲部材141の上下面及び閉塞部141cが、ほぼ鉛直になるように設置されていたとする。
図17(d)に示すように、上限ストッパ152に衝撃荷重が加わったとき、包囲部材141は、略直線状の閉塞部141cと直交する水平方向に断面がつぶれて扁平となる。しかし、閉塞部141cにおいては、鉛直方向に略直線状の形状を維持しようとする。
従って、衝突面と閉塞部141cの直線とは直交してしまう。その結果、包囲部材141の衝突部(腹部)と閉塞部141c(節部)との間の包囲部材141に大きな歪みが加わる。そのため、制動動作が円滑に行われず、鍵タッチ感に悪影響を及ぼし、包囲部材141の耐久性にも問題がある。
【0088】
上述した上限ストッパ152の動作は、下限ストッパ151,153についても同様である。また、図1に示した鍵盤装置において用いる、鍵の回動に対する下限ストッパ5,上限ストッパ6について、図15を参照して説明した包囲部材141を有する動作規制部材を用いる場合も同様である。
【0089】
図18は、図15に示した筒状の包囲部材に閉塞部を形成するための、他の具体例の説明図である。
図中、161は包囲部材、161aは閉塞部、162は締結部材である。包囲部材161の素材に制約はなく、図3に示したものを用いることができる。
この具体例では、包囲部材161を締結部材162を用いて略点状に絞ることにより、締結部161aを形成する。
【0090】
締結部材162としては、ゴムや糸、紐である。糸、紐で縛ったり、ゴム止めしたり、糸で縫合したりする。また、締結部材162として金属製リングを用い、これでかしめたりする。
なお、締結部材162を用いることなく、包囲部材161自体をねじることによっても閉塞部161aを形成することができる。
【0091】
図15に示したような略直線状の閉塞部141cと比較して、略点状に絞る方が組み立てが容易であるだけでなく、包囲部材161の内部包囲領域の断面が略円形状となるから、多数の粒子11を収容することができる。
また、上述した略直線状の閉塞部141cは、図17を参照して説明したように、包囲部材141への質量体や鍵の衝突角度が問題となった(角度異方性)が、略点状の閉塞部161aは、包囲部材161の腹部に質量体や鍵がどのような角度で衝突しても、閉塞部161aが影響を与えない。
【0092】
上述した図14〜図18においては、包囲部材に閉塞部を設けることにより、包囲領域を複数の包囲領域に分割することにより、粒子が鍵の配列方向に移動することを阻止している。
この閉塞部を設ける位置は、鍵や鍵に連動する質量体(回動部材)が衝突する箇所の中間となる全ての位置であった。より具体的には、質量体に対しては隣接する質量体のすべての中間位置であり、鍵に対しては鍵自体の中間位置であった。
【0093】
しかし、すべての中間位置に設けなくてもよい。また、閉塞部により分割された各閉領域内に、図8〜図13に示した移動規制部材を収容してもよい。
図19は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に形成された閉塞部の配置を説明する模式的な平面図である。
下限ストッパとして、図15に示した包囲部材を有する動作規制部材を前提としたものについて例示する。
図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
図19(a)に示す動作規制部材171においては、隣接する質量集中部28eの各中間位置に閉塞部171aによる分割位置を設けている。
一方、図19(b)に示す動作規制部材172においては、隣接する3本の質量集中部28eを1グループとし、グループ単位で分割し、隣接するグループの中間位置に閉塞部による分割位置172aを設けている。従って、グループ化された質量集中部28eが、閉領域を共有することになる。従って、閉塞部172aを形成するための構造あるいは加工が節約できる。
通常は、同じ個数の質量集中部28eで1グループを構成すればよいが、1グループとする個数を、グループ毎に異ならせてもよい。
【0095】
図15ないし図18を参照して説明した具体例では、筒状の包囲部材に閉塞部を形成するものであった。
しかし、閉塞部を形成しない場合でも、図1〜図14を参照して説明した動作規制部材のように、包囲部材を基台に封着する場合に比べて、筒状の包囲部材を使用してもよい。最初に粒子を包囲部材に詰めておけば、以後の鍵フレームへの固着などの作業において、粒子の取扱が容易となるから、組立性が向上する。
【0096】
上述した上限ストッパ及び下限ストッパ(動作規制部材)の設置位置は、典型的な位置を例示して説明したが、鍵や鍵に連動する質量体(回転部材)に対する動作規制機能を果たすものであれば、図示の位置以外に設けてもよい。
上限ストッパ及び下限ストッパ(動作規制部材)を鍵フレームそのものに配置する必要はなく、回動部材に対する固定側であればよいから、鍵フレーム側の任意の固定部材に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本願発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】本願発明の第2の実施形態を模式的に説明する右側面図である。
【図3】図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材の動作機能を示す説明図である。
【図4】図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材の具体例を示す説明図である。
【図5】本願発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【図6】本願発明の第4の実施形態を示す説明図である。
【図7】上限ストッパにおける粒子に対する重力の作用を示す説明図である。
【図8】図2に示した下限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図9】図2に示した下限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図10】図2に示した下限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図11】図2に示した上限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図12】図2に示した上限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図13】図2に示した上限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図14】図2に示した下限ストッパの具体例であって、外部に移動阻止部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図15】図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に閉塞部が形成された動作規制部材を示す説明図である。
【図16】図15に示した筒状の包囲部材を作成する他の具体例の説明図である。
【図17】図15に示した略線状の閉塞部が形成された筒状の包囲部材を使用する鍵盤装置を示す説明図である。
【図18】図15に示した筒状の包囲部材に閉塞部を形成するための、他の具体例の説明図である。
【図19】図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に形成された閉塞部の配置を説明する模式的な平面図である。
【図20】従来の電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…白鍵本体部(回動部材)、2…黒鍵本体部(回動部材)、3…鍵フレーム(フレーム)、5…下限ストッパ(動作規制部材)、6…上限ストッパ(動作規制部材)、
11,42…粒子、12…包囲部材、
21…白鍵本体部(回動部材)、22…黒鍵本体部(回動部材)、23…鍵フレーム(フレーム)、29…下限ストッパ(動作規制部材)、6…上限ストッパ(動作規制部材)、
28…質量体(回動部材)、28e…質量集中部、
41…網目状包囲部材、44…薄膜、44a…通気孔、45…基材部、45a…通気孔、51,52,61,62…フェルト、
【0099】
71,81,82,91,92,101,111,112,113,114,121…移動規制部材、71a,92a…傾斜壁、71b,81c,82c,91a,101a,111a,112b,113a,114a,121a…垂直壁、
【0100】
131…移動阻止部材、141,142,143,144,154,161…包囲部材、141c,154c,161a…閉塞部、162…締結部材、151,153…下限ストッパ(動作規制部材)、152…上限ストッパ(動作規制部材)、171…動作規制部材、171a,172a…閉塞部による分割位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器の鍵盤装置に関するものであり、特にその鍵や鍵に連動する質量体の回動動作を規制するストッパ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子楽器の鍵盤装置において、押鍵操作したときの鍵の回動動作範囲(初期位置から最大回動位置)は、鍵フレームに配置された上限ストッパ及び下限ストッパにより規制される。
図20は、従来の電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図である。
図中、1は白鍵本体部、2は黒鍵本体部であり、3は鍵フレームである。鍵フレーム3は、鍵の長手方向の前部及び後部に段差部があり、これらの間が水平部3aとなっている。水平部3a後方に鍵支持部3bがある。
【0003】
白鍵本体部1の後端部に鍵支点部1bがあり、鍵支持部3bに取り付けられ、白鍵本体部1を回動可能にしている。
白鍵本体部1は、その上面の左右から下方向に両側面部が形成され、両側面部は、先端部1a寄りの中間位置において、さらに下方向に垂下して左右一対のストッパ片1cとなり、ストッパ片の先端部1dは、鍵の奥行き方向に略直角に曲がっている。
黒鍵本体部2についても、上述した白鍵と同様の位置に、同様の鍵支点部2bとストッパ片2cがある。
鍵フレーム3の前方段差部には、縦に複数本の並行スリット3cが形成され、各スリット3cに、白鍵及び黒鍵のストッパ片の先端部1d,2dが挿入される。
【0004】
鍵フレーム3の水平部3aには、鍵スイッチ4が設置され、これに対向して、白鍵本体部1、黒鍵本体部2の上面裏側に図示しない突部(アクチュエータ)が対向している。
上述したストッパ片の先端部1dの上面に対向して、鍵フレームの水平部3aの下面には、鍵の配列方向に沿って帯状に上限ストッパ182が配置されている。一方、反対側の水平部3bの上面には、下限ストッパ181が帯状に配置されている。図示の例では、これらはすべての白鍵及び黒鍵に共通である。
【0005】
上述した上限ストッパ182及び下限ストッパ181の部材として、衝撃吸収性、消音性、及び、回動範囲の再現性の観点から、弾性復元力を備えたものが必要であり、従来、フェルト又はポリウレタン・エラストマ等が使用されている。
演奏者の押鍵時において、鍵スイッチ4が弾性圧縮されてスイッチをオンとし、さらに鍵が押圧されると、下限ストッパ181は、白鍵本体部1,黒鍵本体部2の左右両側面から衝撃を受けて弾性変形する。弾性変形する際に、内部摩擦により運動エネルギが熱エネルギに変換されることにより制動される。
しかし、下限ストッパ181は、弾性変形から元に戻るときに、弾性復元力を発生し、この弾性復元力が鍵に対する反発力(リバウンドと呼ばれる)となって、鍵本体部1,黒鍵本体部2から演奏者の指に伝わり、演奏者に不快感を与えている。
【0006】
離鍵時においては、図示しない復帰バネの作用等による鍵復帰力により、白鍵本体部1,黒鍵本体部2が元の初期位置に復帰する。このとき、ストッパ片の先端部1dの上面が、上限ストッパ6に衝突する。
このとき、上限ストッパ6の弾性復帰力が、白鍵本体部1に対する反発力となる。この反発力は、鍵復帰力とは相反する方向であり、白鍵本体部1,黒鍵本体部2は、完全に静止するまで振動を繰り返し、演奏者の指が鍵に触れていると、この振動が伝わって演奏者に不快感を与える。
【0007】
また、従来の電子楽器用の鍵盤装置として、押鍵操作に連動して質量体を回動させ、アコースティック・ピアノに似た押鍵感触が得られるものがある。
質量体の回動上限は、慣性モーメント付与部の後方自由端部近傍が上限ストッパに衝突することにより規制される。一方、離鍵後に初期状態に復帰するときは、この慣性モーメント付与部の後端部近傍が下限ストッパに衝突して位置が規制されている。
上述した質量体に対する上限ストッパ及び下限ストッパもまた、質量体の慣性モーメントの衝撃を吸収して制動する。上限ストッパは、質量体が駆動されて衝突したときに反発力を発生し、下限ストッパは、質量体が復帰して衝突したときに、反発力を発生する。
【0008】
そこで、先行技術文献1においては、ハンマー(質量体)の上限ストッパに関し、これに並設する形で、質量体が下側クッションと上側クッションと挟まれた「質量部MB」が設けられている。
この質量体は、エラストマやゴムに金属粉を混合する等により適当な質量と柔軟性とを兼ね備えた弾性材料で構成される。また、金属製の鎖状ワイヤ、又は、砂や金属粉を袋状部材で包んで全鍵幅または複数の鍵幅に亘る長さに形成したものを適用してもよいことが記載されている。
この「質量部MB」は、シャーシ後部に接着等により固定するか、シート部材によって「質量部MB」を下方からくるんで保持する。
【0009】
しかし、この先行技術文献1では、上述した砂や金属粉を袋状部材で包んだ部材の、具体的構造までは検討されていなかった。例えば、包囲部材により包囲された砂や金属粉の長期安定性について検討されていなかった。
【特許文献1】特開2003−195853(図4〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、鍵や質量体などの回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材として、包囲部材により複数の粒子が包囲されたものを用いた場合に、この動作規制部材の長期的な機能保持を実現する具体構造を備えた電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、複数の回動部材と、該複数の回動部材を支持するフレームと、前記各回動部材が衝突することにより当該回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材を有する電子楽器の鍵盤装置において、前記動作規制部材の少なくとも1つは、複数の粒子が包囲部材により部分的に又は全体を包囲されて閉領域に収容された状態で、前記複数の回動部材の配列方向に延在し、前記フレーム又は前記フレーム側の固定部材に配置されているものであり、前記包囲部材により包囲された内部に、前記粒子が移動することを規制する移動規制部材が配設されているものである。
従って、回動部材が衝突したとき、複数の粒子同士が摺動したり衝突したりすることにより、大きな内部損失が得られるから、動作規制部材が回動部材に与える反発力が小さくなる。その結果、鍵盤装置を操作したときの鍵タッチ感がよくなる。
上述した移動規制部材により、粒子が複数の回動部材の配列方向に移動することも規制されるから、動作規制部材の機能が長期にわたって保持される。
【0012】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する各箇所の中間となる複数位置の少なくとも一部に移動規制部が位置するように配設されている。
従って、回動部材が移動規制部材に干渉しないから、動作規制部材の制動機能を損ねない。
【0013】
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する箇所の中間となる複数位置のそれぞれに移動規制部が位置するように配設され、前記各回動部材が衝突する箇所を最下端とし、前記各移動規制部を最上端とする傾斜壁を有するものである。
従って、回動部材が衝突状態でなくなったときに、複数の粒子は、重力の作用により、回動部材が衝突する箇所に向かって移動するから、元の状態に復帰することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記移動規制部材は、略鉛直に配設された壁部材である。
従って、粒子が複数の回動部材の配列方向に移動することを規制するのに最も簡単な構成となる。この壁部材が包囲部材の内部に配置されている動作規制部材を、特に、上限ストッパとして用いれば、回動部材が包囲部材に衝突したときに複数の粒子が上方向に移動する際、及び、複数の粒子が重力により下方向に引き戻される際に、壁部材が移動の障害とならないから、動作規制部材の応答性を損ねない。
【0015】
請求項5に記載の発明においては、請求項1から4までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記壁部材と前記包囲部材とは、部分的に接合されているものである。
従って、壁部材が包囲部材の内部で移動したり、包囲部材そのものが移動したり、閉領域の断面形状が変形されることが防止される。
【0016】
請求項6に記載の発明においては、請求項1から5までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置において、前記少なくとも1つの動作規制部材により回動範囲が規制される回動部材は、鍵及び該鍵の押鍵操作に連動して回動する質量体の少なくとも一方である。
鍵盤装置には、押鍵操作に連動して回動する質量体を備えたものと、備えないものとがある。
包囲部材により複数の粒子が包囲された動作規制部材は、鍵及び質量体のいずれの回動範囲の規制に用いてもよいし、両方の回動範囲の規制に用いてもよい。質量体の方が鍵に比べて慣性モーメントが大きいため、質量体の回動範囲の規制に用いた場合に効果が大きい。
包囲部材により複数の粒子が包囲された動作規制部材を用いないことにした動作規制部材については、従来の弾性型動作規制部材を用いればよい。
また、回動範囲の位置規制として、上限の位置規制と下限の位置規制とがある。複数の粒子が包囲部材により閉領域に収容された動作規制部材を、いずれの規制に用いてもよいし、両方に用いてもよい。
特に、押鍵をしたときの回動に対する規制(鍵の場合は一般に下限の位置規制となり、質量体の場合は、一般に上限の位置規制となる)に用いた場合は、演奏者の指が鍵を押している状態であるので、鍵タッチ感が大きく向上する。
包囲部材は、通気性を有していてもよい。また、複数の粒子が基材とこの基材に封着された包囲部材により包囲されて閉領域に収容された状態で、フレーム側に配置されている場合は、包囲部材及び又は基材が通気性を有していてもよい。これらのものが通気性を有していれば、回動部材が動作規制部材に衝突したとき、包囲部材内部の空気圧による反発力が発生しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回動部材が動作規制部材に衝突したときに、反発力が生じないために鍵タッチ感が良好になるという効果がある。この動作規制部材として、包囲部材により複数の粒子が包囲されたものを用いた場合に、この動作規制部材の長期的な機能保持が実現されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本願発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1(a)は、電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図である。
図1(b)は、その下限ストッパ5について、粒子の挙動を右側面方向から模式的に示す説明図であり、図1(c)は、粒子の挙動を正面方向から模式的に示す説明図である。
図中、図20と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
背景技術で説明した図20と比べて、下限ストッパ5(動作規制部材)、及び、上限ストッパ6(動作規制部材)とに、異なる構造の部材を使用している。黒鍵本体部2(回動部材)の動作規制部材についても同様である。
【0019】
図1(b),図1(c)を参照し、白鍵本体部1に対する下限ストッパ5を例に説明する。
下限ストッパ5は、複数の粒子11が通気性を有する包囲部材12により部分的に又は全体を包囲されて閉領域に収容された状態のものである。
下限ストッパ5は、水平部3aを基材とし、この基材上に包囲部材12が封着され、複数の鍵の配列方向に延在し、鍵フレーム3(フレーム)の側である、水平部3aに配置されている。鍵フレーム自体に配置されていなくてもよく、鍵フレームと同様に鍵盤装置を固定的に支持するものに配置されればよい。
粒子11は、固体物であり、球体として図示している。外形寸法は、球体の場合で3mmφ以下が望ましい。先行技術文献1に記載のように、砂や金属粉であってよいが、その他、セラミック球、金属球、プラスチック球などであってもよい。しかし、球体には限られない。
【0020】
包囲部材12は、収容する複数の粒子11の動作を包括的に拘束するものであって、薄くて柔軟性のある素材(薄皮状の素材ということもできる)で形成されている。包囲部材12の柔軟性の度合いに応じて拘束力を任意に設定できるが、衝突を受けたときの運動エネルギが、複数の粒子11に伝わることを阻害しないようなものがよい。
より具体的には、包囲部材の素材が持つ弾性により、包囲部材が受ける力に応じて該包囲部材の表面積が伸縮するものであるか、布のように、自由に変形したりたんだり、弛んだりするものでもよい。
包囲部材12は、接着、融着等により基材である水平部3aに封着されて、粒子11が散逸しないようにしている。
【0021】
白鍵本体部の左側面部1e,右側面部1fの下端が、包囲部材12に衝突したとき、その運動エネルギは、包囲部材12を介して、複数の粒子11に伝達される。粒子11同士が連鎖的に衝突したり、摺動したりして任意の方向に移動する際に、運動エネルギが熱エネルギに変換されて消失する。
従って、弾性エネルギが蓄積されないから、回動部材に対する反発力が発生しない。その結果、不快なタッチ感を排除することができる。
白鍵本体部の左側面部1e,右側面部1fの下端が、包囲部材12を介して直接的に複数の粒子11に衝突するため、複数の粒子11の移動による運動エネルギ消失の効果が高い。
また、包囲部材12の通気性により、複数の粒子11が通気性のある領域に収容されているため、空気圧による弾性反発力が発生しない。
【0022】
上述した説明は、下限ストッパ5(動作規制部材)についてのものであったが、上限ストッパ6(動作規制部材)についても、同様に、鍵フレームの水平部3aの裏面を基材とし、この基材に包囲部材12が封着されている。
ただし、粒子11が衝撃力を受ける方向と重力を受ける方向との関係が、下限ストッパ5とは異なっている。そのため、両者に要求される構造は基本的には一致するが、異なる場合もある。
【0023】
本明細書において、包囲部材12により複数の粒子11が包囲(部分包囲又は全部包囲)された構造を、以下、簡単に、「パーティクル・バッグ」と呼ぶ場合がある。
下限ストッパ5及び上限ストッパ6の少なくとも一方だけを、「パーティクル・バッグ」構造とし、そうでないものは、従来通りのフェルト等を用いた弾性を有する動作規制部材(以下、弾性型動作規制部材という)であってもよい。
【0024】
図2は、本願発明の第2の実施形態を模式的に説明する右側面図である。
図中、21は白鍵本体部(回動部材)、22は黒鍵本体部(回動部材)である。鍵フレーム23(フレーム)は、鍵の長手方向の前部及び後部に段差部があり、これらの間が水平部23aとなっている。水平部23aの後方に鍵支持部23bがある。一方、水平部23aの裏面前方に質量体支持部23cがある。
白鍵本体部21,黒鍵本体部22の後端部に鍵支点部21b,22bがあり、鍵支持部23bに取り付けられ、白鍵本体部21,黒鍵本体部22を回動可能にしている。
【0025】
鍵フレーム23の段差部の前後は、鍵フレーム底板24への取付部23d,取付部23eとなっている。取付部23dの前面は垂直壁23fとなっている。24は鍵フレーム側の固定部材、例えば、電子楽器の下ケース(棚板)であってもよい。
垂直壁23fには、白鍵本体部21に対する鍵ガイド25がある。鍵ガイド25は白鍵本体部の先端部21a近傍の下部に挿入され、鍵の左右方向の位置規制及びローリング規制をする。一方、水平部23aに固定された鍵ガイド26は、黒鍵本体部22に対するものである。
鍵フレームの水平部23a上には、図1と同様の鍵スイッチ4が設置され、これに対向して、白鍵本体部21、黒鍵本体部22の上面裏側に図示しない突部(アクチュエータ)が対向している。
【0026】
白鍵本体部21の下部から力伝達部21cが突き出しており、鍵フレームの水平部23aに設けられた孔23gを貫通している。力伝達部21cの先端に底板を有し、この底板の上部は、鍵の長手方向に抜ける。この底板の上下面に弾性部材27(上面は見えない)が固着されている。
質量体28は、複数の白鍵本体部21,黒鍵本体部22のそれぞれに対して設けられ、各鍵の下方に鍵の配列方向に配置されている。図示の質量体28は、白鍵本体部21に対するもので、質量体支持部23cにより、回動自在に支持され、対応する鍵の力伝達部21cを介して回動される。
【0027】
質量体28は、対応する質量体支持部23cに支持される回動支点部28cと、この回動支点部28cの前方にあって鍵の力伝達部21cに係合する、主被駆動部28a及び副被駆動部28bと、この回動支点部28cの後方にあって慣性モーメントを発生する腕状の慣性モーメント発生部28dを有している。慣性モーメント発生部28dの後端は、質量集中部28eとなっている。
【0028】
主被駆動部28a及び副被駆動部28bは、力伝達部21cの底板を弾性部材27を介して挟み込むようにして力伝達部21cと係合している。
演奏者が鍵を押す操作に連動して質量体28が回動すると、慣性モーメント発生部28dの慣性モーメントに応じた反作用が白鍵本体部21から演奏者の指に与えられる。演奏者が鍵から指を離すと、質量体28は重力の作用により逆回動して図示の位置に戻る。
【0029】
一方、黒鍵本体部22の力伝達部は、図示を省略しているが、力伝達部21cと紙面奥行き方向に重なる位置にある。従って、黒鍵本体部22に対しても、同様に、質量体支持部により回動自在に支持された同様の質量体が設けられ、対応する黒鍵の力伝達部により回動される。
【0030】
水平部23aの上面には、図1と同様に鍵に対する下限ストッパ5が、帯状に配置されている。
30は、質量体28に対する上限ストッパ(動作規制部材)であって、鍵フレームの水平部23aの裏面に配置され、白鍵本体部21の押下に連動して質量体28が回動するときに、質量集中部28eの下面が衝突することにより、質量体28の上限位置が規制される。
一方、29は、質量体28に対する下限ストッパ(動作規制部材)であって、鍵フレーム底板24に配置され、白鍵本体部21の離鍵操作に連動し、質量体28が回動するときに、質量集中部28eの上面が衝突することにより、質量体28の初期位置が規制される。
【0031】
上限ストッパ30及び下限ストッパ29は、図1に示した上限ストッパ6及び下限ストッパと同様に、「パーティクル・バッグ」である。質量体28は鍵に比して衝突時の運動エネルギが大きいことから、「パーティクル・バッグ」を大きくし、エネルギ消失が大きくなるようにしてもよい。
質量体を有する鍵盤構造及び回動方向は、図2に示したものに限らない。初期位置で傾斜状態であった質量体が、押鍵したときに鉛直方向に立ち上がるものもある。この場合、鉛直方向に立ち上がったとき、「パーティクル・バッグ」が水平方向の衝突を受けるようにすればよい。
また、初期位置で質量体が上限にあり、鍵の押し込み位置で質量体が下限にあってもよい。
【0032】
図3は、図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材12の動作機能を示す説明図である。図2に示した下限ストッパ29を例にして説明する。包囲部材12は、内部及び外部から受ける力に応じて表面が伸縮するような弾性を有するものとする。
図3(a)はこのような包囲部材12の初期状態である。
図3(b)に示すように、質量集中部28eが下限ストッパ29に衝突したときの衝撃力により、包囲部材12が水平方向に伸びる結果、包囲部材12は適度な収縮力によって、複数の粒子11を閉領域に拘束するとともに、粒子11の挙動を包括的に拘束する。包囲部材12の柔軟性を調節することにより、演奏者の所望する感触が得られるようにする。
図3(c)に示すように、質量集中部28eが下限ストッパ29から離れたとき、伸びていた包囲部材12は、弾性復元力により縮み、図3(a)に示した初期状態に戻る。
【0033】
次に、図4を参照し、包囲部材の具体例及び基材の構成例を説明する。
図4は、図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材12の具体例を示す説明図である。
図4(a)に示す具体例は、包囲部材12として、網目(メッシュ)状包囲部材41を用いたものである。より具体的には、糸で織られた織布(クロス)、糸を編んだ編み物(ニット)等がある。また、複数本の繊維が交錯した不織布でもよい。
網目状包囲部材41には通気性があるから、複数の粒子42を収容している領域と大気との間で空気の流入・流出がある。
仮に、包囲部材12に通気性がなく、かつ、閉領域に相当量の空気が含まれていると、回動部材(鍵又は質量体)が衝突したとき、包囲部材12の表面が膨らんで空気バネの作用を呈するから、弾性反発力が発生して、所期の効果が得られなくなる。
【0034】
しかしながら、粒子42が網目状包囲部材41を通過してしまうようであれば、粒子42が外部に飛び出てしまう。従って、粒子42の任意の向きの移動に対して、網目の開口部を通過しないようにする。
ここで、図4(b)に示すように、粒子42が球体でない場合、切断する箇所によって断面が異なる。その際、最小断面形状42aを有する面方向が、通過方向43となる。
従って、図4(c)に示すように、目安として、前記網目状の包囲部材の網目の寸法を粒子の最小断面形状42aの寸法よりも小さくしておけば、粒子が網目を通過できなくなる。
なお、網目状包囲部材41は、鍵の配列方向に延在するものであるが、鍵の配列方向の左右両端部は、網目状包囲部材41と同じ素材を当てて粒子42が出ないようにしたり、別の部材を用いて封止してもよい。
【0035】
図4(d)は、包囲部材12として、薄膜(フィルム)44を用いた具体例である。
薄膜44としては、プラスチック、天然ゴム、合成ゴムなどがある。これらが発泡体である場合もある。
薄膜44には、複数の通気孔44aがある。通気孔44aは、回動部材(鍵や質量体)の衝突面を含めて全面に分布するものでもよいが、図示のように、衝突面を避けて分布するものであってもよい。
図4(e)に示すように、通気孔44aの開口部の寸法は、目安として、粒子の最小断面形状42aの寸法よりも小さく設計しておけば、粒子42が通気孔44aを通過することができなくなる。
【0036】
通気孔44aの形状は任意であるが、図示の三角形の他、四角形など、角があるものがよい。粒子42は、丸みを帯びる場合が多いため、同じ断面積であっても、角のある方が、粒子42を塞ぎやすいので、薄膜44を通過させにくい。また、粒子42が通気孔42を塞いでいる状態でも、角の部分に隙間があるから通気性が保たれる。
通気性、言い換えれば、空気の流出・流入特性は、通気孔44aの大きさ及び通気孔44aの個数により調整できる。
【0037】
図4(f)は、「パーティクル・バッグ」の基材に複数の通気孔を設けた例の説明図である。図中、45は基材部、45aはその複数の通気孔、46は台座部である。図1に示した下限ストッパ5について例示する。
台座部46により、基材部45と鍵フレーム3(水平部3a)との間に、空気が流入・流出する隙間が確保される。台座部46は、基材部45又は水平部3aと一体であってもよいし、スペーサなど、別構成であってもよい。
包囲部材11としては、上述した網目状包囲部材41、通気孔44aのある薄膜44であるほか、通気孔を有しない薄膜でもよい。
【0038】
また、上述した基材部45を用いることなく、図1ないし図3において、鍵フレーム3側の固定部材(鍵フレーム3自体でもよい)に複数の通気孔45aに相当する複数の通気孔を設けてもよい。
なお、薄膜44は、鍵の配列方向に延在するものであるが、鍵の配列方向の左右両端部は、薄膜44と同じ素材を継ぎ当てて粒子11が出ないようにしたり、別の部材を用いて封止してもよい。
【0039】
図5は、本願発明の第3の実施形態を示す説明図である。
図1に示した第1の実施形態における下限ストッパ5及び上限ストッパ6に、フェルト等の従来の弾性型動作規制部材が並設されたものである。
図中、図1と同様な部分には同じ符号を付している。51はフェルトであって、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ5に並設され、両者を合わせたものが新たに下限ストッパとなる。
52もフェルトであって、「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ6に並設され、両者を合わせたものが新たに上限ストッパとなる。
【0040】
白鍵本体部1が押下されたとき、白鍵本体部1の左右側面部は、下限ストッパ5とフェルト51の両者に衝突する。その結果、双方の特性の利点を引き出すことができる。
すなわち、「パーティクル・バッグ」は、制動特性は優れるが、形状の再現性(回動部材の初期位置及び動作範囲の再現性)や連打性で劣る部分もある。そのため、鍵の初期位置及び動作範囲の再現性、連打性を、従来の弾性型動作規制部材で補うことにより、鍵の制動特性と演奏性とを向上させる。
一方、白鍵本体部1が離鍵され、白鍵本体部1が元の初期位置に戻ったとき、上限ストッパ6とフェルト52の両者に衝突する。このとき、同様に、双方の特性の利点を引き出すことができる。
【0041】
この実施形態では、その際、図示のように、下限ストッパ5の高さをh1、フェルト51の高さをh2としたとき、h1<h2にする。
その結果、白鍵本体部1が回動するときに、鍵の左右側面部が、最初にフェルト51に衝突した後、これに並設された下限ストッパ5に衝突する。すなわち、フェルト51は、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ5よりも先行して弾性型の動作規制をする。
【0042】
鍵が衝突し、次に鍵が離れた後において、「パーティクル・バッグ」に比べ、フェルト等の弾性型動作規制部材の方が復元力が大きいから、元の高さに戻る。従って、次に鍵の衝突を受けたときにも、フェルト51による動作規制位置が変わらないから、動作規制位置の精度が向上する。これに対し、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ5は、反発力を発生しない制動能力を利用することになる。
同様に、上限ストッパ6の高さをh3、フェルト51の高さをh4としたとき、h3<h4となるようにして、白鍵本体部1が初期位置に復帰したときに、ストッパ片の先端部1dは、フェルト52に衝突し、「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ6より先行して弾性型の動作規制をする。
【0043】
上述した並設構成により、白鍵本体部1の回動動作範囲は、従来のフェルト51,52の間隔により精度良く設定されるから、「パーティクル・バッグ」の高さ位置の再現性が多少不正確であっても回動動作範囲の精度が向上する。
【0044】
図6は、本願発明の第4の実施形態を示す説明図である。
図2に示した第2の実施形態における下限ストッパ29及び上限ストッパ30に、フェルト等の従来の弾性型動作規制部材が並設されたものである。
図中、図2と同様な部分には同じ符号を付している。図5に示した実施形態と同様に、フェルト61が「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ29に並設され、フェルト62が「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ30に並設されたものである。
【0045】
従って、白鍵本体部1が押下されたことに連動して、質量集中部28eの上面部は、上限ストッパ30とフェルト62の両者に衝突する。その結果、図5の場合と同様に、双方の特性の利点を引き出すことができる。
一方、白鍵本体部1が離鍵されたことに連動して、質量集中部28eの下面部が元の初期位置に戻るとき、下限ストッパ29とフェルト61の両者に衝突し、同様に、双方の特性の利点を引き出すことができる。
【0046】
この実施形態でも、図示のように、上限ストッパ30の高さをh1、フェルト62の高さをh2としたとき、h1<h2にする。その結果、質量体28が回動するときに、質量集中部28eに対し、フェルト62は、「パーティクル・バッグ」である上限ストッパ30よりも先行して弾性型の動作規制をする。
同様に、下限ストッパ29の高さをh3、フェルト61の高さをh4としたとき、h3<h4となるようにして、質量集中部28eが初期位置に復帰したときに、質量集中部28eに対し、フェルト61は、「パーティクル・バッグ」である下限ストッパ29より先行して弾性型の動作規制をする。
上述した構成により、質量体28の回動動作範囲は、従来のフェルト61,62の間隔により設定することができ、「パーティクル・バッグ」の高さ位置が多少不正確であっても、回動動作範囲の精度が向上する。
【0047】
図5,図6を参照した説明では、下限ストッパと上限ストッパの両者に、従来のストッパ部材であったフェルトが並設されて、回動動作範囲の精度を向上させていた。
しかし、図1の上限ストッパ5、図2の上限ストッパ30に関しては、従来のストッパ部材を特に並設しなくても、粒子に対する重力の作用によって、「パーティクル・バッグ」の動作規制位置が定まりやすい。
【0048】
図7は、上限ストッパにおける粒子に対する重力の作用を示す説明図である。
図7(a)は質量集中部28eが初期位置にあるときの鍵盤装置の部分拡大図、図7(b)は質量集中部28eが上限ストッパ30に衝突したときの鍵盤装置の部分拡大図である。図中、図6と同様な部分には同じ符号を付している。
図7(a)において、質量体28が回動するときに質量集中部28eが衝突する上限ストッパ30において、質量集中部28eの衝突箇所(衝突位置)が、この上限ストッパ30が配置されている鍵フレーム3の水平部3bよりも下方に位置する。
【0049】
上限ストッパ30である「パーティクル・バッグ」に収容された複数の粒子11は、重力を受けて下方へ集まるから、包囲部材12の下面の位置が定まる。すなわち、衝突部位の粒子位置は、重力により初期化される性質がある。
図7(b)に示すように、質量集中部28eが上限ストッパ30に衝突すると、粒子11は上方に分散するが、質量集中部28eが上限ストッパ30から離れれば、粒子11は図7(a)示すように下方へと引き戻される。
その際、「パーティクル・バッグ」の上部に、空きスペースができるように、「パーティクル・バッグ」に収容される粒子11の収容密度を小さくしておけば、粒子11が上方に分散しやすくなる。
【0050】
図4を参照して説明した「パーティクル・バッグ」は、鍵の配列方向に長く一様に形成されたものであった。そのため、長期間使用されている間に、粒子11が鍵の配列方向の想定外の場所に移動すれば、ついには制動機能を果たさなくなる。
例えば、図1(c)において、白鍵本体部1の左右側面部1e,1fが包囲部材12に衝突したとき、衝突部の直下が窪む。その後、白鍵本体部1が上方に復帰したとき、粒子11が元に戻って包囲部材12が平らになればよいが、完全には元に戻らなくなる。あるいは、電子楽器を僅かに傾斜した状態で使用していると粒子11の分布が鍵の配列方向に異なるようになる。
そこで、包囲部材12の内部に粒子11の鍵配列方向への移動を規制する移動規制部材を設けることにより、回動部材の配列方向に粒子11が移動しないようにして、動作規制部材(下限ストッパ、上限ストッパ)が長期的に制動機能を保持できるようにする。
【0051】
図8は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図8(a)は下限ストッパ29の斜視図、図8(b),図8(c)は、移動規制部材71の動作を説明する正面図である。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。図8(a)においては複数の粒子11の図示を省略した。
【0052】
71は移動規制部材、71aはその傾斜壁、71bは傾斜壁71aに隣接して接合された垂直壁、71cは垂直壁71bを支持する基底部である。傾斜壁71aの左右が対向し、その間に凹部を形成している。
移動規制部材71は、上述した傾斜壁71a,垂直壁71b,基底部71cを1単位として、基材となる鍵フレーム3aと包囲部材12とで全体を包囲された閉領域に、鍵の配列方向に沿って設けられ、移動規制部材71の断面は略M字形状である。
【0053】
傾斜壁71aの最下端の鉛直線上に、質量集中部28eが衝突する箇所が位置する。図示の例では、凹部が滑らかに湾曲しているが、傾斜壁71aの左右は平面であってもよい。各1単位は、鍵の配列方向に並んでいる各質量体の質量集中部28eに対応する。
その基底部71cは、鍵フレーム3a上に固定されてよいが、単に置かれているだけでもよい。
【0054】
図8(b)に示すように、質量集中部28eが衝突したとき、複数の粒子11には、包囲部材12を介して衝撃荷重が加わる。このとき、粒子11が移動するが、傾斜壁71aのために移動方向が規制される。すなわち、粒子11が傾斜壁71aに衝突すると、傾斜壁71aは粒子11に対し抗力を発生するから、粒子11は傾斜壁71aの面に沿って上昇する。粒子11は流体であるかのように移動する。
傾斜壁71aと垂直壁71bとの接合部が最上端となっており、包囲部材12との間が狭くなっている。この最上端が障壁となるため、上昇した粒子11が、この障壁を超えて隣接する領域に移動しにくい。
【0055】
図8(c)に示すように、荷重が開放されたとき、複数の粒子11は、重力によって、さらに、包囲部材12に弾性復元力があればこれによっても、傾斜壁71aの面に沿って下方に移動し、元の平らな配置に戻る。
その結果、複数の粒子11は鍵の配列方向の左右に、1つの鍵の範囲、言い換えれば、1つの質量体の範囲を超えて移動することが規制される。
上述した傾斜壁71aの凹部の中心は質量体の衝突位置が来るように配置され、傾斜壁71aに接合された垂直壁71bは、隣接する質量体の衝突位置の中間になるように配置されるから、質量体が衝突したときに粒子の移動を妨げない。
【0056】
上述したように、移動規制部材71は、「パーティクル・バッグ」を構成する、鍵フレーム3aと包囲部材12とで形成される内部に配置され、傾斜壁71aと垂直壁71bとの接合部が移動規制部となって、複数の粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制する。加えて、凹部を形成する傾斜壁71aは、荷重が開放されたときに移動した粒子11を復帰させる。
その結果、移動規制部材71は長期的な制動機能の保持を実現する。
【0057】
図9は、図2に示した下限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。いずれも移動規制部材の一単位分のみを切り出して示している。
図9(a)において、81は移動規制部材、81aはその水平部、81bは水平部81aの中心に設けられた開口部、81cは水平部81bを支持する垂直壁、81dは基底部である。
この具体例では、開口部81bの下の領域に入り込んだ複数の粒子11に対し、垂直壁81cが移動規制部となって、鍵の配列方向の移動を規制する。
【0058】
図9(b)において、82は移動規制部材、82aはその水平部、82bは水平部81aの前後(鍵の長手方向)に設けられた「くびれ部」、82cは水平部81bを支持する垂直壁、82dは基底部である。
この具体例では、くびれ部82bの下の領域に入り込んだ複数の粒子11に対し、垂直壁82cが移動規制部となって、鍵の配列方向の移動を規制する。
【0059】
図10は、図2に示した下限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図10(a)において、91は移動規制部材であって、H字形水平断面を有する。91aはそのH字形の横棒をなす垂直壁であって、91bは垂直壁91aの両側面に結合した、H字形の立棒をなすフランジである。この具体例では、垂直壁91a自体が移動規制部となって、粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制する。
移動規制部材91は、垂直壁91a,フランジ91bを単位とし、基材となる鍵フレーム底部24と包囲部材12とで全周が囲まれた内部に、鍵の配列方向に配設されている。
【0060】
移動規制部材91は、基材となる鍵フレーム底部24に固定されていたり、鍵フレーム底部24と一体で成形されていてもよいが、単に載置されているだけでもよい。
図示の例では、フランジ91bの図示ハッチングを施した部分と包囲部材12とを、接着、粘着(例:両面接着テープ)、融着、ねじ止め等の方法で接合している。
その結果、移動規制部材91が単に載置されているだけでも、移動規制部材91が固定される。また、逆に、包囲部材12が移動規制部材91に固着されているため、包囲部材12の断面形状が崩れにくくなる。
【0061】
図10(b)における移動規制部材92の傾斜壁92aは、図8に示した傾斜壁71aと同様のものであって、滑らかな凹部を形成している。92bは水平部であって、傾斜壁92aの最上部と結合して、移動規制部となる。
移動規制部材92は、傾斜壁92aとその左右の水平部92bの各半分とを一単位として、基材となる鍵フレーム底板24と包囲部材12とで囲まれた内部領域に、鍵の配列方向に延在している。
移動規制部材92は、基材となる鍵フレーム底部24上に固定されてもよいが、単に置かれているだけでもよい。水平部92bの図示ハッチングを施した部分と包囲部材12とを、接着、粘着(例:両面接着テープ)、融着、ねじ止め等の方法で接合すればよい。
【0062】
図8〜図10を参照した説明では、図2に示した質量体28の回動に対する下限ストッパ29を前提として説明した。
しかし、図1に示した鍵の回動に対する下限ストッパ5を前提とした場合も同様である。ただし、隣接する鍵の左右側面部の間隔は僅かである。
そのため、ある鍵の左側面部(図1では1e)及びこの鍵の左に隣接する鍵の右側面部(図1では1f)、ある鍵の右側面部(図1では1f)及びこの鍵の右に隣接する鍵の左側面部(図1では1e)というように、隣接する鍵の左右側面部同士を1単位の回動部材と見なし、上述した1本の質量集中部25eと等価に扱えばよい。
【0063】
従って、上述した移動規制部材71,81,82の移動規制部が各鍵の中間(鍵の左側面部1eと右側面部1fとの中間)に位置するように、移動規制部材71,81,82を配設すればよい。
なお、図10に示した移動規制部材91については、衝突箇所との直接的な対応関係がないので、隣接する質量体28(質量集中部28e)の中間位置に設けるのであれば、全ての中間位置に設置するのに代えて、任意の間隔で設置し、移動規制部材91を設置しない中間位置があってもよい。
【0064】
図11は、図2に示した上限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図11(a)は、鍵盤装置の概要を示す平面図である。
図11(b)は、この上限ストッパ30を下から見上げた斜視図であり、図11(c),図11(d)は、この上限ストッパ30の動作を示す説明図である。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。図11(a),図11(b)については、複数の粒子11の図示を省略した。
【0065】
図11(a)において、移動規制部材101は、図10(a)に示した下限ストッパ29の移動規制部材91と同様に、H字形の水平断面形状を有している。101aは垂直壁、101bはフランジ部である。この具体例では、垂直壁101aと重力の作用とによって、粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制する。
移動規制部材101は、基材となる鍵フレーム水平部23aの裏面に固定されているか、鍵フレーム水平部23aと一体で成形される。
【0066】
図11(a)に示すように、質量集中部28eが衝突しない位置、すなわち、隣接する質量集中部28eの中間に移動規制部材101が配設されている。
図11(d)に示すように、初期状態においては、重力の作用により、複数の粒子11は、下方に下がっている。閉領域に対し粒子11の個数を少なくしておけば、天井面となる鍵フレーム水平部23aの側に空きスペース102ができている。
【0067】
図11(c)に示すように、質量集中部28eの衝撃荷重が包囲部材12に加わったときには、複数の粒子11は、重力に反して上方に拡散し、空きスペース102においては、粒子11が跳ね上がる。その際、垂直壁101aの存在により、粒子11は、衝撃力の方向(鉛直方向上向き)を中心に移動し、包囲部材12と垂直壁101aとの間の隙間をくぐって鍵の幅方向に移動しにくい。
図11(d)に示すように、質量集中部28eの荷重が開放されて、初期状態に戻れば、複数の粒子11は、重力に従い再び下方へ引き戻される。
【0068】
上述したように、移動規制部材101の垂直壁101aは、鉛直面で構成されるから、粒子11が上方へ移動する際、及び、再び重力で下方に移動する際に、粒子11が鍵の配列方向に移動することを規制するものの、粒子11に対する摩擦抵抗は最小限に抑えられている。その結果、質量集中部28eが衝突したときの応答性及び荷重が開放されたときの初期状態に戻るまでの応答性が損なわれない。
【0069】
図12は、図2に示した上限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。いずれも移動規制部材の一単位分を示している。
図12(a)に示す移動規制部材111は、図11に示した移動規制部材101を前提構成として、フランジ111bの高さを低くし、垂直壁111aの包囲部材12に面する側を、包囲部材12の側断面の合わせて丸くしたものである。
【0070】
図12(b)に示す移動規制部材112は、円形の開口部112aを備えた円筒を用いたものである。円筒状の垂直壁112bが略鉛直に配設された壁部材となる。
図12(c)に示す移動規制部材113は、水平断面が逆Z字形となる部材を用いたものであり、鍵の配列方向に対して斜めになった垂直壁113aと、この垂直壁113aの両側を支持するフランジ113bを備えている。
図12(d)に示す移動規制部材114は、なだらかな傾斜面114bを有して窪んだ鞍形の部材であり、この鞍形の前後の半円形状の側面部分が1対の垂直壁114aとなっている。
【0071】
図12に示した移動規制部材111〜114は、いずれも垂直壁を有し、これらの垂直壁が略鉛直に配設された壁部材となって、粒子11がこの垂直壁を超えて鍵の配列方向に移動することを規制している。
上述した移動規制部材111〜114は、基材となる鍵フレーム水平部23a上に固定されているか、鍵フレーム水平部23aと一体で成形される。図示していないが、包囲部材12と部分的に接合してもよい。
【0072】
図13は、図2に示した上限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。下から見上げた斜視図で示す。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。
この移動規制部材121は、図11に示した複数の移動規制部材101を連結して一体化したものである。121aは垂直壁、121bはアーチ形の側板である。垂直壁121a自体が移動規制部となり、側板121bにおけるアーチの凹部の鉛直下方が、質量集中部28eの衝突する箇所となる。
【0073】
上述した移動規制部材121は、基材となる鍵フレーム水平部23a上に固定されているか、鍵フレーム水平部23aと一体で成形される。
包囲部材12を、基材となる鍵フレーム水平部23aに封着する代わりに、アーチ側板121bの、鍵フレーム水平部23a側における側面121cに封着することができる。
【0074】
上述した移動規制部材の移動規制部は、隣接する質量体の質量集中部28eの中間位置に設けるのであれば、全ての中間位置に設置してもよいが、任意の間隔で設置し、移動規制部材を設置しない中間位置があってもよい。
上述した移動規制部材は、質量体28の質量集中部28gに対する上限ストッパ30であった。
しかし、鍵の移動規制をする上限ストッパ6に上述した各種の移動規制部材を設置してもよい。
【0075】
図8〜図13に示した移動規制部材を使用しても、鍵盤装置を壁に立てかけた状態で放置したり、鍵盤装置を縦長にして運んだりした場合に、包囲部材に包囲された粒子が、鍵の配列方向に偏在するおそれがある。そうすると、高音域側の鍵と低音域側の鍵とでは、鍵タッチ感が変化したり、所望の制動機能が得られなくなったりする。
【0076】
そこで、以下に示す具体例では、動作規制部材の閉領域を複数の領域に分割することにより、鍵の配列方向への粒子11の移動を阻止するようにし、使用中に複数の粒子が想定外の領域へ移動しないだけでなく、長期使用や楽器の立てかけ等によっても、動作規制部材が長期的に機能を保持するようにした動作規制部材の具体例を説明する。
【0077】
図14は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、外部に移動阻止部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
図中、図1,図2と同様な部分には同じ符号を付している。複数の粒子11は図示を省略した。
131は移動阻止部材である。131aはアーム、131bはアーム131aを支持する支持部、131cは支持部131bを鍵盤フレーム底部24に固定するための基底部である。
132は、鍵盤フレーム底部24において包囲部材12により包囲された「パーティクル・バッグ」の節部、133はこの「パーティクル・バッグ」の腹部である。
【0078】
アーム131aは、包囲部材12の外側にあって、包囲部材12の外から「パーティクル・バッグ」を押しつぶす移動阻止部材となる。アーム131aは、「パーティクル・バッグ」で形成された下限ストッパ29の閉領域を、複数の部屋に分割する。複数の粒子11は、分割された個々の閉領域(部屋)に閉じこめられているから、粒子11の鍵の配列方向への移動が阻止される。
上述した節部132(分割位置)では制動機能が得られないから、節部132は、制動機能を要しない、隣接する質量集中部28eの中間位置に設定される。
質量集中部28eは、腹部133(分割位置の中間部)の上方に衝突する。
【0079】
図15は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に閉塞部が形成された動作規制部材を示す説明図である。
図15(a)に示すように、先ず、包囲部材141を袋状にする。平面状に形成された矩形の素材を2つ折りにし、対向する上端部141aと下端部141bとを重ね合わせて結合することにより、筒状の包囲部材141を形成する。材料自体の融着、接着材を用いた接着、糸を用いた縫合、クリップ等の挟み込み部材を用いた挟着等、対向する面同士の一般的な結合方法を用いる。
【0080】
次に、筒状の包囲部材141の一端部を密閉し、他端部から粒子11を注入し、図15(b)に示すように、包囲部材141により包囲された粒子11の閉領域を複数の部屋に分割する。
そのために、分割位置の粒子11を移動させ、上下の包囲部材を押しつぶし、略線状に重ね合わせ、端部(上端部141a,下端部141b)と同様の面同士の結合を行う。結合された略線状の分割位置は、扁平な閉塞部141cとなる。
閉塞部141cは、図示のように、端部の線(鍵の配列方向)と直交する方向に形成する。
【0081】
閉塞部141cを形成する際に、包囲部材141を鍵配列の中心軸方向に寄せて縮めた上で略線状に結合し、閉領域の断面が拡張されるようにし、多数の粒子11を収容できるようにするとよい。
なお、袋状となった包囲部材141への粒子11の注入は、閉塞部141cを1つ形成する毎に順次行ってもよい。
【0082】
図16は、図15に示した筒状の包囲部材を作成する他の具体例の説明図である。
図16(a)に示す包囲部材142は、最初、平面状に形成された2枚の矩形素材を用いる。1枚目の左端部142a,右端部142bを、それぞれ、2枚目の左端部142c,右端部142dに重ね合わせ、端部を結合する。その方法は、図15の場合と同様である。
図16(b)に示す包囲部材143は、平面状の素材を丸くして、内端部143aと外端部143bとを重ね合わせて結合する。
図16(c)においては、筒状体144を用いる。例えば、袋織りされた織物、丸編みされた編み物、筒状に射出成形された薄膜である。
いずれの具体例においても、分割位置における略線状の閉塞部は、図15の場合と同様の方法で形成する。
【0083】
図17は、図15に示した略線状の閉塞部が形成された筒状の包囲部材を使用する鍵盤装置を示す説明図である。
図2に示した構造を前提として説明する。図2と同様な部分には同じ符号を付している。
図17(a)は、電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図であり、図17(b)〜図17(e)は、上限ストッパの動作説明図である。
【0084】
図17(a)における下限ストッパ151,上限ストッパ152は、それぞれ、質量体28に対する動作規制をする。いずれも、図15を参照して説明した、略直線状の閉塞部141cを有する包囲部材141を用いた動作規制部材である。
白鍵本体部21に対する動作規制をする下限ストッパ153や黒鍵本体部22に対する動作規制をする図示しない下限ストッパにも同様な動作規制部材を用いてよい。
いずれも、衝突面が水平になるように設置している。各動作規制部材は固定するか、図14に示したアーム131aのような部材で、閉塞部141cを、動作規制部材の原形をとどめたまま支持する。
【0085】
図17(b)に示すように、包囲部材141において、質量集中部28eから衝撃荷重を受けるのは腹部の下面である。この腹部の下面が略直線状の閉塞部141cと略平行になるように、動作規制部材が鍵フレームの水平部23aに設けられている。
同様に、鍵に対する下限ストッパ153についても、衝突面となるその腹部の上面が略直線状の閉塞部141cと略平行になるように配置する。
上述した配置であれば、衝撃荷重が加わったとき、質量集中部28eは、閉塞部141cと略直交する角度から包囲部材141に衝突し、その結果、衝突面がそのまま扁平に近づく。従って、閉塞部141cが形成されていても、節部となる閉塞部141cと腹部となる衝突部との間において、包囲部材141の形状変化が無理なく行われるから、制動が正常に機能する。
【0086】
図17(c)に示すように、図15(a)に示した原形の包囲部材141に対し、上面と下面を開き、端部に直交する方向に扁平とした包囲部材154に、端部の線に略直交する線状の閉塞部154cを形成したものを用いてもよい。
この場合も、この腹部の下面が略直線状の閉塞部141cと略平行になるように、この動作規制部材を鍵フレームの水平部23aに設ける。衝撃荷重が加わったとき、衝突面がそのまま扁平に近づくから、この具体例でも制動が正常に機能する。
【0087】
これに対し、比較例として、図17(c)に示されるように、上限ストッパ152が、その包囲部材141の上下面及び閉塞部141cが、ほぼ鉛直になるように設置されていたとする。
図17(d)に示すように、上限ストッパ152に衝撃荷重が加わったとき、包囲部材141は、略直線状の閉塞部141cと直交する水平方向に断面がつぶれて扁平となる。しかし、閉塞部141cにおいては、鉛直方向に略直線状の形状を維持しようとする。
従って、衝突面と閉塞部141cの直線とは直交してしまう。その結果、包囲部材141の衝突部(腹部)と閉塞部141c(節部)との間の包囲部材141に大きな歪みが加わる。そのため、制動動作が円滑に行われず、鍵タッチ感に悪影響を及ぼし、包囲部材141の耐久性にも問題がある。
【0088】
上述した上限ストッパ152の動作は、下限ストッパ151,153についても同様である。また、図1に示した鍵盤装置において用いる、鍵の回動に対する下限ストッパ5,上限ストッパ6について、図15を参照して説明した包囲部材141を有する動作規制部材を用いる場合も同様である。
【0089】
図18は、図15に示した筒状の包囲部材に閉塞部を形成するための、他の具体例の説明図である。
図中、161は包囲部材、161aは閉塞部、162は締結部材である。包囲部材161の素材に制約はなく、図3に示したものを用いることができる。
この具体例では、包囲部材161を締結部材162を用いて略点状に絞ることにより、締結部161aを形成する。
【0090】
締結部材162としては、ゴムや糸、紐である。糸、紐で縛ったり、ゴム止めしたり、糸で縫合したりする。また、締結部材162として金属製リングを用い、これでかしめたりする。
なお、締結部材162を用いることなく、包囲部材161自体をねじることによっても閉塞部161aを形成することができる。
【0091】
図15に示したような略直線状の閉塞部141cと比較して、略点状に絞る方が組み立てが容易であるだけでなく、包囲部材161の内部包囲領域の断面が略円形状となるから、多数の粒子11を収容することができる。
また、上述した略直線状の閉塞部141cは、図17を参照して説明したように、包囲部材141への質量体や鍵の衝突角度が問題となった(角度異方性)が、略点状の閉塞部161aは、包囲部材161の腹部に質量体や鍵がどのような角度で衝突しても、閉塞部161aが影響を与えない。
【0092】
上述した図14〜図18においては、包囲部材に閉塞部を設けることにより、包囲領域を複数の包囲領域に分割することにより、粒子が鍵の配列方向に移動することを阻止している。
この閉塞部を設ける位置は、鍵や鍵に連動する質量体(回動部材)が衝突する箇所の中間となる全ての位置であった。より具体的には、質量体に対しては隣接する質量体のすべての中間位置であり、鍵に対しては鍵自体の中間位置であった。
【0093】
しかし、すべての中間位置に設けなくてもよい。また、閉塞部により分割された各閉領域内に、図8〜図13に示した移動規制部材を収容してもよい。
図19は、図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に形成された閉塞部の配置を説明する模式的な平面図である。
下限ストッパとして、図15に示した包囲部材を有する動作規制部材を前提としたものについて例示する。
図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
図19(a)に示す動作規制部材171においては、隣接する質量集中部28eの各中間位置に閉塞部171aによる分割位置を設けている。
一方、図19(b)に示す動作規制部材172においては、隣接する3本の質量集中部28eを1グループとし、グループ単位で分割し、隣接するグループの中間位置に閉塞部による分割位置172aを設けている。従って、グループ化された質量集中部28eが、閉領域を共有することになる。従って、閉塞部172aを形成するための構造あるいは加工が節約できる。
通常は、同じ個数の質量集中部28eで1グループを構成すればよいが、1グループとする個数を、グループ毎に異ならせてもよい。
【0095】
図15ないし図18を参照して説明した具体例では、筒状の包囲部材に閉塞部を形成するものであった。
しかし、閉塞部を形成しない場合でも、図1〜図14を参照して説明した動作規制部材のように、包囲部材を基台に封着する場合に比べて、筒状の包囲部材を使用してもよい。最初に粒子を包囲部材に詰めておけば、以後の鍵フレームへの固着などの作業において、粒子の取扱が容易となるから、組立性が向上する。
【0096】
上述した上限ストッパ及び下限ストッパ(動作規制部材)の設置位置は、典型的な位置を例示して説明したが、鍵や鍵に連動する質量体(回転部材)に対する動作規制機能を果たすものであれば、図示の位置以外に設けてもよい。
上限ストッパ及び下限ストッパ(動作規制部材)を鍵フレームそのものに配置する必要はなく、回動部材に対する固定側であればよいから、鍵フレーム側の任意の固定部材に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本願発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】本願発明の第2の実施形態を模式的に説明する右側面図である。
【図3】図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材の動作機能を示す説明図である。
【図4】図1,図2に示した実施形態において用いる包囲部材の具体例を示す説明図である。
【図5】本願発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【図6】本願発明の第4の実施形態を示す説明図である。
【図7】上限ストッパにおける粒子に対する重力の作用を示す説明図である。
【図8】図2に示した下限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図9】図2に示した下限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図10】図2に示した下限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図11】図2に示した上限ストッパの具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図12】図2に示した上限ストッパの他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図13】図2に示した上限ストッパのさらに他の具体例であって、内部に移動規制部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図14】図2に示した下限ストッパの具体例であって、外部に移動阻止部材が配設された動作規制部材を示す説明図である。
【図15】図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に閉塞部が形成された動作規制部材を示す説明図である。
【図16】図15に示した筒状の包囲部材を作成する他の具体例の説明図である。
【図17】図15に示した略線状の閉塞部が形成された筒状の包囲部材を使用する鍵盤装置を示す説明図である。
【図18】図15に示した筒状の包囲部材に閉塞部を形成するための、他の具体例の説明図である。
【図19】図2に示した下限ストッパの具体例であって、包囲部材に形成された閉塞部の配置を説明する模式的な平面図である。
【図20】従来の電子楽器の鍵盤装置を模式的に説明する右側面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…白鍵本体部(回動部材)、2…黒鍵本体部(回動部材)、3…鍵フレーム(フレーム)、5…下限ストッパ(動作規制部材)、6…上限ストッパ(動作規制部材)、
11,42…粒子、12…包囲部材、
21…白鍵本体部(回動部材)、22…黒鍵本体部(回動部材)、23…鍵フレーム(フレーム)、29…下限ストッパ(動作規制部材)、6…上限ストッパ(動作規制部材)、
28…質量体(回動部材)、28e…質量集中部、
41…網目状包囲部材、44…薄膜、44a…通気孔、45…基材部、45a…通気孔、51,52,61,62…フェルト、
【0099】
71,81,82,91,92,101,111,112,113,114,121…移動規制部材、71a,92a…傾斜壁、71b,81c,82c,91a,101a,111a,112b,113a,114a,121a…垂直壁、
【0100】
131…移動阻止部材、141,142,143,144,154,161…包囲部材、141c,154c,161a…閉塞部、162…締結部材、151,153…下限ストッパ(動作規制部材)、152…上限ストッパ(動作規制部材)、171…動作規制部材、171a,172a…閉塞部による分割位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回動部材と、該複数の回動部材を支持するフレームと、前記各回動部材が衝突することにより当該回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材を有する電子楽器の鍵盤装置において、
前記動作規制部材の少なくとも1つは、複数の粒子が包囲部材により部分的に又は全体を包囲されて閉領域に収容された状態で、前記複数の回動部材の配列方向に延在し、前記フレーム又は前記フレーム側の固定部材に配置されているものであり、
前記包囲部材により包囲された内部に、前記粒子が移動することを規制する移動規制部材が配設されている、
ことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する各箇所の中間となる複数位置の少なくとも一部に移動規制部が位置するように配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する箇所の中間となる複数位置のそれぞれに移動規制部が位置するように配設され、
前記各回動部材が衝突する箇所を最下端とし、前記各移動規制部を最上端とする傾斜壁を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項4】
前記移動規制部材は、略鉛直に配設された壁部材である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項5】
前記壁部材と前記包囲部材とは、部分的に接合されている、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの動作規制部材により回動範囲が規制される回動部材は、鍵及び該鍵の押鍵操作に連動して回動する質量体の少なくとも一方である、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項1】
複数の回動部材と、該複数の回動部材を支持するフレームと、前記各回動部材が衝突することにより当該回動部材の回動範囲を規制する動作規制部材を有する電子楽器の鍵盤装置において、
前記動作規制部材の少なくとも1つは、複数の粒子が包囲部材により部分的に又は全体を包囲されて閉領域に収容された状態で、前記複数の回動部材の配列方向に延在し、前記フレーム又は前記フレーム側の固定部材に配置されているものであり、
前記包囲部材により包囲された内部に、前記粒子が移動することを規制する移動規制部材が配設されている、
ことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する各箇所の中間となる複数位置の少なくとも一部に移動規制部が位置するように配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
前記移動規制部材は、前記包囲部材における前記複数の各回動部材が衝突する箇所の中間となる複数位置のそれぞれに移動規制部が位置するように配設され、
前記各回動部材が衝突する箇所を最下端とし、前記各移動規制部を最上端とする傾斜壁を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項4】
前記移動規制部材は、略鉛直に配設された壁部材である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項5】
前記壁部材と前記包囲部材とは、部分的に接合されている、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの動作規制部材により回動範囲が規制される回動部材は、鍵及び該鍵の押鍵操作に連動して回動する質量体の少なくとも一方である、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の電子楽器の鍵盤装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−107597(P2008−107597A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290836(P2006−290836)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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