説明

電子楽器の鍵盤装置

【課題】樹脂成形によって形成された複数の鍵を備えた鍵盤装置であって、割り当てられた音高が異なる少なくとも2つの鍵の長さを異ならせた鍵盤装置のコストを削減する。
【解決手段】樹脂成形により、鍵基材11W,11Bを形成する。鍵基材11W,11Bは、鍵音高の異なる複数の鍵を形成するために共通に用いられる部材である。鍵基材11W,11Bの後端に、前後方向に間隔をおいて複数の切断部11W5〜11W7,11B5〜11B7を設ける。鍵基材11W,11Bを、形成する鍵の鍵音高に応じた切断部にて切断する。複数の鍵を支持する鍵フレームを設ける。種類の異なる複数の電子楽器に共通のフレーム基材であって、複数の鍵を支持する複数の支持部を有するフレーム基材の後端部を、複数の鍵の後端に沿うように切断して鍵フレームを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子オルガン、電子ピアノなどの電子楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているように、アコースティックピアノの鍵タッチ感(押離鍵操作に対する反力)を模擬するために、割り当てられた音高が高い鍵ほど、鍵の前端の鍵タッチ感を軽くした電子楽器の鍵盤装置は知られている。この鍵盤装置においては、鍵にそれぞれ係合して揺動し、それぞれの鍵の押離鍵操作に対する反力を付与する複数のハンマーを備えている。そして、低音部の鍵から高音部の鍵に向かうに従って、後端部に設けられた鍵の支点から鍵の前端までの長さを徐々に長くしている。また、鍵の支点から、ハンマーと鍵との係合位置までの距離を、全ての鍵について同一にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3074794号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の鍵盤装置においては、鍵ごとに長さが異なるので、鍵を樹脂成形によって一体的に形成する場合、鍵ごとに金型を製作する必要が有り、コストがかかる。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、樹脂成形によって形成された複数の鍵を備えた鍵盤装置であって、割り当てられた音高が異なる少なくとも2つの鍵の長さを異ならせた鍵盤装置のコストを削減することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の特徴は、音高がそれぞれ割り当てられていて、演奏者によって押離鍵操作されて、後端部に設けられた揺動中心部まわりに揺動する複数の鍵(11w,11b)と、複数の鍵を支持するフレーム(12)とを備えた電子楽器の鍵盤装置において、複数の鍵のうちの少なくとも1つの鍵は、樹脂成型によって形成された鍵基材(11W,11B)であって、前記少なくとも1つの鍵及び他のいずれかの鍵の形成に共通に用いられる鍵基材の後端部を除去して形成されていることにある。この場合、鍵基材は、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の切断部(11W5〜11W8,11B5〜11B8)を有し、前記少なくとも1つの鍵は、鍵基材を、複数の切断部のうち前記少なくとも1つの鍵に割り当てられた音高に対応する切断部にて切断して形成されているとよい。また、この場合、鍵基材は、少なくとも3つの切断部を有し、複数の切断部は、等間隔に設けられているとよい。また、この場合、揺動中心部から鍵の後端までの距離を、全ての鍵について同一にするとよい。
【0007】
上記のように構成した鍵盤装置によれば、樹脂成型によって、同一の鍵基材を複数形成しておき、前記同一の鍵基材を異なる位置にて切断することにより、割り当てられた音高の異なる複数の鍵を形成できる。すなわち、長さが異なる鍵を形成するために、鍵ごとに樹脂成型用の金型を製作する場合に比べて、金型の種類を減らすことができるので、初期費用を削減できる。また、部品の種類を減らすことができるので、部品の管理費を削減できる。また、適用する電子楽器の種類に応じて、鍵基材の切断位置を異ならせることにより、鍵タッチ感の特性の異なる様々な種類の鍵盤装置を構成できる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、複数の鍵のうち所定の音域に属する複数の鍵は、複数の鍵基材を複数の鍵の並び方向に対して所定の角度で同時に切断して形成されていることにある。これによれば、鍵基材を音高順に並べておき、弓鋸盤、帯鋸盤、丸鋸盤などの切断機により、前記並べておいた鍵基材を同時に切断するので、加工時間を短縮できる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、複数の鍵のうちの長い鍵ほど、揺動中心部から鍵の後端までの距離を大きくしたことにある。押離鍵操作位置が鍵の左端部又は右端部であると、鍵の長手方向の軸回りにねじれが生じ、このねじれの量は、鍵の支点から前記押離鍵操作位置までの距離が大きいほど大きくなる。すなわち、鍵が長いほど、大きなねじれが発生する可能性がある。そこで、上記のように構成すれば、長い鍵ほど、鍵の長手方向の軸線まわりのねじり剛性を高めることができ、大きなねじれの発生を防止できる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、フレームは、種類の異なる複数の電子楽器に共通のフレーム基材(12A)であって、複数の鍵をそれぞれ支持する複数の支持部を備えたフレーム基材の後端部における、複数の鍵が複数の支持部にそれぞれ組み付けられたときの複数の鍵の後端よりも後方の領域を除去して形成されていることにある。この場合、支持部は、前後方向に間隔をおいて配置された複数の支持部材を有し、鍵は、複数の支持部材のうち、鍵の長さに対応する支持部材によって支持され、フレームは、フレーム基材における、鍵の長さに対応する支持部材よりも後方の領域を除去して形成されているとよい。
【0011】
上記のように構成した鍵盤装置によれば、フレーム基材は、種類の異なる複数の電子楽器に共通なので、部品の種類を削減でき、部品の管理費を削減できる。また、短い鍵の後方にスペースを設けることができるので、電子楽器の本体内部の限られた空間をより効率的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の全体概略図である。
【図2】図1の鍵盤装置の鍵を形成するための鍵基材の底面図である。
【図3】図1の鍵盤装置の鍵フレームを形成するためのフレーム基材の底面図である。
【図4】図1の鍵盤装置の高音部の白鍵についての右側面図である。
【図5】図1の鍵盤装置の高音部の黒鍵についての右側面図である。
【図6】質量体の質量の特性を示す特性図である。
【図7】鍵タッチ感の特性を示す特性図である。
【図8】本発明の変形例に係る鍵盤装置の全体概略図である。
【図9】図8の鍵盤装置の鍵を形成するための鍵基材の底面図である。
【図10】本発明の他の変形例に係る鍵盤装置の全体概略図である。
【図11】図10の鍵盤装置の鍵を形成するための鍵基材の底面図である。
【図12】図10の鍵盤装置の鍵フレームを形成するためのフレーム基材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。以下の説明では、演奏者に近い側を「前側」とし、演奏者から遠い側を「後側」とする。また、高音部側を「右側」とし、低音部側を「左側」とする。
【0014】
この鍵盤装置は、図1に示すように、複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bを有している。この鍵盤装置の全体の音域(C3〜C6)は、低音部L(C3〜B3)、中音部M(C4〜B4)及び高音部H(C5〜C6)の3つの音域に分割されている。低音部Lに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、それぞれ中音部Mに属する白鍵11w及び黒鍵11bよりも長い。また、高音部Hに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、それぞれ中音部Mに属する白鍵11w及び黒鍵11bよりも短い。また、それぞれの音域において、白鍵11wは黒鍵11bに比べて長い。
【0015】
中音部M及び高音部Hに属する白鍵11wは、図2に示すように、白鍵の音名ごと(すなわち、C、D、E、F、G、A及びB)に、それぞれ樹脂成形により一体的に形成された鍵基材11W(C)〜鍵基材11W(B)の後端部を切断して形成される。なお、低音部Lにおいては、鍵基材11W(C)〜鍵基材11W(B)を切断することなく、そのまま白鍵11wとして用いる。鍵基材11W(C)〜鍵基材11W(B)は、それぞれ前部及び後部からなる。後部の左右方向の幅は、前部の左右方向の幅に比べて狭い。後部は、前部の後端から後方へ延設されていて、割り当てられた音名によって、後部と前部との左右方向の接続位置が異なる。すなわち、鍵基材11Wの外形は、割り当てられた音名ごとに異なる。後部の構成は、鍵基材11W(C)〜鍵基材11(B)について共通である。そこで、以下、鍵基材11W(C)〜鍵基材11W(B)を鍵基材11Wとして説明する。ただし、割り当てられた音名を特定する必要があるときは、符号に音名を付して説明する。
【0016】
鍵基材11Wの後端部の下面には、後端から前端側へ向かって4つのリブ11W1〜11W4がこの順に設けられている。隣り合うリブ同士の間には、リブの無い境界部が設けられている。このリブ11W1とリブ11W2との間の境界部を第1切断部11W5と呼び、リブ11W2とリブ11W3との間の境界部を第2切断部11W6と呼ぶ。また、リブ11W3とリブ11W4との間の境界部を第3切断部11W7と呼ぶ。第1切断部11W5と第2切断部11W6との間隔は、第2切断部11W6と第3切断部11W7との間隔と同一である。中音部Mに属する白鍵11wは、鍵基材11Wを第1切断部11W5にて切断して形成され、高音部Hに属する白鍵11wは、鍵基材11Wを第2切断部11W6にて切断して形成される。
【0017】
中音部M及び高音部Hに属する黒鍵11bも、白鍵11wと同様に、樹脂成形により一体的に形成された鍵基材11Bの後端部を切断して形成される。鍵基材11Bは、全ての黒鍵11bについて共通である。鍵基材11Bの後端部の下面には、後端から前端側へ向かって4つのリブ11B1〜11B4がこの順に設けられている。リブ11B1とリブ11B2との間の境界部を第1切断部11B5と呼び、リブ11B2とリブ11B3との間の境界部を第2切断部11B6と呼ぶ。また、リブ11B3とリブ11B4との間の境界部を第3切断部11B7と呼ぶ。第1切断部11B5と第2切断部11B6の間隔は、第2切断部11B6と第3切断部11B7の間隔は同一である。中音部Mに属する黒鍵11bは、鍵基材11Bを第1切断部11B5にて切断して形成され、高音部Hに属する黒鍵11bは、鍵基材11Bを第2切断部11B6にて切断して形成される。なお、低音部Lにおいては、鍵基材11Bを切断することなく、そのまま黒鍵11bとして用いる。
【0018】
また、鍵基材11Wを音名順に配置し、かつ鍵基材11Bを所定の鍵基材11Wの間に配置した状態において、各鍵基材の、第1切断部11W5〜第3切断部11W7、及び第1切断部11B5〜第3切断部11B7の前後方向の位置がそれぞれ同一である(図2参照)。したがって、1オクターブの音域に属する12個の鍵を形成するための鍵基材11W及び鍵基材11B(以下、1オクターブ分の鍵基材という)を上記のように配置しておけば、弓鋸盤、帯鋸盤、丸鋸盤などの切断機の刃が各第1切断部11W5及び各第1切断部11B5に直線的に通るように、1オクターブ分の鍵基材を前記切断機にセットすることができる。これにより、前記切断機を用いて、1オクターブ分の鍵基材を、第1切断部11W5及び第1切断部11B5にて、同時に切断することができる。すなわち、中音部Mの白鍵11w及び黒鍵11bを同時に形成できる。また、1オクターブ分の鍵基材を上記のように配置しておいて、第2切断部11W6及び第2切断部11B6にて、同時に切断すれば、高音部Hの白鍵11w及び黒鍵11bを同時に形成できる。なお、1オクターブ分の鍵基材を同時に切断しなくてもよく、数鍵分の鍵基材11W及び鍵基材11Bを同時に切断してもよい。
【0019】
音域の違いによる白鍵11w及び黒鍵11bの違いは、前後方向の長さのみであって、他の構成は同様である。したがって、以下、高音部Hの白鍵11w及び黒鍵11bの構成、並びにそれらの周辺部を説明して、中音部M及び低音部Lについての説明を省略する。白鍵11wは、黒鍵11bに比べて、上下方向の幅が小さく、左右方向の幅が大きい。白鍵11w及び黒鍵11bは、前後方向に延設された薄肉の上壁及び上壁の左右端からそれぞれ下方へ延設された薄肉の側壁を有し、下方に開放した中空状に形成されている。また、白鍵11w及び黒鍵11bの左右の側壁の後部には、穴あけ加工が施されて、対向する貫通孔Kw及び貫通孔Kbがそれぞれ設けられる。貫通孔Kw及び貫通孔Kbから、それぞれの鍵の後端までの距離は、音域によらず全ての鍵について同一である。そして、白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵フレーム12の鍵支持部13により支持されている。
【0020】
鍵フレーム12は、図3乃至図5に示すように、フレーム基材12Aの後端部を切除して形成される。なお、図3は、フレーム基材12Aを底面側から見た図であるので、同図において、左側が高音部側であり、右側が低音部側である。また、図3においては、鍵支持部13の配置を示すために、鍵ごとに設けられた鍵支持部13のうちのいくつかの鍵支持部13を破線の四角形で概略的に示している。また、図4及び図5においては、フレーム基材12Aの切除した部分を一点鎖線で示している。フレーム基材12Aは、後述するように、適用する電子楽器の種類に応じて鍵タッチ感の特性を異ならせた複数種類の鍵盤装置の鍵フレームを形成するために共通に用いられる部品である。フレーム基材12Aは、樹脂成型により一体的に形成され、左右方向に延設されている。フレーム基材12Aは、高音部側の端部から、低音部Lと中音部Mの境界まで左右方向に延設され、さらに前後方向に延設されてフレーム基材12Aの後端に至る第1切断部12A1を有する。また、第1切断部12A1の前方にて、高音部H側の端部から、高音部Hと中音部Mの境界まで左右方向に延設され、さらに前後方向に延設されて第1切断部12A1に至る第2切断部12A2を有する。第1切断部12A1及び第2切断部12A2には、後述するリブ12dが形成されていない。したがって、第1切断部12A1及び第2切断部12A2は、他の部分に比べて切断加工し易くなっている。
【0021】
本実施形態においては、低音部L、中音部M及び高音部Hの順に、鍵の長さを段階的に短くしている。そこで、鍵フレーム12の後端の位置が鍵の後端の位置に沿うように、フレーム基材12Aを、第1切断部12A1及び第2切断部12A2にて切断して、鍵フレーム12を形成している。すなわち、鍵フレーム12の後端は、平面視において、階段状に形成されている。鍵フレーム12は、前後方向及び左右方向に延設された前板12a及び後板12bを有する。上記の鍵支持部13は、後板12bの上面から上方へ突出するように形成されている。各鍵支持部13は、鍵フレーム12の後端に沿って形成されている。すなわち、低音部Lの鍵支持部13は、中音部Mの鍵支持部13よりも後方に設けられ、高音部Hの鍵支持部13は、中音部Mの鍵支持部13よりも前方に設けられている。各音域における各鍵支持部13の前後方向の位置は同一である。
【0022】
各鍵支持部13は、それぞれ対向する2枚の板状に形成されている。前記対向する2枚の板状の部分には、貫通孔13aがそれぞれ設けられている。この2つの貫通孔13aは、対向している。そして、前記対向する2枚の板状の部分の間に白鍵11wを挟み、貫通孔13aと貫通孔Kwの位置を合わせておいて、貫通孔13a及び貫通孔KwにピンPNを挿入する。これにより、白鍵11wは、ピンPNの回りに回転可能に支持され、白鍵11wの前端部が上下方向に揺動可能となっている。黒鍵11bも白鍵11wと同様に支持されている。
【0023】
前板12a及び後板12bには、上下方向及び前後方向に延設された複数のリブ12dの上端部が一体的に接続されている。リブ12dは、左右方向に薄肉であり、左右方向に所定の間隔をおいて設けられている。また、リブ12dは、前板12aの前端よりも前方へ張り出している。この張り出した部分に、後述のレール部17,19,21が設けられる。
【0024】
また、白鍵11wの中間部から下方へ向かって駆動部11w1が延設されている。駆動部11w1は、上下に延設された薄肉の前壁及び前壁の左右端からそれぞれ後方へ延設された薄肉の側壁を有し、後方に開放した中空状に形成されている。駆動部11w1の下端は下端壁により閉じている。一方、黒鍵11bも白鍵11wと同様の駆動部11b1を有する。黒鍵11bは、離鍵状態において白鍵11wの上面よりも上方に突出した部分(以下、黒鍵11bの見え掛り部という。)の前端から下方へ延設された後、僅かに前方へ湾曲させられた連結部を有し、この連結部の先端に、駆動部11b1の上端が接続されている。駆動部11w1と駆動部11b1の前後方向の位置は同一であり、駆動部11w1と駆動部11b1の下端壁の上下方向の位置も同一である。すなわち、駆動部11w1及び駆動部11b1は、黒鍵11bの見え掛り部の前端よりも前方に位置する。前板12aの前方に設けられた上下に開口した開口部内にて、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端部が、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部にそれぞれ係合している。
【0025】
ハンマー16wは、合成樹脂製の基部16w1と、金属製の連結棒16w2及び質量体16w3とからなる。ハンマー16bは、ハンマー16wと同様に、基部16b1、連結棒16w2及び質量体16b3からなる。基部16w1及び基部16b1は、板状の部材であって、右側面から左側面に貫通する貫通孔Hw及び貫通孔Hbを有する。また、隣り合うリブ12dの下端部を繋ぐようにして、レール部17が左右方向に延設されている。レール部17は、前板12a及び後板12bに比べて前後方向の幅が狭い。レール部17の上面には、上方に突出するようにして、ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bが形成されている。ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bは、それぞれ対向する2枚の板状に形成されていて、それぞれ内側に対向する突出部18w1及び突出部18b1を備えている。前記突出部18w1及び突出部18b1は、貫通孔Hw及び貫通孔Hbにそれぞれ嵌合している。これにより、基部16w1及び基部16b1は、突出部18w1及び突出部18b1回りに回転可能に支持されている。すなわち、ハンマー16w及びハンマー16bは、前端部及び後端部が上下方向に揺動可能に支持されている。ハンマー支持部18w及びハンマー支持部18bの前後方向の位置は、全てのハンマー16w及びハンマー16bについて共通である。
【0026】
また、基部16w1は、前端部に上下一対の脚部Fw1及び脚部Fw2を備え、上側に位置する脚部Fw1は下側に位置する脚部Fw2より短く形成されている。基部16b1も、基部16w1と同様に、前端部に上下一対の脚部Fb1及び脚部Fb2を備えている。脚部Fw1と脚部Fw2の間には、駆動部11w1の下端壁が侵入しており、脚部Fb1と脚部Fb2の間には、駆動部11b1の下端壁が侵入している。脚部Fw1及び脚部Fb1は、それぞれ、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁と、駆動部11w1及び駆動部11b1内であって、それぞれの下端壁との間に隙間を形成する中間壁との間に侵入している。駆動部11w1及び駆動部11b1の下端壁には、ゴム、ウレタン、フエルトなどの衝撃吸収材が嵌め込まれて固着されている。この衝撃吸収材は、駆動部11w1と脚部Fw2の上面との衝突、駆動部11b1の下端と脚部Fb2の上面との衝突、駆動部11w1の下端と脚部Fw1の下面との衝突、及び駆動部11b1の下端と脚部Fb1の下面との衝突による衝撃をそれぞれ緩和している。
【0027】
基部16w1及び基部16b1の後端部に、連結棒16w2及び連結棒16b2の前端部がそれぞれ組み付けられている。連結棒16w2及び連結棒16b2は、それぞれ後方へ延設されている。連結棒16w2と連結棒16b2の後端の前後方向の位置は同一である。そして、次に説明する質量体16w3及び質量体16b3の後端が白鍵11w及び黒鍵11bの後端よりも前方に位置するように、連結棒16w2及び連結棒16b2の長さが調整されている。
【0028】
上記のように、音域によって、鍵の支点の位置が異なる。したがって、音域によって、白鍵11wの揺動中心から脚部Fw2における駆動部11w1との当接部Pw1までの距離が異なる。また、音域によって、黒鍵11bの揺動中心から脚部Fb2における駆動部11b1との当接部Pb1までの距離が異なる。さらに、白鍵11wにおいては、押離鍵操作される可能性のある位置の前端である押離鍵操作位置W0が当椄部Pw1よりも前方に位置するのに対して、黒鍵11bにおいては、押離鍵操作される可能性のある位置の前端(すなわち、見え掛り部の前端)である押離鍵操作位置B0が当椄部Pb1の後方に位置している。したがって、全ての鍵について質量体16w3及び質量体16b3の質量が同一であれば、てこの原理によって、押離鍵操作位置W0,B0においては、低音部Lよりも中音部Mの鍵タッチ感が重く、中音部Mよりも高音部Hの鍵タッチ感がさらに重い。また、この場合、各音域における白鍵11wと黒鍵11bの鍵タッチ感が統一されない。すなわち、白鍵11wの鍵タッチ感に比べて黒鍵11bの鍵タッチ感の方が重い。そこで、図6に示すように、質量体16w3及び質量体16b3の質量を鍵ごとに調整して、図7に示すように、押離鍵操作位置W0,B0における鍵タッチ感を、低音から高音へ向かうに従って徐々に軽くしている。したがって、図7に破線で示すように、押離鍵操作位置W0,B0からそれぞれ距離dだけ後方に位置する押離鍵操作位置W1,B1における鍵タッチ感も、低音から高音へ向かうに従って徐々に軽くなっている。ただし、音域によって鍵の長さが異なるので、押離鍵操作位置W0,B0における鍵タッチ感と、押離鍵操作位置W1,B1における鍵タッチ感との差は、低音から高音に向かうに従って大きくなる。すなわち、押離鍵操作位置の前後方向の違いによる鍵タッチ感の違いは、低音部Lにおいて小さく、中音部Mにおいて中程度であり、高音部Hにおいて大きい。
【0029】
白鍵11w及び黒鍵11bの離鍵時には、ハンマー16w及びハンマー16bは、自重により、前端部が上方へ変位する。このとき、脚部Fw2及び脚部Fb2により駆動部11w1及び駆動部11b1がそれぞれ上方へ付勢され、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部はそれぞれ上方へ変位する。一方、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時には、駆動部11w1及び駆動部11b1の下端面が脚部Fw2及び脚部Fb2の上面をそれぞれ押圧し、ハンマー16w及びハンマー16bの前端部がそれぞれ下方へ変位する。
【0030】
また、隣り合うリブ12dの前端部を繋ぐようにして、レール部19が左右方向に延設されている。レール部19の前後方向の幅は、前板12a及び後板12bの前後方向の幅に比べて狭い。レール部19の上面から上方に突出するようにして、白鍵11wの揺動をガイドするための鍵ガイド19wが形成されている。鍵ガイド19wは、白鍵11wに下方から侵入しており、押離鍵時に鍵ガイド19wの側面と白鍵11wの側壁の内側の面が摺接するようになっている。これにより、押離鍵時の白鍵11wの左右方向の微少な変位を抑制している。
【0031】
また、隣り合うリブ12dの上端部であって、黒鍵11bの見え掛り部の前端部の下方に位置する部分を繋ぐようにして、レール部21が左右方向に延設されている。レール部21の前後方向の幅は、前板12a及び後板12bの前後方向の幅に比べて狭い。レール部21の上面から上方に突出するようにして、黒鍵11bの揺動をガイドするための鍵ガイド21bが形成されている。鍵ガイド21bは、黒鍵11bに下方から侵入しており、押離鍵時に鍵ガイド21bの側面と黒鍵11bの側壁の内側の面が摺接するようになっている。これにより、押離鍵時の黒鍵11bの左右方向の微少な変位を抑制している。
【0032】
また、各リブ12dの中間部には、上端から下方へ向かって方形状に切り欠いた、切り欠き12d1が設けられている。この切り欠き12d1を一体成型により形成するために、切り欠き12d1の上方に位置する前板12aの中間部には、上面から下面に貫通した方形状の貫通孔が設けられている。そして、前板12aの下面には、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の下限ストッパ22が、リブ12dの切り欠き12d1を通って、左右方向に延設されて固着されている。この下限ストッパ22は、押鍵時にハンマー16w及びハンマー16bの後部に当接して、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の上方への変位を規制することにより、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の下方への変位を規制する。また、フレームFRの後部には、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した上限ストッパ23が、固着されている。離鍵時において、質量体16w3及び質量体16b3の下面に当接して、ハンマー16w及びハンマー16bの後端部の下方への変位を規制することにより、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部の上方への変位を規制する。
【0033】
また、白鍵11w及び黒鍵11bの中間部の下面には、スイッチ駆動部24が設けられている。スイッチ駆動部24は、基板25上に配置されたスイッチSWの上面に当接している。スイッチSWは、鍵ごとに設けられ、各鍵の揺動に伴って押圧されて、各鍵の押離鍵状態を検出する。また、基板25には、上面から下面に貫通した貫通孔が設けられている。この貫通孔の位置は、前板12aの上面に一体的に形成されたボス26の位置に対応している。この貫通孔にねじを通してボス26にねじ込むことにより、基板25が、鍵フレーム12に固定される。
【0034】
また、リブ12dとレール部17の接続部には、ボス27が形成されている。電子楽器のフレームFRに貫通孔を設けておいて、この貫通孔にねじを下方から通して、ボス27にねじ込むことにより、この鍵盤装置が電子楽器のフレームFRに固定される。
【0035】
また、隣り合うリブ12dの間には、支柱28が設けられている。支柱28は、下端がフレームFRに固定され、上端が後板12bの後端部の下面に固定される。これにより、後板12bの後端部であって、隣り合うリブ12dの間の部分を補強している。
【0036】
なお、フレーム基材12Aの上面側であって、フレーム基材12Aの後端と第1切断部12A1との間、及び第1切断部12A1と第2切断部12A2との間にも、左右方向に複数の鍵支持部13が並設されている(図3、図4及び図5を参照)。言い換えれば、高音部Hにおいては、音高ごとに、前後方向に3つの鍵支持部13が並設され、中音部Mにおいては、音高ごとに、前後方向に2つの鍵支持部13が並設されている。
【0037】
例えば、高音部Hの鍵の長さが中音部Mの鍵の長さと共通である鍵盤装置においては、フレーム基材12Aを第1切断部12A1にて切断して、鍵フレームを形成すればよい。この場合、高音部Hにおいては、第1切断部12A1と第2切断部12A2との間に設けられた各鍵支持部13にて各鍵を支持すればよい。また、高音部H及び中音部Mの鍵の長さが低音部Lの鍵の長さと共通である鍵盤装置においては、フレーム基材12Aを加工することなく、そのまま鍵フレームとして用いればよい。この場合、高音部H及び中音部Hにおいては、フレーム基材12Aの後端と第1切断部12A1との間に設けられた各鍵支持部13にて、各鍵を支持すればよい。
【0038】
上記のように構成した鍵盤装置においては、中音部M及び高音部Hの白鍵11w及び黒鍵11bを、それぞれ鍵基材11W及び鍵基材11Bの後端部を切断して形成した。そして、低音部Lの白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bをそのまま用いた。したがって、1オクターブ分の鍵基材を形成するための金型を製作すればよいので、長さが異なる鍵ごとに金型を製作する場合に比べて初期費用を削減できる。また、上記のように、複数の鍵基材11W及び鍵基材11Bを同時に切断して、複数の白鍵11w及び黒鍵11b同時に形成すれば、加工時間を短縮できるので、鍵基材11W及び鍵基材11Bを1つずつ切断する場合に比べてコストを削減できる。
【0039】
また、フレーム基材12Aを第1切断部12A1及び第2切断部12A2にて切断して、後端の位置が各鍵の後端に沿うような鍵フレーム12を形成したので、中音部M及び高音部Hの後方にスペースを設けることができる。すなわち、電子楽器において鍵盤装置が占有する領域を小さくすることができる。したがって、前記スペースに電子楽器を構成する他の部品(電源トランス、スピーカーなど)を配置することができ、電子楽器の本体内部の限られた空間を効率的に利用できる。また、フレーム基材12Aは、鍵タッチ感の特性が異なる複数種類の鍵盤装置の鍵フレームを形成するための共通部品である。したがって、種類の異なる鍵盤装置ごとに鍵フレームを形成するための金型を製作する場合に比べて初期費用を削減できる。また、部品の種類を減らすことができるので、部品の管理費を削減できる。
【0040】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、図8に示すように、割り当てられた音高が高くなるに従って、鍵支持部Kw,Kbが徐々に演奏者側に近づくようにしてもよい。すなわち、白鍵11w及び黒鍵11bを、割り当てられた音高が高くなるに従って、それぞれ徐々に短くしてもよい。上記実施形態においては、鍵基材11Bは、黒鍵の全ての音名について共通であるが、この場合、鍵基材11Wと同様に、鍵基材11Bを黒鍵の音名(C#,D#・・・A#)ごとに設ければよい。以下、鍵基材11B(C#)〜鍵基材11B(A#)を鍵基材11Bとして説明するが、割り当てられた音名を特定する必要があるときは、符号に音名を付して説明する。鍵基材11W及び鍵基材11Bは、図9に示すように、鍵基材11W及び鍵基材11Bをそれらの音名順に並べた状態において、低音側から高音側へ向かうに従って、リブ11W1〜リブ11W4の領域、及びリブ11B1〜リブ11B4の領域が徐々に演奏者側に近づくように形成される。これにより、鍵基材11W(C)を除いて、リブ11W1、及びリブ11B1の後方にリブの無い部分が形成され、このリブ11W1及びリブ11B1の後方に形成されたリブの無い部分を、それぞれ第1切断部11W5及び第1切断部11B5と呼ぶ。鍵基材11W(C)は、第1切断部11W1を有していない。そして、リブ11W1とリブ11W2と間の境界部を第2切断部11W6と呼び、リブ11W2とリブ11W3との間の境界部を第3切断部11W7と呼ぶ。さらに、リブ11W3とリブ11W4との間の境界部を第4切断部11W8と呼ぶ。また、リブ11B1とリブ11B2との間の境界部を第2切断部11B6と呼び、リブ11B2とリブ11B3との間の境界部を第3切断部11B7と呼ぶ。さらに、リブ11B3とリブ11B4との間の境界部を第4切断部11B8と呼ぶ。上記実施形態と同様に、隣り合う切断部の間隔は同一である。
【0042】
また、鍵基材11W(C)と鍵基材11W(B)をぞれぞれの前端を揃えて並べた状態において、鍵基材11W(C)の第2切断部11W2は、鍵基材11W(B)の第1切断部11W1よりも僅かに前方に位置する。
【0043】
低音部Lに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bを第1切断部11W5及び第1切断部11B5にてそれぞれ切断して形成され、中音部Mに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bを第2切断部11W6及び第2切断部11B6にてそれぞれ切断して形成される。また、高音部Hに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bを第3接段部11W7及び第3切断部11B7にてそれぞれ切断して形成される。この場合、鍵基材11W及び鍵基材11Bを1つずつ切断すればよい。なお、鍵基材11W及び鍵基材11Bの各切断部は、前後方向に所定の幅を有する。そこで、鍵基材11W及び鍵基材11Bを音名順に配置し配置しておけば、弓鋸盤、帯鋸盤、丸鋸盤などの切断機の刃が各第1切断部11W5及び各第1切断部11B5に直線的に通るように、1オクターブ分の鍵基材を前記切断機にセットすることができる。これにより、前記切断機を用いて、1オクターブ分の鍵基材を、第1切断部11W5及び第1切断部11B5にて、同時に切断することができる。すなわち、中音部Mの白鍵11w及び黒鍵11bを同時に形成できる。また、1オクターブ分の鍵基材を上記のように配置しておいて、第2切断部11W6及び第2切断部11B6にて、同時に切断すれば、高音部Hの白鍵11w及び黒鍵11bを同時に形成できる。この場合、白鍵11w及び黒鍵11bの後端面は、鍵の並び方向に対して所定の角度を有する。なお、この場合も、1オクターブ分の鍵基材を同時に切断する必要はなく、数鍵分の鍵基材11W及び鍵基材11Bを同時に切断してもよい。また、より多く(例えば、中音部M及び高音部Hを構成する24鍵分)の鍵基材11W及び鍵基材11Bを同時に切断してもよい。
【0044】
また、この場合、上記実施形態のフレーム基材12Aにおいて、低音部側から高音部側へ向かうに従って、徐々に前端側に近づくような複数の鍵支持部13をさらに設けて、各鍵を支持すればよい。また、質量体の質量を調整して、低音部側の鍵から高音部側の鍵へ向かうに従って鍵タッチ感が徐々に軽くなるようにすればよい。他の構成は、上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。このように構成しても、上記実施形態と同様に、鍵盤装置のコストを削減できる。
【0045】
また、図10に示すように、黒鍵11bの後端が、隣接する白鍵11wの後端よりも後方に位置するようにしてもよい。この場合も、鍵基材11Wと同様に、鍵基材11Bを黒鍵の音名ごとに設ければよい。そして、図11に示すように、鍵基材11Wを音名順に配置し、かつ鍵基材11Bを所定の鍵基材11Wの間に配置した状態において、鍵基材11Bの後端が鍵基材11Wの後端よりも後方に位置するように、鍵基材11W及び鍵基材11Bをそれぞれ形成すればよい。そして、この状態において、鍵基材11Bのリブ11B1〜リブ11B4の領域が、隣接する鍵基材11Wのリブ11W1〜リブ11W4の領域よりも後方に位置するようにすればよい。そして、鍵基材11Wの音名の順に、リブ11W1〜リブ11W4の領域が徐々に前端に近づくようにし、鍵基材11Bの音名の順にリブ11B1〜リブ11B4の領域が徐々に前端に近づくようにすればよい。また、上記実施形態と同様に、各鍵における切断部の前後方向の間隔は同一である。ただし、鍵基材11Bにおける切断部の間隔は、鍵基材11Wにおける切断部の間隔よりもやや大きい。なお、この場合も、図9を用いて説明した例と同様に、鍵基材11W(C)は、第1切断部11W5を有さない。
【0046】
また、鍵基材11W(C)と鍵基材11W(B)をそれぞれの前端を揃えて並べた状態において、鍵基材11W(C)の第2切断部11W6は、鍵基材11W(B)の第1切断部11W5よりも僅かに前方に位置する。また、鍵基材11B(C#)と鍵基材11B(A#)をぞれぞれの前端位置を揃えて並べた状態において、鍵基材11B(C#)の第2切断部11B6は、鍵基材11B(A#)の第1切断部11B5よりも僅かに前方に位置する。
【0047】
この場合も、図9を用いて説明した例と同様に、低音部Lに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bを第1切断部11W5及び第1切断部11B5にてそれぞれ切断して形成され、中音部Mに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bを第2切断部11W6及び第2切断部11B6にてそれぞれ切断して形成される。また、高音部Hに属する白鍵11w及び黒鍵11bは、鍵基材11W及び鍵基材11Bを第3切断部11W7及び第3切断部11B7にてそれぞれ切断して形成される。また、この場合も、鍵基材11W及び鍵基材11Bを1つずつ切断してもよいが、次のように、複数の鍵基材をまとめて同時に切断してもよい。すなわち、鍵基材11W(C)乃至鍵基材11W(B)の7鍵分の鍵基材11Wをそれらの音名順に並べれば、弓鋸盤、帯鋸盤、丸鋸盤などの切断機の刃が各第1切断部11W5に直線的に通るように、前記7鍵分の鍵基材11Wを前記切断機にセットすることができる。これにより、前記切断機を用いて、前記7鍵分の鍵基材11Wを、同時に切断することができる。すなわち、中音部Mの白鍵11wを同時に形成できる。また、鍵基材11B(C#)乃至鍵基材11B(A#)の5鍵分の鍵基材11Bをそれらの音名順に並べれば、弓鋸盤、帯鋸盤、丸鋸盤などの切断機の刃が各第1切断部11B5に直線的に通るように、前記5鍵分の鍵基材11Bを前記切断機にセットすることができる。これにより、前記切断機を用いて、前記5鍵分の鍵基材11Bを、同時に切断することができる。すなわち、中音部Mの黒鍵11bを同時に形成できる。また、中音部Mの白鍵11wを同時に形成するのと同様に、高音部Hの白鍵11wを同時に形成できる。また、中音部Mの黒鍵11bを同時に形成するのと同様に、高音部Hの黒鍵11bを同時に形成できる。この場合も、白鍵11w及び黒鍵11bの後端面は、鍵の並び方向に対して所定の角度を有する。なお、この場合も、数鍵分の鍵基材11Wを同時に切断してもよい。また、より多く(例えば、中音部M及び高音部Hを構成する14鍵分)の鍵基材11Wを同時に切断してもよい。また、数鍵分の鍵基材11Bを同時に切断してもよい。また、より多く(例えば、中音部H及び高音部Hを構成する10鍵分)鍵基材11Bを同時に切断してもよい。
【0048】
また、この場合、上記実施形態のフレーム基材12Aにおいて、黒鍵用の鍵支持部13を隣接する白鍵用の鍵支持部13よりも後方に位置させ、低音部から高音部に向かうに従って、前記白鍵用の鍵支持部13及び前記黒鍵用の鍵支持部13を徐々に前端側へ近づけるように設けて、各鍵を支持すればよい。また、図12に示すように、フレーム基材12Aを黒鍵11bの後端に合わせて斜めに切断できるように、鍵の並び方向に対して所定の角度をなす切断部12A3を設けるとよい。なお、図12においては、鍵支持部13の図示を省略している。また、この場合、フレーム基材12Aを、鍵タッチ感の異なる複数種類の鍵盤装置間において共通に用いることができるようにするため、鍵の並び方向に対する角度が互いに異なる第1切断部12A3〜第5切断部12A7を設けるとよい。そして、各切断部に沿って、複数の鍵支持部13を設ければよい。また、上記実施形態及びその変形例においては、フレーム基材12Aの第1切断部12A1及び第2切断部12A2は、リブのない部分であるとしたが、この例においては、切断部12A3〜12A7は、間隔をおいて配置された複数の穴(すなわち、ミシン目)である。上記実施形態の第1切断部12A1及び第2切断部12A2を、ミシン目にしてもよい。また、フレーム基材12Aの各切断部は、断面形状がV字型の溝であってもよい。上記のように構成した鍵盤装置によっても、コストを削減できる。
【0049】
また、上記実施形態及びその変形例においては、全ての白鍵11w及び黒鍵11bについて、貫通孔Kw及び貫通孔Kbから鍵の後端までの距離を同一としたが、次に説明するように、鍵のねじり剛性を高めるために、長い鍵ほど、貫通孔Kw及び貫通孔Kbから鍵の後端までの距離が大きくなるように、貫通孔Kw及び貫通孔Kbを設ける位置を設定してもよい。すなわち、中音部Mに属する白鍵11w及び黒鍵11bの貫通孔Kw及び貫通孔Kbを設ける位置を、高音部Hに属する白鍵11w及び黒鍵11bの貫通孔Kw及び貫通孔Kbを設ける位置よりも、やや前方に設定してもよい。さらに、低音部Lに属する白鍵11w及び黒鍵11bの貫通孔Kw及び貫通孔Kbを設ける位置を、中音部Mに属する白鍵11w及び黒鍵11bの貫通孔Kw及び貫通孔Kbを設ける位置よりも、やや前方に設定してもよい。押離鍵操作位置が鍵の左端部又は右端部であると、鍵の長手方向の軸回りにねじれが生じ、このねじれの量は、鍵の支点から前記押離鍵操作位置までの距離が大きいほど大きくなる。すなわち、鍵が長いほど、大きなねじれが発生する可能性がある。したがって、上記のように、長い鍵ほど貫通孔Kw及び貫通孔Kbより後方の部分を長くすることにより、長い鍵ほどねじり剛性を高めることができ、大きなねじれの発生を防止できる。なお、一部の音域においてのみ鍵の長さに応じて貫通孔Kw及び貫通孔Kbを設ける位置を決定し、他の音域においては、鍵の長さに関係なく、鍵の後端からの距離が同一となるように貫通孔Kw及び貫通孔Kbをそれぞれ設けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態及びその変形例における鍵盤装置の音域は3オクターブであるが、より音域の広い鍵盤装置であってもよいし、逆に、より音域の狭い鍵盤装置であってもよい。また、上記実施形態のように、階段状に鍵の長さを異ならせる場合、1オクターブ単位で鍵の長さを異ならせる必要はなく、数鍵ごとに鍵の長さを異ならせてもよい。また、鍵基材11W及び鍵基材11Bの切断部同士の間隔を狭くして、切断部の数を増やしてもよいし、逆に、切断部同士の間隔を広くして、切断部の数を減らしてもよい。また、各切断部の間隔は、等間隔でなくてもよい。例えば、前端側に近いほど、切断部同士の間隔を狭くしてもよいし、逆に、後端側に近いほど、切断部同士の間隔を狭くしてもよい。また、一部の鍵(例えば、中音部M及び高音部Hに属する鍵)を鍵基材11W及び鍵基材11Bを用いて形成し、他の鍵(例えば、低音部Lに属する鍵)を、鍵基材11W及び鍵基材11Bを用いることなく、専用の鍵としてもよい。すなわち、前記他の鍵を、鍵に割り当てられた音高ごとに樹脂成型により形成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態及びその変形例においては、ハンマー16w及びハンマー16bによって、それぞれ白鍵11w及び黒鍵11bの前端側を上方へ付勢するようにした。しかし、ハンマー16w及びハンマー16bに代えて、バネによって白鍵11w及び黒鍵11bの前端を上方へ付勢してもよい。この場合、鍵ごとに、バネ定数及び離鍵状態におけるバネの付勢力を調整して、低音部Lから高音部Hに向かうに従って鍵タッチ感を軽くすればよい。
【0052】
上記実施形態及びその変形例においては、低音部Lから高音部Hに向かうに従って、鍵の前端の鍵タッチ感を徐々に軽くしたが、必ずしもこのように構成する必要はなく、各音域における鍵の前端の鍵タッチ感を同一とし、高音域に向かうに従って、音域ごとに段階的に鍵タッチ感が軽くなるようにしてもよい。また、一部の音域においてのみ、音高順に鍵タッチ感が軽くなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
11w・・・白鍵、11b・・・黒鍵、11W,11B・・・鍵基材、11W5,11B5・・・第1切断部、11W6,11B6・・・第2切断部、11W7,11B7・・・第3切断部、11W8,11B8・・・第4切断部、12・・・鍵フレーム、12A・・・フレーム基材、12A1・・・第1切断部、12A2・・・第2切断部、13・・・鍵支持部、FR・・・フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音高がそれぞれ割り当てられていて、演奏者によって押離鍵操作されて、後端部に設けられた揺動中心部まわりに揺動する複数の鍵と、
前記複数の鍵を支持するフレームとを備えた電子楽器の鍵盤装置において、
前記複数の鍵のうちの少なくとも1つの鍵は、樹脂成型によって形成された鍵基材であって、前記少なくとも1つの鍵及び他のいずれかの鍵の形成に共通に用いられる鍵基材の後端部を除去して形成されていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記鍵基材は、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の切断部を有し、
前記少なくとも1つの鍵は、前記鍵基材を、前記複数の切断部のうち前記少なくとも1つの鍵に割り当てられた音高に対応する切断部にて切断して形成されていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記鍵基材は、少なくとも3つの前記切断部を有し、
前記複数の切断部は、等間隔に設けられていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記複数の鍵のうち所定の音域に属する複数の鍵は、複数の前記鍵基材を前記複数の鍵の並び方向に対して所定の角度で同時に切断して形成されていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記揺動中心部から前記鍵の後端までの距離を、全ての前記鍵について同一にしたことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記複数の鍵のうちの長い鍵ほど、前記揺動中心部から前記鍵の後端までの距離を大きくしたことを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記フレームは、種類の異なる複数の前記電子楽器に共通のフレーム基材であって、前記複数の鍵をそれぞれ支持する複数の支持部を備えたフレーム基材の後端部における、前記複数の鍵が前記複数の支持部にそれぞれ組み付けられたときの前記複数の鍵の後端よりも後方の領域を除去して形成されていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電子楽器の鍵盤装置において、
前記支持部は、前後方向に間隔をおいて配置された複数の支持部材を有し、
前記鍵は、前記複数の支持部材のうち、前記鍵の長さに対応する支持部材によって支持され、
前記フレームは、前記フレーム基材における、前記鍵の長さに対応する支持部材よりも後方の領域を除去して形成されていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−41079(P2013−41079A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177485(P2011−177485)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】