説明

電子楽音発生装置

【課題】同時発音数を減らすことなく、発音中に楽音波形の入れ替えをスムーズに行える電子楽音発生装置を提供する。
【解決手段】デジタルコントロールドオシレータ3及びループバッファ3aは、1のチャンネルで、C3の楽音の発音開始に基づいて前記楽音波形の立ち上がり部分の読み出しを開始し、その後繰り返し部分の読み出しに移行し、またC4の押鍵タイミングで、デジタルコントロールドオシレータ4及びループバッファ4aは、前記発音開始した楽音の波形変更に基づいてデジタルコントロールドオシレータ3及びループバッファ3aが読み出す楽音波形C3とは異なる共鳴音楽音波形C3+C4の、少なくとも繰り返し部分の読み出しを開始することで、非共鳴状態の楽音波形から共鳴状態の楽音波形のように、波形切替に対応できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、下記特許文献1において、図18に示す音源2のデジタルコントロールドオシレータ3により、波形メモリ1からの楽音波形の読み出しの際、繰り返して読み出せる部分が、1度目の読み出しで、その繰り返し部分を、波形メモリ1とは別途のループバッファ3aにバッファリングしておいて、楽音発生が終了するまで、デジタルコントロールドオシレータ3に繰り返し読み出されて楽音が発生せしめられ、他方、上記波形メモリ1のアクセスが開放される(即ちバス10が空く)ので、次の楽音波形の読み出しが出来るようになって、先読みなど、楽音波形の読み出し速度が向上する構成の提案を行っている。
【特許文献1】特許第3636580号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の構成は、同じ時分割タイムスロットで二種類の楽音波形を読み出すことは記載されているが、これは単に二種類の波形を同時に発音できることを示しているにすぎない。このため、発音中に楽音波形を容易に入れ替えることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、以上のような問題に鑑み創案されたもので、同時発音数を減らすことなく、発音中に楽音波形の入れ替えをスムーズに行える電子楽音発生装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成は、
複数の時分割タイムスロット毎に同時に二つ以上の楽音波形を読み出すことができ、且つ該時分割タイムスロットで複数の楽音が発生可能な電子楽音発生装置において、
該時分割タイムスロット中に、
前記楽音波形の一方の立ち上がり部分から繰り返し部分までを読み出す第1の読み出し手段と、
前記第1の読み出し手段が読み出す楽音波形とは異なる楽音波形の、少なくとも繰り返し部分を読み出す第2の読み出し手段と、
前記第1および第2の読み出し手段が読み出した楽音波形を受け取り、時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する重み付け手段と、
前記重み付け手段が送出する信号に種々の変調を加えて楽音を生成する変調手段と
によって前記複数の楽音を発生することを基本的特徴としている。
【0006】
上記構成によれば、第1の読み出し手段が繰り返し部分のループ読み出しにかかり、立ち上がり部分の読み出しから解放された際に、第2の読み出し手段による別途の(異なる楽音波形の)少なくとも繰り返し部分の繰り返し読み出しを行い、上記2つの読み出し手段からの出力を順番に受けた上記重み付け手段が、最初に受けた方の出力と後に受けた方の出力をクロスフェードして、出力する(時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する)ので、同時発音数を減らさずにスムーズに波形切り替えが出来るようになる。
【0007】
前記第1の読み出し手段は、楽音データの一方を読み出す際に、繰り返し部分の先頭に差し掛かったことを識別した場合に、読み出した繰り返し部分の楽音波形をループバッファに記憶させると共に、上記繰り返し部分の末尾に差し掛かったことを識別した場合に、上記ループバッファに切り替えて楽音の発生を終了するまで繰り返し読み出すと共に、楽音データの読み出しを、第2の読み出し手段に切り替えることにより、スムーズに波形切り替えが出来るようになる。
【0008】
また、前記第1の読み出し手段は、楽音の発音開始に基づいて前記楽音波形の立ち上がり部分の読み出しを開始し、前記第2の読み出し手段は、前記発音開始した楽音の波形変更に基づいて前記第1の読み出し手段が読み出す楽音波形とは異なる楽音波形の、少なくとも繰り返し部分の読み出しを開始することで、様々な種類の波形切替に対応できるようになる。
【0009】
そのような波形切替の1つの態様として、波形変更は、演奏者の音色切替指示によるものが想定できる。
【0010】
すなわち、第1の読み出し手段が立ち上がり部分の読み出しに続き、繰り返し部分のループ読み出しを開始して、第2の読み出し手段が、次の楽音波形の立ち上がり部分或いは繰り返し部分の波形読み出しを行い、音色切り替え操作に伴う音色の異なる楽音波形の第1及び第2の楽音波形を読み出して、上記の処理[上記2つの読み出し手段からの出力を順番に受けた上記重み付け手段が、最初に受けた方の出力と後に受けた方の出力をクロスフェードして、出力する(時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する)]を行うことで、音色切替時の波形切替が、同時発音数を減らさずにスムーズに出来るようになる。
【0011】
また、波形切替の他の態様として、前記発音開始はポルタメント演奏に於ける先行音の発音開始であり、前記波形変更は、ポルタメント演奏に於ける到着音への波形切替であるとすることもできる。
【0012】
すなわち、第1の読み出し手段が繰り返し部分のループ読み出しを開始して、第2の読み出し手段が、次の楽音波形の立ち上がり部分或いは繰り返し部分の波形読み出しを行い、以上の処理を、先行音の発音開始から、ポルタメント演奏に於ける到着音まで、その処理を繰り返して交互に行うことで、ポルタメント時の波形切替が、同時発音数を減らさずにスムーズに出来るようになる。
【0013】
さらに、後述する実施例に示すように、波形切替の別の態様として、前記発音開始は非共鳴状態での発音開始であり、前記波形変更は共鳴状態への波形切替であること、または前記発音開始は共鳴状態の発音開始であり、前記波形変更は非共鳴状態への波形切替であること、のいずれかであることも、本発明として提案する。
【0014】
すなわち、第1の読み出し手段が繰り返し部分のループ読み出しにかかった時に、第2の読み出し手段に波形読出が切り替えられて、最初の楽音波形とは異なる楽音波形の、少なくとも繰り返し部分が読み出される構成では、例えば、ループ読み出しにかかっている最初の楽音波形と共鳴関係にある他の打鍵があった際のその共鳴関係にある楽音波形の繰り返し部分を読み出して、上記の処理[上記2つの読み出し手段からの出力を順番に受けた上記重み付け手段が、最初に受けた方の出力と後に受けた方の出力をクロスフェードして、出力する(時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する)]を行うことで、共鳴関係にある他の打鍵があった際の波形切替が、同時発音数を減らさずにスムーズに出来るようになる。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明の構成によれば、第1の読み出し手段が繰り返し部分の読み出しにかかり、立ち上がり部分の読み出しから解放された際に、第2の読み出し手段による別途の(異なる楽音波形の)少なくとも繰り返し部分の繰り返し読み出しを行い、上記2つの読み出し手段からの出力を順番に受けた上記重み付け手段が、最初に受けた方の出力と後に受けた方の出力をクロスフェードして、出力する(時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する)ので、同時発音数を減らさずにスムーズに波形切り替えが出来るようになるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明に係る電子楽音発生装置の一実施形態につき説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子楽音発生装置を内装した電子ピアノの回路ブロック構成を、また図2は、その中に示された、電子楽音発生装置としての音源(ToneGenerator)2の回路全体構成を示すブロック図、及び図3は該音源2のモジュールブロック構成を各示すブロック図である。
【0018】
図1において、システムバス102は、それにつながった各回路を、後述するCPU104により制御し、電子ピアノとして機能させることになる。
【0019】
ROM106は、後述するCPU104において用いられるプログラムを記憶するプログラムメモリ(図示無し)や必要な各種データが記憶されている。
【0020】
RAM108は、CPU104による制御において発生する各種パラメータやデータ等を一時的に記憶する。特に後述するループカウンタi、共鳴可否テーブルRES[i]、各音色系列TRKの各種音響効果に関するレジスタがあり、後述するように、その状態が参照されたり、更新処理が行われる。
【0021】
インターフェース(I/F)110は、MIDIの入出力インタフェースの他、後述するパネルスキャン回路112a及びキーボードスキャン回路114aの入出力インターフェースであって、システムバス102へのデータや命令の入出力をつかさどる。
【0022】
電子ピアノには、操作パネル112、鍵盤114などが設けられている。操作パネル112は、発生すべき楽音の音色を選択する音色スイッチやポルタメントなどのエフェクト設定のためのスイッチ等が設けられていて、この操作パネル112から設定された情報は、パネルスキャン回路112aのスキャンによってその設定値が検出され、インターフェース110及びそれがつながっているシステムバス102を介して、CPU104に供給される。
【0023】
鍵盤114は、88鍵のキーボードからなり、各鍵には夫々タッチセンサからなる鍵盤センサ(図示無し)が設けられている。該鍵盤センサは、演奏者の鍵盤114に対する演奏操作を検出して、各種の演奏情報を押鍵情報[押鍵タイミング(キーON)や離鍵タイミング(キーOFF)などの情報も含まれる]として出力する。それらのデータをキーボードスキャン回路114aで検出して、それらのデータによりキーマップKMPが作成され、それらのデータは、インターフェース110及びそれがつながっているシステムバス102を介して、CPU104に供給される。
【0024】
CPU104は、ROM106から読み出されたプログラムを実行することで、上記システムバス102でつながっている上記各回路を電子ピアノとして全体を制御すると共に、後述する本発明の電子楽音発生装置としての音源(Tone Generator)2に制御命令を出す。また該CPU104は、同時にキーオンになっている楽音が共鳴関係にあるか否かを判断したり、上記操作パネル112で音色変更があるかなどを判断したり、同じく操作パネル112でポルタメントやモノフォニーなどのエフェクト(音響効果)設定がなされているかなどの判断を行い、それらの判断に伴う各種指示を上記音源2に出力する。
【0025】
音源(Tone Generator)2は、図2に示すような、同時に複数の発音を行なうため時分割制御されるnチャンネルを備えた音源ソースモジュール20a〜20nと、それらの音源ソースモジュール20a〜20nによって波形メモリ1から読み出され出力された楽音データ(L-Out、R-Out)に対して、CPU104から出力され、それらに対応している各音響効果(L-Send、R-Send)を受けて、該楽音データ(L-Out、R-Out)に各音響効果を加えるエフェクトプロセッサ26により構成される。
【0026】
さらに詳細に説明すると、音源2は、nチャンネルに相当するn個の音源ソースモジュール20a〜20nが備えられており、バス10を介して波形メモリ1から読み出された楽音波形を最大nチャンネル分出力(L-Out、R-Out)し、それらに加えられる、CPU104から出力されたポルタメント、モノフォニー、共鳴等の各音響効果(L-Send、R-Send)も出力される。上記各出力(L-Out、R-Out)は加算器(22a、22b、〜22an、22bn)で累算され、エフェクトプロセッサ26に送られる。また上記ポルタメント、モノフォニー、共鳴等の各音響効果(L-Send、R-Send)も、加算器(24a、24b、〜24an、24bn)で累算され、同じくエフェクトプロセッサ26に送られる。該エフェクトプロセッサ26では、上記楽音波形の加算出力に対応する各音響効果を付加し、そのような音響効果の付加された楽音波形として、nチャンネル分をミキシングし、外部に出力する(MixedL、MixedR)。
【0027】
図3は、上記図2の各音源ソースモジュール20a〜20nの内部構成を示すブロック図である。1の音源ソースモジュール20には、後述する第1の読み出し手段に相当する第1のデジタルコントロールドオシレータ3及び第1のループバッファ3a、第2の読み出し手段に相当する第2のデジタルコントロールドオシレータ4及び第2のループバッファ4a、重み付け手段に相当するクロスフェーダ5、及び変調手段に相当するデジタルコントロールドフィルタ6a、デジタルコントロールドアンプリファイア6b並びにパン・ラウドコントロール6cを有している。いずれかのチャンネルとして割り当てられた該音源ソースモジュール20では、押鍵操作により、設定された音色に基づいて後述する波形メモリ1に対して対応する楽音波形が読み出され、割り当てられたチャンネルにおいて押鍵操作に対応する楽音が生成される。
【0028】
上述のように、各チャンネルから出力された楽音波形は、後述の方法によって累算前に各チャンネルにおいてポルタメント、モノフォニー、共鳴等の累算前効果処理を付与されているが、これらは加算器(22a、22b〜22an、22bn)によって累算されて直接音(ドライ楽音)としてエフェクトプロセッサ26の第1の入力に供給される一方、別の加算器(24a、24b、〜24an、24bn)によって各チャンネル毎に累算されて間接音(ウェット楽音)としてエフェクトプロセッサ26の第2の入力に供給される。これにより、上述のように、エフェクトプロセッサ26により、上記楽音波形の累算出力に対して、対応する累算後の各音響効果(コーラス、リバーブ、エコー等)が夫々付加され、そのような各音響効果の付加された楽音波形として、nチャンネル分がミキシングされて、外部に出力される。
【0029】
後述するように、この楽音波形の読み出しの際、ループして繰り返し読み出しされる部分は、1度目の読み出しで、その繰り返し部分を、上記波形メモリ1とは別途の、後述する第1又は第2のループバッファ3a又は4aにバッファリングしておいて、楽音発生が終了するまで繰り返し読み出して楽音を発生させ、他方、バス10を介した上記波形メモリ1のアクセスが開放されるので、次の楽音波形の読み出しが出来るようになって、上記CPU104によって、次のキー操作により読み出される音が先の楽音と共鳴関係にあると判断される場合には、両楽音の共鳴関係にある楽音波形の読み出しなどを行う。尚、音色変更の場合やポルタメントの設定がある場合なども、以下の説明に準ずることになる(音色変更の判断や、ポルタメントなどのエフェクト(累算前効果)設定の判断があった場合も、それに対応した楽音波形の読み出しを行う)。
【0030】
上記音源2は、必要に応じて、図1に示すディレイRAM116を使用してディレイ処理(デジタルフィルタリング処理)を行い、さらに、DA変換器(DAC)118でアナログ信号に変換された後、アンプ120で増幅されて、スピーカ122から、電子ピアノの出力として外部に発音されることになる。
【0031】
上記波形メモリ1には、少なくとも音色データを含む各種楽音波形を記憶する記憶素子であって、該楽音波形中に、発音時に繰り返し部分に先立って1度だけ読み出され、加工されて電子ピアノの発音に用いられる立ち上がり部分の楽音波形と、同じく発音時にその立ち上がり部分に続いて繰り返し読み出され、加工されて電子ピアノの発音に用いられる繰り返し部分の楽音波形とを含む楽音波形データが記憶されている。またC3とC4などのように、共鳴関係にある音が共鳴し合う場合は、C4に共鳴されたC3の楽音波形、或いはC3に共鳴されたC4の楽音波形などの共鳴音波形も記憶されている。
【0032】
上記音源2によって、バス10を介して、該波形メモリ1に記憶されている、音色設定による、或いは各種エフェクト(音響効果)に対応した、更には1の純音(非共鳴音)と2以上の共鳴音に対応する種々の楽音波形が読み出される。この時、繰り返し部分となる楽音波形は、第1又は第2の読み出し手段に相当する後述するループバッファ3a又は4aにバッファリングされて、同じく第1又は第2の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ3又は4によって、楽音発生が終了するまでループして読み出され、1のチャンネルにおいて、読み出された楽音波形に基づいて、楽音信号が生成される。
【0033】
上記2つの読み出し手段から出力されたこれらの楽音信号は、これらを順番に受けた上記重み付け手段に相当するクロスフェーダ5によって、最初に受けた方の出力と後に受けた方の出力がクロスフェードされて、出力される。
【0034】
その後変調手段に相当する上記デジタルコントロールドフィルタ6a、デジタルコントロールドアンプリファイア6b並びにパン・ラウドコントロール6cによって、上記クロスフェーダ5からの出力信号に対して、振幅、遮断周波数、ステレオ定位、音量等につき、これらに対して付与される楽音パラメータに応じて変調され、楽音が生成されて、複数のチャンネルすべての出力信号が累算され、出力される。
【0035】
すなわち、上記音源2の構成は、図3に示すように、波形メモリ1に対して、バス10を介して、複数の時分割タイムスロット毎に同時に二つ以上の楽音波形を読み出すことができ、且つ該時分割タイムスロットで複数の楽音が発生可能な電子楽音発生装置であって、該時分割タイムスロット中に、前記楽音波形の一方の立ち上がり部分から繰り返し部分までを読み出す、第1のデジタルコントロールドオシレータ3及び第1のループバッファ3aで構成された第1の読み出し手段と、前記第1の読み出し手段が読み出す楽音波形とは異なる楽音波形の、少なくとも繰り返し部分を読み出す、第2のデジタルコントロールドオシレータ4及び第2のループバッファ4aで構成された第2の読み出し手段と、前記第1および第2の読み出し手段が読み出した楽音波形を受け取り、時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する、クロスフェーダ5で構成される重み付け手段と、前記重み付け手段が送出する信号に上記の変調を加えて楽音を生成する、デジタルコントロールドフィルタ6a、デジタルコントロールドアンプリファイア6b並びにパン・ラウドコントロール6cで構成される変調手段とを備えている。
【0036】
上記デジタルコントロールドオシレータ3及び4は、ウェイブリードユニットWRU(図示無し)が内部に備えられており、ウェイブクロックWCK(図示無し)に基づき、波形メモリ1から楽音波形が読み出される。そこから読み出された前記楽音波形は、セレクタSEL(図示無し)からウェイブリードユニットWRUに送られ、波形信号として外部に出力される。
【0037】
この時楽音波形中の繰り返し部分先頭(立ち上がり部分を除くループトップ)にかかったことが上記CPU104から知らされた場合は、ウェイブリードユニットWRUはループバッファ3a又は4aに該繰り返し部分の楽音波形を送って記憶させ、該繰り返し部分の終了(ループエンド)にかかったことがCPU104から知らされた時に、ウェイブリードユニットWRUはその楽音波形の転送をストップする。そうして以後波形メモリ1から読み出される楽音波形に繰り返し部分がある時は、上記セレクタSELは、波形メモリ1からの読み出しに代わりループバッファ3a又は4aからの読み出しに切り替えて、波形信号を出力しながら、更に次の楽音波形の読み出し処理にかかる。
【0038】
上記クロスフェーダ5は、デジタルコントロールドオシレータ3及び4からの2つの出力に対して、先に出力してある信号を次第にフェードアウトしながら、次の信号を徐々にフェードインして出力する構成である。そのために、各信号に対して、時間経過に応じ、夫々に重み付けを付与して(両信号に対して例えば反比例する重み付けをして)送出する。
【0039】
上記デジタルコントロールドフィルタ6aは、IIR型フィルタ(図示無し)で構成されており、オフセット値で与えられるカットオフ周波数OFSで所定の周波数帯域以外の倍音成分をカットする。図中60は、このデジタルコントロールドフィルタ6aに対して、そのカットオフ周波数を生成するための、エンベロープジェネレータである。
【0040】
上記デジタルコントロールドアンプリファイア6bは、入力波形信号に対し、エンベロープジェネレータ62からの振幅エンベロープを乗算し、波形信号の振幅を調整して、出力する。
【0041】
上記パン・ラウドコントロール6cは、入力された楽音波形のステレオ定位、音量につき、楽音パラメータに応じて制御し、複数のチャンネル全ての、それらの制御の行われた出力信号を累算して出力する。
【0042】
そこから先は、上述のように、必要に応じて、ディレイRAM116を使用してディレイ処理を行い、さらに、デジタルアナログ変換器(DAC)118でアナログ信号に変換された後、アンプ120で増幅されて、スピーカ122から、電子ピアノの出力として外部に放音される。
【0043】
図4(a)は、以上の構成を有する電子ピアノにおいて、ピアノ音色で共鳴関係にあるオクターブ異なるC3とC4の押鍵操作が(時間的に少しずれた状態で)あり、上記CPU104から両音に関する押鍵指示が、上記音源2に届いて、夫々の楽音波形が、一時共鳴状態にある間に、C3用のチャンネルとC4用のチャンネルにおいて、楽音波形の読み出しがなされて、出力された状態を示す波形図である。
【0044】
3用のチャンネルでは、C3のキーオンと共に、第1の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ3により、C3の立ち上がり部分の波形が読み出され、続いて繰り返し部分の読み出しがなされ、その時同時に、第1のループバッファ3aに記憶され、以後その繰り返し部分の楽音波形の読み出しは、第1のループバッファ3aからなされる。C3のキーオン直後は、他の音は鳴っていないので、C3のキーオンの弦は他の音の影響を受けない状態で発音される。
【0045】
その状態で、次のC4の押鍵操作(キーオンの発生)があった場合、C3を発音中の弦はC4の音の影響を受け、これまで鳴っていたC3のみの楽音波形に加えて、C4の影響を受けた共鳴音を発音するようになる。これをあわせた波形が、C3+C4であり、該楽音波形について、第2の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ4により、図4(b)に示すように、C3+C4の立ち上がり部分の波形が読み出され、続いて繰り返し部分の読み出しがなされ、その時同時に、第2のループバッファ4aに記憶され、以後その繰り返し部分の楽音波形の読み出しは、第2のループバッファ4aからなされる。
【0046】
一方、少しずれてキーオンされたC4用のチャンネルにおける波形読み出しにあっては、楽音C4の弦は、そのまま自らの楽音を発生する。これを示している波形が、図4(a)に示す、その右隣に描かれたC4の波形図であり、さらに、C3の離鍵があっても変化せず、C4だけの楽音波形のままであって、最後にC4の離鍵に伴って減衰する。
【0047】
この場合のC4用のチャンネルでは、C4のキーオンと共に、第1の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ3により、C4の繰り返し部分の波形が読み出され、その時同時に、第1のループバッファ3aにその楽音波形が記憶され、以後その繰り返し部分の楽音波形の読み出しは、第1のループバッファ3aからなされる。
【0048】
その状態で、前のC3のキーオフがあった場合でも、これまで鳴っていたC4のままの楽音波形に基づき楽音を発音する。該楽音波形について、第2の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ4により、C4の繰り返し部分の楽音波形の読み出しがなされ、その時同時に、第2のループバッファ4aに記憶され、以後その繰り返し部分の楽音波形の読み出しは、第2のループバッファ4aからなされる。最初からC4のみの楽音だけであり、他の音は鳴っていないので、C4の弦は他の音の影響を受けない状態で発音される。
【0049】
上述のように、図4(b)は、C3用のチャンネルにおける、C3+C4の発音を、本発明で実現した状態を示している。すなわち、図3の2つのデジタルコントロールドオシレータ3及び4を、夫々第1DCO=C3、第2DCO=C3+C4に割り当て、C4キーオン時に、変調手段に相当するデジタルコントロールドフィルタ6aに渡る波形信号を、C3からC3+C4に入れ替えることを示している。
【0050】
このように、先の楽音が鳴っている間に、次の押鍵情報が出力された際に、次の押鍵情報から、先の楽音と共鳴関係にあるとCPU104が判断した場合は、C3用のチャンネルにおいて、先の楽音と次の楽音の共鳴状態にある楽音波形C3+C4が、上記デジタルコントロールドオシレータ4によって読み出される。上記と同様に、繰り返し部分となる楽音波形は、ループバッファ4aにバッファリングされて、デジタルコントロールドオシレータ4によって、楽音発生が終了するまでループして読み出され、上記1のチャンネルで、読み出された楽音波形データに基づいて、楽音信号が生成される。
【0051】
そして、最初のC3の押鍵操作が終了し、離鍵されてC3の楽音波形の出力がなくなり、C4用のチャンネルにおいて、次のC4に係る押鍵情報が出力され続けている間についても、CPU104からの指示により、純粋に次の楽音波形C4が、デジタルコントロールドオシレータ4によって読み出される。上記と同様に、繰り返し部分となる楽音波形は、ループバッファ4aにバッファリングされて、デジタルコントロールドオシレータ4によって、C4の楽音が終了するまでループして読み出され、上記C4用のチャンネルで、読み出された楽音波形C4に基づいて、楽音信号が生成される。
【0052】
図5〜図17は、本電子ピアノにおける処理フローを示すフローチャートである。
【0053】
図5は、本電子ピアノのメイン処理フローを示すフローチャートである。同図に示すように、電源ONされたら、まず図1の各部の初期化が行われる(ステップS100)。そして、イベントがあるか否かがチェックされる(ステップS102)。
【0054】
イベントがなければ(ステップS102;N)、後述するステップS106の定常処理に移行する。反対にイベントがあれば(ステップS102;Y)、イベント処理が実行され(ステップS104)、その後定常処理に移行する(ステップS106)。
【0055】
図6は、図5のステップS104のイベント処理の処理フローを示すフローチャートである。同図に示すように、まず、そのイベントが押鍵イベントであるか否かがチェックされる(ステップS200)。そのイベントが押鍵イベントであれば(ステップS200;Y)、押鍵処理に移行する(ステップS202)。
【0056】
反対にそのイベントが押鍵イベントでなければ(ステップS200;N)、そのイベントが離鍵イベントであるか否かがチェックされる(ステップS204)。
【0057】
そのイベントが離鍵イベントであれば(ステップS204;Y)、離鍵処理に移行する(ステップS206)。
【0058】
反対にそのイベントが離鍵イベントでなければ(ステップS204;N)、音色を選択する音色イベントであるか否かがチェックされる(ステップS208)。そのイベントが音色イベントであれば(ステップS208;Y)、音色処理に移行する(ステップS210)。
【0059】
反対にそのイベントが音色イベントでなければ(ステップS208;N)、そのイベントがポルタメント処理を行わせるポルタメントイベントであるか否かがチェックされる(ステップS212)。そのイベントがポルタメントイベントであれば(ステップS204;Y)、ポルタメント処理に移行する(ステップS214)。
【0060】
反対にそのイベントがポルタメントイベントでなければ(ステップS212;N)、モノフォニー処理を行わせるモノフォニーイベントであるか否かがチェックされる(ステップS216)。そのイベントがモノフォニーイベントであれば(ステップS216;Y)、モノフォニー処理に移行する(ステップS218)。
【0061】
反対にそのイベントがモノフォニーイベントでなければ(ステップS216;N)、その他の処理が実行される(ステップS220)。
【0062】
図7は、図6のステップS202の押鍵処理の処理フローを示すフローチャートである。同図に示すように、まず、各音源ソースモジュール20a〜20nのうち、該当する音色系列TRKのモノフォニーがON状態か否かがチェックされる(ステップS300)。該当する音色系列TRKのモノフォニーがON状態であれば(ステップS300;Y)、後述するモノ発音の処理に移行する(ステップS318)。
【0063】
反対に、該当する音色系列TRKのモノフォニーがON状態でなければ(ステップS300;N)、キーマップKMPのキー番号KNOの値がONに書き換えられる(ステップS302)。
【0064】
その後、後述する通常発音の処理に移行する(ステップS304)。そしてループカウンタiに「0」が設定される(ステップS306)。
【0065】
さらに押鍵された鍵のキー番号KNOとループ変数iとの差がとられ、一時変数jに代入される(ステップS308)。
【0066】
さらに共鳴可否テーブルRES[j]がON状態か否かがチェックされる(ステップS310)。
【0067】
共鳴可否テーブルRES[j]がON状態でなければ(ステップS310;N)、後述するステップS316に移行する。
【0068】
反対に共鳴可否テーブルRES[j]がON状態であれば(ステップS310;Y)、キーマップKMP上で鍵iがON状態か否かがチェックされる(ステップS312)。キーマップKMP上で鍵iがON状態でなければ(ステップS312;N)、後述するステップS316に移行する。
【0069】
反対にキーマップKMP上で鍵iがON状態であれば(ステップS312;Y)、キー番号KNOに拠る共鳴音が、鍵iに対応して発音中の上記音源ソースモジュール20に追加発音される、すなわち共鳴発音の処理がなされる(ステップS314)。
【0070】
そして上記ループカウンタiに1が加えられ(インクリメントされ)、その値がキー番号KNOの最大値KMAX(例えば128)に達しているか否かがチェックされる(ステップS316)。達していなければ(ステップS316;N)、押鍵された鍵のキー番号KNOとループ変数iとの差がとられ、一時変数jに代入される処理(ステップS308)に戻り、以上の処理を繰り返す。逆に達していれば(ステップS316;Y)、上記メインルーチンのステップS106の定常処理に移行する。
【0071】
図8は、図7のステップS304の通常発音の処理フローを示すフローチャートである。まず、2つのデジタルコントロールドオシレータ3及び4ともに、(未使用の)空き音源ソースモジュール20が検索される(ステップS400)。
【0072】
次に発音データがアサイメントメモリ(図示無し)に記憶され、押鍵に対応する発音データが第1のデジタルコントロールドオシレータ3に割り当てられ、同時に第2のデジタルコントロールドオシレータ4が空き状態にされる(ステップS402)。
【0073】
そして音源2にデータが転送される(ステップS404)。
【0074】
図9は、図7のステップS314の共鳴発音の処理フローを示すフローチャートである。まず、ステップS314が呼び出される際の鍵(図4の例の場合はC3)に対応して発音中の音源ソースモジュールを検索し、当該ソースモジュールの、空いているデジタルコントロールドオシレータ3又は4が取得される(ステップS500)。そしてこれまでの共鳴音の構造(図4の例の場合、C3)が取得される(ステップS502)。押鍵された鍵のキー番号KNO(図4の例の場合、C4)に相当する音程の共鳴音データが、アサイメントメモリ(図示無し)の共鳴音データに追加される(ステップS504)。
【0075】
さらに、共鳴音データ(図4の例の場合、C3+C4)に合致するトーンデータが読み出され、発音データが空いているデジタルコントロールドオシレータ3又は4側に割り当てられる(ステップS506)。またもう一方(従前)のデジタルコントロールドオシレータ4又は3側には従前の発音データが残されている。
【0076】
上記CPU104により、音源2に対して、従前のデジタルコントロールドオシレータ4又は3側から、共鳴音データの割り当てられたデジタルコントロールドオシレータ3又は4側にクロスフェードするための指示が出力され、データ転送がなされる(ステップS508)。以上の処理の後、上記図7のステップS316に移行する。
【0077】
図10は、図7のステップS318のモノ発音の処理フローを示すフローチャートである。まず、ループカウンタiの値に0がセットされ(ステップS600)、キー番号iのキーマップKMPがON状態か否かがチェックされる(ステップS602)。キー番号iのキーマップKMPがON状態でなければ(ステップS602;N)、後述するステップS612に移行する。
【0078】
他方キー番号iのキーマップKMPがON状態であれば(ステップS602;Y)、キー番号iに対応して発音中の音源ソースモジュール20が検索され、音源ソースモジュールが発見されればキーマップKMPの他の鍵の状態がOFFに書き換えられると共にiの値が最大値−1(例えば127)に変更される(ステップS604)。
【0079】
空いているデジタルコントロールドオシレータ3又は4が取得される(ステップS606)。発音データがアサイメントメモリ(図示無し)に記憶され、押鍵に対応する発音データが空きデジタルコントロールドオシレータ3又は4に割り当てられる(ステップS608)。
【0080】
各音源ソースモジュール20a〜20nのうち、該当する音色系列TRKのポルタメントがON状態か否かがチェックされる(ステップS610)。該当する音色系列TRKのポルタメントがON状態であれば(ステップS610;Y)、クロスフェード速度とピッチ遷移速度(XFD)がスローにセットされ(ステップS612)、反対に、該当する音色系列TRKのポルタメントがON状態でなければ(ステップS610;N)、クロスフェード速度とピッチ遷移速度(XFD)がファーストにセットされる(ステップS614)。
【0081】
そして上記ループカウンタiに1が加えられ(インクリメントされ)、その値がキー番号KNOの最大値KMAX(例えば128)に達しているか否かがチェックされる(ステップS616)。達していなければ(ステップS616;N)、ループカウンタiの値に0がセットされる処理(ステップS600)に復帰し、以上の処理を繰り返す。逆に達していれば(ステップS616;Y)、上記メインルーチンのステップS106の定常処理に移行する。
【0082】
図11は、上記図6のステップS206の離鍵処理の処理フローを示すフローチャートである。まず、キーマップKMPのキー番号KNOの値がOFFに書き換えられ(ステップS700)、通常の消音処理が行われる(ステップS702)。
【0083】
図12は、上記図11のステップS702の通常消音の処理フローを示すフローチャートである。まず、キー番号iに対応して発音中の音源ソースモジュール20が検索される(ステップS800)。
【0084】
その後、消音データがアサイメントメモリに記憶されて、離鍵状態のエンベロープが取得される(ステップS802)。そして、検索された上記音源ソースモジュール20にデータ転送がなされる(ステップS804)。
【0085】
図13は、上記図6のステップS210の音色処理の処理フローを示すフローチャートである。まず、各音源ソースモジュール20a〜20nのうち、該当する音色系列TRKの音色番号が更新されて設定される(ステップS900)。そして押鍵中の音の音色が切り替え後の音色に改めて発音し直す音色か否かがチェックされる(ステップS902)。押鍵中の音の音色が切り替え後の音色に改めて発音し直す音色でない場合(ステップS902;N)、後述するステップS906に移行する。
【0086】
反対に押鍵中の音の音色が切り替え後の音色に改めて発音し直す音色である場合(ステップS902;Y)、後述する再発音処理が実行される(ステップS904)。
【0087】
その後共鳴可否テーブルRES[i]が音色に応じて変更される(ステップS906)。
【0088】
図14は、上記図13のステップS904の再発音処理の処理フローを示すフローチャートである。まず、ループカウンタの変数iに1がセットされ(ステップS1000)、キー番号iのキーマップKMPが押鍵状態か否かがチェックされる(ステップS1002)。
【0089】
キー番号iのキーマップKMPが押鍵状態でなければ(ステップS1002;N)、後述するステップS1010に移行する。
【0090】
反対にキー番号iのキーマップKMPが押鍵状態であれば(ステップS1002;Y)、空いているデジタルコントロールドオシレータ3又は4が取得される(ステップS1004)。
【0091】
そして新たな音色の発音データが取得されて、空いているデジタルコントロールドオシレータ3又は4に割り当てられる(ステップS1006)。但し、波形読み出しデータはスタートポイントに代えて、ループトップポイントが用いられる。
【0092】
その後音源2においてデータ転送がなされ、従前のデジタルコントロールドオシレータから共鳴デジタルコントロールドオシレータへのクロスフェードが実行される(ステップS1008)。
【0093】
そして上記ループカウンタiに1が加えられ(インクリメントされ)、その値がキー番号KNOの最大値KMAX(例えば128)に達しているか否かがチェックされる(ステップS1010)。達していなければ(ステップS1010;N)、キー番号iのキーマップKMPが押鍵状態か否かのチェック処理(ステップS1002)に復帰し、以上の処理を繰り返す。逆に達していれば(ステップS1010;Y)、図13の音色処理におけるステップS906の共鳴可否テーブルRES[i]が音色に応じて変更される処理に移行する。
【0094】
図15は、上記図6のステップS214のPol.処理(ポルタメント処理)の処理フローを示すフローチャートである。まず、該当する音色系列TRKにおいて、ポルタメントがON状態か否かがチェックされる(ステップS1100)。該当する音色系列TRKにおいて、ポルタメントがON状態の場合(ステップS1100;Y)、該当する音色系列TRKのポルタメントがOFFに反転せしめられる(ステップS1102)。
【0095】
反対に、該当する音色系列TRKにおいて、ポルタメントがON状態でない場合(ステップS1100;N)、該当する音色系列TRKのポルタメントがONに反転せしめられ(ステップS1104)、該当する音色系列TRKが単音系列か否かがチェックされる(ステップS1106)。
【0096】
該当する音色系列TRKが単音系列の場合(ステップS1106;Y)、図5のステップS105の定常処理に移行する。反対に該当する音色系列TRKが単音系列でない場合(ステップS1106;N)、該当する音色系列TRKが単音系列化され、全鍵が消音される(ステップS1108)。そして、上記と同様、図5のステップS105の定常処理に移行する。
【0097】
図16は、上記図6のステップS218のMon.処理(モノフォニー処理)の処理フローを示すフローチャートである。まず、該当する音色系列TRKにおいて、モノフォニーがON状態か否かがチェックされる(ステップS1200)。該当する音色系列TRKにおいて、モノフォニーがON状態でない場合(ステップS1200;N)、該当する音色系列TRKのモノフォニーがONに反転せしめられ(ステップS1204)、図5のステップS105の定常処理に移行する。
【0098】
反対に、該当する音色系列TRKにおいて、モノフォニーがON状態の場合(ステップS1200;Y)、該当する音色系列TRKのモノフォニーがOFFに反転せしめられ、全鍵が消音される(ステップS1202)。
【0099】
そして、該当する音色系列TRKにおいて、ポルタメントがON状態か否かがチェックされる(ステップS1206)。該当する音色系列TRKにおいて、ポルタメントがON状態でない場合(ステップS1206;N)、図5のステップS105の定常処理に移行する。
【0100】
反対に、該当する音色系列TRKにおいて、ポルタメントがON状態の場合(ステップS1206;Y)、該当する音色系列TRKのポルタメントがOFFに反転せしめられる(ステップS1208)。そして図5のステップS105の定常処理に移行する。
【0101】
図17は、図5のステップS105の定常処理の処理フローを示すフローチャートである。まず、既に減衰エンベロープが十分0近辺に近付いた音源ソースモジュール20が空きに設定される(ここでは発音終了処理として記載されている;ステップS1300)。
【0102】
ポルタメントがON状態の音源ソースモジュール20について、そのピッチ遷移が進行せしめられる(ステップS1302)。
【0103】
それに続いて、音量の更新処理(ステップS1304)、定位の更新処理(ステップS1306)、エンベロープのフェーズ更新処理(ステップS1308)、さらに変調用発信器(LFO)等のその他の更新処理が実行され(ステップS1310)、その後に図5のステップS102の処理に復帰し、それ以後の処理を繰り返す。
【0104】
以上詳述した実施例構成では、先の楽音(例えばC3)が鳴っている間(この間に先の楽音のループ部分はループバッファに蓄えられ、波形メモリ1をアクセスするバス10は当該音源ソースモジュールのタイミングでは解放される)に、次の押鍵情報(例えばC4)が出力された際、次の押鍵情報から、先の楽音と共鳴関係にあるとCPU104が判断した場合は、C3用のチャンネルにおいて、先の楽音と次の楽音の共鳴状態にある楽音波形C3+C4が、上記デジタルコントロールドオシレータ3によって、当該音源ソースモジュールのタイミングでバス10を経由して波形メモリ1から読み出される。上記と同様に、繰り返し部分となる楽音波形は、ループバッファ3aにバッファリングされて、デジタルコントロールドオシレータ3によって、楽音発生が終了するまでループして読み出され、上記1のチャンネルで、読み出された楽音波形データに基づいて、楽音信号が生成される。即ち、他の音源ソースモジュールのタイミングに影響を与えないので、同時発音数を減じることなく非共鳴状態の楽音から共鳴状態の楽音に発音を入れ替えることができる。
【0105】
即ち、第1の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ3及びループバッファ3aは、1のチャンネルで、C3の楽音の発音開始に基づいて前記楽音波形の立ち上がり部分の読み出しを開始し、その後繰り返し部分の読み出しに移行し、またC4の押鍵タイミングで、前記第2の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ4及びループバッファ4aは、前記発音開始した楽音の波形変更に基づいて前記デジタルコントロールドオシレータ3及びループバッファ3aが読み出す楽音波形C3とは異なる共鳴音楽音波形C3+C4の、少なくとも繰り返し部分の読み出しを開始することで、非共鳴状態の楽音波形から共鳴状態の楽音波形のように、波形切替に対応できるようになり、他の音源ソースモジュールのタイミングを阻害することなく波形切替に対応できるようになる。
【0106】
以上のような波形切替の態様の他、波形切替の別つの態様として、波形変更は、演奏者の音色切替指示によるものが想定できる。
【0107】
すなわち、第1の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ3及びループバッファ3aが立ち上がり部分の読み出しに続き、繰り返し部分のループ読み出しを開始して、第2の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ4及びループバッファ4aが、音色の異なる次の楽音波形の立ち上がり部分或いは繰り返し部分の波形読み出しを行うことで、音色切り替え操作に伴う音色の異なる2以上の楽音波形を読み出すことができ、これら2つの読み出し手段からの出力を順番に受けた上記重み付け手段に相当するクロスフェーダ5が、最初に受けた方の出力と後に受けた方の出力をクロスフェードして、出力する(時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する)]を行うことで、音色切替時の波形切替が、同時発音数を減らさずにスムーズに出来るようになる。
【0108】
また、波形切替の他の態様として、前記発音開始を、ポルタメント演奏に於ける先行音の発音開始とし、ポルタメントに基づく波形変更は、ポルタメント演奏に於ける到着音への波形切替とすることも可能である。
【0109】
すなわち、第1の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ3及びループバッファ3aが、立ち上がり部分の読み出しに続き、繰り返し部分のループ読み出しを開始して、第2の読み出し手段に相当するデジタルコントロールドオシレータ4及びループバッファ4aが、次の楽音波形の立ち上がり部分或いは繰り返し部分の波形読み出しを行い、以上の処理を、先行音の発音開始から、ポルタメント演奏に於ける到着音まで、その処理を繰り返して、第1の読み出し手段と第2の読み出し手段の間で、交互に行うことにより、ポルタメント時の波形切替が、同時発音数を減らさずにスムーズに出来るようになる。
【0110】
モノフォニー処理についても、先の発音の離鍵前に次の押鍵が行われる際は、上記と同様にして実行されることになる。
【0111】
尚、本発明の電子楽音発生装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の電子楽音発生装置は、電子楽器に拘わらず、電子的に楽音の発生があり、それがあたかも映像のモーフィングに係るような切替を、楽音的に実施できるものであれば、楽音の編集装置などへの適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子楽音発生装置を内装した電子ピアノの回路ブロック構成を示す回路ブロック図である。
【図2】音源ソースモジュール20a〜20nを含む、電子楽音発生装置としての音源2の回路構成を各示すブロック図である。
【図3】各音源ソースモジュール20a〜20nの内部構成を示すブロック図である。
【図4】本電子ピアノで、共鳴関係にある音が、時間的に少しずれた状態で夫々のチャンネルから出力された状態を示す波形図である。
【図5】本電子ピアノのメイン処理フローを示すフローチャートである。
【図6】図5のステップS104のイベント処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS202の押鍵処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図8】図7のステップS304の通常発音の処理フローを示すフローチャートである。
【図9】図7のステップS314の共鳴発音の処理フローを示すフローチャートである。
【図10】図7のステップS318のモノ発音の処理フローを示すフローチャートである。
【図11】図6のステップS206の離鍵処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図12】図11のステップS702の通常消音の処理フローを示すフローチャートである。
【図13】図6のステップS210の音色処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図14】図13のステップS904の再発音処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図15】図6のステップS214のPol.処理(ポルタメント処理)の処理フローを示すフローチャートである。
【図16】図6のステップS218のMon.処理(モノフォニー処理)の処理フローを示すフローチャートである。
【図17】図5のステップS105の定常処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図18】従来構成の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
1 波形メモリ
2 音源
3、4 デジタルコントロールドオシレータ
3a、4a ループバッファ
5 クロスフェーダ
6a デジタルコントロールドフィルタ
6b デジタルコントロールドアンプリファイア
6c パン・ラウドコントロール
10 バス
20、20a〜20n 音源ソースモジュール
22a、22b、22an、22bn 加算器
24a、24b、24an、24bn 加算器
26 エフェクトプロセッサ
60、62 エンベロープジェネレータ
100 サウンドプロセッシングユニット(SPU)
102 システムバス
104 CPU
106 ROM
108 RAM
110 インターフェース
112 操作パネル
112a パネルスキャン回路
114 鍵盤
114a キーボードスキャン回路
116 ディレイRAM
118 デジタルアナログ変換器(DAC)
120 アンプ
122 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時分割タイムスロット毎に同時に二つ以上の楽音波形を読み出すことができ、且つ該時分割タイムスロットで複数の楽音が発生可能な電子楽音発生装置において、
該時分割タイムスロット中に、
前記楽音波形の一方の立ち上がり部分から繰り返し部分までを読み出す第1の読み出し手段と、
前記第1の読み出し手段が読み出す楽音波形とは異なる楽音波形の、少なくとも繰り返し部分を読み出す第2の読み出し手段と、
前記第1および第2の読み出し手段が読み出した楽音波形を受け取り、時間経過に応じてそれぞれに重み付けを付与して送出する重み付け手段と、
前記重み付け手段が送出する信号に種々の変調を加えて楽音を生成する変調手段と
によって前記複数の楽音を発生することを特徴とする電子楽音発生装置。
【請求項2】
前記第1の読み出し手段は、楽音データの一方を読み出す際に、繰り返し部分の先頭に差し掛かったことを識別した場合に、読み出した繰り返し部分の楽音波形をループバッファに記憶させると共に、上記繰り返し部分の末尾に差し掛かったことを識別した場合に、上記ループバッファに切り替えて楽音の発生を終了するまで繰り返し読み出すと共に、楽音データの読み出しを、第2の読み出し手段に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項3】
前記第1の読み出し手段は、楽音の発音開始に基づいて前記楽音波形の立ち上がり部分の読み出しを開始し、前記第2の読み出し手段は、前記発音開始した楽音の波形変更に基づいて前記第1の読み出し手段が読み出す楽音波形とは異なる楽音波形の、少なくとも繰り返し部分の読み出しを開始するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽音発生装置。
【請求項4】
前記波形切替は、演奏者の音色切替指示によるものであることを特徴とする請求項3に記載の電子楽音発生装置。
【請求項5】
前記発音開始はポルタメント演奏に於ける先行音の発音開始であり、前記波形変更は、ポルタメント演奏に於ける到着音への波形切替であることを特徴とする請求項3に記載の電子楽音発生装置。
【請求項6】
前記発音開始は非共鳴状態での発音開始であり、前記波形変更は共鳴状態への波形切替であること、または前記発音開始は共鳴状態の発音開始であり、前記波形変更は非共鳴状態への波形切替であること、のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の電子楽音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−42842(P2012−42842A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185789(P2010−185789)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】