説明

電子機器、通信方法およびプログラム

【課題】設計の困難性を低くでき、複数の通信規格のそれぞれに準拠するリーダライタとの通信の品質の低下を抑制することが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路と、前記通信先の通信方式を判別する判別手段と、前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別手段の判別結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、通信方法およびプログラムに関し、特には、複数の通信規格(以下「通信方式」とも称する)に対応可能な電子機器、通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードを備えた電子機器とリーダライタとを有する通信システムが、例えば、自動改札、入退室管理システム、および、電子マネーを使用した会計システムに用いられている。
【0003】
特許文献1には、リーダライタが使用する1つの共振周波数帯域を用いて通信を行う非接触ICカードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−290644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触ICカードとリーダライタとの通信については、互いに異なる共振周波数帯域が規定された複数の通信規格(通信方式)が存在する。非接触ICカードとリーダライタとの通信規格としては、例えば、FeliCa(登録商標)、typeA(タイプA)およびtypeB(タイプB)が知られている。また、少なくとも、typeA、typeBおよびFeliCaのそれぞれに対応するNFC(Near Field Communication)通信規格も存在する。
【0006】
リーダライタは、自己が準拠している通信規格にて規定された共振周波数帯域を利用する。
【0007】
特許文献1に記載の非接触ICカードのように1つの共振周波数帯域つまり1つの通信規格のみに対応するのではなく、複数の通信規格に対応する非接触ICカードを含む機器を設計するには、互いに異なる複数の共振周波数帯域を利用可能な非接触ICカードを設計する必要がある。
【0008】
ここで、複数の通信規格に対応する非接触ICカードの共振周波数帯域について説明する。
【0009】
図7は、通信規格X(例えばJR(登録商標)の改札機)およびY(例えばEdy(登録商標))を満足する非接触ICカードの共振周波数帯域を説明するための図である。
【0010】
図7において、通信規格Xに対応するリーダライタR/W1Xでは、共振周波数帯域の周波数中心値(共振周波数中心値)は13.515MHzであり、共振周波数帯域101は30kHz(13.50〜13.53MHz)である。また、通信規格Yに対応するリーダライタR/W1Yでは、共振周波数中心値は13.545MHzであり、共振周波数帯域102は50kHz(13.52〜13.57MHz)である。なお、共振周波数中心値は、その共振周波数中心値を有する共振周波数帯域での通信に最適な共振周波数となる。
【0011】
図7において、リーダライタR/W1XおよびリーダライタR/W1Yのそれぞれと通信するために必要な共振周波数帯域103、つまり、通信規格Xおよび通信規格Yの両方を満足する共振周波数帯域は、13.52〜13.53MHzで規定された10kHzのみとなる。
【0012】
図8は、NFC通信規格を満足する非接触ICカードの共振周波数帯域を説明するための図である。
【0013】
図8において、FeliCaの共振周波数帯域201は25kHz(13.515〜13.54MHz)である。また、typeAのモバイル規格の共振周波数帯域202は30kHz(13.50〜13.53MHz)である。また、typeBのモバイル規格の共振周波数帯域203は50kHz(13.52〜13.57MHz)である。
【0014】
図8において、NFC通信規格を満足する非接触ICカードの共振周波数帯域204、つまり、FeliCaとtypeAのモバイル規格とtypeBのモバイル規格とのそれぞれを満足する非接触ICカードの共振周波数帯域204は、13.52〜13.53MHzで規定された10kHzのみとなる。
【0015】
図7および図8に示したように、複数の通信規格(通信方式)に対応する非接触ICカードの共振周波数帯域は、複数の通信規格の各々の共振周波数帯域の論理積にて表される狭い共通帯域となる。
【0016】
このため、複数の通信規格に対応する非接触ICカードの共振周波数帯域を共通帯域に設定するための設計は、高い困難度を有する。
【0017】
また、図7および図8に示したように、共通帯域内の共振周波数が非接触ICカードの共振周波数として設定された場合、各共振周波数帯域には、非接触ICカードの共振周波数よりも通信に適した共振周波数(例えば、共振周波数中心値)が存在する。よって、各共振周波数帯域には、非接触ICカードの共振周波数よりも通信に適した共振周波数が存在するにもかかわらず、その通信に適した共振周波数を使用することができず、通信の品質が低下するという課題があった。
【0018】
なお、特許文献1には、上記課題が生じる前提となる技術、具体的には、複数の通信規格に対応する非接触ICカードについての記載がない。よって、特許文献1に記載の技術では、当然のことながら上記課題を解決することはできない。
【0019】
本発明の目的は、上述した課題を解決可能な電子機器、通信方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の電子機器は、通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路と、前記通信先の通信方式を判別する判別手段と、前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別手段の判別結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定手段と、を含む。
【0021】
本発明の通信方法は、通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路を含む電子機器での通信方法であって、前記通信先の通信方式を判別する判別ステップと、前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定ステップと、を含む。
【0022】
本発明のプログラムは、通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路と接続されたコンピュータに、前記通信先の通信方式を判別する判別手順と、前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別の結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設計の困難性を低くでき、複数の通信規格(通信方式)のそれぞれに準拠するリーダライタとの通信の品質の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の電子機器1を示したブロック図である。
【図2】電子機器1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】アンテナ回路2と通信部31と設定部32からなる電子機器1を示した図である。
【図4】本発明の第2実施形態の電子機器1Aを示したブロック図である。
【図5】スイッチ回路の他の例を示した回路図である。
【図6】FeliCa共振周波数の工程調整用スイッチ回路701とは別に、typeA、typeB切り替え用スイッチ回路703を追加実装した例を示す図である。
【図7】通信規格XおよびYを満足する非接触ICカードの共振周波数帯域を説明するための図である。
【図8】NFC通信規格を満足する非接触ICカードの共振周波数帯域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電子機器1を示したブロック図である。
【0027】
図1において、電子機器1は、例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)、PC(パーソナルコンピュータ)、または、ゲーム機である。
【0028】
電子機器1は、NFC通信規格に準拠する。このため、電子機器1は、複数の通信規格(FeliCaとtypeAのモバイル規格とtypeBのモバイル規格)に準拠する。
【0029】
電子機器1は、アンテナ回路2と制御部3とを含む。例えば、電子機器1は、アンテナ回路2と制御部3とを備えるRFID(Radio Frequency Identification)を含む電子機器である。なお、電子機器1は、RFIDそのもの、例えば、非接触ICカードそのもの、または、非接触ICタグそのものでもよい。
【0030】
アンテナ回路2は、通信先となるリーダライタと通信するための共振周波数を変更可能である。アンテナ回路2は、アンテナ21とスイッチ回路22とを含む。
【0031】
アンテナ21は、例えばコイルである。
【0032】
スイッチ回路22は、スイッチ22aと、コンデンサCFと、コンデンサCAと、コンデンサCBと、コンデンサCCと、を含む。コンデンサCFとコンデンサCAとコンデンサCBとコンデンサCCとは、互いに異なる容量値を有する。
【0033】
スイッチ22aは、コンデンサCFとコンデンサCAとコンデンサCBとコンデンサCCとのいずれかと接続される。スイッチ22aと接続されたコンデンサは、アンテナ21と並列に接続される。このため、スイッチ22aと接続されるコンデンサが切り替わることに伴って、アンテナ回路2の共振周波数が切り替わる。
【0034】
なお、アンテナ回路2の共振周波数fは、以下の式1にて表される。式1において、Lはアンテナ21のインダクタンス値であり、Cはスイッチ22aと接続されたコンデンサの容量値である。
【0035】
【数1】

【0036】
本実施形態では、スイッチ22aがコンデンサCFと接続されているときのアンテナ回路2の共振周波数が、FeliCaに準拠する共振周波数中心値になるように、コンデンサCFの容量値が設定されている。なお、FeliCaに準拠する共振周波数中心値(図8参照)は、FeliCaに準拠する所定共振周波数の一例である。
【0037】
また、スイッチ22aがコンデンサCAと接続されているときのアンテナ回路2の共振周波数が、typeAのモバイル規格に準拠する共振周波数中心値になるように、コンデンサCAの容量値が設定されている。なお、typeAのモバイル規格に準拠する共振周波数中心値(図8参照)は、typeAのモバイル規格に準拠する所定共振周波数の一例である。
【0038】
また、スイッチ22aがコンデンサCBと接続されているときのアンテナ回路2の共振周波数が、typeBのモバイル規格に準拠する共振周波数中心値になるように、コンデンサCBの容量値が設定されている。なお、typeBに準拠するモバイル規格の共振周波数中心値(図8参照)は、typeBのモバイル規格に準拠する所定共振周波数の一例である。
【0039】
また、スイッチ22aがコンデンサCCと接続されているときのアンテナ回路2の共振周波数が、FeliCaに準拠する共振周波数帯域201とtypeAのモバイル規格に準拠する共振周波数帯域202とtypeBのモバイル規格に準拠する共振周波数帯域203とに共通する共通帯域204(図8参照)内の共振周波数(以下「特定共振周波数」と称する)になるように、コンデンサCCの容量値が設定されている。
【0040】
本実施形態では、通信先となるリーダライタの通信規格(通信方式)を判別する状況、および、制御部3が動作停止状態では、スイッチ22aは、コンデンサCCと接続する。
【0041】
コンデンサCFとコンデンサCAとコンデンサCBとの容量値は、例えば、以下のように決定される。
【0042】
まず、FeliCaとtypeAのモバイル規格とtypeBのモバイル規格とのそれぞれについて、規格の認証に適合する共振周波数帯域の共振周波数中心値が確認される(図8参照)。
【0043】
続いて、式1に基づいて、コンデンサCFとコンデンサCAとコンデンサCBとの容量値が決定される。
【0044】
例えば、コンデンサCFの容量値は、式1において、fとしてFeliCaの共振周波数中心値が用いられた際に特定されるCの値となる。また、コンデンサCAの容量値は、式1において、fとしてtypeAの共振周波数中心値が用いられた際に特定されるCの値となる。また、コンデンサCBの容量値は、式1において、fとしてtypeBの共振周波数中心値が用いられた際に特定されるCの値となる。
【0045】
また、コンデンサCCとの容量値は、例えば、以下のように決定される。
【0046】
まず、FeliCaとtypeAのモバイル規格とtypeBのモバイル規格のそれぞれに準拠する各共振周波数帯域に共通する共通帯域が算出される。続いて、その共通帯域の共振周波数中心値が特定され、この共振周波数中心値と式1とに基づいて、コンデンサCCとの容量値が決定される。例えば、コンデンサCCの容量値は、式1において、fとして共通帯域の共振周波数中心値が用いられた際に特定されるCの値となる。
【0047】
なお、FeliCaに準拠する所定共振周波数は、FeliCaに準拠する共振周波数中心値に限るものではない。例えば、FeliCaに準拠する所定共振周波数は、FeliCaに準拠する共振周波数帯域201(図8参照)内の共振周波数のうち、特定共振周波数よりもFeliCaの共振周波数中心値に近い共振周波数値でもよい。
【0048】
また、typeAのモバイル規格に準拠する所定共振周波数は、typeAのモバイル規格に準拠する共振周波数中心値に限るものではない。例えば、typeAのモバイル規格に準拠する所定共振周波数は、typeAのモバイル規格に準拠する共振周波数帯域202(図8参照)内の共振周波数のうち、特定共振周波数よりもtypeAのモバイル規格の共振周波数中心値に近い共振周波数値でもよい。
【0049】
また、typeBのモバイル規格に準拠する所定共振周波数は、typeBのモバイル規格に準拠する共振周波数中心値に限るものではない。例えば、typeBのモバイル規格に準拠する所定共振周波数は、typeBのモバイル規格に準拠する共振周波数帯域203(図8参照)内の共振周波数のうち、特定共振周波数よりもtypeAのモバイル規格の共振周波数中心値に近い共振周波数値でもよい。
【0050】
制御部3は、アンテナ回路2がデータを受信すると動作を開始する。
【0051】
制御部3は、アンテナ回路2を用いて、FeliCaに準拠するリーダライタ、typeAのモバイル規格に準拠するリーダライタ、および、typeBのモバイル規格に準拠するリーダライタと通信する。制御部3は、通信部31と、設定部32と、を含む。
【0052】
通信部31は、一般的に判別手段と呼ぶことができる。
【0053】
通信部31は、通信先(FeliCaに準拠するリーダライタ、typeAのモバイル規格に準拠するリーダライタ、または、typeBのモバイル規格に準拠するリーダライタ)の通信規格(通信方式)を判別する。
【0054】
例えば、通信部31は、スイッチ22aがコンデンサCCと接続している状況でアンテナ回路2がデータを受信すると、そのデータに基づいて通信先の通信規格を判別する。
【0055】
通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、複数の通信方式(FeliCa、typeAのモバイル規格およびtypeBのモバイル規格)の各々に準拠した復調方式を用いて復調し、その復調の結果に基づいて、通信先の通信方式を判別する。
【0056】
本実施形態では、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、まず、FeliCaに準拠した復調方式を用いて復調する。なお、FeliCaでは、変調方式および変調度はASK10%であり、符号化方式はManchesterである。
【0057】
FeliCaに準拠した復調方式を用いた復調が成功すると、つまり、FeliCaに準拠した復調データを生成すると、通信部31は、通信先の通信規格がFeliCaであると判別する。通信部31は、判別結果を設定部32に出力する。
【0058】
FeliCaに準拠した復調方式を用いた復調が成功しないと、つまり、FeliCaに準拠した復調データを生成できないと、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、typeAのモバイル規格に準拠した復調方式を用いて復調する。なお、typeAでは、変調方式および変調度はASK100%であり、符号化方式は、リーダライタから非接触ICカードへの通信時にはMillerであり、非接触ICカードからリーダライタへの通信時にはManchesterである。
【0059】
typeAのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功すると、つまり、typeAのモバイル規格に準拠した復調データを生成すると、通信部31は、通信先の通信規格がtypeAのモバイル規格であると判別する。通信部31は、判別結果を設定部32に出力する。
【0060】
typeAのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功しないと、つまり、typeAのモバイル規格に準拠した復調データを生成できないと、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、typeBのモバイル規格に準拠した復調方式を用いて復調する。なお、typeBでは、変調方式および変調度はASK10%であり、符号化方式はNRZ(Non-Return-to-Zero)である。
【0061】
typeBのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功すると、つまり、typeBのモバイル規格に準拠した復調データを生成すると、通信部31は、通信先の通信規格がtypeBのモバイル規格であると判別する。通信部31は、判別結果を設定部32に出力する。
【0062】
typeBのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功しないと、つまり、typeBのモバイル規格に準拠した復調データを生成できないと、通信部31は、復調方式をFeliCaに準拠した復調方式に切り替え、上記と同様の動作を行う。
【0063】
設定部32は、一般的に設定手段と呼ぶことができる。
【0064】
設定部32は、通信部31の判別結果に従って、アンテナ回路2の共振周波数を設定する。
【0065】
本実施形態では、設定部32は、アンテナ回路2の共振周波数を、通信部31の判別結果が示す通信規格にて規定された共振周波数帯域内の共振周波数中心値に設定する。
【0066】
設定部32は、通信部31の判別結果がFeliCaを示す場合、スイッチ22aをコンデンサCFと接続する。設定部32は、通信部31の判別結果がtypeAのモバイル規格を示す場合、スイッチ22aをコンデンサCAと接続する。設定部32は、通信部31の判別結果がtypeBのモバイル規格を示す場合、スイッチ22aをコンデンサCBと接続する。
【0067】
設定部32は、スイッチ22aを、コンデンサCFとコンデンサCAとコンデンサCBのいずれかに接続すると、通信部31に設定完了通知を出力する。
【0068】
通信部31は、設定部32から設定完了通知を受け付けると、設定部32が共振周波数を設定したアンテナ回路2を介して、通信先(リーダライタ)と通信する。
【0069】
なお、制御部3は、アンテナ回路2に接続されたコンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能なCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)のような記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、通信部31および設定部32として機能する。記録媒体は、CD−ROMに限らず適宜変更可能である。
【0070】
次に、動作を説明する。
【0071】
図2は、電子機器1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0072】
通信先からのデータをアンテナ回路2が受信すると(ステップS201)、通信部31は、そのデータに基づいて通信先の通信規格を判別する(ステップS202)。
【0073】
ステップS202では、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、まず、FeliCaに準拠した復調方式を用いて復調する。
【0074】
FeliCaに準拠した復調方式を用いた復調が成功すると、通信部31は、通信先の通信規格がFeliCaであると判別する。
【0075】
FeliCaに準拠した復調方式を用いた復調が成功しないと、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、typeAのモバイル規格に準拠した復調方式を用いて復調する。
【0076】
typeAのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功すると、通信部31は、通信先の通信規格がtypeAのモバイル規格であると判別する。
【0077】
typeAのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功しないと、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、typeBのモバイル規格に準拠した復調方式を用いて復調する。
【0078】
typeBのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功すると、通信部31は、通信先の通信規格がtypeBのモバイル規格であると判別する。
【0079】
typeBのモバイル規格に準拠した復調方式を用いた復調が成功しないと、通信部31は、復調方式をFeliCaに準拠した復調方式に切り替え、ステップS202を再び行う。
【0080】
通信部31は、通信先の通信規格を判別すると、その判別結果を設定部32に出力する。
【0081】
設定部32は、通信部31の判別結果を受け付けると、スイッチ22aの接続先を、通信部31の判別結果に従ったコンデンサに切り替える(ステップS203)。
【0082】
設定部32は、通信部31の判別結果がFeliCaを示す場合、スイッチ22aをコンデンサCFと接続する。設定部32は、通信部31の判別結果がtypeAのモバイル規格を示す場合、スイッチ22aをコンデンサCAと接続する。設定部32は、通信部31の判別結果がtypeBのモバイル規格を示す場合、スイッチ22aをコンデンサCBと接続する。
【0083】
スイッチ22aの接続先が切り換わりに応じて、アンテナ回路2の共振周波数が設定される(ステップS204)。
【0084】
設定部32は、スイッチ22aを、コンデンサCFとコンデンサCAとコンデンサCBのいずれかに接続すると、設定完了通知を通信部31に出力する。
【0085】
通信部31は、設定部32から設定完了通知を受け付けると、設定部32が共振周波数を設定したアンテナ回路2を介して、通信先(リーダライタ)と通信する。なお、通信部31は、通信規格についての判別結果に基づいて、通信先との通信に使用する符号化方式、変調方式および変調度を決定し、その符号化方式、変調方式および変調度に準拠した送信データを使って通信先と通信する(ステップS205)。
【0086】
本実施形態によれば、通信部31は、通信先の通信規格(通信方式)を判別する。設定部32は、アンテナ回路2の共振周波数を、通信部31の判別結果が示す通信規格にて規定された共振周波数帯域内の共振周波数に設定する。
【0087】
このため、アンテナ回路2の共振周波数を、通信先との通信に適した共振周波数に変更することが可能になる。したがって、複数の通信規格のそれぞれに準拠する複数の通信先(リーダライタ)との通信の品質の低下を抑制することが可能になる。
【0088】
また、アンテナ回路2の共振周波数を、通信先の通信規格に適した共振周波数に変更することが可能になるため、複数の通信規格を満足する電子機器を設計する困難度を低くすることが可能になる。
【0089】
なお、上記効果は、アンテナ回路2と通信部31と設定部32からなる電子機器1でも奏される。図3は、アンテナ回路2と通信部31と設定部32からなる電子機器1を示した図である。
【0090】
本実施形態では、通信部31は、アンテナ回路2の共振周波数が、複数の通信方式の各々にて規定された複数の共振周波数帯域に共通する共通周波数帯域内の特定共振周波数に設定された状況で、アンテナ回路2を介して通信先からのデータを受信し、そのデータに基づいて通信先の通信方式を判別する。
【0091】
この場合、特定共振周波数が設定されたアンテナ回路2を用いて、通信先の通信規格を判別するために使用するデータを受信するため、そのデータの受信エラーを防ぐことが可能になる。なお、通信規格についての検定時には、特定共振周波数ではなく、各通信規格に適した共振周波数が使用可能である。
【0092】
本実施形態では、通信部31は、アンテナ回路2が受信したデータを、複数の通信方式の各々に準拠した復調方式を用いて復調し、その復調の結果に基づいて通信先の通信方式を判別する。
【0093】
この場合、複数の通信方式の各々に準拠した復調方式を用いたデータの復調が成功したか否かに応じて、通信先の通信方式を判別することが可能になる。
【0094】
なお、本実施形態では、複数の通信方式として、3つの通信方式が用いられたが、複数の通信方式の数は2以上であればよい。この場合、アンテナ回路2内のコンデンサとしては、例えば、複数の通信方式の各々の共振周波数帯域に対応する複数のコンデンサと、複数の通信方式の共振周波数帯域に共通する共通周波数帯域に対応するコンデンサと、が含まれてもよい。なお、FeliCa、typeAのモバイル規格およびtypeBのモバイル規格以外の通信規格としては、例えば、EMVCoの通信規格が用いられる。
【0095】
また、本実施形態では、複数の通信方式の各々に準拠した復調方式を用いる順番を、FeliCaに準拠した復調方式、typeAのモバイル規格に準拠した復調方式、typeBのモバイル規格に準拠した復調方式の順としたが、この順番は上記に限らず適宜変更可能である。
【0096】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態の電子機器1Aを示したブロック図である。図4において、図1に示したものと同一構成のものには同一符号を付してある。
【0097】
第2実施形態の電子機器1Aと第1実施形態の電子機器1との主な相違点は、第2実施形態の電子機器1Aでは、FeliCa、typeAのモバイル規格およびtypeBのモバイル規格のそれぞれの復調方式を用いる順番を変更できる点である。
【0098】
以下、第1実施形態の電子機器1との相違点を中心に、第2実施形態の電子機器1Aについて説明する。
【0099】
図4において、電子機器1Aは、例えば、携帯電話機、PDA、PC、または、ゲーム機である。電子機器1Aは、NFC通信規格に準拠する。
【0100】
電子機器1Aは、アンテナ回路2と制御部3Aとを含む。例えば、電子機器1Aは、アンテナ回路2と制御部3Aとを備えるRFIDを含む電子機器である。なお、電子機器1Aは、RFIDそのもの、例えば、非接触ICカードそのもの、または、非接触ICタグそのものでもよい。
【0101】
制御部3Aは、通信部31の機能を有する通信部31Aと、設定部32と、格納部33Aと、決定部34Aと、を有する。
【0102】
格納部33Aは、一般的に格納手段と呼ぶことができる。
【0103】
格納部33Aは、通信部31Aの判別結果を格納していく。このため、格納部33A内の判別結果は、判別結果の履歴になる。
【0104】
決定部34Aは、一般的に決定手段と呼ぶことができる。
【0105】
決定部34Aは、格納部33A内の判別結果の履歴を参照して、複数の通信規格のそれぞれについて、その通信規格が通信先の通信規格として判別された回数をカウントする。
【0106】
決定部34Aは、その回数に基づいて、FeliCa、typeAのモバイル規格およびtypeBのモバイル規格のそれぞれの復調方式を用いる順番を決定する。
【0107】
本実施形態では、決定部34Aは、回数が多い通信規格の復調方式ほど、データの復調に用いる順番を早くする。
【0108】
例えば、FeliCaについてのカウント値(回数)が3であり、typeAについてのカウント値(回数)が2であり、typeBについてのカウント値(回数)が10であった場合、決定部34Aは、typeBのモバイル規格の復調方式、FeliCaのモバイル規格の復調方式、typeAのモバイル規格の復調方式という順番を決定する。なお、カウント値(回数)が同数であった場合、決定部34Aは、デフォルトの順番(例えば、FeliCaのモバイル規格の復調方式、typeBのモバイル規格の復調方式、typeAのモバイル規格の復調方式という順番)に従って、復調方式の順番を決定する。
【0109】
通信部31Aは、一般的に判別手段と呼ぶことができる。
【0110】
通信部31Aは、決定部34Aが決定した順番に従って、データを復調するために用いる復調方式を変更する。
【0111】
なお、制御部3Aは、アンテナ回路2に接続されたコンピュータにて実現されてもよい。この場合、コンピュータは、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを読込み実行して、通信部31A、設定部32、格納部33Aおよび決定部34Aとして機能する。
【0112】
本実施形態によれば、決定部34Aは、通信部31Aの判別結果の履歴を参照して、複数の通信規格のそれぞれについて、その通信規格が通信先の通信規格として判別された回数をカウントし、その回数に基づいて、復調方式を用いる順番を決定する。
【0113】
この場合、過去の判別結果に応じて、データの復調に用いられる復調方式の順番を変更可能になる。
【0114】
また、本実施形態では、決定部34Aは、カウントされた回数が多い通信規格の復調方式ほど、データの復調に使用される順番を早くする。
【0115】
この場合、通信先となる頻度が高い通信規格に準拠するリーダライタとの通信が、他の通信規格に準拠するリーダライタとの通信よりも優先され、通信規格の判別に要する平均時間を短くすることが可能になる。
【0116】
なお、決定部34Aは、カウントされた回数が多い通信規格の復調方式ほど、データの復調に使用される順番を遅くしてもよい。
【0117】
なお、本実施形態でも、複数の通信方式として、3つの通信方式が用いられたが、複数の通信方式の数は2以上であればよい。この場合、アンテナ回路2内のコンデンサとしては、例えば、複数の通信方式の各々の共振周波数帯域に対応する複数のコンデンサと、複数の通信方式の共振周波数帯域に共通する共通周波数帯域に対応するコンデンサと、が含まれてもよい。
【0118】
図5は、スイッチ回路2の他の例を示した回路図である。
【0119】
図5において、スイッチ回路601は、スイッチ回路22の構成に加えて、工程調整用コンデンサC1、C2およびC3を含む。
【0120】
工程調整用コンデンサC1、C2およびC3は、アンテナ回路2の共振周波数が設計値どおりにならなかった場合に使用される調整用コンデンサである。なお、工程調整用コンデンサの数は3に限らず適宜変更可能である。
【0121】
例えば、工程調整検査にて工程調整用コンデンサC1、C2およびC3の接続状態がH/H/Lと調整された場合(Hは接続、Lは非接続)、各規格別の接続状況は以下のようになる。
【0122】
FeliCa通信時には、コンデンサC1、C2、C3、CF、CA、CB、CC=H/H/L/H/L/L/Lとなり、typeA通信時には、コンデンサC1、C2、C3、CF、CA、CB、CC=H/H/L/L/H/L/Lとなり、typeB通信時には、コンデンサC1、C2、C3、CF、CA、CB、CC=H/H/L/L/L/H/Lとなり、通信方式判別時には、コンデンサC1、C2、C3、CF、CA、CB、CC=H/H/L/L/L/L/Hとなる。
【0123】
なお、工程調整用コンデンサC1、C2およびC3の接続状態はH/H/Lに限らず、アンテナ回路2の共振周波数の調整内容に応じて設定される。また、図5に示したスイッチ回路は、第1実施形態と第2実施形態のいずれに用いられてもよい。
【0124】
図6は、スイッチ回路2のさらに他の例として、FeliCa共振周波数の工程調整用スイッチ回路701とは別に、typeA、typeB切り替え用スイッチ回路703を追加実装した例を示した図である。
【0125】
工程調整スイッチ回路701内のコンデンサC1、C2およびC3は、図1に示したコンデンサCFと同様の機能を有する。つまり、図1に示したコンデンサCFの容量値と同様の容量値を、コンデンサC1、C2およびC3の組み合わせで実現する。
【0126】
この場合、FeliCaに対応するコンデンサの容量を調整することが可能になる。工程調整スイッチ回路701内のコンデンサの数は3に限らず適宜変更可能である。
【0127】
また、typeA、typeB切り替え用スイッチ回路703内のコンデンサCAと工程調整スイッチ回路701内のコンデンサC1、C2およびC3とで、図1に示したコンデンサCAと同様の機能を有する。つまり、図1に示したコンデンサCAの容量値と同様の容量値を、コンデンサC1、C2、C3およびCAの組み合わせで実現する。
【0128】
また、typeA、typeB切り替え用スイッチ回路703内のコンデンサCBと工程調整スイッチ回路701内のコンデンサC1、C2およびC3とで、図1に示したコンデンサCBと同様の機能を有する。つまり、図1に示したコンデンサCBの容量値と同様の容量値を、コンデンサC1、C2、C3およびCBの組み合わせで実現する。
【0129】
また、typeA、typeB切り替え用スイッチ回路703内のコンデンサCCと工程調整スイッチ回路701内のコンデンサC1、C2およびC3とで、図1に示したコンデンサCCと同様の機能を有する。つまり、図1に示したコンデンサCCの容量値と同様の容量値を、コンデンサC1、C2、C3およびCCの組み合せで実現する。
【0130】
例えば、工程調整検査にて FeliCa共振周波数の工程調整用スイッチ回路701でコンデンサC1、C2、C3=H/H/Lと調整された場合は、各規格別の接続状況は以下のようになる。
【0131】
FeliCa通信時には、コンデンサC1、C2、C3、CA、CB、CC=H/H/L/L/L/Lとなり、typeA通信時には、コンデンサC1、C2、C3、CA、CB、CC=H/H/L/H/L/Lとなり、typeB通信時にはコンデンサC1、C2、C3、CA、CB、CC=H/H/L/L/H/Lとなり、通信方式判別時には、コンデンサC1、C2、C3、CA、CB、CC=H/H/L/L/L/Hとなる。
【0132】
なお、工程調整用コンデンサC1、C2およびC3の接続状態はH/H/Lに限らず、アンテナ回路2の共振周波数の調整内容に応じて設定される。また、図6に示したスイッチ回路は、第1実施形態と第2実施形態のいずれに用いられてもよい。
【0133】
なお、上記各実施形態では、アンテナ回路2または2Bの共振周波数を切り換えるためにコンデンサを用いたが、コンデンサの代わりに例えば可変容量ダイオードが用いられてもよい。
【0134】
上記各実施形態によれば、NFC規格に含まれる複数の通信規格別に共振周波数を切り替えることが可能な非接触ICカードを備えた携帯端末装置を構成することが可能になる。
【0135】
また、各々の規格で通信可能な共振周波数帯域が異なっていても、各規格別にアンテナを用意する必要はなく、電子機器の小型化、薄型化および軽量化を図ることができる。
【0136】
また、電子機器の製造工程において、共振周波数帯域を各規格別に設けることが可能なため、周波数の工程規格が広くなり、工程歩留まり向上が期待される。
【0137】
なお、上記各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0138】
1、1A 電子機器
2 アンテナ回路
21 アンテナ
22、601、701、703 スイッチ回路
22a スイッチ
3、3A 制御部
31、31A 通信部
32 設定部
33A 格納部
34A 決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路と、
前記通信先の通信方式を判別する判別手段と、
前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別手段の判別結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定手段と、を含む電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記判別手段は、前記アンテナ回路の共振周波数が、複数の通信方式の各々にて規定された複数の共振周波数帯域に共通する共通周波数帯域内の特定共振周波数に設定された状況で、前記アンテナ回路を介して前記通信先からのデータを受信し、当該データに基づいて前記通信先の通信方式を判別する、電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記判別手段は、前記データを、前記複数の通信方式の各々に準拠した復調方式を用いて復調し、当該復調の結果に基づいて前記通信先の通信方式を判別する、電子機器。
【請求項4】
請求項3記載の電子機器において、
前記判別手段の判別結果の履歴を格納する格納手段と、
前記判別結果の履歴を参照して、前記複数の通信方式のそれぞれについて当該通信方式が前記通信先の通信方式として判別された回数をカウントし、当該回数に基づいて、前記復調方式を前記データの復調に用いる順番を決定する決定手段と、をさらに含み、
前記判別手段は、前記決定手段が決定した順番に従って、前記データの復調に用いる前記復調方式を変更する、電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記決定手段は、前記回数が多い通信方式の復調方式ほど、前記データの復調に用いる順番を早くする、電子機器。
【請求項6】
通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路を含む電子機器での通信方法であって、
前記通信先の通信方式を判別する判別ステップと、
前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定ステップと、を含む通信方法。
【請求項7】
通信先と通信するための共振周波数を変更可能なアンテナ回路と接続されたコンピュータに、
前記通信先の通信方式を判別する判別手順と、
前記アンテナ回路の共振周波数を、前記判別の結果が示す通信方式にて規定された共振周波数帯域内の所定共振周波数に設定する設定手順と、を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169985(P2012−169985A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30889(P2011−30889)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】