説明

電子機器、電子機器の制御方法、及び、プログラム

【課題】複数の動作を実行可能な電子機器が速やかに動作を切り換えられるようにする。
【解決手段】ホストコンピューター200から送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能に構成され、制御部70は、印刷処理を指示する印刷コマンドを実行する際に、他の処理部である光学読取装置110に対するスキャンを指示するスキャン実行コマンドを受信している場合には、このスキャン実行コマンドを実行待機状態にして印刷コマンドを実行し、印刷コマンドの実行後に実行待機状態のスキャン実行コマンドを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて複数の処理(動作)を行う電子機器、この電子機器の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理対象の媒体を光学的に読み取る読取機能、処理対象の媒体に印字を行う印刷機能等の複数の動作を実行可能な、複合機と呼ばれる電子機器が知られている。このような電子機器には、パーソナルコンピューター等のホストコンピューターから送信されるコマンドに従って動作するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−253107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように複数の処理部を備えて複数の動作を行う電子機器に使用されるコマンドは、通常、機能が異なる処理部ごとに異なるコマンド体系(コマンド群)となっており、異なる処理部間の動作の切換はコマンド体系の切換を伴う。動作を切り換えることができるのは、一つの動作に関してホストから送信された一連のコマンドを全て実行完了した後など、コマンドの切り換えが可能になるタイミングとして規定されたときに限られていた。このため、動作を頻繁に切り換えることが難しく、複数の動作を連続して実行する場合は動作の切換に時間がかかるという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の動作を実行可能な電子機器が、速やかに動作を切り換えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の処理部を備える電子機器であって、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能とする実行制御手段を備え、前記実行制御手段は、一方の処理部に対し所定処理を指示する所定処理コマンドを実行する際に、他方の処理部に対する他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから前記所定処理コマンドを実行し、前記所定処理の実行後に、実行待機状態の前記別処理コマンドを実行する実行制御手段を備えたこと、を特徴とする。
本発明によれば、複数の処理部により複数の処理を実行可能な電子機器が、いずれかの所定処理を実行する際に他の処理に関するコマンドをすでに受信している場合には、例えば、この受信済みのコマンドの解析や、他の処理部の状況確認等の準備や実行前処理を行い、当該コマンドに基づく処理を実行待機状態にしてから所定処理を実行し、この所定処理の実行後に、実行待機状態であったコマンドを実行する。このため、一つの処理対象媒体に対して複数の処理を実行する場合に、一つの処理から別の処理への切り換えを速やかに行うことができるので、処理の切換に伴う待ち時間を短縮し、スループットの向上を図ることができる。
【0006】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記ホストコンピューターから受信したコマンドを記憶する複数の受信バッファーを備え、各受信バッファーは各処理部に関わるコマンドに対応するものであり、前記実行制御手段は、前記一方の処理部に対する前記所定処理を指示する前記所定処理コマンドを実行する際に、前記他方の処理部に関わる前記受信バッファーを参照し、参照した前記受信バッファーにコマンドが記憶されている場合には、このコマンドを前記別処理コマンドとして実行待機状態にすることを特徴とする。
本発明によれば、各々異なる処理部に対応する複数の受信バッファーを備え、所定処理コマンドを実行する際に他の処理部に対応する受信バッファーを参照することで、他方の処理部に対する他の処理に関して受信しているコマンドとして、実行待機状態とすることができる。従って、受信バッファーを切り換えることで異なる処理部に関するコマンドを容易に参照でき、処理を速やかに切り換えることができる。
この際、前記一方の処理部に対応するコマンド体系と前記他方の処理部に対応するコマンド体系とは異なるように構成する。
各処理部に対応する各コマンドは、コマンドに含まれる情報を所定の規則で区別したコマンド体系としておくと、処理部毎に異なるコマンド体系(コマンド群)として識別ができ、各受信バッファーに振り分けることができる。
【0007】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記実行制御手段は、前記所定処理コマンドが予め設定された条件を満たす場合に、前記他方の処理部に関わる前記受信バッファーを参照し、条件を満たさない場合は、前記所定処理コマンドが記憶されていた同じ前記受信バッファー内のコマンドを続けて実行することを特徴とする。
本発明によれば、実行するコマンドが、所定の処理が終了したなど、所定の条件を満たす場合に他の処理に関するコマンドを実行待機状態にするので、必要な場合のみ処理を速やかに切り換えられるようにし、処理を頻繁に切り換えずに同種の処理を連続して実行することも可能となる。
【0008】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記複数の処理部は、印刷部と読取部を含み、前記実行制御手段は、前記ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、同一の前記処理対象媒体に対して行われる処理であり、前記印刷部に対する印刷処理、及び前記読取部に対する前記処理対象媒体の表面の情報の読取処理を含む複数の処理を実行可能であることを特徴とする。
本発明によれば、同一の処理対象媒体に対する印刷と読取とを速やかに、自在に切り換えて実行できる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数の処理部を備えるもので、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能に構成された電子機器の制御方法であって、一方の処理部に対し所定処理を指示する所定処理コマンドを実行する際に、他方の処理部に対する他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから前記所定処理コマンドを実行し、前記所定処理の実行後に実行待機状態の前記別処理コマンドを実行することを特徴とする。
本発明の制御方法を実行することにより、複数の処理を実行可能な電子機器が、いずれかの所定処理を実行する際に他の処理に関するコマンドをすでに受信している場合には、この受信済みのコマンドの解析や、他の処理部の状況確認等の準備や実行前処理を行い、当該コマンドに基づく処理を実行待機状態にしてから所定処理を実行し、この所定処理の実行後に、実行待機状態であったコマンドを実行する。このため、一つの処理対象媒体に対して複数の処理を実行する場合に、一つの処理から別の処理への切り換えを速やかに行うことができるので、処理の切換に伴う待ち時間を短縮し、スループットの向上を図ることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明は、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能に構成された電子機器の複数の処理部を制御する制御部が実行可能なプログラムであって、一方の処理部に対し所定処理を指示するコマンドを実行する際に、他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから前記所定処理コマンドを実行し、前記所定処理の実行後に実行待機状態の前記別処理コマンドを実行することを特徴とする。
本発明のプログラムを実行する制御部により、複数の処理を実行可能な電子機器が、いずれかの所定処理を実行する際に他の処理に関するコマンドをすでに受信している場合には、この受信済みのコマンドの解析や、他の処理部の状況確認等の準備や実行前処理を行い、当該コマンドに基づく実処理を実行待機状態にしてから所定処理を実行し、この所定処理の実行後に、実行待機状態であったコマンドを実行する。このため、一つの処理対象媒体に対して複数の処理を実行する場合に、一つの処理から別の処理への切り換えを速やかに行うことができるので、処理の切換に伴う待ち時間を短縮し、スループットの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つの処理対象媒体に対して複数の処理を実行する場合に、一つの処理から別の処理への切り換えを速やかに行うことができ、処理の切換に伴う待ち時間を短縮してスループットの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における複合機の外観斜視図である。
【図2】複合機の本体を示す斜視図である。
【図3】複合機本体の側断面図である。
【図4】複合機の制御系のブロック図である。
【図5】ホストコンピューターと複合機の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】複合機の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】複合機がコマンドを実行する様子を示すフローチャートである。
【図8】複合機がコマンドを実行する様子を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合機の外観を示す正面斜視図である。図2は、複合機10の本体11を示す外観斜視図である。図3は、図1の複合機10を示す側断面図である。
図1に示す複合機10は、処理対象媒体としての記録媒体Sに、SIDM(Serial Impact Dot-Matrix)方式の記録ヘッド18(図3参照)により印刷するプリンター機能、記録媒体Sに磁気インクで記録された文字を読み取るMICR(Magnetic Ink Character Recognition)機能、記録媒体Sに設けられた磁気ストライプに記録された情報の読取/書込を行うMSR(Magnetic Stripe Reader/Writer)機能、記録媒体Sの両面を光学読取装置110(図3参照)によって光学的にスキャンするスキャナー機能を備えた電子機器である。複合機10は、記録媒体Sに対して、プリンター機能による印刷動作、MICR機能による磁気読取動作、MSR機能による磁気ストライプの読取/書込動作、スキャナー機能によるスキャン動作を実行可能であり、これらのうち複数の処理(動作)を一つの記録媒体Sに対して連続して実行することも可能である。
【0014】
複合機10で使用可能な記録媒体Sとしては、所定長さに切断されたカット媒体と、複数枚が連接された連続紙とが挙げられる。カット媒体としては、例えば単票紙や単票複写紙などの他、通帳や葉書、封筒などがあり、連続紙には連続複写紙やミシン目などで連接されたファンフォールド紙を含む。本実施形態では、記録媒体Sとして、金融機関等が発行する小切手または手形(以下、総称して小切手という)や、金融機関等が発行する通帳が使用される。小切手は、磁気インクによって、その表面の一部の領域MAに使用者の口座番号や当該小切手のシリアル番号等のMICR情報が印刷された単票紙である。通帳は、複数枚の記録用紙が綴じられた冊子形態となっており、この冊子を開いた内側の面が記録面である。通帳の裏表紙に相当する面の後部には、磁気ストライプが設けられている。なお、以下の説明では、矩形の記録媒体Sの4辺のうち、複合機10へ向かって差し込まれる側の辺を先端とし、この先端と対向する側の辺を後端とする。
【0015】
複合機10は、図1に示すように、外装体としての上部カバー12、上部ケース13及び下部ケース14を備え、上部ケース13及び下部ケース14の前面には、記録媒体Sを挿入及び排出する手差口15が開口している。一方、上部ケース13及び下部ケース14の背面には記録媒体Sを排出する排出口20が開口している。複合機10により処理された記録媒体Sを手差口15から排出するか、或いは排出口20から排出するかは、後述するホストコンピューター200から複合機10に対して送信されるコマンドにより設定できる。手差口15が開口した側、すなわち図3中の左側をフロント(前)側とし、排出口20が開口した側、すなわち図3中の右側をリア(後)側とする。
複合機10は、図2に示すように、上記の外装体に覆われる本体11を有している。本体11は、下本体部11Aと、この下本体部11Aの後端部に軸11Cで支持される上本体部(図示略)とを備えている。上本体部は、上本体部の左側面に設置されている開閉レバー(図示略)の操作によって回転可能であり、上本体部を回転させると本体11の内部が露出する。
【0016】
図2及び図3に示すように、本体11は、ベースフレーム16と、このベースフレーム16の両端に固定される一対の右サイドフレーム17A及び左サイドフレーム17Bとを備える。両サイドフレーム17A、17Bの外側には、上本体部の両サイドフレーム(図示略)があり、その間にキャリッジガイド軸31が架け渡されると共に、両サイドフレーム17A、17B間に平坦面形状の前方媒体案内24及び後方媒体案内25が固定して設けられる。これらの前方媒体案内24と後方媒体案内25との間に、平面形状のプラテン21が配置され、このプラテン21の上方には、プラテン21に対向するように記録ヘッド18が配置されている。
記録ヘッド18は、キャリッジガイド軸31に摺動自在に挿通されるキャリッジ19に搭載されている。キャリッジ19は、当該キャリッジ19を駆動するキャリッジ駆動モーター56(図4)の正転又は逆転により、タイミングベルト(図示略)を介して駆動され、キャリッジガイド軸31に案内されて往復移動される。キャリッジ19は、図1中符号Xで示す方向、すなわち、キャリッジガイド軸31の軸方向及びプラテン21の長手方向と一致する主走査方向に、上本体部両サイドフレームの間で往復走査される。なお、キャリッジ19の主走査方向Xに直交する方向、すなわち図1中符号Yで示す方向を副走査方向とする。
【0017】
キャリッジ19に搭載される記録ヘッド18は、キャリッジ19と共に走行される間に、その先端面においてプラテン21に対向するワイヤー突出部(図示略)から記録ワイヤーを突出させてインクリボンに打ち当て、プラテン21と記録ヘッド18との間に搬送される記録媒体Sにインクリボンのインクを付着させて、記録媒体Sに文字を含む画像を記録する。インクリボンは、上記の本体フレーム又はキャリッジ19に装着されるリボンカートリッジ(図示略)内に折り畳まれて収納され、キャリッジ19の走査に伴って繰り出される。また、記録ヘッド18の後方側には、図3に示すように、プラテン21の上方に位置するように媒体幅センサー55が配設される。媒体幅センサー55は、キャリッジ19に搭載されてキャリッジ19とともにプラテン21上を走査され、記録媒体Sの側端の位置や記録媒体Sの幅を求めるために使用される。
【0018】
プラテン21は、図2、図3に示すように、キャリッジ19の走行方向に延在して平面形状に形成され、付勢ばね180により記録ヘッド18に向けて付勢され、かつ弾性支持されている。付勢ばね180は圧縮コイルばねであり、この付勢ばね180の付勢力により、記録ヘッド18の記録動作時における記録ワイヤーの突出力が支持される。また、プラテン21は、記録媒体Sの搬送中にこの記録媒体Sの厚さが変化した場合、又は本体11に厚さの異なる記録媒体Sが搬入された場合に、付勢ばね180の付勢力に抗して、記録ヘッド18の先端により押圧されて記録ヘッド18から離れる方向に移動する。これにより、記録媒体の厚さにかかわらず、記録ヘッド18の先端と記録媒体Sの記録面との間のギャップが一定に確保される。
【0019】
本体11は、図3に示すように、記録媒体Sを搬送する媒体搬送機構100と、この媒体搬送機構100により搬送される記録媒体Sの先端が突き当てられて当該記録媒体Sを整列させる整列機構28と、小切手に設けられたMICR情報の読み取りや、通帳に設けられた磁気ストライプに対して磁気情報の読み取り又は書き込みを行う磁気ヘッド34を備えた磁気データ読書部29と、この磁気データ読書部29の磁気ヘッド34がMICR情報の読み取りを含む磁気情報処理の実行時に、記録媒体Sの浮き上がりを抑制すべく、記録媒体Sを上から押える媒体押え部30と、を有している。
【0020】
媒体搬送機構100は、図2、図3に示すように、プラテン21、第1駆動ローラー22A、第1従動ローラー22B、第2駆動ローラー23A、第2従動ローラー23B、第3駆動ローラー124A、第3従動ローラー124B、前方媒体案内24、後方媒体案内25、媒体搬送モーター26及び駆動輪列部27を備えて構成されている。媒体搬送機構100は、前方媒体案内24及び後方媒体案内25上に、各ローラーを介して記録媒体Sを搬送する搬送路Pを構成し、前方媒体案内24及び後方媒体案内25の上面が搬送路Pの搬送面PAとなっている。
本構成では、第1駆動ローラー22A、第1従動ローラー22Bは、プラテン21及び記録ヘッド18に対して本体11のフロント側に配置され、第2駆動ローラー23A、第2従動ローラー23B及び第3駆動ローラー124A、第3従動ローラー124Bは、プラテン21及び記録ヘッド18に対して本体11のリア側に順次配置されている。
【0021】
第1駆動ローラー22Aと第1従動ローラー22Bとは、上下方向に配置されて対をなし、第2駆動ローラー23Aと第2従動ローラー23Bとは、上下方向に配置されて対をなし、第3駆動ローラー124Aと第3従動ローラー124Bとは、上下方向に配置されて対をなす。
第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A及び第3駆動ローラー124Aは、媒体搬送モーター26及び駆動輪列部27によって回転駆動される駆動ローラーであり、第1従動ローラー22B、第2従動ローラー23B及び第3従動ローラー124Bは、それぞれ第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A、及び、第3駆動ローラー124A側に所定の押圧力でばね42A、42B、42Cによりばね付勢されている従動ローラーである。これによって、第1駆動ローラー22Aと第1従動ローラー22Bとが互いに反対方向に回転駆動され、第2駆動ローラー23Aと第2従動ローラー23Bとが互いに反対方向に回転駆動され、第3駆動ローラー124Aと第3従動ローラー124Bとが互いに反対方向に回転駆動される。
【0022】
駆動輪列部27は、図2に示すように、右サイドフレーム17Aの外側に配置される。この駆動輪列部27は、正転又は逆転可能な媒体搬送モーター26の駆動軸に回転一体に固定されたモーターピニオン51を備える。このモーターピニオン51からの駆動力が、減速ギア52を介して第2駆動ローラー23Aの第2ローラー軸33に取り付けられた第2駆動ギア53Bへ伝達され、更に、この第2駆動ギア53Bから中間ギア54を介して第1駆動ローラー22Aの第1ローラー軸32に取り付けられた第1駆動ギア53Aに伝達される。また、第2駆動ローラー23Aの第2ローラー軸33の回転力が、例えば、駆動ベルト(図示略)によって第3駆動ローラー124Aの第3ローラー軸134に伝達される。これにより、図3に示す第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A、及び、第3駆動ローラー124Aが同一方向に回転して、記録媒体Sを本体11内に搬送可能とする。つまり、図3に示す第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A、及び、第3駆動ローラー124Aは、媒体搬送モーター26が正転している場合、副走査方向に沿って、図中符号Aで示すように本体11内に記録媒体Sを搬送し、媒体搬送モーター26が逆転している場合、図中符号Bで示すように、本体11内から排出する方向に記録媒体Sを搬送する。
【0023】
整列機構28は、記録ヘッド18による記録媒体Sへの記録や、光学読取装置110による記録媒体Sの表面の読み取りを行う前に、この記録媒体Sを整列するものである。整列機構28は、第1駆動ローラー22A及び第1従動ローラー22Bと記録ヘッド18及びプラテン21との間に、主走査方向に並べて設けられ、搬送路P内に突出する複数の整列板38と、整列板38を駆動する整列モーター58(図4)とを備え、これら整列板38に記録媒体Sの先端部を突き当てることで記録媒体Sの向き整列させることができる。
【0024】
本体11は、図2に示すように、搬送路Pにおける整列板38の上流側近傍に、これら整列板38に突き当てられた記録媒体Sの有無を検知する複数の整列センサー39を備える。整列センサー39は、それぞれ搬送路Pを挟んで対向する発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)とを備える光透過型のセンサーであり、主走査方向に並べて配設されている。複数の整列センサー39のうち記録媒体Sの先端を検出したセンサーの数及び配置により、整列機構28による整列後の記録媒体Sの搬送方向に対する傾きが、許容範囲内あるか否かを判定できる。
また、複合機10は、媒体搬送モーター26の駆動制御、キャリッジ19の走行制御、記録ヘッド18の記録ワイヤーによる記録動作の制御、光学読取装置110の読取動作の制御等、複合機10の全体を制御する制御部として、例えば本体11の後側の下方に、制御基板部(図示略)を備えている。
【0025】
本体11において、第1駆動ローラー22Aのフロント側には、搬送路Pへの記録媒体Sの挿入を検知する複数の媒体端センサー47が並設されている。これら媒体端センサー47は、搬送路Pに向けて光を発する発光部と、その反射光を検出する受光部とを備えた光反射型センサーであり、手差口15から挿入された記録媒体Sを検出する。なお、媒体端センサー47は搬送路Pを挟んで対向するように発光部と受光部とを配した光透過型センサーであっても良い。本構成では、すべての媒体端センサー47の受光部が、受光した状態から、いずれか1つの媒体端センサー47で受光が遮られた場合には、記録媒体Sが搬送路P内に挿入されたと判断される。
【0026】
また、本体11は、図3に示すように、記録媒体Sの表面に表示された文字、記号または画像等を読み取る光学読取装置110を備える。この光学読取装置110は、記録媒体Sの上面側に印刷等で表示されている情報を読み取る第1スキャナーモジュール111と、この第1スキャナーモジュール111に対向配置され、当該記録媒体Sの下面側に印刷等で表示されている情報を読み取る第2スキャナーモジュール112とを備える。通常、記録媒体Sは、MICR情報が印刷されている面が下面になるよう、手差口15から挿入される。
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、第2駆動ローラー23Aと第3駆動ローラー124Aとの間に配置され、搬送路Pを搬送中の記録媒体Sの情報を連続的に読み取る光学イメージセンサーである。
【0027】
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)型の画像読取センサーであり、記録媒体Sに密着する平坦なカバーガラス140、150と、これらカバーガラス140、150を保持する本体ケース141、151とをそれぞれ備える。これら本体ケース141、151の内側には、LED等の光源から出力される光を記録媒体Sの読み取り領域に対して照射する照射部(図示略)と、主走査方向(X方向)に一列に配列された複数の受光センサー(図示略)と、この受光センサーからの信号を上記制御基板部に出力する出力部(図示略)とがそれぞれ収容されている。
本実施形態では、第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112はCISを備えたものに限らず、CCD(Charge Coupled Device)を備えたものであってもよい。また、第2スキャナーモジュール112は、図2に示すように、プラテン21と略平行に複合機10の幅方向に延在して長手形状に構成される本体ケース151及びカバーガラス150を備え、この本体ケース151は、カバーガラス150の上面(ガラス面)が後方媒体案内25に形成された開口を通じて搬送路Pに露出するように配置されている。第1スキャナーモジュール111は、図3に示すように、カバーガラス140の下面(ガラス面)が、上記カバーガラス150の上面に対向するように第2スキャナーモジュール112の上方に設けられ、幅方向においても第2スキャナーモジュール112と略同一の長さの長手形状に形成されている。
【0028】
第1スキャナーモジュール111の上部には付勢部材113が設けられ、第1スキャナーモジュール111は、付勢部材113によって後方媒体案内25の記録媒体Sに対して近接するように付勢されている。また、付勢部材113は、第1スキャナーモジュール111を幅方向に渡って略均一な力で第2スキャナーモジュール112側に押し付けている。ここで、付勢部材113としては、コイルばねや板ばね、或いは、エラストマー製のクッション部材等を使用できる。カバーガラス140、150のガラス面間には、所定の厚さの記録媒体が入り込み可能な間隔が設けられており、記録媒体Sを読み取る際には、搬送された記録媒体Sによって第1スキャナーモジュール111が上方に押し退けられ、付勢部材113が縮むことによりカバーガラス140、150間を記録媒体Sが通過可能となる。すなわち、光学読取装置110では、付勢部材113によって付勢された第1スキャナーモジュール111によって記録媒体Sを第2スキャナーモジュール112側に押し付けることで、記録媒体Sとカバーガラス140、150のガラス面とを確実に密着させて、読み取り品質を向上させている。
【0029】
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112の受光センサー(図示略)は、複合機10の主走査方向に一列に並べられ、主走査方向に延びるライン状に読み取りを行う。第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112の受光センサーは、主走査方向における記録ヘッド18の印字可能範囲よりも広い範囲に配設されており、複合機10が印刷可能な全ての記録媒体よりも広い幅で読み取りを行える。すなわち、光学読取装置110は、複合機10で使用する全ての記録媒体Sの全面を読み取ることができる。
第1スキャナーモジュール111と第2スキャナーモジュール112とは、図3に示すように搬送路Pを挟んで対向して配設されているが、第1スキャナーモジュール111が備えるライン状の受光センサーと、第2スキャナーモジュール112が備えるライン状の受光センサーとは、記録媒体Sの搬送方向において5mm程度オフセットされている。この構成により、互いの光源からの光が他方の受光センサーに与える影響を解消でき、より高い読取品質が得られる。
【0030】
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、それぞれ、R、G、Bの光源を備え、モノクロ(2値、16階調、256階調)及びフルカラーの読み取りが可能である。また、第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112の読取解像度は、例えば、200dpi(ドット/インチ)、300dpi、600dpiの3段階に設定可能である。記録媒体Sの搬送方向(副走査方向)における読取ライン数は、主走査方向における読取解像度に合わせて設定され、読み取り時の記録媒体Sの搬送速度は読取解像度と、受光センサーの検出値の処理速度等の仕様に合わせて調整される。
【0031】
図4は、複合機10の制御系の構成を示すブロック図である。
この図4に示す各部は、制御基板(図示略)に実装されたハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
複合機10は、制御プログラムに基づいて複合機10の全体を制御するCPU40、CPU40によりFLASH−ROM42から読み出された制御プログラムやデータ等を一時的に記憶するRAM41、CPU40により実行される制御プラグラムや処理されるデータ等を記憶したFLASH−ROM42、複合機10を制御するホストコンピューター200との間で情報を送受信する際のデータ形式を変換するシリアルインターフェイス(I/F)43及びUSBインターフェイス44、各種センサー類に接続されたゲートアレイ(G/A)45、各種モーターを駆動するモータードライバー46、及び、ヘッドを駆動するヘッドドライバー48を備え、これらの各部はバス49を介して接続されている。RAM41は、ホストコンピューター200から送信された各種コマンドを一時的に記憶する受信バッファー66、67(図5)、光学読取装置110が読み取った読取画像データを一時的に記憶する画像バッファー等のバッファーメモリーとして機能する。
【0032】
ゲートアレイ45には、整列センサー39、媒体端センサー47、媒体幅センサー55、第1スキャナーモジュール111、及び、第2スキャナーモジュール112が接続されている。ゲートアレイ45は、整列センサー39、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55から入力されるアナログ電圧を量子化してデジタルデータとし、CPU40に出力する。第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、記録媒体Sの表面をCISにより光学的に読み取り、CISの検出電圧をCISの画素毎にゲートアレイ45に供給し、ゲートアレイ45は、第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112から供給されたアナログ電圧を量子化してデジタルデータとしCPU40に出力する。また、ゲートアレイ45には磁気ヘッド34が接続され、ゲートアレイ45は磁気ヘッド34に対して読取/書込用の駆動電流を出力するとともに、磁気データの読み取りを行う場合には、磁気ヘッド34の検出電圧(アナログ電圧)を検出し、デジタルデータとしてCPU40に出力する。
モータードライバー46は、媒体搬送モーター26、キャリッジ駆動モーター56、磁気ヘッド駆動モーター57、及び整列モーター58に接続され、これら各モーターに駆動電流や駆動パルスを供給して、これらのモーターを動作させる。なお、モータードライバー46には、整列板38(図3)を動作させる整列モーター58(図4)等が接続されていてもよい。
ヘッドドライバー48は、記録ヘッド18に接続され、記録ヘッド18に対して駆動電流を供給することによって記録ワイヤーを突出させる。
【0033】
CPU40は、FLASH−ROM42に格納された制御プログラムに基づいて、ゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48を介して、各種センサーの検知状態を取得するとともに各モーターを駆動して記録媒体Sを搬送し、各ヘッドを駆動することにより、記録媒体Sへの記録を実行する。また、CPU40は、媒体搬送機構100により記録媒体Sを搬送し、ゲートアレイ45によって第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112によって記録媒体Sの表面を読み取る。この読取の実行中、CPU40は、ゲートアレイ45から入力されるデータを順次RAM41内に設けられたバッファーメモリー(図示略)に一時的に記憶させる。そして、CPU40は、このバッファーメモリー(図示略)に記憶された画像データを読み出して、シリアルインターフェイス43、USBインターフェイス44を介してホストコンピューター200へ送信する。
【0034】
この図4に示す複合機10の制御系は、FLASH−ROM42に記憶された制御プログラムをCPU40により実行することで、複合機10の本体11の各部を駆動制御して、ホストコンピューター200から送信されるコマンドに従って動作し、上記の印刷機能、MICR機能、MSR機能、及び光学読取機能を実現する。
【0035】
図5は、複合機10及びホストコンピューター200の機能的構成を示すブロック図である。
ホストコンピューター200は、CPU(図示略)によって各種プログラムを実行することにより、図5に示す各部を実現する。すなわち、ホストコンピューター200は、アプリケーションプログラム201と、アプリケーションプログラム201に対して複合機10を制御するための機能モジュールを提供するスキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215、及びプリンタードライバー217の各デバイスドライバーと、各デバイスドラ一バーに対しホストコンピューター200が備える入出力ポートを割り当てるポートハンドラー221とを備え、ポートハンドラー221の制御により、USBポート231、シリアルポート233及びパラレルポート235を介して複合機10との間で各種データや制御信号が入出力される。
ポートハンドラー221は、ホストコンピューター200のCPU(図示略)が実行するオペレーティングシステムの機能としてソフトウェア的に実現される。USBポート231は、ホストコンピューター200のハードウェア基板に実装されたUSB規格に準拠したコネクター及びUSBホストコントローラーと、これらに対応するオペレーティングシステム上の論理的な入出力ポートで構成される。シリアルポート233は、上記ハードウェア基板に実装された、RS−232C規格に準拠したコネクター及びRS232コントローラーと、これらに対応するオペレーティングシステム上の論理的な入出力ポートで構成される。パラレルポート235は、上記ハードウェア基板に実装された、IEEE1284規格に準拠したコネクター及びパラレルポートコントローラーと、これらに対応するオペレーティングシステム上の論理的な入出力ポートで構成される。
【0036】
アプリケーションプログラム201は、例えば金融機関において帳票を処理するためのアプリケーションプログラムであり、帳票印刷、小切手処理、通帳処理等の機能を備えている。アプリケーションプログラム201は、上記の機能の実行時に、スキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215及びプリンタードライバー217の各デバイスドライバーに対して要求を出力し、この要求への応答として入力されるデータを処理する。このアプリケーションプログラム201の要求により、複合機10における通帳への印刷、小切手への印刷、小切手のMICR文字の読取、通帳の磁気ストライプの読取、通帳や小切手の両面スキャン等が行われる。
スキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215、及びプリンタードライバー217の各デバイスドライバーは、アプリケーションプログラム201から出力される要求を実現するためのコマンドを生成し、ポートハンドラー221に出力し、このコマンドへの応答として複合機10から送信されたデータを取得することで、複合機10を管理する。
【0037】
これに対し、複合機10は、シリアルインターフェイス43を介してホストコンピューター200から送信されたコマンド及びデータを一時的に記憶する受信バッファー66と、USBインターフェイス44を介してホストコンピューター200から送信されたコマンド及びデータを一時的に記憶する受信バッファー67とを備えている。
複合機10は、シリアルインターフェイス43及びUSBインターフェイス44のいずれか、若しくは両方をホストコンピューター200に接続可能であり、本実施形態ではシリアルインターフェイス43とUSBインターフェイス44との両方がホストコンピューター200に接続された構成とする。
【0038】
複合機10は、受信バッファー66、67に蓄積されたコマンドを実行する制御部70(実行制御手段)を有する。この制御部70は、CPU40(図4)が制御プログラムを実行することで実現される。
制御部70は、プリンター制御モード71、スキャナー制御モード75、MICR制御モード72、及びMSR制御モード73の各動作モードを切り換えて実行可能である。
プリンター制御モード71は、上記の印刷機能を実行する動作モードである。プリンター制御モード71では、図4に示したゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48により、整列センサー39、媒体端センサー47、媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26、キャリッジ駆動モーター56、整列モーター58及び記録ヘッド18を駆動し、記録媒体Sに文字や画像を形成する。このプリンター制御モード71の実行中は行毎に印刷が行われ、記録媒体Sは、印刷開始位置への移動、印刷中の行送り、印刷終了後の排紙のために媒体搬送機構100により適宜搬送される。これらの印刷機能に関する各部は、処理部の1つである印刷部に相当する。
【0039】
スキャナー制御モード75は、光学読取装置110によって記録媒体Sの光学的な読取を実行する動作モードである。スキャナー制御モード75は、ゲートアレイ45及びモータードライバー46を制御して、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26を駆動し、必要に応じて記録媒体Sを搬送し、第1スキャナーモジュール111、第2スキャナーモジュール112が出力するデータを取得する。このスキャナー機能を実現する光学読取装置110は、処理部の1つである読取部に相当する。
MICR制御モード72は、記録媒体Sに記録された磁気インク文字を読み取る動作モードである。MICR制御モード72は、ゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48を制御して、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26、磁気ヘッド駆動モーター57及び磁気ヘッド34を駆動し、磁気ヘッド34の検出値を取得して解析を行う。
MSR制御モード73は、記録媒体Sが有する磁気ストライプに記録された情報の読取と情報の書込を行う動作モードである。MSR制御モード73は、ゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48を制御して、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26、磁気ヘッド駆動モーター57及び磁気ヘッド34を駆動し、必要に応じて記録媒体Sを搬送し、磁気ヘッド34の検出値を取得して磁気ストライプの読取を行うとともに、磁気ストライプへの情報の書込を行う。
【0040】
複合機10は、印刷機能のみを有するプリンター、或いは、印刷機能、MSR機能及びMICR機能を備えた従来のプリンターと置き換えて使用できる。具体的には、従来のプリンター向けに用意されたホストコンピューター200のMICRドライバー213、MSRドライバー215、及びプリンタードライバー217の制御に従って動作可能である。プリンター制御モード71に対応するコマンド体系Lは、従来のプリンター向けに印刷機能に係る動作を指示するコマンド体系である。また、MICR制御モード72に対応するコマンド体系Mは従来のプリンター向けにMICR機能に係る動作を指示するコマンド体系であり、MSR制御モード73に対応するコマンド体系Nは、従来のプリンター向けにMSR機能に係る動作を指示するコマンド体系である。このため、ホストコンピューター200に接続されているプリンターを取り外して、複合機10に置き換えた場合、ホストコンピューター200は、印刷機能、MICR機能及びMSR機能については、既存のMICRドライバー213、MSRドライバー215及びプリンタードライバー217を使用して、以前に接続されていたプリンターと同じように複合機10を制御できる。
【0041】
本実施形態では、MICRドライバー213、MSRドライバー215及びプリンタードライバー217は、シリアルインターフェイスまたはパラレルインターフェイスを使用する旧来のプリンターに対応するドライバープログラムであり、USBインターフェイスには対応しない。このため、MICRドライバー213、MSRドライバー215及びプリンタードライバー217は、コマンド及びデータを、シリアルポート233またはパラレルポート235から出力する。複合機10に対しては、印刷機能、MICR機能及びMSR機能に係るコマンド及びデータが、ホストコンピューター200からシリアルインターフェイス43に入力され、受信バッファー66に記憶される。
【0042】
これに対し、本実施形態のホストコンピューター200が備えるスキャナードライバー211は、USBインターフェイスに対応しており、USBポート231を介して複合機10との間でコマンド及びデータを送受信する。上記のように光学読取装置110はカラー高解像度のスキャンが可能であるため、読取画像データのデータ量が非常に大きくなることがある。このため、読取画像データをシリアルインターフェイスやパラレルインターフェイスにより転送することは現実的でないため、スキャナードライバー211はUSBポート231のみを使用する。このため、複合機10に対して、スキャン機能に関するコマンド及びデータはUSBインターフェイス44に入力され、このUSBインターフェイス44に対応して設けられた受信バッファー67に記憶される。
【0043】
この結果、複合機10では、実行可能な複数の機能が、シリアルインターフェイス43に対応する印刷機能、MICR機能及びMSR機能と、USBインターフェイス44に対応するスキャン機能とに分けられている。言い換えれば、機能(処理)の異なる処理部毎にインターフェイスが割り当てられ、このインターフェイスの割り当てに対応して、処理の組み合わせごとに受信バッファー66、67が設けられている。このため、制御部70は、印刷部によりコマンドを実行する際は受信バッファー66を参照し、光学読取装置110によりコマンドを実行する場合は受信バッファー67を参照すればよい。
また、同一のインターフェイスであった場合も、複合機10の不図示の受信ポートから制御部70がコマンドを読み、コマンド体系ごとに各受信バッファー66、67に振り分けることもできる。この際、印刷機能のコマンド体系のコマンドは、「ESC」を先頭とし、スキャン機能のコマンド体系のコマンドは、「GS」を先頭とすると規制することにより、この先頭のコードで識別することができる。
【0044】
複合機10は、ホストコンピューター200から送信されたコマンドを受信順に受信バッファー66、67に格納し、制御部70が受信バッファー66、67に格納された未実行コマンドを読み出して実行する。通常、制御部70は、読み出したコマンドを含む一連のコマンドを全て実行し、読み出した側の受信バッファーの未実行コマンドが無くなってからいったん動作を停止して、受信バッファー66、67を参照して次のコマンドを読み出す。複合機10は一つの記録媒体Sに印刷を行うこともスキャンを行うこともでき、複数の機能を切り換えて連続して実行できるという利点があるが、その機能の切り換え時にいったん動作を停止してしまうと、不要な待ち時間が発生してしまう。そこで、本実施形態の複合機10は、ホストコンピューター200から複数の機能に係るコマンドが送信された場合に、これらのコマンドに従って複数の機能を速やかに切り換えて実行できる構成となっている。
【0045】
図6は、複合機10の動作の一例を示すフローチャートである。
この図6に例示する動作は、記録媒体Sとして通帳が手差口15から挿入された場合に、この通帳に印刷を行い、印刷した部分を含む範囲を光学的に読み取り、排出する一連の動作である。
複合機10の制御部70は、手差口15に小切手が挿入されたことを媒体端センサー47の検出値に基づいて検出すると(ステップS11)、モータードライバー46を制御して整列モーター58を動作させ、整列板38を搬送路Pに進出させるとともに、媒体搬送モーター26を動作させて、通帳の向きを整える整列動作を行う(ステップS12)。制御部70は、ゲートアレイ45により整列センサー39の出力値を取得し、小切手の向きが整ったと判定したら、整列モーター58を動作させて整列板38を退避させて、整列動作を終了する。
【0046】
制御部70は、ホストコンピューター200から送信され、受信バッファー66に記憶されたコマンドを参照し、印字開始位置を指定するコマンドを読み出して(ステップS13)、動作モードをプリンター制御モード71に切り換えて、コマンドに従って印字開始位置まで通帳を搬送する。すなわち、制御部70は、モータードライバー46を制御して媒体搬送モーター26を駆動し、通帳を印字開始位置まで搬送する(ステップS14)。続いて、ホストコンピューター200から印字コマンドと搬送コマンドとが受信され、受信バッファー66に記憶されると(ステップS15)、制御部70は、受信バッファー66から印字コマンドと搬送コマンドを読み出して実行する。制御部70は、媒体搬送モーター26及びキャリッジ駆動モーター56を駆動し、ヘッドドライバー48を制御して記録ヘッド18による印字を行わせ、1行の印字が終了する毎に通帳を搬送して改行する(ステップS16)。この一連の印字が終了すると、制御部70は、媒体搬送モーター26を駆動して通帳を印字終了位置まで搬送する(ステップS17)。
【0047】
次に、ホストコンピューター200から、スキャン実行コマンドが送信され(ステップS18)、続いてスキャンする範囲を指定する範囲指定コマンドが送信され(ステップS19)、受信バッファー67に記憶されると、制御部70は、受信バッファー67に記憶されたスキャン実行コマンドを読み出して、動作モードをスキャナー制御モード75に切り換えて実行する。すなわち、制御部70は、モータードライバー46を制御して媒体搬送モーター26を動作させ、通帳をスキャン開始位置まで搬送させる(ステップS20)。次に制御部70は、媒体搬送モーター26を動作させ、第1スキャナーモジュール111、第2スキャナーモジュール112の出力データを、ゲートアレイ45を介して取得し、スキャンを実行する(ステップS21)。そして、制御部70は、取得した第1スキャナーモジュール111、第2スキャナーモジュール112の出力データを解析して通帳の両面の読取画像を取得する(ステップS22)。範囲指定コマンドにより指定された範囲の読み取りが終了した後、ホストコンピューター200から排紙コマンドが送信されると(ステップS23)、制御部70はこの排紙コマンドを受信して実行し、媒体搬送モーター26を駆動して通帳を手差口15または排出口20から排出させ(ステップS24)、その後、記録媒体Sの挿入に待機する状態に移行して(ステップS25)、本処理を終了する。
【0048】
このように、制御部70は、ホストコンピューター200から送信されたコマンドに対応する動作モードで、コマンドを実行し、プリンター機能、スキャナー機能、MICR機能、MSR機能を実行し、一つの記録媒体S(ここでは通帳)に対して複数の機能を切り換えて実行できる。
ここで、複合機10は、上記のように複数の機能を速やかに切り換えて実行可能とするため、受信バッファー66のコマンドを実行する際に、他方の受信バッファー67を参照し、受信バッファー67に未実行コマンドがある場合には、この未実行コマンドを先に読み出して実行待機状態とする制御を行う。これにより、コマンドを実行した後に待機状態となっている次のコマンドを速やかに実行でき、また、コマンドを実行する実行モードが異なる場合はモードを速やかに切り換えられる。このような、一方のバッファーのコマンドを実行する際に他方のバッファーを参照して、次のコマンドを先に読み出す制御は、所定の条件が設定され、この条件が成立した場合に限り実行される。この制御について以下に詳細に説明する。
【0049】
図7及び図8は、複合機10がコマンドを実行する様子を示すフローチャートである。図7は、コマンド実行時に別の受信バッファーを参照する設定がされていない場合の動作例を示し、図8は本実施形態において上記設定がなされた場合の動作を示す。
制御部70は、動作を開始すると(ステップS31)、受信バッファー66、67に記憶されている未実行コマンド(受信済みで、まだ実行されていないコマンド)を、ホストコンピューター200から受信した順に参照する(ステップS32)。制御部70は受信バッファー66と受信バッファー67とを同時に参照することはできないので、先に受信したコマンドが記憶されている側の受信バッファーを、先に参照する。
【0050】
制御部70は、参照した受信バッファーに未実行コマンドがあるか否かを判別し(ステップS33)、未実行コマンドがある場合には(ステップS33;Yes)このコマンドを解析して(ステップS34)、このコマンドに対応する動作モードへの切り換えを行い、コマンドを実行する(ステップS35)。コマンドの実行が完了すると、制御部70は、現在参照している受信バッファー内の未実行コマンドを全て実行したか否かを判別する(ステップS36)。つまり、制御部70は、一つのコマンドを受信バッファー66、67のいずれかから読み出して実行した後、同じ受信バッファー内の未実行コマンドを続けて実行する。そして、参照している受信バッファー内の未実行コマンドがまだ残っている場合は(ステップS36;No)、ステップS34に戻って次のコマンドを解析する。また、参照している受信バッファー内の未実行コマンドを全て実行した場合には(ステップS36;Yes)、ステップS32に戻って、参照する受信バッファーを切り換えて、未実行コマンドを参照する。
そして、受信バッファー66、67のいずれにも未実行コマンドがない場合(ステップS33;No)、制御部70は、ホストコンピューター200からコマンドを受信するまで待機状態に移行し(ステップS37)、この動作を終了する。
このように、制御部70は、通常の動作においては、受信バッファー66、67の未実行コマンドを受信順に実行し、一つのコマンドを受信バッファーから読み出して実行した後、同じ受信バッファー内の未実行コマンドを続けて実行する。
【0051】
これに対し、ホストコンピューター200からのコマンドにより設定がなされた場合に、一つの受信バッファー内の未実行コマンドを全て実行する前にもう一方の受信バッファーを参照する機能を有する場合の動作例を図8に示す。この図8に示す動作において、制御部70は、スキャナー制御モード75として動作を開始する。そして、スキャン機能以外の機能に対応するコマンドを実行する場合には、そのコマンドの実行後にスキャナー制御モード75に復帰するように設定して、動作モードを切り替える。このため、受信バッファー66、67を参照する動作は、スキャナー制御モード75の機能の一部として実現される。上述のように、プリンター制御モード71、MICR制御モード72、及びMSR制御モード73は、旧来のプリンターと同様に機能することが必要とされるため、コマンド体系に新しいコマンドを追加することが難しい。これに対し、スキャナードライバー211及びスキャナー制御モード75は、旧来のプリンターとの互換性が要求されないため、例えば、これらが使用するコマンド体系Kに、旧来は無かった機能に対応するコマンドを追加できる。このため、参照する受信バッファーを切り換える条件を設定する等の機能を、コマンド体系Kに追加する新たなコマンドとして、実現できる。
【0052】
図8に示す動作において、制御部70は、スキャナー制御モード75で動作を開始し、ホストコンピューター200からUSBインターフェイス44に対して送信された専用のコマンドに従って、参照する受信バッファーを他の受信バッファーに変更するバッファー移行条件を設定する(ステップS41)。バッファー移行条件は、例えば、特定のコマンド、或いは特定のコマンドの組み合わせである。この特定のコマンド、或いは特定のコマンドの組み合わせを受信した場合に、参照する受信バッファーが切り換えられる。
制御部70は、スキャナー制御モード75の状態で、記録媒体Sを処理する動作を開始し(ステップS42)、受信バッファー66、67に記憶されている未実行コマンドを、ホストコンピューター200から受信した順に参照する(ステップS43)。制御部70は、参照した受信バッファーに未実行コマンドがあるか否かを判別し(ステップS44)、受信バッファー66、67のいずれにも未実行コマンドがない場合(ステップS44;No)、制御部70は、ホストコンピューター200からコマンドを受信するまで待機状態に移行し(ステップS45)、この動作を終了する。待機状態に移行する際は、記録ヘッド18に記録媒体Sがあるかをセンサーにより検出し、記録媒体Sがない場合は報知手段によって報知して記録媒体Sを充填状態にさせる準備や、キャリッジ駆動モーターを励磁させておくなどのメカニズムの前処理などを行い、即座に動作可能な状態にする。
【0053】
一方、受信バッファー66、67のいずれかに未実行コマンドがある場合には(ステップS44;Yes)、制御部70はこのコマンドを読み出して解析する(ステップS46)。この解析はスキャナー制御モード75の機能として実行される。ここで、制御部70は、解析した一つのコマンド、或いは、連続または一緒に受信した複数のコマンドが、ステップS41で設定された条件に該当するか否かを判別する(ステップS47)。そして、移行条件を満たすコマンドまたはコマンドの組み合わせでない場合(ステップS47;No)、制御部70は、解析したコマンドに対応する動作モードへの切り換えを行い、コマンドを実行する(ステップS48)。コマンドの実行が完了すると、制御部70は、動作モードをスキャナー制御モード75に切り換えて、現在参照している受信バッファー内の未実行コマンドを全て実行したか否かを判別し(ステップS49)、受信バッファー内の未実行コマンドが残っている場合は(ステップS49;No)、次の未実行コマンドを読み出し(ステップS50)、ステップS46に戻って次のコマンドを解析する。また、参照している受信バッファー内の未実行コマンドを全て実行した場合には(ステップS49;Yes)、ステップS43に戻る。
【0054】
また、制御部70は、解析した一つのコマンドまたは複数のコマンドが、ステップS41で設定された条件に該当する場合(ステップS47;Yes)、解析したコマンドを読み出した受信バッファーとは別の受信バッファーを参照し(ステップS51)。未実行コマンドがあるか否かを判別する(ステップS52)。この受信バッファーに未実行コマンドがある場合(ステップS52;Yes)、制御部70は、このコマンドを読み出し、このコマンドに対応する動作モードを特定し、特定した動作モードと読み出したコマンドを実行待機状態にする(ステップS53)。
実行待機状態は、すぐにコマンドを実行可能な状態を指す。こおnステップS53では、例えば、制御部70が一時的に動作モードを切り替えてコマンドを読み込み、この動作モードが複合機10の動作部(ゲートアレイ45、モータードライバー46、ヘッドドライバー48及びこれらに接続された各部)に信号を出力する直前の状態で待機させ、再び動作モードをスキャナー制御モード75に戻す処理が行われる。また、実行待機状態の別の例として、スキャナー制御モード75が、次に実行するコマンドと、このコマンドに対応する動作モードとを一時的に記憶しておくだけであっても良い。
その後、制御部70は、ステップS46で解析したコマンドに対応する動作モードへの切り換えを行い、このコマンドを実行する(ステップS54)。また、ステップS46で解析したコマンドとは別の受信バッファーに未実行コマンドがない場合は(ステップS52;No)、そのままステップS54に移行してコマンドを実行する。
【0055】
コマンドの実行が完了すると、制御部70は、動作モードをスキャナー制御モード75に切り換えて、実行待機状態となっているコマンドがあるか否かを判別し(ステップS55)、実行待機状態のコマンドが無ければ(ステップS55;No)、ステップS49に移行する。また、実行待機状態のコマンドがある場合(ステップS55;Yes)、制御部70は、実行待機状態となっていたコマンドに対応する動作モードへの切り換えを行い、このコマンドを実行する(ステップS56)。その後、制御部70は動作モードをスキャナー制御モード75に切り換えて、現在参照している受信バッファー内の未実行コマンド、すなわち実行待機状態となっていたコマンドと同じ受信バッファーの未実行コマンドを全て実行したか否かを判別する(ステップS57)。この受信バッファー内の未実行コマンドが残っている場合は(ステップS57;No)、ステップS50に移行して次の未実行コマンドを読み出し、ステップS46に戻って次のコマンドを解析する。また、参照している受信バッファー内の未実行コマンドを全て実行した場合には(ステップS57;Yes)、ステップS43に戻る。
【0056】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係る複合機10は、複数の処理部を備え、ホストコンピューター200から送信されるコマンドに基づいて、記録媒体Sに対して複数種類の処理を実行可能に構成され、制御部70は、一方の処理部に対し所定処理を指示する所定処理コマンドを実行する際に、複数の処理部のうち別の処理部に対して他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから先に上記所定処理コマンドを実行し、この所定処理の実行後に実行待機状態の別処理コマンドを実行する。例えば、制御部70は、印刷部による印刷処理を指示する印刷実行コマンドを実行する際に、光学読取装置110に対して印刷対象の記録媒体Sのスキャンを指示するスキャン実行コマンドが既に受信されている場合には、このスキャン実行コマンドを実行待機状態にして印刷実行コマンドを実行し、印刷実行後に、実行待機状態となっているスキャン実行コマンドを実行する。これにより、一つの記録媒体Sに対して複数の動作を実行する場合に、一つの動作から別の動作への切り換えを速やかに行うことができるので、動作の切換に伴う待ち時間を短縮し、スループットの向上を図ることができる。
【0057】
また、複合機10は、ホストコンピューター200から受信したコマンドを記憶する複数の受信バッファー66、67を備え、各受信バッファー66、67は各処理部である光学読取装置110及び印刷部に関わるコマンドに対応し、制御部70は、一つの処理部に対する処理を指示するコマンドを実行する際に、他方の処理部に関わる受信バッファーを参照する。例えば、制御部70は、印刷部により印刷実行コマンドを実行する際に、スキャナー機能のコマンドが記憶される受信バッファー67を参照し、この受信バッファー67に実行コマンドが記憶されている場合には、この実行コマンドを実行待機状態にする。従って、受信バッファーを切り換えることで異なる動作に関するコマンドを容易に参照でき、未実行コマンドの有無を速やかに判定することも可能となり、動作を速やかに切り換えることができる。
【0058】
また、一方の処理部に対応するコマンド体系と他方の処理部に対応するコマンド体系とは異なるように構成する。例えば、印刷機能に係る印刷部が対応するコマンド体系Lと、スキャナー機能にかかるコマンド体系とは異なるコマンド体系である。このように、各処理部に対応する各コマンドを、コマンドに含まれる情報を所定の規則で区別したコマンド体系としておくことで、処理部毎に異なるコマンド体系(コマンド群)として識別ができ、ホストコンピューター200から受信したコマンドを、対象の処理部ごとに各受信バッファーに振り分けることができる。
【0059】
また、制御部70は、所定処理を指示するコマンドが予め設定された条件を満たす場合に、他の処理部に関わる受信バッファーを参照し、実行するコマンドが条件を満たさない場合は所定処理を指示するコマンドが記憶されていた同じ受信バッファー内のコマンドを続けて実行する。例えば、制御部70には、印刷実行コマンドと搬送コマンドの組み合わせが条件として予めスキャナー制御モード75のコマンドにより設定される。この条件を満たすコマンド、すなわち印刷実行コマンドと搬送コマンドが一緒にホストコンピューター200から送信された場合に、制御部70は、この印刷実行コマンドと搬送コマンドを実行する際に受信バッファー67を参照し、スキャン実行コマンドがあれば実行待機状態にして、印刷実行コマンドと搬送コマンドを実行する。また、上記の条件を満たすコマンド以外のコマンドを受信バッファー66から読み出して実行する場合には、受信バッファー66の未実行コマンドが無くなるまで続けて受信バッファー66のコマンドを実行する。これにより、必要な場合のみ動作を速やかに切り換えられるようにし、動作を頻繁に切り換えずに同種の動作を連続して実行することも可能となる。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、制御部70のプリンター制御モード71、MICR制御モード72及びMSR制御モード73に対応して受信バッファー66を設け、スキャナー制御モード75に対応する受信バッファー67を設けた構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、受信バッファーの数は任意であり、プリンター制御モード71、MICR制御モード72、MSR制御モード73及びスキャナー制御モード75の個々に対応する受信バッファーを設けてもよい。また、異なる受信バッファーが、物理的に一つのメモリーを論理的に複数に分割して形成されてもよい。さらに、上記実施形態において、複合機10がシリアルインターフェイス43、USBインターフェイス44の他にパラレルインターフェイスや、10/100BASE−T等のLANインターフェイス、無線通信インターフェイス等を備えていてもよく、この構成においてインターフェイス毎に対応する機能が特定される場合には、インターフェイス毎に受信バッファーを設けてもよい。また、複合機10は、印刷機能、MICR機能、MSR機能、スキャン機能に限らず、さらに他の種類の動作を実行可能な構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、複合機10に搭載された制御基板(図示略)に実装された回路が図4、図5の機能ブロックに示す機能を実現し、複合機10の各部を制御する構成を例に挙げて説明したが、例えば、複合機10に外部接続された装置が、図4に示す各機能部の一部ないし全部として機能し、複合機10を制御する構成としてもよい。さらに、図4及び図5に示した各機能ブロックは、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されるものであって、具体的なハードウェアの実装形態やソフトウェアの仕様等は任意であり、その他の細部構成についても任意に変更可能である。
また、上記実施形態では、SIDM方式の記録ヘッド18、磁気ヘッド34、及び光学読取装置110を備えた複合機10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、インクジェット式のプリンターや、サーマルプリンター、レーザープリンター等に、光学読取装置110に相当する光学読取部を設けた構成としても良い。さらに、独立して使用される機器に限らず、他の機器(ATM(Automated Teller Machine)やCD(Cash Dispenser)等)に組み込まれた装置に本発明を適用することも勿論可能である。
また、図6ないし図8に記載の各ステップを実行するプログラムを、複合機10内部の記憶媒体に記憶させたものにより、または複合機10外部の記憶媒体に記憶させたものにより、それらを読み出して、制御部70により実行させることもできる。
【符号の説明】
【0062】
10…複合機(電子機器)、18…記録ヘッド、29…磁気データ読書部、40…CPU、41…RAM、42…FLASH−ROM、43…シリアルインターフェイス、44…USBインターフェイス、66、67…受信バッファー、70…制御部(実行制御手段)、71…プリンター制御モード、72…MICR制御モード、73…MSR制御モード、75…スキャナー制御モード、100…媒体搬送機構、110…光学読取装置、200…ホストコンピューター、S…記録媒体(処理対象媒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理部を備える電子機器であって、
ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能とする実行制御手段を備え、
前記実行制御手段は、一方の処理部に対し所定処理を指示する所定処理コマンドを実行する際に、他方の処理部に対する他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから前記所定処理コマンドを実行し、前記所定処理の実行後に、実行待機状態の前記別処理コマンドを実行すること、
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ホストコンピューターから受信したコマンドを記憶する複数の受信バッファーを備え、各受信バッファーは各処理部に関わるコマンドに対応するものであり、
前記実行制御手段は、前記一方の処理部に対する前記所定処理を指示する前記所定処理コマンドを実行する際に、前記他方の処理部に関わる前記受信バッファーを参照し、参照した前記受信バッファーにコマンドが記憶されている場合には、このコマンドを前記別処理コマンドとして実行待機状態にすることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記一方の処理部に対応するコマンド体系と前記他方の処理部に対応するコマンド体系とは異なることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記実行制御手段は、前記所定処理コマンドが予め設定された条件を満たす場合に、前記他方の処理部に関わる前記受信バッファーを参照し、条件を満たさない場合は、前記所定処理コマンドが記憶されていた同じ前記受信バッファー内のコマンドを続けて実行することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
前記複数の処理部は、印刷部と読取部を含み、
前記実行制御手段は、前記ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、同一の前記処理対象媒体に対して行われる処理であり、前記印刷部に対する印刷処理、及び前記読取部に対する前記処理対象媒体の表面の情報の読取処理を含む複数の処理を実行可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
複数の処理部を備えるもので、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能に構成された電子機器の制御方法であって、
一方の処理部に対し所定処理を指示する所定処理コマンドを実行する際に、他方の処理部に対する他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから前記所定処理コマンドを実行し、前記所定処理の実行後に実行待機状態の前記別処理コマンドを実行すること、
を特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項7】
ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づいて、処理対象媒体に対して複数の処理を実行可能に構成された電子機器の複数の処理部を制御する制御部が実行可能なプログラムであって、
一方の処理部に対し所定処理を指示するコマンドを実行する際に、他方の処理部に対する他の処理を指示する別処理コマンドを受信している場合には、この別処理コマンドを実行待機状態にしてから前記所定処理コマンドを実行し、前記所定処理の実行後に実行待機状態の前記別処理コマンドを実行すること、
を特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−60549(P2012−60549A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203953(P2010−203953)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】