説明

電子機器、電源制御方法および電源制御プログラム

【課題】 装着される記録媒体の種類に係わらず駆動すること。
【解決手段】 ICレコーダは、バッテリ19と、メモリカード41が装着可能なメモリI/F37と、メモリカード41の種類を検出する種類検出部と、メモリカード41に予め定められたアクセス処理を実行するアクセス処理部と、メモリカード41に予め定められたアクセス処理を実行することによって消費される電流値を検出する消費電流検出部53と、検出された電流値に基づいて、検出された種類に対応する消費電流値をEEPROM13に記憶する追加記憶部と、バッテリ19から電力を取り出し、出力する電源回路21,23と、電源回路21,23を制御する電源制御部と、を備え、電源制御部は、検出された種類に対応して記憶された消費電流値に応じて、電源回路21,23に対する制御を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器、電源制御方法および電源制御プログラムに関し、特にバッテリで駆動する電子機器、その電子機器で実行される電源制御方法および電源制御方法をコンピュータに実行させるための電源制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レコーダにおいて、バッテリの残量としきい値との比較処理を随時行い、残量がしきい値以下になるとき残量が少ないことを使用者に知らしめるよう警告することが考えられる。この比較処理において用いるしきい値を、装着可能な複数種類のメモリカードに対応するために、複数種類のメモリカードへのアクセス等により消費され得る最大消費電流値を保証するように定めた値とすることが考えられる。
【0003】
しかしながら、保証されている最大消費電流値よりも大きい消費電流値を持つメモリカードが装着された場合、比較処理の結果ではしきい値以上であるため残量が少ないと判断されず、メモリカードへのアクセス等によって想定外の大電流が流れ、バッテリの残量が急激に低下してしまい、突然動作が終了してしまう虞がある。
【0004】
さて、特開平10−201112号公報には、接続される機器により消費される電力からバッテリで駆動可能な時間をシミュレートして結果を表示する技術が記載されている。この技術を従来考えられ得る電子レコーダに適用した場合、複数種類のメモリカードへのアクセス等により消費され得る最大消費電流からバッテリで駆動可能な時間をシミュレートして結果を表示することが考えられるが、保証されている最大消費電流値よりも大きい消費電流値を持つメモリカードが装着された場合に、バッテリの残量が急激に低下するといった問題を解決できない。
【特許文献1】特開平10−201112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上述した問題を解決するためになされたもので、この発明の目的の1つは、装着される記録媒体の種類に係わらず駆動することが可能な電子機器を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、装着された記録媒体を使用することによりバッテリの寿命が短くなることを通知することが可能な電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するためにこの発明のある局面によれば、電子機器は、バッテリからの電力で駆動する電子機器であって、記録媒体の種類それぞれに対応して消費電流値を記憶する記憶手段と、記録媒体が装着可能なインターフェース手段と、インターフェース手段に装着された記録媒体の種類を検出する種類検出手段と、種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値が記憶されていない場合、インターフェース手段に装着された記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行するアクセス処理手段と、記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行することによって消費される電流値を検出する電流検出手段と、電流検出手段によって検出された電流値に基づいて、種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値を記憶手段に記憶する記憶制御手段と、バッテリから電力を取り出し、出力する電源回路と、電源回路を制御する電源制御手段と、を備え、電源制御手段は、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値に応じて、電源回路に対する制御を異ならせる。
【0008】
この局面に従えば、装着された記録媒体の種類が検出され、検出された種類に対応する消費電流値が記憶されていない場合、記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行することによって消費される電流値が検出され、検出された電流値に基づいて、検出された種類に対応する消費電流値が記憶される。このため、消費電流値が不明の記録媒体の消費電流値を検出することができる。また、装着される記録媒体の消費電流値の違いによって電源回路に対する制御を異ならせるので、記録媒体の消費電流の違いを電源回路で対応することができる。その結果、装着される記録媒体の種類に係わらず駆動することが可能な電子機器を提供することができる。
【0009】
好ましくは、電源回路は、第1電源回路および第1電源回路よりも高い電流を出力可能な第2電源回路と、を含み、電源制御手段は、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、第1電源回路をバッテリに接続し、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、第2電源回路をバッテリに接続する。
【0010】
この局面に従えば、装着された記録媒体の種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、第1電源回路がバッテリに接続され、装着された記録媒体の種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、第1電源回路よりも高い電流を出力可能な第2電源回路がバッテリに接続される。このため、消費電流が所定のしきい値以上の記録媒体が装着される場合に、バッテリから供給される電流が不足する状態が発生する確率を低減させることができる。
【0011】
好ましくは、バッテリの出力電圧を検出する出力電圧検出手段を、さらに備え、電源制御手段は、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、検出された出力電圧が第1終端電圧値以下になると電源回路を遮断し、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、検出された出力電圧が第1終端電圧値より高い第2終端電圧値以下になると電源回路を遮断する。
【0012】
この局面に従えば、装着される記録媒体の消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、バッテリの出力電圧が第1終端電圧値以下になると電源回路が遮断され、装着される記録媒体の消費電流値が所定のしきい値以上の場合、バッテリの出力電圧が第1終端電圧値より高い第2終端電圧値以下になると電源回路が遮断される。装着される記録媒体の消費電流値によって電源回路を遮断するしきい値を変更するので、記録媒体が装着されて電子機器全体の消費電流が変動する場合であっても、バッテリが必要とされる電流を出力できなくなる前に、電源をOFFにすることができる。
【0013】
好ましくは、電源制御手段は、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、電源回路に電力を継続して出力させ、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、電源回路に電力の出力を遮断させる。
【0014】
この局面に従えば、装着された記録媒体の消費電流値が所定のしきい値以上の場合、電源回路が電力を出力しなくなるので、消費電流値が所定のしきい値以上の記録媒体を装着した状態では駆動しないようにすることができる。
【0015】
好ましくは、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合に警告する警告手段を、さらに備える。
【0016】
この局面に従えば、装着された記録媒体を使用することによりバッテリの寿命が短くなることをユーザに通知することができる。
【0017】
この発明の他の局面によれば、電子機器は、バッテリからの電力で駆動する電子機器であって、記録媒体の種類それぞれに対応して消費電流値を記憶する記憶手段と、記録媒体が装着可能なインターフェース手段と、インターフェース手段に装着された記録媒体の種類を検出する種類検出手段と、種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値が記憶されていない場合、インターフェース手段に装着された記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行するアクセス処理手段と、記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行することによって消費される電流値を検出する電流検出手段と、電流検出手段によって検出された電流値に基づいて、種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値を記憶手段に記憶する記憶制御手段と、種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合に警告する警告手段と、を備える。
【0018】
この局面に従えば、装着された記録媒体の消費電流値が所定のしきい値以上の場合に警告するので、装着された記録媒体を使用することによりバッテリの寿命が短くなることをユーザに通知することが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ICレコーダの平面図である。
【図2】ICレコーダのハードウェア構成の概要を示す機能ブロック図である。
【図3】CPUの機能の概要をEEPROMに記憶されるデータとともに示す機能ブロック図である。
【図4】電源制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】使用可能時間表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】容量テーブルの一例を示す図である。
【図7】ローバッテリ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態におけるICレコーダについて説明する。ICレコーダは、電子機器の一例である。なお、本実施の形態においては、電子機器の一例としてICレコーダを例に説明するが、バッテリで駆動する電子機器であれば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機、ノート型コンピュータ等であってもよい。以下の説明では、同一部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、ICレコーダの平面図である。図1を参照して、ICレコーダ1は、本体部3と、本体部3の表面に配置された液晶表示装置(LCD)43と、本体部3の表面および側面に配置された複数のボタンを含む操作部17と、内蔵されたメモリI/F39とを含む。ユーザは、LCD43に表示された案内画面を見ながら操作部17を操作することができる。なお、LCD43に代えて、有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイを用いるようにしてもよい。メモリI/F39は、メモリカード41が着脱可能である。なお、図中の点線および矢印は、説明のために示したもので、実際には存在しない。
【0022】
図2は、ICレコーダのハードウェア構成の概要を示す機能ブロック図である。図2を参照して、ICレコーダ1は、ICレコーダの全体を制御するための中央演算装置(CPU)11と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するEEPROM(Electrically ErasaBle and Programmable Read Only Memory)13と、LCD43と、CPU11の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)15と、ユーザによる操作を受け付ける操作部17と、コーデック27と、マイクロホン29と、スピーカ31と、ヘッドホン端子33と、電流系25と、抵抗Rと、スイッチSW1,SW2と、エンコーダ/デコーダ35と、シリアルインターフェース(I/F)37と、メモリインタフェース(I/F)39と、バッテリ19と、大電力回路21と、省電力回路23と、を含む。
【0023】
CPU11と、EEPROM13と、RAM15と、コーデック27と、エンコーダ/デコーダ35と、シリアルI/F37と、メモリI/F39と、LCD43とは、バス45で接続されており、データの送受信が可能となっている。
【0024】
RAM15は、CPU11の作業領域として用いられる。EEPROM13は、CPU11が実行するプログラム、そのプログラムを実行するためのパラメータ、後述するマスタデータ等とともに、圧縮された音声信号等を不揮発的に記憶する。メモリI/F39は、複数種類のメモリカード41が装着可能である。メモリカード41の種類は、規格の異なるものの他、規格が同じでも製造メーカの異なるもの、記憶容量の異なるものによって異なる。
【0025】
コーデック27には、マイクロホン29、スピーカ31およびヘッドホン端子33が接続される。コーデック27は、マイクロホン29からアナログの音声信号が入力され、スピーカ31およびヘッドホン端子33にアナログの音声信号を出力する。
【0026】
エンコーダ/デコーダ35は、CPU11により制御され、コーデック27から出力される音声信号を符号化し、音データを生成する。また、エンコーダ/デコーダ35は、CPU11により制御され、音データを復号し、音声信号を生成する。
【0027】
CPU11は、コーデック27から出力される音声信号を、エンコーダ/デコーダ35に符号化させ、符号化された音データをEEPROM13またはメモリI/F39に接続されたメモリカード41に記憶する。
【0028】
また、CPU11は、EEPROM13またはメモリI/F39に接続されたメモリカード41に記憶された音データを読み出して、エンコーダ/デコーダ35に復号させ、復号された音声信号をコーデック27にアナログ信号に変換させ、アナログの音声信号を、スピーカ31またはヘッドホン端子33に接続されたヘッドホンに出力する。
【0029】
シリアルI/F37は、シリアル通信可能な装置と接続される。CPU11は、シリアルI/F37を介して、それに接続された装置と通信が可能である。
【0030】
バッテリ19は、マンガン電池またはリチウム電池等の一次電池またはリチウムイオン電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・カドミウム電池等の二次電池である。一次電池、二次電池のいずれであってもよい。バッテリ19は、出力端子がCPU11の端子Tvと接続されており、CPU11は、端子Tvの電圧を、バッテリ19の出力電圧として検出する。
【0031】
大電力回路21および省電力回路23は、バッテリ19から出力される電力の電圧および電流を一定に保つように制御する電源回路である。大電力回路21は、出力電圧が省電力回路23のそれと同じだが、出力可能な電流は、省電力回路23のそれよりも大きい。大電力回路21は、省電力回路23よりも消費電力が大きい。
【0032】
大電力回路21は、入力側がバッテリ19とスイッチSW1を介して接続され、出力側がCPU11を含む機器全体の各部品と接続される。スイッチSW1は、CPU11の端子Ts1と接続され、CPU11により制御される。スイッチSW1が閉じると大電力回路21がバッテリ19と接続され、スイッチSW1が開くと大電力回路21とバッテリ19との接続が切断される。
【0033】
省電力回路23は、入力側がバッテリ19とスイッチSW2を介して接続され、出力側がCPU11を含む機器全体の各部品と接続される。スイッチSW2は、CPU11の端子Ts2と接続され、CPU11により制御され、スイッチSW2が閉じると省電力回路23がバッテリ19と接続され、スイッチSW1が開くと省電力回路23とバッテリ19との接続が切断される。
【0034】
CPU11は、スイッチSW1,SW2のいずれか一方を閉じ、他方を開く。したがって、ICレコーダ1が備える各部品は、バッテリ19に蓄電された電力が、大電力回路21および省電力回路23のいずれか一方から供給される。
【0035】
大電力回路21の出力側および省電力回路23の出力側は、ICレコーダ1が備える各部品に接続される。図2においては、説明のために、メモリI/F39の電源入力端子への接続のみを示している。大電力回路21の出力側および省電力回路23の出力側は、抵抗Rを介してメモリI/F39の電源入力端子に接続される。抵抗Rと並列に電流計25が接続される。電流計25は、CPU11の端子Taと接続され、CPU11により制御される。電流計25は、抵抗Rに流れる電流の値をCPU11に出力する。抵抗Rは、抵抗値を可能な限り小さいくするのが好ましい。
【0036】
なお、ここでは、CPU11がEEPROM13に記憶された電源制御プログラムを実行する場合を例に説明するが、CPU11が実行する電源制御プログラムは、メモリカード41に記憶されてもよい。また、電源制御プログラムを記憶する記録媒体は、メモリカード41に限らず、光ディスク(CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)、などの半導体メモリでもよい。
【0037】
図3は、CPUの機能の概要をEEPROM13に記憶されるデータとともに示す機能ブロック図である。図3を参照して、EEPROM13は、マスタデータ71を記憶する。マスタデータ71は、メモリカードの種類と消費電流値とを関連付けたマスタレコードを含む。マスタデータ71は、メモリカードの種類の数と同じ数のマスタレコードを含む。マスタデータ71には、ICレコーダ1の出荷時に、予め定められたメモリカードの種類に対応するメモリレコードを含む。
【0038】
CPU11は、メモリI/F39に装着されたメモリカードの種類を検出するカード種類検出部51と、メモリI/F39に装着されたメモリカードで消費される電流を検出する消費電流検出部53と、マスタレコードを生成してマスタデータ71に登録する消費電流登録部55と、メモリI/F39に装着されたメモリカードの消費電流値を取得する消費電流取得部57と、大電力回路21および省電力回路23を制御する電源制御部59と、を含む。
【0039】
カード種類検出部51は、メモリI/F39からメモリカード41が挿入されたことの通知を受けると、メモリI/F39を介して、メモリカード41にアクセスし、メモリカード41の予め定められた領域、例えばレジスタに記憶されているカード種類を読み出す。カード種類は、例えば、デバイスコード、メーカーコード等である。カード種類検出部51は、メモリI/F39に装着されたメモリカード41のカード種類を消費電流登録部55および消費電流取得部57に出力する。
【0040】
消費電流登録部55は、カード種類検出部51からカード種類が入力されると、EEPROM13に記憶されているマスタデータ71を検索し、カード種類を含むマスタレコードが記憶されているか否かを判断する。消費電流登録部55は、マスタレコードが登録されていない場合、消費電流検出部53に、検出指示を出力する。
【0041】
消費電流検出部53は、検出指示が入力されることに応じて、予め定められたアクセス処理を実行する。アクセス処理は、メモリカード41の負荷が大きく、消費電流が大きくなる処理であることが望ましい。アクセス処理は、例えば、EEPROM13に予め記憶されているテストデータを、メモリカード41に書き込む処理、書き込んだデータを読み出す処理、および書き込んだデータを消去する処理を含む。消費電流検出部53は、アクセス処理を実行している間、電流計25を制御して、抵抗Rに流れる電流を計測させる。消費電流検出部53は、電流計25から入力される電流値に基づいて、メモリカード41の消費電流値を決定する。メモリカード41の消費電流値は、例えば、アクセス処理を実行している間の電流値の最大値である。また、メモリカード41の消費電流値は、アクセス処理を実行している間の電流値の平均値であってもよい。消費電流検出部53は、メモリカード41の消費電流値を、消費電流登録部55に出力する。
【0042】
消費電流登録部55は、検出指示を出力した後、消費電流検出部53から入力される消費電流値を、カード種類検出部51から入力されるカードの種類と関連付けたマスタレコードを生成し、EEPROM13に記憶されているマスタデータ71に追加して記憶する。
【0043】
消費電流取得部57は、カード種類検出部51からカード種類が入力されると、EEPROM13に記憶されているマスタデータ71を検索し、カード種類を含むマスタレコードを読み出す。そして、読み出したマスタレコードによってカード種類に関連付けられている消費電流値を取得し、取得された消費電流値を電源制御部59に出力する。
【0044】
電源制御部59は、大電力回路21および省電力回路23を制御する。電源制御部59は、通常状態、ここではメモリI/F39にメモリカード41が接続されていない状態においては、第1スイッチSW1を開いて大電力回路21をバッテリ19から切断し、第2スイッチSW2を閉じて省電力回路23をバッテリ19と接続する。換言すれば、通常状態においては、ICレコーダ1は、省電力回路23からバッテリ19に蓄積された電力が出力される。
【0045】
電源制御部59は、消費電流取得部57から入力される消費電流値を予め定められたしきい値Tと比較し、消費電流値がしきい値T以上であれば、第1スイッチSW1を閉じて大電力回路21をバッテリ19と接続し、第2スイッチSW2を開いて省電力回路23をバッテリ19から切断する。これにより、大電力回路21からバッテリ19に蓄積された電力が出力されるので、メモリカード41が消費する電流が大きくなって、ICレコーダ1で消費される電流が増大してもICレコーダ1の全体に電流を流すことができる。このため、消費電流の大きいメモリカード41がICレコーダ1に装着された場合であってもICレコーダ1を継続して動作させることができる。
【0046】
一方、電源制御部59は、消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値Tより小さければ、通常状態と同様に、第1スイッチSW1を開いて大電力回路21をバッテリ19から切断し、第2スイッチSW2を閉じて省電力回路23をバッテリ19と接続する。これにより、消費電力をできるだけ小さくすることができる。
【0047】
さらに、電源制御部59は、消費電流取得部57から入力される消費電流値をしきい値Tと比較して、比較結果に基づいて終端電圧値を変更する。電源制御部59は、通常状態における終端電圧値をEEPROM13に予め記憶された省電力時電圧EV1に設定している。バッテリ19は、蓄電容量が低下するに伴って出力電圧Vが低下する。終端電圧値は、バッテリ19の蓄電容量が低下して、ICレコーダ1を駆動するための電力を出力できなくなる直前におけるバッテリ19の出力電圧である。電源制御部59は、消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値より小さい場合、終端電圧値を省電力時電圧EV1に設定するが、消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値以上の場合、終端電圧値を省電力時電圧EV1よりも大きな大電力時電圧EV2に設定する。大電力時電圧EV2は、EEPROM13に予め記憶されていてもよいし、消費電流取得部57から入力される消費電流値に基づいて算出するようにしてもよい。
【0048】
電源制御部59は、端子Tvでバッテリ19の出力電圧Vを検出し、検出された出力電圧Vが終端電圧値以下になると、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を開いて、大電力回路21および省電力回路23をバッテリ19と接続しないようにする。これにより、バッテリ19の蓄電容量が低下して、バッテリ19がICレコーダ1を駆動するための電力を出力できなくなる前に、ICレコーダ1を停止させることができる。なお、電源制御部59は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を開く前に、LCD43に、「電池を交換してください」等のメッセージを表示するようにしてもよい。これにより、ユーザは、バッテリ19が消耗して、蓄電容量が少なくなったことを知ることができる。
【0049】
図4は、電源制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。電源制御処理は、CPU11が、EEPROM13に記憶された電源制御プログラムを実行することにより、CPU11により実行される処理である。CPU11は、メモリカードがメモリI/F39に装着されたか否かを判断する。メモリI/F39は、メモリカード41が装着されると、装着されたことを示す信号をCPU11に出力するので、CPU11はその信号を検出することによりメモリカード41が装着されたことを検出する。メモリカード41が装着されるまで待機状態となり(ステップS01でNO)、メモリカード41が装着されたならば(ステップS01でYES)、処理をステップS02に進める。
【0050】
ステップS02においては、メモリI/F39を介してメモリカード41にアクセスし、メモリカード41のレジスタに記憶されているデバイスコードを読み出す。そして、デバイスコードを含むマスタレコードが存在するか否かを判断する。具体的には、EEPROM13に記憶されたマスタデータ71を検索し、デバイスコードを含むマスタレコードがマスタデータ71に記憶されているか否かを判断する。マスタレコードが存在するならば処理をステップS04に進めるが、そうでなければ処理をステップS05に進める。
【0051】
ステップS04においては、ステップS03において読み出されたマスタレコードに設定されている消費電流値を取得し、処理をステップS09に進める。一方、ステップS05においては、メモリI/F39を介して、メモリカード41にアクセスし、EEPROM13に予め記憶されているテストデータの書き込み、書き込んだテストデータの読み出しおよび書き込んだテストデータの消去をする。この間、CPU11は、電流計25が出力する電流値を取得する(ステップS06)。ステップS06においては、テストデータの書き込み、読み出しおよび消去が終了するまで継続して電流値を取得する。換言すれば、メモリカード41にテストデータの書き込み、読み出しおよび消去をしている間に電流計25により計測された電流値を取得する。
【0052】
ステップS07においては、消費電流値を決定する。ステップS06において取得された電流値の最大値を、消費電流値に決定する。次のステップS08においては、ステップS02において読み出されたデバイスコードと、ステップS07において決定された消費電流値とを含むマスタレコードを生成し、EEPROM13に記憶されているマスタデータ71に追加し、記憶する。そして、処理をステップS09に進める。
【0053】
ステップS09においては、消費電流値をしきい値Tと比較する。処理がステップS04から進む場合には、ステップS04において取得された消費電流値をしきい値Tと比較し、処理がステップS08から進む場合には、ステップS07において決定された消費電流値をしきい値と比較する。消費電流値がしきい値T以上ならば処理をステップS10に進めるが、そうでなければ処理をステップS13に進める。
【0054】
ステップS10においては、大電力回路21に切り換え、処理をステップS11に進める。具体的には、第1スイッチSW1を閉じて大電力回路21をバッテリ19と接続し、第2スイッチSW2を開いて省電力回路23をバッテリ19から切断する。次のステップS11においては、終端電圧値を、大電力時電圧EV2に設定し、処理をステップS12に進める。ステップS12においては、警告メッセージをLCD43に表示し、処理をステップS15に進める。警告メッセージは、例えば「メモリカードの消費電流が大きすぎます。使用時間をできるだけ短くしてください。」などである。
【0055】
一方、ステップS13においては、省電力回路23に切り換え、処理をステップS14に進める。具体的には、第1スイッチSW1を開いて大電力回路21をバッテリ19から切断し、第2スイッチSW2を閉じて省電力回路23をバッテリ19と接続する。次のステップS14においては、終端電圧値を、省電力時電圧EV1に設定し、処理をステップS15に進める。
【0056】
ステップS15においては、使用可能時間表示処理を実行し、処理を終了する。図5は、使用可能時間表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5を参照して、CPU11は、端子Tvの電圧を検出することにより、バッテリ19の出力電圧Vを検出する(ステップS21)。次のステップS22においては、バッテリ容量を決定する。EEPROM13に、出力電圧Vとバッテリ容量との関係を予め定めた容量テーブルを記憶しており、その容量テーブルをステップS21において検出されたバッテリ19の出力電圧で検索し、バッテリ容量を決定する。
【0057】
図6は、容量テーブルの一例を示す図である。図6を参照して、容量テーブルは、出力電圧Vの項目と、バッテリ容量Qsの項目と、を含む。容量テーブルは、バッテリ19の出力電圧Vgに対してバッテリ容量Qsを関連付ける。例えば、出力電圧Vgが1.5Vの場合、バッテリ容量Qsは600mAhである。
【0058】
図5に戻って、ステップS23においては、図4のステップS04またはステップS07において取得または決定された消費電流値Iaと、ステップS22において決定されたバッテリ容量Qsと、次式(1)とを用いて、使用可能時間Tsを算出する。
【0059】
Ts(h)=Qs(B×(Ia+A)) … (1)
係数Aは、ICレコーダ1が通常状態でICレコーダ1に流れる電流値であり、予め定められた値である。係数Bは、変換効率であり、予め定められた値である。次のステップS24においては、算出された使用可能時間Tsを、LCD43に表示し、処理を電源制御処理に戻す。
【0060】
図7は、ローバッテリ処理の流れの一例を示すフローチャートである。ローバッテリ処理は、CPU11がEEPROM13に記憶された電源制御プログラムを実行することにより、CPU11により実行される処理である。図7を参照して、CPU11は、端子Tvの電圧を検出することにより、バッテリ19の出力電圧Vを検出する(ステップS31)。次のステップS32においては、検出されたバッテリ19の出力電圧Vを終端電圧値と比較する。出力電圧Vが終端電圧値以下ならば処理をステップS33に進めるが、そうでなければステップS33をスキップして処理を終了する。終端電圧値は、図4のステップS11またはステップS14において設定される値である。終端電圧値は、メモリI/F39に装着されたメモリカード41の消費電流値がしきい値T以上の場合に、ステップS11において大電力時電圧EV2に設定され、メモリI/F39に装着されたメモリカード41の消費電流値がしきい値Tより小さい場合に、ステップS14において省電力時電圧EV1に設定される。ステップS33においては、電源をOFFにして処理を終了する。具体的には、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を開いて、大電力回路21および省電力回路23をバッテリ19から切断する。
【0061】
なお、本実施の形態においては、大電力回路21および省電力回路23を備える例を説明したが、大電力回路21を設けることなく省電力回路23のみを備えるようにしてもよい。この場合、電源制御部59は、消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値Tより小さければ、第2スイッチSW2を閉じて省電力回路23をバッテリ19と接続するが、消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値T以上ならば第2スイッチSW2を開いて省電力回路23をバッテリ19から切断する。これにより、消費電流値が所定のしきい値以上のメモリカード41を装着した状態ではICレコーダ10を駆動しないようにして、バッテリ19の蓄電容量低下に伴い、突然ICレコーダ10が駆動を停止するのを防止することができる。
【0062】
以上説明したように本実施の形態におけるICレコーダは、メモリI/F39に装着されたメモリカード41の種類を検出し、検出された種類に対応する消費電流値がマスタデータ71に記憶されていない場合、メモリカード41にアクセスしてテストデータの書込み、読み出しおよび消去するアクセス処理を実行し、アクセス処理が実行されている間に電流計25で検出された電流値をメモリカード41の種類に対応する消費電流値として新たにマスタデータ71に記憶する。このため、消費電流値が不明のメモリカード41が装着された場合に、その消費電流を検出することができる。また、装着されるメモリカード41の消費電流に違いによって電源回路の制御を異ならせるので、メモリカード41の消費電流の違いを電源回路で対応することができる。
【0063】
具体的には、装着されたメモリカード41の種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、省電力回路23をバッテリ19に接続し、消費電流値が所定のしきい値以上の場合、大電力回路をバッテリ19に接続する。このため、消費電流が所定のしきい値以上のメモリカード41が装着される場合に、バッテリ19から供給される電流が不足する状態が発生する確率を低減させることができる。
【0064】
さらに、装着されるメモリカード41の消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、バッテリ19の出力電圧Vが省電力終端電圧EV1以下になると省電力回路23をバッテリ19から切断し、装着されるメモリカード41の消費電流値が所定のしきい値以上の場合、バッテリ19の出力電圧Vが大電力時終端電圧EV2以下になると大電力回路21をバッテリ19から切断する。メモリI/F39に装着されるメモリカード41の消費電流値によって省電力回路23および大電力回路21をバッテリ19から切断するしきい値を変更するので、メモリカード41が装着されてICレコーダ10全体の消費電流が変動する場合であっても、バッテリ19が消耗して必要とされる電流を出力できなくなる前に、ICレコーダ10の電源をOFFにすることができる。
【0065】
さらに、ICレコーダ10が大電力回路21を設けることなく省電力回路23のみを備える場合、電源制御部59は、メモリカード41の消費電流値がしきい値Tより小さければ、第2スイッチSW2を閉じて省電力回路23をバッテリ19と接続するが、メモリカード41の消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値T以上ならば第2スイッチSW2を開いて省電力回路23をバッテリ19から切断する。これにより、消費電流値が所定のしきい値T以上のメモリカード41を装着した状態ではICレコーダ10を駆動しないようにして、バッテリ19の蓄電容量低下に伴い、突然ICレコーダ10が駆動を停止するのを防止することができる。
【0066】
さらに、メモリカード41の消費電流取得部57から入力される消費電流値がしきい値T以上の場合に、警告メッセージをLCD43に表示する。警告メッセージは、例えば「メモリカードの消費電流が大きすぎます。使用時間をできるだけ短くしてください。」などである。このため、メモリカード41を使用することによりバッテリ19の寿命が短くなることをユーザに通知することができる。
【0067】
なお、本実施の形態においてはICレコーダ1について説明したが、図4、図5および図7に示した処理をICレコーダ1に実行させるための電源制御方法、または電源制御方法をICレコーダ1を制御するCPU11に実行させる電源制御プログラムとして発明を捉えることができるのは言うまでもない。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 ICレコーダ、11 CPU、13 EEPROM、15 RAM、17 操作部、19 バッテリ、21 大電力回路、23 省電力回路、25 電流計、27 コーデック、29 マイクロホン、31 スピーカ、33 ヘッドホン端子、35 エンコーダ/デコーダ、37 シリアルI/F、39 メモリI/F、41 メモリカード、43 LCD、45 バス、51 カード種類検出部、53 消費電流検出部、55 消費電流登録部、57 消費電流取得部、59 電源制御部、71 マスタデータ、R 抵抗、SW1,SW2 スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリからの電力で駆動する電子機器であって、
記録媒体の種類それぞれに対応して消費電流値を記憶する記憶手段と、
記録媒体が装着可能なインターフェース手段と、
前記インターフェース手段に装着された記録媒体の種類を検出する種類検出手段と、
前記種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値が記憶されていない場合、前記インターフェース手段に装着された記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行するアクセス処理手段と、
前記記録媒体に前記予め定められたアクセス処理を実行することによって消費される電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段によって検出された電流値に基づいて、前記種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値を前記記憶手段に記憶する記憶制御手段と、
前記バッテリから電力を取り出し、出力する電源回路と、
前記電源回路を制御する電源制御手段と、を備え、
前記電源制御手段は、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値に応じて、前記電源回路に対する制御を異ならせる、電子機器。
【請求項2】
前記電源回路は、第1電源回路および前記第1電源回路よりも高い電流を出力可能な第2電源回路と、を含み、
前記電源制御手段は、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、前記第1電源回路を前記バッテリに接続し、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、前記第2電源回路を前記バッテリに接続する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記バッテリの出力電圧を検出する出力電圧検出手段を、さらに備え、
前記電源制御手段は、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、前記検出された出力電圧が第1終端電圧値以下になると前記電源回路を遮断し、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、前記検出された出力電圧が第1終端電圧値より高い第2終端電圧値以下になると前記電源回路を遮断する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電源制御手段は、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値より小さい場合、前記電源回路に電力を継続して出力させ、前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合、前記電源回路に電力の出力を遮断させる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合に警告する警告手段を、さらに備えた請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
バッテリからの電力で駆動する電子機器であって、
記録媒体の種類それぞれに対応して消費電流値を記憶する記憶手段と、
記録媒体が装着可能なインターフェース手段と、
前記インターフェース手段に装着された記録媒体の種類を検出する種類検出手段と、
前記種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値が記憶されていない場合、前記インターフェース手段に装着された記録媒体に予め定められたアクセス処理を実行するアクセス処理手段と、
前記記録媒体に前記予め定められたアクセス処理を実行することによって消費される電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段によって検出された電流値に基づいて、前記種類検出手段により検出された種類に対応する消費電流値を前記記憶手段に記憶する記憶制御手段と、
前記種類検出手段により検出された種類に対応して記憶された消費電流値が所定のしきい値以上の場合に警告する警告手段と、を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−250574(P2011−250574A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120897(P2010−120897)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】