説明

電子機器およびカメラ

【課題】エネルギーを蓄積する電気部品の配置自由度を高めつつ、落下衝撃時の電気部品の短絡による回路破壊を防止する。
【解決手段】電子機器の落下時の加速度を検出する検出手段(#32)と、エネルギーを蓄積する電気部品の前記エネルギーを消費するエネルギー消費手段(#37)と、前記検出手段の出力に基づいて前記エネルギー消費手段を動作させる制御手段(#33,#36)とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等のエネルギーを蓄積する電気部品を有する電子機器およびカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの落下衝撃(衝突を含む)時に、カメラ内部の局所的部位の破壊を防止するための技術が提案されている(特許文献1)。これによれば、カメラの自然落下を検出した場合、破壊防止を目的とした局所的部位(鏡筒)を機械的に退避(沈胴)させて、カメラが地表面などに落下した時に生ずる衝撃から、局所的部位の破壊を緩和するように構成されている。
【0003】
また、特許文献2には、物体(パソコン)の自然落下を検出した場合に、破壊防止を目的とした局所的部位(ハードディスク)に関わる磁気ヘッドを機械的に退避(格納)させる構成にしている。詳しくは、落下衝撃時に磁気ディスク上で動作している磁気ヘッドによる磁気ディスクの損傷を回避するように構成されている。
【特許文献1】特開平09−61869号公報
【特許文献2】特開2002−8336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、撮影レンズの保護に特化していても、繰り出した鏡筒を筐体内部へ格納するだけでは落下時の衝撃を回避できるわけではない。
(a)衝撃時のエネルギーは物体(カメラ)がすべて吸収している。
(b)落下中に物体内部のエネルギー変化がないため、衝撃度を緩和できるわけではない。
(c)局所的部位を機械的に稼動する退避時間が必要となることから、実際の衝撃までに完全に退避できないこともある。
(d)局所的部位の保護を特化しているため、その駆動回路及び周辺回路の素子破壊防止については記述されていない。
以上のことから、その効果を十分に発揮できるとは限らない。
【0005】
同様に、特許文献2においても、磁気ディスクの保護に特化し、機械的に局所的部位を稼動することにより衝撃からの損傷を防止している。そのため、上記(a)ないし(d)の内容が該当し、その効果を十分に発揮できるとは限らない。
【0006】
したがって、思わぬアクシデントの発生で、カメラが地表面などに落下(手のひらから滑り落ちる、机の上に置いていたが肘にぶつかり机から落ちる)してしまったとする。この場合、カメラ内部に蓄積されたエネルギーにより、カメラを損傷させる可能性がある。例えばストロボ発光用のメインコンデンサが、落下による衝撃により、そのプラス極リード端子がストロボ近傍に配置された他の素子に接触することがある。すると、メインコンデンサに充電されたエネルギーが一瞬のうちにこの素子に放電されてしまうことが起こり得る。ストロボ用のコンデンサに蓄積されるエネルギーは、Cをコンデンサ容量、Vを充電電圧とすると、以下の式(1)
E=C*V/2 ………………………(1)
で表される。通常コンパクト型カメラのコンデンサの容量は、C=80[μF]程度、充電電圧はV=320[V]程度であり、上記式から、E=4.096[J]のエネルギーが蓄積されていることになる。
【0007】
図9(a)に示すように、基板1上にストロボ発光用メインコンデンサC1と、その近傍に耐圧が5VのコンデンサC2が実装されているとする。この場合、図9(b)のように、落下の衝撃によりコンデンサC1の位置がずれることがある。この場合、コンデンサC1のプラス端子がコンデンサC2のプラス端子へ接触(ショート)してしまうと、コンデンサC1のエネルギーがコンデンサC2へ注入されてしまう。しかし、コンデンサC2の耐圧が5[V]であるにもかかわらず、コンデンサC1の充電電圧320[V]が接続されるため、耐圧を超え、コンデンサC2は破壊されることになる。
【0008】
したがって、従来では、カメラの衝撃を考慮し、ストロボ発光用メインコンデンサの近傍には他の素子を配置することは好ましくなく、部品の配置自由度が妨げられていた。すなわち、コンデンサC1の端子から他素子への最短距離D(D<d1:端子のリード長を加味して導く距離)内への部品配置を禁止するしかなかった。
【0009】
(発明の目的)
本発明の目的は、エネルギーを蓄積する電気部品の配置自由度を高めつつ、落下衝撃時の電気部品の短絡による回路破壊を防止することのできる電子機器およびカメラを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、電子機器の落下時の加速度を検出する検出手段と、エネルギーを蓄積する電気部品の前記エネルギーを消費するエネルギー消費手段と、前記検出手段の出力に基づいて前記エネルギー消費手段を動作させる制御手段とを有する電子機器とするものである。
【0011】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、カメラの落下時の加速度を検出する検出手段と、コンデンサのエネルギーを消費するエネルギー消費手段と、前記検出手段の出力に基づいて前記エネルギー消費手段を動作させる制御手段とを有するカメラとするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エネルギーを蓄積する電気部品の配置自由度を高めつつ、落下衝撃時の電気部品の短絡による回路破壊を防止することができる電子機器またはカメラを提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1ないし2に示す通りである。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1に係わるカメラの回路構成を示すブロック図である。図1において、1は光電変換素子であるところのCCD、2はCCD1の出力信号を映像信号に変換するための相関二重サンプリング回路(以下、CDS)である。3はCDS2からのアナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログ・デジタル変換器(以下、A/D変換器)である。4は色信号処理や輝度信号処理など各種信号処理を行うデジタル信号処理回路(以下、DSP)、5はCCD1の水平転送部を駆動するためのCCD水平転送駆動回路(以下、HDr)である。6はCCD1の垂直転送部を駆動するためのCCD垂直転送駆動回路(以下、VDr)、7は基準同期信号を入力し、この基準信号によりCCD1の駆動および信号処理に必要な各種パルスを生成するタイミングジェネレータ(以下、TG)である。8はシステム全体を制御するCPU、9はフォーカス用レンズを駆動するためのレンズ駆動回路、10はフォーカス用レンズ、11は絞りとシャッタを駆動するための絞り駆動回路である。12はCCD1への入射光量を制御するとともに露光時間を制御するための絞り兼シャッタである。
【0015】
13は2段階ストロークで構成されるレリーズスイッチ、14は各種スイッチで構成される操作部材である。15は基準信号発生回路であり、メインクロックおよび水平同期信号(以下、HD)と垂直同期信号(以下、VD)を発生してCPU8およびTG7を動作させる機能と共に時計機能を有する。16は表示装置を駆動するためのLCDドライバ回路(以下、LCDDr)、17は被写体像をモニターするとともに、カメラの諸情報を表示するための例えば液晶表示装置(以下、LCD)である。18はデータを一時的に記憶するためのメモリ回路(以下、RAM)、19は着脱式メモリとデータ送受するためのインターフェース回路(以下、I/F)、20は画像データを保存するための着脱式メモリである。
【0016】
21はフラッシュメモリ回路(以下、FROM)であり、システムプログラムを格納およびカメラのステータスを一時的に記憶し、データ書き込み、読み出し、保持動作が可能である。22は画像データなどの受け渡しを行うデータバスライン、23は音声信号処理を行うオーディオアンプ回路、24は電気信号を音声信号へ変換するスピーカである。25は表示装置となるLED、26は照明装置となるストロボ、27はカメラが受ける加速度を3次元で検知する加速度検出器である。
【0017】
次に、上記の回路構成におけるカメラの動作について説明する。この動作の内容は、プログラムコードとして、FROM21に格納されており、CPU8によって読み出されて実行される。
【0018】
被写体像は撮影レンズ10を通し、絞り兼シャッタ12により光量を調節され、CCD1に結像される。CCD1では光電変換により被写体像を電気信号へ変換し、CCD信号としてCDS2へ出力する。基準信号発生回路15で生成されるメインクロック、HD、VDはTG7へ出力される。TG7では、これらの信号を基準にCCD水平転送パルス、CCD垂直転送パルス、CCDフィールドシフトパルス、電子シャッタパルス、OBクランプパルスを生成する。そして、CCD水平転送パルスはHDr5へ、CCD垂直転送パルス、CCDフィールドシフトパルスおよび電子シャッタパルスはVDr6へ、OBクランプパルスはCDS2へ、それぞれ出力される。VDr6では、TG7から出力されるCCD垂直転送用パルスおよびCCDフィールドシフトパルスを入力する。そして、これらを組み合わせ、CCD1の垂直転送部を十分に駆動できる信号振幅と周波数特性を保持した3値(H(高電位),M(中電位),L(低電位)のレベル)の信号に変換し、CCD1の垂直転送駆動部へ出力する。
【0019】
CCD1ではこれらの信号を受け、フィールドシフトパルスに相当する“H”レベルの信号を入力した時に、CCD1のフォトダイオードに蓄積された電荷を垂直転送部へ出力する。垂直転送部へ出力された電荷は、CCD垂直転送パルスの4相2値(M、Lレベル)駆動により、バケツリレー方式で垂直転送路上を順序正しく水平転送路へと転送される。また、電子シャッタパルスはVDr6でCCD1を十分に駆動できる信号振幅に変換された後にCCD1へ出力され、CCD1での電荷蓄積時間(露光量)を制御する。CCD1は電子シャッタパルスを入力している期間はフォトダイオードの電荷をクリアーし続け、電子シャッタパルスが停止した直後から露光状態となる。露光終了は絞り兼シャッタ12を閉動作し、外光を遮断することにより行われる。
【0020】
HDr5ではTG7から出力されるCCD水平転送パルスを入力し、CCD1の水平転送部を十分に駆動できる信号振幅と周波数特性を保持した信号に変換して、CCD1の水平転送部へ出力する。リセットゲートパルスはTG7から直接CCD1へ出力され、CCD1の出力ゲート部を一定電位に固定して電荷電位変換を行う。CCD1ではこれら水平転送パルスおよびリセットゲートパルス信号を入力することにより、バケツリレー方式により水平転送部の電荷を出力アンプへ転送する。転送された電荷は出力アンプを通して、被写体像をCCD信号としてCDS2へ出力される。
【0021】
CDS2ではCCD信号を入力し、CCD出力信号のフィードスルー部とデータ部とのレベル差から映像信号を生成する。この過程でCCD信号に含まれる低周波雑音を除去することができる。そして、この信号の基準部(CCD1内の遮光されたフォトダイオード部分(以下、OB部)、フォトダイオードが形成されずにダミー信号部分を基準部とみなす場合もある)を新たな直流バイアスに設定し直す(直流再生、以下、クランプ)。そして、可変利得増幅機能により所望の感度が得られるように映像信号を増幅し、A/D変換器3へ出力する。
【0022】
A/D変換器3ではCDS出力の映像信号を入力し、この信号をアナログ信号からデジタル信号(例えば10ビット信号)へと変換し、DSP4へ出力する。A/D変換器3の出力は上記のOB部を常に一定の値(例えばフルレンジ1024LSB中の32LSB)に固定するように設定する。従って、映像信号は32から1023LSBの中で表現されることになる。
【0023】
DSP4ではデジタルに変換された映像信号を入力し、信号処理により輝度信号および色信号を再生する。また、映像信号を利用して露出制御を行うための基準信号、ホワイトバランス制御を行うための基準信号、フォーカス制御を行うための基準信号を生成する。DSP4で処理された画像データは、データバスライン22を通して、メモリ18に一時的に蓄積される。DSP4によりこの画像データはLCD17ヘ表示するためのデータ(一般的にR,G,BまたはY,RY,BYなどの形式)へ変換され、LCDDr16へ出力される。LCDDr16では接続されるLCD17に合致したデータへの変換(一般的にR,G,B)を行うと共に、LCD17を最適に駆動できる信号振幅に変換し、該LCD17へこの信号を出力する。
【0024】
レリーズスイッチ13が1段階押下されると、フォーカス制御および露出制御が行われ、LCDファインダにおいてピントおよび露出が適正にあった被写体像がモニターされて構図が決定される。レリーズスイッチ13がさらに1段階押下されると、静止画像の取得が行われる。静止画像記録時には、デジタルに変換された映像信号から、DSP4において輝度信号および色信号が再生され、このデータがメモリ18に一時的に蓄積される。そして、DSP4においてメモリ18から取り込まれた画像データを可逆的または非可逆的な画像符号化データ(ここでは一般的なJPEGファイル形式、以下、JPEGデータ)へ変換する。その後は、外部インターフェース19を通して、着脱式のメモリ(一般的にCFカードやSDカード)20へJPEGファイルとして画像ファイルが蓄積される。
【0025】
次に、ストロボ26を使った撮影について説明する。
【0026】
操作部材14によりストロボ発光が選択された場合、または、被写体輝度が予め決められた閾値以下であった場合、撮像装置はストロボ26を発光させて撮影を行う。図2に、ストロボ発光時のフローチャートを示す。
【0027】
操作部材14により電源スイッチが投入され、同じく操作部材14により撮影モードが選択された場合に、図2のステップ#1から撮影動作が開始される。
【0028】
まず、ステップ#2では、レリーズスイッチ13が1段階押下(以下、スイッチSW1がON)されるのを待機する。スイッチSW1がONされるとステップ#3へ進み、操作部材14によりストロボ発光が選択されているかを判定する。この結果、ストロボ発光が選択されていなければ後述のステップ#7に進むが、ストロボ発光が選択されていればステップ#4に進む。ステップ#4に進むと、ストロボ発光用のメインコンデンサへ電荷のチャージ(充電動作)を開始する。そして、次のステップ#5にて、充電レベルV1が規定値αまで到達する(V1>α)のを待機する。その後、充電レベルV1が規定値αに到達するとステップ#6へ進み、充電動作を停止させる。
【0029】
ステップ#7では、露出制御を行い、カメラの露光設定を行う。ここではCCD1からの輝度信号Yがあらかじめ決められた所定値(適正露光レベル:Y1)になるように、絞り値Av、シャッタスピードTv(露光時間β)およびカメラの感度Svの設定を行う。次のステップ#8では、輝度信号Yがあらかじめ決められた所定値(適正露光レベル:Y1)になると、以下のアペックス式である式(2)から絶対輝度Bvを求める。
【0030】
Bv=Av+Tv−Sv ………………(2)
この時、上記ステップ#3でストロボ発光が選択されておらず、絶対輝度Bvがあらかじめ決められた閾値εよりも小さいと判定した場合は、ステップ#21へ進む。そして、このステップ#21では、手振れを起こす可能性が生じるために自動的にストロボを発光する制御を行い、続くステップ#4にて、ストロボ発光用のメインコンデンサへ電荷のチャージを開始する。その後は上記したステップ#5→#6→#7→#8を繰り返す。
【0031】
上記ステップ#8にて、絶対輝度Bvがあらかじめ決められた閾値εよりも大きいと判定するとステップ#9へ進み、ここでは被写体へ焦点を合わす制御を行う。具体的には、DSP4で演算されるフォーカス制御を行うための基準信号が、あらかじめ決められた閾値に入るようにフォーカス用レンズを移動させ、被写体へ焦点を合わす焦点制御が行われる。
【0032】
以上で本露光前の撮影準備が終了するが、ステップ#2から#9までは、スイッチSW1のONが継続され続けている状態である。もし途中でスイッチSW1がOFFされると、その時点でステップ#2に戻り、スイッチSW1の状態判定を行うことになる。
【0033】
次のステップ#10では、レリーズスイッチ13が2段階押下(以下、スイッチSW2がON)されるのを待機する。スイッチSW2がONされるとステップ#11へ進み、絞りを上記ステップ#7で算出した実際の絞り値になるように動作させる。そして、次のステップ#12にて、ストロボ26を発光させる制御を行うか否かを判定する。すなわち、操作部材14によりストロボ発光が選択されているか、被写体の絶対輝度が低く、ストロボ発光を行うとカメラが判定しているかを判定する。この結果、ストロボ26を発光させる制御を行う場合はステップ#13に進み、先ず被写体に対してストロボ26の予備発光を行い、次のステップ#14にて、そのときの被写体輝度(ストロボの反射光)を測光し、このときの輝度から本撮影時のストロボ発光量を算出する。
【0034】
次のステップ#15では、露光を開始する。露光はCCD1の電子シャッターによる蓄積電荷の掃き捨てにより開始される。そして、次のステップ#16にて、この露光期間中にストロボ26のストロボ発光灯の本発光が行われ、被写体に適正光量のストロボ光が照射される。続くステップ#17では、露光開始から上記ステップ#7で算出されている露光時間βが経過したか否かを判定し、経過していなければ露光時間βが経過するまで待機する。露光時間βが経過するとステップ#18へ進み、シャッタを閉じ、露光を終了すると共にCCD1から被写体像を読み出す。そして、ステップ#19にて、一連の撮影動作を終了する。
【0035】
一方、上記ステップ#12にてストロボ26を発光させる制御をしない場合はステップ#22へ進み、ここで露光を開始する。その後はステップ#17へ進み、露光開始から露光時間βが経過するまで待機し、露光時間βが経過するとステップ#18へ進み、シャッタを閉じ、露光を終了すると共にCCD1から被写体像を読み出す。そして、ステップ#19にて、一連の撮影動作を終了する。
【0036】
ここで、上記ストロボ26のエネルギーに関して説明する。
【0037】
まず、ストロボ発光用のメインコンデンサを満充電(フル充電ともいう)し、このすべてのエネルギーを使用してストロボ26のストロボ発光灯(閃光放電管または発光ダイオード)を発光(フル発光)させる場合(ケース1)を説明する。このケース1の場合、ストロボ発光許可信号がONするとストロボ26が発光し始め、発光許可信号がOFFするとその発光が停止するように制御される。しかしながら、発光許可信号がONすると、所定の時定数においてストロボ光量が強くなり始め、発光許可信号がOFFすると、同じ時定数によりストロボ光量が徐々に弱くなり、発光が停止する。したがって、フル発光時のエネルギーBは、図3(a)の灰色部分の面積を積分することで近似的に求めることができる。ケース1は暗中において被写体が無限遠にある場合に相当する。
【0038】
次に、ストロボ発光用のメインコンデンサをフル充電するが、全てのエネルギーを使用せずに、一部のエネルギーのみを使用してストロボ発光灯を発光させる場合(ケース2)を説明する。このケース2の場合、発光許可信号のON時間は、ケース1時をt1とし、ケース2時をt2とすると、t1>t2となり、上記したようにONとOFFの時定数はほぼ同じであるため、ストロボ26の発光時間は短く、またストロボ発光強度も小さくなる。このときの発光エネルギーAは、図3(b)の灰色部分の面積を積分することで近似的に求めることができる。ケース2は被写体が至近距離にある場合に相当する。このとき、ケース1においてメインコンデンサに蓄えられるエネルギーBと、ケース2においてストロボ26を発光したときのエネルギーAとの差であるエネルギーCが、メインコンデンサ内に残留していることになる(図3(d)参照)。このエネルギーCは、発光許可信号のON時間t=t3で、ストロボ26を発光したときのエネルギー(図3(c)のケース3における灰色部分の面積を積分したときの値)に相当する。
【0039】
本発明では、カメラが落下したと判定したときに、地表面で衝撃を受ける前に、強制的にストロボ26を発光させることにより、ストロボ発光用メインコンデンサのエネルギーを全て消費させるようにするものである。
【0040】
上記の落下検出時の処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
ステップ#31から処理を開始し、まずステップ#32では、加速度検出器7により常時カメラにかかる加速度を検出する。そして、次のステップ#33にて、カメラが自然落下したか否かを判定する。この判定は、g=9.8m/sの加速度を検出したかどうかで判定する。ここで、自然落下したことを判定するまではステップ#32→#33→#32を繰り返す。
【0042】
一方、ステップ#33にてカメラが自然落下したことを判定するとステップ#34へ進み、ストロボ発光用メインコンデンサの充電中であるかの判定をする。この結果、充電中でなく、充電を完了していれば直ちにステップ#36へ進むが、ストロボ充電中であればステップ#35へ進み、充電回路を停止させてステップ#36へ進む。
【0043】
ステップ#36へ進むと、ストロボ発光用の発光許可信号を強制的にt=t1の期間出力する。図3(a)で説明したが、t1の期間発光許可信号を出力していれば、メインコンデンサが満充電されているときにも、この全てのエネルギーを使用してストロボ26を発光させることが可能である。この発光許可信号の出力により、次のステップ#37にて、ストロボ発光用メインコンデンサのエネルギー全てをストロボ発光灯の発光という形でカメラ外部へ消費することができる。そして、次のステップ#38にてこの落下検出時の処理を終了する。
【0044】
次に、自然落下時の加速度検出について、図5を用いて説明する。
【0045】
図5(a),(b)に示すように、カメラ101が机102の上から、または人103の手103aから地表面104に落ちてしまう場合を想定する。一般的に机102の高さは75cm前後に設定されていることが多く、また成人がカメラ101を手103aに持ったときにも、その高さは75cm前後に位置することが多い。この前提でカメラは75cmから落下するものと設定(仮定)する。
【0046】
物体落下距離は以下の式(3)で表すことができる。
【0047】
y=y+v*t−(g*t)/2 ………………(3)
ここで、t=0時に、物体の置かれていた高さをy[m]、初速度をv[m/s]、物体に掛かる加速度をg(=9.8[m/s])とする。カメラが初速度0[m/s]で0.75[m]落下する場合、この落下に要する時間は上記式(3)から約0.39[s]となる。故意に落下させている訳ではないので、初速度は0[m/s]と仮定した。
【0048】
従って、0.39[s]の間に、破壊防止フローである図4のフローを完了させるように設計する。コンパクトカメラにおいては、前述したように、C=80[μF]前後のストロボ発光用メインコンデンサを使用する場合が多く、全てのエネルギーを使用して発光するには約200[ms]を必要とする。カメラの自由落下は0.39−0.2=0.19[ms]で検出する必要がある。
【0049】
近年、微細な三次元構造体を半導体チップに形成するMEMS(Micro Electro Mechanical System)が開発され、このMEMSにおいて加速度センサが実現されている。この加速度センサは3次元での検出が可能であり、X,Y,Zの3方向で加速度を検出できる。図1に示した加速度検出器27は、この3次元検出可能な加速度センサを使用するものとする。図6に示すように、加速度センサの3方向x,y,zの検出軸と重力方向wとでなす角度を、夫々θx,θy,θzとし、x,y,z軸で検出される加速度を夫々α,β,γとし、x,y,z軸における重力方向に対する割合(ベクトル量)を夫々Xw,Yw,Zwとすると、以下の式(4)〜(6)
Xw=α*cosθx ………………(4)
Yw=β*cosθy ………………(5)
Zw=γ*cosθz ………………(6)
で表せる。これらのベクトルの総和が重力加速度g=9.8m/sに等しくなったとき、カメラが自然落下していると判定することができる。
【0050】
次に、カメラが再生モードに設定されている場合について説明する。
【0051】
カメラの使われ方により変わってくるが、カメラが再生モードになっていても、ストロボ発光用メインコンデンサには充電されている可能性がある。これは撮影時にスイッチSW1を検出し、ストロボ発光用メインコンデンサに満充電されるが、ストロボを発光(スイッチSW2がON)する前にスイッチSW1が解除(OFF)され、再生モードへ移行された場合に相当する。
【0052】
しかしながら、カメラがどのモードに選択されていても、上記したようにストロボ発光許可信号をONすることにより、ストロボを発光することができる。従って、図4のフローチャートを適応することができる。よって、図1の加速度検出器27により常時カメラにかかる加速度を検知し(#32)、カメラの自由落下、すなわちg=9.8m/sの加速度を検出すると、再生時にはストロボ発光用メインコンデンサの充電は停止しているためにステップ#36へ移行し、ストロボ発光用の発光許可信号を強制的にt=t1の期間出力する(#36)。
【0053】
上記したように、t1の期間発光許可信号を出力していれば、メインコンデンサが満充電されているときにも、この全てのエネルギーを使用してストロボを発光させることが可能である。この発光許可信号の出力により、ストロボ発光用メインコンデンサのエネルギー全てを発光という形でカメラ外部へ消費することができる(#37)。
【0054】
以上の実施例1によれば、カメラの落下時の加速度を検出する加速度検出器27と、ストロボ発光用メインコンデンサのエネルギーを光として消費するエネルギー消費手段と、上記加速度検出器27の出力に基づいてカメラが自然落下したことを検出すると、上記エネルギー消費手段を動作させる制御手段とを備えている。なお、上記エネルギー消費手段は、ストロボ発光灯に相当し、上記制御手段は、図4のステップ#33〜#36の処理を行う部分に相当する。
【0055】
したがって、エネルギーを保持した状態となった部品の、落下衝撃に起因する短絡破壊を防止でき、以下の効果を得ることができる。
(A)例えば高電圧で充電されるストロボ用メインコンデンサの実装配置の自由度が上がる。
(B)ストロボ用メインコンデンサおよびその周辺回路を含め、落下衝撃による素子短絡による発煙、発火、さらには感電を防止することが可能となる。
(C)ストロボ用メインコンデンサの短絡によるスパーク音を防止することができる。
(D)カメラの自然落下時のストロボ発光により、該カメラの落下を周囲に知らしめることが可能となる。
【実施例2】
【0056】
上記実施例1では、カメラ内部に蓄積されたエネルギーを光という形で、カメラ外部へ消費する例を示した。これに対し、本発明の実施例2では、熱という形で、エネルギーを消費させるものとする。
【0057】
図7および上記実施例1の説明で使用した各図を使用して、本発明の実施例2におけるエネルギーの消費について説明する。ここでは実施例1と異なる動作部分のみを説明する。なお、カメラの回路構成は、図1と同様であるものとする。この動作の内容は、プログラムコードとして、図1のFROM21に格納されており、同じく図1のCPU8によって読み出されて実行される。
【0058】
カメラには実施例1で説明したように、ストロボ発光用メインコンデンサが内部にあり、また多種多様なコンデンサが使われており、実施例1と同じ原因により破壊破損する可能性のある部品が多々ある。
【0059】
図7に示すように、エネルギーが蓄積されたコンデンサC1に対して、抵抗R1とスイッチSW3が直列に接続された素子群を並列に接続させるように構成する。このときにスイッチSW3がON(端子間短絡)すると、コンデンサC1に蓄積されたエネルギーにより、該コンデンサC1のプラス端子から抵抗R1とスイッチSW3を経由して電流が該コンデンサC1のマイナス端子(GND)へと流れ込む。スイッチSW3の直列抵抗を約0[Ω]とすると、コンデンサC1の充電電圧が全て抵抗R1へ印加されるため、抵抗R1で消費されるエネルギーは以下の式(7)のように表せる。
【0060】
E=V/R1 ………………(7)
このエネルギーは抵抗R1で熱となって消費される。
【0061】
上記実施例1で説明したように、0.2[s]間にほぼ全てのエネルギーを消費する場合、図7の回路構成では、抵抗R1とコンデンサC1で構成される時定数Tにより、抵抗R1を設定する必要がある。時定数3Τを設定すれば、約95%のエネルギーを熱として消費することができる。このときの抵抗R1の定数は以下の式(8)
R1=0.2[s]/(3*C1)=833[Ω] ………………(8)
で算出でき、この数値よりも小さい定数の抵抗を接続する。
【0062】
次に、本発明の実施例2における落下時の処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
ステップ#41から落下時の処理を開始し、まずステップ#42にて、図1の加速度検出器27により常時カメラにかかる加速度を検出する。そして、次のステップ#43にて、カメラが自然落下したかを判定する。この判定は、g=9.8m/sの加速度を検出することで行う。ここで、カメラが自然落下したことを判定するまではステップ#42→#43→#42を繰り返す。
【0064】
その後、ステップ#43にて自然落下したことを判定するとステップ#44へ進み、スイッチSW3をON(端子間短絡)させる。ステップ#44は図4のステップ#36、#37における動作と同じ効果を得るための動作である。これにより、充電されたコンデンサのエネルギーのほぼ全てを熱という形で消費させることができる。そして、次のステップ#45にて、この落下検出のフローチャートを終了する。
【0065】
上記実施例1と同じく、カメラがどのモードに選択されていても、図8の落下検出のフローチャートを実行することが可能である。
【0066】
以上の実施例2によれば、カメラの落下時の加速度を検出する加速度検出器27と、ストロボ発光用メインコンデンサのエネルギーを熱として消費するエネルギー消費手段と、上記加速度検出器27の出力に基づいてカメラが自然落下したことを検出すると、上記エネルギー消費手段を動作させる制御手段とを備えている。なお、上記エネルギー消費手段は、図7の抵抗R1に相当し、上記制御手段は、図8のステップ#42〜#44の処理を行う部分に相当する。
【0067】
したがって、上記実施例1と同様、エネルギーを保持した状態となった部品の、落下衝突、衝撃に起因する短絡破壊を防止でき、以下の効果を得ることができる。
(A)例えば高電圧で充電されるストロボ用メインコンデンサの実装の配置自由度が上がる。
(B)ストロボ用メインコンデンサおよびその周辺回路を含め、落下衝撃による素子短絡による発煙、発火、さらには感電を防止することが可能となる。
(C)ストロボ用メインコンデンサの短絡によるスパーク音を防止することができる。
【0068】
なお、上記実施例1および2において、ストロボ用メインコンデンサに充電されたエネルギーは所定時間以内に光もしくは熱に変換される、詳しくは、地表面に落下するまでに光もしくは熱に変換されるものである。また、上記エネルギーの消費は、例えば、カメラが撮影モードや再生モードであるときに行われるものである。
【0069】
上記の各実施例によれば、カメラのストロボ用メインコンデンサをエネルギー消費の対象部品としているが、その他のコンデンサであっても良い。従って、カメラに限るものではなく、ストロボ装置やその他の電子機器であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の各実施例に係るカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の各実施例に係るカメラの撮影動作を示すフローチャートである。
【図3】図1のカメラに具備されるストロボ発光用コンデンサの充電エネルギーを説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1に係るカメラの自然落下時の動作(エネルギー消費)を示すフローチャートである。
【図5】図1のカメラの落下時について説明するための図である。
【図6】図1のカメラの落下時の加速度を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例2に係るカメラに具備されるエネルギー消費のための回路を示す図である。
【図8】本発明の実施例2に係るカメラの自然落下時の動作(エネルギー消費)を示すフローチャートである。
【図9】カメラの落下衝撃による破壊例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
1 CCD
8 CPU
26 ストロボ
27 加速度検出器
C1 コンデンサ
R1 抵抗
SW3 スイッチ
101 カメラ
102 机
104 地表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の落下時の加速度を検出する検出手段と、
エネルギーを蓄積する電気部品の前記エネルギーを消費するエネルギー消費手段と、
前記検出手段の出力に基づいて前記エネルギー消費手段を動作させる制御手段とを有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記エネルギー消費手段は、前記電気部品に蓄積されたエネルギーを光に変換して消費することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記エネルギー消費手段は、前記電気部品に蓄積されたエネルギーを熱に変換して消費することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出手段の出力に基づいて前記電子機器が自然落下したことを検出すると前記エネルギー消費手段を動作させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
カメラの落下時の加速度を検出する検出手段と、
コンデンサのエネルギーを消費するエネルギー消費手段と、
前記検出手段の出力に基づいてカメラが前記エネルギー消費手段を動作させる制御手段とを有することを特徴とするカメラ。
【請求項6】
前記コンデンサは、ストロボ用メインコンデンサであり、
前記エネルギー消費手段は、ストロボ発光灯であることを特徴とする請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
前記コンデンサは、ストロボ用メインコンデンサであり、
前記エネルギー消費手段は、電気抵抗であることを特徴とする請求項5に記載のカメラ。
【請求項8】
前記制御手段は、前記検出手段の出力に基づいて前記カメラが自然落下したことを検出すると前記エネルギー消費手段を動作させることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−9210(P2008−9210A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180766(P2006−180766)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】