説明

電子機器のキャビネットをインサート成形する方法及び皮革製カバーによって覆われたキャビネットを有する電子機器

【課題】曲面状のキャビネットに、皮革又は合成皮革を皺のできにくいように密着性を保ちながらインサート成形すると共に、柔らかい触感を保つ。
【解決手段】合成皮革本体30とプラスチックシート21とを第1両面テープ43で接着する。プラスチックシート21の裏面側に第2両面テープ44を貼り付けて合成皮革製カバー9を成形する。この合成皮革製カバー9を、その合成皮革本体30が成形面32aに当接するように成形型31に取り付ける。第2両面テープ44側に溶融樹脂を流し込んでインサート成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信機器等の電子機器のキャビネットをインサート成形する方法及び皮革製カバーによって覆われたキャビネットを有する携帯通信機器等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯通信機器、特に携帯電話機は、低年齢層のみならず、高年齢層へも幅広く普及が進んでいる。そして、各メーカは、色々な新しい機能を搭載することは勿論、製品の外観へも新しい工夫を凝らしている。外観の色調もグレイ、白、シルバーに始まり、鮮やかな赤、オレンジ、青、黄等と、各社独特の色調が誕生している。そして、今や皮革又は合成皮革を貼り付けた製品も誕生しつつある。皮革又は合成皮革を貼り付けた製品は、一般にキャビネットの成形時にインサート成形によって形作られる。これは、キャビネット成形時に皮革又は合成皮革を予め金型に取り付けて溶融樹脂を流し、同時に成形されている。
【0003】
特許文献1は、電気機器の操作盤におけるパネルの操作状態を表示する状態表示部や操作機能を表す機能表示部が印刷されている印刷シートを樹脂でインサート成形し、印刷シートの開口部を利用して、艶消しインク層とベタインク層との塗布印刷の位置精度を高め、表示窓との位置のずれを防止している。
【0004】
また、特許文献2では、加飾シートと合成樹脂とのインサート成形方法において、金型の加飾シートのコーナー部分であって絞られる部分と対応する部分に凹部、凸部又は凸条を形成するものが開示されている。
【特許文献1】特開平10−268812号公報
【特許文献2】特開平9−131755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、平面形状の印刷シートをインサート成形するには、その印刷ずれを注意すればよいが、曲面を持つキャビネットに皮革又は合成皮革をインサート成形する場合には、平面状の皮革又は合成皮革を曲面部に貼り付けると、皮革又は合成皮革の余分な肉がはみ出てしまい、成形後に皺が発生して見映えが悪いという問題がある。
【0006】
これを改善するために、前もって皮革又は合成皮革にプレス金型にて曲面を成形しておいても、皮革又は合成皮革は完全に曲面を保持できず、ある程度元に戻ってしまう。この状態でインサート成形を行ってもコーナーの曲面に皺が発生する。
【0007】
一方、特許文献2のインサート成形方法によって上記皺をある程度防ぐことができるが、加飾シートとして皮革の触感を持たせるために凹凸のある革しぼ模様のあるものを用いると、合成樹脂との間に隙間が生じて合成樹脂との密着性が不十分となる場合がある。
【0008】
また、インサート成形の際に加飾シートの革しぼが成形圧力で潰れてしまい、触感が硬いものとなるという問題がある。
【0009】
上述した問題点に鑑み、本発明は、曲面状のキャビネットでも、皮革又は合成皮革を皺のできにくいように密着性を保ちながらインサート成形すると共に、柔らかい触感を保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、皮革又は合成皮革とプラスチックシートとを両面テープで接着した皮革製カバーをインサート成形するようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明では、電子機器のキャビネットをインサート成形する方法を前提とする。
【0012】
そして、皮革又は合成皮革とプラスチックシートとを第1両面テープで接着し、
上記プラスチックシートの裏面側に第2両面テープを貼り付けて皮革製カバーを成形し、
上記皮革製カバーを、その皮革又は合成皮革が成形面に当接するように成形型に取り付け、
上記第2両面テープ側に溶融樹脂を流し込んでインサート成形する構成とする。
【0013】
すなわち、前もって皮革又は合成皮革にプレス金型にて曲面を成形した後、成形型に取り付けても、皮革又は合成皮革は完全に曲面を保持できず、ある程度元に戻ってしまう。この状態でインサート成形を行ってもコーナーの曲面に皺が発生する。しかし、上記の構成によると、予め皮革又は合成皮革とプラスチックシートとを第1両面テープで接着しているので、熱を加えてプレスにより曲面を成形すれば、プラスチックシートが硬化して曲面形状が保持される。このため、曲面部分を有するキャビネットでも皺のできにくいようにインサート成形される。また、溶融樹脂とプラスチックシートとの間に第2両面テープを貼り付けているので、インサート成形時に溶融樹脂とプラスチックシートとが堅固に接着される。さらに、両面テープを厚みのあるものとすることで、クッション性が発揮されるので、柔らかい触感が得られる。
【0014】
第2の発明では、上記第1及び第2両面テープは、不織布の両面に接着剤が含浸されたものとする。
【0015】
上記の構成によると、第1及び第2両面テープに不織布層を設けているので、そのクッション性により、インサート成形時に皮革又は合成皮革の表面が成形圧力によって潰れにくく、皮革製カバーの柔らかい触感が維持される。
【0016】
第3の発明では、上記第1両面テープは、凸凹面に対して接着性が高いもので構成され、
上記第2両面テープは、樹脂に対して接着性が高いもので構成されている。
【0017】
上記の構成によると、第1両面テープによって皮革又は合成皮革とプラスチックシートとの密着性が向上し、第2両面テープによって、プラスチックシートと溶融樹脂との密着性が向上する。
【0018】
第4の発明では、上記第1両面テープとプラスチックシートと第2両面テープとが接着された平面状の皮革又は合成皮革を加熱しながら予めプレス成形して曲面状の皮革製カバーを成形する。
【0019】
上記の構成によると、予め皮革又は合成皮革とプラスチックシートとを接着して皮革製カバーを成形しているので、熱を加えてプレスにより曲面を成形するときに、皺が伸びた後、プラスチックシートが硬化して曲面形状が保持される。このため、曲面部分を有するキャビネットに対しインサート成形した場合でも、曲面部の皺の発生が少なく、また、小さくなるので品質のよい製品を提供できる。
【0020】
第5の発明では、上記プレス成形する際に皮革製カバーに凹部を設け、この凹部の外形に沿って該凹部よりも若干小さく孔を貫通し、
上記凹部の縁を内側に折り曲げるようにして、貫通孔を形成する構成とする。
【0021】
上記の構成によると、貫通孔の端面側の樹脂基材が外観から見えないので、見映えがよく品質のよい製品を提供できる。
【0022】
第6の発明では、放音孔を有するスピーカ放音部を上記皮革製カバーの貫通孔から露出させる構成とする。
【0023】
上記の構成によると、一般的に小さな孔で構成される放音孔を皮革又は合成皮革でなく孔を安定して空けやすい硬い樹脂基材や金属材料等で構成すれば、確実に放音できるので品質を低下させない。
【0024】
第7の発明では、上記スピーカ放音部は、上記皮革又は合成皮革と色調が近似している。
【0025】
上記の構成によると、皮革又は合成皮革の表面と近似する色調にスピーカ放音部を形成することで、皮革又は合成皮革との外観の差異が小さくなり、見映えが向上する。
【0026】
第8の発明では、上記合成皮革は、表面側の革しぼが施されたウレタン層と、裏面側の不織布層とで構成されている。
【0027】
上記の構成によると、不織布層により、ソフトな触感が実現され、ウレタン層を加工することにより、皮革の表面に似せた革しぼが成形可能となる。また、ウレタンは、皮革に比べ、水、湿気や汚れに強いため手入れが容易で、かつ様々な色彩を実現できる。
【0028】
第9の発明では、上記電子機器は、携帯通信機器とする。
【0029】
上記の構成によると、皮革製カバーにより、携帯通信機器は、見映えよく触感もよくなるので、携帯性、商品性等が優れている。
【0030】
第10の発明では、上記携帯通信機器は、携帯電話機とする。
【0031】
上記の構成によると、携帯電話機の外観及び触感が向上する。
【0032】
第11の発明では、皮革又は合成皮革によって覆われたキャビネットを有する電子機器を対象とし、
上記キャビネットは、皮革又は合成皮革とプラスチックシートとが第1両面テープで接着され、プラスチックシートと樹脂基材とが第2両面テープで接着されたインサート成形品とする。
【0033】
すなわち、キャビネットを成形する際に前もって皮革又は合成皮革にプレス金型にて曲面を成形した後、成形型に取り付けても、皮革又は合成皮革は完全に曲面を保持できず、ある程度元に戻ってしまう。この状態でインサート成形を行ってもコーナーの曲面に皺が発生する。しかし、上記の構成によると、予め皮革又は合成皮革とプラスチックシートとを第1両面テープで接着しているので、熱を加えてプレスにより曲面を成形すれば、プラスチックシートが硬化して曲面形状が保持される。このため、皺のできにくいようにインサート成形された曲面部分を有するキャビネットが得られる。また、樹脂基材とプラスチックシートとの間に第2両面テープを貼り付けているので、インサート成形時に樹脂基材とプラスチックシートとが堅固に接着される。さらに、両面テープを厚みのあるものとすることで、クッション性が発揮されるので、柔らかい触感が得られる。
【0034】
第12の発明では、上記第1及び第2両面テープは、不織布の両面に接着剤が含浸されたものとする。
【0035】
上記の構成によると、第1及び第2両面テープに不織布層を設けているので、そのクッション性により、インサート成形時に皮革又は合成皮革の表面が成形圧力によって潰れにくく、皮革製カバーの柔らかい触感が維持される。
【0036】
第13の発明では、上記第1両面テープは、凸凹面に対して接着性が高いもので構成され、
上記第2両面テープは、樹脂に対して接着性が高いもので構成されている。
【0037】
上記の構成によると、第1両面テープによって皮革又は合成皮革とプラスチックシートとの密着性が向上し、第2両面テープによって、プラスチックシートと樹脂基材との密着性が向上する。
【0038】
第14の発明では、上記皮革製カバーからスピーカ放音部が露出している。
【0039】
上記の構成によると、皮革製カバーでキャビネットを覆っていても、スピーカ放音部を皮革又は合成皮革でなく孔を安定して空けやすい硬い樹脂基材や金属材料等で形成することで、確実に開口された孔から放音できる。
【0040】
第15の発明では、上記皮革製カバーからサブ表示部が露出している。
【0041】
上記の構成によると、皮革製カバーの貫通孔からサブ表示部の表示が確認される。
【0042】
第16の発明では、上記皮革製カバーの外周は、装飾用リングで覆われている。
【0043】
上記の構成によると、装飾用リングにより、皮革製カバーと基材との境界線が隠されるので、見映えがよい。
【0044】
第17の発明では、上記合成皮革は、表面側の革しぼが施されたウレタン層と、裏面側の不織布層とで構成されている。
【0045】
上記の構成によると、不織布層により、ソフトな触感が実現され、ウレタン層を加工することにより、革の表面に似せた革しぼが成形可能となる。また、ウレタンは、皮革に比べ、水、湿気や汚れに強いため手入れが容易で、かつ様々な色彩を実現できる。
【0046】
第18の発明では、電子機器は、携帯通信機器とする。
【0047】
上記の構成によると、皮革製カバーにより、携帯通信機器は、見映えよく触感もよくなるので、携帯性、商品性等が優れている。
【0048】
第19の発明では、上記携帯通信機器は、携帯電話機とする。
【0049】
上記の構成によると、携帯電話機の外観及び触感が向上する。
【0050】
第20の発明では、上記キャビネットは、操作部が設けられた面と反対側の面を覆っている。
【0051】
上記の構成によると、携帯電話機の触れる部分でかつ外観上目立つ部分を皮革製カバーで覆っているので、商品性が優れている。
【発明の効果】
【0052】
上記説明したように、本発明によれば、曲面を有するキャビネットに皮革又は合成皮革をインサート成形する場合、プラスチックシートによりコーナー部において、皺の発生を小さくしたり、皺の数を減少させたりすることができるので、見映えが向上すると共に、両面テープにより密着性が保たれるので、剥がれにくい。さらに、柔らかい不織布を備えた両面テープで接着することで、柔らかい触感を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて詳細に説明する。
【0054】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機の閉じた状態を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る携帯電話機の開いた状態を示す斜視図である。
【0055】
図1及び図2に示すように、本実施形態の携帯電話機1は、第1の筐体2と第2の筐体3とを有し、これら第1の筐体2と第2の筐体3とが、ヒンジ部4によって回転可能に結合されている。第1の筐体2の内側(表面側)には、受話部5及び表示部6が設けられている。第1の筐体2の外側(裏側)には、時計表示や通信時の相手の名前を表示するためのサブ表示部7やスピーカ放音部8等が設けられている。第1の筐体2を覆うキャビネットは、表裏分割式となっていて、裏側を覆う裏側キャビネット2aは、図7に示すように、樹脂製の基材20と、この基材20の外表面に貼り付けられた皮革製カバーとしての合成皮革製カバー9とを備えている。
【0056】
上記第2の筐体3の内側には、各種機能の切替や決定をするための機能ボタン11、情報を入力する入力ボタン12、送話部13等が設けられている。機能ボタン11及び入力ボタン12が操作部50を構成している。第2の筐体3の外側には、カメラ部(図示しない)が設けられ、側面側には、充電端子部(図示せず)、音量ボタン15、イヤホンマイク端子カバー16、カード挿入部(図示しない)等が設置されている。
【0057】
上記基材20は、例えば、ABS、AS、PC(ポリカーボネート)等で構成されている。
【0058】
図3に示すように、上記合成皮革製カバー9を構成する合成皮革本体30は、例えば、表面側の平面状ウレタン層41と、裏面側の平面状不織布層42とをローラーで押さえつけながら成形し、ウレタン層41側のローラーに形成された革しぼ用の凹凸によって皮革に似た触感を与えるものとなっている。この合成皮革製カバー9は、天然の動物の皮革で構成してもよいが、品質のばらつきを考えると、合成皮革で構成するのが望ましい。
【0059】
上記合成皮革本体30の不織布層42側には、例えば、ABS、AS、PC等で構成された薄いプラスチックシート21が第1両面テープ43によって接着されている。プラスチックシート21と基材20とは、インサート成形時に第2両面テープ44で接着されている。
【0060】
図9及び図10に示すように、上記第1及び第2両面テープ43,44は、柔軟な不織布43a,44aの両面に接着剤43b,44b(例えば、アクリル系粘着材)が含浸されたものとなっている。第1両面テープ43の接着剤43bは、凸凹面に対して接着性が高いもので構成されている。第2両面テープ44の接着剤44bは、プラスチックシート21や基材20に対して接着性が高いもので構成されている。すなわち、粗面接着性を高めるために不織布43aの厚さ(例えば、0.30mm)は、不織布44aの厚さ(例えば0.17mm)よりも厚くなっている。このことで、不織布層42の凸凹面との間に隙間を生じることなく、接着されている。
【0061】
なお、上記スピーカ放音部8は、成形時に裏側キャビネット2aと一体に形成してもよいが、確実に放音孔を設けるには、樹脂製又は金属製の別部材で構成し、裏側キャビネット2aの裏面側から嵌め込むのが望ましい。
【0062】
図1に示すように、上記合成皮革製カバー9の外形の境界は、装飾用リング10によって覆われ、この装飾用リング10によって合成皮革製カバー9と基材20との境界線が隠されている。
【0063】
図7に示すように、サブ表示部7の表面は、透明カバー26で覆われている。
【0064】
−キャビネットのインサート成形方法−
次に、携帯電話機1の裏側キャビネット2aのインサート成形方法について説明する。
【0065】
図3乃至図6は、第1の筐体2の外観を覆う合成皮革製カバー9の製作の順序を示す図である。
【0066】
まず、図3に示すように、平面状の合成皮革本体30の不織布層42側に第1両面テープ43を貼り付ける。この第1両面テープ43に平面状のプラスチックシート21を接着する。
【0067】
次いで、プラスチックシート21の合成皮革本体30と反対側に第2両面テープ44を貼り付ける。この第2両面テープ44は、インサート成形時に基材20との接着に利用される。第2両面テープ44の表面は、セパレーター(図示せず)で覆っておく。このようにして平面状の合成皮革製カバー9を予め成形しておく。
【0068】
次いで、図4及び図5に示すように、図3の平面状の合成皮革製カバー9をプレス成形機(図示せず)で温度をかけながら、第1の筐体2の曲面形状となるように凹凸を設ける。なお、第2両面テープ44の表面をセパレーターで覆っているので、プレス成形型に合成皮革製カバー9が貼り付くことはない。このとき、サブ表示部7に対応する位置にサブ表示部用凹部18を凹陥し、スピーカ放音部8に対応する位置にスピーカ部用凹部19を凹陥する(X−X線断面図参照)。また、コーナー部23も同時に成形する。このコーナー部23の成形においては、合成皮革本体30のみをプレス成形した場合には、プレス成形機から取り外した後は、殆ど平面近くまで復元してしまい、プレス成形した効果が小さくなってしまうが、プラスチックシート21を一緒にプレス成形することにより、プレス成形型の形のまま保持される。さらに温度を加えてプラスチックシート21を軟化させながら成形しているので、皺が伸び、外観から目立たなくなる。
【0069】
次に、図6に示すように、図5の曲面状の合成皮革製カバー9を、第1の筐体2の形状の外形にカットし、かつ必要な孔抜きをする。ここで、スピーカ放音部8及びサブ表示部7の孔抜きにおいては、サブ表示部用凹部18及びスピーカ部用凹部19の凹部側面よりも内側で凹部に沿って孔抜きをする。このため、その切断面が下側に曲がるように孔抜きされるようにして、サブ表示部孔24及びスピーカ部孔25が形成される(Y−Y線断面図参照)。このことで、孔周辺の切断面は、合成皮革本体30で覆われているため、見映えがよい。
【0070】
次いで、図8に示すように、図5の合成皮革製カバー9を射出成形型31の下型32の成形面32aに合成皮革本体30側が当接するように取り付け、第2両面テープ44のセパレーターを剥がす。この下型32への合成皮革製カバー9の取付は、サブ表示部孔24及びスピーカ部孔25で位置決めされる。そして、上型33を型閉じし、キャビティ34を形成する。このキャビティ34に溶融樹脂を流し込んで射出成形により、インサート成形する。このとき、第2両面テープ44が基材20と密着する。また、第1及び第2両面テープ43,44の不織布43a,44aのクッション性により、成形時の圧力によって、ウレタン層41の革しぼ模様は潰れにくい。これにより、図7に示す第1の筐体2の裏側キャビネット2aが完成する(Z−Z線断面図参照)。
【0071】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態に係る電子機器のキャビネットをインサート成形する方法によると、曲面を有する裏側キャビネット2aに合成皮革本体30をインサート成形する場合、コーナー部23において、皺の発生を小さくしたり、皺の数を減少させたりすることができるので、見映えが向上すると共に、密着性が保たれるので、合成皮革本体30が剥がれにくい。さらに、柔らかい不織布43a,44aを備えた第1及び第2両面テープ43,44で接着することで、合成皮革本体30の表面の柔らかい触感を保つことができる。
【0072】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0073】
すなわち、上記実施形態では、折畳み式携帯電話について、PHS、PDAなどの携帯通信機器でもよい。また、折畳み式に限らず、ストレートタイプの携帯通信機器であってもよい。
【0074】
上記実施形態では、射出成形により裏側キャビネット2aを成形したが、コンプレッション成形によって裏側キャビネット2aを成形してもよい。その場合には、基材としてシリコンを使用することも可能となる。
【0075】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、皮革製カバーによって覆われたキャビネットを有する携帯電話機などの電子機器及びそのキャビネットの成形方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の開いた状態を示す斜視図である。
【図3】(b)が合成皮革製カバーの製作順序における合成皮革本体に第1及び第2両面テープとプラスチックシートとを接着した状態を示す平面図で、(a)がそのX−X線断面図である。
【図4】(b)が合成皮革製カバーの製作順序におけるプレス成形機にて成形した状態を示す平面図で、(a)がその断面図を示す図である。
【図5】プレス成形機にて成形した合成皮革製カバーを示す斜視図である。
【図6】(b)が合成皮革製カバーの製作順序における外形カット及び孔抜きをした状態を示す平面図で、(a)がそのY−Y線断面図である。
【図7】(b)が合成皮革製カバーの製作順序における合成皮革製カバーをインサート成形した状態を示す平面図で、(a)がそのZ−Z線断面図である。
【図8】射出成形型で溶融樹脂を流し込んで裏側キャビネットを成形する様子を示す断面図である。
【図9】第1両面テープの拡大断面図である。
【図10】第2両面テープの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 携帯電話機(電子機器、携帯通信機器)
2a 裏側キャビネット(キャビネット)
7 サブ表示部
8 スピーカ放音部
9 合成皮革製カバー(皮革製カバー)
10 装飾用リング
18 サブ表示部用凹部(凹部)
19 スピーカ部用凹部(凹部)
20 基材(樹脂基材)
21 プラスチックシート
24 サブ表示部孔(貫通孔)
25 スピーカ部孔(貫通孔)
30 合成皮革本体(革又は合成皮革)
31 成形型
32a 成形面
41 ウレタン層
42 不織布層
43 第1両面テープ
43a 不織布
43b 接着剤
44 第2両面テープ
44a 不織布
44b 接着剤
50 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のキャビネットをインサート成形する方法において、
皮革又は合成皮革とプラスチックシートとを第1両面テープで接着し、
上記プラスチックシートの裏面側に第2両面テープを貼り付けて皮革製カバーを成形し、
上記皮革製カバーを、その皮革又は合成皮革が成形面に当接するように成形型に取り付け、
上記第2両面テープ側に溶融樹脂を流し込んでインサート成形することを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
上記第1及び第2両面テープは、不織布の両面に接着剤が含浸されたものであることを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
上記第1両面テープは、凸凹面に対して接着性が高いもので構成され、
上記第2両面テープは、樹脂に対して接着性が高いもので構成されていることを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
上記第1両面テープとプラスチックシートと第2両面テープとが接着された平面状の皮革又は合成皮革を加熱しながら予めプレス成形して曲面状の皮革製カバーを成形することを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
上記プレス成形する際に皮革製カバーに凹部を設け、この凹部の外形に沿って該凹部よりも若干小さく孔を貫通し、
上記凹部の縁を内側に折り曲げるようにして、貫通孔を形成することを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
放音孔を有するスピーカ放音部を上記皮革製カバーの貫通孔から露出させることを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
上記スピーカ放音部は、上記皮革又は合成皮革と色調が近似していることを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法において、
上記合成皮革は、表面側の革しぼが施されたウレタン層と、裏面側の不織布層とで構成されていることを特徴とする電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項9】
上記電子機器は、携帯通信機器であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項10】
上記携帯通信機器は、携帯電話機であることを特徴とする請求項9に記載の電子機器のキャビネットのインサート成形方法。
【請求項11】
皮革又は合成皮革によって覆われたキャビネットを有する電子機器であって、
上記キャビネットは、皮革又は合成皮革とプラスチックシートとが第1両面テープで接着され、プラスチックシートと樹脂基材とが第2両面テープで接着されたインサート成形品であることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項11に記載の電子機器において、
上記第1及び第2両面テープは、不織布の両面に接着剤が含浸されたものであることを特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の電子機器において、
上記第1両面テープは、凸凹面に対して接着性が高いもので構成され、
上記第2両面テープは、樹脂に対して接着性が高いもので構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記皮革製カバーからスピーカ放音部が露出していることを特徴とする電子機器。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記皮革製カバーからサブ表示部が露出していることを特徴とする電子機器。
【請求項16】
請求項11乃至15のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記皮革製カバーの外周は、装飾用リングで覆われていることを特徴とする電子機器。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれか1つに記載の電子機器において、
上記合成皮革は、表面側の革しぼが施されたウレタン層と、裏面側の不織布層とで構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項18】
請求項11乃至17のいずれか1つに記載の電子機器において、
携帯通信機器であることを特徴とする電子機器。
【請求項19】
請求項18に記載の電子機器において、
携帯電話機であることを特徴とする電子機器。
【請求項20】
請求項19に記載の電子機器において、
上記キャビネットは、操作部が設けられた面と反対側の面を覆っていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−176105(P2007−176105A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379950(P2005−379950)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(591257513)株式会社フクダコーポレーション (17)
【Fターム(参考)】