説明

電子機器のフロントパネル

【課題】製造容易であって、且つデザイン上の自由度の高い電子機器のフロントパネルを提供する。
【解決手段】樹脂成形品で構成した単一のパネルステイ4と、パネルステイ4の前面に、パネルステイ4を覆うように設けたアルミ押出し成形品で構成した装飾パネル5と、を備えた電子機器のフロントパネルであって、装飾パネル5は、パネルステイ4の左右中間部において、相互の接合部を重合させて配置した右装飾パネル5Aおよび左装飾パネル5Bで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルステイとパネルステイを覆うように設けた装飾パネルとから成る電子機器のフロントパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、電子機器のフロントパネルとして、樹脂製のパネルステイにアルミニウム製の装飾パネルを取り付けたものが、知られている(例えば、特許文献1)。
このパネルステイは、樹脂の射出成形品で構成され、また装飾パネルはアルミニウムのプレス成形品で構成されており、装飾パネルに形成した複数の取付片(リブ)により、装飾パネルがパネルステイに固定されている。
【特許文献1】特開2001−358475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような、従来のフロントパネルでは、その装飾パネルがアルミニウムのプレス成形品であるため、製造は容易であるが、材質に基づく脆性により凹凸等の形状に制約が生じ、デザインの自由度が損なわれる問題があった。
【0004】
本発明は、製造容易であって、且つデザイン上の自由度の高い電子機器のフロントパネルを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子機器のフロントパネルは、単一のパネルステイと、パネルステイの前面に、パネルステイを覆うように設けた装飾パネルと、を備え、装飾パネルは、相互の接合部を重合させて配置した複数の分割装飾パネルで構成されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、複数の分割装飾パネルを個々に製造し、これをパネルステイに組み込むことで、装飾パネルが構成される。このため、単体としての装飾パネルが要求される製造上の制約が緩和され、個々の分割装飾パネルを簡単に製造することができ、装飾パネル全体としも簡単に製造することができる。また、分割装飾パネルの組み合わせにより、デザインの自由度を格段に向上させることができる。しかも、複数の分割装飾パネルは、相互の接合部を重合させて配置するようにしているため、接合部の意匠性が損なわれることがない。なお、複数の分割装飾パネルは、装飾パネルの長辺方向を分割したものであることが、好ましい。
【0007】
この場合、複数の分割装飾パネルは、装飾パネルの長辺方向を複数に分割したものであり、各分割装飾パネルは、短辺方向に押し出す押出し成形により形成されていることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、押出し成形において大型の金型を用いることなく、デザイン上の自由度の高い装飾パネルを簡単に製造することができる。
【0009】
この場合、各接合部には、櫛歯状の取付片が形成され、相互の接合部は、取付片同士をかみ合わせた状態で、パネルステイを貫通して各取付片に螺合したビスにより、パネルステイにそれぞれ固定されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、相互の接合部を重合した状態で、隣接する分割装飾パネル同士をパネルステイに簡単に取り付けることができる。また、相互の接合部の取付片を、別々にパネルステイに固定することができるため、各接合部をパネルステイに強固に固定することができると共に、前後外側の接合部により内側の接合部をパネルステイ側に引き付けるような、固定形態を容易にとることができる。
【0011】
この場合、相互の接合部において、一方の接合部には重ね代の端に段部が形成され、他方の接合部は外端を前記段部に突き当てて重合されていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、隣接する2枚の分割装飾パネルの境界部分に、目立つような空きや筋状の光漏れ等が発生することがなく、相互の接合部を一体性を感じさせるすっきりしたデザインに仕上げることができる。
【0013】
この場合、装飾パネルは、左右の2枚の分割装飾パネルで構成され、一方の分割装飾パネルに対し他方の分割装飾パネルは、前方に突出していることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、立体的に特異なフォルムを有する装飾パネルを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の電子機器のフロントパネルを、AV機器のフロントパネルに適用した場合について説明する。このAV機器は、例えば2層分の記録領域を有するスーパーオーディオCD(Super Audio CD)を再生するSACDプレイヤーであり、そのフロントパネルは、右半部に対し左半部が突出した特異なフォルムを有している。
【0016】
図1および2に示すように、このAV機器1は、筐体2の内部に再生装置を内蔵すると共に、筐体2の前面にディスプレイ、電源スイッチ、操作ボタン、ランプ、CDの投入口等を配置したフロントパネル3を有している。フロントパネル3は、筐体2の前面に固定した横に長い方形のパネルステイ4と、パネルステイ4の前面にこれを覆うように取り付けた装飾パネル5とで構成されている。上記のディスプレイや電源スイッチ等は、フロントステイ4の前面に取り付けられており、これらの部品は、装飾パネル5に形成した複数の開口部を挿通し、装飾パネル5の前面に突出するように配設されている。そして、装飾パネル5は、左装飾パネル(分割装飾パネル)5Aと右装飾パネル(分割装飾パネル)5Bとの2分割に構成されており、相互の接合部において、左装飾パネル5Aが前に右装飾パネル5Bが後に位置して、重ねるように配設されている。
【0017】
パネルステイ4は樹脂の成形品であり、フロントパネル3のフォルムに倣って、右半部に対し左半部が前方に突出した形状を有している。パネルステイ4の後端部には、スナップイン形式の複数の固定片11が突設されており、この複数の固定片11によりパネルステイ4が筐体2の前部に固定されている。パネルステイ4の左右中間部には、左装飾パネル5Aをビス止めするための2つ方形溝12,12、および各方形溝12の溝底にそれぞれ形成した2つの第1貫通孔13,13が、それぞれ縦に並ぶように形成されている。同様に、パネルステイ4の左右中間部には、2つ方形溝12,12の左隣に位置して、右装飾パネル5Bをビス止めするための2つの第2貫通孔14,14、および2つの第2貫通孔14,14の中間に配設した1つの位置決め突起15が、縦に並ぶように形成されている。
【0018】
図2および図3に示すように、右装飾パネル5Bは、前面に露出して右装飾パネル5Bの主体を為す右パネル本体21と、右パネル本体21の右端部から延在し、右装飾パネル5Bをパネルステイ4の側端面に取り付けるための側部取付片22と、右パネル本体21の左端部に設けられ、左装飾パネル5Aとの重合部分となる重ね代部23(接合部)と、で一体に形成されている。この場合、右装飾パネル5Bは、上下方向に押し出したアルミ押出し成形による成形品であり、複数の開口部や切欠き部等は、成形後の右装飾パネル5Bをプレス等で打ち抜いて形成されている。右パネル本体21は、その右端部を除いて平板状に形成され、右端部がパネルステイ4の側端面に回り込むように湾曲形状に形成されている。側部取付片22は、右パネル本体21の内側から後方に延在しており、上下中間には切欠き部が形成されている。
【0019】
重ね代部23は、段部25を存して右パネル本体21から左方に延在し、右装飾パネル5Bをパネルステイ4の中間部に取り付けるための上下2つの取付舌片(取付片)26,26と、2つの取付舌片26,26の中間に配設した位置決め舌片27と、を有している。この2つの取付舌片26,26と位置決め舌片27とは、上下方向に適宜間隙を存して櫛歯状に形成されている。段部25は右装飾パネル5Bの表側に形成されおり、段部25を境にして、重ね代部23は薄肉に右パネル本体21は厚肉に形成されている。
【0020】
2つの取付舌片26,26には、上記の2つの第2貫通孔14,14に対応するビスホール28がそれぞれ形成され、位置決め舌片27には上記の位置決め突起15に対応する位置決め孔29が形成されている。位置決め孔29をパネルステイ4の位置決め突起15に嵌め込んで、両取付舌片(両ビスホール28,28)26,26をパネルステイ4の第2貫通孔14に位置合わせしておいて、パネルステイ4の裏側から各ビスホール28に固定ビス(タッピングビス)30をねじ込むことにより、右装飾パネル5Bの左端部がパネルステイ4に固定される(図4(b)参照)。
【0021】
同様に、左装飾パネル5Aは、右装飾パネル5Bに比して前方に突出しており、前面に露出して左装飾パネル5Aの主体を為す左パネル本体31と、左パネル本体31の左端部から延在し、左装飾パネル5Aをパネルステイ4の側端面に取り付けるための側部取付片32と、左パネル本体31の右端部に設けられ、右装飾パネル5Bとの重合部分となる重合部33(接合部)と、で一体に形成されている。この場合も、左装飾パネル5Aは、上下方向に押し出したアルミ押出し成形による成形品であり、複数の開口部や切欠き部等は、成形後の左装飾パネル5Aをプレス等で打ち抜いて形成されている。左パネル本体31は、両端部を除いて平板状に形成され、左端部がパネルステイ4の側端面に回り込むように湾曲形状に形成されると共に、右端部が右装飾パネル5Bに向かって湾曲形状に形成されている。側部取付片32は、左パネル本体31の内側から後方に延在しており、上下中間には切欠き部(図示省略)が形成されている。
【0022】
重合部33は、左パネル本体31の内側から屈曲して右方に延在し、左装飾パネル5Aをパネルステイ4の中間部に取り付けるための上下2つのL字取付片(取付片)35,35を有している。この上下2つのL字取付片35,35も、上下に間隙を存して櫛歯状に形成されており、詳細は後述するが、左装飾パネル5Aを装着するときには、この両L字取付片35,35と、上記の両取付舌片26,26および位置決め舌片27とが相互に噛み合うように配設される。2つのL字取付片35,35は、それぞれ左パネル本体31の右端手前から「L」字状に延在しており、この各L字取付片35,35には、上記の2つの第1貫通孔13,13に対応するビスホール36,36がそれぞれ形成されている。
【0023】
両L字取付片35,35をパネルステイ4の両方形溝12,12に嵌め込むようにして、両L取付片(両ビスホール36,36)35,35をパネルステイ4の第1貫通孔13に位置合わせしておいて、パネルステイ4の裏側から各ビスホール36に固定ビス(タッピングビス)37をねじ込むことにより、左装飾パネル5Aの右端部がパネルステイ4に固定される(図4(b)参照)。このとき、左装飾パネル5Aの端部が上記の段部25に突き当てられるようになっている(図5参照)。この場合、左パネル本体31の右端は、上記の段部25に合わせて形状加工されている。すなわち、左パネル本体31の右端の肉厚は、段部25の段差寸法と同一に加工され、その内側は重ね代部23に接触するように加工されている(図5参照)。これにより、段部25に突き当てた左パネル本体31の右端と右パネル本体21の左端との間に段差の生じない接合形態となっている。
【0024】
ここで、図3ないし図5を参照して、フロントパネル3の組立て方法について簡単に説明する。先ず、パネルステイ4の右半部に対し、前方から右装飾パネル5Bを装着する。このとき、パネルステイ4の位置決め突起15に右装飾パネル5Bの位置決め孔29を嵌め入れ、且つ側部取付片22の切欠き部分をパネルステイ4の凸部に合わせ込む。ここで、パネルステイ4の裏側から2つの取付舌片26,26および側部取付片22をビス止めする(図3(b)参照)。次に、パネルステイ4の左半部に対し、前方から左装飾パネル5Aを装着する。このとき、パネルステイ4の2つの取付舌片26,26および位置決め舌片27に対し、左装飾パネル5Aの2つのL字取付片35,35を噛み合わせるようにし、両L字取付片35,35を両方形溝12,12に嵌め入れ、且つ側部取付片32の切欠き部分をパネルステイ4の凸部に合わせ込む。ここで、左装飾パネル(左パネル本体31)5Aの右端を右装飾パネル5Bの段部25に突き当てておいて(図5参照)、パネルステイ4の裏側から2つのL字取付片35,35および側部取付片32をビス止めする。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、アルミ押出し成形により成形される装飾パネル5を、略中間位置で2分割するようにしているため、成形金型(ダイス型)を単純な形状に且つ小型化することができる。これにより、金型のコストダウンを達成することができると共に、装飾パネル5のフォルムを斬新なものとすることができ、装飾パネル5の意匠性を向上させることができる。すなわち、装飾パネル5を2分割とすることにより、左半部を突出させた斬新な意匠の装飾パネル5を、低コストで簡単に形成することができる。また、左装飾パネル5Aと右装飾パネル5Bとの相互の接合部を、段部25を介して隙間の生じないように重合させるようにしているため、2分割構造であっても、一体感を奏し接合部の意匠性が損なわれることがない。
【0026】
なお、本実施形態では、左装飾パネルと右装飾パネルとを略同じ大きさに2分割にしたが、一方を大きく他方を小さく形成してもよい。また、装飾パネルを3枚以上の複数分割としてもよい。さらに、本発明のフロントパネルは、AV機器のフロントパネル(装飾パネル)に限らず、各種電子機器の装飾パネルに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る銘板を取り付けたAV機器の全体斜視図である。
【図2】AV機器のフロントパネルの分解斜視図である。
【図3】右装飾パネルのパネルステイへの取付形態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図4】左装飾パネルのパネルステイへの取付形態を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図5】左装飾パネルおよび右装飾パネルの接合部分の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 AV機器 3 フロントパネル
4 パネルステイ 5 装飾パネル
5A 左装飾パネル 5B 右装飾パネル
13 第1貫通孔 14 第2貫通孔
21 右パネル本体 23 重ね代部
25 段部 26 取付舌片
28 ビスホール 30 固定ビス
31 左パネル本体 33 重合部
35 L字取付片 36 ビスホール
37 固定ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のパネルステイと、
前記パネルステイの前面に、前記パネルステイを覆うように設けた装飾パネルと、を備え、
前記装飾パネルは、相互の接合部を重合させて配置した複数の分割装飾パネルで構成されていることを特徴とする電子機器のフロントパネル。
【請求項2】
前記複数の分割装飾パネルは、前記装飾パネルの長辺方向を複数に分割したものであり、
前記各分割装飾パネルは、短辺方向に押し出す押出し成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のフロントパネル。
【請求項3】
前記各接合部には、櫛歯状の取付片が形成され、
前記相互の接合部は、前記取付片同士をかみ合わせた状態で、前記パネルステイを貫通して前記各取付片に螺合したビスにより、前記パネルステイにそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のフロントパネル。
【請求項4】
前記相互の接合部において、一方の接合部には重ね代の端に段部が形成され、他方の接合部は外端を前記段部に突き当てて重合されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のフロントパネル。
【請求項5】
前記装飾パネルは、左右の2枚の分割装飾パネルで構成され、
一方の前記分割装飾パネルに対し他方の前記分割装飾パネルは、前方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のフロントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−123650(P2008−123650A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309665(P2006−309665)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】