説明

電子機器の冷却システム

【課題】 ラックに格納された複数の電子機器を発熱量に応じた流量の冷却液で効率よく冷却する。
【解決手段】 サーバ冷却システム1は、複数のサーバ3の外面にそれぞれ冷却ポンプ4を備え、冷却ポンプ4により冷却液をサーバ3の発熱部に供給する。各サーバ3の発熱温度は温度センサ5により個別に検出され、制御装置6が温度センサ5から入力した温度情報に基づいて冷却ポンプ4を制御する。制御装置6はサーバ3と一緒にラック2の内部に格納されている。制御装置6の外面には、温度センサ5が接続される入力端子28と、冷却ポンプ4、循環ポンプ24、冷却器26が接続される出力端子29と、遠隔監視装置34に接続されるネットワーク端子30とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック内に格納された電子機器を冷却するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバラック内の複数のサーバを空調機によって冷却するシステムが知られている。例えば、図4に示すように、特許文献1に記載された冷却システム51は、サーバラック52内に複数の空調機53を格納し、各空調機53に複数のサーバ54を割り当て、制御装置55がサーバ54の温度に基づいて空調機53の運転を制御するように構成されている。また、制御装置55は、空調機53の能力不足を判定した場合に、データセンター等の室内に設備された大型空調機の能力を増強するための制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−64253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、空冷単独の冷却方式は効率が低いため、従来の冷却システム51によると、一つのサーバラック52に複数の空調機53を設置する必要があり、設備費が高くついた。また、空調機53を室内の大型空調機と協調制御する必要もあり、システム51が複雑で大規模になるという問題点もあった。特に、一台の空調機53で複数のサーバ54を冷却する構成によると、発熱量の大きなサーバ54を充分に冷却できなかったり、発熱量が少ないサーバ54を無駄に冷却したりするなど、個々のサーバ54を的確に制御することができないという不都合があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ラック内部に格納された複数の電子機器を発熱量に応じた流量の冷却液で効率よく冷却できるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような冷却システムを提供する。
(1)ラック内部に格納された複数の電子機器に冷却液を別々に供給する流体アクチュエータと、電子機器の発熱温度を個別に検出する温度センサと、温度センサから入力した温度情報に基づいて流体アクチュエータを制御する制御装置とを備えたことを特徴とする冷却システム。
【0007】
(2)流体アクチュエータが冷却液を電子機器の発熱部に圧送するポンプを含むことを特徴とする(1)に記載の冷却システム。
(3)流体アクチュエータが電子機器の発熱部に接続された冷却液の供給配管を開閉する電磁バルブを含むことを特徴とする(1)に記載の冷却システム。
(4)電子機器の発熱部を送風により冷却するファンを備え、制御装置が温度センサから入力した温度情報に基づいて流体アクチュエータとファンを協調制御することを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の冷却システム。
【0008】
(5)制御装置を電子機器と共にラック内部に格納し、制御装置の外面に流体アクチュエータおよび温度センサの接続端子を設けたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載の冷却システム。
(6)制御装置を電子機器と共にラック内部に格納し、複数のラックの制御装置を通信線で遠隔監視装置に接続したことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一つに記載の冷却システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷却システムによれば、ラック内部に格納された複数の電子機器にそれぞれ流体アクチュエータと温度センサとを設けたので、発熱量に応じた流量の冷却液によって電子機器を効率よく冷却できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すサーバ冷却システムの概略図である。
【図2】サーバごとに設けられた冷却機構を示す斜視図である。
【図3】サーバと制御装置をラックに格納した形態を示す斜視図である。
【図4】従来のサーバ冷却システムを示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すサーバ冷却システム1では、サーバラック2の内部に複数台のサーバ3が上下に規定の間隔をあけて格納されている。各サーバ3には、内部の発熱部に冷却液を供給する流体アクチュエータとしての冷却ポンプ4と、発熱部の温度をサーバ3ごとに検出する温度センサ5とが設けられている。そして、ラック2の最上部に制御装置6がサーバ3と一緒に格納され、温度センサ5から入力した温度情報に基づいて冷却ポンプ4を制御するようになっている。
【0012】
図2に示すように、冷却ポンプ4はサーバ3の筺体8の外面(例えば背面)に設置されている。筺体8の内部には、CPUやLSI等の発熱部9と、発熱部9を送風により冷却するファン10と、メモリや電源ユニットを含む各種の電子部品11とが配設されている。発熱部9にはジャケット12が装着され、その外面に温度センサ5が装着されている。ジャケット12の内部には冷却液通路13が形成され、通路13の上流端が給液配管14で冷却ポンプ4の吐出口に接続され、下流端が排液配管15で排出口16に接続されている。
【0013】
冷却ポンプ4の吸込口は逆止弁19を介して供給配管20に接続され、排出口16が回収配管21に接続されている。配管20,21は、図3に示すように、ラック2内の供給ダクト22と回収ダクト23に接続され、供給ダクト22が循環ポンプ24に接続され、回収ダクト23がタンク25に接続されている。タンク25には冷却器26が付設され、冷却器26から低温冷却液Cが循環ポンプ24により供給ダクト22、供給配管20を介してサーバ3に供給され、サーバ3を通過した後の高温冷却液Cが回収配管21、回収ダクト23を介してタンク25に還流する。
【0014】
図1に示すように、制御装置6の外面(例えば背面)には、入力端子28、出力端子29、ネットワーク端子30が配設されている。入力端子28は信号線31で温度センサ5に接続され、発熱部9の温度情報が制御装置6に入力される。出力端子29は制御線32で冷却ポンプ4、ファン10、循環ポンプ24、冷却器26に接続され、制御装置6がこれらの機器に駆動/停止信号を出力する。ネットワーク端子30は有線または無線のLAN配線、公衆電話回線等の通信線33で遠隔監視装置34に接続され、遠隔監視装置34がデータセンター内に設置されたすべてのサーバ冷却システム1をラック単位で監視する。なお、遠隔監視装置34としてパソコンを使用し、遠隔地から専用線またはインターネット経由でサーバ冷却システム1を監視してもよい。
【0015】
サーバラック2では、常時、制御装置6が温度センサ5からの信号に基づいてサーバ3の温度状態を監視している。サーバ3の稼動に伴い、温度センサ5の出力が閾値を超えると、制御装置6はこのサーバ3の冷却ポンプ4とファン10を協調制御する。ポンプ4の駆動により、冷却液Cが筺体8の外部から給液配管14を通ってジャケット12に供給され、冷却液Cとの熱交換により発熱部9が冷却される。そして、ジャケット12を通過した冷却液Cが排液配管15を通り排出口16より筺体8の外部に排出される。なお、冷却ポンプ4の駆動中は、ファン10を停止または回転数を落とす制御を行うことで、節電効果を期待することもできる。
【0016】
したがって、この実施形態の冷却システム1によれば、発熱量が多いサーバ3のみ冷却ポンプ4を駆動し、発熱量が少ないサーバ3ではポンプ4を停止状態に保持しておくことができる。このため、多数のサーバラック2が設置された大規模データセンターにおいて、電力利用効率の高い冷却運転を行うことができる。また、制御装置6をサーバ3と共にラック2に格納し、制御装置6の外面に冷却ポンプ4と温度センサ5の接続端子28,29を設けたので、信号線31や制御線32をラック2の外部に整然と配線することもできる。
【0017】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図2に示す冷却ポンプ4にかえ、流体アクチュエータとして電磁バルブを使用し、電磁バルブによって冷却液Cの供給配管20を開閉することもできる。また、図3に示すタンク25を複数のサーバラック2で共用してもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 冷却システム
2 サーバラック
3 サーバ
4 冷却ポンプ
5 温度センサ
6 制御装置
9 発熱部
12 ジャケット
24 循環ポンプ
25 タンク
26 冷却器
28 入力端子
29 出力端子
30 ネットワーク端子
C 冷却液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック内部に格納された複数の電子機器に冷却液を別々に供給する流体アクチュエータと、前記電子機器の発熱温度を個別に検出する温度センサと、前記温度センサから入力した温度情報に基づいて流体アクチュエータを制御する制御装置とを備えたことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記流体アクチュエータが冷却液を電子機器の発熱部に圧送するポンプを含む請求項1記載の冷却システム。
【請求項3】
前記流体アクチュエータが電子機器の発熱部に接続された冷却液の供給配管を開閉する電磁バルブを含む請求項1記載の冷却システム。
【請求項4】
前記電子機器の発熱部を送風により冷却する空冷ファンを備え、前記制御装置が温度センサから入力した温度情報に基づいて流体アクチュエータと空冷ファンとを協調制御する請求項1、2又は3記載の冷却システム。
【請求項5】
前記制御装置を電子機器と共にラック内部に格納し、制御装置の外面に流体アクチュエータおよび温度センサの接続端子を設けた請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記制御装置を電子機器と共にラック内部に格納し、複数のラックの制御装置を通信線で遠隔監視装置に接続した請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷却システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate