説明

電子機器の取付構造

【課題】既設の取付開口部に美観を損ねることなく新たな電子機器を取り付けることができる電子機器の取構造を得る。
【解決手段】本発明の電子機器の取付構造は、周縁にフランジ部5が形成され、フランジ部5の四隅にねじ挿通孔7が形成されてなる箱型の筐体3を備えた電子機器を、壁材9に形成した開口部11に埋め込んで取り付ける電子機器の取付構造であって、フランジ部5の一辺は、ねじ挿通孔7を介して木ねじ15をねじ込むことにより、木枠13に固定され、フランジ部5の他辺は、壁材9の背面に配置された平板状の取付金具17と共に壁材9を挟持することにより固定され、取付金具17は、フランジ部5に形成されたねじ挿通孔7に対向する位置にねじ孔19が設けられ、取付金具17とフランジ部5の他辺とは、ねじ挿通孔7を介してねじ孔19にねじ込まれた固定ねじ21によって締結されて壁材9を挟持していることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンなどの電子機器を壁面に取り付ける電子機器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えばインターホンの壁面への取付構造には大きく分けてインターホン本体を壁面上に配設する露出型と、インターホン本体を壁面に埋め込む埋込型の2つの方法がある。さらに埋込型のインターホンの取付構造には2つの方法がある。その一つは、専用もしくは汎用の埋込ボックスを石膏ボードなどの壁内に固定し、該埋込みボックスにインターホンの本体枠をねじ固定して取り付けるものである。他の一つは、壁面内に配設された木枠にインターホンの本体枠をねじ固定して取り付ける構造である。
【0003】
埋込みボックスを用いた取付構造に関しては、電子機器を壁面にがたつきなく強固に取り付けることを目的としたものが、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−243960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された埋込みボックス型のものを含め一般的な埋込みボックス型の取付構造、あるいは木枠固定型の取付構造のいずれの場合においても、以下のような問題がある。
電子機器、例えばインターホンを新型のものに新しくする場合において、インターホンの大きさ(取付ピッチ)は機器によってまちまちであり、リニューアル時に既存の取付ピッチの埋込みボックスや木枠を用いて機器を取り付けることはできない。
この点を木枠固定型の場合を例に挙げて詳細に説明する。
【0006】
木枠固定型の場合、木枠は機器の埋込部左右または上下に設置され、そこに木ねじで電子機器の枠を固定するが、電子機器の交換前後で電子機器の左右または上下の埋込部サイズが異なり、既設の木枠を使用することができない。その場合、交換後の電子機器のサイズに合わせて新たに木枠を設置するか、電子機器を埋め込む形での設置を断念して、露出型として設置するかになる。
しかし、新たに木枠を設置する場合、木枠を固定するために壁内の左右または上下に長い距離に亘って木枠を配設しなければならず、工事が大変になるという問題がある。
【0007】
他方、露出型として電子機器を取り付ける場合には、既設の取付開口部を隠す為、リニューアルプレート(鉄板等で既存開口を隠す部材)、または露出ボックスなどの既設の取付開口部を覆う部材を設け、その部材に機器を取り付けることになる。
しかしながら、その場合には、リニューアルプレート等が露出したり、露出ボックスが壁面から大きく露出したり、また既設取付部を覆う部材が大きくなったりする為、室内の美観を損ねるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、電子機器の交換などのように電子機器の取り付け部の取付ピッチが変わったような場合であっても、既設の取付開口部に美観を損ねることなく新たな電子機器を取り付けることができる電子機器の取付構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る電子機器の取付構造は、周縁にフランジ部が形成され、前記フランジ部の四隅にねじ挿通孔が形成されてなる箱型の筐体を備えた電子機器を、壁材に形成した開口部に埋め込んで取り付ける電子機器の取付構造であって、
前記フランジ部の一辺は、前記ねじ挿通孔を介して木ねじをねじ込むことにより、前記壁材の内側に設けられた木枠に固定され、前記フランジ部の他辺は、前記壁材の背面に配置された平板状の取付金具と共に前記壁材を挟持することにより固定され、
前記取付金具は、前記フランジ部に形成された前記ねじ挿通孔に対向する位置にねじ孔が設けられ、
前記取付金具と前記フランジ部の他辺とは、前記ねじ挿通孔を介して前記ねじ孔にねじ込まれた固定ねじによって締結されて前記壁材を挟持していることを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、周縁にフランジ部が形成され、前記フランジ部の四隅にねじ挿通孔が形成されてなる箱型の筐体を備えた電子機器を、壁材に形成した開口部に埋め込んで取り付ける電子機器の取付構造であって、
前記フランジ部の少なくとも2辺が、前記壁材の背面に配置された平板状の取付金具と共に前記壁材を挟持することにより固定され、
前記取付金具は、前記フランジ部に形成された前記ねじ挿通孔に対向する位置にねじ孔が設けられ、
前記取付金具と前記フランジ部の2辺とは、前記ねじ挿通孔を介して前記ねじ孔にねじ込まれた固定ねじによって締結されて前記壁材と面接触した状態で前記壁材を挟持していることを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、前記壁材に形成した開口部は、既設の電子機器を取り外したときに現われる既設開口部の一部を例えば修復ボード等によって覆い、前記既設開口部よりも開口面積を小さくしてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、電子機器の筐体に設けられたフランジ部の一辺と既設の木枠とを固定し、他辺のフランジ部と壁材の背面に配置された平板状の取付金具とによって、壁材を挟持することにより筐体を開口部に固定するようにしたので、電子機器と開口部のサイズが異なる場合であっても、新たな木枠を設置することなく、また不要な開口部を残すことなく埋め込み型として電子機器を壁材に形成された開口部に取り付けることができる。このため、美観を損ねることなく既設の開口部に設置することができる。
【0013】
また、本発明においては、電子機器の筐体に設けられたフランジ部と、壁材の背面に配置された平板状の取付金具とによって、壁材を挟持することにより筐体を開口部に固定するようにしたので、壁内に固定用の木枠や埋込みボックスがない場合であっても、埋め込み型として電子機器を壁材に形成された開口部に取り付けることができ、従来例のように電子機器の筐体が壁から出っ張ることがなく、美観を損ねることなく既設の開口部に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子機器の取付構造の説明図であり、取付構造を分解して示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る電子機器の取付構造の説明図であり、本体を開口部に設置した状態の正面図である。
【図3】図2の矢視A−A線に沿う断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る取付金具の説明図であり、図4(a)が正面図、図4(b)が右側面図、図4(c)が平面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る電子機器の取付構造の説明図であり、取付方法を時系列で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る電子機器の取付構造を電子機器の例としてインターホンを例に挙げて、図1〜図4に基づいて本実施の形態を説明する。なお、図1、図2において本体1の内部部品の図示は省略している。
【0016】
まず、取付対象となるインターホンの本体1について説明する。なお、本体1とは、インターホンを構成する主要部であって、カバー以外の部分である。
本体1は矩形の有底枠状の筐体3を有しており、筐体3の外周部には外方に出っ張るフランジ部5が形成されている。そして、フランジ部5の四隅には長丸状のねじ挿通孔7が、該ねじ挿通孔7の長手方向の軸線がフランジ部5の角部の両辺に交差するように斜めに形成されている。
壁材9に形成された開口部11の片側であって壁材9の背面側には、既設のインターホンを取り付けていた木枠13が設けられており、フランジ部5の一方の側辺部5aはこの木枠13に木ねじ15によって固定される。
フランジ部5の他方の側辺部5bは、取付金具17によって壁材9を挟持して固定される。
【0017】
次に、取付金具17について、図4に基づいて説明する。取付金具17は、細長く、壁材より薄い略矩形状の板材によって形成されている。取付金具17の両端には、図4に示すように、幅広部17aを有しており、この幅広部17aが壁材9の背面に当接し、フランジ部5との間で壁材9を挟持する機能を有する。幅広部17aにはねじ孔19が設けられている。このねじ孔19は雌ねじになっており、筐体3を固定するための固定ねじ21が螺合できるようになっている。図4(b)(c)に示されるように、ねじ孔19の形成された部分は肉厚に形成されており、固定ねじ21をねじ込んだときに締め付け力を発揮できるようになっている。取付金具17は長手方向において、フランジ部5の幅とほぼ同じ幅で形成されているが、ねじ孔19のある上端部と下端部だけは、長手方向の幅より幅広となって幅広部17aが形成されている。取付金具17の長さはフランジ部5の長さよりわずかに長く形成され、また取付金具17にはフランジ部5に形成されたねじ挿通孔7に対向する位置にねじ孔19が設けられている。
【0018】
上記のような取付金具17を用いてインターホンの本体1を壁面に取り付ける取付構造を説明する。
図1、図2に示す例は、開口部11の片側に木枠13がある場合であり、本体1のフランジ部5の一方の側辺部5aを木枠13に木ねじ15で固定し、他方の側辺部5bを取付金具17によって壁材9の開口縁部に取り付ける場合である。
【0019】
まず、フランジ部5の他方の側辺部5bに取付金具17を固定ねじ21で仮止めする。そして、仮止めした取付金具17とフランジ部5との隙間に開口部11を形成している壁材9の縁部を入れるようにしてフランジ部5の他方の側辺部5bを設置し、フランジ部5の一方の側辺部5aは壁材9の表面に当接させる。
この状態で、フランジ部5の一方の側辺部5aを木ねじ15で固定する。他方の側辺部5bは、壁材9を挟んだ状態で、固定ねじ21をねじ込むことで、取付金具17がフランジ部5側に近づき、壁材9を強固に挟持する。取付金具17とフランジ部5bとは、ねじ挿通孔7を介してねじ孔19にねじ込まれた固定ねじ21によって締結され壁材9を挟持している。以上のようにして、本体1は開口部11に固定される。
【0020】
本実施の形態によれば、壁に形成された開口部11の片側に木枠13があり、他方の側には木枠13が無いような場合であっても、開口部11に埋め込み型で電子機器を取り付けることができ、従来例のようにインターホンの本体1が壁から出っ張ることがなく、意匠的にも優れたものとなる。
なお、上記の実施の形態では、開口部11の片側に木枠13がある場合を示したが、木枠13が全くないような場合には、例えば本体1のフランジ部5の両側辺部を取付金具17で壁材9に取り付けるようにすればよい。
【0021】
[実施の形態2]
既設の大型の既設インターホンを小型の新設インターホンにリニューアルする場合の電子機器の取付構造について図5に基づいて説明する。
図5(a)に示す状態は、既設インターホンの本体23が設置されている状態を示している。この状態から既設インターホンの本体23を取り外す。既設インターホンの本体23を取り外した状態が図4(b)に示されている。
【0022】
次に、新設インターホンの本体25の大きさに合わせて開口部11を小さくするために、修復ボード27を開口部11の一部に設置する。修復ボード27は壁材9と面一になるように設置する。修復ボード27を設置した状態が図4(c)に示されている。
【0023】
次に、実施の形態1で説明したように、新設インターホンの本体25のフランジ部5の一方の側辺部5a(図中左側部)を木ねじ15によって木枠13に固定し、フランジ部5の他方の側辺部5bを取付金具17によって壁材9に固定する。
壁材9に設置されている修復ボード27は、壁材9と比べて固定力が弱いので本体25を支持することはできないが、取付金具17における上下方向へ延出している幅広部17aと本体25のフランジ部5によって壁材9を挟持することで本体25が壁材9に支持される。
これによって、小型の新設インターホンを埋め込み型として壁材9に設置できる。
【0024】
以上のように、本実施の形態によれば、既設インターホンよりも小型の新設インターホンを設置する場合において、小型化した新設インターホンを、新設の場合と同様に壁に埋め込んでリニューアルできる。
実施の形態2では既設インターホンより小型の新設インターホンを設置する場合について記載したが、既設インターホンより大型の新設インターホンを設置する際にも、本発明の電子機器の取付構造は使用できる。その場合、新設インターホン本体25の大きさに合わせて開口部を大きくするために、木枠13を一部切除し、壁材9を新設インターホン本体25に合わせて切り取る。この状態にしてから、新設インターホンを取り付ける。新設インターホンの固定の仕方は実施の形態1で説明した通りである。
【0025】
なお、上記の実施の形態1、2においては電子機器の例としてインターホンを例に挙げたが、本発明が対象としている電子機器はインターホンに限られず、例えば住宅情報盤など壁面に設置される各種の電子機器を含む。
【0026】
本発明で使用する取付金具17は平板状なので、L字型など折れ曲がった取付金具と比べて、容易に製作できる。
また、本発明で使用する取付金具17は両端にねじ孔19が一つずつあり、フランジ部5のねじ挿通孔7と取付金具17のねじ孔19を固定ねじ21で仮止めした状態で壁材9の開口部11内に入れることができる。なお、開口部11の大きさはフランジ部5に取付金具17を装着した状態で、本体1を開口部11に挿入できる大きさとなっている。このとき、取付金具17は両端を2箇所仮止めされているので、固定ねじ21を締結する際に、取付金具17が動かないため、設置が容易である。
【0027】
本発明においては、フランジ部5と取付金具17を固定ねじ21で仮止めして、仮止めしたフランジ部5と取付金具17の間に壁材9を挟み、固定ねじ21を締めることで壁材9を挟持し固定する。したがって、仮止めして壁材9を挟んだ後、取付金具17は縦横方向の移動がなく、奥行き方向だけしか移動しないため、固定ねじ21を巻く回数が少なくて良い構造にできる。
【0028】
本発明においては、本体1のフランジ部5と取付金具17とを仮止めした状態で、壁材9をフランジ部5と取付金具17との間に挟むように、開口部11に筐体3及び取付金具17を入れる。よって取付金具17が開口部11より大きくても、開口部11に対して仮止めされた本体1と取付金具17を斜めにし、筐体3及び取付金具17を開口部11に入れることで、本体1のフランジ部5と取付金具17の間に壁材9を挟むことが可能である。
本発明はフランジ部5の面と平板状の取付金具17の面を平行に固定し、壁材9を挟持するので、フランジ部5と取付金具17が壁材9に対して面接触となるため、点接触及び線接触の挟持よりも強固に固定される。また、取付金具17は両端にあるねじ孔19で固定されるため、面接触の挟持がより強固になる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体
3 筐体
5 フランジ部
5a フランジ部の一方の側辺部
5b フランジ部の他方の側辺部
7 ねじ挿通孔
9 壁材
11 開口部
13 木枠
15 木ねじ
17 取付金具
17a 幅広部
19 ねじ孔
21 固定ねじ
23 既設インターホンの本体
25 新設インターホンの本体
27 修復ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁にフランジ部が形成され、前記フランジ部の四隅にねじ挿通孔が形成されてなる箱型の筐体を備えた電子機器を、壁材に形成した開口部に埋め込んで取り付ける電子機器の取付構造であって、
前記フランジ部の一辺は、前記ねじ挿通孔を介して木ねじをねじ込むことにより、前記壁材の内側に設けられた木枠に固定され、
前記フランジ部の他辺は、前記壁材の背面に配置された平板状の取付金具と共に前記壁材を挟持することにより固定され、
前記取付金具は、前記フランジ部に形成された前記ねじ挿通孔に対向する位置にねじ孔が設けられ、
前記取付金具と前記フランジ部の他辺とは、前記ねじ挿通孔を介して前記ねじ孔にねじ込まれた固定ねじによって締結されて前記壁材を挟持していることを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項2】
周縁にフランジ部が形成され、前記フランジ部の四隅にねじ挿通孔が形成されてなる箱型の筐体を備えた電子機器を、壁材に形成した開口部に埋め込んで取り付ける電子機器の取付構造であって、
前記フランジ部の少なくとも2辺が、前記壁材の背面に配置された平板状の取付金具と共に前記壁材を挟持することにより固定され、
前記取付金具は、前記フランジ部に形成された前記ねじ挿通孔に対向する位置にねじ孔が設けられ、
前記取付金具と前記フランジ部の2辺とは、前記ねじ挿通孔を介して前記ねじ孔にねじ込まれた固定ねじによって締結されて前記壁材と面接触した状態で前記壁材を挟持していることを特徴とする電子機器の取付構造。
【請求項3】
前記壁材に形成した開口部は、既設の電子機器を取り外したときに現われる既設開口部の一部を修復ボードによって覆い、前記既設開口部よりも開口面積を小さくしてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211100(P2011−211100A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79626(P2010−79626)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】