説明

電子機器の着脱機構

【課題】部品点数を削減し、低コストでユニット部をフレームに対して着脱可能にする電子機器の着脱機構を提供する。
【解決手段】本発明は、フレーム100に対して着脱可能なユニット部3と、ユニット部3をフレーム100に対して着脱可能とし、フレーム100及びユニット部3のいずれか一方に配設される係止ピン90と、他方に配設されて係止ピン90に係合する溝54を具備する係合部材51とを備えた係合機構とを有する。係合部材51は、回動可能に支持されており、溝54が係止ピン90から外れるように回動駆動された際、その回動によりユニット部3をフレーム100から離脱する方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の着脱機構に関し、例えば、パチンコやスロットマシン等の遊技機(以下、「遊技機」と総称する)が設置されている遊技場に配設され、遊技機間に配設される遊技媒体貸出装置に適した電子機器の着脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パチンコホールのような遊技場では、遊技者の便宜を図るために、遊技機が多数設置された領域(「島」とも称する)において、隣接する遊技機間に、パチンコ球やコイン(遊技媒体)を貸し出すための縦長状の遊技媒体貸出装置(電子機器)が設置されている。通常、このような遊技媒体貸出装置は、各台の間に固定設置されるフレームと、このフレームに対して引き出し可能なユニット部とを備えている。フレームに対して引き出されるユニット部は、例えば、遊技価値を処理するユニット、例えば、遊技価値としての紙幣を処理する紙幣処理ユニット(ビルバリユニットとも称する)や、遊技価値に関する情報を記録したプリペイドカードやICカードなどの記録媒体に記録されている記録情報を読み取ったり、情報を書き込むための記録媒体処理ユニット(カード処理ユニット)を収容している。また、ユニット部は、上記した遊技価値処理ユニット以外にも、例えば、収容した各ユニットの駆動制御を行う制御ユニット等を収容している。
【0003】
前記ユニット部は、前面側が遊技者に露出しており、その露出部分には、遊技価値としての紙幣や上記したカードを挿入するための挿入口が形成されている。そして、所定の挿入口に紙幣やカードを挿入し、真贋判定処理や認証処理等、所定の条件がクリアされると遊技媒体の貸し出し処理が行われるようになっている。また、露出部分には、例えば、テンキーを有するテンキー操作部(テンキー操作ユニット)が設けられており、遊技者は、遊技媒体に関する情報等を入力できるように構成されている。
【0004】
上記したようなユニット部は、内部に収容されている上記した各ユニットの点検、保守作業等を行うケースがあり、例えば、特許文献1に開示されているような着脱機構によって、フレームから着脱できるように構成されている。この特許文献1に開示されている着脱機構は、ユニット部側に設けられる一対の回動部材と、回動部材を回動駆動するための偏芯カム及び偏芯カムを回転させる駆動モータと、上記した一対の回動部材を同期して回動させるリンク部材とを備えている。また、フレーム側には、夫々の回動部材に形成されている溝が係合する一対の係止ピンと、ユニット部を前方に向けて押圧付勢する押圧バネが設けられており、前記駆動モータを駆動することによって、回動部材と係止ピンの係合が外れ、これによりユニット部は、押圧バネの付勢力により前方に押し出されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−46293号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、ユニット部をフレームから取り外すに際しては、取り外し操作が容易になるように、着脱機構のロック状態が解除されることで、ユニット部が前方に移動するように構成されていることが好ましい。
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に開示されている着脱機構は、フレーム側に、ユニット部を常時前方に付勢するための部品(押圧バネ)が必要であることから、全体として部品点数が増加してしまい、コストが高くなるという問題がある。
【0007】
この発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、部品点数を削減し、低コストでユニット部をフレームに対して着脱可能にする電子機器の着脱機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る電子機器の着脱機構は、フレームに対して着脱可能なユニット部と、前記ユニット部をフレームに対して着脱可能とし、前記フレーム及びユニット部のいずれか一方に配設される係止ピンと、他方に配設されて前記係止ピンに係合する溝を具備する係合部材とを備えた係合機構と、を有しており、前記係合部材は、回動可能に支持されており、前記溝が係止ピンから外れるように回動駆動された際、その回動により前記ユニット部をフレームから離脱する方向に移動させることを特徴とする。
【0009】
上記した構成では、ユニット部をフレームから取り外す場合、係合機構の係合部材を回動することで溝と係止ピンの係合が外れ、更に係合部材が回動駆動されることで、ユニット部をフレームから離脱する方向に移動させる。このため、ユニット部をフレームから離脱する方向に移動させるための特別な構造体を設ける必要がなくなって、部品点数を少なくしてコストの低減が図れる。
【0010】
また、請求項2に係る発明においては、前記係合部材の溝を前記係止ピンと係合する方向に付勢する付勢部材と、前記係合部材に形成され、前記ユニット部をフレームに装着する際、前記係止ピンを前記溝に案内する傾斜部と、前記係合部材の溝に連続的に形成され、前記係合部材の回動駆動によって前記係止ピンと溝との係合が外れた後、そのまま前記係止ピンに当接して前記ユニット部を離脱する方向に移動させる当接部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記した構成では、ユニット部をフレームに装着する際、係合部材を押し上げる等、別途駆動しなくても、溝と係止ピンを係合させることが可能となる。また、前記係合部材に前記当接部を形成したことで、係合部材が回動することで、係止ピンと溝の係合関係がそのまま移行し、最終的に両者の係合関係が外れて、当接部が係止ピンを押し付けてユニット部を移動させるようになる。すなわち、係合部材の回動動作が終了することで、係止ピンと溝の係合関係が外れ、かつユニット部が離脱方向に移動されるようになる。
【0012】
また、請求項3に係る発明においては、前記係合機構は、前記係合部材と当接する偏芯カムと、この偏芯カムを回転駆動する駆動モータとを有することを特徴とする。
【0013】
上記した構成では、係合部材は、駆動モータを回転駆動するだけで、溝と係止ピンの解除と、フレームからユニット部の離脱とを行えるため、フレームからユニット部の取り出し操作が容易に行えるようになる。
【0014】
また、請求項4に係る発明においては、前記ユニット部に、紙葉体を受け入れる紙葉体処理ユニットを、前記紙葉体を挿入する挿入口が上下方向に延出するように縦方向に収容し、前記係合部材を紙葉体処理ユニットと同一方向に設置したことを特徴とする。
【0015】
このような構成では、着脱機構を、遊技機に隣接して設置されるサンド装置に適用した場合、紙葉体処理ユニットと同一方向に係合部材を設置することから、サンド装置を薄型化することが可能になる。
【0016】
また、請求項5に係る発明においては、前記ユニット部はコネクタを備え、前記フレームは前記ユニット部のコネクタが接続される接続コネクタを備え、前記ユニット部がフレームから離脱する方向に移動することで前記コネクタ同士の接続が解除されることを特徴とする。
【0017】
上記した構成では、フレームからユニット部を離脱するとコネクタ同士の接続が解除されるため、ユニット部を取り外す際、コネクタを解除するための操作が必要なくなり、フレームからユニット部の取り出し操作が容易に行えるようになる。
【0018】
また、請求項6に係る発明においては、前記フレームは、前記ユニット部への電源供給を行う電源供給部を備えており、前記コネクタを介して電源の供給が行われることを特徴とする。
【0019】
上記した構成では、フレームからユニット部を離脱する際、コネクタ同士の接続が解除されることでユニット部への電源供給が停止するため、フレームから離脱したユニット部の駆動モータを停止制御する必要が無くなり、駆動モータの駆動制御が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、部品点数を削減し、低コストでユニット部をフレームに対して着脱可能にする電子機器の着脱機構が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る電子機器の着脱機構の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、電子機器を、隣接配置されたパチンコ機やパチスロ機の間に設置可能な遊技媒体貸出装置(以下、サンド装置と称する)を例示して説明する。このサンド装置は、主に、現金やカード(プリペイドカード、ICカード等)を投入することで、メダルやパチンコ玉のような遊技媒体を貸し出す機能を有する。
【0022】
図1は、図示されていない遊技機の間に設置固定されたフレームに対して着脱可能なサンド装置の一構成例を示す図であり、図2は、フレーム及びサンド装置の構成要素を概略的に示したブロック図である。
【0023】
本実施形態に係るサンド装置1は、縦長の箱状に形成されており、遊技機間に設置固定される断面コの字型のフレーム(遊技者側からは、通常は見えないようになっている)100に対して着脱可能なユニット部3と、このユニット部3の下方側に配置され、ユニット部3と同様の幅を有する縦長の箱状に形成された電源供給部30とを備えている。
【0024】
前記サンド装置1は、その一部の構成要素であるユニット部3を、後述する着脱装置(着脱機構)50によってフレーム100に対して着脱可能としており、電源供給部30はユニット部3と分離されて、前記フレーム100と一体化された状態となっている。
【0025】
前記ユニット部3は、略長方体形状に構成された縦長状の本体(ケーシング)3A内に、以下に説明するカード処理ユニット5、紙幣処理ユニット7(これらは紙葉体処理ユニットを構成する)、及びテンキー操作ユニット10を収容しており、メンテナンスの頻度が高い上記したユニット5,7,10を、1つのユニット部3内に設置してフレーム100に対して取り外しできるように構成されている。
【0026】
前記カード処理ユニット5は、本体3Aの前面パネル3Bに縦方向に形成されるカード挿入口5aを備えており、例えば、金額情報が記載されたカード(プリペイドカード、ICカード等)を挿入することで、内部に設置されているリーダライタが駆動され、金額情報の読取り、書換えが行われると共に、金額情報が書き換えられたカードの返却、発行、或いは金額が0になった際のカードの回収が可能となっている。遊技者は、カードに記載された金額情報の範囲内で、パチンコ玉やメダル等の遊技媒体の貸し出し処理を受け、遊技を行うことができる。
【0027】
前記紙幣処理ユニット7は、本体3Aの前面パネル3Bに縦方向に形成される紙幣挿入口7aを備えており、紙幣を挿入することで、内部に設置されているセンサによって真偽判断処理が成され、前記カードの場合と同様、挿入された金額の範囲内で、パチンコ玉やメダル等の遊技媒体の貸し出し処理を受け、遊技を行うことができる。なお、遊技で全ての金額を使用しなかった場合、前記カード処理ユニット5において、予めストック部に収納されているカードに対して金額情報を書き込み、その発行が可能な構成となっている。
【0028】
前記テンキー操作ユニット10は、画像表示部(液晶ディスプレイによって構成される)11、テンキー12、赤外線受光素子13、及び、場合によっては、人体を認証するための撮像素子14等を備えている。なお、図面においては、赤外線受光素子13と撮像素子14は、画像表示部11の上方の同じ位置に設置されている。
【0029】
上記した画像表示部11、及びテンキー12等は、図1に示すように、表面が前面パネル3Bの露出面に対して略45度傾いた突出部16に取り付けられている。このようにすることで、画像表示部11のワイド化が図れ、単に、前面パネル3Bの露出面に配置した構成と比較すると、幅方向に1.4倍程度大型化した液晶ディスプレイを配置することができ、画像等が視認し易くなると共に、サンド装置1に隣接して配置された遊技機に着座した遊技者から正面視することができ、視認性の向上が図れるようになる。また、テンキー12についても、大型化することができ、押圧操作し易くなる。
【0030】
前記画像表示部11は、例えば、遊技場の各種情報、二次元バーコード、金額情報等を表示する機能を有する。前記テンキー12は、例えば、遊技者が所有するICカードの暗証番号を入力したり、画像表示部11に表示される各種情報をスクロールさせたり、遊技で使用する金額情報等を入力する際に押下される。前記赤外線受光素子13は、例えば、遊技場の管理者が赤外線リモコンによって、ユニット部3を取り外す際の着脱装置を作動(ロック機構の解除)させるのに用いられ、撮像素子14は、人体を識別するための情報、例えば、当該サンド装置1に隣接する遊技機で遊技者が遊技をしているかいないかの情報等を取得するのに用いられる。
【0031】
ユニット部3は、上記した各ユニット以外の構成部材を含んでいても良く、例えば、異常を報知するためのパイロットランプ18等が設置されている。
【0032】
上記した各ユニットは、ユニット部3の内部に設置されたCPUユニット20によってその動作が制御される。このCPUユニット20は、ユニット部3の後面に装着されるコネクタ21がフレーム100の内面に装着された接続コネクタ38に接続されることで、後述する電源供給部30から電源が供給されると共に、外部との間で各種データの送受信が可能となっている。この場合、図2に示すように、本実施形態では、ユニット部3に設けられるコネクタ21と、フレーム100に設けられる接続コネクタ38は、ユニット部3をフレーム100から離脱する方向に移動した際、両者の接続がそのまま解除されるように設置、構成されている。
【0033】
前記電源供給部30内には、前記ユニット部3の内部に収容される前記カード処理ユニット5、紙幣処理ユニット7、及びテンキー操作ユニット10、及び着脱装置50の駆動モータなどに電力を供給すべく、外部電源120から供給される電圧等を制御する電源基板31と、通信制御ユニット32とが設置されている。この通信制御ユニット32は、通信方式の変換制御(シリアル/パラレル変換制御)や送受信先の振り分け制御を行う機能を有しており、通信コネクタ34,35を介して、それぞれホストコンピュータ130及び隣接する遊技機140との間で各種データの送受信を実行する。
【0034】
また、前記電源基板31は、遊技者が所有する携帯端末などに対して充電を可能にする充電ユニットとしての機能を備えており、前面パネル3Bから露出する充電ジャック36に所定の充電用の端子を差し込むことが可能になっている。
【0035】
上記したユニット部3は、着脱装置50を介して、フレーム100に対して着脱可能に保持されている。この着脱装置50は、簡単な構成で、両者の間に設置される係合機構を単に解除することで、ユニット部3を手によって引き出し操作できるように構成されている。
【0036】
以下、着脱装置50の構成について、図3から図5を参照して説明する。
【0037】
これらの図において、図3(a)は、ユニット部の内部構成を示す図、図3(b)は、フレームの一部を着脱方向から見た図、図4は、ユニット部に設けられる着脱装置の構成を示す図、そして、図5(a)は、着脱装置の側面図、図5(b)は、着脱装置の正面図である。
【0038】
着脱装置50は、係合部材51と、この係合部材51を駆動する駆動ユニット60と、係合部材との間でロック状態を構成する係止ピン(ロックピン)90とを備えている。この場合、係合部材51はユニット部3側に装着され、係止ピン90はフレーム100側に装着されており、両者は、ユニット部3をロックする係合機構としての機能を有する。具体的には、係合部材51は、ユニット部3のケーシング3Aの内面に取着されるプレート52に支軸53を中心として回動可能に支持されており、係止ピン90は、断面コの字型のフレーム100の内面100aに、一対の保持壁91を平行となるように突出形成し、その保持壁91間に設けられている。
【0039】
このため、図4に示すように、ケーシング3Aのフレーム100の内面100aと密着する後面部3C(前面パネル3Bと平行となる面)には、矩形の開口3Dが形成されており、ユニット部3をフレーム100に装着した際、係止ピン90を保持した一対の保持壁91は、開口3D内に入り込むようになっている。
【0040】
上記のように、ユニット部3内に、カードや紙幣を受け入れるユニット5,7を、カードや紙幣を挿入する挿入口が上下方向に延出するように縦方向に収容しており、かつこの配置状態で、係合部材51をユニット5,7と同一方向となるように設置したことで、サンド装置1を薄型化することが可能になる。
【0041】
前記係合部材51の先端側には、係止ピン90が係合するように、上下方向に延出する溝54が形成されており、係合部材51が回動駆動されることで、係合機構を構成する係止ピン90と溝54が係合し、ユニット部3をフレーム100に対して取り外しできないようにロックする。
【0042】
そして、このような構成において、係合部材51の溝54が係止ピン90から外れるように回動駆動された際、ユニット部3をフレーム100から離脱する方向に移動させるようになっている。具体的には、溝54の係止ピン90からの離脱は、後述する駆動ユニット60に設けられる駆動モータの回転駆動によって成されるが、この離脱に際しては、特に、バネや駆動部材などを設置することなく、係合部材51の回動操作のみで、ユニット部3を移動させるよう構成されている。
【0043】
以下、ユニット部3を移動させるための構成について説明する。
【0044】
前記係合部材51は、支軸53を中心として一端側(前面パネル側)に引張バネ55が張設されており、図において係合部材51を、支軸53を中心として、常時反時計回り方向に付勢している。また、係合部材51の他端側(フレーム側)には、溝54よりも先端側に傾斜部51aが形成されており、ユニット部3をフレーム100に装着する際、係止ピン90を溝54に案内するようになっている。すなわち、ユニット部3をフレーム100に装着する際、係止ピン90が傾斜部51aに当たり、これにより係合部材51を、支軸53を中心として、引張バネ55の付勢力に抗して時計回り方向に回動させ、最終的に係止ピン90が溝54内に入り込むと、引張バネ55の付勢力によって、両者は係合状態となる。
【0045】
そして、前記係合部材51には、溝54を規定する輪郭部分に当接部54aが形成されている。この当接部54aは、溝54を形成する前面パネル側の輪郭の一部をそのまま下方に延出させることで形成されており、図6(a)に示すように、その当接部54aの位置(符号P1で示す)については、ロック状態における溝54と係止ピン90との係合部(符号P2で示す)に対し、支軸53までの距離が長い位置に形成されている。すなわち、係合部材54の当接部54aは、支軸53の位置をPとした場合、点Pと点P1間の距離L1が、点Pと点P2間の距離L2よりも長くなるような関係に設定されている。
【0046】
これにより、係合部材51が、支軸53を中心として、図6(b)に示すように回動駆動されると、溝54が係止ピン90から外れつつ、その当接部54aが係止ピン90の外周面を押し付け、その反力で係合部材51(係合部材51を支持しているユニット部3)を、矢印で示す方向(フレーム100から離脱する方向)に移動させる。なお、このとき、係合部材51は、係止ピン90を押し付けるため、係止ピン90自体は、矢印と反対方向に弾性変形しようとするものの、その復元力によって係合部材51を矢印方向に押し付けることから、図6(b)に示すように、係合部材51の当接部54a(点P1)は係止ピン90の外周に乗った状態に維持され、ユニット部3は、L1とL2の差分だけ離脱方向にシフトした状態となる。従って、係合部材51の溝54は、係止ピン90と係合できない状態となっている。このように、単に係合部材51の回動動作が終了することで、係止ピン90と溝54の係合関係が外れ、かつユニット部3が離脱方向に移動されると共に係合部材51の溝54は、係止ピン90と係合できない状態となる(図6(c)参照)。
【0047】
次に、上記した駆動ユニット60の構成について、図4及び図5を参照して説明する。
【0048】
駆動ユニット60は、駆動モータ61と、駆動モータ61の回転駆動力を、上記した係合部材51まで伝達する動力伝達部62とを備えている。
【0049】
本実施形態では、動力伝達部62は歯車列によって構成されており、駆動モータ61の出力軸61aに取着されるウォームギヤ62a、ウォームギヤ62aに順次噛合する第1ギヤ62b、第2ギヤ62c及び第3ギヤ62dによって構成されている。この場合、各ギヤ62b、62c、62dは、ケーシングに装着された保持フレーム66に回転可能に支持されると共に、最終ギヤとなる第3ギヤ62dには、第3ギヤ62dと共に一体回転可能な偏芯カム64が並設されている。この偏芯カム64は、前記係合部材51の下方側に一体形成されたカム当接部57に係合可能となっており、前記駆動モータ61によって、その回転動力が歯車列を介して伝達されると、偏芯カム64は回転駆動され、図6(a)に示す状態から、図6(b)にようにカム当接部57に係合して、係合部材51を、支軸53を中心に回動駆動する。
【0050】
なお、上記したような駆動モータ61の回転駆動力で、偏芯カム64を利用して係合部材51を回動駆動する構成では、ユニット部3をフレーム100から取り外して、各ユニットの保守作業等を行っている際、誤って偏芯カム64を回転させてしまうと、駆動モータ側に動力伝達されて、駆動モータ61に不必要な負荷を加えたり、周辺部品に支障を来たすことが考えられる。このため、上記した動力伝達部62には、駆動モータ61から偏芯カム64への動力伝達を解除する解除機構70が設けられている。
【0051】
この解除機構70は、上記した動力伝達部62が歯車列によって構成されていることから、その内の1つのギヤを他のギヤに対して、噛合状態が維持/解除される構成としている。具体的には、前記歯車列の内、第2ギヤ62cは、前記保持フレーム66に対して、変位可能に支持されており、板バネ67によって、第1ギヤ62bと第3ギヤ63dに対して付勢されて噛合されるように構成されている。
【0052】
この板バネ67は、上記したケーシング3Aのフレーム100の内面100aと密着する後面部3Cに沿って配設されており、フレーム100の内面100aに着脱方向に向けて突出形成された突起110(図3(b)参照)によって押圧されるようになっている。すなわち、ユニット部3を、フレーム100に装着すると、ユニット部3のケーシング3Aの後面部3Bは、フレーム100の内面100aと密着する状態となるが、この際、突起110が板バネ67を押圧し、その付勢力によって第2ギヤ62cを、第1ギヤ62bと第3ギヤ63dに対して噛合させ、動力伝達状態に維持する。一方、ユニット部3が、フレーム100に対して離脱する方向に移動すると、突起110の板バネ67に対する押圧が解除され、これにより、第2ギヤ62cを、第1ギヤ62bと第3ギヤ63dから離脱させて、動力伝達状態を解除する。
【0053】
このように、ユニット部3をフレーム100から取り外すと、自動的に動力伝達部62の動力伝達状態が解除されるようになる。
【0054】
さらに、本実施形態では、上述した構成の着脱装置50に、ユニット部3をフレーム100に装着する際、偏芯カム64と係合部材51との係合を解除する解除手段80を設けている。上述した構成の着脱装置50は、ユニット部3をフレーム100から取り外した際、係合部材51は、図6(b)に示すように、偏芯カム64によって係止ピン90から外れる方向に回動された状態にある。そして、こままの状態になっていると、保守、点検作業が終了して、ユニット部3をフレーム100に対して装着すると、係合部材51が解除位置のままで係止ピン90と係合せず、ロックされない事態(ユニット部3をフレームに装着したもののロックされていない事態)が生じる可能性がある。或いは、上記したように、解除機構70によって、偏芯カム64には、負荷が作用していない状態となっているため、ユニット部3の保守、点検作業時における過失等によって、偏芯カム64が係合部材51と係合して係止ピン90を解除する位置に移動させていることも考えられる。
【0055】
このため、本実施形態では、解除手段80によって、ユニット部3をフレーム100に装着する際、上記の非ロック状態を確実に防止するようにしている。
【0056】
以下、この解除手段80の構成について、上述した図3(b)、図10及び図11を参照して説明する。なお、これらの図において、図10は、ユニット部3をフレーム100側から見た図、図11(a)及び(b)は、解除手段80の動作を説明する図である。
【0057】
図10に示すように、ユニット部3を構成するケーシング3Aには、後面部3Cから側面部3Eに亘って、ピン案内開口3Fが形成されている。このピン案内開口3Fは、上記した偏芯カム64が係合部材51と係合して、係合部材51を回動させる位置(図6(b)参照)と一致するように形成されている。すなわち、この偏芯カム64と係合部材51の係合状態は、図10に示すように、ピン案内開口3Fを通して露出するように設定されている。
【0058】
一方、フレーム100には、図3(b)に示すように、コの字型のフレーム100の側面100bに、解除ピン112が着脱方向と直交する方向に突出形成されている。この解除ピン112の高さは、図10に示すように、前記後面部3Cに形成されるピン案内開口3Fの深さDよりも若干低く設定されている。
【0059】
上記したような解除手段80によれば、後述するように、ユニット部3をフレーム100に装着する際、解除ピン112によって偏芯カム64と係合部材51の係合関係が解除され、装着状態では、係止部材51の溝に係止ピン90が確実に入り込んで、ロック状態が確保されるようになる。
【0060】
以上のように構成されるサンド装置の作用、及び効果について説明する。
【0061】
最初、サンド装置1のユニット部3はフレーム100に対して装着状態(ロック状態)に維持されている。このとき、図6(a)に示すように、偏芯カム64と係合部材51は非係合状態となっており、係合部材51の溝54は、フレーム100の係止ピン90と係合してロック状態となっている。
【0062】
ユニット部3を取り外すとき、例えば、遊技場の管理者が、赤外線のリモコンを赤外線受光素子13に照射すると、CPUユニット20は、着脱装置50の駆動モータ61を回転駆動する。駆動モータ61の回転駆動量は所定の量に制御されており、駆動モータ61の回転駆動力は、歯車列で構成される動力伝達部62を介して偏芯カム64に伝達され、偏芯カム64を図6(a)で反時計周り方向に回転させる。これにより、偏芯カム64は係合部材51のカム当接部57と係合し、係合部材51を、支軸53を中心にして、引張バネ55の付勢力に抗して時計回り方向に回転させる。
【0063】
このように係合部材51が、支軸53を中心として回動駆動されると、溝54が係止ピン90から外れつつ、その当接部54aが係止ピン90の外周面を押し付け、その反力で係合部材51(係合部材51を支持しているユニット部3)を、フレーム100から離脱する方向に移動させる(図7の二点鎖線から実線で示すように移動させる)。すなわち、単に、係合部材51の回動動作が終了することで、係止ピン90と溝54の係合関係が外れると共に、ユニット部3が離脱方向に移動する構成であることから、ユニット部3をフレーム100から離脱する方向に移動させるための特別な構造体を設ける必要がなくなり、部品点数を少なくしてコストの低減を図ることができる。
【0064】
また、図2に示すように、ユニット部3がフレーム100から離脱する方向に移動した際、ユニット部3に設けられたコネクタ21は、そのままフレーム100の接続コネクタ38から外れる(コネクタ同士の接続が解除される)構成になっているため、ユニット部3をフレーム100から取り外す際、コネクタを解除するための操作が必要なくなり、フレーム100からユニット部3の取り出し操作が容易に行えるようになる。また、フレーム100からユニット部3を離脱する際、上記したコネクタ21,38同士の接続が解除されることでユニット部3への電力供給が停止するため、フレーム3から離脱したユニット部3の駆動モータ61を停止制御する必要が無くなって、駆動モータ61の駆動制御が容易になる。
【0065】
そして、ユニット部3をフレーム100から引き出し、ユニット部3に収容された各種ユニットの点検、保守などの作業が実施される。このとき、前記駆動モータ61と偏芯カム64との間の動力伝達部62は、上述した解除機構70によって動力伝達状態が解除されているため、各ユニットの保守作業等を行っている際、誤って偏芯カム64を回転させても、駆動モータ61側に動力伝達されることはなく、駆動モータ61に不必要な負荷を加えたり、周辺部品に支障を来たすことはない。
【0066】
その後、ユニット部3を、再び、フレーム100に装着すべくユニット部3をフレーム100に対して差込み操作すると、解除手段80を構成するフレーム100に形成された解除ピン112がユニット部3に形成されたピン案内開口3Fを移動して行き(図11(a)参照)、偏芯カム64が係合部材51に対して係合状態にあっても、偏芯カム64を時計回り方向に回転させて、この係合状態を解除する。すなわち、偏芯カム64は、上記した解除機構70によって負荷がない状態(フリー回転可能状態)となっていることから、偏芯カム64と係合部材51が係合関係にあったとしても、解除ピン112によって回転され、係合部材51は、引張バネ55の引張力によって初期位置(係合部材51の溝54が係止ピン90に入り込むことが可能な位置;図4参照)に確実に戻される。
【0067】
そして、さらにユニット部3を挿入して行くと、係止ピン90が傾斜部51aに当たり、これにより係合部材51を、支軸53を中心として、引張バネ55の付勢力に抗して時計回り方向に回動させ、最終的に、図11(b)係止ピン90が溝54内に入り込むと、引張バネ55の付勢力によって、両者は係合状態となる(ロック状態となる)。すなわち、偏芯カム64は、解除手段80によって、係合部材51との係合が確実に解除されているため、ユニット部3をフレーム100に装着すると、確実に係止ピン90との間でロック状態となり、非ロック状態になるようなことが確実に防止される。
【0068】
また、ユニット部3をフレーム100に装着すると、解除機構70を構成する突起110(図3(b)参照)が板バネ67を押圧し、その付勢力によって第2ギヤ62cを、第1ギヤ62bと第3ギヤ63dに対して噛合させ、動力伝達部62を動力伝達状態に維持する(図9→図8参照)と共に、上述したユニット部3に設けられたコネクタ21は、フレーム100の接続コネクタ38にそのまま接続され、接続に関する手間が生じることもない。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることは無く、種々変形することが可能である。
【0070】
本発明は、着脱装置(着脱機構)50の部分に特徴があることから、それ以外の構成要素については、上述した実施形態の構成に限定されることはなく、適宜、変形することが可能である。また、上記した着脱装置50における駆動モータ61と偏芯カム64との間の動力の伝達方法については、歯車列に限定されることはない。また、それに応じて解除機構70の構成についても適宜変形することが可能である。なお、この解除機構70は、ユニット部3をフレーム100から取り外した際に、動力伝達部における動力伝達状態が解除される構成であれば良い。
【0071】
また、上記した着脱装置50に関しては、係合部材51や駆動ユニット60がフレーム側に装着された構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、上記したサンド装置以外にも様々な電子機器に適用することが可能である。例えば、パソコンに内蔵されるCD−ROMドライブユニット等、フレームとなる部分に対して着脱操作されるユニット体を備えた各種の電子機器に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】電子機器の一例であるサンド装置の構成を示した斜視図。
【図2】フレーム及びサンド装置の構成要素を概略的に示したブロック図。
【図3】(a)は、ユニット部の内部構成を示す図、(b)は、フレームの一部を着脱方向から見た図。
【図4】ユニット部に設けられる着脱装置の構成を示す図。
【図5】(a)は、着脱装置の側面図、(b)は、着脱装置の正面図。
【図6】係合部材の作用を説明する図であり、(a)は、係合部材と係止ピンのロック状態を示す図、(b)は、係止部材が係止ピンによって移動される状態を示す図、(c)は、係止部材が移動された後の係止ピンと溝の位置関係を示す図。
【図7】ユニット部がフレームから離脱する方向に移動する状態を示す図。
【図8】着脱装置の駆動ユニットを構成する動力伝達部の構成を示す図(動力伝達状態)。
【図9】着脱装置の駆動ユニットを構成する動力伝達部の構成を示す図(動力伝非達状態)。
【図10】ユニット部をフレーム側から見た図。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれ解除手段の動作を説明する図。
【符号の説明】
【0074】
1 サンド装置(電子機器)
3 ユニット部
5 カード処理ユニット
7 紙幣処理ユニット
10 テンキー操作ユニット
30 電源供給部
50 着脱装置
51 係合部材
54 溝
60 駆動ユニット
61 駆動モータ
62 動力伝達部
64 偏芯カム
70 解除機構
80 解除手段
90 係止ピン
100 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに対して着脱可能なユニット部と、
前記ユニット部をフレームに対して着脱可能とし、前記フレーム及びユニット部のいずれか一方に配設される係止ピンと、他方に配設されて前記係止ピンに係合する溝を具備する係合部材とを備えた係合機構と、
を有する電子機器の着脱機構であって、
前記係合部材は、回動可能に支持されており、前記溝が係止ピンから外れるように回動駆動された際、その回動により前記ユニット部をフレームから離脱する方向に移動させることを特徴とする電子機器の着脱機構。
【請求項2】
前記係合部材の溝を前記係止ピンと係合する方向に付勢する付勢部材と、
前記係合部材に形成され、前記ユニット部をフレームに装着する際、前記係止ピンを前記溝に案内する傾斜部と、
前記係合部材の溝に連続的に形成され、前記係合部材の回動駆動によって前記係止ピンと溝との係合が外れた後、そのまま前記係止ピンに当接して前記ユニット部を離脱する方向に移動させる当接部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の着脱機構。
【請求項3】
前記係合機構は、前記係合部材と当接する偏芯カムと、この偏芯カムを回転駆動する駆動モータとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の着脱機構。
【請求項4】
前記ユニット部に、紙葉体を受け入れる紙葉体処理ユニットを、前記紙葉体を挿入する挿入口が上下方向に延出するように縦方向に収容し、
前記係合部材を紙葉体処理ユニットと同一方向に設置したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器の着脱機構。
【請求項5】
前記ユニット部はコネクタを備え、前記フレームは前記ユニット部のコネクタが接続される接続コネクタを備え、
前記ユニット部がフレームから離脱する方向に移動することで前記コネクタ同士の接続が解除されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器の着脱機構。
【請求項6】
前記フレームは、前記ユニット部への電源供給を行う電源供給部を備えており、前記コネクタを介して電源の供給が行われることを特徴とする請求項5に記載の電子機器の着脱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−229074(P2008−229074A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73956(P2007−73956)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【出願人】(391065769)株式会社セタ (89)
【Fターム(参考)】