説明

電子機器の筐体構造体並びに電子機器の筐体構造体に具備する連動装置

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な電子機器の筐体構造体並びに電子機器の筐体構造体に具備する連動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第一部材1と、この第一部材1に重合配設して重合面方向にスライド自在に設ける第二部材2と、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設ける可動体3と、前記第一部材1に対する前記第二部材2のスライド移動に伴い、前記可動体3を連動せしめる連動装置Dとを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパソコンや携帯電話などの電子機器の筐体構造体並びに電子機器の筐体構造体に具備する連動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、数字キーやファンクションキーを配列した操作部を本体部の上側面に設け、所定の表示がなされる液晶パネルなどのディスプレイ部を、前記本体部に重合する重合部の上側面に設け、この本体部と重合部とを前後方向に相対的にスライドする構造の所謂ノート型のパソコンなどが従来からある。
【0003】
例えばこのスライド構造は、重合部左右に間隔を置いてガイド部を直接若しくは間接的に(本体部に設ける部材をも含む意味である)設け、この左右のガイド部にスライド係合するスライド部を本体部に直接若しくは間接的に設け、ガイド部に対してスライド部が相対的にスライドすることで、重合部と本体部とをスライド自在に連結する構成としている。
【0004】
このようなスライド式のパソコンのスライド構造を実現するスライド装置は、前述のように左右に設けたガイド部間にスライド部をその両端部をスライド自在に係合させて、本体部に対して重合部をスライド自在に連結する構成である。
【0005】
ところで、このパソコンを構成する本体部と重合部との間には、本体部に設けた電子部と重合部に設けた電子部との電気的接続を行う平板帯状のフレキシブルケーブルが設けられているが、このフレキシブルケーブルは、本体部に対して重合閉塞状態の重合部をスライドさせて開放状態とした場合を考慮した長さに設定されており、本体部に対して重合部を重合閉塞状態とした際には、その長さ方向の略中央部位で折り返した状態となる。
【0006】
また、その構造上、本体部に対して重合部を重合閉塞状態とした際にこのフレキシブルケーブルが干渉しないように、重合部の下面にして本体部との重合面にはケーブル用開口部が設けられている。しかし、本体部に対して重合閉塞状態の重合部をスライド移動させて開放状態とした際、それまで本体部に重合していて隠蔽状態であった重合部の重合面が外部に表出することになり、よって、この重合部の重合面に設けたケーブル用開口部からフレキシブルケーブルが外部に露出することになり、体裁が悪く、しかも、外部のものと接触して破損し易いことになる。
【0007】
そこで、従来においても、重合部を開放状態とした際、このケーブル用開口部を閉塞するシャッター部材が重合部に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このシャッター部材は、重合部にスライド自在に設けられており、本体部に対する重合部のスライド移動に伴い連動してケーブル用開口部を開閉するように構成されており、従来、このシャッター部材を開閉させるための構造(連動装置)として複数のリンク部品を枢着してリンクさせたリンク構造が採用されているが、このリンク構造は、構造が複雑でコスト高であり量産性が悪く、しかも、この枢着するリンク部品同士の重なりにより厚みが生じて筐体(本体部及び重合部)を薄型コンパクト化する際の妨げとなっている。
【0009】
また、その他にも、使用を重ねることでのグリス切れや部品の摩擦などにより、リンク部品同士の枢着部での回動が円滑に行われにくい場合があり、よって、シャッター部材の可動が円滑に行われず、ひいては本体部に対する重合部のスライド移動に支障を来す場合があるなどの問題点もある。
【0010】
本発明者は、前述した問題点に着目し、種々の実験研究を繰り返し行った結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な電子機器の筐体構造体並びに電子機器の筐体構造体に具備する連動装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
第一部材1と、この第一部材1に重合配設して重合面方向にスライド自在に設ける第二部材2と、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設ける可動体3と、前記第一部材1に対する前記第二部材2のスライド移動に伴い、前記可動体3を連動せしめる連動装置Dとを具備した電子機器の筐体構造体であって、前記連動装置Dは、前記可動体3に設ける第一の支点部4と、前記第二部材2,前記第一部材1のいずれか一方若しくは双方に設ける第二の支点部5と、前記第一の支点部4及び前記第二の支点部5に掛け付けられこの第一の支点部4及び第二の支点部5を介して前記第一部材1,前記第二部材2同士間に張設状態に架設される線材6とから成る構造であり、前記第一部材1に対して前記第二部材2がスライド移動した際、前記第二の支点部5を固定支点として引張られる前記線材6の引張り作用により移動する移動支点となるように前記第一の支点部4を構成したことを特徴とする電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0013】
また、前記第一の支点部4及び前記第二の支点部5を滑車で構成し、前記第一部材1に対して前記第二部材2がスライド移動した際、前記第二の支点部5を定滑車として引張られる前記線材6の引張り作用により移動する動滑車として前記第一の支点部4を構成したことを特徴とする請求項1記載の電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0014】
また、前記第一部材1,前記第二部材2同士間に、前記第一部材1に対して前記第二部材2をスライド方向に付勢する付勢機構12を有し、この付勢機構12により前記線材6には張力が付与されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0015】
また、前記第一の支点部4と前記第二の支点部5を同一平面上に並設状態となるように前記第二部材2若しくは前記第一部材1に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0016】
また、前記連動装置Dを複数具備し、一の連動装置Dの前記線材6における前記第一の支点部4に対して折り返し状態で掛け付けるこの折り返し方向と、他の連動装置Dの前記線材6における前記第一の支点部4に対して折り返し状態で掛け付けるこの折り返し方向とを互いに異なる方向に設定して、前記第一部材1に対して重合閉塞状態の前記第二部材2を開放させるスライド移動に伴い、前記可動体3を所定方向に可動せしめるように前記一の連動装置Dを構成するとともに、前記第一部材1に対して開放状態の前記第二部材2を閉塞させるスライド移動に伴い、前記可動体3を前記一の連動装置Dによる可動方向と異なる方向に可動せしめるように前記他の連動装置Dを構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0017】
また、前記第一部材1に設ける電子部と前記第二部材2に設ける電子部との電気的接続をするもので、前記第一部材1,前記第二部材2同士間に設けられるフレキシブルケーブル7を有し、前記第一部材1若しくは前記第二部材2の互いに重合する重合面には、前記フレキシブルケーブル7が貫通するケーブル用開口部8が設けられ、前記可動体3は、前記第一部材1に対して重合閉塞状態の前記第二部材2をスライド移動させて開放状態とした際、前記第二部材2若しくは前記第一部材1の重合面に露出する前記ケーブル用開口部8を閉塞するシャッター部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0018】
また、前記第一部材1に設けた電子部と前記第二部材2に設けた電子部との電気的接続をするもので、前記第一部材1,前記第二部材2同士間に折り返し状態に設けられるフレキシブルケーブル7を有し、前記可動体3は、前記第一部材1に対して重合閉塞状態の前記第二部材2をスライド移動させて開放状態とした際、前記フレキシブルケーブル7を前記第二部材2のスライド方向に誘導する誘導部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体に係るものである。
【0019】
また、第一部材1と、この第一部材1に重合配設して重合面方向にスライド自在に設ける第二部材2と、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設ける可動体3とを有する電子機器の筐体構造体に具備し、前記第一部材1に対する前記第二部材2のスライド移動に伴い、前記可動体3を連動せしめる連動装置であって、前記可動体3に設ける第一の支点部4と、前記第二部材2,前記第一部材1のいずれか一方若しくは双方に設ける第二の支点部5と、前記第一部材1,前記第二部材2同士間に架設され前記第一の支点部4及び前記第二の支点部5を介して張設状態となる線材6とから成る構造であり、前記第一部材1に対して前記第二部材2がスライド移動した際、前記第二の支点部5を固定支点として引張られる前記線材6の引張り作用により移動する移動支点となるように前記第一の支点部4を構成したことを特徴とする電子機器の筐体構造体に具備する連動装置に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、従来から提案されるものに比し、簡易構造でコスト安にして量産性に秀れ、しかも、薄型コンパクト化を実現することができ、しかも、第一部材に対する第二部材のスライド移動に支障を来すことなく可動体の円滑な可動が達成されることになるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な電子機器の筐体構造体並びに電子機器の筐体構造体に具備する連動装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1を示す斜視図である。
【図2】実施例1を示す背面斜視図である。
【図3】実施例1に係る要部の説明図である。
【図4】実施例1に係る要部の説明断面図である。
【図5】実施例1に係る要部の説明断面図である。
【図6】実施例1に係る要部の動作説明図である。
【図7】実施例1に係る要部の動作説明図である。
【図8】実施例1に係る要部の動作説明図である。
【図9】実施例1に係る要部の動作説明図である。
【図10】実施例2に係る要部の説明図である。
【図11】実施例2に係る要部の動作説明図である。
【図12】実施例2に係る要部の動作説明図である。
【図13】実施例2に係る要部の動作説明図である。
【図14】実施例2に係る要部の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
例えば第一部材1に対して第二部材2をスライド移動させると、この第二部材2により線材6は第二の支点部5を固定支点として引張られ、この線材6の引張り作用により第一の支点部4は移動支点として移動し、この第一の支点部4の移動により可動体3は可動する。即ち、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動に伴い、可動体3が連動して可動する。
【0024】
従って、この連動構造が支点部4,5と線材6との組み合わせであり、前述した従来から提案されるリンク構造のように部材同士を重ねることが無く、可及的に省スペースで構成することができ、ひいては全体を薄型コンパクト化を達成し得ることになる。
【0025】
また、この本発明に係る連動装置Dは、所謂仕事の原理を利用した構造であるから、少ない力で可動体3を可動させることができ、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動に支障を来すことなく可動体3の円滑な可動が達成されることになり、そして、支点部4,5の配置と線材6の長さ等を適宜設定するだけで、可動体3の可動方向や可動量を簡易且つ確実に調整することができる。
【実施例1】
【0026】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施例は、第一部材1と、この第一部材1に重合配設して重合面方向にスライド自在に設ける第二部材2と、第一部材1若しくは第二部材2に設ける可動体3と、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動に伴い、可動体3を連動せしめる連動装置Dとを具備した電子機器の筐体構造体である。
【0028】
具体的には、重合コンパクト化の図れるノート型パソコン(モバイル電子機器)に本発明を適用したもので、回路基板,電源などの電子部(電子部品)を内装した横長ケース状の第一部材1(本体部1)の上面側にキーボード機能を果たす操作部9を設け、この本体部1に重合して操作部9を覆う略同形の横長ケース状の第二部材2(重合部2)を巾方向と直交する前後方向にスライド自在となるスライド装置11により連結した構成としている。この重合部2の上面側には液晶パネルなどのディスプレイ部10を設けている。
【0029】
このスライド装置11は、図2,3に図示したように第一部材1の重合面(上面側)にして前後方向の後端側位置にはコ字型状に形成したガイド部11Aを左右対向位置に設けている。
【0030】
一方、第二部材2の下面側の左右対向位置には前記左右のガイド部11Aにスライド係合するスライド部11Bを設けている。具体的には、第二部材2の重合面(下面部)の左右対向側縁位置に前記ガイド部11Aにスライド係合する長尺レール状のスライド部11Bを形成した構成であり、このスライド部11Bを前記第一部材1の左右のガイド部11Aに夫々スライド係合せしめて第一部材1と第二部材2とを相対スライド移動自在に連結した構成である。
【0031】
従って、第一部材1を固定部材とした場合には、この第一部材1に対して第二部材2は可動部材として前後方向にスライド移動することになる。
【0032】
また、ガイド部11Aには、ヒンジ装置Hを介して擺動する擺動構造が設けられており、第二部材2は第一部材1に対して起伏回動(チルトアップ)するように構成されている。
【0033】
従って、第二部材2に設けたディスプレイ部10を起き上がり状態とすることができる(図9参照)。
【0034】
そして、本実施例では、付勢機構12の一端を第一部材1のガイド部11Aの上面部所定箇所に枢着連結し、他端を第二部材2の下面部所定箇所に枢着連結して付勢機構12の両端を第一部材1及び第二部材2に夫々連結した構成である。
【0035】
尚、例えばガイド部11Aを第一部材1の一部として一体に設けた構成とすると共に、この第一部材1としてのガイド部11Aに付勢機構12の一端を連結した構成としても良い。同じく、例えばスライド部11Bを第二部材2の一部として一体に設けた構成とすると共に、この第二部材2としてのスライド部11Bに付勢機構12の他端を連結した構成としても良い。
【0036】
また、この付勢機構12としては、図2に示すように、中間部を巻回してコイル状部12Aを頂部に有し左右に連結端12Bを有する全体視へ字状のコイルバネ12を採用し、このコイルバネ12の左右の連結端12Bが互いに離れようとする拡角付勢が生じるようにしている。
【0037】
そして、この付勢機構12の一方の連結端12Bを第一部材1に連結し、他方の連結端12Bを第二部材2に連結した構成としている。
【0038】
尚、前記の構成のコイルバネ12以外にも、例えばへ字状の板バネやへ字状の線バネを採用しても良いし、カム面とこれにバネ付勢押圧するローラとによって戻り付勢や進み付勢が生じるように構成しても良い。
【0039】
従って、第一部材1と第二部材2とが重合閉塞状態においては、付勢機構12が更に拡がろうとする付勢によって、第一部材1と第二部材2とが重合する方向へ戻り付勢(閉じ付勢)され(図8の状態)、また、第一部材1と第二部材2とが開放状態においては、付勢機構12が更に拡がろうとする付勢によって、第一部材1と第二部材2とが開放する方向へ進み付勢(開き付勢)されている(図6の状態)。
【0040】
また、この付勢機構12は、後述する連動装置Dに係る線材6に張力を付与するように構成されている。
【0041】
また、本実施例は、第一部材1若しくは第二部材2に可動体3が設けられ、更に、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動に伴い、可動体3を連動せしめる連動装置Dを具備している。
【0042】
具体的には、前述したように第一部材1と第二部材2との間には、第一部材1に設けた電子部と第二部材1に設けた電子部との電気的接続を行う平板帯状のフレキシブルケーブル7が架設状態に設けられ、このフレキシブルケーブル7は、第一部材1に対して重合閉塞状態の第二部材2をスライド移動させて開放状態とした場合を考慮した長さに設定されており、第一部材1に対して第二部材2を重合閉塞状態とした際には、その長さ方向に略中央部位で折り返した状態となる。
【0043】
具体的には、フレキシブルケーブル7は、図4に図示したように一端部が第一部材1の上面側中央位置にして前後方向の後端位置で電子部に接続され、図5に図示したように他端部が第二部材1の下面側中央位置にして前後方向の前端位置で電子部に接続されており、図7,9に図示したように、側方から見た際、常に折り返し部7aが前端側に位置するように第一部材1と第二部材2との間に折り返し状態に設けられている。
【0044】
また、その構造上、第一部材1に対して第二部材2を重合閉塞状態とした際にこのフレキシブルケーブル7が第二部材2に干渉しないように、第二部材2の下面にして第一部材1との重合面にはケーブル用開口部8が設けられ、更に、第二部材2を開放状態とした際、このケーブル用開口部8を閉塞する可動体3としてのシャッター部材が第二部材2に設けられている。
【0045】
この可動体3は、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動方向にスライド自在に設けられており、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動に伴い連動装置Dによりスライド移動する。尚、この可動体3の可動は、直線方向のスライド移動に限らず、円方向へのスライド移動でも、枢着構造を回動支点とした擺動でも良い。
【0046】
この連動装置Dは、図2,6,8に図示したように可動体3に設ける第一の支点部4と、第二部材2,第一部材1のいずれか一方若しくは双方に設ける第二の支点部5と、第一の支点部4及び第二の支点部5に掛け付けられこの第一の支点部4及び第二の支点部5を介して第一部材1,第二部材2同士間に張設状態に架設される線材6とから成る構造であり、第一部材1に対して第二部材2がスライド移動した際、第二の支点部5を固定支点として引張られる線材6の引張り作用により移動する移動支点となるように第一の支点部4を構成している。
【0047】
第一の支点部4は、可動体3の前後両端部に複数(2つ)ずつ設けられており、滑車で構成されている。
【0048】
また、第二の支点部4は、第二部材2の所定位置(ケース状の部材の内部)に複数設けられており、前述した第一の支点部4と同様、滑車で構成されている。
【0049】
尚、可動体3を第一部材1に設けた際には第二の支点部4を第一部材1に設けても良い。
【0050】
また、線材6は金属製のワイヤーであり、その一端部6aは第一部材1に設けたガイド部11Aに固定され、他端部6bは第二部材2の下面所定位置に固定されており、第一部材1と第二部材2との間に架設状態に設けられている。
【0051】
また、線材6は、前述した第一の支点部4及び第二の支点部5に掛け付けられており、第一部材1,第二部材2同士間に張設状態に架設されている。
【0052】
従って、第一部材1に対して第二部材2がスライド移動した際、第二の支点部5を定滑車として引張られる線材6の引張り作用により移動する動滑車として第一の支点部4を構成しており、本実施例に係る連動装置Dは定滑車と動滑車を複合した複合滑車構造である。尚、第一の支点部4及び第二の支点部5は滑車に限らず、単なる突状(ピン状)のものでも良いなど、線材6を支承した際に可及的に接触摩擦抵抗の少ない構造であれば良い。
【0053】
また、線材6には前述した第一部材1に対して第二部材2をスライド方向に付勢する付勢機構12により常に張力が付与されている。
【0054】
従って、可動体3は線材6を介して常に付勢機構12の付勢を受けており、ケーブル用開口部8の閉塞状態及び開放状態のいずれの際にも付勢機構12に付勢されてその機能が確実に発揮されることになる。
【0055】
また、本実施例は、第一の支点部4と第二の支点部5を同一平面上に並設状態となるように第二部材2に設けている。
【0056】
即ち、可動体3及び第二部材2に突出状態に設ける第一の支点部4及び第二の支点部5の突出量を適宜設定しており、第一の支点部4及び第二の支点部5に対して線材6を掛け付ける部位が略同一平面上になるように構成されている。
【0057】
また、本実施例は、連動装置Dを複数(2つ)具備し、この各連動装置Dを第二部材2に設けた可動体3を間に挟んだ左右位置に配置している。
【0058】
また、この2つの連動装置Dのうち、一の連動装置Dの前記線材6における前記第一の支点部4に対して折り返し状態で掛け付けるこの折り返し方向と、他の連動装置Dの前記線材6における前記第一の支点部4に対して折り返し状態で掛け付けるこの折り返し方向とを互いに異なる方向に設定して、第一部材1に対して重合閉塞状態の第二部材2を開放させるスライド移動に伴い、可動体3を所定方向に可動せしめるように一の連動装置D(図6,8中左側の連動装置D)を構成するとともに、第一部材1に対して開放状態の第二部材2を閉塞させるスライド移動に伴い、可動体3を一の連動装置Dによる可動方向と異なる方向に可動せしめるように他の連動装置D(図6,8中右側の連動装置D)を構成している。
【0059】
従って、第一部材1に対して重合閉塞状態の第二部材2を開放させるスライド移動に伴い、一の連動装置D(図6,8中左側の連動装置D)により、可動体3はケーブル用開口部8を閉塞する位置までスライド移動し、その反対に、第一部材1に対して開放状態の第二部材2を閉塞させるスライド移動に伴い、他の連動装置D(図6,8中右側の連動装置D)により、可動体3はケーブル用開口部8を開放する位置までスライド移動する。
【0060】
本実施例は上述のように構成したから、第一部材1に対して第二部材2をスライド移動させると、この第二部材2により線材6は第二の支点部5を固定支点(定滑車)として引張られ、この線材6の引張り作用により第一の支点部4は移動支点(動滑車)として移動し、この第一の支点部4の移動により可動体3は可動する。
【0061】
具体的には、第一部材1に対して重合閉塞状態の第二部材2を開放させるスライド移動させると、一の連動装置Dが作動することで可動体3はスライド移動してケーブル用開口部8は閉塞され、反対に、第一部材1に対して開放状態の第二部材2を閉塞させるスライド移動させると、他の連動装置Dが作動することで可動体3はスライド移動してケーブル用開口部8は開放され、このケーブル用開口部8にフレキシブルケーブル7が貫通状態に配されることになる。
【0062】
従って、この連動構造が支点部4,5と線材6との組み合わせであり、前述した従来から提案されるリンク構造のように部材同士を重ねることが無く、可及的に省スペースで構成することができ、ひいては全体を薄型コンパクト化を達成し得ることになる。
【0063】
また、この本発明に係る連動装置Dは、所謂仕事の原理を利用した構造であるから、少ない力で可動体3を可動させることができ、第一部材1に対する第二部材2のスライド移動に支障を来すことなく可動体3の円滑な可動が達成されることになり、そして、支点部4,5の配置と線材6の長さ等を適宜設定するだけで、可動体3の可動方向や可動量を簡易且つ確実に調整することができる。
【0064】
よって、本実施例によれば、従来から提案されるものに比し、簡易構造でコスト安にして量産性に秀れ、しかも、薄型コンパクト化を実現することができ、しかも、第一部材に対する第二部材のスライド移動に支障を来すことなく可動体の円滑な可動が達成されることになる。
【実施例2】
【0065】
本発明の具体的な実施例2について図10〜14に基づいて説明する。
【0066】
本実施例は、実施例1と同様に可動体3を連動せしめる連動装置Dを具備し、第一部材1,第二部材2同士間に折り返し状態に設けられるフレキシブルケーブル7を有し、可動体3は、第一部材1に対して重合閉塞状態の第二部材2をスライド移動させて開放状態とした際、フレキシブルケーブル7を第二部材2のスライド方向に誘導する誘導部材とした場合である。
【0067】
具体的には、この可動体3は、図10に図示したようにフレキシブルケーブル7に被嵌する被嵌部3aを有し、連動装置Dを介して第二部材2の下面中央位置に沿って移動する構造である。尚、本実施例に係る可動体3は、フレキシブルケーブル7と連動装置Dに係る線材6とで宙吊り状態でケース状の第二部材2内を可動する構造であるが、第二部材2に設けたガイド部にスライド係合する構造としても良い。
【0068】
この可動体3は、第一部材1に対して重合閉塞状態の第二部材2をスライド移動させて開放させた際、フレキシブルケーブル7を該フレキシブルケーブル7に折り返し部7aを形成しながら第二部材2側へ引張り出して誘導する構造である(図11,12参照)。
【0069】
本実施例に係るフレキシブルケーブル7は、一端部が第一部材1の上面側中央位置にして前後方向の後端位置で電子部に接続され、他端部が第二部材1の下面側中央位置にして前後方向の前端位置で電子部に接続されており、側方から見た際、常に折り返し部7aが後端側に位置するように第一部材1と第二部材2との間に折り返し状態に設けられている。
【0070】
符号13はフレキシブルケーブル7の一端部に設けられ第一部材1に設けられる電子部に接続する第一端子、14はフレキシブルケーブル7の他端部に設けられ第二部材2に設けられる電子部に接続する第二端子である。
【0071】
連動装置Dは、実施例1と同構造であり、可動体3に設ける複数の第一の支点部4(滑車)と、第二部材2に設ける第二の支点部5(滑車)と、第一の支点部4及び第二の支点部5に掛け付けられこの第一の支点部4及び第二の支点部5を介して第一部材1,第二部材2同士間に張設状態に架設される線材6とから成る構造であり、第一部材1に対して第二部材2がスライド移動した際、第二の支点部5を固定支点(定滑車)として引張られる線材6の引張り作用により移動する移動支点(動滑車)となるように第一の支点部4を構成している。
【0072】
本実施例では、第一部材1に対して開放状態の第二部材2を閉塞させた際には、フレキシブルケーブル7は第二部材2との接続部(第二端子14)が引張られて自然に元の状態に戻ることになる為(図13,14参照)、戻し用の連動装置Dは設けていないが、複数の連動装置Dを具備せしめてその一部を戻し用の連動装置Dを設けるようにしても良い。
【0073】
その余は実施例1と同様である。
【0074】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0075】
D 連動装置
1 第一部材
2 第二部材
3 可動体
4 第一の支点部
5 第二の支点部
6 線材
7 フレキシブルケーブル
8 ケーブル用開口部
12 付勢機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、この第一部材に重合配設して重合面方向にスライド自在に設ける第二部材と、前記第一部材若しくは前記第二部材に設ける可動体と、前記第一部材に対する前記第二部材のスライド移動に伴い、前記可動体を連動せしめる連動装置とを具備した電子機器の筐体構造体であって、前記連動装置は、前記可動体に設ける第一の支点部と、前記第二部材,前記第一部材のいずれか一方若しくは双方に設ける第二の支点部と、前記第一の支点部及び前記第二の支点部に掛け付けられこの第一の支点部及び第二の支点部を介して前記第一部材,前記第二部材同士間に張設状態に架設される線材とから成る構造であり、前記第一部材に対して前記第二部材がスライド移動した際、前記第二の支点部を固定支点として引張られる前記線材の引張り作用により移動する移動支点となるように前記第一の支点部を構成したことを特徴とする電子機器の筐体構造体。
【請求項2】
前記第一の支点部及び前記第二の支点部を滑車で構成し、前記第一部材に対して前記第二部材がスライド移動した際、前記第二の支点部を定滑車として引張られる前記線材の引張り作用により移動する動滑車として前記第一の支点部を構成したことを特徴とする請求項1記載の電子機器の筐体構造体。
【請求項3】
前記第一部材,前記第二部材同士間に、前記第一部材に対して前記第二部材をスライド方向に付勢する付勢機構を有し、この付勢機構により前記線材には張力が付与されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体。
【請求項4】
前記第一の支点部と前記第二の支点部を同一平面上に並設状態となるように前記第二部材若しくは前記第一部材に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体。
【請求項5】
前記連動装置を複数具備し、一の連動装置の前記線材における前記第一の支点部に対して折り返し状態で掛け付けるこの折り返し方向と、他の連動装置の前記線材における前記第一の支点部に対して折り返し状態で掛け付けるこの折り返し方向とを互いに異なる方向に設定して、前記第一部材に対して重合閉塞状態の前記第二部材を開放させるスライド移動に伴い、前記可動体を所定方向に可動せしめるように前記一の連動装置を構成するとともに、前記第一部材に対して開放状態の前記第二部材を閉塞させるスライド移動に伴い、前記可動体を前記一の連動装置による可動方向と異なる方向に可動せしめるように前記他の連動装置を構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体。
【請求項6】
前記第一部材に設ける電子部と前記第二部材に設ける電子部との電気的接続をするもので、前記第一部材,前記第二部材同士間に設けられるフレキシブルケーブルを有し、前記第一部材若しくは前記第二部材の互いに重合する重合面には、前記フレキシブルケーブルが貫通するケーブル用開口部が設けられ、前記可動体は、前記第一部材に対して重合閉塞状態の前記第二部材をスライド移動させて開放状態とした際、前記第二部材若しくは前記第一部材の重合面に露出する前記ケーブル用開口部を閉塞するシャッター部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体。
【請求項7】
前記第一部材に設けた電子部と前記第二部材に設けた電子部との電気的接続をするもので、前記第一部材,前記第二部材同士間に折り返し状態に設けられるフレキシブルケーブルを有し、前記可動体は、前記第一部材に対して重合閉塞状態の前記第二部材をスライド移動させて開放状態とした際、前記フレキシブルケーブルを前記第二部材のスライド方向に誘導する誘導部材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器の筐体構造体。
【請求項8】
第一部材と、この第一部材に重合配設して重合面方向にスライド自在に設ける第二部材と、前記第一部材若しくは前記第二部材に設ける可動体とを有する電子機器の筐体構造体に具備し、前記第一部材に対する前記第二部材のスライド移動に伴い、前記可動体を連動せしめる連動装置であって、前記可動体に設ける第一の支点部と、前記第二部材,前記第一部材のいずれか一方若しくは双方に設ける第二の支点部と、前記第一部材,前記第二部材同士間に架設され前記第一の支点部及び前記第二の支点部を介して張設状態となる線材とから成る構造であり、前記第一部材に対して前記第二部材がスライド移動した際、前記第二の支点部を固定支点として引張られる前記線材の引張り作用により移動する移動支点となるように前記第一の支点部を構成したことを特徴とする電子機器の筐体構造体に具備する連動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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