説明

電子機器を納めた簡易形建造物の天井構造

【課題】電子機器を収容する建造物において、屋根部分の強度や剛性の増大を図りながら室内の熱を効率的に外部に放出し、さらに、建造物の増設や移設を容易とする。
【解決手段】建造物の屋根3の下方に中間天井板7を設け、電子機器を収納したラック6を中間天井板9の下側の電子機器収容室CR内に収める。中間天井板7を挟んで、電子機器収容室CRに空気を冷却する熱交換器10を下側に、排熱用の室外熱交換器11を上側に設置するとともに、電子機器収容室CRの長手方向に延びるビーム材8を設け、ビーム材8を、電子機器収容室CRの端部壁又は建造物の両端部のフレーム枠体に固定する。建造物の屋根部分に作用する荷重は、ビーム材8を介して両端部のフレーム枠体に支持されるので、屋根部分の強度及び剛性が増加する。また、電子機器から発生する熱は、電子機器収容室CR内の熱交換器10と室外熱交換器11とにより外気へ放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ラックに収納した多数のサーバを集中して設置するデータセンターなど、コンピュータ等の電子機器を室内に集中管理する簡易形の建造物、特に、その天井構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に代表されるコンピュータネットワークの発展に伴い、サーバと呼ばれる業務用の比較的大型で信頼性を重視したコンピュータ、あるいは主に記憶装置を収めたストレージなどのコンピュータの需要が、ネットワークのサービス提供業者を中心に近年急速に拡大している。サーバ等のコンピュータは、収納用の筐体であるラックに多数のものを収め、一個所で集中管理されることが多く、サーバ等を内部に集中して管理する建造物は、データセンターと呼ばれている。
【0003】
データセンターには、通常の建築物として構築されるもの以外に、輸送用の大型容器であるコンテナを改造して構築するコンテナ型データセンター(モジュール型データセンターともいわれる)が存在する。輸送用のコンテナは、周囲を強度の大きい壁面で取り囲まれた直方体形状の堅牢な構造物であって、データセンターのセキュリティを確保するのが容易であるとともに、気密性が高く、塵埃の侵入や塩害(海岸付近に設置される場合)を防止してコンピュータを保護するのも容易である。また、コンテナ型データセンターは、輸送用のコンテナを基礎とする、通常の建築物と比較すると小型の建造物であるので、その増設や移設が簡単であり、無人運転に適しているという利点もある。コンテナ型データセンターのこうした特徴を利用すべく、複数の鋼材の柱と梁とを組み合わせた格子構造を備え、格子構造の各区画にデータセンターとしてのコンテナを収めるようにした鉄骨構造の大規模な建築物が、特開2011−18220号公報に開示されている。
【0004】
ところで、多数のコンピュータを備えたデータセンター等の建造物においては、コンピュータの発熱に起因する熱障害を防止し、併せて室内の空調を行う必要がある。コンピュータの冷却や室内の空調を行うには、冷凍サイクルを実行する空調機を設置してコンピュータ等いわば強制的に冷却してもよいが、冷媒の相変化を利用するヒートパイプと同様な熱伝達促進装置を用いて、室内の熱を外部の大気に積極的に排熱することによりコンピュータの熱障害を防止する冷却装置も知られており、例えば、特開2011−38734号公報に開示されている。
【0005】
この公報に記載の冷却装置は、携帯電話等の電話基地局に収容された情報通信機器を冷却(温度上昇を抑制)するためのものであり、図9に示されるように、電話基地局の屋外に室外熱交換器LE(低温熱交換器)を設置するとともに、情報通信機器が設置された室内Rの上方に室内熱交換器HE(高温熱交換器)を設置する。両方の熱交換器は連通されて内部に冷媒が封入されており、情報通信機器から発生した熱によって室内熱交換器HEの冷媒が沸騰して室外熱交換器LEに移送され、ここで、大気に熱を放出して冷媒が凝縮し、重力で室内熱交換器HEに還流する。室内の空気は、室内側ファンCFにより循環され、温度の下降した室内熱交換器HEを通過して冷却される。
外気冷却によるこの装置は、温度差に基づく対流を利用する自然循環式の冷却装置であって、冷凍サイクルを行うものではないから、基本的に外部電力等が不要である。したがって、この冷却装置をデータセンターに採用したときは、サーバ等のコンピュータで使用する電力以外のものは殆ど必要なく、消費電力の大幅な削減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−18220号公報
【特許文献2】特開2011−38734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
データセンターあるいは電話基地局など、コンピュータ等の電子機器を多数収容する建造物においては、コンピュータの十分なセキュリティの確保が要請されるとともに、塵埃や塩害等からのコンピュータの保護が要請される。こうした要請に応じるには、建造物の密閉性を高めて室内を外部から遮断することが可能でなければならないが、一方では、コンピュータの発熱に起因する熱障害を防ぐため、室内の熱を外部に放出しながらコンピュータを確実に冷却する必要があり、ことに、最近のデータセンターでは、室内冷却用の電力等は極力抑制しながらコンピュータの熱障害を防止することが求められる。コンテナ型データセンターのような小型の設備では、特許文献2に記載のような自然循環式の冷却装置をデータセンターの屋根に設置するのが望ましいけれども、このとき、屋根部分の剛性や強度が問題となる。
【0008】
そして、コンテナ型データセンターは、サーバ等の需要の増減に対応して、データセンターの建造物自体も容易に増設や撤去が可能であることが要請される。特許文献1に開示される建築物は、コンテナ型データセンターの増設等の容易化を図ったものではあるが、鉄骨構造を基本とする非常に大規模な建築物であって、極めて大量のサーバ等を必要とする場合以外には、不向きである。コンテナ型データセンターでは、船舶に積載する海上コンテナを積み重ねるように、データセンター自体を積み重ねて増設することができるが、この際にも屋根部分の強度等を増大することが望ましい。
本発明の課題は、データセンター等の建造物において、屋根部分等の強度や剛性の増大を図り、収容された多数のコンピュータ等の効率的な冷却を行い、あるいは、データセンターの増設や移設を容易化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明は、建造物の屋根の下方に中間天井板を設け、電子機器を中間天井板の下側の電子機器収容室に収めるとともに、屋根と中間天井板との間には室外熱交換器を設置して熱を外気に排熱し、さらに、屋根と中間天井板との間に電子機器収容室の長手方向に延びるビーム材が設け、これを電子機器収容室の両端の端部壁に固定するものである。すなわち、本発明は、
「電子機器を室内に収めた直方体形状の建造物であって、
前記建造物の両端部には、柱状部材を有するフレーム枠体が配置され、
前記建造物の屋根の下方には中間天井板が設けられ、前記電子機器が前記中間天井板の下側に形成された電子機器収容室内に収められ、
前記電子機器収容室内には、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設置され、かつ、前記建造物の屋根と前記中間天井板との間には、前記熱交換器が吸収した熱を外気に排熱する室外熱交換器が設置されており、さらに、
前記電子機器収容室は、平面視で長方形の形状を有し、長手方向の両端の端部壁が前記フレーム枠体に連結され、
前記建造物の屋根と前記中間天井板との間には、前記電子機器収容室の長手方向に延びるビーム材が設けられ、前記ビーム材が前記電子機器収容室の前記両端の端部壁又は前記フレーム枠体に固定されるとともに、前記建造物の屋根と前記中間天井板とが前記ビーム材に取り付けられる」
ことを特徴とする建造物となっている。
【0010】
請求項2に記載のように、前記ビーム材の下方に、前記電子機器収容室の長手方向に延びる樋部材を固定し、この樋部材を排水口に連通するよう構成することが好ましい。
【0011】
請求項3に記載のように、前記中間天井板を、前記建造物の屋根の一部分において、その下方に設けることができる。
【0012】
請求項4に記載のように、複数の前記電子機器をラックに収納するとともに、前記ラックの上方には、前記熱交換器を収めた熱交換器外箱を取り付け、前記熱交換器外箱を前記中間天井板に固定することが好ましい。
【0013】
請求項5に記載のように、前記熱交換器と前記室外熱交換器とを連通し、その内部に、対流により循環する冷媒を封入して、室内の熱が前記室外熱交換器から排熱されるよう構成することができる。
【0014】
請求項6に記載のように、前記フレーム枠体の柱状部材の上部及び下部に、緊締具の係合可能な締結金具を固着し、前記建造物の屋根を、上部に固着された前記締結金具よりも低くなる位置に設置することが好ましい。
【0015】
また、請求項7に記載のように、前記電子機器収容室の端部壁と、その端部壁に連結される前記フレーム枠体との間に、電子機器収容室の付帯設備を設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
データセンター等として使用される本発明の建造物は、輸送用のコンテナと同様に、全体としては直方体の形状に形成され、両端部には柱状部材を有するフレーム枠体が配置されている。建造物の屋根の下方には中間天井板が設けられており、電子機器が中間天井板の下側の電子機器収容室内に収められ、中間天井板の上部の空間には、電子機器収容室の熱を外気に排熱する室外熱交換器が設置される。そして、建造物の屋根と中間天井板との間には、電子機器収容室を長手方向に延びるビーム材が、電子機器収容室の全長に亘って設けられている。
【0017】
つまり、電子機器収容室の天井部分には、その全長に亘って長手方向に延びるビーム材が設けてあり、このビーム材は、フレーム枠体に連結された電子機器収容室の端部壁、又はフレーム枠体自体に固定される。電子機器収容室の天井部分は、建造物の屋根と中間天井板とによる2重構造となっているが、建造物の屋根及び室外熱交換器が設置される中間天井板がそれぞれビーム材に取り付けられるので、天井部分に作用する荷重が、ビーム材を介して強度の大きいフレーム枠体に伝達される。そのため、建造物の屋根部分の強度や剛性が増大し、重量の大きい熱交換器であっても確実に支持することが可能である。
また、電子機器収容室の天井部分を全長に亘って延びるビーム材により、建造物の屋根が補強される。その結果、地震の振動等に対して屋根部分の変形が少なくなり、建造物全体の耐震性が向上する。
【0018】
請求項2の発明は、電子機器収容室の長手方向に延びるビーム材の下方に樋部材(水路を形成するよう両側に壁を有するいわゆるチャンネル材)を固定し、この樋部材を排水口に連通するよう構成したものである。ビーム材が置かれる建造物の屋根と中間天井板との間には、排熱用の室外熱交換器が設置され外気が導入される関係上、中間天井板の上面には雨水や熱交換器のドレンが滞留する。ビーム材は、電子機器収容室の全長に亘り延びているため、その下方に沿って樋部材を固定すると、滞留した水を効率よく排水することができる。そして、樋部材の固定によりビーム材の断面がほぼT字状となるので、ビーム材に作用する曲げモーメントあるいは捩りモーメントに効果的に対抗でき、これらモーメント荷重に対するビーム材近傍の剛性が一層増加することとなる。
【0019】
本発明の建造物において、中間天井板は、屋根の下方の全面に亘り設置することもできるが、請求項3の発明のように、例えば室外熱交換器が存在する部分等、建造物の屋根の一部分にだけ、その下方に設置してもよい。この場合には、電子機器収容室が増大してスペースの有効利用が可能となる。
【0020】
請求項4の発明は、複数の電子機器をラックに収納するとともに、ラックの上方には室内用の熱交換器を収めた熱交換器外箱を取り付け、この熱交換器外箱を中間天井板に固定するものである。この構成によれば、電子機器を収納したラックと電子機器の冷却装置とがユニット化されて、ラックが独立した冷却装置を備えることとなり、電子機器が稼動中のラックの冷却装置だけを作動させ、電力をその分削減することができる。また、ユニット化されたラック−熱交換器組立体の上部が中間天井板に固定されるため、電子機器収納体の耐震性を向上することができる。
【0021】
本発明においては、電子機器を収めた室内の空気を冷却するため、圧縮機等を用いた冷凍サイクルを実行させ、冷凍サイクルのエバポレータ(蒸発器)を、熱交換器として室内に設置してもよいが、請求項5の発明は、室内の空気を冷却する熱交換器の上方に、その熱交換器と連通し室外に置かれた室外熱交換器を設け、両方の熱交換器の内部に対流により循環する冷媒を封入して、室内の熱を室外熱交換器から排熱するものである。これによれば、基本的に電力を使用することなく、自然対流を利用してコンピュータ等電子機器の冷却を行うことができる。
【0022】
請求項6の発明は、フレーム枠体の柱状部材の上部及び下部に、緊締具の係合可能な締結金具を固着し、建造物の屋根を、上部に固着された締結金具よりも低くなる位置に設置するものである。これは、船舶に積み重ねて積載される海上コンテナと同様な構成であって、柱状部材に固着される締結金具は、コーナーキャスティングと呼ばれる。
これにより、建造物同士を直接積み重ねて連結することが可能となり、電子機器の需要の増加に合わせて建造物を増設するときは、既存の建造物上に別のものを積載するだけで増設することができる。ことに、本発明の建造物は、ビーム材により屋根部分が補強されており、上部に別のものを積み重ねても、建造物の過大な変形は防止される。
【0023】
請求項7の発明は、電子機器収容室の端部壁と、その端部壁に連結されるフレーム枠体との間に、電子機器収容室の付帯設備を設置するものである。データセンター等の稼動には、保守管理用品収納庫や予備用の空調機などの付帯設備が必要となるが、請求項7の発明によれば、こうした付帯設備を建造物に効率的に配置し、付帯設備を含めてコンパクトにユニット化されたデータセンター等の建造物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の建造物の一実施例を示す全体図である。
【図2】本発明の建造物に用いる締結金具と緊締具の一例を示す図である。
【図3】本発明の建造物の、連結した状態を示す図である。
【図4】図1の建造物の前後部における骨組み構造を示す図である。
【図5】図1の建造物の長手方向断面図を概略的に示す図である。
【図6】図1の建造物におけるビーム材の詳細構造を示す図である。
【図7】図1の建造物の横断面図及び空気の循環を説明する図である。
【図8】図1の建造物における床構造を示す図である。
【図9】熱を外気に排熱して室内を冷却する、従来の冷却装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、データセンター等として用いられる本発明の建造物について説明する。
図1の全体図から分かるように、本発明の建造物は、輸送用コンテナを基本とするコンテナ型データセンターとして構築されたものであって、全体としては6面体の直方体である箱型構造をなし、平面視では長方形の形状となっている。その長方形の両端部には、フレーム枠体を構成する前部側の柱状部材1F及び後部側の柱状部材1Rが配置されるとともに(側面図では箱型構造の側壁を除いて示し、便宜上、左側を前部、右側を後部とする)、各々の柱状部材の上部及び下部には締結金具2が固着される。締結金具2は、建造物の最外方の部分に位置するよう、各々の柱状部材に固着されるもので、建造物の屋根3は、上部に固着された締結金具よりも低くなる位置に設置されている。
【0026】
建造物の内部は、サーバ、ストレージ等のコンピュータをラック4に収納して室内に収めた電子機器収容室CRが主要部分を占めている。コンピュータ等に電力を供給する電源ユニットEUが、電子機器収容室CRの前方下部の張出し部ELに置かれ、張出し部ELの上方の、電子機器収容室CRの前端壁と柱状部材1Fとの間は、冷凍サイクルを実行する予備空調用室外機CDの据え付けスペースとなっている。このスペースには、予備空調用室外機CDに限らず、保守管理用品収納庫などデータセンターの付帯設備を置くことができる。この実施例のデータセンターでは、建造物の内部に予備空調用室外機CD等の付帯設備や電源ユニットEUを設置してユニット化しているけれども、これらを別体として建造物の外部に設置するときには、電子機器収容室CRを前部側の柱状部材1Fの位置まで延長することが可能である。
【0027】
本発明の建造物で使用される締結金具2は、海上コンテナの隅部に置かれるコーナーキャスティングと同様な金具であり、図2に示すとおり、6枚の厚板を組み合わせた直方体の強固な構造を備え、柱状部材に溶接可能なように、通常は鋳鋼で製造される。建造物の外方となる面の厚板には、ツイストコーンTC等の緊締具を係合するための貫通孔が形成されている。建造物を積み重ねるときは、上側の締結金具2の貫通孔にツイストコーンTCの上側突起を嵌め込み、ツイストコーンTCを所定角度回転させて、下側突起を下方の締結金具2に嵌め込んで両者を連結する。ちなみに、コンテナの陸上輸送用車両であるコンテナシャシに装着されるツイストロックも、その上側突起をコンテナの下側のコーナーキャスティングに嵌め込み、所定角度回転させて固定するものである。
【0028】
本発明の建造物は、締結金具2にツイストコーン等の緊締具を係合することにより、図3(a)に示されるように、直接積み重ねることが可能であり、サーバ等の需要の増大に対応して容易に増設することができる。場合によっては、図3(b)に示されるように、横方向に連結する緊締具を用いた並列的な増設も可能である。そして、建造物の積み重ねやコンテナシャシへの積載にあたり、フォークリフトの使用を可能とするため、建造物の底部に置かれた底部フレーム5には、その長手方向の2個所に、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットFPが設けられている(図1)。フォークポケットFPは、断面4角形の強度の大きい角パイプであって、平面視で長方形をなす底部フレーム5の長手方向と直角(横方向)に延び、底部フレーム5に溶接あるいはリベット等で取り付けられる(図8も参照)。
【0029】
図3(a)には、前部側の柱状部材1Fを備えた前側フレーム枠体FF付近の骨組み構造を、図3(b)には、後部側の柱状部材1Rを備えた後側フレーム枠体RF付近の骨組み構造を示す。前部側の柱状部材1Fは扁平な角形の一様断面を有し、その上部及び下部に締結金具2が溶接により固着されるとともに、左右の柱状部材1Fの上部には前部ヘッダーFHが掛け渡されて溶接され、これによりフレーム枠体を構成している。後側フレーム枠体RFの柱状部材1Rも、扁平な角形の一様断面を有し、上部及び下部に締結金具2の溶接されたものであるが、観音開きドアRD(図1)のヒンジを取り付ける4個の切り欠き部が途中に形成されている。後部側の柱状部材1Rには、左右の柱状部材の上部に後部ヘッダーRHが掛け渡され、また、建造物の後部ヘッダーRHの下方において、2本の柱状部材1Rを連結する梁部材6が掛け渡されている。この梁部材6には、観音開きドアRDを閉鎖するロックロッドLR(図1)のためのカムキーパーCKが固着される。
ロックロッドは、上端及び下端にカム部材が一体的に固着された強度及び剛性の大きい棒材である。本発明の建造物では、出入口となる観音開きドアのロックロッドLRが、梁部材6と底部フレーム5との間にいわば補強用柱材として存在することになるため、建造物の強度が増大し、積み重ねた場合でも変形が少なくなる。
【0030】
次いで、本発明の建造物における電子機器収容室とその天井部分の構造について、図5乃至図8により説明する。
図5は、本発明の建造物の長手方向断面図(後述の図7(a)のA−A断面矢視図)を概略的に示すもので、電子機器収容室CRにおいては、コンピュータを収納したラック4を省いて表している。この図に示されるとおり、電子機器収容室CRの前端は、その上部が予備空調用室外機CDの据え付けスペースとの間を仕切る前端壁FWとなっており、下部は、電源EUの設置される張り出し部ELとなっている。前端壁FWを下方まで延長して、前端壁FWの前方を電源や付帯設備用の機械室として独立させてもよい。
前端壁FWの周囲には、2本の柱部材とヘッダーとからなる前端壁枠体FWFが設けられ、前端壁枠体FWFは、連結部材CMにより柱状部材1Fを備えた前側フレーム枠体と連結される(図4(a)参照)。電子機器収容室CRの後端は、観音開きドアRDの僅かに前方の位置に置かれた後端壁RWとなっている。後端壁RWには施錠可能な内側扉(図示省略)が設けてあり、この実施例の電子機器収容室CRは、2重扉によりセキュリティの向上が図られている。
【0031】
そして、電子機器収容室CRの天井部分には、建造物の屋根3の下方に中間天井板7が設けてあり、この部分では、2重天井を形成している。屋根3と中間天井板7との間には、電子機器収容室CRの全長に亘って長手方向に延びるビーム材8が設けられる。ビーム材8の前端は、前端壁FWの上部に固定され、一方、その後端は、後端壁RWよりも後方に延長され、観音開きドアRDを嵌め込む後側フレーム枠体RFの上部に固定されて取り付けられる。
【0032】
ビーム材8及びその取り付け部の詳細な構造を図6に示す。ビーム材8は、図6(c)に示すように(後述の図7も参照)、その断面が基本的には垂直方向の直線となる長尺の板状部材であり、上部には四辺形の閉鎖断面を形成する補強材81が溶接され、下部には、水路を形成するよう断面の両側に壁を有する樋部材82が溶接されている。ビーム材8の前端は、図6(b)(c)に示すように、断面L字形のガセット83を前端壁FWとビーム材8とに溶接することによって、前端壁FWに固定される。このとき、樋部材82は、前端壁FWを貫通して前方の排水口WE(図4(a)参照)に連通する。また、ビーム材8の後端は、図6(c)に示すように、その上部がやはり断面L字形のガセット84を用いて後側フレーム枠体RFに固定される。
【0033】
図7(a)は、電子機器収容室CRの横断面図であって、室内の空気を冷却するための熱交換器と排熱用の室外熱交換器とが、それぞれ中間天井板7の下方と上方とに設置されている。図7(b)には、これら熱交換器を通過して流れる空気の流れを示す。
コンピュータ等の電子機器は、多数のものがラック4に収納される形で電子機器収容室CRに収められ、ラック4は、床面に敷設されたT形板材9上に固定されて(詳細な構造については後述)、電子機器収容室CRの横断面においてほぼ中央部に設置される。各々のラック4の上方には、電子機器収容室CRの室内の空気を冷却する熱交換器10を収めた熱交換器外箱10Hが取り付けられており、ラック4と熱交換器10とは、ユニット化されたラック−熱交換器組立体を構成している。ラック4等の強度及び耐震性を増大させるため、ラック−熱交換器組立体の上部は中間天井板7に固定される。この実施例では、電子機器収容室CR内には8個のラック−熱交換器組立体が設置され(図1)、ラックの上方の熱交換器は、主に組み合わされた下方のラックを独立して冷却するための熱交換器となっている。
【0034】
電子機器収容室CRを冷却する熱交換器10の上方には、室外熱交換器11が置かれ、これは、電子機器収容室CRの室外となる中間天井板7の上部に載置される。両方の熱交換器は、特許文献2に記載された熱交換装置のように、互いに連通され、内部には気体−液体の相変化を行う冷媒が封入されている。室内側の熱交換器10の端部には、電子機器収容室CR内の空気を循環するファン12が装着されるとともに、室外熱交換器11の端部には、外気を導入するファン13が装着される。
【0035】
図7(b)に示されるとおり、ラック4に収納されたコンピュータの発熱に伴い、温度の上昇した室内の空気は、図の左側矢印のように、電子機器収容室CR内を上昇して熱交換器10に導入され、内部に封入された液体の冷媒を沸騰させる。気体となった冷媒は、対流によって室外熱交換器11に入り、ここで熱を外気に放熱して凝縮し、温度が低下した状態で室内の熱交換器10に還流する。熱交換器10で冷却された室内の空気は、冷却空気を循環するファン12によって図の右側矢印のように送り出され、ラック4に収納されたコンピュータ等を冷却することとなる。
一方、電子機器収容室CRの熱を排熱する室外熱交換器11では、ファン13により導入された外気が室外熱交換器11を冷却した後、直角に曲げられて建造物の長手方向に延びる共通排気ダクト14を通過し、建造物の前端上部又は後端上部の流出口から排出される。外気の流れを逆向きとして、ファン13から排出するようにしてもよい。
【0036】
上述したように、建造物の屋根3と中間天井板7との間には、電子機器収容室CRの全長に亘って長手方向に延びるビーム材8が設けられる。中間天井板7は、この実施例では断熱材の積層された断熱パネルであって、断面拡大図に示すとおり、ビーム材8の下部に溶接された樋部材82に、リベットや接着等で固定される。屋根3は、ビーム材8の上部の、閉鎖断面を形成する補強材81の上方に固定される。つまり、建造物の屋根3及び室外熱交換器11の設置される中間天井板7がそれぞれビーム材8に取り付けられ、天井部分に作用する荷重が、ビーム材8を介して強度の大きいフレーム枠体に伝達される。そのため、建造物の屋根部分の強度や剛性が増大し、重量の大きい熱交換器であっても確実に支持することが可能である。そして、建造物の屋根が補強される結果、建造物全体の耐震性が向上するとともに、図3(a)のような積み重ねの際に、建造物の変形を減少することができる。
また、室外熱交換器11を冷却する外気に含まれる雨水等は、中間天井板7の上面からビーム材8下部の樋部材82に流入し、排水口を介して外部に排出される。樋部材82はビーム材8の補強材としても機能し、ことに、ビーム材に作用するモーメント荷重に対する剛性が一層増加することとなる。
【0037】
この実施例における室内空気の冷却装置は、対流により循環する冷媒を封入した2個の熱交換器を設け、密閉した室内の熱を排熱する自然冷却式のものであり、基本的に電力を使用することなく冷却を行うことができる。ただし、室内の空気を冷却するため、圧縮機等を装備して冷凍サイクルを実行させ、冷凍サイクルのエバポレータ(蒸発器)を、熱交換器として室内に設置してもよい。この実施例においても、外気温が上昇して自然冷却式の冷却装置の冷却能力が不足するなどの事態に備えて、冷凍サイクルを実行する予備の空調機が設置されており、そのエバポレータEV(図7(a))が天井面に装着されるとともに、圧縮機やコンデンサ(凝縮器)を収めた室外機CD(図1)が付帯設備として建造物前側の上部に据え付けられている。
【0038】
本発明の建造物の床構造を、図8に示す。建造物の底部は、平面視で長方形をなす枠体に複数のクロスメンバ51を適宜の間隔で掛け渡した底部フレーム5を備えており、底部フレーム5を横断するフォークポケットFPが2個所に取り付けられる。クロスメンバ51の上方には、発泡合成樹脂等の断熱材の両面にアルミニウム等の金属板を積層したサンドイッチパネル15が、建造物の床のほぼ全面に設置され、さらにその上方に、T形断面形状の突起91を、底板上に複数並列して形成したT形板材9が敷設される。
【0039】
T形板材9は、いわゆるT形ボードと呼ばれる長尺のアルミニウム押出し形材が使用され、図8(a)に示されるように、張出し部の床面まで建造物のほぼ全長に亘って敷設されている。T形板材9を敷設しない部分には、図8(b)に示されるとおり、ハット形断面形状のハット形板材16が敷設されており、ここに浅皿形の空間が形成される。ハット形板材16の上部を含め、ラック4が載置される個所以外の部分は、図示しない薄板のカバーによって覆われる。
この床構造においては、T形板材9の突起91の間の空間、ハット形板材16の空間を利用して、ラックに収納されたコンピュータへの自由なケーブルの配線が可能である。また、ファン12(図7)により室内を循環する冷却空気は、これらの空間を通過してラックの周囲や下部へ流れ込む。そのため、コンピュータ等から発生する熱が効率的に除去され、温度上昇による熱障害が防止される。
【0040】
以上詳述したように、本発明は、建造物の屋根の下方に中間天井板を設け、電子機器を中間天井板の下側の電子機器収容室に収めるとともに、屋根と中間天井板との間には室外熱交換器を設置して熱を外気に排熱し、さらに、屋根と中間天井板との間に電子機器収容室の長手方向に延びるビーム材が設け、これを電子機器収容室の両端の端部壁に固定するものである。上記の実施例では、ビーム材の前端を電子機器収容室の端部壁の位置に設定しているが、ビーム材を、端部壁を貫通して建造物の前端まで延長し、そこのフレーム枠体に固定するようにしてもよい。また、電子機器の冷却のため、自然対流循環型の熱交換器を用いた外気冷却方式を利用しているが、これに代えて、冷凍サイクルを実行する空調機を採用し、その室外機を中間天井板の上部に設置してもよい。このように、本発明の具体的な実施の態様は、上記の実施例に限るものではなく、これに対し種々の変形が可能であるのは明らかである。
【符号の説明】
【0041】
1F 前部側柱状部材、 1R 後部側柱状部材
2 締結金具
3 屋根
4 ラック
5 底部フレーム
7 中間天井板
8 ビーム材
81 補強材
82 樋部材
10 熱交換器(室内空気冷却用)
11 室外熱交換器
12 ファン(室内空気循環用)
FF 前側フレーム枠体、 RF 後側フレーム枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を室内に収めた直方体形状の建造物であって、
前記建造物の両端部には、柱状部材を有するフレーム枠体が配置され、
前記建造物の屋根の下方には中間天井板が設けられ、前記電子機器が前記中間天井板の下側に形成された電子機器収容室内に収められ、
前記電子機器収容室内には、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設置され、かつ、前記建造物の屋根と前記中間天井板との間には、前記熱交換器が吸収した熱を外気に排熱する室外熱交換器が設置されており、さらに、
前記電子機器収容室は、平面視で長方形の形状を有し、長手方向の両端の端部壁が前記フレーム枠体に連結され、
前記建造物の屋根と前記中間天井板との間には、前記電子機器収容室の長手方向に延びるビーム材が設けられ、前記ビーム材が前記電子機器収容室の前記両端の端部壁又は前記フレーム枠体に固定されるとともに、前記建造物の屋根と前記中間天井板とが前記ビーム材に取り付けられることを特徴とする建造物。
【請求項2】
前記ビーム材の下方には、前記電子機器収容室の長手方向に延びる樋部材が固定され、前記樋部材が排水口に連通している請求項1に記載の建造物。
【請求項3】
前記中間天井板が、前記建造物の屋根の一部分において、その下方に設けられている請求項1又は請求項2に記載の建造物。
【請求項4】
前記電子機器は、複数のものがラックに収納されるとともに、前記ラックの上方には、前記熱交換器を収めた熱交換器外箱が取り付けられ、前記熱交換器外箱が前記中間天井板に固定される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建造物。
【請求項5】
前記熱交換器と前記室外熱交換器とが連通され、その内部には対流により循環する冷媒が封入されており、室内の熱が前記室外熱交換器から排熱される請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の建造物。
【請求項6】
前記フレーム枠体の柱状部材の上部及び下部には、緊締具の係合可能な締結金具が固着されており、前記建造物の屋根が、上部に固着された前記締結金具よりも低くなる位置に設置されている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の建造物。
【請求項7】
前記電子機器収容室の端部壁と、その端部壁に連結される前記フレーム枠体との間に、前記電子機器収容室の付帯設備が設置される請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19617(P2013−19617A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154147(P2011−154147)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】