説明

電子機器筐体の開閉扉接地機構

【課題】電子機器筐体の操作パネルに設けられる開閉扉において、扉の開閉にかかわらず接地する筐体と開閉扉の金属パネルとの導電を保って、上記集積回路の静電破壊等の問題発生を防止し、かつ、組立が容易で開閉扉の円滑な動きを阻害することのない電子機器筐体の開閉扉の接地機構を提供する。
【解決手段】 筐体4と、開閉扉3と、該筐体4に固定され、該開閉扉3を開閉させる開閉機構(回動機構)と、該開閉扉3に帯電した電荷を伝導させる導電部3cと、該筐体4に固定され、該導電部3cに接触する導電部材8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器筐体の開閉扉の接地機構に関し、さらに詳しくは、例えば、オーディオ機器等の操作パネルに設けられる開閉扉の接地機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ機器等の電子機器において、筐体の正面の操作パネルに設けられる開閉扉は、使用頻度の少ない操作ボタン等を格納するのに用いられ、操作パネルと同一の材料ならびに外観仕上げを有する金属のパネルから構成される。これらの開閉扉には、開閉機構が、スライド機構であるスライド扉や、回動機構である回動扉(または、回転機構である回転扉)等がある。
【0003】
筐体内の電子回路のグランドと金属部品からなる筐体とは、電気的に接続されて接地されている。開閉扉が回動扉である場合には、筐体と開閉扉との間には、回動軸部、軸受け部、および回動部からなる回動機構が構成される。回動機構が樹脂等の非導電性の材質で構成されている場合には、金属部品からなる筐体に対して開閉扉は接地されないので、金属のパネルは、静電気によって電荷が蓄積されて帯電する。その結果、帯電した開閉扉と、操作者の指先や操作パネルとの間で放電を生じた場合には、電子機器の集積回路が静電破壊され、電子機器が動作不良を起こすなどの問題が発生する。
【0004】
このような問題を解決するために、従来から様々な試みがなされている。代表的には、別個に電線を配線し、電線の一端を接地する筐体に、他端を金属パネルの一部に接続することにより、開閉扉の金属のパネルを接地している。
【0005】
その他には、開閉扉の閉塞時に扉を固定するロック機構において接地機構を設け、開閉扉の閉塞時に金属のパネルに蓄積されていた電荷を接地する筐体に放出し、上記のような問題を回避している(特許文献1および2参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭59−36174号公報 (第5頁、第2図)
【特許文献2】実開平4−20270号公報 (第3−4頁、第1図)
【0007】
しかし、上記の別個に電線を配線する方法では、電線の整形、固定方法によっては開閉扉の円滑な動きを阻害するといった問題が生じる。また、別個に配線を行う結果、組立作業上の工数がかかりコストアップするなどの問題がある。また、上記のロック機構において接地機構を設ける方法においても、開閉扉が開放された状態では、開閉扉の金属パネルが接地されずに帯電したままになり、集積回路の静電破壊を生じる原因になるという問題がある。さらに、ロック機構が複雑化するとともに部品点数が増加する等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来の技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電子機器筐体の操作パネルに設けられる開閉扉において、扉の開閉にかかわらず接地する筐体と開閉扉の金属パネルとの導電を保って、上記集積回路の静電破壊等の問題発生を防止し、かつ、組立が容易で開閉扉の円滑な動きを阻害することのない電子機器筐体の開閉扉の接地機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の開閉扉接地機構は、筐体と、開閉扉と、該筐体に固定され、該開閉扉を開閉させる開閉機構と、該開閉扉に帯電した電荷を伝導させる導電部と、該筐体に固定され、該導電部に接触する導電部材とを備える。
【0010】
開閉扉、導電部、導電部材、および筐体が電気的に導通を保つことにより、開閉機構による開閉扉の開閉状態にかかわらず、電子機器筐体と開閉扉との接地を保つ。その結果、集積回路の静電破壊などを防ぐことができる。
【0011】
さらに好ましい実施形態においては、上記開閉機構が、回動動作の基準となる回動軸部と、上記筐体に固定され、該回動軸部を保持する軸受け部と、該回動軸部を基準に回動し、上記開閉扉を回動させる回動部とを有する回動機構であり;上記導電部が、該回動部を覆うように設けられ、該開閉扉と上記導電部材とを電気的に導通させる。
【0012】
導電部が、回動部を覆うようにして開閉扉から導電部材へ電気的に導通することによって、開閉扉が開状態の場合であっても、導電部が、筐体から露出している開閉機構を覆い隠すことができるので、外観上優れた意匠性を有する。
【0013】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部の一部または全体の形状が、上記回転軸部を基準とする弧状である。
【0014】
導電部の一部または全体の形状を弧状にすることによって、導電材料との接触による余計な負荷(例えば、摩擦抵抗など)を抑えることができる。その結果、開閉扉の接地を実現しながらも、開閉扉は滑らかにかつ安定した開閉動作を維持することができる。
【0015】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部の一部または全体の形状が、上記回転軸部を中心とする円弧状である。
【0016】
導電部の一部または全体の形状を円弧状にすることによって、導電部と導電部材との接触負荷を一定に保つことができる。その結果、開閉扉が滑らかに回動動作をすることができる。
【0017】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部の一部または全体の形状が、上記開閉扉から上記導電部材と接触する側へ向かって、上記回転軸部を中心とする半径が増大する弧状を有する。
【0018】
従って、開閉扉が回動動作により開状態に進むにしたがって、導電部材からの加圧力が増加し、導電部材との摩擦力によって負荷がかかり、速度を低下させることができ、ギアダンパーを用いることなく回動速度調節することができる。その結果、開閉扉が開状態になる直前には緩やかな回動動作を実現させることができる。
【0019】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部材と、上記回動軸部を基準にしたときの上記導電部の外側とが接触する。
【0020】
導電部材が導電部の外側と接触しているので、特に筐体上面から導電部材を筐体底部に取り付ける際、取り付けが容易である。
【0021】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部材と、上記回動軸部を基準にしたときの上記導電部の内側とが接触する。
【0022】
導電部材が導電部の内側と接触しているので、導電部材と導電部との接触によって導電部に傷が生じたとしても、外観上の問題が発生することがない。
【0023】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部材が、弾性を有し、上記導電部と接触する接触部と、上記筐体の底面部に接触するように固定される固定部と、該接触部と該固定部とを結ぶ連結部とを有する。
【0024】
導電部材が、弾性を有することにより、導電部と適度な接触を保つことができ、導電材料との余計な負荷(例えば、摩擦抵抗など)を抑えることができる。その結果、開閉扉の接地を実現しながらも、開閉扉は滑らかにかつ安定した回動動作を維持することができる。
【0025】
さらに好ましい実施形態においては、上記連結部が1または複数の平坦部を有する。
【0026】
連結部が1または複数の平坦部を有することによって、筐体内に取り付けられている他の部品で導電部材を取り付けるスペースが限られている場合であっても、導電部材を折り曲げることにより、空きスペースを有効に利用することができる。なお、取り付けるスペースが充分に確保できる場合は1つの平坦部を有していれば良い。
【0027】
さらに好ましい実施形態においては、上記連結部が曲部を有する。
【0028】
連結部が曲部を有することによって、導電部材を形成する際、折り曲げなどによる破損などを防ぐことができ、また、導電部材の形成が容易である。
【0029】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部と上記開閉扉とが一体成形される。
【0030】
導電部と開閉扉とが一体成形されることにより、導電部と開閉扉とを同じ導電材料にすることができ、開閉扉が開状態のときも外観上優れた意匠性を保つことができる。また、部品点数が減り、生産効率を向上させることができる。
【0031】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部と上記回動部とが導電性材料により一体成形される。
【0032】
導電部と回動部とが導電性材料により一体成形されることにより、回動部が導電部の役割も果たし、開閉扉と導通部材との電気的な導通をおこなうことができる。その結果、部品点数が減り、生産効率を向上させることができる。
【0033】
さらに好ましい実施形態においては、上記開閉扉と上記回動部と上記導電部とが一体成形される。
【0034】
導電部と回動部と開閉扉が一体成形されることにより、部品点数が最小限である電子機器接地機構を実現することができ、より効率の良い生産を実現することができる。さらには、外観上優れた意匠性を有する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、開閉扉の開閉にかかわらず接地された筐体と開閉扉の金属パネルとの導電を保って、集積回路の静電破壊等の問題発生を防止することができる。同時に、組立が容易で開閉扉の円滑な動きを阻害することがない電子機器筐体の開閉扉の接地機構を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の開閉扉接地機構について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。特に好ましい実施形態であるオーディオ機器等の一例として、増幅器の操作パネルに設けられる開閉扉の接地機構について説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を援用する。
【0037】
図1(a)は、増幅器1の正面の操作パネル2に設けられた開閉扉3が閉じた状態を示す外観斜視図、図1(b)は、開閉扉3が開いた状態を示す外観斜視図である。図2は、本発明の好ましい実施形態を用いた開閉扉接地機構を示す増幅器1の部分拡大正面図である。
【0038】
増幅器1の操作パネル2は、金属部品からなる筐体4の正面に取り付けられている。操作パネル2には、電源スイッチやボリューム等の主要な操作ボタンを含めて、各種の操作ボタン等が配置される。操作パネル2の下部には、録音セレクター等の使用頻度の少ない操作ボタン9が備えられる。開閉扉3は、閉じたときに操作ボタン9を格納して操作パネル2と一体感のある外観をなすように、操作パネル2と同様の外観を有する金属パネルを備えている。開閉扉3を開くと、操作ボタン9を使用することができる。
【0039】
開閉扉3と筐体4との間には、2つの回動機構13、13を備えている。回動機構13は、筐体4内部に備えられており、操作パネル2に規定されている開口部11、11、および筐体4の正面から底面にかけた部位に規定されている開口部12、12から筐体4外部にある開閉扉3を回動させる。その結果、開閉扉3は図1(b)に示す矢印a方向に回動することができる。なお、筐体4の内に配置される電子回路のグランドと、操作パネル2および金属部品からなる筐体4とは、電気的に接続されて接地されている。
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の開閉扉接地機構について具体的に説明する。
【0041】
図3(a)は、本発明の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の開状態を、図2に示す矢印b方向から見た断面A−A’の部分拡大断面図である。図3(b)は、本発明の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の開状態を、図2に示す矢印c方向から見た断面B−B’の部分拡大断面図である。また、図4(a)は、本発明の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の閉状態を、図2に示す矢印b方向から見た断面A−A’の部分拡大断面図である。図4(b)は、本発明の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の閉状態を、図2に示す矢印c方向から見た断面B−B’の部分拡大断面図である。
【0042】
開閉扉接地機構は、開閉扉3と筺体4と回動機構13と導電部材8とを備える。回動機構13は、軸受け部5と回動部6と回動軸部7とを備え、それぞれ樹脂材料により形成される。図3および図4に示すように、回動機構13の軸受け部5が開口部12に近接するように筐体4内部の底面4aにネジ10aによって固定されている。軸受け部5は、回動軸部7の位置を規定する軸孔5aを有しており、回動機構13の回動動作の位置を規定する。また、回動部6も軸孔6aを有する。軸孔5a、6aは、回動軸部7の直径よりも若干大きい丸型の貫通孔であり、回動軸部7が挿入される。回動軸部7が軸孔5aに挿入されることによって位置が規定されるので、回動部6は、図3(a)に示す矢印d方向に回動軸部7を中心に回動することができる。さらに回動部6は、支持部6bを有し、開口部11、12から筐体4外部へ支持部6bを突出させている。そして、開閉扉3が支持部6bにネジ10bによって固定され、開閉扉3も回動部6と同様に回動軸部7を中心に回動することができる。
【0043】
そして、開閉扉3は、正面部3aと、底面部3bとを有し、開閉扉3の底面部3bが支持部6bに固定され、回動機構13と連動して回動動作をおこなう。さらに、図3に示すように、開閉扉3は導電部3cを有している。導電部3cは、開閉扉3の底面部3bの左右両側2箇所(図2は一方のみ図示)から板状に延長されており、回動軸部7を中心とした弧状を有し、回動部6を覆うようにして開口部13、12を通って筐体4の内側へ入り込んでいる。導電部3cは、開閉扉3の開閉動作に伴って筐体4から露出する回動機構13を隠すカバーの役割も果たしている。好ましくは、図2に示すように、導電部3cは回動軸部7を中心に一定の半径である円弧状を有する。
【0044】
導電部材8は、導電性材料から板状に形成され、弾性を有する。導電部材8は、回動部6および導電部3cが回動する回動面(例えば、図2のA−A’)に平行に配置され、導電部3cと接触する接触部8aと、底面4aに接触するように固定される固定部8bとを備え、さらに、接触部8aと固定部8bとを結び直角な位置関係にある2つの平坦部を有する連結部8cを備える。また、接触部8aは、湾曲形状であり、凸側で導電部3cと接触する。さらに詳しく説明すると、導電部材8は、図3および4に示すように、略S字状に折り曲げた金属片であり、一端の固定部8bが筺体4の底部4aにネジ10cによって固定されている。そして、導電部材8は、固定部8bから続き筐体4の底面4aに対して垂直な平坦部と、導電部8bの一端の接触部8aから続き筐体4の底面4aと水平な平坦部とを有する連結部8cを備える。接触部8aは導電部3cの外周面3c’と接触している。ここで、外周面3c’とは、図7に示すように、回動軸部7を基準としたときの弧状の導電部3cの外側(すなわち、回動軸部7に面していない側の面)である。言い換えると、外周面3c’とは、開閉扉3が開状態のときに開口部11,12から筐体4の外部へ露出する面である。従って、導電部材8は、弾性を有しているので、開閉扉3の回動動作に影響が無い程度に導電部3cを加圧する状態に成形しておくことで、開閉扉3が回動する場合であっても常に導電部3cと接触状態を保っている。
【0045】
次に、本発明の別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構について説明する。
【0046】
図5は、本発明の別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構を、図3(a)と同様に示した断面図である。図6は、本発明の別の好ましい実施形態を用いた開閉扉接地機構を示す増幅器1の部分拡大正面図である。導電部材8は、回動部6および導電部3cが回動する回動面に平行に配置され、導電部3cと接触する接触部8aと、底面4aに接触するように固定される固定部8bとを有し、さらに、接触部8aと固定部8bとを結ぶ、底面側が凸な湾曲形状である曲部(すなわち、連結部8c)を有する。接触部8aは導電部3cの内周面3c”と接触している。ここで、内周面3c”とは、回動軸部7を基準としたときの弧状の導電部3cの内側(すなわち、回動軸部7に面している側の面)である。なお、導電部3cは、内周面3c”と接触部8aとが接触できるように、導電部3cの幅L1が回動機構13の幅L2よりも大きくなるように規定している。
【0047】
次に、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構について説明する。
【0048】
図7は、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構を、図3(a)と同様に示した断面図である。導電部3cが、開閉扉3の底面部3b側からその他端(すなわち導電部材と接触する側)に連れて回転軸6aを中心とした半径を増加させた弧状を有する。開閉扉3が回動動作により開状態に進むにしたがって、導電部材8からの加圧力が増加し、導電部材8との摩擦力によって負荷がかかることにより、開動作の速度を低下させ、ギアダンパーを用いることなく回動速度調節することができるからである。
【0049】
次に、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構について説明する。
【0050】
図8は、本発明の別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構を、図3(a)と同様に示した断面図である。開閉扉接地機構は、回動部14が導電性材料により導電部と一体成形されており、支持部14bがネジ10bによって開閉扉3の底部3bに固定されている。そして回動部14の導電部に相当する部分14cに導電部材8の一端が接触している。従って、回動部14は、開閉扉3と導電部材8とを電気的に導通させている。また、導電部材8の他端は筺体4の底部4aにネジ10cによって固定されているので、開閉扉3が回動部6および導電部材8によって接地状態を維持することができる。
【0051】
次に、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構について説明する。
【0052】
図9は、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構を、図3(a)と同様に示した断面図である。開閉扉15が、回動部および導電部と導電性材料で一体成形されており、開閉扉15の導電部に相当する部分15cに導電部材8の一端が接触している。その結果、開閉扉3が直接導電部材8によって接地されている状態を維持しているので、開閉扉15の開閉にかかわらず開閉扉15と導電部材8とが電気的に導通している。
【0053】
次に、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構について説明する。
【0054】
図10は、本発明のさらに別の好ましい実施形態である電子機器筐体の開閉扉接地機構を、図3と同様に示した断面図である。図10(a)および(b)は、回動軸部と回動部とが一体成形された回動機構を有する開閉扉接地機構である。具体的には、回動部が円柱形状の凸部を有し、この凸部が回動軸部の役割を果たす。図10(c)および(d)は、回動軸部と軸受け部とが一体成形された回動機構を有する開閉扉接地機構である。具体的には、軸受け部が円柱形状の凸部を有し、この凸部が回動軸部の役割を果たす。
【0055】
以上、本発明に係る電子機器筐体の開閉扉接地機構の実施形態の例について説明したように、本発明の電子機器筐体の開閉扉接地機構は、筐体と、開閉扉と、該筐体に固定され、該開閉扉を開閉させる開閉機構と、該開閉扉に帯電した電荷を伝導させる導電部と、該筐体に固定され、該導電部に接触する導電部材とを備える。従って、開閉扉、導電部、導電部材、および筐体が電気的に導通を保つことにより、開閉機構による開閉扉の開閉状態にかかわらず、電子機器筐体と開閉扉との接地を保つ。その結果、集積回路の静電破壊などを防ぐことができる。
【0056】
さらに好ましい実施形態においては、上記開閉機構が、回動動作の基準となる回動軸部と、上記筐体に固定され、該回動軸部を保持する軸受け部と、該回動軸部を基準に回動し、上記開閉扉を回動させる回動部とを有する回動機構であり、さらに、上記導電部が、該回動部を覆うように設けられ、該開閉扉と上記導電部材とを電気的に導通させる。従って、導電部が、回動部を覆うようにして開閉扉から導電部材へ電気的に導通することによって、開閉扉が開状態の場合であっても、導電部が、筐体から露出している開閉機構を覆い隠すことができるので、外観上優れた意匠性を有する。
【0057】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部の一部または全体の形状が、上記回転軸部を基準とする弧状である。従って、導電材料との接触による余計な負荷(例えば、摩擦抵抗など)を抑えることができる。その結果、開閉扉の接地を実現しながらも、開閉扉は滑らかにかつ安定した開閉動作を維持することができる。
【0058】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部の一部または全体の形状が、上記回転軸部を中心とする円弧状である。従って、導電部と導電部材との接触負荷を一定に保つことができる。その結果、開閉扉が滑らかに回動動作をすることができる。
【0059】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部の一部または全体の形状が、上記開閉扉から上記導電部材と接触する側へ向かって、上記回転軸部を中心とする半径が増大する弧状を有する。従って、開閉扉が回動動作により開状態に進むにしたがって、導電部材からの加圧力が増加し、導電部材との摩擦力によって負荷がかかり、速度を低下させることができ、ギアダンパーを用いることなく回動速度調節することができる。その結果、開閉扉が開状態になる直前には緩やかな回動動作を実現させることができる。
【0060】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部材と、上記回動軸部を基準にしたときの上記導電部の外側とが接触する。従って、導電部材が導電部の外側と接触しているので、特に筐体上面から導電部材を筐体底部に取り付ける際、取り付けが容易である。
【0061】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部材と、上記回動軸部を基準にしたときの上記導電部の内側とが接触する。従って、導電部材が導電部の内側と接触しているので、導電部材と導電部との接触によって導電部に傷が生じたとしても、外観上の問題が発生することがない。
【0062】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部材が、弾性を有し、上記導電部と接触する接触部と、上記筐体の底面部に接触するように固定される固定部と、該接触部と該固定部とを結ぶ連結部とを有する。従って、導電部と適度な接触を保つことができ、導電材料との余計な負荷(例えば、摩擦抵抗など)を抑えることができる。その結果、開閉扉の接地を実現しながらも、開閉扉は滑らかにかつ安定した回動動作を維持することができる。
【0063】
さらに好ましい実施形態においては、上記連結部が1または複数の平坦部を有する。従って、筐体内に取り付けられている他の部品で導電部材を取り付けるスペースが限られている場合であっても、導電部材を折り曲げることにより、空きスペースを有効に利用することができる。なお、取り付けるスペースが充分に確保できる場合は1つの平坦部を有していれば良い。
【0064】
さらに好ましい実施形態においては、上記連結部が曲部を有する。従って、導電部材を形成する際、折り曲げなどによる破損などを防ぐことができ、また、導電部材の形成が容易である。
【0065】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部と上記開閉扉とが一体成形される。従って、導電部と開閉扉とを同じ導電材料にすることができ、開閉扉が開状態のときも外観上優れた意匠性を保つことができる。また、部品点数が減り、生産効率を向上させることができる。
【0066】
さらに好ましい実施形態においては、上記導電部と上記回動部とが導電性材料により一体成形される。従って、回動部が導電部の役割も果たし、開閉扉と導通部材との電気的な導通をおこなうことができる。その結果、部品点数が減り、生産効率を向上させることができる。
【0067】
さらに好ましい実施形態においては、上記開閉扉と上記回動部と上記導電部とが一体成形される。従って、部品点数が最小限である電子機器接地機構を実現することができ、より効率の良い生産を実現することができる。さらには、外観上優れた意匠性を有する。
【0068】
さらに好ましい実施形態においては、開閉扉の回動速度を適切に調整するために、任意のギアダンパーなどの回動速度調節手段を設けても良い。
【0069】
さらに好ましい実施形態においては、回動軸部は、円柱形状や円筒形状などで良い。例えば、円筒形状の場合、ネジなどを通すことにより軸受け部と回動部とが外れないようにすることができるからである。
【0070】
また本実施例においては、導電部を開閉扉と一体成形されたものとしたが、導電部は、開閉扉とは別の部品として形成し、開閉扉にネジなどによって取り付けても良い。
【0071】
さらに本実施例においては、導電部を板状としたが、概観面や接地効率などを考慮して、棒状など他の形状でも良い。また、回動方向、すなわち導電部における導電部材との接触部分に切り欠き溝を有し、導電部材との接触が外れないように適宜形状を選択しても良い。さらには、導電部が凹部または凸部を有し、導電部材の一端が凹部に突入して、または、凸部に係止されることによって、開閉扉の閉状態の位置および開状態の位置を規定しても良い。
【0072】
さらに本実施例においては、導電部を回動軸部を基準とした弧状または円弧状に形成したが、導電部の形状は、常に導電部材と接触を保つことができる形状であれば良い。
【0073】
さらに本実施例においては、回動機構の軸受け部、回動軸部、および回動部を樹脂材料により形成したものとしたが、開閉扉の開閉動作時に回動軸部と軸受け部または/および回動部との間において、余計な負荷や異音などを発生させないために部品の材料を適宜選択しても良い。
【0074】
さらに本実施例においては、2つの回動機構を開閉扉および筐体に備えたが、備える回動機構の個数に制限はなく、1または複数の回動機構を備えれば良い。
【0075】
さらに本実施例においては、導電部材を回動部および導電部が回動する回動面に平行に配置したが、導電部材を回動部および導電部が回動する回動面に対して直角に配置するなど一定角度を持たせて配置しても良い。
【0076】
さらに本実施例においては、導電部材の一端である接触部の凸側が導電部と接触するようにしたが、湾曲形状を導電部の弧状と同じにし、凹側で導電部と接触させて接触効率を良くしても良い。さらには、導電部材の接触部を湾曲形状としたが、接触効率が良い(例えば、接触面積の大きい)、導電部に極力傷を与えないような形状を適宜選択すれば良い。
【0077】
さらに本実施例においては、導電部材を導電性材料により形成したが、プラスチックなどの弾性を有する材料により形成した導電部材を導電性材料によってコーティングすることで、導電部材に導電性を与えるようにしても良い。
【0078】
さらに本実施例においては、導電部材を板状としたが、板状でなく棒状などの形状を適宜選択すれば良い。好ましくは導電部材が板状である。折り曲げによる形成が比較的容易であり、筐体に取り付ける際ネジなどによって容易に取り付けることができるからである。さらには、導電部材が一部に凸部を有し、導電部が有する凹部に導電部材の凸部が突入して、または、導電部が有する凸部に導電部材が係止されることによって、開閉扉の閉状態の位置および開状態の位置を規定しても良い。
【0079】
さらに本実施例においては、回動部または軸受け部が、丸型の貫通孔である軸孔を有するとしたが、軸孔は、例えば円形の凹部などのように、軸の位置を規定し、軸が回転することができる形状であれば良い。
【0080】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の電子機器筐体の開閉扉接地機構は、あらゆる用途の電子機器に用いられ得るが、オーディオ機器等の操作パネルに設けられる回動式の開閉扉の接地機構に好適に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の好ましい実施形態を用いた増幅器を示す外観斜示図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態を用いた開閉扉接地機構を示す増幅器の正面部分拡大正面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の開状態を示す断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の閉状態を示す断面図である。
【図5】本発明の別の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の開状態を示す断面図である。
【図6】本発明の別の好ましい実施形態を用いた開閉扉接地機構を示す増幅器の部分拡大正面図である。
【図7】本発明のさらに別の好ましい実施形態である開閉扉接地機構の閉状態を示す断面図である。
【図8】本発明のさらに別の好ましい実施形態である開閉扉の接地機構の開状態を示す断面図である。
【図9】本発明のさらに別の好ましい実施形態である開閉扉の接地機構の開状態を示す断面図である。
【図10】本発明のさらに別の好ましい実施形態である開閉扉の接地機構の開状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 増幅器
2 操作パネル
3、15 開閉扉
3a 正面部
3b 底面部
3c 導電部
3c’ 外周面
3c” 内周面
4 筐体
4a 底部
5 軸受け部
5a、6a、14a、15a 軸孔
6、14 回動部
6b、14b 支持部
5b、6c、7 回動軸部
8 導電部材
8a 接触部
8b 固定部
8c 連結部
9 操作ボタン
10 ネジ
11、12 開口部
13 回動機構
14c、15c 導電部に相当する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
開閉扉と、
該筐体に固定され、該開閉扉を開閉させる開閉機構と、
該開閉扉に帯電した電荷を伝導させる導電部と、
該筐体に固定され、該導電部に接触する導電部材とを備える、電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項2】
前記開閉機構が、回動動作の基準となる回動軸部と、
前記筐体に固定され、該回動軸部を保持する軸受け部と、
該回動軸部を基準に回動し、前記開閉扉を回動させる回動部とを有する回動機構であり;
前記導電部が、該回動部を覆うように設けられ、該開閉扉と前記導電部材とを電気的に導通させる、請求項1に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項3】
前記導電部の一部または全体の形状が、前記回転軸部を基準とする弧状である、請求項1または2に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項4】
前記導電部の一部または全体の形状が、前記回転軸部を中心とする円弧状である、請求項1または2に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項5】
前記導電部の一部または全体の形状が、前記開閉扉から前記導電部材と接触する側へ向かって、前記回転軸部を中心とする半径が増大する弧状を有する、請求項1または2に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項6】
前記導電部材と、前記回動軸部を基準にしたときの前記導電部の外周面とが接触する、請求項1〜5に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項7】
前記導電部材と、前記回動軸部を基準にしたときの前記導電部の内周面とが接触する、請求項1〜5に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項8】
前記導電部材が、弾性を有し、前記導電部と接触する接触部と、前記筐体の底面部に接触するように固定される固定部と、該接触部と該固定部とを結ぶ連結部とを有する、請求項6または7に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項9】
前記連結部が1または複数の平坦部を有する、請求項8に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項10】
前記連結部が曲部を有する、請求項8に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項11】
前記導電部と前記開閉扉とが一体成形される、請求項1〜10に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項12】
前記導電部と前記回動部とが導電性材料により一体成形される、請求項2〜10に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項13】
前記開閉扉と前記回動部と前記導電部とが一体成形される、請求項2〜10に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項14】
前記回動軸部と前記回動部とが一体成形される、請求項2〜13に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。
【請求項15】
前記回動軸部と前記軸受け部とが一体成形される、請求項2〜13に記載の電子機器筐体の開閉扉接地機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−150110(P2007−150110A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344578(P2005−344578)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】