説明

電子機器

【課題】本発明は、筐体の薄型化に対応しつつ、冷却を要する発熱体を筐体の内部に無理なく収容することができる電子機器の提供を目的とする。
【解決手段】電子機器は、底壁4aを有する筐体4 と;筐体の内部に収容され、底壁と向かい合うとともに、回路部品21が実装された第1の回路基板20と;この第1の回路基板を避けた位置において筐体の内部に収容され、第1の回路基板に電気的に接続された回路モジュール25と;を備えている。回路モジュールは、動作中に発熱するMPU27が実装された第2の回路基板26と、MPUに熱的に接続されたヒートシンク52と、を有している。第2の回路基板は、筐体の内部において第1の回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置されているとともに、発熱体は、第2の回路基板の第1の回路基板側の面に位置されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポータブルコンピュータのような電子機器に係り、特にその筐体の内部に回路モジュールを収容するための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ブック形のポータブルコンピュータや移動体情報機器に代表される携帯形の電子機器は、文字、音声および画像のような多用のマルチメディア情報を処理するため、MPU:microprocessing unitの処理速度の高速化や多機能化が推し進められている。この種のMPUは、システム基板と称するメインの回路基板に実装されており、この回路基板上には、MPUの他に半導体パッケージのような多数の回路部品が高密度に実装されている。
【0003】ところで、上記回路基板上のMPUは、高集積化や高性能化に伴って消費電力が増加の一途を辿り、動作中の発熱量もこれに比例して急速に増大する傾向にある。そのため、発熱量の大きなMPUをポータブルコンピュータの筐体に収容するに当っては、この筐体の内部でのMPUの放熱性を高める必要があり、それ故、電動式のファンユニットやヒートシンクのような専用の冷却装置が必要不可欠な存在となりつつある。
【0004】従来のMPUの冷却方式として、ファンユニットを有するヒートシンクをMPUの上面に設置したものが知られている。このヒートシンクは、MPUの上面に重ねられるベースを有し、このベースの上面にファンユニットが配置されている。ファンユニットは、ファンを支持する偏平なファンケーシングを備えている。ファンケーシングは、ベースの上面に重ね合わされる底壁と、この底壁と向かい合う吸込口と、この吸込口に連なる排出口とを有している。そして、このファンケーシングは、ヒートシンクの薄型化を達成するため、ファンの回転軸線をMPUと直交させた横置きの姿勢でベースに支持されている。
【0005】このため、ファンユニットが駆動されると、ファンケーシングの吸込口から吸引された空気が底壁に向けて導かれるとともに、この空気は底壁に沿うように流れた後、排出口を通じて排出される。この結果、ヒートシンクが空気を媒体とする強制対流により冷却され、これによりMPUの放熱が促進されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の冷却方式によると、MPUの上面にヒートシンクが重ねて配置されているため、このMPUとヒートシンクとを含めたモジュールの厚み寸法が大きくなる。このため、筐体の薄型化を達成するためには、MPUが実装された回路基板を筐体の底壁に沿わせて配置し、底壁からMPUまでの寸法を極力小さく抑える必要がある。
【0007】ところが、この回路基板には、MPUばかりでなくその他の多数の回路部品が実装され、しかも、これら回路部品は回路基板の両面に実装されているため、回路基板と筐体の底壁との間に回路部品を収めるスペースを確保しなくてはならない。
【0008】このため、上記回路部品を収めるスペースの分だけ回路基板が筐体の底壁から離れてしまい、MPUおよびヒートシンクが底壁の上方に大きくずれて位置される。したがって、メインの回路基板上にMPUが実装された従来の構成では、筐体の厚み寸法を大きくせざるを得なくなり、近年の筐体の薄型化に対応することができなくなる。
【0009】本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、筐体の薄型化に対応しつつ、冷却を要する発熱体を筐体の内部に無理なく収容することができる電子機器を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の電子機器は、底壁を有する筐体と;この筐体の内部に収容され、上記底壁と向かい合うとともに、回路部品が実装された回路基板と;この回路基板を避けた位置において上記筐体の内部に収容され、上記回路基板に電気的に接続された回路モジュールと;を備えている。そして、上記回路モジュールは、動作中に発熱する発熱体が実装されたモジュール基板と、上記発熱体に熱的に接続されたヒートシンクと、を有し、上記モジュール基板は、上記筐体の内部において上記回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置されているとともに、上記発熱体は、モジュール基板の回路基板側の面に位置されていることを特徴としている。
【0011】このような構成によると、発熱体は、回路基板とは別のモジュール基板に実装されているので、この発熱体をモジュール基板と回路基板とをずらすことによって筐体内に生じた収容スペースに収めることができ、発熱体を回路基板と略同一の高さに位置させることができる。そのため、回路基板の上方又は下方にヒートシンクを含む発熱体が大きく張り出すことはなく、その分、筐体の薄型化が可能となる。
【0012】上記目的を達成するため、請求項7に係る本発明の電子機器は、筐体と;この筐体の内部に収容され、回路部品が実装された回路基板と;この回路基板を避けた位置において上記筐体の内部に収容され、動作中に発熱する発熱体を含む回路モジュールと;上記筐体の内部に収容され、上記発熱体の放熱を促進させるための冷却装置と;を具備している。そして、上記回路モジュールは、上記発熱体が実装されたモジュール基板を有し、このモジュール基板は、上記筐体の内部において上記回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置されていることを特徴としている。
【0013】このような構成によると、発熱体は、回路基板とは別のモジュール基板に実装されているので、この発熱体をモジュール基板と回路基板とをずらすことによって筐体内に生じた収容スペースに収めることができる。そのため、回路基板の上方又は下方に回路モジュールが大きく張り出すことはなく、その分、筐体の薄型化が可能となる。
【0014】上記目的を達成するため、請求項8に係る本発明の電子機器は、筐体と;この筐体の内部に収容され、回路部品が実装された第1の回路基板と;この第1の回路基板を避けた位置において上記筐体の内部に収容され、上記第1の回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置された第2の回路基板と;この第2の回路基板の第1の回路基板側の面に実装され、動作中に発熱する発熱体と;この発熱体の第2の回路基板とは反対側の面に熱的に接続されたヒートシンクと;を備えていることを特徴としている。
【0015】このような構成によると、発熱体は、第1の回路基板と区分けされた第2の回路基板に実装されているので、この発熱体を第1の回路基板と第2の回路基板とをずらすことによって筐体内に生じた収容スペースに収めることができ、発熱体を第1の回路基板と略同一の高さに位置させることができる。そのため、第1の回路基板の上方又は下方にヒートシンクを含む発熱体が大きく張り出すことはなく、その分、筐体の薄型化が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態をポータブルコンピュータに適用した図面にもとづいて説明する。図1は、電子機器としてのブック形のポータブルコンピュータ1を開示している。このポータブルコンピュータ1は、コンピュータ本体2と、このコンピュータ本体2に支持されたディスプレイユニット3とを備えている。
【0017】コンピュータ本体2は、箱状の筐体4を有している。この筐体4は、マグネシウム合金のような熱伝導性を有する金属材料にて構成されている。筐体4は、底壁4aと、この底壁4aと向かい合う上壁4bと、これら底壁4aと上壁4bとを結ぶ前壁4c、左右の側壁4dおよび後壁4eとを有している。そして、この筐体4は、厚み寸法が20mm程度に定められており、従来一般的なポータブルコンピュータに比べて薄型化が強化されている。
【0018】筐体4の上壁4bは、パームレスト6とキーボード装着口7とを有している。パームレスト6は、上壁4bの前半部において筐体4の幅方向に沿って延びている。キーボード装着口7は、筐体4の内部に向けて凹むような凹所にて構成され、このキーボード装着口7にキーボード8が取り付けられている。
【0019】図1に示すように、筐体4の上壁4bは、上向きに突出する一対のディスプレイ支持部10a,10bを有している。ディスプレイ支持部10a,10bは、上壁4bの後端部において、筐体4の幅方向に互いに離間して配置されている。
【0020】ディスプレイユニット3は、偏平な箱状のディスプレイハウジング11と、このディスプレイハウジング11に収容された液晶表示装置12とを備えている。ディスプレイハウジング11は、表示用開口部13が形成された前面を有している。液晶表示装置12は、文字や画像等が表示される表示画面12aを有し、この表示画面12aは、表示用開口部13を通じてディスプレイハウジング11の外方に露出されている。
【0021】ディスプレイハウジング11は、一対の脚部14a,14bを有している。脚部14a,14bは、ディスプレイ支持部10a,10bに導かれているとともに、ヒンジ装置15(図2に示す)を介して筐体4に回動可能に支持されている。このため、ディスプレイユニット3は、パームレスト6やキーボード8を上方から覆うように倒される閉じ位置と、パームレスト6、キーボード8および表示画面12aを露出させる開き位置とに亘って選択的に回動し得るようになっている。
【0022】図1および図2に示すように、筐体4の内部には、システム基板を構成する第1の回路基板20が収容されている。第1の回路基板20は、パームレスト6およびキーボード8の下方において、筐体4の底壁4aと平行に配置されている。第1の回路基板20は、底壁4aと向かい合う裏面20aと、上壁4bおよびキーボード装着口7と向かい合う表面20bとを有している。この第1の回路基板20の裏面20aおよび表面20bには、夫々半導体パッケージのような多数の回路部品21が実装されている。
【0023】そのため、第1の回路基板20と筐体4の底壁4aおよびキーボード装着口7との間には、回路部品21を収めるスペース22a,22bが確保されており、この第1の回路基板20は、筐体4の厚み方向の中間部に位置されている。
【0024】また、第1の回路基板20は、その右側縁部と後縁部とで規定される角部に、図1に示すような切り欠き23を有している。切り欠き23は、キーボード8の右端部の下方に位置され、筐体4の右側の側壁4dに隣接されている。
【0025】図3に示すように、筐体4の内部には、回路モジュール25が収容されている。回路モジュール25は、モジュール基板としての第2の回路基板26と、この第2の回路基板26に実装された発熱体としてのMPU:microprocessing unit27とを備えている。
【0026】第2の回路基板26は、第1の回路基板20の切り欠き23に対応した位置に設置されている。この第2の回路基板26は、筐体4の底壁4aの内面に沿うように配置されており、上記筐体4の内部において、第1の回路基板20よりも低い位置に配置されている。このため、第1の回路基板20と第2の回路基板26とは、筐体4の厚み方向に互いにずれており、これら第1の回路基板20と第2の回路基板26とをずらすことにより、上記筐体4の内部には、その厚み方向に広がる収容スペース24が形成されている。
【0027】第2の回路基板26は、裏面26aと表面26bとを有している。第2の回路基板26の裏面26aは、筐体4の底壁4aに対し僅かなクリアランスを存して向かい合っている。第2の回路基板26の表面26bは、図4に示すようなMPU実装領域28を有している。このMPU実装領域28は、筐体4の内部に臨んでいる。
【0028】MPU実装領域28には、四つの通孔29が形成されている。通孔29は、四角形の角部の位置関係を保って配置されており、これら通孔29で囲まれた部分に第1のコネクタ30が配置されている。第1のコネクタ30は、第2の回路基板26の表面26bに多数の半田ボールを介してフリップチップ接続されている。
【0029】このMPU実装領域28には、MPUホルダ32が配置されている。MPUホルダ32は、金属製のフレーム33と、このフレーム33に固定された四つのボス部34とを有している。フレーム33は、平坦な板状をなしており、上記第2の回路基板26の表面26bに重ね合わされている。ボス部34は、上記通孔29に対応する位置に配置されているとともに、夫々MPU実装領域28の上方に向けて突出されている。
【0030】図3および図4に示すように、上記発熱するMPU27は、上記MPUホルダ32を介して第2の回路基板26のMPU実装領域28に実装されている。MPU27は、マルチチップ・モジュール(以下MCMと称する)36と、このMCM36を収容するケース37とを備えている。
【0031】MCM36は、多層構造の配線基板38と、この配線基板38の表面に実装されたBGA 形の半導体パッケージ39と、配線基板38の表面および裏面に実装された複数のQFP 形の半導体パッケージ40と、配線基板38の裏面に実装された第2のコネクタ41とを備えている。
【0032】BGA 形の半導体パッケージ39は、ベース基板43とICチップ44とを有している。ベース基板43は、配線基板38の表面に実装されている。ICチップ44は、ベース基板43に多数の半田ボールを介してフリップチップ接続されている。このICチップ44は、文字、音声、画像のような多用なマルチメディア情報を処理するため、動作中の消費電力が大きくなっており、それに伴いICチップ44の発熱量も冷却を必要とする程に大きなものとなっている。
【0033】上記ケース37は、アルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料にて構成されている。このケース37は、ケース本体45と、このケース本体45に嵌合された裏蓋46とを備え、全体として偏平な四角形の箱形をなしている。
【0034】ケース本体45は、配線基板38の表面および半導体パッケージ39,40を覆っている。このケース本体45の四つの角部には、凹部47が形成されている。凹部47は、MPUホルダ32のボス部34に対応するもので、夫々挿通孔48を有している。そして、凹部47の底は、配線基板38の表面に隣接されている。裏蓋46は、その外周縁部がケース本体45に取り外し可能に引っ掛かっており、配線基板38の裏面やそこに実装された半導体パッケージ40を覆っている。この裏蓋46は、ケース本体45の凹部47と協働して上記配線基板38を挟んでおり、このことにより、配線基板38とケース37とが一体化されている。
【0035】配線基板38の第2のコネクタ41は、裏蓋46を貫通してケース37の外方に露出されている。第2のコネクタ41は、第1のコネクタ30に嵌合されており、この嵌合により、MPU27と第2の回路基板26とが電気的に接続されている。
【0036】ケース37の裏蓋46は、MPUホルダ32に重ねられている。このMPUホルダ32のボス部34は、裏蓋46を貫通してケース37内に挿入されており、これらボス部34の先端が配線基板38の裏面に接している。そのため、MPU27は、第2の回路基板26の表面26bに沿うように横置きの姿勢で配置され、上記第1の回路基板20と第2の回路基板26とをずらすことによって筐体4内に生じた収容スペース24に収められている。そして、図3に示すように、MPU27は、筐体4内において、第1の回路基板20に隣接されているとともに、この第1の回路基板20と略同一高さに位置されている。
【0037】また、図4や図7に示すように、ケース37のケース本体45は、発熱するICチップ44に対応する位置に開口部49を有している。開口部49は、ICチップ44よりも大きな開口形状を有し、この開口部49を通じてICチップ44がケース37の外方に露出されている。
【0038】図5ないし図8に示すように、上記回路モジュール25は、ICチップ44の放熱を促進させるための冷却装置51を備えている。この冷却装置51は、ヒートシンク52、ヒートパイプ53および電動式のファンユニット54とで構成されている。
【0039】ヒートシンク52は、平坦な長方形板状の放熱パネル55を有している。この放熱パネル55は、上記筐体4の幅方向に沿って延びている。放熱パネル55は、第1の基盤56と、この第1の基盤56に重ね合わされた第2の基盤57とを備えている。第1の基盤56は、アルミニウム合金をダイカスト成形することで構成され、平坦な下面56aおよび上面56bを有している。
【0040】図8は、放熱パネル55を第1の基盤56の下面56aの方向から見た状態を示している。この図8に最も良く示されるように、第1の基盤56は、受熱部60と、ファン取り付け部61とを有している。これら受熱部60とファン取り付け部61とは、第1の基盤56の下面56aにおいて、放熱パネル55の長手方向に互いに並べて配置されている。
【0041】受熱部60は、MPU27のケース37が重ね合わされる平坦な受熱面62を有している。この受熱面62には、下向きに僅かに突出する座部63が形成されている。この座部63は、ケース本体45の開口部49と向かい合う平坦な座面63aを有している。座部63の周囲には、受熱面62から下向きに突出する四つのボス部64が配置されている。ボス部64は、MPU27のケース37の凹部47に対応するもので、夫々凹部47の挿通孔48に連なるねじ挿通孔65を有している。ねじ挿通孔65は、第1の基盤56の上面56bに開口されている。
【0042】上記ファン取り付け部61は、平滑なガイド面67を有している。ガイド面67は、受熱部60の受熱面62に連なっている。そのため、受熱部60とファン取り付け部61とは、同一平面上に位置されている。
【0043】第2の基盤57は、固有の熱膨張率α2 を有する銅板にて構成されている。この第2の基盤57の熱膨張率α2 は、第1の基盤56の熱膨張率α1 よりも大きく定められている。第2の基盤57は、第1の基盤66の上面に隙間なく重ね合わされており、これら第1および第2の基盤56,57の接触部分の熱抵抗が小さく抑えられている。
【0044】第2の基盤57は、第1の基盤56の上面56bにおいて、上記受熱部60からファン取り付け部61に跨って配置されている。この第2の基盤57は、第1の基盤56の周囲に張り出す複数の支持部68を一体に有している。これら支持部68は、第1の基盤56の受熱部60およびファン取り付け部61に夫々対応した位置に配置されている。
【0045】図3に示すように、上記放熱パネル55の受熱部60は、MPU27の上方からケース37に重ね合わされており、この受熱部60のボス部64の先端がケース37の凹部47の底を貫通して配線基板38の表面に接している。受熱部60の二つのボス部64のねじ挿通孔65には、夫々放熱パネル55の上方からねじ70が挿入されている。ねじ70は、凹部47の挿通孔48、配線基板38を貫通してMPUホルダ32のボス部34および第2の回路基板26の通孔29にねじ込まれている。
【0046】また、図8に示すように、第2の回路基板26の残りの通孔29には、この第2の回路基板26の下方から他のねじ71が挿通されている。ねじ71は、配線基板38、凹部47の挿通孔48を貫通して受熱部60の残りのボス部64のねじ挿通孔65にねじ込まれている。
【0047】そのため、図3や図6に示すように、ヒートシンク52と第2の回路基板26とは、MPU27を挟み込んだ状態で互いに結合されている。この結合により、MPU27が第2の回路基板26の表面26bに押し付けられ、第1のコネクタ30と第2のコネクタ41との嵌合が維持されている。それとともに、放熱パネル55の受熱部60がMPU27に固定され、受熱部60の座面63aが発熱するICチップ44と僅かな隙間を介して向かい合っている。そして、この座面63aとICチップ44との間には、熱伝導性を有するグリス72が介在されており、このグリス72を介して座面63aとICチップ44とが熱的に接続されている。
【0048】図3に示すように、ヒートシンク52の放熱パネル55をMPU27のケース37に結合した状態では、そのファン取り付け部61がMPU27や第2の回路基板26の側方に突出されている。そして、このファン取り付け部61は、放熱パネル55の周囲に張り出す一対のブラケット部74a,74bを有している。ブラケット部74a,74bは、図9に示すように、筐体4の底壁4aと向かい合うとともに、この底壁4aから上向きに延びる複数の取り付け座75にねじ76を介して固定されている。
【0049】そのため、ヒートシンク52は、上記筐体4の内部の収容スペース24において、この筐体4の底壁4aと平行に配置されている。この結果、ファン取り付け部61のガイド面67は、筐体4の右側の側壁4dに隣接した位置において、底壁4aと向かい合っている。
【0050】図6ないし図8に示すように、上記ヒートパイプ53は、放熱パネル55の長軸方向の一辺に沿って延びる第1のパイプ部78aと、放熱パネル55の短軸方向の一辺に沿って延びる第2のパイプ部78bとを有している。これら第1および第2のパイプ部78a,78bは、上記第2の基盤57の支持部68にかしめて固定されている。第1のパイプ部78aの一端および第2のパイプ部78bは、受熱部60の近傍に位置されているとともに、第1のパイプ部78aの他端は、ファン取り付け部61の近傍に位置されている。
【0051】したがって、ヒートパイプ53は、第2の基盤57を介して受熱部60およびファン取り付け部61に夫々熱的に接続されているとともに、ヒートシンク52の放熱パネル55を取り囲んだ状態で受熱部60とファン取り付け部61とに跨って配置されている。
【0052】上記ファンユニット54は、ファン取り付け部61のガイド面67に支持されている。ファンユニット54は、ファンケーシング80と、このファンケーシング80に支持されたファン81とを備えている。
【0053】ファンケーシング80は、例えばアルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料にて構成されている。ファンケーシング80は、四つの角部を有する偏平な四角形の枠状をなしている。このファンケーシング80の厚み寸法は、上記MPU27のケース37の厚み寸法と略同等に定められている。そして、ファンケーシング80は、その四つの角部がねじ82を介してファン取り付け部61のガイド面67に固定されている。そのため、ファンケーシング80は、見かけ上、ヒートシンク52の放熱パネル55に吊り下げた姿勢で保持されている。
【0054】ファンケーシング80は、吸込口84と排出口85とを有している。吸込口84は、ファン取り付け部61のガイド面67と向かい合っている。排出口85は、吸込口84に隣接されているとともに、この吸込口84に連なっている。
【0055】吸込口84の内周縁部には、径方向内側に向けて延びる複数のステー86が形成されており、これらステー86の先端部に円盤状のモータ支持部87が形成されている。モータ支持部87は、偏平なDCブラシレスモータ89(図3に示す)を支持している。モータ89は、ファンケーシング80の厚み方向に延びる回転軸90を有している。このモータ89は、図示しないリード線を介して第2の回路基板26に電気的に接続されている。そして、モータ89は、MPU27の温度が予め決められた値に達した時に駆動されるようになっている。
【0056】上記ファン81は、モータ89の回転軸90に支持されている。ファン81は、吸込口84と向かい合っており、このファン81の径方向外側に上記排出口85が位置されている。
【0057】ファンユニット54は、吸込口84を通る回転軸線O1 を有している。回転軸線O1 は、回転軸90の軸方向に延びている。そして、ファンユニット54は、上記回転軸線O1 を放熱パネル55のガイド面67と直交させた横置きの姿勢でファン取り付け部61に固定されている。そのため、ファンユニット54は、放熱パネル55に沿うように配置されており、そのファンケーシング80の吸込口84が筐体4の底壁4aと僅かな隙間を存して向かい合っている。
【0058】ファンケーシング80の排出口85は、上記MPU27とは反対側に向けて開口されている。この排出口85は、筐体4の右側の側壁4dと向かい合っており、この側壁4dには、排出口85に連なる排気口92が形成されている。
【0059】図3および図5に示すように、上記回路モジュール25の第2の回路基板26は、第1の回路基板20の下方に入り込むように延長された接続部94を有している。接続部94は、上記放熱パネル55のブラケット部74とはファンユニット54およびMPU27を挟んだ反対側に位置されており、放熱パネル55の筐体4への固定箇所から充分に遠ざけられている。そして、接続部94は、第1の回路基板20の裏面20aと向かい合うとともに、一対のスタッキングコネクタ95を介して第1の回路基板20に電気的に接続されている。
【0060】このような構成のポータブルコンピュータ1において、MPU27のICチップ44が発熱すると、このICチップ44の熱は、グリス72を介して放熱パネル55の座部63に伝えられる。この熱は、座部63から受熱部60に伝達されるとともに、この受熱部60からファン取り付け部61に熱伝導により拡散される。
【0061】また、この放熱パネル55には、受熱部60とファン取り付け部61とに跨るヒートパイプ53が熱的に接続されているので、ICチップ44から受熱部60に伝えられた熱の一部は、第2の基盤57の支持部68を介してヒートパイプ53に伝えられる。そのため、受熱部60の熱は、ヒートパイプ53を介してファン取り付け部61に積極的に移される。
【0062】MPU27の温度が予め規定された値を上回ると、DCブラシレスモータ89を介してファン81が回転駆動される。このファン81の回転により、筐体4内の空気がファンケーシング80の吸込口84に吸い込まれ、この空気はファンケーシング80内を排出口85に向けて流れる。これにより、ファンケーシング80および放熱パネル55が空気を媒体とする強制対流により直接冷却されるとともに、この放熱パネル55のファン取り付け部61に伝えられた熱が空気流に乗じて外部に放出され、MPU27の放熱が促進される。そして、ファンケーシング80の排出口85に導かれた空気は、排気口92を介して筐体4の外方に放出される。
【0063】ところで、上記構成のポータブルコンピュータ1によると、MPU27と第2の回路基板26とは一つの回路モジュール25としてユニット化され、この第2の回路基板26は、システム基板としての第1の回路基板20とは切り離された別の部品となっている。そして、第2の回路基板26は、そのMPU27とは反対側の裏面26aを筐体4の底壁4aの内面に沿わせた姿勢で配置され、上記第1の回路基板20に対し筐体4の厚み方向にずれているので、これら回路基板20,26をずらすことによって筐体4の内部に生じた収容スペース24に上記MPU27およびこのMPU27のケース37に重ね合わされたヒートシンク52を無理なく収めることができる。
【0064】このため、筐体4の内部にMPU27を収容するに当って、このMPU27を第1の回路基板20と略同一高さ位置に収めることが可能となり、この第1の回路基板20の上方又は下方に冷却装置51やMPU27の設置スペースを確保する必要はない。したがって、回路部品21の存在により、第1の回路基板20を筐体4の底壁4aに沿わせて配置することが困難な場合でも、MPU27および冷却装置51が第1の回路基板20の上方又は下方に大きく張り出すことはなく、その分、筐体4の薄型化を推し進めることができる。
【0065】なお、上記実施の形態では、第2の回路基板を筐体の底壁の内面に沿わせて配置したが、この第2の回路基板を筐体の上壁の内面あるいはキーボード装着口の底に沿わせて配置し、冷却装置のヒートシンクを筐体の底壁に沿わせて配置しても良い。
【0066】また、上記実施の形態のファンユニットは、その回転軸線をファン取り付け部のガイド面と直交させた横置きの姿勢で配置したが、筐体の厚み寸法に余裕があれば、このファンユニットをガイド面に対し傾けて配置しても良い。
【0067】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、回路基板をずらすことによって筐体の内部に生じたスペースに発熱体やヒートシンクを収めることができるので、これら発熱体およびヒートシンクのような冷却装置が回路基板の上方又は下方に大きく張り出すことはなく、その分、筐体の薄型化が可能となるといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】ポータブルコンピュータの側面図。
【図3】第1の回路基板、回路モジュールおよび冷却装置との位置関係を示すポータブルコンピュータの断面図。
【図4】MPUを第2の回路基板から取り外した状態を示す斜視図。
【図5】回路モジュールおよび冷却装置を筐体に収容した状態を示す平面図。
【図6】回路モジュールに冷却装置を取り付けた状態を示す斜視図。
【図7】回路モジュールから冷却装置を取り外した状態を示す斜視図。
【図8】回路モジュールから冷却装置を取り外した状態を示す斜視図。
【図9】図5の9F−9F線に沿う断面図。
【符号の説明】
4…筐体
4a…底壁
20…第1の回路基板(回路基板)
21…回路部品
25…回路モジュール
26…第2の回路基板(モジュール基板)
27…発熱体(MPU)
51…冷却装置
52…ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 底壁を有する筐体と;この筐体の内部に収容され、上記底壁と向かい合うとともに、回路部品が実装された回路基板と;この回路基板を避けた位置において上記筐体の内部に収容され、上記回路基板に電気的に接続された回路モジュールと;を具備し、上記回路モジュールは、動作中に発熱する発熱体が実装されたモジュール基板と、上記発熱体に熱的に接続されたヒートシンクと、を有し、上記モジュール基板は、上記筐体の内部において上記回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置されているとともに、上記発熱体は、上記モジュール基板の回路基板側の面に位置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】 請求項1の記載において、上記モジュール基板は、上記発熱体が実装された表面と、この表面の反対側に位置された裏面と、を有し、この裏面を上記底壁に沿わせた姿勢で筐体の内部に収容されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】 請求項2の記載において、上記ヒートシンクは、上記発熱体の熱を受ける受熱部と、この受熱部に並べて配置されたファン取り付け部と、を有し、このファン取り付け部は、上記発熱体およびモジュール基板を外れた位置に突出されて上記筐体の底壁と向かい合うとともに、このファン取り付け部に送風用のファンユニットが取り付けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】 請求項3の記載において、上記ファンユニットは、ファンを回転自在に支持する偏平なファンケーシングを有し、このファンケーシングは、ファンの回転軸線を上記ヒートシンクと直交させた横置きの姿勢で上記ファン取り付け部と底壁との間に収められていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】 請求項3の記載において、上記ヒートシンクは、受熱部に伝えられた発熱体の熱をファン取り付け部に移送するヒートパイプを有していることを特徴とする電子機器。
【請求項6】 請求項4の記載において、上記発熱体は、配線基板と、この配線基板に実装され、動作中に発熱するICチップと、上記配線基板を収容するとともに、上記ICチップを外方に露出させる通孔を有する偏平なケースと、を備え、このケースは、上記通孔を放熱板に向けた姿勢で受熱部に支持され、この通孔から露出されたICチップが受熱部に熱的に接続されているとともに、上記ケースの厚み寸法は、上記ファンケーシングの厚み寸法と略同等に定められていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】 筐体と;この筐体の内部に収容され、回路部品が実装された回路基板と;この回路基板を避けた位置において上記筐体の内部に収容され、動作中に発熱する発熱体を含む回路モジュールと;上記筐体の内部に収容され、上記発熱体の放熱を促進させるための冷却装置と;を具備し、上記回路モジュールは、上記発熱体が実装されたモジュール基板を有し、このモジュール基板は、上記筐体の内部において上記回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする電子機器
【請求項8】 筐体と;この筐体の内部に収容され、回路部品が実装された第1の回路基板と;この第1の回路基板を避けた位置において上記筐体の内部に収容され、上記第1の回路基板に対し筐体の厚み方向にずれた位置に配置された第2の回路基板と;この第2の回路基板の第1の回路基板側の面に実装され、動作中に発熱する発熱体と;この発熱体の第2の回路基板とは反対側の面に熱的に接続されたヒートシンクと;を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−13065(P2000−13065A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−178785
【出願日】平成10年6月25日(1998.6.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221052)東芝コンピュータエンジニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】