説明

電子機器

【課題】本発明は、ファン装置に吸入される冷却用空気およびファン装置から送風される冷却用空気を利用して回路基板上の発熱体を冷却することができ、この発熱体の冷却効率を高めることができる電子機器の提供を目的とする。
【解決手段】電子機器は、筐体4を有している。筐体の内部には回路基板30が収容されている。回路基板は、筐体の内部を吸気通路36と排気通路37とに仕切っており、この回路基板に吸気通路又は排気通路の少なくともいずれか一方に露出されたMPU32が実装されている。筐体の内部にはファン装置43が収容されている。ファン装置は、吸気通路に連なる吸込口50および排気通路に連なる送風口51を有し、このファン装置の作動によって吸気通路および排気通路に冷却用空気が流通される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポータブルコンピュータのような電子機器に係り、特にその筐体の内部に収容された発熱体を強制的に冷却するための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ブック形のポータブルコンピュータや移動体情報機器に代表される携帯形の電子機器は、文字、音声および画像のような多用のマルチメディア情報を処理するため、MPU:microprocessing unitの処理速度の高速化や多機能化が推し進められている。この種のMPUは、高集積化や高性能化に伴って消費電力が増加の一途を辿り、動作中の発熱量もこれに比例して急速に増大する傾向にある。
【0003】そのため、発熱量の大きなMPUをポータブルコンピュータの筐体に収容するに当っては、この筐体の内部でのMPUの放熱性を高める必要があり、それ故、このMPUを強制的に冷却する専用の冷却装置が必要となる。
【0004】このMPU用の冷却装置として、従来、ヒートシンクと電動式のファン装置とを一体化したものが知られている。ヒートシンクは、MPUの熱を受ける受熱部と、この受熱部に連なる熱交換部とを備えており、上記MPUが実装された回路基板と共に筐体の内部に収容されている。
【0005】ファン装置は、ファンを支持するファンケーシングを有している。このファンケーシングは、冷却用空気を吸い込む吸入口と、この吸入口に連なる送風口とを有し、この吸入口を上記受熱部に向けた姿勢でヒートシンクの熱交換部に支持されている。そして、ファン装置は、筐体の側壁あるいは後壁に隣接されており、この側壁あるいは後壁にファンケーシングの送風口に連なる排気口が開口されている。
【0006】このため、ファン装置が駆動されると、筐体内部の空気がファンケーシングの吸入口に吸引され、この空気が冷却風となってヒートシンクに導かれる。これにより、ヒートシンクが冷却用空気を媒体とする強制対流により冷却され、このヒートシンクに伝えられたMPUの熱が、冷却用空気の流れに乗じてファンケーシングの送風口から排気口を通じて筐体の外方に排出されるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この従来の冷却装置によると、ファン装置の送風口が筐体の排気口に直接連なっているため、このファン装置の送風口から送風される冷却用空気は、排気口を通じて筐体の外方にそのまま排出されてしまう。
【0008】そのため、筐体の内部には、ファン装置に向かう冷却用空気の流れ経路しか存在せず、ファン装置から送風される冷却用空気は、MPUやヒートシンクの冷却に何等寄与していないことになる。
【0009】したがって、MPUやヒートシンクの冷却効率を高めるためには、ヒートパイプを併用したり、ファンの回転数を高めてヒートシンクに導かれる冷却用空気の流量を増やさなくてはならず、それ故、部品点数が増大してコスト高を招いたり、騒音が大きくなるといった問題が生じてくる。
【0010】本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、ファン装置に吸入される冷却用空気およびファン装置から吐出される冷却用空気を利用して回路基板や発熱体を冷却することができ、発熱体の冷却効率を高めることができる電子機器の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の電子機器は、筐体と;上記筐体の内部に収容され、この筐体の内部を吸気通路と排気通路とに仕切る回路基板と;この回路基板に実装され、上記吸気通路又は排気通路の少なくともいずれか一方に露出された発熱体と;上記筐体の内部に収容され、上記吸気通路に連なる吸込口および排気通路に連なる送風口を有するとともに、これら吸気通路および排気通路に夫々冷却用空気を流通させるためのファン装置と;を備えていることを特徴としている。
【0012】このような構成において、ファン装置が駆動されると、筐体の吸気通路にファン装置の吸込口に向かう冷却用空気の流れが形成されるとともに、筐体の排気通路にファン装置の送風口から吐出された冷却用空気の流れが形成される。このため、吸気通路又は排気通路の少なくともいずれか一方を流れる冷却用空気が発熱体に直接吹き付けられ、この発熱体を冷却用空気を媒体とする強制対流により強制的に冷却することができる。
【0013】また、発熱体で発生した熱の一部は、この発熱体から回路基板への熱伝導により回路基板全体に拡散される。そして、この回路基板は、筐体の内部を吸気通路と排気通路とに仕切っているので、この回路基板の両面が吸気・排気通路を流れる冷却用空気との接触により冷却され、この回路基板に伝えられた発熱体の熱を、冷却用空気の流れに乗じて効率良く放出することができる。
【0014】したがって、筐体の吸気通路を流れる冷却用空気と、筐体の排気通路を流れる冷却用空気との双方を発熱体の冷却用として積極的に利用することができ、格別なヒートパイプを付加したりファン装置の回転数を増大させることなく、発熱体の冷却効率を高めることができる。
【0015】上記目的を達成するため、請求項6に係る本発明の電子機器は、筐体と;上記筐体の内部に収容され、この筐体の内部を吸気通路と排気通路とに仕切る回路基板と;この回路基板に実装され、上記吸気通路又は排気通路のいずれか一方に露出された発熱体と;上記筐体の内部に収容され、上記吸気通路に連なる吸込口および排気通路に連なる送風口を有するとともに、これら吸気通路および排気通路に夫々冷却用空気を流通させるためのファン装置と;上記筐体の内部に収容され、上記冷却用空気を上記発熱体に向けて導くとともに、この発熱体に熱的に接続されたヒートシンクと;を備えていることを特徴としている。
【0016】このような構成において、ファン装置が駆動されると、筐体の吸気通路にファン装置の吸込口に向かう冷却用空気の流れが形成されるとともに、筐体の排気通路にファン装置の送風口から排出された冷却用空気の流れが形成される。このため、吸気通路又は排気通路の少なくともいずれか一方を流れる冷却用空気が発熱体に直接吹き付けられ、この発熱体を冷却用空気を媒体とする強制対流により強制的に冷却することができる。
【0017】また、発熱体で発生した熱の一部は、この発熱体から回路基板への熱伝導により回路基板全体に拡散されるとともに、ヒートシンクへの熱伝導によりヒートシンク全体に拡散される。この場合、回路基板は、筐体の内部を吸気通路と排気通路とに仕切っているので、この回路基板の両面が吸気・排気通路を流れる冷却用空気との接触により冷却され、この回路基板に伝えられた発熱体の熱を、冷却用空気の流れに乗じて効率良く放出することができる。
【0018】それとともに、冷却用空気は、ヒートシンクを介して発熱体に導かれるので、この発熱体に冷却用空気の流れを集中させることができ、その分、発熱体に導かれる冷却用空気の流量が増大して、この発熱体の放熱性能を高めることができる。しかも、ヒートシンクと冷却用空気とが直接接するので、このヒートシンクを冷却用空気を媒体とする強制対流によって積極的に冷却することができ、ヒートシンクに伝えられた発熱体の熱を効率良く放出することができる。
【0019】この結果、筐体の吸気通路を流れる冷却用空気と、筐体の排気通路を流れる冷却用空気との双方を発熱体の冷却用として積極的に利用することができ、格別なヒートパイプを付加したりファン装置の回転数を増大させることなく、発熱体の冷却性能を高めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下本発明の第1の実施の形態を、ポータブルコンピュータに適用した図1および図2にもとづいて説明する。
【0021】図1は、電子機器としてのポータブルコンピュータ1を開示している。このポータブルコンピュータ1は、コンピュータ本体2と、このコンピュータ本体2に支持されたディスプレイユニット3とを備えている。
【0022】コンピュータ本体2は、箱状の筐体4を有している。筐体4は、底壁5と、底壁5の周縁から上向きに延びる前壁6、左右の側壁7a,7bおよび後壁8と、これら前壁6、側壁7a,7bおよび後壁8の上端に連なる上壁9とを有している。この筐体4は、底壁5を有するベース11と、上壁9を有するトップカバー12とに分割されている。ベース11は、マグネシウム合金のような熱伝導性を有する金属材料にて構成されている。トップカバー12は、合成樹脂材料にて構成され、ベース11に取り外し可能に被せられている。
【0023】筐体4の上壁9は、パームレスト13とキーボード装着口14とを有している。パームレスト13は、上壁9の前半部において筐体4の幅方向に延びている。キーボード装着口14は、図2に示すように、パームレスト13の後端部において筐体4の内部に向けて開口されており、このキーボード装着口14にキーボード15が配置されている。
【0024】キーボード15は、キーボードベース16と、多数のキー17とを備えている。キーボードベース16は、キーボード装着口14にきっちりと嵌まり込むような長方形の板状をなしており、その下面がキーボード装着口14を介して筐体4の内部に露出されている。そして、キー17は、キーボードベース16の上面に配置されている。
【0025】筐体4の上壁9は、上向きに突出する凸部20を有している。凸部20は、筐体4の後端部において、この筐体4の幅方向に延びている。この凸部20は、一対のディスプレイ支持部21a,21bを有している。ディスプレイ支持部21a,21bは、凸部20の前方、上方および後方に連続して開放するような凹所にて構成され、筐体4の幅方向に互いに離間して配置されている。
【0026】ディスプレイユニット3は、箱状のディスプレイハウジング23と、このディスプレイハウジング23の内部に収容されたフラットな液晶ディスプレイモジュール24とを備えている。ディスプレイハウジング23は、前面に表示用の開口部25を有し、この開口部25を通じて液晶ディスプレイモジュール24の表示画面26がディスプレイハウジング23の外方に露出されている。
【0027】ディスプレイハウジング23は、一対の脚部28a,28bを有している。脚部28a,28bは、筐体4のディスプレイ支持部21a,21bに導かれているとともに、図2の(A)に示すヒンジ装置27を介して筐体4に回動可能に連結されている。このため、ディスプレイユニット3は、パームレスト13およびキーボード15を上方から覆うように倒される閉じ位置と、パームレスト13、キーボード15および表示画面26を露出するように起こされる開き位置とに亘って選択的に回動し得るようになっている。
【0028】図2に示すように、筐体4の内部には、回路基板30が収容されている。回路基板30は、底壁5から上向きに突出された複数の座部5aにねじを介して固定されている。回路基板30は、キーボード15およびこのキーボード15の後端に連なる上壁9の後端部の下方において、底壁5と略平行に配置されており、この回路基板30の後端縁部は、筐体4の後壁8に隣接されている。そして、回路基板30は、第1の面としての裏面30aと、第2の面としての表面30bとを有している。裏面30aは、底壁5と向かい合い、表面30aは、キーボードベース16の下面および上壁9の後端部と向かい合っている。
【0029】回路基板30の裏面30aおよび表面30bには、夫々半導体パッケージやコネクタのような多数の回路部品31が実装されている。また、この回路基板30の表面30bには、発熱体としてのMPU:microprocessing unit32が実装されている。MPU32は、キーボード15の後半部の下方において、筐体4の左側の側壁7aに隣接されている。
【0030】MPU32は、配線基板33と、この配線基板33上にフリップチップ接続されたICチップ34とを有するBGA形の半導体パッケージにて構成され、このICチップ34が回路基板30の表面30bに露出されている。そして、このICチップ34は、文字、音声および画像のような多用のマルチメディア情報を処理するため、動作中の消費電力が大きくなっており、それに伴いICチップ34の発熱量も冷却を必要とする程に大きなものとなっている。
【0031】図2の(A)に示すように、回路基板30は、筐体4の内部を吸気通路36と排気通路37とに上下に仕切っている。吸気通路36は、筐体4の底壁5と回路基板30の裏面30aとの間に形成されており、この吸気通路36に一部の回路部品31が露出されている。そして、吸気通路36の後端は、筐体4の後壁8の下端部に連なっており、この後壁8の下端部には、吸気通路36に連なる吸気孔38が開口されている。
【0032】排気通路37は、回路基板30の表面30bと筐体4の上壁9の後端部およびキーボードベース16との間に形成されており、この排気通路37に一部の回路部品31および発熱するMPU32が露出されている。そして、排気通路37の後端部は、上壁9の後端部の下方に達しており、この上壁9の後端部には、下向きに延びるガイド壁39が形成されている。ガイド壁39は、筐体4の内部において、この筐体4の凸部20の直前に位置されている。ガイド壁39の下端は、回路基板30の表面30bに近接されて、排気通路37の後端を閉じている。この排気通路37の後端に対応する上壁9の後端部には、排気通路37に連なる複数の排気孔40が開口されている。そのため、吸気孔38と排気孔40とは、筐体4の後端部において、回路基板30を挟んで互いに隣り合うような位置関係となっている。
【0033】図2に示すように、筐体4の内部にはファン装置43が収容されている。ファン装置43は、筐体4の薄型化に対応するため、この筐体4の内部において、回路基板30と並べて配置されている。このため、ファン装置43は、キーボード15の前半部の下方であり、かつ上記発熱するMPU32の後方に位置されている。
【0034】ファン装置43は、ファンケーシング44と、図示しない偏平モータにより回転駆動されるファン45とを備えている。ファンケーシング44は、例えばアルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料にて構成され、上記筐体4の厚み方向に偏平な枠状をなしている。ファンケーシング44は、筐体4の底壁5から上向きに突出する複数の座部46にねじ止めされている。このファンケーシング44と底壁5との間には、座部46の高さに対応するような隙間47が形成されており、この隙間47は、筐体4の内部の吸気通路36に連なっている。
【0035】ファンケーシング44は、吸込口50と送風口51とを有している。吸込口50は、筐体4の底壁5と向かい合うとともに、上記隙間47を介して吸気通路36に連なっている。送風口51は、吸込口50とは反対側において上向きに開口されており、上記筐体4の内部において上記排気通路37に連なっている。
【0036】ファン45は、上記偏平モータを介してファンケーシング44に支持されている。ファン45は、その回転中心を通る回転軸線O1を有し、この回転軸線O1を筐体4の厚み方向に沿わせた横置きの姿勢で吸込口50と送風口51との間に収められている。そして、ファン45を回転駆動する偏平モータは、上記MPU32の温度が予め決められた値に達した時に作動されるようになっている。
【0037】そのため、ファン45が回転駆動されると、吸込口50から隙間47を介して吸気通路36に負圧が作用し、筐体4の外部の冷たい空気が吸気孔38を通じて吸気通路36に吸い込まれるようになっている。
【0038】図2の(A)に示すように、ファン装置43は、ヒートシンク53を有している。ヒートシンク53は、ファンケーシング44と一体化され、このファンケーシング44の送風口51から排気通路37に向けて延びている。
【0039】ヒートシンク53は、導風ガイド部54と受熱部55とを備えている。導風ガイド部54は、ファンケーシング44を上方から覆うことで、このファンケーシング44の送風口51を筐体4の内部から区画している。この導風ガイド部54は、送風口51とキーボードベース16との間に介在された平坦なガイド面56と、このガイド面56に連なる連通口57とを有している。連通口57は、排気通路37に連なるとともに、上記回路基板30上のMPU32と向かい合っている。
【0040】このため、ファン45が回転駆動されると、送風口51から送風される冷却用空気は、ガイド面56に吹き付けられるとともに、このガイド面56との接触により流れ方向が連通口57に向けて略90°変換され、この連通口57から排気通路37に集中的に導かれるようになっている。
【0041】受熱部55は、回路基板30とキーボードベース16との間に入り込むような平坦な板状をなしている。この受熱部55は、MPU32と向かい合う下面55aを有している。受熱部55の下面55aは、ガイド面56に連なっている。この受熱部55の下面55aには、排気通路37に向けて張り出す座部59が形成されている。座部59の下端は、平坦な受熱面60をなしている。この受熱面60は、熱伝導性のグリス61を介して発熱するICチップ34に熱的に接続されている。
【0042】そして、受熱部55の下面55aは、キーボードベース16の下方に位置するので、この受熱部55の下面55aと回路基板30の表面30bとの間の高さ寸法が狭くなり、連通口57からMPU32に向かう冷却用空気の流れが流速が強制的に絞られる。この結果、排気通路37をMPU32に向けて流れる冷却用空気の流速が高められ、その分、冷却用空気によるMPU32の放熱効果が増大するようになっている。
【0043】図2の(A)に示すように、受熱部55の下面55aには、複数の放熱フィン62が一体に形成されている。放熱フィン62は、座部59の周囲において排気通路37に向けて突出されている。
【0044】このような構成のポータブルコンピュータ1において、MPU32のICチップ34が発熱すると、このICチップ34の熱の一部は、回路基板30への熱伝導によりこの回路基板30全体に拡散される。また、ICチップ34の熱の一部は、座部46の受熱面60を経て受熱部55に伝えられるとともに、この受熱部46から導風ガイド部54への熱伝導によりヒートシンク53全体に拡散される。
【0045】MPU32の温度が予め規定された値を上回ると、偏平モータを介してファン45が回転駆動される。これにより、ファンケーシング44の吸込口50に負圧が作用し、図2に矢印で示すように、ポータブルコンピュータ1の外部の冷たい空気が筐体4の吸気孔38を介して吸気通路36に吸い込まれる。この冷却用空気は、吸気通路36を回路基板30の裏面30aに沿ってファン装置43に向けて流れ、この流れの過程で回路基板30を強制的に冷却する。
【0046】吸気通路36を流れる冷却用空気は、隙間47および吸込口50を通じてファン装置43に吸引され、ファン45の回転に伴って送風口51から導風ガイド部54のガイド面56に直接吹き付けられる。この冷却用空気は、ガイド面56との接触によってその流れ方向が90°変換された後、連通口57を通じて排気通路37に集中的に導かれる。そして、この冷却用空気は、受熱部55のガイド面56や回路基板30の表面30bに沿って後方に流れると同時に、発熱するICチップ34に直接吹き付けられる。この結果、冷却用空気は、排気通路37を流れる過程でICチップ34を始めとして、導風ガイド部54、受熱部55および回路基板30を強制的に冷却する。
【0047】この際、受熱部55のガイド面56には、排気通路37に臨む放熱フィン62が形成されているので、排気通路37を流れる冷却用空気と受熱部55との接触面積が増大し、その分、受熱部55の放熱性が良好となる。
【0048】そして、排気通路37の後端部に達した冷却用空気は、図2の(A)に矢印で示すように、ガイド壁39との接触により流れ方向が上向きに変換され、排気孔40を通じて筐体4の外方に排出される。
【0049】このような本発明の第1の実施の形態によると、MPU32が実装された回路基板30は、筐体4の内部を吸気通路36と排気通路37との上下に仕切っており、この吸気通路36にファン装置43に向けて吸い込まれる冷却用空気の流れが形成されるとともに、排気通路37には、ファン装置43から吐出された冷却用空気の流れ形成される。
【0050】このため、回路基板30の裏面30aおよび表面30bの両面を吸気・排気通路36,37を流れる冷却用空気により強制的に冷却することができ、この回路基板30と冷却用空気との接触面積が増大する。よって、回路基板30に伝えられたICチップ34の熱を、冷却用空気の流れに乗じて効率良く放出することができる。
【0051】しかも、発熱するICチップ34には、排気通路37を流れる冷却用空気が直接吹き付けられるので、このICチップ34を冷却用空気を媒体とする強制対流によって積極的に冷却することができ、このICチップ34を含むMPU32の冷却効率を高めることができる。
【0052】この結果、上記回路基板30の放熱性が向上することと合わせて、MPU32の冷却効率がより一層向上し、通常の使用温度環境下においては、格別なヒートパイプを付加したり、ファン45の回転数を増大させることなく、MPU32の動作環境温度を適正に保つことができる。
【0053】しかも、上記構成によると、ファン装置43は、その送風口51から排気通路37に向けて延びるヒートシンク53を有し、このヒートシンク53の連通口57を通じて冷却用空気が排気通路37に送風されるので、発熱するMPU32に冷却用空気を集中させることができ、このMPU32に導かれる冷却用空気の風量が増大する。
【0054】加えて、上記ヒートシンク53の存在により、MPU32に向かう冷却用空気の流速が高められるので、その分、冷却用空気によるMPU32の放熱効果が増大する。そして、排気通路37に向かう冷却用空気は、熱交換部54のガイド面56や受熱部55の下面55aに沿って流れるので、ICチップ34の熱を受けるヒートシンク53自体を冷却用空気を媒体とする強制対流により積極的に冷却することができる。
【0055】この結果、ヒートシンク53に伝えられたICチップ34の熱を効率良く放出することができ、MPU32の冷却効率を高める上で有効に寄与するといった利点がある。
【0056】なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、図3に本発明の第2の実施の形態を示す。
【0057】この第2の実施の形態は、第1の実施の形態のヒートシンクを省略しつつ、回路基板30の放熱性能を高めるようにしたものであり、ポータブルコンピュータの基本的な構成は、第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0058】図3の(A)に示すように、ファン装置43の送風口51は、筐体4の内部においてキーボードベース16の下面と向かい合っている。この送風口51とキーボードベース16との間には、排気通路37に連なる隙間70が形成されている。
【0059】また、キーボード装着口14の開口前縁に臨む上壁9の下面には、下向きに延びる遮蔽壁71が形成されている。この遮蔽壁71は、ファン装置43の送風口51とキーボードベース16との間の隙間70を後方から塞いでいる。そのため、送風口51から送風される冷却用空気は、図3の(A)に矢印で示すように、キーボードベース16との接触に伴って流れ方向が90°変換された後、その多くがキーボードベース16の下面に沿って排気通路37に導かれるようになっている。
【0060】回路基板30の裏面30aおよび表面30bには、放熱突部としての多数の放熱ピン73が突設されている。放熱ピン73は、金属製の線材にて構成され、上記MPU32の近傍において、夫々吸気通路36および排気通路37に向けて突出されている。そして、放熱ピン73は、回路基板30の裏面30aおよび表面30bに夫々半田付けすることで、この回路基板30に面実装されている。
【0061】具体的には、図3の(B)に示すように、回路基板30の裏面30aおよび表面30bには、夫々複数のダミーパッド74が配置されている。ダミーパッド74は、回路部品31や回路パターンを避けた位置に形成されており、これらダミーパッド74上に放熱ピン73が回路部品31と同様の実装プロセスを利用して半田付けされている。
【0062】このような構成の第2の実施の形態によると、回路基板30に吸気通路36および排気通路37に突出する放熱ピン73を半田付けしたので、これら吸気・排気通路36,37を流れる冷却用空気と回路基板30との接触面積が増大する。このため、回路基板30に逃されたMPU32の熱を冷却用空気中に効率良く放出することができ、その分、MPU32の冷却効率を高めることができる。
【0063】しかも、放熱ピン73は、回路基板30上のダミーパッド74に半田付けされているので、これら放熱ピン73を従来一般的な回路部品31と同様の実装プロセスを用いて回路基板30に面実装することができる。このため、回路基板30への放熱ピン73の実装作業を自動化することができ、これら放熱ピン73の取り付け作業を容易に行えるといった利点がある。
【0064】また、上記第1および第2の実施の形態に比べてMPU32の発熱量が小さい場合には、図4に示す本発明の第3の実施の形態のように、ヒートシンクや放熱フィンを省略し、吸気・排気通路36,37を流れる冷却用空気によって回路基板30を冷却するとともに、排気通路37を流れる冷却用空気をMPU32に直接吹き付けることで、このMPU32を冷却するようにしても良い。
【0065】さらに、上記各実施の形態においては、発熱するMPUを排気通路に露出させたが、本発明はこれに限らず、MPUを吸気通路に露出させたり、あるいは排気通路と吸気通路の双方に露出させるようにしても良い。
【0066】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、筐体の吸気通路を流れる冷却用空気と、筐体の排気通路を流れる冷却用空気との双方を利用して回路基板や発熱体を冷却することができる。このため、格別なヒートパイプを付加したりファン装置の回転数を増大させることなく、発熱体の冷却効率を高めることができ、通常の使用温度環境下において発熱体の動作環境を適正に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】(A)は、筐体の内部の吸気通路と排気通路との位置関係を示すコンピュータ本体の断面図。
(B)図2の(A)の2F−2F線に沿う断面図。
【図3】(A)は、本発明の第2の実施の形態において、筐体の内部の吸気通路と排気通路との位置関係を示すコンピュータ本体の断面図。(B)は、図3の(A)の3F部を拡大して示す断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態において、筐体の内部の吸気通路と排気通路との位置関係を示すコンピュータ本体の断面図。
【符号の説明】
4…筐体
30…回路基板
32…発熱体(MPU)
36…吸気通路
37…排気通路
43…ファン装置
50…吸込口
51…送風口
53…ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 筐体と;上記筐体の内部に収容され、この筐体の内部を吸気通路と排気通路とに仕切る回路基板と;この回路基板に実装され、上記吸気通路又は排気通路の少なくともいずれか一方に露出された発熱体と;上記筐体の内部に収容され、上記吸気通路に連なる吸込口および排気通路に連なる送風口を有するとともに、これら吸気通路および排気通路に夫々冷却用空気を流通させるためのファン装置と;を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】 請求項1の記載において、上記回路基板は、上記吸気通路又は排気通路の少なくともいずれか一方に向けて突出する放熱突起を有することを特徴とする電子機器。
【請求項3】 請求項2の記載において、上記回路基板は、上記吸気通路に臨む第1の面と、上記排気通路に臨む第2の面とを有し、これら第1および第2の面の少なくともいずれか一方にパッドが形成されているとともに、上記放熱突起は、上記パッドに半田付けすることで上記回路基板に面実装されていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】 請求項1の記載において、上記ファン装置は、回転駆動されるファンを有し、このファンを挟んで上記吸込口と送風口とが向かい合っているとともに、このファン装置と上記回路基板とは、上記筐体の内部において互いに並べて配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】 請求項1の記載において、上記発熱体は、ヒートシンクに熱的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】 筐体と;上記筐体の内部に収容され、この筐体の内部を吸気通路と排気通路とに仕切る回路基板と;この回路基板に実装され、上記吸気通路又は排気通路のいずれか一方に露出された発熱体と;上記筐体の内部に収容され、上記吸気通路に連なる吸込口および排気通路に連なる送風口を有するとともに、これら吸気通路および排気通路に夫々冷却用空気を流通させるためのファン装置と;上記筐体の内部に収容され、上記冷却用空気を上記発熱体に向けて導くとともに、この発熱体に熱的に接続されたヒートシンクと;を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】 請求項6の記載において、上記発熱体は、上記排気通路に露出され、また、上記ヒートシンクは、上記発熱体に熱的に接続された受熱部と、この受熱部から上記ファン装置に向って延びる導風ガイドとを有し、この導風ガイドは、上記ファン装置の送風口と向かい合っていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】 請求項1又は6の記載において、上記筐体は、上記吸気通路に連なる吸気口と、上記排気通路に連なる排気口と、を備えていることを特徴とする電子機器。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−223876(P2000−223876A)
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−21297
【出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】