説明

電子機器

【課題】本発明は、静電気放電または静電気の二次放電による電子回路ボードの保護を有効に行うことができる操作部を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】デジタルカメラ10は、外観を構成する後カバー1内に、操作部材と、スイッチ検出用パターン42及びアースパターン43を有する電子回路ボード40と、操作部材の操作ボタン8a〜8fへの操作に応じてスイッチ検出用パターン42とアースパターン43を導通させるメタルドーム31を有するメタルドームシートとを備え、メタルドーム31の表面は、少なくとも一部が露出するように絶縁シート32によって覆われていて、メタルドーム31が電子回路ボード40上のアースパターン43と接触する構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に静電気放電から操作部における基板を保護する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の操作部には、静電気放電から保護するため、メタルドームを絶縁シートで覆う構造が採られている。例えば、メタルドームを絶縁シートで覆うことで、電子回路ボードを静電気放電より保護する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−513941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、外装カバーと操作ボタンの隙間から静電気が内部に入り込んだ場合、電子回路ボード上の電子部品に静電気が放電され、電子回路ボードの保護が十分ではない。
【0005】
また、操作ボタンが導電性部材で構成された場合、導電性部材が電気的に独立していることから、静電気の電荷が操作ボタンに蓄積され、静電気の二次放電を生じさせることとなる。その結果、電子回路ボード上の電子部品等への静電気の放電が発生するおそれがあり、電子回路ボードの保護に欠ける。
【0006】
図10(a)は、従来の操作部における操作ボタン周辺の部分断面図である。また、操作ボタンの接点周辺の拡大図を図10(b)に示す。
【0007】
図10(a)において、101は外装カバーとしてのカバー部材、108は操作ボタン、121は操作ボタン108の押し子である。131はメタルドーム、132は絶縁シートであり、以下では、メタルドーム131と絶縁シート132を合わせてメタルドームシートとする。140は電子回路ボード、141は電子回路ボード上に配置されたLED等の電子部品、142は電子回路ボード上のスイッチ検出用パターン、143は電子回路ボード上のアースパターンである。
【0008】
130は、メタルドームシートと電子回路ボード140を接着するために用いられる粘着材であり、例えば、両面テープなどである。なお、粘着材130には、メタルドーム131が押し子に押された際にメタルドーム131と電子回路ボード140が接触するように、1つ以上の孔が設けられている。
【0009】
メタルドーム131は、絶縁シート132に覆われている。静電気が放電されると、図10(a)の経路150aのように静電気がカバー部材101と操作ボタン108の隙間より内部に入る。メタルドーム131は絶縁シート132で覆われているので静電気から保護されるが、電子回路ボード140上の電子部品141は露出していることから、静電気が経路150aのように空気中をたどり放電される。この結果、静電気が電子部品141を介して電子回路ボード140に伝わって影響を及ぼすことになる。そのため、このような場合には、別の導電性部材により電気的なグランドをとり、静電気の放電または二次放電を防ぐことが必要となる。
【0010】
本発明の目的は、静電気放電または静電気の二次放電による電子回路ボードの保護を有効に行うことができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、電子機器の外観を構成するカバー部材内に、操作部材と、スイッチ検出用パターンとアースパターンを有する基板と、前記操作部材への操作に応じて前記スイッチ検出用パターンと前記アースパターンを導通させる金属片が設けられたシート部材とを備える電子機器であって、前記金属片の表面は、少なくとも一部が露出するように絶縁部材によって覆われていて、前記金属片が前記アースパターンと接触していることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、電子機器の外観を構成するカバー部材内に、導電性の操作部材と、スイッチ検出用パターンを有する基板と、本体アースと、前記操作部材への操作に応じて前記スイッチ検出用パターンと前記本体アースを導通させる金属片が配置されたシート部材とを備える電子機器であって、前記金属片の表面は、少なくとも一部が露出するように絶縁部材によって覆われていて、前記操作部材が前記本体アースと導通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電気放電または静電気の二次放電による電子回路ボードの保護を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるデジタルカメラの外観図である。
【図2】デジタルカメラ10の操作ボタン周辺の構成を示す分解斜視図である。
【図3】操作ボタンの構造を示す断面図である。
【図4】操作ボタンの構造を示す断面図である。
【図5】操作ボタンの構造を示す断面図である。
【図6】操作ボタンの構造を示す断面斜視図である。
【図7】操作ボタンの接点周辺を拡大した断面図である。
【図8】複数の操作ボタンの構造を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態におけるデジタルカメラの複数の操作ボタンの構造を示す断面図である。
【図10】従来の操作ボタンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器の一例であるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(a)は正面側の斜視図、(b)は背面側の斜視図である。
【0017】
デジタルカメラ10は、カバー部材(後カバー)1及びカバー部材(前カバー)2によって、外観の主要部が構成されている。また、デジタルカメラ10は、レンズユニット3、撮影画像などを表示するディスプレイ(表示部)4、及び電池収納部を覆う電池カバー5を備える。さらに、デジタルカメラ10は、撮像動作を指示するためのレリーズボタン6、電源のオン・オフを指示するための電源ボタン7、各種操作を行うための操作ボタン8a〜8f(操作部)などを備える。操作ボタン8aにはズームボタンが、操作ボタン8bには再生ボタンが、操作ボタン8cには4方向ボタンが、操作ボタン8dには決定ボタンが、操作ボタン8eにはモードボタンが、操作ボタン8fにはメニューボタンがそれぞれ割り当てられている。
【0018】
次に、図1のデジタルカメラ10の操作ボタン周辺の構成について図2を用いて説明する。
【0019】
図2は、図1のデジタルカメラ10の操作部周辺の構成を説明するための分解斜視図である。
【0020】
後カバー1の内部(カバー部材内)には、複数の操作ボタン8a〜8fが形成された操作部材8、メタルドーム31と後述する絶縁シート32からなるメタルドームシート(シート部材)、及び電子回路ボード(基板)40が、その順序で組み付けられている。メタルドームシートは、メタルドーム31を備えることで、操作ボタン8a等への押し込み操作により弾性変形して電子回路ボード上の接点と電気的に導通し、該押し込み操作が解除されると変形状態から復元して接点との間の導通を解除する。
【0021】
次に、図2の操作ボタンの構造について図3〜図8を用いて説明する。
【0022】
図3〜図5は、操作ボタン周辺の部分断面図である。図6は、操作ボタンの構造を示す断面斜視図である。図7は、操作ボタンの接点周辺を拡大した部分断面の斜視図である。図8は、複数の操作ボタンの構造を示す断面図である。なお、図示例では操作ボタン8a,8e,8fが記載されているが、これらに限定されるものではない。
【0023】
操作部材8には、所定の位置に操作ボタン(キートップ)8a〜8fが形成されており、各操作ボタンは後カバー1に形成されている貫通穴を貫通してデジタルカメラ10の筐体外に露出する。各操作ボタン8a〜8fの裏側には、メタルドーム31を撓ませるための突起状の押し子21が形成されている。
【0024】
メタルドームシートは、可撓性のあるフィルム状の絶縁シート32の所定の位置に皿状のメタルドーム31(金属片)が設けられた部材である。メタルドーム31は、凹面が電子回路ボード40と対向する向きに配置される。絶縁シート(絶縁部材)32は、メタルドーム31の表面の少なくとも一部が露出するようにメタルドーム31を覆っている。なお、本実施の形態では、押し込み操作時に押し子21とメタルドーム31が接触する位置である、メタルドーム31の中央が露出するように絶縁シート32に開口が設けられている。
【0025】
しかしながら、絶縁シート32の開口が設けられる位置は、押し込み操作時に押し子21とメタルドーム31が接触する位置に限定されるものではなく、押し子21とメタルドーム31が接触しないメタルドーム31の端部周辺に設けられてもよい。
【0026】
メタルドームシートと電子回路ボード40は、例えば、両面テープなどの粘着材30により接着されている。なお、粘着材30には、押し込み操作時にメタルドーム31と電子回路ボード40が接触するように、1つ以上の孔が設けられている。
【0027】
操作ボタン8a〜8fのいずれかが押下されると、押下された操作ボタンの裏に形成された押し子21がメタルドーム31を変形させる。メタルドーム31は、電子回路ボード40上のアースパターン43と接触している。そのため、メタルドーム31が変形して、電子回路ボード40上に設けられたスイッチ検出用パターン42に接触すると、該スイッチ検出用パターンとアースパターン43とが導通する。これにより、操作ボタンのON/OFFを検出すること可能となる。
【0028】
図3は、静電気が放電され、後カバー1と操作ボタン8aの隙間より静電気が内部に入った場合を示している。メタルドーム31は、その一部が露出しているため、内部に入った静電気は、経路50bのように空気中をたどり、直接メタルドーム31に到達する。そして、メタルドーム31は、電子回路ボード40上のアースパターン43と接触しているので、到達した静電気を逃がすことができる。
【0029】
なお、操作ボタン8aは、プラスチックメッキや金属などの導電性部材が含まれていてもよく、そのような場合を図4に示す。
【0030】
図4は、静電気が放電され、静電気が直接操作ボタン8aに到達した場合を示している。
【0031】
図4において、操作ボタン8aは電気的に独立しているので、静電気の電荷が操作ボタン8aに蓄積され、二次放電が発生する。メタルドーム31は、絶縁シート32の開口から一部が露出しているため、静電気は経路50cのように、操作ボタン8aに設けられた突起状の押し子21から二次放電し、空気中をたどって直接メタルドーム31に到達する。そして、メタルドーム31は、電子回路ボード40上のアースパターン43と接触しているため、到達した静電気を逃がすことができる。
【0032】
また、操作ボタン8aには、例えば、導電性部材が含まれており、操作ボタン8aに設けられた押し子21が、露出しているメタルドーム31と常時接触する構造であってもよく、そのような場合を図5に示す。
【0033】
図5は、静電気が放電され、静電気が直接操作ボタン8aに到達した場合を示している。図5は、図4と異なって押し子21がメタルドーム31と接している。そのため、直接操作ボタン8aに到達した静電気は、経路50dのように、操作ボタン8aの押し子21を介してメタルドーム31へ到達し、電子回路ボード40上のアースパターン43から静電気を逃がすことができる。
【0034】
また、複数の操作ボタンに導電性部材が含まれており、複数の操作ボタンが互いに操作部材8でつながって導通している構造であってもよい。また、互いにつながっている複数の操作ボタンのうち少なくとも1つの操作ボタンの押し子21が、露出しているメタルドーム31に常時接触する構造であってもよく、そのような場合を図8に示している。
【0035】
図8では、操作ボタン8e、8fが互いにボタンシートでつながっており、操作ボタン8eに設けられた押し子21が露出しているメタルドーム31と常時接触している。そのため、静電気が放電され、静電気が直接操作ボタン8eに到達した場合、経路50eのように、操作ボタン8eからメタルドーム31を介して、電子回路ボード40上のアースパターン43から静電気を逃がすことができる。
【0036】
一方、静電気が放電され、静電気が直接操作ボタン8fに到達した場合、操作ボタン8fから操作部材8、操作ボタン8e、及びメタルドーム31を介して、電子回路ボード40上のアースパターン43から静電気を逃がすことができる。このように、互いにつながっている複数の操作ボタンのうちどの操作ボタンの付近で静電気が放電されても電子回路ボード40を保護することができる。
【0037】
図3〜図8において、後カバー1は、当該後カバー1から絶縁シート32に向かって、メタルドーム31の周囲にリブ11を有する。
【0038】
図5のように、操作ボタン8aの押し子21と、露出したメタルドーム31が接触している場合、後カバー1が押し込まれると、一緒に操作ボタン8aも押し込まれ、メタルドーム31が作動して、誤動作が生じるおそれがある。
【0039】
そこで、後カバー1からメタルドームシートの方向へ突出したリブを設け、メタルドーム31の周囲にリブ11を配置することで、後カバー1を押し込んでも操作ボタン8aが押し込まれないようにすることができ、誤作動を防ぐことができる。
【0040】
また、図6において、後カバー1と操作ボタン8aの間には、操作ボタン8aの押し込み方向に隙間12が設けられている。後カバー1と操作ボタン8aの間に、操作ボタン8aの押し込み方向に隙間12を設けることによって、後カバー1を押し込んでも、操作ボタン8aが押し込まれないようにすることができ、誤作動を防ぐことができる。なお、図6では、リブ11と隙間12の両方を設けた構成が示されているが、リブ11がなく隙間12だけが設けられた構成であっても誤作動を防止する効果を得ることができる。ただし、リブ11と隙間12の両方を設けた構成とすることで、隙間12だけを設けた構成に比べより誤作動を防止することができる。
【0041】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る電子機器は、その構成(図1及び図2)が上記第1の実施の形態に係る電子機器と同じであり、第1の実施の形態と同様の部分については、同一の符号を用いてその説明を省略する。以下に、上記第1の実施の形態と異なる点のみを説明する。
【0042】
図9は、第2の実施の形態におけるデジタルカメラの複数の操作ボタン周辺の部分断面図である。
【0043】
本実施の形態における操作ボタン周辺には、導電性ゴム44が電子回路ボード40に押し付けられるように配置され、本体アース(不図示)と導通する構造を有する。この場合、放電された静電気は、経路50fのように、操作ボタン8e、操作部材8を介して、導電性ゴム44から本体アースに逃がされる。これによって、静電気から電子回路ボード40を保護することができる。
【0044】
また、操作ボタン8e,8fは、導電性がある操作部材8及び導電性ゴム44を介して本体アースにつながっているため、例えば、操作ボタン8aの押し子21がメタルドーム31に接触していると、メタルドーム31もアースとつながることになる。これによって、電子回路ボード40上にアースパターン43を取り除くことができ、配線の自由度を高めることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0046】
上述した2つの実施の形態では、操作ボタン8a〜8fの構造について詳しく説明を行ったがその他のボタンに適用してもよい。例えば、電子回路ボード40上に設けられたスイッチ検出用パターン42に押下されて変形したメタルドーム31が接触することでスイッチのON/OFFを検出するボタンであれば、レリーズボタン6や電源ボタン7などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,2 カバー部材
8 操作部材
8a〜8f 操作ボタン
10 デジタルカメラ
11 リブ
31 メタルドーム
32 絶縁シート
40 電子回路ボード
41 電子部品
42 スイッチ検出用パターン
43 アースパターン
44 導電性ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外観を構成するカバー部材内に、操作部材と、スイッチ検出用パターンとアースパターンを有する基板と、前記操作部材への操作に応じて前記スイッチ検出用パターンと前記アースパターンを導通させる金属片が設けられたシート部材とを備える電子機器であって、
前記金属片の表面は、少なくとも一部が露出するように絶縁部材によって覆われていて、前記金属片が前記アースパターンと接触していることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記操作部材は、導電性の操作部を有し、当該操作部に設けられた押し子が、前記金属片の露出している表面と常時接触することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記操作部材は、導電性の複数の操作部を有し、前記複数の操作部に設けられた押し子の少なくとも1つが、前記金属片の露出している表面と常時接触していて、前記複数の操作部のうち、設けられた押し子が前記金属片の露出している表面と常時接触していない操作部は、設けられた押し子が前記金属片の露出している表面と常時接触する操作部と導通することを特徴とする請求項1または2記載の電子機器。
【請求項4】
前記カバー部材は、当該カバー部材から前記シート部材の方向へ突出したリブを有し、前記リブは前記金属片の周囲に配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記カバー部材と前記操作部材の間には、前記操作部材の押し込み方向に隙間を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
電子機器の外観を構成するカバー部材内に、導電性の操作部材と、スイッチ検出用パターンを有する基板と、本体アースと、前記操作部材への操作に応じて前記スイッチ検出用パターンと前記本体アースを導通させる金属片が配置されたシート部材とを備える電子機器であって、
前記金属片の表面は、少なくとも一部が露出するように絶縁部材によって覆われていて、前記操作部材が前記本体アースと導通することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−192199(P2010−192199A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33903(P2009−33903)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】