説明

電子機器

【課題】本件は、第1ユニットと、その第1ユニットに対し開閉自在な第2ユニットとを有する電子機器に関し、その電子機器の盗難を有効に防止する。
【解決手段】電子機器が第1ユニットと、その第1ユニットに対し開閉自在な第2ユニットとを有し、第2ユニットが第1ユニットに対し開いた状態にあるときに第2ユニットを第1ユニットに対し閉じることができないように、第2ユニットを第1ユニットに対し開いた状態に固定するロック機構を内蔵している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、第1ユニットとその第1ユニットに対し開閉自在な第2ユニットとを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
第1ユニットとその第1ユニットに対し開閉自在な第2ユニットとを有する電子機器が従来より採用されている。例えばノート型パーソナルコンピュータ(以下、「ノートPC」と略記する)は、内部にCPUやハードディスクドライブ(以下、「HDD」と略記する)を備えるとともに上面にキーボード等を備えた本体ユニットと、その本体ユニットに対し開閉自在であって開いた状態で表示画面があらわれる表示ユニットとを備えている。
【0003】
このノートPCには多量のデータが格納され、その中には秘密性の高いデータが含まれている場合がある。このようなノートPCが万が一にも盗難にあうと、ノートPC自体の損失だけでなく、秘密データが盗用され甚大な被害を被るおそれがある。
【0004】
このような盗難防止策として、ノートPCの表示ユニットを本体ユニットの上に閉じた状態で鍵をかけ、表示ユニットを開くことを不能とすることが提案されている。また、ノートPCを載置台上に機械的に固定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−46425号公報
【特許文献2】特開2001−344036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノートPCを閉じた状態で鍵をかける提案の場合、窃盗者にとって安全な場所まで運んでからゆっくりと鍵を壊せばよく、盗難防止には役立たない。
【0007】
また、ノートPCを載置台に固定する提案の場合、ノートPCの可搬性を阻害することになり好ましくない。
【0008】
このような事情は、ノートPCに限らず、容易に持ち去ることが可能な電子機器に共通の事情である。
【0009】
このような事情に鑑み、本件の電子機器の課題は、盗難を有効に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件開示の電子機器は、第1ユニットと、その第1ユニットに対し開閉自在な第2ユニットとを有し、第2ユニットを第1ユニットに対し開いた状態に固定するロック機構を内蔵している。
【発明の効果】
【0011】
本件開示の電子機器は、上記のロック機構を内蔵していることから、窃盗しようとする者は、電子機器を開状態のまま運ぶ必要がある。開状態の電子機器を隠したまま運ぶのは難しく、窃盗意欲が削がれ、結果的に盗難が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ノートPCの概要を示した外観斜視図である。
【図2】図1に示すノートPCの、蝶番部分を示す部分断面図である。
【図3】図1,図2に示すノートPCの内部構成を示したブロック図である。
【図4】図1〜図3に示すノートPCへの電源投入時に実行される処理をあらわしたフローチャートである。
【図5】OSが通常の動作状態にあってスクリーンセーバが動作した状態からの復帰時に実行される処理を示す図である。
【図6】表示ユニットのロック・解除処理を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態のノートPCの、蝶番部分を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件の実施形態を説明する。ここでは本件の電子機器の一例としてノートPCをとり上げて説明する。
【0014】
図1は、ノートPCの概要を示した外観斜視図である。
【0015】
この図1に示すノートPC10は、本体ユニット20と表示ユニット30とを有する。本体ユニット20は、内部にCPUやHDD等を備えるとともに、上面にキーボード21やポインティングデバイスの一種であるトラックパッド22等を備えている。また、表示ユニット30は、蝶番40を介して本体ユニット10に連結されて本体ユニット20に対し開閉自在に構成され、開状態にあるときの前面に表示画面31を備えている。
【0016】
図2は、図1に示すノートPCの、蝶番部分を示す部分断面図である。
【0017】
本体ユニット20には、モータ51とロック部材52が備えられている。モータ51の回転軸511には、ピニオン512が設けられており、ロック部材52には、そのピニオン512と組み合うラック521が形成されている。また、この図2は蝶番40を構成する表示ユニット側の部材41が示されておりこの部材41には、表示ユニット30が開状態にあるときにロック部材52が入り込む開口411が設けられている。
【0018】
表示ユニット30が本体ユニット20から開いた開状態であるときにモータ51が回転するとロック部材52が矢印A方向に移動して部材41の開口411に入り込んでロック状態となる。すると、表示ユニット30は、その開状態のまま固定され、表示ユニット30を本体ユニット20の上に閉じることができない。このため、このノートPCを盗もうとする者は、このノートPCを開状態のまま人に知られないように運ぶ必要に迫られ、盗もうとする意欲が削がれ、結果的に盗難が防止される。モータ51が逆回転すると、ロック部材52が矢印B方向に移動して部材41の開口411の外に出た解除状態となる。これにより、表示ユニット30は本体ユニット20の上に閉じることができる。
【0019】
図3は、図1,図2に示すノートPCの内部構成を示したブロック図である。
【0020】
ここには、CPU61、HDD62、主メモリ63、不揮発メモリ64、キーボード21、表示部66、モータ駆動制御部67、およびモータ51が示されており、これらのうちモータ51を除く各部は、バス68で互いに接続されている。
【0021】
CPU61は、プログラムを実行する中央演算装置である。HDD62はOSやアプリケーションソフト等が記憶されている記憶装置である。主メモリ63は、HDD62に記憶されたプログラムのうちのCPU61で実行されるプログラムが展開されるメモリである。不揮発メモリ64にはこのノートPCに電源が投入された初期に実行されるBIOSが記憶されたメモリである。キーボード21は、図1にも示したように本体ユニット20の上面に配置されており、オペレータの操作に応じた情報を入力するためのものである。表示部66は、CPU61でのプログラムの実行に基づいて図1に示す表示画面21上に画像を表示する役割を担っている。さらにモータ駆動制御部67は、CPU61でのプログラムの実行に基づいて、モータ51の回転を制御する役割りを担っている。モータ51は、図2に示すように、ロック部材52を開口411内に入り込んだロック状態と開口411から外れた解除状態との間で移動させる駆動源である。
【0022】
図4は、図1〜図3に示すノートPCへの電源投入時に実行される処理をあらわしたフローチャートである。ただしここでは、表示ユニットのロックおよびロック解除に関係する処理のみ示してある。
【0023】
開状態にあるノートPCに電源が投入されると、先ずBIOSが起動し(ステップS11)、BIOSパスワードの入力が設定されているときはBIOSパスワードの入力が要求され、キーボード21からのBIOSパスワードの入力を受け付ける(ステップS12)。BIOSパスワードが正しく入力されると、次にBIOSを設定するか否かが判定される(ステップS13)。この判定は、ある短時間内に、オペレータによりBIOSを設定することを指示するボタンの押下がなされたか否か等により行なわれる。BIOSの設定を行なう場合は図示しない設定メニュー画面が表示され、その中の1つである表示ユニット30のロック/解除の項目が指示されたか否かが判定される(ステップS14)。ロック/解除の指示があると表示ユニットのロック/解除処理が実行される(ステップS15)。ロック/解除処理の詳細については後述するが、ロック/解除処理は、表示ユニットを開状態のままロックするロック部材52(図2参照)をロック状態と解除状態との間で移動させる処理である。その後、OSが起動される(ステップS16)。あるいは、ステップS13でBIOS設定がない旨判定されたとき、又はステップS14でロック/解除指示がないと判定されたときは、ステップS15のロック/解除処理をスキップしてOSが起動される(ステップS16)。OSが起動されると、ユーザパスワードの入力が設定されているときはOSユーザパスワードの入力が要求され、キーボードからOSユーザパスワードの入力が受け付けられる(ステップS17)。その後、今度はOS上でオペレータからのロック/解除指示が受け付けられ(ステップS18)、ロック/解除指示があると表示ユニットのロック/解除処理が実行される(ステップS19)。ロック/解除処理が実行された後、あるいはロック/解除指示がなかったときはステップS19のロック/解除処理をスキップしてOSの通常等の動作状態に移行する(ステップS20)。
【0024】
ステップ17のブロックとステップS18の分岐との間の矢印Aについては後述する。
【0025】
このように、電源投入時には、BIOS上でもOS上でも表示ユニットのロック/解除処理の実行を指示することができる。後述するように、ステップS15,S19における表示ユニットのロック・解除処理の中でもパスワードの入力が要求される構成となっている。ここでは、さらにBIOSパスワードやOSユーザパスワードの入力を要求するように設定してロック状態にしておけば、悪意の窃盗者がロックを外すことを一層確実に防止することができる。
【0026】
図5は、OSが通常の動作状態にあってスクリーンセーバが動作した状態からの復帰時に実行される処理を示す図である。
【0027】
スクリーンセーバが動作した状態においてキーボードやトラックパッド等の操作を受けると、スクリーンロックがかかっているときはスクリーンロック解除のためのパスワードの入力が要求され(ステップS22)、その後、図4のステップS18に進む。スクリーンロックがかかっていたときは、キーボードやトラックパッド等の操作を受けると、パスワードの入力を待つことなく図4のステップS18に進む。
【0028】
すなわち、この実施形態では、スクリーンセーバからの復帰時にも表示ユニットのロック/解除指示を受け付ける構成となっている。この場合もスクリーンセーバからの復帰時にパスワードの入力を要求するように設定しておくことにより、悪意の者によりロックが外されることがさらに確実に防止される。
【0029】
図6は、表示ユニットのロック/解除処理を示すフローチャートである。
【0030】
この図6に示す表示ユニットのロック/解除処理は、図4のステップS15とステップS19で実行される。
【0031】
ここでは先ずパスワードの入力が要求される(ステップS31)。ただし、パスワードが未設定のとき、すなわち、この図6の処理が初回に実行されたときは、ステップS32に進み、パスワードの設定が要求される(ステップS32)。パスワードがキーボードより入力されると、その入力されたパスワードが設定される(ステップS33)。パスワードが設定されるとステップS35に進む。パスワードが既に設定されているときは、設定されているパスワードと同じパスワードが入力されると(ステップS34)、ステップS35に進む。
【0032】
ステップS35では、表示ユニットをロックするためのロック部材52(図2参照)がロック状態にあるか解除状態にあるかが判定される。解除状態にあるときは、モータ駆動制御部67(図3参照)に、モータ51を、ロック部材52を矢印A方向(図2参照)に移動させる方向に回転させる(ステップS36)。一方、ロック部材52が解除状態にあるときは、モータ駆動制御部67に、モータ51を、ロック部材52を矢印B方向に移動させる方向に回転させる(ステップS37)。ロック又は解除が完了するとモータを停止させる(ステップS38)。
【0033】
このように、本実施形態では、ロック/解除の指示を一回行なうごとにロック状態と解除状態との間で交互に状態が変更される。
【0034】
図7は、第2実施形態のノートPCの、蝶番部分を示す部分断面図である。図7(A)は、上述の第1実施形態における図2に対応する部分断面図、図7(B)は、鍵穴を正面に見る側から示した図である。前述した第1実施形態における各部に対応する各部には第1実施形態において付した符号と同一の符号を付して示し相違点について説明する。
【0035】
図7に示す第2実施形態のノートPCには、図2に示すモータ51は備えられておらず、ロック部材53は、鍵部材54に回転可能に固定されている。鍵部材54には鍵穴541が設けられており、その鍵穴541に鍵55が差し込まれてその鍵55が回転されると、その回転に合わせてロック部材53が矢印C−D方向移動する。ロック部材53が矢印C方向に回動すると、そのロック部材53が蝶番40を構成する表示ユニット30側の部材41の開口411に入り込んで、表示ユニットを開状態のままロックする。一方ロック部材53が矢印D方向に回動するとロック部材53が部材41の開口411から外れて表示ユニットを本体ユニットの上に閉じることが可能な状態となる。
【0036】
このように、このノートPCで実行されるソフトウェアとは独立して、表示ユニットを機械的にロック/ロック解除するロック機能を設けてもよい。
【0037】
尚、ここでは、ノートPCを例に挙げて説明したが、本発明はコンバーチブルタイプのタブレットPCについても同様に適用することができ、その他開閉する2つのユニットを有する電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 ノートPC
20 本体ユニット
21 キーボード
30 表示ユニット
31 表示画面
40 蝶番
41 部材
51 モータ
52 ロック部材
61 CPU
62 HDD
63 主メモリ
64 不揮発メモリ
66 表示部
67 モータ駆動制御部
68 バス
411 開口
511 回転軸
512 ピニオン
521 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユニットと、該第1ユニットに対し開閉自在な第2ユニットとを有し、該第2ユニットを該第1ユニットに対し開いた状態に固定するロック機構を内蔵していることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ロック機構が、モータと、該モータからの回転駆動力を受けて、前記第2ユニットを前記第1ユニットに対し開いた状態に固定する第1姿勢と該固定を解除する第2姿勢との間で移動するロック部材とを有することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
当該電子機器がプログラム実行機能を有する電子機器であって、前記モータをプログラムの実行に基づいて回転および停止させるモータ駆動制御部を有することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記ロック機構が、オペレータの手動操作による機械的な力を受けて、前記第2ユニットを前記第1ユニットに対し開いた状態に固定する第1姿勢と該固定を解除する第2姿勢との間で移動するロック部材を有することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
当該電子機器が、可搬型コンピュータであることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−282293(P2010−282293A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133367(P2009−133367)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】