説明

電子機器

【課題】走行体に搭載されていたとしても、適切にデータを記憶させることができる。
【解決手段】走行体に搭載され、データが記憶される記憶手段を有する電子機器において、前記電子機器および前記走行体の他の電子機器を駆動するための駆動電圧と、前記記憶手段に記憶させるデータと、が重畳された重畳電圧を、前記電子機器に供給する電圧供給装置に接続されている電子機器において、前記駆動電圧により駆動し、前記重畳電圧が安定しているか否かを判定する判定手段と、前記重畳電圧から前記データを取得する取得手段と、前記判定手段により、前記重畳電圧が安定していると判定されると、前記取得された前記データを前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、を有することを特徴とする電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車などの走行体に搭載されている電子機器が提案されている。走行体とは、例えば、自動車であり、該電子機器とは、例えば、車載カメラである。この車載カメラは、該車載カメラを起動させるためのプログラムなどが記憶されている記憶手段を有する。そして、該車載カメラに電圧供給装置を接続させ、該電圧供給装置から、記憶手段に新たに記憶させるデータ(信号)と駆動電圧とを重畳させた重畳電圧を該電子機器に供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。駆動電圧とは、電子機器を駆動するための電圧である。
【0003】
そして、電気機器側で、重畳させた重畳電圧からデータを検出する。検出されたデータは記憶手段に記憶される。この技術により、同一のケーブルで、駆動電圧およびデータを電子機器に供給することが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、重畳電圧にトリガー信号が検知されると、データを記憶手段に記憶させる。しかし、自動車のエンジンをかけた直後は、重畳電圧が不安定になりやすいため、トリガー信号の誤検知が生じ易く、適切にデータを記憶させることが出来ないという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を鑑みて、走行体に搭載されていたとしても、適切にデータを記憶させることができる電子機器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、走行体に搭載され、データが記憶される記憶手段を有する電子機器において、前記電子機器および前記走行体の他の電子機器を駆動するための駆動電圧と、前記記憶手段に記憶させるデータと、が重畳された重畳電圧を、前記電子機器に供給する電圧供給装置に接続されている電子機器において、前記駆動電圧により駆動し、前記重畳電圧が安定しているか否かを判定する判定手段と、前記重畳電圧から前記データを取得する取得手段と、前記判定手段により、前記重畳電圧が安定していると判定されると、前記取得された前記データを前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、を有することを特徴とする電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子機器であれば、走行体に搭載されていたとしても、適切にデータを記憶させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例の走行体の機能構成例を示した図。
【図2】本実施例の電子機器の機能構成例を示した図。
【図3】本実施例の電子機器の処理の流れを示した図。
【図4】本実施例の重畳電圧の一例を示した図。
【図5】別の実施形態の電子機器の処理の流れを示した図。
【図6】別の実施形態の電子機器の機能構成例を示した図(その1)。
【図7】別の実施形態の電子機器の機能構成例を示した図(その2)。
【図8】本実施例の対応情報の一例を示した図。
【図9】本実施例の電圧供給装置の一例を示した図。
【図10】本実施例の取得手段の一例を示した図。
【図11】本実施例のデータ信号などの一例を示した図。
【図12】別の実施形態の取得手段の一例を示した図。
【図13】別の実施形態の重畳電圧の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、各実施形態について説明する。走行体とは、エンジンがかけられると(ONになると)、起動し走行するものであり、例えば、車やバイクなどをいう。また、電子機器とは、走行体に搭載されるものであり、例えば車載カメラやカーナビゲーション装置であり、走行体の電源で駆動するものである。
[実施形態1]
本実施例の電子機器200−1が搭載される走行体1000内部の機能構成例を示す。本実施例の走行体1000には、電子機器200−1の他に、エンジン装置1100、電圧供給装置100が搭載されている。まず、ユーザがエンジン装置1100を起動させると(エンジンをかけると)、電圧供給装置100も起動する。該起動された電圧供給装置100は、電圧を電子機器200−1に供給する。
【0010】
図2に、本実施例の電子機器200−1の機能構成例を示す。電圧供給装置100は、電子機器200−1と入力手段201を介して接続される。入力手段201とは例えば、入力端子である。上述のように、ユーザがエンジン装置1100を起動させると、電圧供給装置100が、電圧を電子機器200−1に供給する。更に、ユーザが、電子機器200−1の電源216をONにすると、電圧供給装置100からの電圧が、入力手段201を介して、第1判定手段204、取得手段206、駆動電圧生成手段202に入力される。
【0011】
また、電圧供給装置100から供給される電圧は、駆動電圧とデータとが重畳された電圧である。以下では、電圧供給装置100から供給される電圧を「重畳電圧」という。駆動電圧とは、記憶手段212やその他のデバイス214を駆動させるための電圧である。その他のデバイス214とは、例えば、電子機器200−1が車載カメラである場合には、CPUや、駆動中に点灯するLEDなど、駆動電圧が供給されることで駆動する機器である。
【0012】
また、データとは、記憶手段212に記憶させるためのものであり、データ信号ともいう。以下では、データ信号のことを単に「データ」という。電子機器200−1が、車載カメラの場合には、データとは、該車載カメラを起動させるためのプログラムをいう。また、電子機器200−1が、カーナビゲーション装置である場合には、該カーナビゲーション装置を起動させるためのプログラムまたは、該カーナビゲーション装置で用いられる画像データである。
【0013】
次に、本実施形態の電子機器200−1の処理の流れについて説明する。図3に本実施例の電子機器の処理の流れを示す。図3を用いて、本実施形態の電子機器200−1の処理を説明する。
【0014】
まず、ユーザが、電源216をONにすると(ステップS2)上述のように、入力手段201経由で、生成手段202、第1判定手段204、取得手段206それぞれに、重畳電圧が供給される。図4に電圧供給装置100から供給される重畳電圧の一例を示す。縦軸が電圧値を示し、横軸が時間軸を示す。
【0015】
図4の縦軸に示す第1閾値V、第2閾値Vは、電子機器200−1が駆動するための電圧の下限値、上限値を示す。また、第3閾値V、第4閾値Vは、生成手段202を駆動させる為の電圧の下限値、上限値を示す。図4の例では、電子機器200−1を駆動するための駆動電圧幅である第1閾値V〜第2閾値Vは、生成手段202を駆動するための駆動電圧幅である第3閾値V〜第4閾値Vよりも広く設定されている。また、第5閾値V、第6閾値Vについては、後述する。
【0016】
また、一般的に、エンジン装置1100(図1参照)がONされた時から、一定時間内に、不安定な状態になる。これは、電圧供給装置100が供給する電圧は、走行体1000のバッテリーが用いられるためである。この不安定な状態が継続する時間を「不安定時間α」とする。
【0017】
そして、第1判定手段204は、重畳電圧が安定しているか否かを判定する(ステップS4)。ここで、重畳電圧が安定しているとは、これはSの箇所のように、重畳電圧が略平坦の状態になっていることをいう。第1判定手段204による重畳電圧が安定しているか否かの判定手法について説明する。
【0018】
まず、安定している電圧の上限値、下限値である第5閾値V、第6閾値Vを予め決定する。そして、重畳電圧が、予め定められた(安定時間β)所定時間以上、安定電圧幅である第5閾値V〜第6閾値V内である場合に、第1判定手段204は、重畳電圧が安定していると判定する。なお、図4では、Sの箇所は、直線で記載されているが、実際は微小なサインカーブを描いている。重畳電圧が安定しているか否かの判定はこの手法に限られない。
【0019】
第1判定手段204が、重畳電圧が安定していないと判定すると(ステップS4のNo)、重畳電圧が安定するまで待機される。第1判定手段204が、重畳電圧が安定したと判定すると(ステップS4のYes)、ステップS6に移行する。
【0020】
次に、第1判定手段204は、トリガー信号が検知されたか否かを判定する。第1判定手段204には、トリガー信号を取得するトリガー信号取得手段(図示せず)が設けられている。トリガー信号Tについて、図4を用いて説明する。トリガー信号Tとは、予め定められた所定時間(トリガー信号時間γ)の間、重畳電圧の値がある一定の値(図4の例では、後述するV)である箇所の部分をいう。このトリガー信号Tは、後述する取得手段206により取得されたデータを記憶手段212に記憶させるトリガーとなる信号である。
【0021】
トリガー信号Tが検出されると、ステップS8に移行する。ステップS8では、記憶制御手段210が、記憶手段212にデータを記憶させることが出来るデータ記憶モードに移行する。
【0022】
一方、電源がONにされると(ステップS2)、入力手段201から入力された重畳電圧は、取得手段206に入力される。取得手段206は、重畳電圧に重畳されているデータを取得する(ステップS20)。取得手段206の詳細な構成例は後述する。そして、第2判定手段207は、取得したデータが正常であるか否かを判定する(ステップS22)。取得したデータが正常なものではない場合には(ステップS22のNo)、処理を終了する。
【0023】
第2判定手段207による、取得したデータが正常なものか否かの判定の一例として、例えば、入力されたデータのクロックのビット数をカウントし、予め定められているビット数と一致するか否かを判定すればよい。
【0024】
また、第2判定手段207により、取得したデータが正常であると判定すると(ステップS22のYes)、変換手段208は、取得したデータのプロトコルを、記憶手段212に記憶させることが可能なプロトコルに変換する(ステップS24)。取得したデータのプロトコルが、記憶手段212に記憶させることが可能なプロトコルと同一である場合には、変換手段208の変換処理は必要ない。
【0025】
そして、記憶制御手段210は、データ記憶モードに移行され、かつ、取得手段206に取得されたデータを受信すると、記憶手段212に記憶させる。つまり、記憶制御手段210は、重畳電圧が安定していると判定されると(ステップS4のYes)、取得手段206により取得されたデータを記憶手段212に記憶させる。換言すると、重畳電圧が安定していると判定されるまでは、トリガー信号は無効であるとして取り扱われ(または、トリガー信号を受け入れず)、重畳電圧が安定されていると判定された時以降に、トリガー信号は有効であるとして取り扱われる(またはトリガー信号を受け入れる)。
【0026】
また、生成手段202は、重畳電圧から駆動電圧Vを生成し、その他のデバイス214や記憶手段212などに供給する。
【0027】
また、図3の処理フローにおいて、ステップS4〜S8の処理、ステップS20〜S24の処理は並列的に行ってもよく、どちらか一方を先に行なってもよい。
【0028】
重畳電圧が安定する前に、取得手段206がトリガー信号を検知しようとすると、取得手段206は、トリガー信号ではない信号(ノイズ信号)をトリガー信号として認識して検出する場合、つまり、トリガー信号の誤検出が行なわれる場合がある。トリガー信号の誤検出が行なわれると、取得手段206がデータを取得していないにもかかわらず、記憶制御手段210がデータを記憶手段212に記憶させようとするエラーが生じる。また、トリガー信号の誤検出が行なわれると、ユーザが本来、記憶手段212に記憶させたいデータではない誤ったデータを記憶手段212に記憶させる場合もある。
【0029】
この実施形態1の電子機器であれば、第1判定手段204が、重畳電圧が安定しているか否かを判定し、安定したと判定された後に、トリガー信号を検出して、取得されたデータを記憶手段212に記憶させる。従って、走行体に搭載されていても、正確なトリガー信号を検出できるので(トリガー信号Tの誤検知が生じることは無いので)、適切にデータを記憶手段212に記憶させることが出来る。
[実施形態2]
次に、実施形態2の電子機器について説明する。実施形態2の電子機器200−2の機能構成例の説明については、図2を用いる。実施形態2の電子機器200−2は、第1判定手段204が、括弧書きされている計測手段220に代替されている点で異なる。実施形態1では、第1判定手段204が、重畳電圧が安定しているか否かを判定した。実施形態2では、電源216がONされた時から第1所定時間T経過した後に、取得手段206に取得されたデータを記憶手段212に記憶させるものである。
【0030】
図5に、実施形態2の処理の流れを説明する。図3と図5とを比較すると、図3のステップS4がステップS30に代替されている点で異なる。計測手段220は、時間を計測するタイマである。そして、計測手段220は、電源216がONされた時から(ステップS2)、第1所定時間Tが経過するまで待機する(ステップS30のNo)。
【0031】
そして、計測手段220は、電源216がONされた時から第1所定時間T経過した後に、ステップS6のトリガー信号の検知処理に移行する。換言すれば、第1所定時間T経過するまでは、重畳電圧に重畳されているトリガー信号Tを無効とし(有効とせず)、第1所定時間T経過後に、トリガー信号Tを有効とする。
【0032】
次に、第1所定時間Tの定め方について説明する。第1所定時間Tの定め方で最も好ましいのは、電源216がONにされた時(図4での時刻t=0)から、重畳電圧が安定する時までの時間(時刻t=α)に基づいて定められる。最も単純な定め方として、第1所定時間T=不安定時間αとすればよい。その他にも、第1所定時間T=不安定時間α+d、としてもよい。ただしdは定数であるとする。
【0033】
この実施形態2の電子機器であれば、実施形態1のように、第1判定手段204による、判定処理を行わずとも、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
[実施形態3]
次に、実施形態3について説明する。実施形態3記憶制御手段210は、電源がONにされた時から、予め定められた第2所定時間Tが経過した後には、取得手段206に取得されたデータを記憶手段212に記憶させない。
【0034】
何故なら、第2所定時間T経過後に、記憶制御手段210により記憶手段212にデータを記憶させると、誤動作する可能性があるからである。この誤動作は重畳電圧に混入しているノイズにより生じる。この誤動作は、例えば、全てのデータを記憶手段212に記憶させたにも関らず、記憶制御手段210がデータを記憶手段212に記憶させようとする動作や、ユーザが本来、記憶手段212に記憶させたいデータではない誤ったデータを記憶手段212に記憶させる動作をいう。また、第2所定時間T>第1所定時間Tとする。
【0035】
この実施形態3のように、第2所定時間Tが経過した後には、取得されてデータを記憶手段212に記憶させないようにすることで、更に正確に、データの記憶を行なうことができる。
[実施形態4]
次に、実施形態4の電子機器200−3について説明する。実施形態1〜3では、誤ったトリガー信号を検知する場合がある。この実施形態4では、取得手段206は、トリガー信号を検出する際には、予め定められたトリガー信号の属性に基づいて、該トリガー信号を、重畳電圧から検出する。図6に実施形態4の電子機器200−3の機能構成例を示す。図6と図2を比較すると、図6は、情報保持手段220を有する点で、図2と異なる。また、図6では、図2記載の生成手段202とその他のデバイス214の記載は省略しているが、これは、図面簡略化のためであり、実際は、生成手段202、その他のデバイス214は具備されている。
【0036】
トリガー信号の属性とは、例えば、ある値(図4の例では、電圧値V)をとり続けるトリガー信号の時間(図4の例では、トリガー信号時間γ)、トリガー信号の波形、などである。そして、予め正確なトリガー信号の属性を定めておく。定められたトリガー信号の属性は、情報保持手段220に保持される。
【0037】
そして、取得手段206は、情報保持手段220から保持されたトリガー信号の属性を取得する。そして、取得手段206は、情報保持手段220から取得したトリガー信号の属性と同一の属性のトリガー信号を検出する。そして、以後の処理を行う。
【0038】
この実施形態4によれば、予め定められた正確なトリガー信号の属性に基づいて、重畳電圧からトリガー信号を検出する。従って、正確なトリガー信号を検出することが出来る。
[実施形態5]
次に、実施形態5の電子機器200−4について説明する。図7に、実施形態5の電子機器200−4の機能構成例を示す。図7と図6とを比較すると、第1情報保持手段220が、第2情報保持手段230と解析手段232とに代替されている点で異なる。
【0039】
実施形態5では、トリガー信号により、記憶手段212の記憶領域の記憶先アドレスを定めることが出来る。従って、記憶手段212への記憶時間を短縮できる。
【0040】
まず、第2情報保持手段230には、予め対応情報が記憶されている。対応情報とは、トリガー信号の属性と、記憶手段212の記憶先情報が、対応付けられているものである。図8に、対応情報の一例を示す。図8の例では、トリガー信号の属性が、トリガー信号の時間である場合の対応情報を示す。図8では、例えば、トリガー信号の時間がSである場合には、記憶手段212のアドレスがDであることに対応している。
【0041】
そして、解析手段232が、取得手段206が検出したトリガー信号を解析することで、トリガー信号の属性(例えば、トリガー信号の時間)を求める。そして、解析手段232が、対応情報を参照して、求められたトリガー信号の時間に対応する記憶手段212のアドレスを取得する。
【0042】
そして、解析手段232が取得した記憶手段212のアドレスを記憶制御手段210に送信する。そして、記憶制御手段210は、記憶手段212のメモリ領域のうち、送信された記憶手段212のアドレスと同一のアドレスにデータを記憶させる。
【0043】
上記では、属性がトリガー信号の時間であるとして説明したが、属性を他の値(例えば、トリガー信号の形状)としても行なうことはできる。
【0044】
この実施形態6によれば、トリガー信号の属性と、記憶手段212の記憶先情報と、が対応付けられている対応情報を用いる。そして、解析手段232が、検出されたトリガー信号を解析して、トリガー信号の属性を求める。そして、求められた属性と一致する、対応情報中のトリガー信号の属性と対応する記憶手段212の記憶先情報(記憶先アドレス)を求める。そして、記憶手段212の、取得した記憶先アドレスに、データを記憶させる。従って、記憶手段212の記憶する部分を限定することが出来るので、記憶させる時間を短縮できる。
[その他の構成部の具体的構成]
次に、図2などに示した各構成部の具体的構成例について説明する。
<電圧供給装置100>
まず、電圧供給装置100の具体的構成例について説明する。図9に、電圧供給装置100の具体的構成例を示す。電圧供給装置100では、直流電源102で生成した電源電圧にFPGA(Field Programmable Gate Array)101で生成したデータ信号を重畳している。データ信号出力用のデバイスとしては、CPUやマイコンなどを用いる。FPGA601は電子機器200に入力するデータ信号を出力する。そして、該データ信号をトランジスタ605で電流増幅する。該データ信号はマンチェスター符号化方式などの自己同期方式で符号化されている。該データ信号はコンデンサ603と抵抗器604で構成されるハイパスフィルタを通して電源線701に重畳される。一方、電源電圧を生成している直流電源606にはインダクタ602を接続しておき、高周波成分のデータ信号が混入しないようにする。これにより、駆動電圧とデータ信号の重畳が可能となる。
<取得手段206などについて>
次に、取得手段206などの機能構成例を説明する。図10に、取得手段206などの機能構成例を示す。電圧供給装置100から重畳電圧が入力される。電子機器200の動作電圧が第1閾値の電圧V〜第2閾値電圧Vであることから(図4の説明参照)、重畳電圧の電圧幅も第1閾値の電圧V〜第2閾値電圧Vとなる。
【0045】
また、生成部202としては、降圧型DC−DCコンバータや、リニアレギュレータなどを用いる。上述のように生成部202は記憶手段212や、その他のデバイス214などを駆動させる為の駆動電圧を生成し、供給するものである。
【0046】
取得手段206としては、オペアンプを用いた電圧検出回路などを使用する。図10の例では、抵抗器2061(抵抗値はR)、抵抗器2062(抵抗値はR)、オペアンプ2063、基準電圧発生源2064、FET(Field effect transistor:Nチャネル型電界効果トランジスタ)2065などで構成されている。
【0047】
取得手段206に入力された重畳電圧Vは、抵抗器201と抵抗器202で分圧される。分圧後の重畳電圧Vは、以下の式で表すことができる。
【0048】
=V・R/(R+R
そして、分圧後の重畳電圧Vは、オペアンプ2063に入力される。一方、基準電圧源2064からは基準電圧V(図4参照)がオペアンプ2063に入力される。そして、オペアンプ203は、入力された分圧後の重畳電圧Vと基準電圧Vとを比較する。そして、分圧後の重畳電圧Vが基準電圧V以上の場合には、V(図4記載)であるHigh電圧(つまり「1」)が出力される。また、分圧後の重畳電圧Vが基準電圧V未満の場合には、V(図4記載)であるLow電圧(つまり「0」)が出力される。
【0049】
基準電圧源2064としては、基準電源ICなどを使用する。そして、出力はFET2065から、オープンドレイン出力が行なわれる。
【0050】
変換手段208としては、FPGAやCPU(Central Processing Unit)やマイクロコントローラ(マイコン)などが用いられる。また、記憶手段212とは例えば、不揮発性メモリであり、SPIプロトコルのフラッシュメモリなどが用いられる。
【0051】
また、図10の例では、記憶手段212は、スレーブセレクト信号(Slave Select、SS)、シリアルクロック信号(Serial Clock、SCLK)、マスター出力/スレーブ入力信号(Master−Out Slave−In、MOSI)の3つの入力信号によってデータの記憶がされる。これはSPI(Serial Peripheral Interface)バス規格に沿ったものである。記憶手段212に入力するための規格は他にもあるが、通常は複数の信号線を使用する。一方で、取得手段206から出力される信号は信号線1本分なので、記憶手段212に入力できる形式(プロトコル)に変換手段208で変換する必要がある。ここではSPI規格を例にとって説明する。
【0052】
まず、SPI規格ではデータ信号とクロック信号が必要なため、データ信号にはクロック信号を埋め込むようにする。データ信号へのクロック信号の埋め込みは、一般に知られている自己同期方式(セルフクロック方式)などを用いれば良い。
【0053】
マンチェスター符号化方式で受信したデータ信号を基にして、変換手段208ではデータ信号とクロック信号を生成してSPI規格に沿った形で記憶手段212に出力する。スレーブセレクト信号については、トリガー信号Tとデータ信号を基にして、所定のタイミングで所定の信号を出力するように変換手段208を設定しておけば良い。
【0054】
図11A〜Dに各電圧、信号の波形を示す。図11Aは、取得手段206からの出力、つまり、取得されたデータ信号の波形を示す。また、図11B〜図11Dは、それぞれ、スレーブセレクト信号、シリアルクロック信号、マスター出力/スレーブ入力信号の波形を示す。
【0055】
図12に、図10に示す構成の変形例を示す。図12では、取得手段206としてCPU400を使用している。CPU400はA/Dコンバータ402を内蔵している。CPU400は、抵抗器201と抵抗器202で分圧された分圧後の重畳電圧Vが基準電圧Vより高いか低いかを検出することによって、データ信号を取得する。受信したデータ信号を基に、CPU400でSS信号、SCLK信号、MOSI信号を生成し、記憶手段212に記憶させる。
【0056】
図12の例では、取得手段206として、A/Dコンバータが含まれているため、複数のデータ信号を取得することができる。そのため、重畳するデータ信号を、複数の電圧レベルを用いた符号化方式で符号化することができるようになる。例えば高中低の3段階の電圧レベルを用いるMLT−3符号化方式などである。MLT−3符号化方式を用いたときの重畳電圧の波形を図13に示す。符号化に複数の電圧レベルを使用するためには、A/Dコンバータを使用する以外に、図10で使用している取得手段206を複数用意するという方法も考えられる。また、A/Dコンバータ402を用いた場合には、トリガー信号Tの入力後、Vより一定以上低い電圧値やVより一定以上高い電圧値が入力された際には記憶手段212への記憶を中止することにより、ノイズによる誤動作を防ぐことが可能である。
【0057】
また、図2などに示した電圧供給装置100は、駆動電圧にデータを重畳させた重畳電圧を供給するものであるが、データを重畳させずに、駆動電圧のみを供給する電圧供給装置を接続させても良い。
【符号の説明】
【0058】
201 入力手段
202 生成手段
204 第1判定手段
206 取得手段
207 第2判定手段
208 変換手段
210 記憶手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特表2010−524319号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に搭載され、
データが記憶される記憶手段を有する電子機器において、
前記電子機器および前記走行体の他の電子機器を駆動するための駆動電圧と、前記記憶手段に記憶させるデータと、が重畳された重畳電圧を、前記電子機器に供給する電圧供給装置に接続されている電子機器において、
前記駆動電圧により駆動し、
前記重畳電圧が安定しているか否かを判定する判定手段と、
前記重畳電圧から前記データを取得する取得手段と、
前記判定手段により、前記重畳電圧が安定していると判定されると、前記取得された前記データを前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
走行体に搭載され、
電源と、
データが記憶される記憶手段と、を有する電子機器において、
前記電子機器は、
前記電子機器および前記走行体の他の電子機器を駆動するための駆動電圧と、前記記憶手段に記憶させるデータと、が重畳された重畳電圧を、前記電子機器に供給する電圧供給装置に接続されており、
前記電源がONにされると、前記駆動電圧により駆動し、
前記重畳電圧から前記データを取得する取得手段と、
前記電源がONにされた時から、予め定められた第1所定時間が経過した後に、前記取得された前記データを前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
前記第1所定時間は、前記電圧供給装置が、前記電源がONにされた時から、前記重畳電圧が安定する時までの時間に基づいて定められることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記記憶制御手段は、前記電源がONにされた時から、第2所定時間が経過した後には、前記取得された前記データを前記記憶手段に記憶させないことを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記取得手段は、前記重畳電圧から、前記記憶制御手段が前記記憶手段に前記データを記憶させるトリガーとなるトリガー信号を検出し、
前記記憶制御手段は、前記トリガー信号が検出されると、前記取得された前記データを前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記検出手段は、予め定められた前記トリガー信号の属性に基づいて、該トリガー信号を、前記重畳電圧から検出することを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記トリガー信号の属性と、前記記憶手段の記憶先情報と、が対応付けられている対応情報が記憶されている情報保持手段を有し、
前記記憶制御手段は、前記検出されたトリガー信号の属性と同一の、前記対応情報中の前記トリガー信号の属性と対応する記憶先情報に基づいて、前記データを前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項5または6記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−197704(P2012−197704A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61630(P2011−61630)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】