説明

電子機器

【課題】音孔に起因して防水性が低下することを防止する。
【解決手段】この電子機器は、発振装置及び筐体60を備えている。発振装置は、振動部材10及び圧電素子20を有している。圧電素子20は振動部材10上に設けられている。筐体60は、発振装置を収容しており、内壁に、発振装置を保持する保持部(凸部62)を有している。そして筐体60は、少なくとも保持部及び発振装置に面する部分が、多孔質材で形成されている。この多孔質材は、周波数が20kHz以上の音波は通すが、水は通さないように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を発振源とした発振装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を利用した発振装置は、例えばスピーカや、超音波センサの発振源として使用されている。この発振装置は、磁石を用いて振動板を振動させる動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という利点がある。
【0003】
特許文献1には、動電型のスピーカをフィルム状の防水膜で密閉することが記載されている。この防水膜には、孔径0.1mm以下の孔が設けられている、と記載されている。
【0004】
特許文献2には、圧電素子を金属製の筐体内に配置すること、及び、筐体に薄肉部を設けてこの薄肉部に圧電素子の振動面を密着させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−199998号公報
【特許文献2】特開平8−237795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器は、様々な環境で使用される。このため、電子機器には防水性が要求される。一方で、電子機器に音声を出力する機能を持たせる場合、電子機器の筐体には音孔を設ける必要がある。筐体に音孔を設けた場合、音孔に起因して電子機器の防水性が低下してしまう。
【0007】
本発明の目的は、音孔に起因して防水性が低下することを防止できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、振動部材、及び前記振動部材上に設けられた圧電素子を有する発振装置と、
前記発振装置を収容し、かつ前記発振装置を保持する保持部を内壁に有する筐体と、
を備え、
前記筐体は、少なくとも前記保持部及び前記発振装置に面する部分が、多孔質材で形成されている電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子機器の防水性が音孔に起因して低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【図4】第4の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【図5】薄肉部を経由して出力される音波の音圧の、薄肉部の厚さ依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。この電子機器は、発振装置及び筐体60を備えている。発振装置は、振動部材10及び圧電素子20を有している。圧電素子20は振動部材10上に設けられている。筐体60は、発振装置を収容しており、内壁に、発振装置を保持する保持部(凸部62)を有している。そして筐体60は、少なくとも保持部及び発振装置に面する部分が、多孔質材で形成されている。以下、詳細に説明する。
【0013】
振動部材10はシート状であり、圧電素子20から発生した振動によって振動する。また振動部材10は、圧電素子20の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、振動部材10の剛性を制御することで、圧電素子20の基本共振周波数を制御できる。なお、振動部材10の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動部材10は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1Gpa以上500GPa以下であることが好ましい。振動部材10の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動部材10を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0014】
圧電素子20は、PZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし、圧電素子20は、圧電特性を示す高分子材料、例えばポリフッ化ビニリデンにより形成されていてもよい。
【0015】
筐体60は、発振装置を保持する保持部として凸部62を有している。凸部62の内壁には、発振装置が固定されている。平面視において、凸部62は、発振装置の外形(例えば後述する支持部材40)に沿うように形成されている。
【0016】
筐体60は、上記したように、少なくとも保持部及び発振装置に面する部分が、多孔質材で形成されている。筐体60のうち多孔質材で形成されている部分は、筐体60の全体であっても良いし、筐体60のうち保持部及び発振装置に面する部分のみであってもよい。なお筐体60には、音孔が形成されていない。
【0017】
筐体60を構成する多孔質材は、超音波、例えば周波数が20kHz以上の音波は通すが、水は通さないように形成されている。多孔質材は、樹脂、例えばウレタンフォームにより形成されている。多孔質材が有する孔は、例えば独立気泡型であるが、連続気泡型であってもよい。後者の場合、多孔質材の表面につながっている孔の表面部分における径は、95%以上が0.3mm以下であるのが好ましい。また多孔質材のうち筐体60の表面側に位置する面は、撥水処理されているのが好ましい。なお筐体60は、凸部62,薄肉部64、及びその周囲に位置する部分が一体形成されている。
【0018】
また本実施形態において、筐体60のうち発振装置に対向している領域、すなわち外部に向けて音波が伝播する領域は、薄肉部64となっており、他の部分よりも薄くなっている。本図に示す例では、筐体60は、凸部62に囲まれている領域が薄肉部64となっている。薄肉部64の厚さは、例えば10μm以上500μm以下である。図5に示すように、筐体60を樹脂で形成した場合、筐体60を金属で形成した場合と比較して、薄肉部64を経由して放出される音波の音圧が低下することを抑制できる。
【0019】
また発振装置は、支持部材40及び制御部50を備えている。支持部材40は、筒形状を有しており、例えば樹脂または金属により形成されている。直筒の断面形状は、円形であってもよいし、多角形であっても良い。支持部材40は、振動部材10の縁を保持している。そして発振装置は、支持部材40が凸部62の内壁に固定されることにより、筐体60に固定される。
【0020】
制御部50は、外部から入力された音声信号に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を圧電素子20に入力する。本実施形態において、発振装置はパラメトリックスピーカとして機能する。そして制御部50は、外部から入力された音声データ(原信号)を変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて駆動信号を生成する。この駆動信号の周波数は、振動部材10及び圧電素子20のn次の共振周波数であり、例えば20kHz以上である。
【0021】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態において、発振装置はパラメトリックスピーカとして機能するため、超音波帯域の音波を出力する。上記したように、筐体60のうち発振装置に対向している部分は多孔質材で形成されている。この多孔質材は、周波数が20kHz以上の音波は通すが、水は通さないように形成されている。従って、電子機器の防水性を確保しつつ、筐体60の外部に音波を出力することができる。
【0022】
特に本実施形態では、筐体60のうち発振装置に対向している部分は、他より薄い薄肉部64となっている。従って、効率よく筐体60の外部に音波を出力することができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。この電子機器は、筐体60のうち発振装置を保持する保持部の構造を除いて、第1の実施形態に係る電子機器と同様の構成を有している。
【0024】
本実施形態において、保持部は凹部66により形成されている。発振装置は凹部66内に配置されており、凹部66の内側壁に、支持部材40が固定されている。そして凹部66の底面が、薄肉部64となっている。
【0025】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0026】
{第3の実施形態}
図3は、第3の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。この電子機器は、複数の発振装置をアレイ状に有しており、かつ発振装置別に保持部が設けられている点を除いて、第1または第2の実施形態に係る電子機器と同様の構成である。本図は、第2の実施形態と同様の場合を示している。また複数の発振装置は、同一の制御部50によって制御されている。
【0027】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
図4は、第4の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。この電子機器は、発振装置が第2振動部材30を有している点を除いて、第1または第2の実施形態に係る電子機器と同様の構成である。本図は、第2の実施形態と同様の場合を示している。
【0029】
圧電素子20は振動部材10上に設けられている。そして振動部材10は、第2振動部材30上に設けられている。第2振動部材30の平面形状は、振動部材10よりも大きい。そして第2振動部材30の外周側の縁は支持部材40に固定されている。
【0030】
第2振動部材30は、振動部材10よりも弾性率が低い材料、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、またはウレタンにより形成されている。
【0031】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また本実施形態では、振動部材が、振動部材10及び第2振動部材30によって形成されている。第2振動部材30は振動部材10よりも弾性率が低い。従って、振動部材のうち支持部材40に取り付けられている部分の振幅を大きくすることができる。これにより、発振装置の出力を大きくすることができる。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
10 振動部材
20 圧電素子
30 第2振動部材
40 支持部材
50 制御部
60 筐体
62 凸部
64 薄肉部
66 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材、及び前記振動部材上に設けられた圧電素子を有する発振装置と、
前記発振装置を収容し、かつ前記発振装置を保持する保持部を内壁に有する筐体と、
を備え、
前記筐体は、少なくとも前記保持部及び前記発振装置に面する部分が、多孔質材で形成されている電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記保持部は、前記内壁から突出しており、前記発振装置を挟む凸部を有しており、
前記筐体のうち前記多孔質材で形成されている部分は、前記発振装置に対向している領域が、他の部分よりも薄くなっている電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記保持部は、前記内壁に設けられた凹部であり、前記凹部の内側壁に前記発振装置が取り付けられている電子機器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記発振装置に、パラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する制御部をさらに備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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