説明

電子機器

【課題】投射画像の歪の補正を迅速に行うことができる電子機器を提供する。
【解決手段】測距センサによりデジタルカメラから投射面上の投射画像50の四隅の位置までの4つの距離を測定し、その4つの距離を表わす数字をLCD表示部22の画面上の四角形の投射画像50の四隅の近傍に表示させる。ユーザは、その数字を手がかりとしてデジタルカメラの向きを調整することで投射画像50の歪みを補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、どのようにプロジェクタを移動させれば最適な位置(投射画像の歪が生じない位置)にプロジェクタを設置可能かを支援する画像をスクリーンに投射する投射型画像表示装置の設置調整システムが知られている(下記公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−151310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の投射型画像表示装置の設置調整システムでは、スクリーンに投射された投射画像の歪を補正するために、プロジェクタ設置位置調整用テストパターンと設置位置調整支援画像とが必要であるため、投射画像の歪の補正に時間がかかる。これに対し、プロジェクタ設置位置調整用テストパターンに代えて風景等の投射画像を用いることも考えられるが、この方法では投射画像と設置位置調整支援画像とが重なり、両方の画像が見にくくなるため、投射画像の歪の補正に時間がかかる。
【0005】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は投射画像の歪の補正を迅速に行うことができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、投射面に向けて画像を投射する投射手段と、前記投射面上の投射画像を撮像する撮像手段と、前記投射手段から前記投射面までの距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段による測定結果に基づいて前記投射画像の歪みを補正するための補正情報を演算する補正手段と、前記補正情報を出力する出力手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電子機器において、前記距離測定手段は、前記投射手段から前記投射面上の前記投射画像の四隅の位置までの4つの距離を測定することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の電子機器において、前記出力手段に、前記撮像手段によって撮像された前記投射画像を含む撮像画像を表示する表示手段が含まれ、前記補正手段は、前記表示手段に前記補正情報として前記4つの距離を前記撮像画像中の前記投射画像の四隅の近傍に表示させる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の電子機器において、前記出力手段に、音声出力手段が含まれ、前記補正手段は、前記音声出力手段に前記投射手段の向きを指示する音声を前記補正情報として出力させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、投射面に向けて画像を投射する投射手段と、前記投射面上の投射画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された前記投射画像を含む撮像画像を表示する表示手段と、前記投射画像に歪がないときに前記表示手段に表示される前記撮像画像中の前記投射画像の外形と一致するガイド枠を前記表示手段に表示させる補正手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の電子機器において、前記補正手段は、前記撮像画像中の前記投射画像に基づいて前記投射手段の向きを指示する指示情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6又は7記載の電子機器において、前記指示情報を音声として出力する音声出力手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、投射画像の歪の補正を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係るデジタルカメラのブロック図である。
【図2】図2はプロジェクタ部から斜め投射した状態を示す斜視図である。
【図3】図3(a),(b)はデジタルカメラのLCD表示部の画面の一例を示す図である。
【図4】図4はプロジェクタ部から投射面までの距離を測定して投射画像を補正する方法を説明するフローチャートである。
【図5】図5(a),(b)はこの発明の第2実施形態に係るデジタルカメラのLCD表示部の画面の一例を示す図である。
【図6】図6はガイド枠を用いて投射画像を補正する方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1はこの発明の第1実施形態に係るデジタルカメラのブロック図である。
【0017】
デジタルカメラ(電子機器)2はCPU25を備えている。CPU25には、シャッタボタン18(図2参照)、メニュー画面の表示を指示するメニューボタン24(図2参照)、LCD表示部(表示手段)22に表示されたメニュー画面の項目の選択等を行うセレクタボタン23(図2参照)等を有する操作部26が接続されている。操作部26の他に、CPU25には、LCD表示部22の表示を制御する表示制御部28と、撮影レンズ(図示せず)を介して壁面等の投射面(図示せず)上の投射画像50(図3参照)を撮像して撮像信号を生成するCMOS、CCD等により構成される撮像素子(撮像手段)30と、撮像素子30で生成された撮像信号をアナログ/デジタル変換して、投射データとして記憶する記憶部32及びメモリカード36と、撮像、投射等に関する設定、制御を行うための制御プログラムを格納するプログラム記憶部34と、記憶部32やメモリカード36に記憶された投射データに対応する映像を投射面に投射するプロジェクタ部(投射手段)38と、プロジェクタ部38から投射面の複数の位置(投射画像50の四隅の位置)までの距離を測定する複数の測距センサ(距離測定手段)40と、デジタルカメラ2(プロジェクタ部38)の向きを音声で指示するスピーカ(音声出力手段)41とがそれぞれ接続されている。
【0018】
メモリカード36はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって構成される。
【0019】
測距センサ40は、例えば筐体4(図2参照)の前面の所定位置に設けられ、プロジェクタ部38から投射面上の投射画像50の四隅の位置までの4つの距離を測定する。測距センサ40は例えば光学式のセンサであり、光電変換素子を一列に並べて構成されるラインセンサ(図示せず)と、投射面からの反射光をラインセンサに結像させる受光レンズ(図示せず)とを有する。
【0020】
LCD表示部22は撮像素子30で撮像された投射画像50を含む撮像画像を表示する。
【0021】
CPU25は、測距センサ40による測定結果に基づいて投射面上の投射画像50の歪みを補正するための補正情報を演算する補正手段として機能する。
【0022】
また、CPU25は、LCD表示部22に補正情報として測距センサ40で測定された4つの距離を撮像画像中の投射画像50の四隅の近傍に表示させる(図3参照)。このとき、投射画像50に重ならない位置に距離が数字で表示される。
【0023】
更に、CPU25は、デジタルカメラ2の向き(ユーザがデジタルカメラ2を動かす方向)を指示する音声を補正情報としてスピーカ41から出力させる。
【0024】
次に、図2〜4に基づいてプロジェクタ部38から投射面までの距離を測定して投射画像50を補正する方法を説明する。
【0025】
図2はプロジェクタ部38から斜め投射した状態を示す斜視図、図3(a),(b)はデジタルカメラ2のLCD表示部22の画面の一例を示す図、図4はプロジェクタ部38から投射面までの距離を測定して投射画像50を補正する方法を説明するフローチャートである。
【0026】
図3(a)は投射画像50が歪んでいる状態を示す図であり、図3(b)は投射画像50が歪んでいない状態を示す図である。なお、図3(a),(b)において、四角形の投射画像50の四隅(頂点)の近傍にそれぞれ表示された数字は、例えばデジタルカメラ2から投射画像50の四隅までの距離(補正情報)を表わす。また、図4において、S1〜S7は各処理ステップを示す。
【0027】
まず、デジタルカメラ2のプロジェクタ部38から投射面に向けて画像を投射する(S1)。
【0028】
次に、投射面上の投射画像50をデジタルカメラ2の撮影レンズを通して四角形の画像としてLCD表示部22にスルー表示させる(S2)(図2参照)。
【0029】
その後、測距センサ40により投射画像50の四隅の位置(投射画像50の4つの頂点)までの4つの距離を測定し、投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が全て等しいか否かを判定する(S3)。このとき、撮像画像中の四角形の投射画像50の四隅の近傍にデジタルカメラ2から投射画像50の四隅の位置までの距離をそれぞれ数字で表示させる(図3(a),(b)参照)。
【0030】
投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が全て等しいとき(Yes)、投射画像50には歪みがないとして補正を終了する(S7)(図3(b)参照)。
【0031】
投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が等しくないとき(No)、デジタルカメラ2の向きをどの程度変えればよいかがわかるように全ての距離を等しくなる値を算定し、その値を数字でLCD表示部22に表示する(S4)。このとき、LCD表示部22への数字の表示に代えて又はその表示とともに、例えば「デジタルカメラ2の右側を手前に動かして下さい」等の音声をスピーカ41から出力させてもよい。なお、距離に応じた数字を表示する代わりに距離に応じた色を表示させるようにしてもよい。
【0032】
次に、デジタルカメラ2の向きをLCD表示部22の数字の表示等に従って調整する(S5)。
【0033】
その後、デジタルカメラ2から投射面60上の投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が全て等しいか否かを判定する(S6)。
【0034】
投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が等しくないとき(No)、ステップS4へ戻り、投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が全て等しくなるまで、ステップS4からS6の処理を繰り返す。
【0035】
投射画像50の四隅の位置までの4つの距離が全て等しくなったとき(Yes)(図3(b)参照)、投射画像50は歪みがないとして補正を終了する(S7)。このとき、LCD表示部22に補正が終了したことを知らせる表示を出力させる。なお、LCD表示部22への数字の表示に代えて又はその表示とともに、補正が終了したことを知らせる音声をスピーカ41から出力してもよい。
【0036】
この実施形態によれば、LCD表示部22の画面上の投射画像50の四隅の近傍にそれぞれ表示されたデジタルカメラ2から投射面60上の投射画像50の四隅の位置までの距離を表す数字を見ながらデジタルカメラ2の向きを変えればよいので、投射画像50の歪の補正を迅速に行うことができる。
【0037】
なお、上記実施形態ではデジタルカメラ2から投射面60上の投射画像50の四隅の位置までの距離を測定したが、これに代えて四角形の各辺の中点までの距離を測定するようにしてもよい。この場合においても同様の効果を得ることができる。
【0038】
図5(a),(b)はこの発明の第2実施形態に係るデジタルカメラ2のLCD表示部22の画面の一例を示す図、図6はガイド枠5を用いて投射画像50を補正する方法を説明するフローチャートである。図6において、S11〜S16は各処理ステップを示す。
【0039】
この実施形態は、投射画像50に歪がないときにLCD表示部22に表示される撮像画像中の投射画像50の外形51と一致するガイド枠5をLCD表示部22に表示させるようにした点で第1実施形態と相違する。なお、CPU、プロジェクタ部等のハードウエア構成は第1実施形態と同じである。
【0040】
ガイド枠5として、大きさの異なるガイド枠5が画像データとして予め記憶部32に記憶されている。撮像した投射画像50の大きさに応じて記憶部32に記憶されたガイド枠5の画像データの中から撮像した投射画像50の大きさに最も近いガイド枠5の画像データをユーザが選択したり、CPU25に自動的に選択させたりすることで補正に最適なガイド枠5をLCD表示部22に表示させる。なお、ガイド枠5は投射画像50と同じ縦横比である。
【0041】
また、LCD表示部22には、撮像画像中の投射画像50に基づいてプロジェクタ部40の向きを指示する指示情報が表示される。指示情報はLCD表示部22の四隅に表示される○印と☆印とである(図5(a)参照)。
【0042】
まず、デジタルカメラ2のプロジェクタ部38から投射面60に向けて画像を投射する(S11)。
【0043】
次に、投射面上の投射画像50をデジタルカメラ2の撮影レンズを通して四角形の画像としてLCD表示部22にスルー表示させる(S12)。
【0044】
その後、歪のない四角形のガイド枠5をLCD表示部22に表示させる(S13)。
【0045】
次に、投射画像50の外形51とガイド枠5の外形61とが一致するようにデジタルカメラ2の向きを調整する(S14)。このとき、LCD表示部22にデジタルカメラ2の向きを指示する表示、例えば「☆印を手前に○を奥に」という文字等が表示される(図5(a)参照)ので、ユーザはその表示に基づいてデジタルカメラ2の向きを変えればよい。このとき、LCD表示部22への文字等の表示に代えて又はその表示とともに、補正が終了したことを知らせる音声をスピーカ41から出力させてもよい。なお、図5(a)ではLCD表示部22の画面の左側の上下に○印を表示させ、右側に☆印を表示させたが、LCD表示部22の画面の四隅に全て異なる印を表示させてもよい。
【0046】
その後、投射画像50の外形51とガイド枠5の外形61とが一致する(投射画像50の各辺とガイド枠5の各辺との長さがすべて等しい)か否かを判定する(S15)。
【0047】
投射画像50の外形51とガイド枠5の外形61とが一致しないとき(No)、ステップS14へ戻り、投射画像50の外形51とガイド枠5の外形61とが一致するまで、ステップS14からS15の処理を繰り返す。
【0048】
投射画像50の外形51とガイド枠5の外形61とが一致したとき(Yes)、投射画像50は歪みがないとして補正を終了する(S16)。このとき、○印、☆印及びデジタルカメラ2の向きを指示する文字等の表示が消える(図5(b)参照)とともに、LCD表示部22に補正が終了したことを知らせる表示(図示せず)を出力させる。なお、LCD表示部22への印や文字等の表示に代えて又はその表示とともに、補正が終了したことを知らせる音声をスピーカ41から出力させてもよい。
【0049】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0050】
2:デジタルカメラ(電子機器)、5:ガイド枠、22:LCD表示部(表示手段)、25:CPU(補正手段)、30:撮像素子(撮像手段)、38:プロジェクタ部(投射手段)、40:測距センサ(距離測定手段)、41:スピーカ(音声出力手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射面に向けて画像を投射する投射手段と、
前記投射面上の投射画像を撮像する撮像手段と、
前記投射手段から前記投射面までの距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段による測定結果に基づいて前記投射画像の歪みを補正するための補正情報を演算する補正手段と、
前記補正情報を出力する出力手段と
を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記距離測定手段は、前記投射手段から前記投射面上の前記投射画像の四隅の位置までの4つの距離を測定することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記出力手段に、前記撮像手段によって撮像された前記投射画像を含む撮像画像を表示する表示手段が含まれ、
前記補正手段は、前記表示手段に前記補正情報として前記4つの距離を前記撮像画像中の前記投射画像の四隅の近傍に表示させることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記出力手段に、音声出力手段が含まれ、
前記補正手段は、前記音声出力手段に前記投射手段の向きを指示する音声を前記補正情報として出力させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項5】
投射面に向けて画像を投射する投射手段と、
前記投射面上の投射画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された前記投射画像を含む撮像画像を表示する表示手段と、
前記投射画像に歪がないときに前記表示手段に表示される前記撮像画像中の前記投射画像の外形と一致するガイド枠を前記表示手段に表示させる補正手段と
を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
前記補正手段は、前記撮像画像中の前記投射画像に基づいて前記投射手段の向きを指示する指示情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記指示情報を音声として出力する音声出力手段を備えていることを特徴とする請求項6又は7記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−4610(P2012−4610A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134631(P2010−134631)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】