説明

電子機器

【課題】筐体の内部に電子部品を収容した電子機器において、冷却と加熱の効果が十分に発揮される電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器は、筐体1の内部に気密に形成された電子部品の収容空間と、前記収容空間の気圧を上昇/低下させる気圧上下手段と、前記収容空間の温度を検知する温度センサー63と、温度センサーの検知に応じて前記気圧上下手段を動作させることにより、収容空間の温度を所定範囲内に制御する制御手段とを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局の如く筐体の内部に電子部品を収容してなる電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば屋外に設置される無線基地局においては、防水構造を有する直方体状の筐体の内部に、無線通信用の電子回路や電源回路を収容しており、筐体内部の電子部品を雨水の影響から保護している。
又、筐体の表面には複数の放熱フィンを突設して、筐体内部の電子部品の発熱等による温度上昇を抑制することにより、筐体内部の電子部品の破損を防止している。
【0003】
ここで、多数の放熱フィンを筐体表面に突設することによって、過大な温度上昇を抑制することは可能であるが、外気温度が低下し、これに伴って筐体内部の電子部品の温度が動作補償温度範囲よりも低下した場合、電子部品に動作不良が生じる虞がある。
【0004】
そこで、筐体の外側にヒートシンクを設けると共に、筐体の内部にヒータ等の加熱手段を設け、筐体内部の温度に応じて加熱手段を動作させることにより、筐体内部の温度を制御する電子機器が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−354847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、筐体の外側にヒートシンクを設けると共に、筐体の内部に加熱手段を設けた電子機器においては、加熱手段の動作時に、加熱手段から発生する熱がヒートシンクから外部へ放散されてしまうため、加熱の効果が減殺される問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、冷却と加熱の効果が十分に発揮される電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、筐体の内部に電子部品を収容しており、
筐体の内部に気密に形成された電子部品の収容空間と、
前記収容空間の気圧を上昇/低下させる気圧上下手段と、
前記収容空間の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーの検知に応じて前記気圧上下手段を動作させることにより、収容空間の温度を所定範囲内に制御する制御手段
とを具えている。
具体的には、前記気圧上下手段は、前記収容空間を気密状態で拡大/縮小させる収容空間拡縮手段によって構成される。
【0009】
上記本発明の電子機器においては、外気温度の上昇や電子部品の発熱によって電子部品の収容空間の温度が上昇したとき、収容空間拡縮手段によって収容空間が気密を保ったまま拡大される。これに伴って収容空間の気圧が低下し、収容空間の温度が低下することになる。
逆に、外気温度の低下によって電子部品の収容空間の温度が低下したとき、収容空間拡縮手段によって収容空間が気密を保ったまま縮小される。これに伴って収容空間の気圧が上昇して、収容空間の温度が上昇することになる。
この様にして、収容空間の温度が所定範囲内に制御される。
【0010】
具体的態様において、前記収容空間には、気密状態の電子部品収容室Aと、該電子部品収容室Aと隔壁を介して隣接する気密状態の気圧調整室Bとが形成され、前記収容空間拡縮手段は、前記気圧調整室Bの容積を拡大/縮小させるものである。
【0011】
該具体的態様によれば、収容空間拡縮手段の動作によって、気圧調整室Bの気圧が変化すると、これによって気圧調整室Bの温度が変化し、この気圧調整室Bの温度変化に応じて、気圧調整室Bと電子部品収容室Aとの間で隔壁を通じた熱交換が行なわれ、電子部品収容室Aの温度が変化することになる。ここで、気圧調整室Bの気圧が変化しても、電子部品収容室Aの気圧は一定に保たれるので、気圧変動に起因する電子部品の破損を回避することが出来る。
【0012】
更に具体的な態様において、前記隔壁は、前記電子部品収容室を気密状態に保って閉じる中蓋を含み、前記気圧上下手段は、前記筐体の内部に配備されて前記気圧調整室を気密状態に保って閉じつつ筐体内壁に沿って往復移動することが可能な可動壁と、該可動壁を往復移動させる往復移動装置とを具えている。
【0013】
該具体的態様によれば、可動壁の往復移動によって気圧調整室Bの容積が変化して気圧の変化が生じる。このとき、中蓋によって閉じられている電子部品収容室Aは一定の気圧に保たれる。電子部品のメンテナンス時には中蓋を開けることによって電子部品の交換が可能となる。
【0014】
又、筐体の内部には、前記可動壁を挟んで気圧調整室Bとは反対側に、筐体の外部と連通する大気開放室Cが形成されている。
これによって大気開放室Cは大気圧に保たれるので、可動壁を移動させるための動力が低減する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電子機器によれば、筐体内の気圧変化によって冷却と加熱が行なわれるので、冷却時に加熱の効果が減殺されたり加熱時に冷却の効果が減殺されたりすることはなく、筐体内部の電子部品に対して冷却と加熱の効果が十分に発揮される。その結果、外気温度に拘わらず電子部品の破損や誤動作を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である無線基地局の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1とは異なる方向から見た無線基地局の斜視図である。
【図3】図3は、該無線基地局の分解斜視図である。
【図4】図4は、該無線基地局の内部温度低下時の状態を示す断面図である。
【図5】図5は、該無線基地局の内部温度上昇時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を無線基地局に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態である無線基地局は、図1及び図2に示す如く、それぞれ金属製の筐体下半部(2)と筐体上半部(3)を互いに接合固定してなる直方体状の筐体(1)を具えている。
【0018】
筐体下半部(2)の一方の側部には図1の如く電源コネクター(9)及び回線コネクター(91)が設けられ、筐体下半部(2)の他方の側部には図2の如くアンテナコネクター(92)(93)が設けられている。これらのコネクター(9)(91)(92)(93)は防水構造を有している。又、筐体上半部(3)の一方の側部には通気口(32)が突設され、該通気口(32)には通気性防水キャップ(94)が嵌められている。
【0019】
更に、筐体下半部(2)及び筐体上半部(3)の表面にはそれぞれ、複数の放熱フィン(22)(31)が突設されている。
この様にして筐体(1)は防水構造と放熱構造を有している。
【0020】
筐体(1)の内部には、図3に示す様に、電源モジュール(64)、アンプモジュール(65)、及び回路基板(6)が収容され、回路基板(6)には、所定の温度補償範囲内で正常に動作するIC(61)(62)や、筐体内部温度を検知する温度センサー(63)が搭載されている。
【0021】
筐体下半部(2)の底面には、回路基板(6)、電源モジュール(64)及びアンプモジュール(65)の収容室Aを包囲するリブ壁(21)が突設され、該リブ壁(21)の開口部には、気密パッキン(71)を介して、金属製の中蓋(4)が接合固定される。これによって、回路基板(6)、電源モジュール(64)及びアンプモジュール(65)の収容室Aは気密状態に保たれる。
又、中蓋(4)の表面には複数の放熱フィン(41)が突設されている。
【0022】
更に、筐体(1)の内部には、中蓋(4)の上方位置に、平板状の可動壁(5)が昇降可能に配備されている。可動壁(5)の外周縁には気密パッキン(71)が嵌められ、該気密パッキン(71)が筐体上半部(3)の内周壁に摺接している。
【0023】
中蓋(4)の上面には、その両側部に、第1アーム(81)と第2アーム(82)をX字状に連結してなる一対の昇降機構(8)(8)が配備され、一方の昇降機構(8)には、モータ(83)とギア機構(84)からなる駆動機構(85)が連繋している。
モータ(83)が起動すると、該モータ(83)の回転はギア機構(84)を経て両昇降機構(8)(8)に伝わり、この結果、可動壁(5)が水平姿勢で気密状態を保ったまま昇降駆動されることになる。
【0024】
筐体下半部(2)の開口部には、気密パッキン(7)を介して、筐体上半部(3)が接合固定される。
この様にして、筐体(1)の内部は、可動壁(5)によって上下に仕切られ、可動壁(5)の下方には、リブ壁(21)の外側に、気密状態の気圧調整室Bが形成されると共に、可動壁(5)の上方には大気開放室Cが形成される。
大気開放室Cは、通気口(32)及び通気性防水キャップ(94)を通じて、外部と連通している。
斯くして、リブ壁(21)と中蓋(4)によって、電子部品収容室Aと気圧調整室Bとの間を仕切る隔壁が形成される。
【0025】
尚、電源コネクター(9)、回線コネクター(91)及びアンテナコネクター(92)(93)は、ケーブル(図示省略)を介して収容室Aの回路基板(6)、電源モジュール(64)及びアンプモジュール(65)と繋がっている。
【0026】
回路基板(6)上の温度センサー(63)は、IC(61)(62)に搭載されている制御回路へ繋がっており、温度センサー(63)による温度検知に応じて、モータ(83)が正逆方向に回転駆動される。
温度センサー(63)によって収容室内の温度低下が検知されると、図4に示す下降端へ向けて可動壁(5)を下降させる。これによって、気圧調整室Bの容積が減少して、気圧調整室Bの気圧が上昇し、これに伴って気圧調整室Bの温度が上昇することになる。この結果、気圧調整室Bの熱が中蓋(4)を通じて収容室Aへ伝わり、収容室Aが加熱されることになる。
又、大気開放室Cの容積の増大に伴って、通気口(32)から空気が吸入される。
【0027】
逆に、温度センサー(63)によって収容室内の温度上昇が検知されると、図5に示す上昇端へ向けて可動壁(5)を上昇させる。これによって、気圧調整室Bの容積が増大して、気圧調整室Bの気圧が低下し、これに伴って気圧調整室Bの温度が低下することになる。この結果、収容室Aの熱が中蓋(4)を通じて気圧調整室Bへ伝わり、収容室Aが冷却されることになる。
又、大気開放室Cの容積の減少に伴って、通気口(32)から空気が排出される。
【0028】
ここで、収容室Aと気圧調整室Bの間の熱交換は、中蓋(4)の放熱フィン(41)によって効率良く行なわれる。
この様にして、収容室内の温度低下時には収容室Aが加熱され、収容室内の温度上昇時には収容室Aが冷却されることによって、収容室A内の回路基板(6)上のIC(61)(62)が温度補償範囲内に保たれる。
【0029】
上述の如く、可動壁(5)の移動によって気圧調整室Bの気圧が変動したとしても、収容室Aと気圧調整室Bとは互いに気密状態を維持しているので、収容室Aの気圧は一定に保たれる。従って、気圧変動に起因して電子部品が破損する虞はない。
【0030】
上述の無線基地局によれば、防水性を確保しつつ、収容室A内の回路基板(6)上のIC(61)(62)を温度補償範囲内に保つことが出来るので、IC(61)(62)に破損や誤動作が生じることはない。
【0031】
又、上述の無線基地局によれば、中蓋(4)の放熱フィン(41)は、収容室Aと気圧調整室Bの間の熱交換に寄与する。
筐体(1)の放熱フィン(22)(31)は、収容室Aの温度上昇時に、筐体(1)の外部へ熱を放散させる補助的な役割を担うものであるが、収容室Aの温度低下時には、収容室Aの気圧を上げることによって直接的に収容室Aの空気温度を上昇させるものであり、従来の如く加熱手段の熱を収容室の空気に伝えるものではないので、放熱フィン(22)(31)から熱が著しく放散されることはない。
【0032】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、筐体(1)の放熱フィン(22)(31)や中蓋(4)の放熱フィン(41)は省略することが出来る。
又、収容室内の温度検知に基づく可動壁(5)の昇降制御は、収容室内の温度が所定の許容範囲を逸脱したときにモータ(83)を起動させる方法の他、収容室内の温度と目標温度の差を偏差信号とするフィードバック制御等、周知の種々の制御方式を採用することが出来る。
【0033】
又、気圧調整室B内の気圧を上昇させ若しくは低下させる手段としては、気圧調整室Bの容積を拡大/縮小させるものに限らず、例えば気圧調整室Bにポンプ等を接続し、気圧調整室Bの容積を一定に保ったまま、気圧調整室B内へ空気を圧送し、若しくは気圧調整室B内の空気を吸引して、気圧調整室B内の気圧を調整する構成を採用することも可能である。
更に又、気圧調整室Bの容積を拡大/縮小させる手段としては、可動壁(5)を移動させるものに限らず、例えば蛇腹式の伸縮筒を気圧調整室Bに接続するもの等、種々の機構を採用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
(1) 筐体
(2) 筐体下半部
(3) 筐体上半部
(4) 中蓋
(5) 可動壁
(6) 回路基板
(64) 電源モジュール
(65) アンプモジュール
(7) 気密パッキン
(71) 気密パッキン
(72) 気密パッキン
(8) 昇降機構
(85) 駆動機構
A 収容室
B 気圧調整室
C 大気開放室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に電子部品を収容した電子機器において、
筐体の内部に気密に形成された電子部品の収容空間と、
前記収容空間の気圧を上昇/低下させる気圧上下手段と、
前記収容空間の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーの検知に応じて前記気圧上下手段を動作させることにより、収容空間の温度を所定範囲内に制御する制御手段
とを具えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記気圧上下手段は、前記収容空間を気密状態で拡大/縮小させる収容空間拡縮手段によって構成される請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記収容空間には、気密状態の電子部品収容室と、該電子部品収容室と隔壁を介して隣接する気密状態の気圧調整室とが形成され、前記気圧上下手段は、前記気圧調整室の気圧を上昇/低下させるものである請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記気圧調整室は、前記隔壁を介して前記電子部品収容室を囲むように形成されている請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記隔壁は、前記電子部品収容室を気密状態に保って閉じる中蓋を含み、前記気圧上下手段は、前記筐体の内部に配備されて前記気圧調整室を気密状態に保って閉じつつ筐体内壁に沿って往復移動することが可能な可動壁と、該可動壁を往復移動させる往復移動装置とを具えている請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
筐体の内部には、前記可動壁を挟んで気圧調整室とは反対側に、筐体の外部と連通する大気開放室が形成されている請求項5に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74524(P2012−74524A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217914(P2010−217914)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】