説明

電子機器

【課題】不用意な操作部材の回転操作による設定ミスや目視せずに操作部材を回転操作する場合の設定ミスを回避することができるとともに、操作性にも優れた回転操作機構を備える電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器の回転操作機構は、回転操作可能とされ、回転操作方向に複数のクリック用凹部13を有する操作部材9と、クリック用凹部13に係合すると係合部材14と、係合部材14をクリック用凹部13に向けて付勢する付勢部材15と、を有し、操作部材9を回転操作することで、係合部材14が付勢部材15の付勢力に抗してクリック用凹部13から離脱し、離脱した係合部材14が互いに隣り合うクリック用凹部13の間を乗り越えて隣のクリック用凹部13に付勢部材15の付勢力により係合する。そして、複数のクリック用凹部13の一つのクリック用凹部13における操作部材9の回転操作方向に互いに対向する各面のうちの一方の面に、操作部材9の一方向のみの回転操作を規制する規制面16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作機構を備えるデジタルカメラ等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子機器では、機能や撮影条件を設定するための回転操作機構を備えるものがある。ところで、近年、機能や撮影条件の増加により、回転操作機構の操作部材の全周にわたって設定値表示が割り当てられることが多い。このため、操作部材の互いに隣り合う設定値表示間の間隔が狭くなり、不用意に操作部材を回転操作してしまった場合や目視せずに操作部材を回転操作する場合に、所望とは異なる設定となってしまうことがある。特に撮影条件や機能が大きく異なる設定値表示同士が互いに隣り合う場合は、上記のような設定ミスを防ぐ必要がある。
【0003】
そこで、第1の従来例として、回転操作機構の操作部材に各設定値表示に対応したクリック用凹部を設け、バネに付勢されたボールをクリック用凹部に係合させることにより、各設定値表示の位置で操作部材を停止しやすくした技術が提案されている。
【0004】
また、第2の従来例として、操作部材が360°回転できないようにするストッパを回転操作機構に設けることで、撮影条件や機能が大きく異なる設定値表示間の間隔が狭い場合に、この間隔での操作部材の操作ができないようにした技術が提案されている。
【0005】
さらに、第3の従来例として、回転操作機構のクリックトルクを正回転と逆回転で異なるトルクに設定する手段を設けた技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−085845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記第1の従来例では、操作部材に設けたクリック用凹部の形状が全周にわたって同形状であるため、どの設定値表示の位置に操作しても同じクリック感となる。そのため、不用意に操作部材を回転操作してしまった場合や目視せずに操作部材を回転操作する場合に、設定ミスに気づかない場合がある。
【0008】
また、上記第2の従来例では、撮影条件や機能が大きく異なる設定値表示間で素早く設定値表示を切換えたい場合に、操作部材を約一周回転させなければならず、操作部材の操作性が悪い。
【0009】
さらに、上記第3の従来例では、逆回転方向及び正回転方向のそれぞれの方向について、どの設定値表示の位置に操作部材を操作しても同じクリック感となる。このため、上記第1の従来例と同様に、不用意に操作部材を回転操作してしまった場合や目視せずに操作部材を回転操作する場合に、設定ミスに気づかない場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、不用意な操作部材の回転操作による設定ミスや目視せずに操作部材を回転操作する場合の設定ミスを回避することができるとともに、操作性にも優れた回転操作機構を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、回転操作可能とされ、回転操作方向に複数のクリック用凹部を有する操作部材と、前記クリック用凹部に係合すると係合部材と、前記係合部材を前記クリック用凹部に向けて付勢する第1付勢部材と、を有し、前記操作部材を回転操作することで、前記係合部材が前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記クリック用凹部から離脱し、離脱した前記係合部材が互いに隣り合う前記クリック用凹部の間を乗り越えて隣のクリック用凹部に前記第1付勢部材の付勢力により係合する回転操作機構を備える電子機器であって、複数の前記クリック用凹部の少なくとも一つの前記クリック用凹部における前記操作部材の回転操作方向に互いに対向する各面のうちの一方の面に、前記操作部材の一方向のみの回転操作を規制する規制面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不用意な操作部材の回転操作による設定ミスや目視せずに操作部材を回転操作する場合の設定ミスを回避することができるとともに、操作性にも優れた回転操作機構を備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の電子機器の第1の実施形態であるデジタルカメラを正面側(被写体側)から見た斜視図、(b)は(a)に示すデジタルカメラを背面側から見た斜視図である。
【図2】(a)はISOダイアルの平面図、(b)は(a)を裏面側から見た斜視図である。
【図3】ISOダイアルを含む回転操作機構の分解斜視図である。
【図4】図3の矢印A方向の断面図である。
【図5】(a)はISOダイアルのAUTOの設定値表示がカメラ本体の設定用目印1aの位置に一致するようにISOダイアルを回転操作した状態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。(c)は、(a)の状態でのISOダイアルの一部を破断した斜視図である。
【図6】(a)はISOダイアルの回転操作によりAUTOとISO3200との中間部分がカメラ本体の設定用目印の位置に達した状態を示す平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)の状態でのISOダイアルの一部を破断した斜視図である。
【図7】(a)はISOダイアルの回転操作によりISO3200の設定値表示がカメラ本体の設定用目印の位置に一致した状態を示す平面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)の状態でのISOダイアルの一部を破断した斜視図である。
【図8】本発明の電子機器の第2の実施形態であるデジタルカメラにおけるISOダイアルの分解斜視図である。
【図9】(a)はISOダイアルの平面図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は(a)のE−E線断面図である。
【図10】(a)はISOダイアルのAUTOの設定値表示がカメラ本体の設定用目印の位置に一致するようにISOダイアルを回転操作した状態を示す平面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。(c)は、(a)の状態でのISOダイアルの一部を破断した斜視図である。
【図11】(a)はISOダイアルの回転操作によりAUTOとISO3200との中間部分がカメラ本体の設定用目印の位置に達した状態を示す平面図、(b)は(a)のG−G線断面図、(c)は(a)の状態でのISOダイアルの一部を破断した斜視図である。
【図12】(a)はISOダイアルの回転操作によりISO3200の設定値表示がカメラ本体の設定用目印の位置に一致した状態を示す平面図、(b)は(a)のH−H線断面図、(c)は(a)の状態でのISOダイアルの一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明の電子機器の第1の実施形態であるデジタルカメラを正面側(被写体側)から見た斜視図、図1(b)は図1(a)に示すデジタルカメラを背面側から見た斜視図である。
【0016】
本実施形態のデジタルカメラは、図1に示すように、カメラ本体1の正面側に、レンズ鏡筒2、光学ファインダ3、及びストロボユニット4が設けられる。カメラ本体1の上面側には、レリーズボタン5、ズームレバー6、電源ボタン7、モードダイアル8、及びISOダイアル9が設けられ、カメラ本体1の背面側には、液晶表示部10、操作ダイアル11、及び操作ボタン12が設けられている。ここで、ISOダイアル9は、本発明の回転操作可能な操作部材の一例に相当する。
【0017】
図2(a)はISOダイアル9の平面図、図2(b)は図2(a)を裏面側から見た斜視図である。
【0018】
図2(a)に示すように、ISOダイアル9には、複数のISO感度の設定値表示が全周にわたって円周方向に略等間隔で配置されている。そして、ISOダイアル9の所望の設定値表示をカメラ本体1のISOダイアル9の外周側に形成された設定用目印1a(図5参照)の位置に回転操作することで、設定値表示に対応するISO感度に設定することができる。
【0019】
本実施形態では、ISOダイアル9の複数のISO感度の設定値表示のうち、撮影環境に適したISO感度に自動設定を行うAUTOの設定値表示と最高ISO感度であるISO3200の設定値表示とが狭い間隔で互いに隣り合って配置されている。AUTOの場合、一般撮影環境下では、ISO100〜800の間で設定されることが多く、隣のISO3200とは撮影条件が大きく異なる。
【0020】
図3はISOダイアル9を含む回転操作機構の分解斜視図であり、図4は図3の矢印A方向の断面図である。
【0021】
回転操作機構は、ISOダイアル9の回転位置を検出する回転位置検出部、及びISOダイアル9の回転操作時にユーザにクリック感を付与するクリック機構部を備える。
【0022】
回転位置検出部は、ISOダイアル9の裏面側にねじ25等で固定される摺動子ホルダ24と、摺動子ホルダ24の裏面側に熱溶着等で固定される摺動子26と、摺動子26の裏面側に配置される基板27に同心円上に形成される導電パターン28とを有する。ISOダイアル9、摺動子ホルダ24、及び摺動子26は一体で回転可能とされている。
【0023】
摺動子26には、バネ性を有する4本の接片が設けられ、各接片は、基板27上の導電パターン28に電気的に接触する。導電パターン28は、略360°にわたって形成されたグランドパターンと、5ビットのエンコード信号に対応した5つの信号パターンとから構成されている。
【0024】
摺動子26の4本の接片がそれぞれ異なる信号パターンに接触することで5ビットのエンコード信号が得られる。そして、ISOダイアル9の各々の設定値表示をカメラ本体1の設定用目印1aの位置に回転操作した際に、異なるエンコード信号となるように導電パターン28を設定することでISOダイアル9の回転位置を検出する。
【0025】
クリック機構部は、クリック用凹部13(図2(b)参照)、ボール14、及びバネ15を備える。クリック用凹部13は、ISOダイアル9の裏面側に全周にわたって形成されており、ISO感度の設定値表示に対応するクリック用凹部13にバネ15により付勢されたボール14が係合することで、ISOダイアル9がその係合位置で停止しやすくなっている。ここで、ボール14は、本発明の係合部材の一例に相当し、バネ15は、本発明の第1付勢部材の一例に相当する。
【0026】
また、クリック用凹部13のISOダイアル9の回転操作方向に互いに対向する各面は、後述する規制面16(図5(b)参照)を有するクリック用凹部13を除いて、クリック用凹部13の底部に向かうに従って次第に間隔が狭くなる傾斜面とされている。
【0027】
このため、ISOダイアル9を回転操作することで、傾斜面に押されるボール14にバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わり、ボール14がバネ15の付勢力に抗してクリック用凹部13から離脱する。そして、離脱したボール14が互いに隣り合うクリック用凹部13の間を乗り越えて隣のクリック用凹部13にバネ15の付勢力により係合することで、ユーザにクリック感が付与される。
【0028】
図5(a)はISOダイアル9のAUTOの設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aの位置に一致するようにISOダイアル9を回転操作した状態を示す平面図、図5(b)は図5(a)のA−A線断面図である。図5(c)は、図5(a)の状態でのISOダイアル9の一部を破断した斜視図である。
【0029】
図5の状態では、ISOダイアル9のAUTOの設定値表示に対応するクリック用凹部13にバネ15により付勢されたボール14が係合している。このため、ISOダイアル9は、AUTOの設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aに一致する位置で停止しやすくなっている。
【0030】
また、図5の状態では、ボール14が係合するクリック用凹部13のISOダイアル9の回転操作方向に互いに対向する各面は、上述した傾斜面とされている。このため、ISOダイアル9を図5(a)の反時計回り方向に回転操作することで、傾斜面に押されるボール14にバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わり、ボール14がクリック用凹部13から離脱し、図6に示す状態となる。
【0031】
図6(a)はISOダイアル9の回転操作によりAUTOとISO3200との中間部分がカメラ本体1の設定用目印1aの位置に達した状態を示す平面図、図6(b)は図6(a)のB−B線断面図である。図6(c)は、図6(a)の状態でのISOダイアル9の一部を破断した斜視図である。
【0032】
図6の状態では、クリック用凹部13から離脱したボール14が互いに隣り合うクリック用凹部13の間の平面上に位置しており、従って、ボール14は、クリック用凹部13に係合していないため、ISOダイアル9は停止しにくい状態となっている。この状態で、ISOダイアル9を図6(a)の反時計回り方向に回転操作すると、図7に示す状態となる。
【0033】
図7(a)はISOダイアル9の回転操作によりISO3200の設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aの位置に一致した状態を示す平面図、図7(b)は図7(a)のC−C線断面図である。図7(c)は、図7(a)の状態でのISOダイアル9の一部を破断した斜視図である。
【0034】
図7の状態では、ISOダイアル9のISO3200の設定値表示に対応するクリック用凹部13にバネ15により付勢されたボール14が係合している。このため、ISOダイアル9は、ISO3200の設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aに一致する位置で停止しやすくなっている。
【0035】
ここで、図7の状態では、ボール14が係合するクリック用凹部13のISOダイアル9の回転操作方向に互いに対向する各面のうち、AUTO側の面がバネ15の付勢方向と略平行な規制面16とされている。すなわち、規制面16はISOダイアル9の回転操作方向に対して、垂直な面となっている。また、クリック用凹部13のISOダイアル9の回転操作方向に互いに対向する各面のうち、AUTOと反対側の面は、他のクリック用凹部13と同様に、傾斜面とされている。
【0036】
従って、図7の状態において、ISOダイアル9を図7(a)の反時計回り方向に回転操作した場合は、傾斜面に押されるボール14に対してバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わり、ボール14がクリック用凹部13から離脱する。
【0037】
一方、ISOダイアル9を図7(a)の時計回り方向(設定値表示をISO3200からAUTOに変更する方向)に回転操作した場合は、規制面16によりボール14に対してバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わらない。従って、ボール14は、クリック用凹部13から離脱することができなくなる。このため、ISOダイアル9は、設定値表示をISO3200からAUTOに変更する方向には回転することができない。すなわち、ISOダイアル9は、規制面16により、設定値表示をISO3200からAUTOに変更する一方向のみの回転操作が規制される。
【0038】
なお、規制面16の高さは、ボール14の中心、或いはボール14の中心を越える高さが望ましい。また、規制面16は、加工上の容易さから、バネ15の付勢力の方向と同方向としてあるが、他のクリック用凹部13の傾斜面と逆向きの傾斜面としてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、AUTOとISO3200との狭い間隔におけるISOダイアル9の回転操作において、AUTOからISO3200に変更する回転操作は可能であるが、ISO3200からAUTOに変更する回転操作はできない。このため、ISO3200の設定で撮影しようとした際に、ISOダイアル9の不用意な回転操作で撮影条件が大きく異なるAUTOに設定されるのを防ぐことができる。また、ISOダイアル9が止まるまで時計回り方向に回転操作すれば、ISO3200に設定されるため、目視無しでのISO感度の設定が可能となる。これにより、不用意なISOダイアル9の回転操作による設定ミスや目視せずにISOダイアル9を回転操作する場合の設定ミスを回避することができるとともに、操作性にも優れた回転操作機構を備えるデジタルカメラを提供することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、図8〜図12を参照して、本発明の電子機器の第2の実施形態であるデジタルカメラについて説明する。なお、上記第1の実施形態に対して相当又は重複する部分については符号を流用しつつ相違する部分についてのみ説明する。
【0041】
図8はISOダイアル17の分解斜視図、図9(a)はISOダイアル17の平面図、図9(b)は図9(a)のD−D線断面図、図9(c)は図9(a)のE−E線断面図である。
【0042】
本実施形態では、ISOダイアル17のAUTOに対応するクリック用凹部13のISO3200側の傾斜面及びISOダイアル17のISO3200に対応するクリック用凹部13のAUTO側の規制面16をISOダイアル17と別体の規制部材19に形成する。
【0043】
図8及び図9に示すように、ISOダイアル17は、ダイアルベース18、規制部材19、バネ20、両面テープ21、及び化粧板22を備える。規制部材19は、バネ20によりバネ15の付勢方向と反対方向に付勢された状態でダイアルベース18に組み込まれ、ダイアルベース18内のストッパ23に係止される。ダイアルベース18の表面側には、化粧板22が両面テープ21を介して固定され、化粧板22には、上記第1の実施形態と同様に、ISO感度の設定値表示が配置されている。ここで、バネ20は、本発明の第2付勢部材の一例に相当する。
【0044】
図10〜図12は、ISOダイアル17の設定値表示をAUTOからISO3200に変更したときの状態遷移図である。ここで、バネ20により規制部材19に加えられる付勢力は、バネ15によりボール14に加えられる付勢力よりも弱く設定される。
【0045】
図10(a)はISOダイアル17のAUTOの設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aの位置に一致するようにISOダイアル17を回転操作した状態を示す平面図、図10(b)は図10(a)のF−F線断面図である。図10(c)は、図10(a)の状態でのISOダイアル17の一部を破断した斜視図である。
【0046】
図10の状態では、ISOダイアル17のAUTOの設定値表示に対応するクリック用凹部13にバネ15により付勢されたボール14が係合している。このクリック用凹部13は、ダイアルベース18の傾斜面と規制部材19の傾斜面とで形成されている。このため、ISOダイアル17は、AUTOの設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aに一致する位置で停止しやすくなっている。
【0047】
また、図10の状態では、ボール14が係合するクリック用凹部13のISOダイアル17の回転操作方向に互いに対向する各面は、上述した傾斜面とされている。このため、ISOダイアル17を図10(a)の反時計回り方向に回転操作することで、傾斜面に押されるボール14にバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わる。また、バネ20により規制部材19に加えられる付勢力は、バネ15によりボール14に加えられる付勢力よりも常に弱いため、規制部材19にはバネ20の付勢方向と反対方向の力が加わる。このとき、規制部材19は、化粧板22側に当接した状態となり、この状態では、ダイアルベース18の傾斜面と規制部材19の傾斜面とで形成されるクリック用凹部13は、他のクリック用凹部13と同形状となる。従って、上記第1の実施形態と同様に、ボール14がクリック用凹部13から離脱し、図11に示す状態となる。
【0048】
図11(a)はISOダイアル17の回転操作によりAUTOとISO3200との中間部分がカメラ本体1の設定用目印1aの位置に達した状態を示す平面図、図11(b)は図11(a)のG−G線断面図である。図11(c)は、図11(a)の状態でのISOダイアル17の一部を破断した斜視図である。
【0049】
図11の状態では、クリック用凹部13から離脱したボール14が規制部材19の先端平面上に位置して規制部材19が化粧板22側に当接した状態を維持している。従って、ボール14は、クリック用凹部13に係合していないため、ISOダイアル17は停止しにくい状態となっている。この状態で、ISOダイアル17を図11(a)の反時計回り方向に回転操作すると、図12に示す状態となる。
【0050】
図12(a)はISOダイアル17の回転操作によりISO3200の設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aの位置に一致した状態を示す平面図、図12(b)は図12(a)のH−H線断面図である。図12(c)は、図12(a)の状態でのISOダイアル17の一部を破断した斜視図である。
【0051】
図12の状態では、ISOダイアル17のISO3200の設定値表示に対応するクリック用凹部13にバネ15により付勢されたボール14が係合している。このクリック用凹部13は、ダイアルベース18の傾斜面と規制部材19の規制面16とで形成されている。規制面16はISOダイアル9の回転操作方向に対して、垂直な面となっている。従って、ISOダイアル17は、ISO3200の設定値表示がカメラ本体1の設定用目印1aに一致する位置で停止しやすくなっている。
【0052】
そして、図12の状態において、ISOダイアル17を図12(a)の反時計回り方向に回転操作した場合は、傾斜面に押されるボール14に対してバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わり、ボール14がクリック用凹部13から離脱する。
【0053】
一方、ISOダイアル17を図12(a)の時計回り方向(設定値表示をISO3200からAUTOに変更する方向)に回転操作した場合は、規制部材19の規制面16によりボール14に対してバネ15の付勢方向と反対方向の力が加わらない。また、規制部材19は、ボール14からバネ15の付勢力を受けず、ストッパ23に当接した状態となるため、ボール14は、クリック用凹部13から離脱することができなくなる。このため、ISOダイアル17は、設定値表示をISO3200からAUTOに変更する方向には回転することができない。
【0054】
なお、図12の状態では、規制部材19の高さがボール14の中心、或いはボール14の中心を越える高さなるように、ストッパ23の位置を設定することが好ましい。また、規制部材19をダイアルベース18より摩擦係数が高い材質とすることで、ボール14と規制部材19との摩擦力が大きくなるため、より高い効果でボール14がクリック用凹部13から外れることを防ぐことができる。その他の構成、及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0055】
なお、本発明の構成は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 デジタルカメラ
9,17 ISOダイアル
13 クリック用凹部
14 ボール
15 バネ
16 規制面
19 規制部材
20 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作可能とされ、回転操作方向に複数のクリック用凹部を有する操作部材と、
前記クリック用凹部に係合すると係合部材と、
前記係合部材を前記クリック用凹部に向けて付勢する第1付勢部材と、を有し、
前記操作部材を回転操作することで、前記係合部材が前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記クリック用凹部から離脱し、離脱した前記係合部材が互いに隣り合う前記クリック用凹部の間を乗り越えて隣のクリック用凹部に前記第1付勢部材の付勢力により係合する回転操作機構を備える電子機器であって、
複数の前記クリック用凹部の少なくとも一つの前記クリック用凹部における前記操作部材の回転操作方向に互いに対向する各面のうちの一方の面に、前記操作部材の一方向のみの回転操作を規制する規制面を形成したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記規制面、及び前記規制面を有する前記クリック用凹部の前記規制面の側に配置される隣の前記クリック用凹部の前記操作部材の回転操作方向に互いに対向する各面のうちの前記規制面の側の面を前記操作部材と別体の規制部材に形成し、
前記規制部材は、第2付勢部材により、前記第1付勢部材の付勢方向と反対方向に付勢され、前記第2付勢部材の付勢力は、前記第1付勢部材の付勢力よりも弱く設定されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記係合部材がボールであり、前記規制面の高さは、前記ボールの中心、或いは前記ボールの中心を越える高さとされている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−72941(P2013−72941A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210602(P2011−210602)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】