説明

電子機能カード

【課題】 内部にメモリチップなどが収納された薄型の電子機能カードであって、カードコネクタに装着されたときに、確実に保持されやすい構造のケースを有する電子機能カードを提供する。
【解決手段】 第1のカードC1のケース1は中心線O−Oを挟んで左右対称な長方形状である。右側部1eと左側部1fでは、表面1aから厚みの途中まで窪んで形成された案内識別溝6,6が形成されており、その後方に、表面1aから厚みの途中まで窪んで形成された中間凹部8,8が形成されている。前記案内識別溝6,6の後部には傾斜部6b,6bが形成されている。この第1のカードC1がカードコネクタに装着されるときに、板ばねなどで形成された保持部が、案内識別溝6内を通り、傾斜部6bでスムースに変形させられてその後方の中間凹部8に嵌合させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の小型で薄型のケース内にメモリチップなどの電子回路が収納された電子機能カードに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献に記載のように、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、またはパーソナルコンピュータなどには、メモリカードと称される小型で薄型の電子機能カードが装着されて使用される。この電子機能カードは、合成樹脂材料で形成された小型で薄型のケース(ハウジングと称されることもある)内に、メモリチップや、メモリコントローラなどとして機能するICチップなどが収納されている。そして、ケースの表面に、内部の電子回路に導通する複数の外部接続部が設けられている。
【0003】
この種の電子機能カードは、カードコネクタに装着されるときに前方に向く部分でその幅寸法が小さくなるように、右側部または左側部に欠損部が形成された形状が一般的である。ケースの側部には、カードコネクタに挿入されたときの案内となる案内溝および薄肉部が形成され、また、カードコネクタ内に装着されたときに、板ばねなどで形成された保持部が嵌合するための保持用凹部が形成されている。前記保持用凹部と保持部とが嵌合することにより、カードがカードコネクタ内で容易に離脱しないように保持される。
【特許文献1】特開2002−216906号公報
【特許文献2】特開2003−208947号公報
【特許文献3】特開2007−165229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献に記載されているような従来の電子機能カードには、以下に列記する問題点がある。
【0005】
(1)前述のように、この種のカードの側部には板ばねなどで形成された保持部を嵌合させる保持用凹部が形成されている。しかし、ケースは薄型であるため、ケースの側部に形成された保持用凹部の前方に、前記保持部を保持用凹部に向けて導く案内部を設けることは難しい。そのため、カードをカードコネクタ内に挿入するときに、カードコネクタの内部の板ばねで形成された保持部が、カードの側部に設けられた保持用凹部に確実に嵌合できないことも予測され、この場合、カードがカードコネクタ内に不完全に装着された状態で、制御部からカードの内部回路にアクセスしてしまう可能性がある。
【0006】
(2)前記特許文献3などに記載されているカードでは、その側部に前記保持用凹部が形成されており、この保持用凹部の前方に、カードをカードコネクタ内に導くための案内用の溝が形成されている。そのため、カードがカードコネクタに装着されるときに、保持部が前記案内用の溝の内部を通過し、カードの側部に乗り上がってから前記保持用凹部に嵌合することになる。そのため、カードを挿入するときに、保持部が前記案内用の溝から抜け出るための抵抗力が大きくなり、カードの挿入時の抵抗力が過大となる欠点がある。
【0007】
(3)前記従来の電子機能カードは、いずれも前方の寸法が小さくなるように、右側部または左側部に欠損部が形成されている。そのため、保持用凹部や案内用の溝を、欠損部を有する側部に配置しずらく、欠損部を有しない側部にこれら機能を集中して配置することが必要となって、カードの設計の自由度を阻害しやすい。
【0008】
(4)従来のように、カードの先部の幅寸法が小さくなった形状では、欠損部を設ける分だけケースの内部のスペースを狭めることになり、ケースの内部にメモリチップやICチップなどを高い集積率で配置することが難しい。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、カードコネクタに装着するときに、板ばねなどで形成された保持部を中間凹部へ導いて、中間凹部に確実に嵌合させることが可能であり、しかもカードをカードコネクタに装着する際の抵抗力も小さい電子機能カードを提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、全体が取り扱いやすい形状であり、ケースの内部の回路の集積度を高めることも可能な電子機能カードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ケースと、前記ケースの内部に収納されている電子回路と、前記電子回路に導通して前記ケースの表面に現れている複数の外部接続部とが設けられた電子機能カードにおいて、
前記ケースは、厚み方向に対向する第1の面および第2の面と、カードコネクタへの挿入方向に向けられる前端部と、これと逆側の後端部と、前記挿入方向に沿って延びる右側部と左側部とを有し、前記外部接続部は、前記第1の面と前記第2の面の少なくとも一方の表面に設けられており、
前記右側部と前記左側部の少なくとも一方には、前記第1の面から前記ケースの厚みの途中まで窪んで形成されて前記前端部から後方へ向けて延びる案内溝と、前記案内溝よりも後方に形成されて前記ケースを保持するために使用される中間凹部とが設けられており、
前記案内溝の後部には、前記後端部に向かうにしたがって、前記案内溝の幅寸法W1と深さ寸法t1の少なくとも一方が徐々に小さくなる傾斜部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の電子機能カードは、ケースの右側部と左側部の少なくとも一方において、板ばねなどで形成された保持部を嵌合させる中間凹部が形成されている。そして、この中間凹部よりも前方には、ケースをカードコネクタ内に導き、またケースの誤った向きでの挿入を防止するための案内溝が形成され、この案内溝の後方に傾斜部が形成されている。カードがカードコネクタ内に挿入されるときに、前記保持部が案内溝で導かれ、その後方の傾斜部でスムースに変形させられて中間凹部に至るようになる。そのため、保持部を中間凹部との嵌合位置に確実に導くことができ、保持部と中間凹部との嵌合が不十分になるなどの装着不良を防止しやすい。特に、案内溝はケースの第1の面から厚みの途中まで窪むように形成されているため、保持部は、案内溝の下の薄肉部の上に乗って摺動するように導かれて中間凹部に至るため、保持部を中間凹部に確実に導けるようになる。
【0013】
また、案内溝内に導かれる保持部は、傾斜部によって案内溝から外れるように導かれるため、保持部が案内溝から外れる際の抵抗力を低減でき、カードをカードコネクタ内に軽い力で押し込んで、確実に保持させることが可能である。
【0014】
本発明は、前記中間凹部は、前記第1の面から前記ケースの厚みの途中まで窪んで形成されていることが好ましい。
【0015】
案内溝と中間凹部が同じ第1の面から窪むように形成されていると、案内溝内を移動して傾斜部を摺動した保持部が、案内溝と同じ高さ位置にある中間凹部内に確実に導かれるようになる。
【0016】
この場合に、本発明では、第1の面からの中間凹部の深さ寸法t3が、第1の面からの前記案内溝の深さ寸法t1よりも大きいことが好ましい。
【0017】
中間凹部の深さ寸法が案内溝の深さ寸法よりも大きいと、カードの挿入に伴なって、案内溝の内部を移動して案内されてきた保持部が、中間凹部の内部に確実に嵌り込むようになり、保持部と中間凹部との嵌合不良を防止しやすい。
【0018】
また、本発明は、前記案内溝と前記中間凹部は、前記右側部と前記左側部の双方に設けられている形状であることが好ましい。
【0019】
すなわち、本発明は、ケースを第1の面または第2の面を手前にして示したときに、ケースは、前記挿入方向に延びる中心線O−Oを挟んで左右対称形状である。そして、前記右側部と前記左側部は、前後方向のほぼ全長に渡って平行で、前記前端部と前記後端部も、左右方向のほぼ全長に渡って平行であり、ケースの平面形状は長方形である。
【0020】
このように、ケースが中心線O−Oを介して左右対称であり、長方形であると、両側部にそれぞれ設けられた前記案内溝を使用して、カードをカードコネクタ内に導きやすくなり、カードがカードコネクタ内に傾いて保持されるなどの装着不良を防止しやすい。また、ケースの形状が長方形であると、カードコネクタ内で安定して保持されやすい。
【0021】
さらに、ケースの内部のスペースを有効に利用でき、メモリチップやICチップなどの各種電子回路を、ケース内で集積度を高めて実装させることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電子機能カードは、カードコネクタに装着するときに、板ばねなどで形成された保持部を中間凹部に確実に嵌合させることができ、カードコネクタ内でのカードの保持を安定させることができる。またカードをカードコネクタ内に装着するときの抵抗力も小さくなる。
【0023】
また、ケースを左右対称形状とすることにより、カードをカードコネクタ内で安定して保持させることができ、またケースの内部のスペースを有効に使用して、回路の集積度を高めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1はカードリーダ20の外観を示す斜視図、図2と図3は蓋体を外したカードリーダ20を示す斜視図である。図4は、カードが装着されていないカードリーダ20を前方から見た正面図である。図5は蓋体を外したカードリーダ20の平面図、図6と図7は第1のカードが装着される状態をカードリーダ20の蓋体を外して示す平面図、図8は第2のカードが装着された状態を示す平面図、図9は第3のカードが装着された状態を示す平面図である。図10は第1のカードと第2のカードとを識別する識別検知機構70の構造を示す部分斜視図、図11(A)(B)は前記識別検知機構70の動作を示す拡大側面図である。
【0025】
図12以下には、前記カードリーダ20に装着されるカードが示されている。図12は第1のカードC1の平面図、図13(A)は第1のカードC1の左側面図、図14は第1のカードC1を斜め下側から示す斜視図である。図15は第2のカードC2の平面図である。
【0026】
(第1のカードの形状)
図12ないし図14に示される第1のカードC1は、いわゆるマルチメディアカードなどのメモリデバイスとして使用されるものである。第1のカードC1は、プラスチック製のケース1を有しており、このケース1内に、フラッシュメモリなどのメモリチップや、メモリコントローラとして機能するICチップなどが収納されている。
【0027】
図13(A)に示すように、ケース1は、第1の面である表面1aと第2の面である裏面1bを有している。表面1aと裏面1bは互いに平行な平面であり、表面1aと裏面1bの間隔が第1のカードC1の厚み寸法Tである。図14に示すように、裏面1bの前方には、複数個(13個)の外部接続部5が露出している。外部接続部5の表面はケース1の裏面1bとほぼ同一面である。
【0028】
ここで、「表面」と「裏面」とは外部接続部5を有する面と有しない面を識別するための便宜上の名称であり、カードリーダ20に対し、表面1aを上向きにして装着してもよいし、裏面1bを上向きにして装着してもよい。
【0029】
図12ないし図14に示すように、ケース1は前端部1cと、後端部1dを有している。また右側部1eと左側部1fを有している。
【0030】
図13(A)に示すように、前端部1cは、表面1aと垂直な平面であり、表面1aと裏面1bとの角部には前方傾斜面2が形成されている。後端部1dは、表面1aおよび裏面1bに垂直な平面である。右側部1eと左側部1fは、表面1aおよび裏面1bと垂直な平面である。図12に示すように、前端部1cと右側部1eとの境界部および前端部1cと左側部1fとの境界部、すなわち前端部1cの左右両側部には、円筒面の一部である前方コーナー曲面3,3が形成されている。後端部1dと右側部1eとの境界部および後端部1dと左側部1fとの境界部、すなわち後端部1dの左右両側部にも、円筒面の一部である後方コーナー曲面4,4が形成されている。
【0031】
図12に示すように、ケース11を表面1a側から見た平面図では、ケース1の形状は前後に延びる中心線O−Oを介して左右に対称の形状である。
【0032】
ケース1の前方部分では、右側部1eと左側部1fから中心線O−Oに向けて窪む案内溝である案内識別溝6,6が形成されている。案内識別溝6,6は、右側部1eおよび左側部1fと平行で且つ右側部1eおよび左側部1fから中心線O−Oに向けて距離W1だけ内側に位置する内側面6a,6aと、裏面1bと平行な内底面6c,6cとを有している。そして、右側の案内識別溝6の後端部と右側部1eとの間、および左側の案内識別溝6の後端部と左側部1fとの間には、それぞれ傾斜部6b,6bが形成されている。傾斜部6b,6bは、後方に向かうにしたがって中心線O−Oから徐々に離れる面であり、傾斜部6b,6bは平面または曲率を有する曲面である。
【0033】
この傾斜部6b,6bが案内識別溝6,6の後端部に位置する段差部であり、この段差部がカードコネクタ20に設けられた識別検知機構70を動作させる識別部として機能する。
【0034】
図13(A)に示すように、案内識別溝6,6は、ケース1の表面1aから裏面1bに向けて窪んでいる。ケース1の表面1aから案内識別溝6の内底面6cまでの距離、すなわち案内識別溝6,6の表面1aから裏面1bに向けた深さ寸法t1は、第1のカードC1の全体の厚み寸法Tのほぼ1/2である。また、前記案内識別溝6,6が表面1aから窪んで形成された結果、それよりも裏面側には、裏面1bと前記内底面6c,6cとで挟まれた部分である薄肉部7,7が形成されている。この薄肉部7,7の厚さ寸法t2も、第1のカードC1の全体の厚み寸法Tのほぼ1/2である。
【0035】
案内識別溝6,6は、前端部1cの左右両側部にて前方に開放されている。よって、図14に示すように、前端部1cの厚さ寸法は、その中央のほとんどの部分がTであるが、両側部においては、厚さ寸法はt2である。図12に示すように、案内識別溝6,6の前後の長さ寸法L1は、ケース1の前端部1cから、傾斜部6b,6bの後端部までの距離である。
【0036】
ケース1の右側部1eと左側部1fでは、案内識別溝6,6の後端部よりも後方へ距離L2だけ空けた位置に、中間凹部8,8が形成されている。中間凹部8,8の前後方向の長さ寸法L3は、前記案内識別溝6,6の前後方向の長さ寸法L1よりも短い。
【0037】
中間凹部8,8は、右側部1eおよび左側部1fよりも中心線O−O側に位置し且つ右側部1eおよび左側部1fと平行な内側端8a,8aを有している。右側部1eから内側端8aまでの幅寸法ならびに左側部1fから前内端8bまでの幅寸法W2は、前記案内識別溝6,6の幅寸法W1とほぼ同じである。
【0038】
中間凹部8,8は前内端8bと後内端8cを有しており、前内端8bと後内端8cとの間の前後の間隔が、中間凹部8,8の長さ寸法L3である。
【0039】
図13(A)と図14に示すように、中間凹部8,8は内底端8d,8dを有しており、この内底端8d,8dは、裏面1bと平行である。表面1aから内底端8d,8dまでの寸法が、中間凹部8,8の深さ寸法t3であり、この深さ寸法t3は、前記案内識別溝6の深さ寸法t1よりも大きい。
【0040】
この第1のカードC1がカードリーダ20に装着される際に、案内識別溝6内を通過した保持部53(図2と図5参照)が中間凹部8に嵌合することで、第1のカードC1がカードリーダ20内のスライダ41に保持される。
【0041】
図13(A)に示すように、案内識別溝6,6および中間凹部8,8が、共に表面1aから裏面1bに向けて厚さ寸法Tの途中まで窪む形状あるため、案内識別溝6,6内を通過した保持部53を、その直後に中間凹部8,8に嵌合させることができる。しかも、案内識別溝6,6の後端部に傾斜部6b,6bが形成されているため、保持部53は傾斜部6b,6bに導かれてスムースに中間凹部8,8内に嵌合する。
【0042】
さらに、図13(A)に示すように、中間凹部8,8の深さ寸法t3は、案内識別溝6,6の深さ寸法t1よりも大きいため、案内識別溝6,6内を通過した保持部53が、中間凹部8,8に入り込みやすくなる。そのため、保持部53を中間凹部8,8に確実に嵌合させて、第1のカードC1をカードリーダ20内のスライダ41に位置決めすることができる。
【0043】
図12に示すように、ケース1の後端部1dよりも少し内側には、表面1aから窪む摘み凹部9が形成されている。図1に示すように、第1のカードC1がカードリーダ20に装着されると、前記摘み凹部9を有する後端部分が、カードリーダ20から突出する。この摘み凹部9に指の爪を掛けるなどして、第1のカードC1をカードリーダ20から引き出すことができる。
【0044】
(第2のカードの形状)
図15は、第2のカードC2を示す図12と同じ平面図である。
【0045】
第2のカードC2はケース11を有しており、このケース11内に、メモリチップやその他のICチップなどが収納されている。
【0046】
第2のカードC2のケース11に形成された案内識別溝16は、第1のカードC1の案内識別溝6よりも長いが、これ以外の形状について、第1のカードC1と第2のカードC2は、全てにおいて同じである。すなわち、第2のカードC2のケース11の厚み寸法Tと幅寸法W0および長さ寸法は、第1のカードC1のケース1と同じである。第2のカードC2のケース11に形成されている中間凹部8,8の形状と寸法および位置は、第1のカードC1のケース1と同じである。その他、図15では、第1のカードC1のケース1と同じ部分には同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0047】
図15に示す第2のカードC2では、前方の左右両側に案内識別溝16,16が形成されている。この案内識別溝16,16には、中心線O−Oに近づく位置に内側面16aが形成されている。内側面16aの位置、すなわち案内識別溝16,16の幅寸法W1は、図12に示すケース1の案内識別溝6,6の幅寸法W1と同じである。またケース11の表面1aから、内底面16cまでの寸法、すなわち案内識別溝16,16の深さ寸法は、図13(A)に示すケース1の案内識別溝6,6の深さ寸法t1と同じである。第2のカードC2のケース11には、案内識別溝6,6よりも裏面側に薄肉部17,17が設けられているが、この薄肉部17,17の幅寸法および厚み寸法も、第1のカードC1の薄肉部7,7と同じである。
【0048】
ただし、図15に示すケース11の案内識別溝16,16および薄肉部17,17の長さ寸法L11,すなわち前端部1cから傾斜部16bの後端までの距離L11は、図12に示すケース1の案内識別溝6,6および薄肉部7,7の長さ寸法L1よりも長い。すなわち、識別部として機能する段差部である傾斜部16b,16bは、第1のカードC1の識別部である傾斜部6b,6bよりも手前側((b)側)に位置している。
【0049】
第2のカードC2のケース11に形成されている中間凹部8,8の長さ寸法L3は、ケース1の中間凹部8,8の長さ寸法L3と同じである。また、図15に示す長さ寸法L11+L12は、図12に示す長さ寸法L1+L2と同じである。つまり、図15に示すケース11における前端部1cから中間凹部8,8の前内端8b,8bまでの距離は、図12に示すケース1の前記距離と同じである。
【0050】
第2のカードC2のケース11の裏面1bに現れている外部接続部の数および位置ならびに形状は、図14に示す第1のカードC1のケース1の裏面1bに現れている外部接続部5と全く同じである。
【0051】
図1以下に示すカードリーダ20には、第1のカードC1と第2のカードC2が同じようにして装着される。図5に示すように、カードリーダ20には、第1のカードC1の外部接続部5と、第2のカードC2の外部接続部の双方に共通に接続される第1の接続端子55が設けられている。
【0052】
ただし、第1のカードC1と第2のカードC2では、案内識別溝6,16および薄肉部7,17の長さ寸法L1,L11が相違しているため、カードリーダ20ではこの相違を検知することで、いずれのカードが装着されたかを認識できる。
【0053】
第1のカードC1と第2のカードC2の仕様の違いは、例えば、駆動電圧の違い、すなわち、電源用の外部接続部を介してケース1,11内の回路に供給すべき電圧の相違である。または、前記仕様の相違は、ケース1,11の内部に収納されているメモリチップのメモリ容量の違いである。あるいは、第1のカードC1と第2のカードC2のいずれか一方は、容量の大きいメモリチップを有して、主にデータの記憶に使用され、他方は、所定のプログラムを内蔵した読み取り専用メモリが内蔵されて、制御プログラムを供給する用途として使用される。
【0054】
図12と図15に示すように、第1のカードC1のケース1と第2のカードC2のケース11は、いずれも中心線O−Oに対して左右対称形状であり、全体の平面形状が長方形である。そのため、ケース1,11の内部のスペースを有効的に広く使用することができ、小型で且つ薄型でありながら、内部のICチップやその他の回路を集積して配置することが可能である。
【0055】
しかも、案内識別溝6,16と、中間凹部8が、ケース1,11の表面1a側からのみ窪んでいるため、ケースの表裏を見分けやすい。また、案内識別溝6,16が、左右両側部1e,1fにおいて、前方の領域に形成されているため、ケースの前後も区別しやすい。そのため、カードリーダ20に向けて誤った向きで挿入されるのを防止しやすい。
【0056】
(第3のカードの形状)
図9に示すように、カードリーダ20には、第1のカードC1と第2のカードC2の他に第3のカードC3が装着可能である。第3のカードC3は、全体の幅寸法W3が、第1のカードC1ならびに第2のカードC2の幅寸法W0よりも小さい。第3のカードC3は、前方部分の右側に欠損部17を有しており、前方部分の幅寸法W4が全体の幅寸法W3よりも小さくなっている。また、右側部では、前記欠損部17よりも手前側((b)側)に、ケースの上下に貫通する凹部18が形成されている。
【0057】
第3のカードC3の厚み寸法は、第1のカードC1ならびに第2のカードC2の厚み寸法Tよりも小さい。この第3のカードC3は、例えば、「microSDカード」と称されているものと同じ形状である。
【0058】
図5に示すように、カードリーダ20には、第3のカードC3の外部接続部と接触する第2の接続端子58が、第1のカードC1ならびに第2のカードC2の外部接続部が接触する前記第1の接続端子55とは別個に設けられている。
【0059】
(カードリーダの構造)
次に、前記各種カードが装着されるカードリーダ20の構造を説明する。
【0060】
図1および図4に示すように、カードリーダ20はケース21を有している。ケース21は、合成樹脂製のケース本体22と、金属板で形成されてケース本体22の上方に被せられた蓋体23とで構成されている。
【0061】
図2ないし図4に示すように、ケース本体22は枠体形状である。ケース本体22は、前壁部24、後壁部25、右壁部26、左壁部27および底壁部28が一体に形成されている。前壁部24の上面24a、後壁部25の上面25a、右壁部26の上面26aならびに左壁部27の上面27aは、互いに同一面である。図1と図4に示すように、蓋体23の天井板23aは、ケース本体22の前記各上面24a,25a,26a,27aに密着するように設置されている。蓋体23には、後側板23bと右側板23cおよび左側板23dが設けられ、これらは天井板23aから直角に折り曲げられている。後側板23bは、ケース本体22の後壁部25の外面に設置され、右側板23cと左側板23dは、それぞれケース本体22の右壁部26の外面と左壁部27の外面に設置されている。
【0062】
図4に示すように、ケース21の厚さ寸法は、ケース本体22の底壁部28の下面28aから、蓋体23の天井板23aの上面までの高さ寸法で決められている。また、カードを案内して収納する収納領域の高さ寸法Taは、ケース本体22の底壁部28の上面28bから、蓋体23の天井板23aの下面までの高さ寸法で決められる。この高さ寸法Taは、第1のカードC1ならびに第2のカードC2の全体の厚み寸法Tとほぼ同じか、または厚み寸法Tよりもわずかに大きい寸法である。
【0063】
図2および図4に示すように、ケース本体22の左壁部27の内面が案内基準面27bであり、第1のカードC1と第2のカードC2は、その左側部1fが前記案内基準面27bを摺動しながら、ケース21の奥側((a)側)へ向けて挿入される。ケース本体22の前壁部24には、右案内面24bが形成されており、第1のカードC1と第2のカードC2の右側部1eは、右案内面24bに沿って案内される。
【0064】
左壁部27の内面の案内基準面27bと、前壁部24の右案内面24bとの間隔が、収納領域の幅寸法Waであり、この幅寸法Waは、第1のカードC1と第2のカードC2の幅寸法W0とほぼ同じか、またはわずかに大きい寸法である。
【0065】
図4に示すように、ケース21の前端には、Ta×Waの開口面積の挿入口29が開口しており、第1のカードC1と第2のカードC2および第3のカードC3は、この挿入口29からケース21の内部に向けて挿入される。
【0066】
図2と図4に示すように、ケース本体22の内部では、左壁部27と一体に形成されて、前記収納領域内に延びる上部案内壁31が設けられている。図4に示すように、底壁部28の上面28bから上部案内壁31の下面までの高さ寸法Tbは、図13(A)に示す第1のカードC1の薄肉部7の厚さ寸法t2とほぼ同じか、またはそれよりもやや広く形成されている。したがって、図2に示すように、第1のカードC1が、前端部1cを前方に向け、表面1aを上に向けた正常な向きで挿入されると、薄肉部7が、上部案内壁31の下側に入り込み、第1のカードC1をケース21の奥まで装着することができる。ただし、図3に示すように、第1のカードC1が、その後端部1dを前方に向けて挿入されたり、表裏逆向きに挿入されると、ケース本体22が、上部案内壁31に当たって、第1のカードC1がケース21の奥部まで挿入されなくなる。これは、第2のカードC2に関しても同じである。
【0067】
図4と図5に示すように、前記上部案内壁31よりも手前側には、規制昇降部材32が設けられている。図4に示すように、規制昇降部材32は、底壁部28に形成された切欠き部から上方へ突出し、図示しないばね部材により、規制昇降部材32は突出姿勢に向けて付勢されている。また、規制昇降部材32の挿入口29側に向く面は、傾斜面32aとなっている。この傾斜面32aは、ケース21の奥側((a)側)に向かうにしたがって、底壁部28の上面28bから徐々に高くなる形状である。
【0068】
図5に示すように、規制昇降部材32の右側面とスライダ41の内側面41aまでの幅寸法はWbである。この幅寸法Wbは、図12と図15に示す第1のカードC1ならびに第2のカードC2の幅寸法W0よりも狭く、図9に示す第3のカードC3の全体の幅寸法W3とほぼ同じか、またはそれよりもわずかに広く設定されている。
【0069】
したがって、図9に示すように、挿入口29から第3のカードC3が挿入されると、この第3のカードC3は、規制昇降部材32とスライダ41の内側面41aとの間を通ってケース21の奥へ入り込むことができる。また、第1のカードC1または第2のカードC2が挿入口29から挿入されると、このカードの前方傾斜面2および裏面1bが、規制昇降部材32の傾斜面32aに乗り上がり、そのときの力によって、規制昇降部材32が押し下げられる。その後は、押し下げられた規制昇降部材32の上を第1のカードC1または第2のカードC2が通過して、ケース21の奥まで移動する。
【0070】
図2と図5などに示すように、ケース本体22の右側では、底壁部28の上面28bに前後方向((a)−(b)方向)に延びるガイド部34が形成されている。このガイド部34は、前記上面28bから隆起形成されたレールである。ケース本体22の右壁部26の内側にはスライダ41が設けられており、このスライダ41が、前記ガイド部34に沿って、前後方向へ直線的に往復移動自在に支持されている。
【0071】
スライダ41の左側部には、内側面41aが形成されている。内側面41aは、前記前壁部24に形成された右案内面24bと同じ位置にあり、図5に示すように、左壁部27に形成された案内基準面27bと前記内側面41aまでの幅寸法はWaである。前述の右案内面24bと同様に、案内基準面27bと内側面41aとの間で、第1のカードC1と第2のカードC2を案内することができる。
【0072】
スライダ41とケース本体22との間には、コイルばねなどの付勢部材が設けられており、スライダ41は、前壁部24に向けて手前側((b)側)へ付勢されている。
【0073】
スライダ41とケース21との間には、スライダ41を奥側((a)側)でロックするためのロック機構35が設けられている。ロック機構35は、スライダ41の上面に形成された溝カム42と、ケース21に設けられたロックピン36とで構成されている。
【0074】
ロックピン36は、基端部36aと先端部36bが直角に折り曲げられている。図5ないし図9に示すように、ロックピン36の基端部36aは、ケース本体22の前壁部24の上部に形成された保持凹部24c内に回動自在に支持されている。ロックピン36の先端部36bは、溝カム42内に摺動自在に挿入されている。図1に示すように、金属板で形成された蓋体23の天井板23aには、右手前側にロック板ばね37が一体に形成されている。このロック板ばね37は、天井板23aの一部を切り抜いて形成された片持ち支持ばねである。前記ロックピン36はこのロック板ばね37によって押圧され、先端部36bが溝カム42の溝底部に押し付けられている。
【0075】
図5ないし図9に示すように、溝カム42は、奥側((a)側)の端部に位置するロック解除部42aと、このロック解除部42aよりも手前側((b)側)に位置するロック部42bを有している。ロック解除部42aとロック部42bとの間には、左側に往路溝42cが形成され、右側に復路溝42dが形成されている。溝カム42の内部では、ロック解除部42a,往路溝42c,ロック部42b,復路溝42dの各部の境界部に段差が形成されており、ロックピン36の先端部36bは、ロック解除部42a→往路溝42c→ロック部42b→復路溝42d→ロック解除部42aの順でのみ摺動でき、その逆の行程を辿ることができない。
【0076】
図5では、スライダ41が付勢部材によって手前側((b)側)へ移動させられて、ケース本体22の前壁部24に突き当てられている。このとき、ロックピン36の先端部36bは、溝カム42のロック解除部42a内に位置している。第1のカードC1または第2のカードC2あるいは第3のカードC3が挿入口29から挿入され、カードと共にスライダ41が奥側((a)側)へ移動すると、図6に示すように、ロックピン36の先端部36bが、溝カム42の往路溝42c内を通過し、その後、図7に示すように、先端部36bが溝カム42のロック部42bに至り、スライダ41は手前側((b)側)へ戻らないようにロックされる。
【0077】
その後、カードを押してスライダ41を短い距離だけ奥側((a)側)へ移動させると、ロックピン36の先端部36bが、溝カム42のロック部42bから抜け出て、復路溝42dに案内されて、スライダ41のロックが解除される。よって、スライダ41は付勢部材の力で、図5に示す初期位置に復帰し、この間に、ロックピン36の先端部36bが、復路溝42dからロック解除部42aに戻る。
【0078】
図2と図5に示すように、スライダ41には、内側面41aよりも奥側((a)側)の上面に窪み部41bが形成されている。この窪み部41bの手前側には上方に突出する支持ピン43が、合成樹脂材料によってスライダ41と一体に形成されており、この支持ピン43に識別アーム44が回動自在に支持されている。
【0079】
図5に示すように、識別アーム44の基部には、左方向へ一体に突出する識別凸部44aが設けられている。図4に示すように、識別凸部44aの下面と、ケース本体22の底壁部28の上面28bとの間隔の寸法はTbであり、これは、上面28bから上部案内壁31の下面までの高さ寸法と同じである。図4に示すように、識別アーム44には、識別凸部44aの下側に摺動面44bが形成されている。図5に示すように、識別アーム44が反時計方向へ回動していると、図4に示すように、挿入口29の奥側に前記識別凹部44aと共に前記摺動面44bが対向している。
【0080】
図2と図6に示すように、第1のカードC1が挿入口29へ正常な向きで挿入されると、第1のカードC1の右側の薄肉部7が、識別凸部44aの下側へ入り込み、また薄肉部7の先端の前方コーナー曲面3が、前記摺動面44bに当接して、第1のカードC1の挿入力で識別アーム44が時計方向へ回動させられる。一方、図9に示すように、第3のカードC3が正常な向きで挿入されると、この第3のカードC3の右前方の欠損部17が、識別アーム44の識別凸部44aと摺動面44bの双方に当たることなく、その左側を通過する。よって、識別アーム44が回動することなく、第3のカードC3は、その左側に装着される。
【0081】
図5に示すように、スライダ41の奥端部には、内側面41aよりも左側に張り出している基準ストッパ部45が一体に形成されている。図4に示すように、基準ストッパ部45の手前側((b)側)に向く面が基準ストッパ面45aである。
【0082】
図5に示すように、スライダ41の奥端部には、前記基準ストッパ部45の右側において左右方向に延びるストッパガイド部46が一体に形成されている。このストッパガイド部46には、可動ストッパ部47が左右方向へ摺動自在に支持されている。可動ストッパ部47の上面には連結ピン47aが一体に形成されている。前記識別アーム44の先部には長穴44cが形成され、前記連結ピン47aが長穴44c内に摺動自在に挿入されている。よって、スライダ41上では、識別アーム44の回動動作に伴なって、可動ストッパ部47が左右方向へ移動する。
【0083】
図5に示すように、スライダ41上では、支持ピン43の外周に回動付勢部材として機能するトーションばね51が装着されており、識別アーム44はトーションばね51によって反時計方向へ付勢されている。図5に示すように、カードが装着されていないときは、識別アーム44が反時計方向に回動し、これに伴なって、可動ストッパ部47が左方向へ移動して基準ストッパ部45に当たっている。
【0084】
可動ストッパ部47の挿入口29に向く面は可動ストッパ面48である。図4に示すように、可動ストッパ面48は、その左側部分が第1のストッパ面48aで、それよりも右側が第2のストッパ面48bである。第1のストッパ面48aは、底壁部28の上面28bから上方へ距離をTbだけ空けた位置に形成されている。また第2のストッパ面48bは、それよりも下側に形成されている。
【0085】
図5に示すように、スライダ41の手前側((b)側)の上面には、保持凹部41cが形成されており、この保持凹部41c内に、保持部材として機能する保持板ばね52が設けられている。保持板ばね52は、板ばね材料として機能する金属板で形成されており、U字状に曲げられて保持凹部41c内に嵌着されている。
【0086】
保持板ばね52の自由端には、保持部53が一体に形成されており、この保持部53が、スライダ41の内側面41aよりも図示左側に突出している。保持部53は、V字状に曲げられており、手前側((b)側)に向く部分が傾斜案内部53aである。傾斜案内部53aは、手前側((b)側)に向かうにしたがって徐々にカードから離れる向きに傾斜している。保持部53は奥側((a)側)に向く部分が係止部53bであり、この係止部53bは、前後方向((a)−(b)方向)に対してほぼ直交する向きに形成されている。
【0087】
図4に示すように、保持部53は、スライダ41の内側面41aから左方向へ突出しているが、ケース本体22の底壁部28の上面28bから、保持部53の下縁までの高さ寸法は、前記Tbとほぼ同じか、またはTbよりも少しだけ広めに設定されている。
【0088】
図3および図5に示すように、ケース本体22の奥側((a)側)には、第1の接続端子55が設けられている。第1の接続端子55は、図14に示した第1のカードC1および第2のカードC2の裏面1bに露出している外部接続部5と同じ数で且つ同じピッチで配列している。ケース本体22の底部奥側には、端子支持板57が設けられ、この端子支持板57に複数の小孔57aが上下に貫通して形成されている。図3に示すように、第1の接続端子55は、上向きに山形に折り曲げられており、それぞれが前記小孔57a内から上方へ突出している。第1の接続端子55は、小孔57a内へ後退できるように弾性変形自在である。
【0089】
それぞれの第1の接続端子55には、第1の外部端子56が一対一の関係で連続して形成されている。図5に示すように、それぞれの第1の外部端子56は、ケース本体22の後壁部25よりも後方へ突出している。第1の接続端子55と第1の外部端子56は、個別に連結されており、表面に金などの低抵抗の貴金属材料がメッキされた導電性の金属板で形成されている。
【0090】
図3と図5に示すように、第1の接続端子55よりも挿入口29側には、第2の接続端子58が設けられている。第2の接続端子58は、図9に示す第3のカードC3の下面に露出する外部接続部と同じ数で且つ同じピッチで配列している。図3に示すように、ケース本体22の底部には可動支持板61が設けられ、この可動支持板61に複数の小孔61aが上下に貫通して形成されている。それぞれの第2の接続端子58は上向きに山形に折り曲げられており、それぞれの第2の接続端子58は、小孔61aから上方へ突出している。
【0091】
可動支持板61は、第2の接続端子58よりも手前側((b)側)に設けられた軸を支点として上下へ回動自在に支持されている。そして、可動支持板61は、第2の接続端子58の弾性力によって上方へ持ち上げられている。
【0092】
第1のカードC1と第2のカードC2が挿入口29から挿入されるときは、第1のカードC1や第2のカードC2の前方傾斜面2が可動支持板61に乗り上がり、第1のカードC1や第2のカードC2の裏面1bによって、可動支持板61が押し下げられる。可動支持板61が押し下げられて下向きに回動するときに、この可動支持板61によって、第2の接続端子58が押し下げられ、それぞれの第2の接続端子58が、可動支持板61の小孔61aの内部に後退する。よって、第1のカードC1や第2のカードC2の裏面1bに設けられた外部接続部5は、第2の接続端子58に当たることなく、この第2の接続端子58の上を通過して奥側へ移動する。
【0093】
一方、図9に示す第3のカードC3が挿入口29から挿入されると、第3のカードC3は、第1のカードC1や第2のカードC2よりも厚み寸法が小さいために、第2の接続端子58と可動支持板61によって持ち上げられて、第3のカードC3は蓋体23の天井板23aの下面に押し付けられる。そして、それぞれの第2の接続端子58が、第3のカードC3の裏面に設けられた外部接続部に導通される。
【0094】
図5に示すように、それぞれの第2の接続端子58には、第2の外部端子59が一体に形成されており、それぞれの第2の外部端子59は、ケース本体22の底部において手前側((b)側)へ突出している。第2の接続端子58と第2の外部端子59は、表面に金などの低抵抗の貴金属材料がメッキされた導電性の金属板で一体に形成されている。
【0095】
(識別検知機構の構造)
図1と図2および図5などに示すように、ケース21の左側には識別検知機構70が設けられている。
【0096】
図2と図5などに示すように、ケース本体22の左壁部27には収納凹部27cが形成されており、この収納凹部27c内に識別検知機構70を構成する検知可動部材71が収納されている。検知可動部材71および識別検知機構70を構成する各部品は、左壁部27の内面である案内基準面27bよりも右側には突出しておらず、識別検知機構70は、カードの挿入を妨げないようカードの収納領域よりも側部の外側で構成されている。
【0097】
図10に拡大して示すように、検知可動部材71には、挿入口29側((b)側)の端部に、支持軸部71aが一体に形成されており、この支持軸部71aが、前記収納凹部27cの内部において左壁部27に形成された支持穴内に回動自在に支持されている。よって、検知可動部材71は、支持軸部71aを支点として時計方向または反時計方向へ回動自在である。
【0098】
検知可動部材71には、保持軸部71bが一体に形成されており、この保持軸部71bの外周に、輪状の保持凹部71cが形成されている。検知可動部材71には、トーションばね72が設けられている。トーションばね72は導電性の金属線で形成され、その表面に金などの低抵抗金属層がメッキされている。トーションばね72の巻き部72aは、保持軸部71bの外周の保持凹部71c内に装着されている。トーションばね72のそれぞれの腕部は、弾性接点72bと弾性接点72cとなっており、弾性接点72bの先端と弾性接点72cの先端では、トーションばね72を形成する線材がV字状に折り曲げられている。
【0099】
ケース本体22では、収納凹部27cの底面27dに、一対の接点73と接点74が設けられている。接点73と接点74は、金属板であり、その表面73a,74aには、金などの低抵抗金属層がメッキで形成されている。図11(A)(B)に示すように、接点73と接点74は、収納凹部27cの底面27dの内部に埋め込まれており、接点73の表面73aと接点74の表面74aは、前記底面27dと同一面に現れている。そのため、接点73,74の表面73a,74aと底面27dとの間にほとんど段差が現れていない。
【0100】
図11(A)(B)に示すように、弾性接点72bは弾性接点73の表面73aに常に接触しており、弾性接点72cは、接点74の表面74aまたは底面27dに接触する。この両弾性接点72bと72cの弾性力により、検知可動部材71に上向きの付勢力が作用しており、検知可動部材71は、支持軸部71aを支点として時計方向へ回動しようとしている。
【0101】
図1と図10に示すように、蓋体23の天井板23aには、左側部に検知板ばね76が設けられている。この検知板ばね76は、天井板23aの一部に切欠き部23eが形成され、この切欠き部23eの内部において、天井板23aを形成する金属板の一部が片持ち板ばねとして切り出されることで、天井板23aと一体に形成されている。
【0102】
検知板ばね76は、手前側((b)側)に基端部76aが位置している。検知板ばね76は、基端部76aから奥方向((a)方向)に向けてほぼ直線的に延びる直線部76bと、この直線部76bと連続する斜め部76cを有している。斜め部76cは、奥側((a)側)に向かうにしたがって徐々に左方向へ向けられている。そして、斜め部76cの先部には、奥方向((a)方向)に向けて直線的に延びる押圧部76dが形成されている。
【0103】
図10に示すように、検知板ばね76の直線部76bの一部と斜め部76cの一部は、収納領域と重なる位置に設けられている。すなわち、第1のカードC1または第2のカードC2が正常な向きで挿入されるときに、直線部76bの一部と斜め部76cの一部が、これらカードの通過領域の上に位置している。検知板ばね76のうちのカードの通過領域の上に重なっている部分が、検知作用部76eである。図11(B)に示すように、検知板ばね76は、ケース本体22の内部に向けてやや下向きに真っ直ぐに延びている。ただし、検知板ばね76は、検知作用部76eの部分で、ケース本体22の内部に向けて斜め下向きに変形させられていてもよい。
【0104】
検知板ばね76の先部の押圧部76dは、第1のカードC1または第2のカードC2の移動領域に重なっておらず、この移動領域よりも左側に外れた位置に延びている。前記検知可動部材71の上面には突曲面部71dが形成されている。検知可動部材71は弾性接点72b,72cで上向きに付勢されているため、前記突曲面部71dは、前記検知板ばね76の押圧部76dの下面に押し付けられている。
【0105】
前述のように、検知可動部材71には、弾性接点72bと弾性接点72cの弾性力が上向きに作用しているが、検知板ばねの押圧部76dが検知可動部材71を下向きに押し下げる弾性力は、前記弾性接点72b,72cが検知可動部材71を上向きに押し上げる力よりも十分に大きい。
【0106】
図11(A)に示すように、第1のカードC1が正常な向きで装着されて正常な装填位置へ移動すると、第1のカードC1の左側の案内識別溝6の後端部の傾斜部6bが、検知板ばね76の検知作用部76eに当接し、検知板ばね76が上向きに持ち上げられる。よって、検知可動部材71は、弾性接点72b,72cの力で時計方向へ回動させられる。このとき、弾性接点72cが接点74の表面74aから外れ、接点73と接点74は非導通状態となる。
【0107】
図11(B)に示すように、第2のカードC2が正常な向きで奥側まで装着されたときには、第2のカードC2の左側の案内識別溝16の後端部の傾斜部16bは、挿入口29側に位置しており、傾斜部16bは検知板ばね76の検知作用部76eの下までは移動しない。よって、検知作用部76eに上向きの力が作用せず、検知板ばね76により、検知可動部材71が下向きに押し下げられている。よって、弾性接点72cが、接点74の表面74a上に移動しており、トーションばね72を介して、接点73と接点74とが導通状態となる。
【0108】
(第1のカードの正常な装着動作)
次に、前記カードリーダ20へのカードの装着動作を説明する。
【0109】
図2と図6および図7は、第1のカードC1が正常な向きで装着されるときの動作を示している。
【0110】
カードが装着されていない状態では、図5に示すように、スライダ41が挿入口29側((b)側)へ移動しており、スライダ41上では、識別アーム44が反時計方向へ回動し、可動ストッパ部47が左側へ移動している。
【0111】
第1のカードC1が、その前端部1cが前方に向けられ、表面1aが上に向けられた正常な姿勢で挿入口29から挿入されると、第1のカードC1のケース1の右側に形成された薄肉部7が、スライダ41の手前側に設けられている保持板ばね52で形成された保持部53の下側を通過する。
【0112】
さらに、右側の薄肉部7が、識別アーム44の識別凸部44aの下側を通過し、図4に示す高さTbの領域内を奥側に向けて移動する。このとき、第1のカードC1の右側の前方コーナー曲面3が、識別アーム44の識別凸部44aの下側に位置する摺動面44bに当たる。第1のカードC1が押し込まれると、前方コーナー曲面3で摺動面44bが押され、図2に示すように、識別アーム44が時計方向へ回動させられ、これに伴なって、スライダ41上の可動ストッパ部47が右方向へ移動させられる。よって、第1のカードC1の右側の薄肉部7の先部は、可動ストッパ部47に形成されているストッパ面48のうちの左側に位置する第1のストッパ面48aの下側を通過してさらに奥側に移動する。
【0113】
一方、第1のカードC1の左側前方の薄肉部7は、図4と図5に示される規制昇降部材32の傾斜面32aを摺動して、規制昇降部材32の上に乗り上がり、規制昇降部材32が押し下げられる。そして、左側の薄肉部7は、図4に示す底壁部28の上面28bと、上部案内壁31との間の間隔Tb内に入り込む。そして、図2に示すように、第1のカードC1の前端部1cが、スライダ41の奥側に設けられた基準ストッパ部45の基準ストッパ面45aに当たる。
【0114】
この間、スライダ41に設けられた保持板ばね52の保持部53は、第1のカードC1の右側の案内識別溝6の内部を通過し、すなわち薄肉部7の上を通過して、案内識別溝6の後方の傾斜部6bに当たる。保持部53は傾斜部6bによって右方向へ押されるため、保持板ばね52が変形して、保持部53がスライダ41の保持凹部41c内に一旦後退する。そして、保持部53は、第1のカードC1の右側部1eを距離L2だけ摺動し、中間凹部8に至ると、保持板ばね52の弾性復帰力により、保持部53が右側の中間凹部8の内部に嵌合する。
【0115】
このとき、保持部53の手前側に向く傾斜案内部53aが、同じ向きに傾斜している傾斜部6bを摺動するため、第1のカードC1を軽い力でケース21内に押し込んで、保持部53を中間凹部8に嵌合させることができる。そして、嵌合後は、保持部53においてカードの挿入方向に対してほぼ直交する向きに形成された係止部53bが、中間凹部8の前内端8bに掛止されるため、第1のカードC1が手前方向((b)方向)へ抜け出にくくなる。
【0116】
図13(A)に示すように、第1のカードC1では、前方に位置する案内識別溝6の深さ寸法t1よりも、中間凹部8の深さ寸法t3の方が深くなっている。そのため、案内識別溝6の内部を通過した保持部53は、中間凹部8の内部に確実に嵌合できるようになる。すなわち、第1のカードC1を挿入口29から挿入するときに、右前方の薄肉部7を、図4に示す保持部53の下側の高さTbの空間の内部に入れることができれば、その後、第1のカードC1を押し込むことにより、保持部53が第1のカードC1の中間凹部8に確実に嵌合できるようになる。よって、保持部53が第1のカードC1の右側部1eに当たったまま、中間凹部8内に入り込めないなどの不十分な装着状態が起きるのを防止しやすい。
【0117】
第1のカードC1の案内識別溝6の後方に傾斜部6bが存在し、また中間凹部8の深さ寸法t3が大きく形成されていることにより、第1のカードC1を挿入したときに、その抵抗力が小さく、保持部53を中間凹部8に確実に嵌合させることができる。よって、第1のカードC1を挿入する際に、保持部53が中間凹部8に嵌合する前の時点で、スライダ41が弾性付勢力に対抗して図2に示す初期位置から(a)方向へ不用意に動き出すような誤動作を防止しやすくなる。
【0118】
保持部53が中間凹部8に嵌合した後に、第1のカードC1を押し込むと、第1のカードC1の前端部1cによって、スライダ41に形成された基準ストッパ面45aが押され、第1のカードC1とスライダ41とが一体となって奥側へ移動する。そして、第1のカードC1が図7に示す装着完了位置に至ると、スライダ41に形成された溝カム42のロック部42bが、ロックピン36の先端部36bに係止されて、スライダ41がその位置でロックされる。
【0119】
このとき、ケース本体22の奥側に設けられた第1の接続端子55のそれぞれが、図14に示すように、第1のカードC1の裏面1bに露出する外部接続部5のそれぞれに弾圧して接続される。
【0120】
第1のカードC1が正常な状態に装着されると、図11(A)に示すように識別検知機構70では、第1のカードC1の左側の案内識別溝6の後方の段差部である傾斜部6bによって天井板23aと一体に形成された検知板ばね76の検知作用部76eが上方へ持ち上げられる。よって、弾性接点72b,72cの弾性力によって、検知可動部材71が時計方向へ回動させられ、弾性接点72cが、接点74の表面74aから外れて、ケース本体22の一部である底面27d上へ移動する。
【0121】
第1のカードC1をカードリーダ20から離脱させるときは、図7に示すように、正常に装着されている状態から第1のカードC1を奥側((a)側)へ押す。第1のカードC1と共にスライダ41が少しだけ奥側へ移動すると、ロックピン36の先端部36bが、溝カム42のロック部42bから外れ、スライダ41が付勢部材の力で手前側((b)側)へ戻される。よって、図2に示すように、スライダ41が初期位置に復帰し、第1のカードC1の後端部が挿入口29から突出させられる。
【0122】
(第2のカードの正常な装着動作)
図8は、カードリーダ20に、第2のカードC2が正常に装着された状態を示している。図7と図8とを比較して明らかなように、第2のカードC2が装着されるときの各部材の動作、すなわち保持板ばね52の保持部53の動作や、識別アーム44と可動ストッパ部47の動作などは、第1のカードC1が装着されるときと全く同じである。
【0123】
相違するのは、図10と図11に示す識別検知機構70の動作のみである。図8に示すように、第2のカードC2は、左右両側部に設けられている案内識別溝16および薄肉部17が長く、第2のカードC2が正常に装着されているとき、案内識別溝16の後端部に位置している識別部である傾斜部16bが、挿入口29に近い側に位置している。図11(B)に示すように、第2のカードC2が正常に装着されたときに、傾斜部16bが、検知板ばね76の検知作用部76eよりも手前側((b)側)に位置しているため、検知板ばね76の押圧部76dによって検知可動部材71が下向きに押さえ付けられたままである。
【0124】
よって、図11(B)に示すように、検知可動部材71が反時計方向へ回動しており、弾性接点72cが接点74の表面74aの上に接触している。したがって、トーションばね72を介して、接点73と接点74とが導通させられている。
【0125】
(第1のカードと第2のカードの識別検知動作)
第1のカードC1が正常に装着されたか、または第2のカードC2が正常に装着されたかの識別動作は以下のようにして行なわれる。
【0126】
図7に示すように、第1のカードC1が正常に装着されると、第1の接続端子55が、第1のカードC1の裏面1bに設けられた外部接続部5に個別に接触する。同様に、図8に示すように、第2のカードC2が正常に装着されると、第1の接続端子55が、第2のカードC2の裏面に設けられた外部接続部5に個別に接触する。
【0127】
カードリーダ20に内蔵されている制御部、あるいは各種電子機器やパーソナルコンピュータなどのようにカードリーダ20が接続されているマザー装置に設けられた制御部では、第1の接続端子55を監視しており、第1の接続端子55が外部接続部5に接触したことを検知したときにいずれかのカードが装着されたことを認識する。例えば、カードに設けられた複数の外部接続部5のうちのいずれかが短絡されている場合には、前記制御部では、短絡している外部接続部5に対応する第1の接続端子55を監視し、第1の接続端子55どうしが短絡したか否かを検知することにより、第1のカードC1または第2のカードC2のいずれかが装着されたと認識することができる。
【0128】
制御部では、図10に示す識別検知機構70の接点73と接点74が導通状態であるか否かも監視している。制御部では、第1の接続端子55どうしの短絡などにより、第1のカードC1または第2のカードC2が装着されたと認識したときに、前記接点73と接点74とが導通しているか否かを確認する。図11(A)に示すように、接点73と接点74が導通していないときは、装着されたのが第1のカードC1であると判断する。図11(B)に示すように、接点73と接点74とが導通状態を維持していれば、装着されたのが第2のカードC2であると判断する。
【0129】
そして、制御部では第1のカードC1と第2のカードC2の仕様に適した制御動作を行う。例えば、第1のカードC1と第2のカードC2とで駆動電圧が相違するときには、各カードごとに異なる電圧を供給する。また、第1のカードC1と第2のカードC2とでメモリ容量が相違するときには、それぞれのカードのメモリ残量の情報を制御部に取り込んで、その後の記録データ量の調整が行なわれる。
【0130】
(第1のカードまたは第2のカードの誤挿入)
図3は、第1のカードC1が、後端部1dを前方に向けて挿入口29から挿入された状態を示している。
【0131】
図4に示すように、識別アーム44の識別凸部44aは、カードの挿入経路上に位置しているため、第1のカードC1の後端部1dは、この識別凸部44aに当たる。そのまま第1のカードC1を押し込むと、識別アーム44が時計方向へ回動し、可動ストッパ部47が右方向へ移動する。ただし、このときも後端部1dが識別凸部44aに当たったままであり、第1のカードC1は、スライダ41に対してそれ以上は相対的に奥側へ進めなくなる。その後、第1のカードC1が押し込まれると、スライダ41が一緒に奥側へ押し込まれるが、第1のカードC1の後端部1dが識別凸部44aに当たったままであるため、第1のカードC1がケース21内に完全に入り込むことはできない。
【0132】
また、第1のカードC1と共にスライダ41が奥側へ押し込まれると、第1のカードC1の後端部1dが、図4に示すように、収納領域の左側に位置する上部案内壁31に当たり、それ以上は、第1のカードC1とスライダ41が奥側へ移動できなくなる。第1のカードC1の後端部1dが上部案内壁31に当たった時点では、ロック機構35において、ロックピン36の先端部36bが、溝カム42のロック部42bに係止される位置までに至っていない。よって、図3の状態で、第1のカードC1が押し込まれてもスライダ41がロックされることはなく、第1のカードC1に与えられている力を除去すると、スライダ41を前方((a)方向)へ復帰させる付勢部材の弾性力により、第1のカードC1が挿入口29に押し戻される。
【0133】
また、第1のカードC1が、前端部1cを前方に向け且つ裏面1bを上向きにして挿入口29から挿入されたときも、図3に示すように、後端部1dを前方へ向けて挿入されたときと同じである。また、この誤挿入に関しては、第2のカードC2においても同じである。
【0134】
(第3のカードの挿入動作)
図9は、カードリーダ20に第3のカードC3が正常に装着された状態を示している。
【0135】
第3のカードC3は、その幅寸法W3が、第1のカードC1ならびに第2のカードC2の幅寸法W0よりも小さい。そのため、第3のカードC3が挿入口29に対して右寄りに偏るようにして挿入されると、第3のカードC3は、規制昇降部材32とスライダ41の内側面41aの間の幅寸法Wbの領域(図5参照)の内部を移動するようにして奥側へ向けて挿入される。
【0136】
第3のカードC3は右側に欠損部17を有しているため、カードの先端が識別アーム44の識別凸部44aに当たることがない。そのため、識別アーム44は反時計方向へ回動したままであり、可動ストッパ部47は左側へ移動したままである。そして、第3のカードC3の前端部が、可動ストッパ部47の第1のストッパ面48aおよび第2のストッパ面48b(図4参照)に当たり、このとき、保持板ばね52の保持部53が、第3のカードC3のケースの右側部を上下に貫通する凹部18に嵌合する。
【0137】
そのまま、第3のカードC3をケース21内に押し込むと、スライダ41が一緒に押し込まれる。このとき、図9に示すように、第3のカードC3の左側部は上部案内壁31に当たることなくケース21の奥側まで挿入される。そして、ロックピン36の先端部36bが、溝カム42のロック部42bに掛止されて、スライダ41がロックされる。
【0138】
このとき、ケース本体22の底部に設けられた第2の接続端子58が、第3のケースC3の下面に設けられた外部接続部に個別に接続される。制御部では、第2の接続端子58の短絡状態などを監視することにより、第3のカードC3が正常に装着されたことを認識する。
【0139】
(第1のカードの変形例)
図13(B)は、第1のカードの変形例Ca1を示す左側面図である。
【0140】
この変形例Ca1は、案内識別溝6Aの後方に設けられた傾斜部6Bが、図13(A)に示す第1のカードC1の傾斜部6bと相違している。
【0141】
第1のカードC1の傾斜部6bは、図12に示すように、後端部1dに向かうにしたがって中心線O−Oから徐々に離れるように傾斜しているが、傾斜面6bは、表面1aに対しては垂直面である。
【0142】
これに対し、変形例Ca1の傾斜部6Bは、第1のカードC1と同様に、後端部1dに向かうにしたがって中心線O−Oから徐々に離れるように傾斜しているが、さらに傾斜部6Bは、表面1aと垂直な面ではなく、後端部1dに向かうにしたがって、表面1aに徐々に接近するように傾斜している。つまり、傾斜部6Bは三次元的に傾斜している。
【0143】
この変形例Ca1は、前記カードリーダ20に装着させたときに、その挿入過程で、保持部53が、傾斜部6Bを摺動し、さらに左側部1eを摺動してから中間凹部8に嵌合できるようになる。
【0144】
さらに、図13(B)において破線で示すように、変形例Ca1は、カードの表面1a側から弾圧する保持部153を有するカードリーダに装着することができる。この場合、変形例Ca1がカードリーダ内に挿入されると、保持部153は案内識別溝6A内を通過して、保持部153が傾斜部6Bを摺動して、カードの表面1aに乗り上り、その後に、保持部153が中間凹部8に嵌合するようになる。
【0145】
上記のように、変形例Ca1は保持部53を有するカードリーダのみならず、図13(B)に示すように、表面1a側から対向する保持部153を有するカードリーダにも装着できる汎用的なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施の形態のカードコネクタを示す斜視図、
【図2】カードコネクタに第1のカードを挿入した状態を、蓋体を外して示す斜視図、
【図3】カードコネクタに第1のカードが誤った向きで装着された状態を、蓋体を外して示す斜視図、
【図4】カードコネクタを挿入口から示す正面図、
【図5】カードが装着されていないカードコネクタを、蓋体を外して示す平面図、
【図6】第1のカードが装着される途中のカードコネクタを、蓋体を外して示す平面図、
【図7】第1のカードの装着が完了したカードコネクタを、蓋体を外して示す平面図、
【図8】第2のカードの装着が完了したカードコネクタを、蓋体を外して示す平面図、
【図9】第3のカードの装着が完了したカードコネクタを、蓋体を外して示す平面図、
【図10】識別検知機構の構造を示す部分斜視図、
【図11】(A)(B)は、識別検知機構の動作を示す拡大側面図、
【図12】第1のカードの平面図、
【図13】(A)は、第1のカードの左側面図、(B)は第1のカードの変形例を示す左側面図、
【図14】第1のカードを下から示す斜視図、
【図15】第2のカードの平面図、
【符号の説明】
【0147】
C1 第1のカード
C2 第2のカード
C3 第3のカード
1,11 ケース
1a 第1の面である表面
1b 第2の面である裏面
1c 前端部
1d 後端部
1e 右側部
1f 左側部
5 外部接続部
6,16 案内識別溝(案内溝)
6b,16b 傾斜部
7,17 薄肉部
8 中間凹部
20 カードリーダ
21 ケース
22 ケース本体
23 蓋体
41 スライダ
55 第1の接続端子
58 第2の接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースの内部に収納されている電子回路と、前記電子回路に導通して前記ケースの表面に現れている複数の外部接続部とが設けられた電子機能カードにおいて、
前記ケースは、厚み方向に対向する第1の面および第2の面と、カードコネクタへの挿入方向に向けられる前端部と、これと逆側の後端部と、前記挿入方向に沿って延びる右側部と左側部とを有し、前記外部接続部は、前記第1の面と前記第2の面の少なくとも一方の表面に設けられており、
前記右側部と前記左側部の少なくとも一方には、前記第1の面から前記ケースの厚みの途中まで窪んで形成されて前記前端部から後方へ向けて延びる案内溝と、前記案内溝よりも後方に形成されて前記ケースを保持するために使用される中間凹部とが設けられており、
前記案内溝の後部には、前記後端部に向かうにしたがって、前記案内溝の幅寸法W1と深さ寸法t1の少なくとも一方が徐々に小さくなる傾斜部が設けられていることを特徴とする電子機能カード。
【請求項2】
前記中間凹部は、前記第1の面から前記ケースの厚みの途中まで窪んで形成されている請求項1記載の電子機能カード。
【請求項3】
前記第1の面からの前記中間凹部の深さ寸法t3が、前記第1の面からの前記案内溝の深さ寸法t1よりも大きい請求項2記載の電子機能カード。
【請求項4】
前記案内溝と前記中間凹部は、前記右側部と前記左側部の双方に設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の電子機能カード。
【請求項5】
前記ケースを前記第1の面または前記第2の面を手前にして示したときに、前記ケースは、前記挿入方向に延びる中心線O−Oを挟んで左右対称形状である請求項4記載の電子機能カード。
【請求項6】
前記右側部と前記左側部は、前後方向のほぼ全長に渡って平行で、前記前端部と前記後端部も、左右方向のほぼ全長に渡って平行であり、前記ケースの平面形状は長方形である請求項5記載の電子機能カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−93359(P2009−93359A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262374(P2007−262374)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】