説明

電子源の製造装置

【課題】電子源の製造装置において、大型のポンプを設けることなく真空容器内の排気を短時間で行い、より効率良く電子源を製造する。
【解決手段】基板支持体3上に2枚の電子源基板2a、2bを載置し、真空容器1で覆って順次電圧印加処理を行う電子源製造装置であって、基板支持体3を降下させ、水平移動させて処理の終了した基板2bを排出し、次の基板2a上に真空容器1を配置し、再び基板支持体3を上昇させて真空容器1と基板2aとで閉空間を形成するまで、真空容器1内を低露点ガスにてパージすることにより、真空容器1内への大気の侵入を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置等に用いられる電子源の製造装置、特に、真空容器の排気を改良する構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子放出素子としては、大別して熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類のものが知られており、本出願人は、冷陰極電子放出素子として、新規な構成を有する表面伝導型電子放出素子とその応用に関し、多数の発明を行っている。その基本的な構成、製造方法などは、例えば特許文献1及び特許文献2等に開示されている。この表面伝導型電子放出素子の典型的な構成例としては、基板上に設けた一対の素子電極間を連絡する導電性膜に、フォーミングと呼ばれる通電処理と活性化処理によって、電子放出部を形成したものが挙げられる。
【0003】
フォーミング処理とは、前記導電性膜の両端に電圧を印加通電し、該導電性膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした亀裂を形成する処理である。また、活性化処理とは、有機化合物を有する真空雰囲気下において前記導電性膜の両端に電圧を印加通電し、前記亀裂近傍に炭素或いは炭素化合物を堆積させる処理である。尚、電子放出は、その亀裂付近から行われる。
【0004】
従来の表面伝導型電子放出素子の製造は以下のように行われていた。基板上に、導電性膜及び該導電性膜に接続された一対の素子電極からなる素子を複数と、該複数の素子を接続した配線とが形成された電子源基板を作製する。次に、作製した電子源基板の上記素子を形成した領域を真空容器で覆い、真空容器内を真空排気する。真空排気後、外部端子と通じて上記各素子に電圧を印加して各素子の導電性膜に亀裂を形成する。更に、該真空容器内に有機化合物を含む気体を導入して、有機化合物が存在する雰囲気下で前記各素子に再度外部端子を通じて電圧を印加して、該亀裂近傍に炭素或いは炭素化合物を堆積させる。堆積後、真空容器内を大気圧まで戻してから基板を交換する。
【0005】
従来の電子源製造装置は、基板が支持体によって固定され、基板に形成された素子を覆う真空容器を被せ、真空容器の内部を排気してフォーミング及び活性化処理を施していた。そのため、基板の一面は真空側で反対面は大気側にさらされるため、いわば真空フランジと同等の機能を必要とされていた。しかし基板は10mmにも満たない厚さのため真空に絶えられる強度を持っていない。そこで基板を固定する支持体に密着固定させ真空にも絶えられる構造となっている。
【0006】
この様な基板保持構造となっているので、ロードロック室を持った真空一貫のマルチチャンバー型の製造装置になっていない。従って基板の交換時には真空容器が大気にさらされることになる。特許文献3には、短時間の真空排気を可能にする手段を講じて生産性の向上可能な電子源の製造装置を提供している。具体的には、電子源基板を支持するための支持体と、前記電子源基板の一部を覆い、前記電子源基板との接触部に開口を有する容器と、更に前記開口を覆うシャッターを有することを特徴としている。このような電子源の製造装置によれば、前記電子源基板を覆っていた真空容器の開口部を、基板の離脱と共にシャッターで覆う手段を用いることによって、電子源基板の交換時における真空容器内への水分子混入を軽減でき、短時間の真空排気を可能にしている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−235255号公報
【特許文献2】特開平8−171849号公報
【特許文献3】特開2004−184502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載された装置において、シャッター挿入時には、真空容器の開口部と接触しながら動作するので、シャッターのたわみ防止のために該シャッターは10mm以上の厚さ(高さ)を持った構造になっている。そのため、容器の開口部と基板との間は、最低でもこの厚さ以上の隙間が必要になる。このため水分子の混入量はシャッターが無い構造よりは軽減されるが、完全に防止できる構造とはなっていない。
【0009】
更には、基板を支持体に載せた後、上記のフォーミング処理、活性化処理を行うため、電圧を印加するための駆動ドライバーと基板上に形成されている導電性膜に接続されている配線とを接続する工程がある。この時、位置合わせをするために基板が載置してある支持体が前後左右方向に駆動して位置合わせをするが、この位置あわせ時にも真空容器は大気にさらされてしまう。
【0010】
よって、所定の圧力領域まで短時間で排気するために、大排気量の真空ポンプを設けるなどして短時間での排気を可能にしているが、装置の大型化を招き装置コストも高くなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明の課題は、上記課題を解決し、電子源の製造装置において、大型のポンプを設けることなく真空容器内の排気を短時間で行い、より効率良く電子源を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基板と、該基板の表面に形成された複数の電子放出素子と、該電子放出素子を互いに接続する複数本の配線と、を備えた電子源の製造装置であって、
少なくとも2枚の基板を載置するための支持体と、電子放出素子が形成される領域を上方から覆い、上記基板との間で閉空間を形成する容器と、該閉空間の雰囲気を制御する手段と、上記配線に電圧を印加する手段と、容器或いは支持体の昇降機構と、容器或いは支持体の水平移動手段とを備え、
上記基板の電子放出素子が形成される領域を容器で覆って閉空間を形成し、該閉空間の雰囲気を制御して配線に電圧を印加する処理を施した後、支持体を容器に対して相対的に降下させることで容器を基板から離し、支持体を容器に対して相対的に水平移動させることによって容器を他方の基板上に移動させ、支持体を容器に対して相対的に上昇させることによって他方の基板と容器とで閉空間を形成し、電圧印加処理が終了した基板を新たな基板に交換する操作を繰り返す工程において、電圧印加処理後の閉空間を低露点ガスでパージした後、他方の基板の閉空間を形成するまでの間、容器内のパージを継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板交換時の真空容器内への大気中の水分子の混入を低減することが可能になり、その結果、排気時間を短縮することができる。従って、真空ポンプ等のコンポーネンツの小型化が可能になり、装置コストの安価な電子源の製造装置を実現できる。また、製造工程のタクトタイムが短くなることにより生産コストを低減でき、安価で均一性の高い電子源を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製造装置で製造される電子源は、基板と、該基板の表面に形成された複数の電子放出素子と、該電子放出素子を互いに接続する複数本の配線と、を備えている。
【0015】
本発明の電子源の製造装置は上記目的を達成させるために、次のような特徴をもった装置となっている。
【0016】
本発明の電子源の製造装置は、少なくとも2枚の基板を載置するための支持体と、電子放出素子が形成される領域を上方から覆い、上記基板との間で閉空間を形成する容器とを具備している。そして、該閉空間の雰囲気を制御する手段と、上記配線に電圧を印加する手段と、容器或いは支持体の昇降機構と、容器或いは支持体の水平移動手段とを備えている。よって、支持体上の1枚の基板を容器で覆って閉空間を形成し、該閉空間を形成している基板表面の電子放出素子が形成される領域に対して、所定の雰囲気に保持して電圧を印加できる構成となっている。
【0017】
さらに、電圧印加後の基板と、次に電圧を印加する基板とが支持体上に同時に載置され、支持体を降下或いは容器を上昇させることによって、基板と容器の開口部との間に所定の距離をあけることができる。この状態で、支持体或いは容器を水平移動させることによって、容器を電圧印加後の基板上から次の基板上に移動させることにより、容器内から基板の搬出と搬入を行う。
【0018】
上記したように、本発明の製造装置においては、支持体上に載置した基板を1枚ずつ電圧印加処理すると同時に、処理の終了した基板を新しい基板に交換する操作を繰り返す。
【0019】
尚、本発明において電圧印加とは、電子放出素子の構成部材である導電性膜に亀裂を形成するためのフォーミング処理、及び、フォーミング処理で形成された亀裂近傍に炭素或いは炭素化合物を堆積させる活性化処理、の少なくとも一方である。
【0020】
本発明においては、電圧印加後の閉空間内を低露点ガスでパージするが、該パージは、該閉空間から次の基板の閉空間を形成するまでの間継続して行う。これにより、容器内は基板の搬出、搬入時に常に低露点ガスでパージされ、大気にほとんど接触しない。よって、容器内に水分子が混入することがなく、次の基板の閉空間を真空排気する時間が大幅に短縮される。
【0021】
本発明の製造装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明による電子源製造装置の第1の実施形態を示す構成図であり、当該装置においてフォーミング処理と活性化処理とを連続して行うことができる。図1において、1は真空容器、2aは電圧印加前の次の基板、2bは電圧印加後の基板、3は基板支持体である。電圧印加前の次の基板2aと電圧印加後基板2bは基板支持体3に載置されている。また、電圧印加前の次の基板2aと電圧印加後基板2bとの間にスペーサー19が設置されていて、電圧印加前の次の基板2aと電圧印加後基板2bとスペーサー19によって、あたかも1枚の基板が基板支持体3に載置されているような構成となっている。4は昇降機構であり、基板支持体3を昇降させる機構である。昇降機構4によって基板支持体3に載置されている電圧印加前の次の基板2がシール部材6に押し当てられ、シール部材6によって真空容器1を密閉する。
【0023】
8は真空ポンプ、5a乃至5hはバルブ、18は排気配管である。真空容器1は排気配管18に接続されている真空ポンプ8によって真空排気され、所定の雰囲気に保持される。15は真空計であり、真空容器1の圧力を計測する。電圧印加前基板2a上に形成された電子放出素子(不図示)は対向する一対の素子電極に接続されていて、その一部に導電性膜が形成されている。これらの電子放出素子は印加前基板2a上、及び印加後基板2b上に複数個配置され、各電子放出素子は配線で接続されている。
【0024】
7は電圧印加手段である駆動ドライバー、9は電圧印加前基板2a上に形成された配線と駆動ドライバー7を接続する配線である。また、11は水分除去フィルター、10はガス流量制御装置、22はガス供給配管、12は有機物質ガス、13はキャリアガス、17は真空容器1内の露点を計測できる露点計である。14は基板支持体3と昇降機構4からなる構造物を水平移動させる手段であるスライド機構であり、図1では左右方向に基板支持体3を水平移動させることができる。スライド機構14の機能や動作等については詳しく後述する。基板支持体3は印加前基板2a及び印加後基板2bを保持して固定するもので、真空チャッキング機構、静電チャッキング機構若しくは固定冶具等により機械的に印加前基板2aと印加後基板2bを固定する機構を有する。基板支持体3の内部には、図示されていないヒーターが設けられ、必要に応じて印加前基板2aと印加後基板2bを加熱することができる。また真空容器1を加熱することができるヒーター(不図示)も設けられている。
【0025】
真空容器1は、ガラスやステンレス製の容器であり、容器からの放出ガスの少ない材料のものが好ましい。真空容器1は、少なくとも、1.33×10-6Pa乃至大気圧の圧力範囲に耐えられる構造のものである。シール部材6は電子源基板2と真空容器1との気密性を保持するためのものであり、耐熱性やガス透過遮断性の優れたOリングやゴム性シート等が用いられる。
【0026】
有機物質ガス12には、電子放出素子の活性化に用いられる有機物質又は有機物質を窒素、ヘリウム、アルゴン等で希釈した混合気体が用いられる。また、フォーミングの通電処理を行う際には、導電性膜への亀裂形成を促進するための気体、例えば、還元性を有する水素ガス等を真空容器1内に導入することもある。これらのガスはガス供給配管19により真空容器1に供給される。
【0027】
有機物質ガス12は有機物質が常温で気体である場合には、そのまま使用でき、有機物質が常温で液体又は固体の場合には、容器内で蒸発又は昇華させて用いる、或いは更にこれを希釈ガスと混合する等して用いることができる。キャリアガス13には、窒素又はアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが用いられる。
【0028】
有機物質ガス12とキャリアガス13は、一定の割合で混合されて、真空容器1内に導入される。両者の流量及び混合比は、ガス流量制御装置10によって制御される。ガス流量制御装置10は、マスフローコントローラ及び電磁弁等から構成されている。混合ガスの加熱温度は、印加前基板2aの温度と同等にすることが好ましい。
【0029】
尚、ガス流量制御装置10とガス供給配管19の途中に、水分除去フィルター11を設けて、導入ガス中の水分を除去するとより好ましい。水分除去フィルター11には、シリカゲル、モレキュラーシーブ、水酸化マグネシウム等の吸湿材を用いることができる。
【0030】
真空ポンプ4としては、ドライポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクロールポンプ等の低真空用ポンプが挙げられ、オイルフリーポンプが好ましく用いられる。
【0031】
真空容器1内の雰囲気は電圧印加処理後、バルブ5hより低露点ガス16によって大気圧まで戻される。この低露点ガス16は、本発明にかかる工程中に真空容器1内に水分子を付着させない低湿度のガスであり、具体的には、露点が−80℃以下のガスが好ましく、ドライエアーもしくは窒素が好ましく、必要であれば不活性ガスであっても構わない。尚、フォーミング処理や活性化処理については上記特開平7−235255号公報、特開平8−171849号公報等に記載されている従来の処理方法が好ましく適用される。
【0032】
また、既に電圧印加処理が済んだ印加後基板2bは、次の基板の電圧印加処理中に基板支持体3の固定機構より解除され、基板搬送機構(不図示)によって基板支持体3から排除される。そして、前述の印加前基板2aとは異なる新しい印加前基板が基板搬送機構によって基板支持体3に載置される。
【0033】
その際、次に処理される基板を基板支持体3にセットした後、電圧印加処理を行うため、電圧を印加するための駆動ドライバーと基板上に形成されている導電性膜に接続されている配線とを接続する工程がある。この時、位置合わせをするために基板が載置してある基板支持体3の上でアライメント機構(不図示)によって前後左右方向に移動して位置合わせをする。
【0034】
本例では、駆動ドライバー7と電圧印加後基板2b上の配線とを接続する配線9は電圧印加処理終了後、電圧印加後基板2bより離れる方向に移動し、駆動ドライバー7と電圧印加後基板2上の配線との接続が解除される。これは、真空容器1内の低露点ガス16でのパージ中に行う。
【0035】
真空容器1内の圧力が大気圧になったことと配線9による駆動ドライバー7と基板2b上の配線との接続解除を確認後、印加後基板2bを固定する支持体3は昇降機構4によって図1の下方に降りていく。尚、基板支持体3は昇降機構4を使用して昇降させているが、真空容器1が昇降可能になっていても構わない。本発明においては、基板支持体3が真空容器1に対して相対的に昇降できればよい。この間、真空容器1内は低露点ガスによるパージを継続し、真空容器1内の雰囲気の露点を露点計17で監視できるようになっている。
【0036】
この昇降機構4の駆動による基板支持体3の降下時に、電圧印加後基板2bとシール部材6とが離れる時の距離をセンサ(不図示)で検出する。このセンサとしては、例えば、機械スイッチ等を用い、基板支持体3が降下する時の距離を検出する。電圧印加後基板2bとシール部材6との距離が、例えば、2mmになると、今まで電圧印加後基板2bによって覆われていた真空容器1の一面を覆うように、次に処理される電圧印加前基板2aがスライド機構14によって電圧印加後基板2bと入れ替わる。図1では紙面左方向へ平行移動する。また電圧印加前基板2aと電圧印加後基板2b及びスペーサー19がシール部材6と接触しないようにスライドする。この間も常に低露点ガス16によって真空容器1内はパージされている。本発明においては、低露点ガス16のパージによって真空容器1内への大気の侵入を阻止するため、基板2bとシール部材6の距離は基板2bの水平移動の際にシール部材6が基板2b上の素子等部材に接しない範囲で最小限にとどめる必要がある。具体的には、通常の電子源を製造する場合で5mm以下である。
【0037】
スライド機構14が所定の位置に移動完了後、基板支持体3及び電圧印加前基板aは昇降機構4によって上方へ上昇し、シール部材6と接触する位置で停止する。昇降機構4の停止確認後ただちに低露点ガス16によるパージ工程は終了する。
【0038】
このように、真空容器1と基板2a、2bとが離れている間は常に真空容器1内には低露点ガス16がパージされるため、真空容器1内への大気混入が防止される。
【0039】
真空容器1はシール部材6と電圧印加前基板2aによって閉空間が形成されている。この状態で、真空容器1内を排気した後、電圧印加処理を行う。この時、駆動ドライバー7と電子源基板上の配線を配線9によって接続し、電子源基板の電子放出素子に駆動ドライバー7から電圧を印加することで電圧印加処理を行う。電圧印加処理が終了すると、同様に低露点ガス16によって真空容器1をパージして大気圧まで戻し、昇降機構4とスライド機構14によって電子源基板の交換を行う。この時スライド機構4は図1では右方向へ平行移動する。
【0040】
尚、本例ではスライド機構4により基板支持体3を水平移動させているが、本発明においては、基板支持体3を真空容器1に対して相対的に水平移動させることができればよく、真空容器1を水平移動させるスライド機構を用いても良い。
【0041】
次に、図2及び図3は本発明の第2の実施形態を示す図である。尚、図2は図1と同様に要部の構成のみ示す。その他の構成は図1と同様である。本例では、基板を載置する基板支持体3を水平方向に回転させて基板交換を行う回転スライド機構20を採用した点が第1の実施形態と異なっている。よって、係る構成についてのみ説明する。
【0042】
この回転スライド機構20を上面から見た時の図を図3に示す。本例で採用した基板支持体3及びスペーサー21は図のように円形状になっており、基板固定機構(不図示)によって電圧印加前基板2aと電圧印加後基板2bが載置されている。このスペーサー21は分割構造になっていても構わない。また基板支持体3及びスペーサー21の形状は円形状に限るものではなく、真空容器1によって電子放出素子の形成領域が覆われ、且つ真空容器1とで閉空間が形成される形状であれば構わない。またこの2枚の基板とスペーサー21によって、あたかも1枚の基板が基板支持体3に載置されているような構成となっている。これは2枚の基板とスペーサー21の高さが同じになっていて、一枚の平面の基板が基板支持体3に載置されている状態が好ましい。また電圧印加前基板2aと電圧印加後基板2b及びスペーサー21がシール部材6と接触しないように回転スライド機構20の回転駆動機構(不図示)によって基板支持体3は回転する。この回転駆動機構は電動モーターであっても構わないし、油圧シリンダーエアシリンダーの推力をラックアンドピニオンの伝達要素を使って回転運動に変換する機構であっても構わない。また、回転スライド機構20は図3で言うと右回転、左回転のどちらでも構わない。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
第1の実施形態の装置において昇降機構4の降下移動距離を2mmとして基板交換を実施し、排気時間を測定した。尚、図1に示す真空容器1の材料はステンレス鋼製でSUS304Lを使用し、真空容器1の内面は電解複合研磨処理を施した。真空容器1の体積は0.17m3、真空容器1の加熱温度50℃、真空容器1と排気配管18の接続口での実効排気速度を900L/sとして120秒間の基板交換を想定して排気時間の測定を行った。また、この測定を実施する前に真空容器1は10時間150℃の脱ガス処理を施した。
【0044】
また、比較例として、昇降機構4の降下移動距離を300mmとして低露点ガスのパージが不十分である状態(大気が容器内に接触する状態)として基板交換を実施した。この際の交換時間は120秒として行った。
【0045】
測定結果は、1.0×10-4Paまでの排気時間は、実施例は約7.4分、比較例は約8.9分であった。また3.0×10-5Paまでの排気時間は、実施例は28.3分、比較例は39分となった。尚、真空容器1は粗引きポンプ(不図示)で大気圧から排気したが、本例では70Paまで粗引きして、その所要時間はいずれの場合も100秒であり、前述の排気時間に含まれる。
【0046】
従って、この測定結果から、本発明の装置では、真空容器1への大気混入量を軽減して短時間で所定の雰囲気に排気できることを確認した。
【0047】
(実施例2)
第2の実施形態の装置を用いる以外は実施例1と同様にして、排気時間を測定した。比較例としては、実施例1と同様に昇降機構4の降下移動距離を300mmとした。
【0048】
その結果、1.0×-4Paまでの排気時間は、実施例は約7.4分、比較例は約8.9分であった。また3.0×10-5Paまでの排気時間は、実施例は29.9分、比較例は39分となった。尚、真空容器1は粗引きポンプ(不図示)で大気圧から排気したが、本例では70Paまで粗引きして、その所要時間はいずれの場合も100秒であり、前述の排気時間に含まれている。
【0049】
従って、この測定結果から、本発明の装置では、真空容器1への大気混入量を軽減して短時間で所定の雰囲気に排気できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の製造装置の一実施形態の構成を模式的示す図である。
【図2】本発明の製造装置の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図3】図2の製造装置の回転スライド機構を上面から見た時の図である。
【符号の説明】
【0051】
1 真空容器
2a、2b 電子源基板
3 基板支持体
4 昇降機構
5a乃至5h バルブ
6 シール部材
7 駆動ドライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の表面に形成された複数の電子放出素子と、該電子放出素子を互いに接続する複数本の配線と、を備えた電子源の製造装置であって、
少なくとも2枚の基板を載置するための支持体と、電子放出素子が形成される領域を上方から覆い、上記基板との間で閉空間を形成する容器と、該閉空間の雰囲気を制御する手段と、上記配線に電圧を印加する手段と、容器或いは支持体の昇降機構と、容器或いは支持体の水平移動手段とを備え、
上記基板の電子放出素子が形成される領域を容器で覆って閉空間を形成し、該閉空間の雰囲気を制御して配線に電圧を印加する処理を施した後、支持体を容器に対して相対的に降下させることで容器を基板から離し、支持体を容器に対して相対的に水平移動させることによって容器を他方の基板上に移動させ、支持体を容器に対して相対的に上昇させることによって他方の基板と容器とで閉空間を形成し、電圧印加処理が終了した基板を新たな基板に交換する操作を繰り返す工程において、電圧印加処理後の閉空間を低露点ガスでパージした後、他方の基板の閉空間を形成するまでの間、容器内のパージを継続することを特徴とする電子源の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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