説明

電子用途用の重水素化ジルコニウム化合物

本発明は、電子用途に有用な重水素化電子移動化合物に関する。本発明は、電子移動層が、ある程度重水素化された少なくとも1種類のアリール化合物を有するジルコニウム化合物を含む電子デバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアリール構成要素が少なくとも部分的に重水素化されているジルコニウム化合物に関する。本発明は、少なくとも1つの電子移動層がそのような化合物を含む電子デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイを構成する発光ダイオードなどの光を発する有機電子デバイスは、多くの異なる種類の電子装置中に存在する。すべてのこのようなデバイスにおいては、2つの電気接触層の間に有機活性層が挟まれている。少なくとも1つの電気接触層は、光が電気接触層を通過できるように光透過性である。電気接触層に電気を印加すると、有機光活性層は、光透過性電気接触層を透過する光を発する。
【0003】
発光ダイオード中の活性成分として有機エレクトロルミネッセンス化合物が使用されることが知られている。アントラセン、チアジアゾール誘導体、およびクマリン誘導体などの単純な有機分子はエレクトロルミネッセンスを示すことが知られている。半導体共役ポリマーもエレクトロルミネッセンス成分として使用されており、たとえば、米国特許第5,247,190号明細書、米国特許第5,408,109号明細書、および欧州特許出願公開第443 861号明細書に開示されている。多くの場合、エレクトロルミネッセンスの化合物は、ホスト材料中のドーパントとして存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子デバイス用の新規な材料が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アリール構成要素を有するジルコニウム化合物であって、少なくとも1つのアリール構成要素が、アリール構成要素に結合した少なくとも1つジュウテリウムを有するジルコニウム化合物が提供される。
【0006】
本発明のジルコニウム化合物を含む電子輸送層を含む電子デバイスも提供される。
【0007】
ジルコニウム化合物中の少なくとも1つのアリール構成要素に結合した少なくとも1つのジュウテリウム、およびジュウテリウム置換を有する電子デバイスの1つ以上の追加層がさらに提供される。
【0008】
本明細書において提示される概念の理解をすすめるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】有機電子デバイスの一例の図である。
【0010】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
多数の態様および実施形態が本明細書において開示されるが、これらは例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、当業者には、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が可能であることが理解されよう。
【0012】
任意の1つ以上の実施形態の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、重水素化された化合物、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0013】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「脂肪族環」は、非局在化π電子を有さない環状基を意味することを意図している。ある実施形態においては、脂肪族環は不飽和を有さない。ある実施形態においては、この環は1つの二重結合または三重結合を有する。
【0015】
用語「アルコキシ」は、基RO−(式中、Rはアルキルである)を意味する。
【0016】
用語「アルキル」は、1つの結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味することを意図しており、線状、分岐、または環状の基が含まれる。この用語は、ヘテロアルキル類を含むことを意図している。用語「炭化水素アルキル」は、ヘテロ原子を全く有さないアルキル基を意味する。用語「重水素化アルキル」は、少なくとも1つの利用可能なHがDで置換されている炭化水素アルキルである。ある実施形態においては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0017】
用語「分岐アルキル」は、少なくとも1つの第2級または第3級炭素を有するアルキル基を意味する。用語「第2級アルキル」は、第2級炭素原子を有する分岐アルキル基を意味する。用語「第3級アルキル」は、第3級炭素原子を有する分岐アルキル基を意味する。ある実施形態においては、分岐アルキル基は、第2級または第3級炭素を介して結合する。
【0018】
用語「アリール」は、1つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。用語「芳香族化合物」は、非局在化π電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図している。この用語は、ヘテロアリール類を含むことを意図している。用語「炭化水素アリール」は、環中にヘテロ原子を有さない芳香族化合物を意味することを意図している。アリールという用語は、1つの環を有する基と、単結合によって結合したり互いに縮合したものであってよい複数の環を有する基とを含んでいる。用語「重水素化アリール」は、アリールに直接結合した少なくとも1つの利用可能なHがDで置換されているアリール基を意味する。用語「アリーレン」は、2つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。ある実施形態においては、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。
【0019】
用語「アリールオキシ」は、基RO−(式中、Rはアリールである)を意味する。
【0020】
用語「化合物」は、原子からなる分子から構成される非帯電物質であって、これらの原子が、物理的手段によって分離することができない物質を意味することを意図している。デバイス中の層に言及するために使用される場合、語句「隣接する」は、ある層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味するものではない。他方で、語句「隣接するR基」は、化学式中で互いに隣同士であるR基(すなわち、1つの結合によって連結した複数の原子上に存在する複数のR基)を意味するために使用される。
【0021】
用語「重水素化」は、少なくとも1つのHがDで置換されていることを意味することを意図している。このジュウテリウムは天然存在量の少なくとも100倍で存在する。化合物Xの「重水素化誘導体」は、化合物Xと同じ構造を有するが、少なくとも1つのDでHが置換されている。
【0022】
用語「ドーパント」は、ホスト材料を含む層中で、その層の電子的特性、あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの目標波長を、そのような材料を含まない層の電子的特性、あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの波長に対して変化させる材料を意味することを意図している。
【0023】
層または材料に言及する場合の用語「電気活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電子デバイス中で、電気活性材料は、デバイスの動作を電子的に促進する。電気活性材料の例としては、電荷を伝導、注入、輸送、または遮断する物質であって、電荷が電子または正孔のいずれであってもよい物質、あるいは放射線を受けたときに放射線を放出する、または電子−正孔対の濃度変化を示す物質があるが、これらに限定されるものではない。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料があるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
接頭語「ヘテロ」は、1つ以上の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示している。ある実施形態においては、この異なる原子はN、O、またはSである。
【0025】
用語「ホスト材料」は、ドーパントが加えられる材料を意味することを意図している。ホスト材料は、電子的特性、あるいは放射線の放出、受信、またはフィルタリングする能力を有する場合もあるし、有さない場合もある。ある実施形態においては、ホスト材料がより高濃度で存在する。
【0026】
用語「層」は、用語「膜」と同義的に使用され、所望の領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されることはない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊機能領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層および膜は、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
用語「有機電子デバイス」または場合により単に「電子デバイス」は、1つ以上の有機半導体層または材料を含むデバイスを意味することを意図している。特に明記しない限り、すべての基は、置換されている場合も非置換の場合もある。ある実施形態においては、置換基は、D、ハライド、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シアノ、およびNR2(式中、Rはアルキルまたはアリールである)からなる群から選択される。
【0028】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料について以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それらの記載内容全体が参照として援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0029】
さらに、全体的にIUPAC番号方式が使用され、周期表の族は、左から右に1〜18の番号が付けられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition,2000)。
【0030】
2.重水素化合物
本発明の重水素化ジルコニウム化合物は、少なくとも1つのDを有するアリール構成要素を含有する。ある実施形態においては、この化合物は少なくとも10%が重水素化されている。これは、少なくとも10%のHがDで置換されていることを意味する。ある実施形態においては、化合物は、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。ある実施形態においては、化合物は100%が重水素化されている。
【0031】
一実施形態においては、ジルコニウム化合物は以下の構造で表される:
1.ジルコニウム化合物であって:
【0032】
【化1】

【0033】
(式中:
1からR6は、出現ごとに同種または異種であり、H、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;R1からR6の少なくとも1つが、少なくとも1つのDを含有する)
であるジルコニウム化合物。
【0034】
ある実施形態においては、少なくとも1つのDは、アリール環上のR1からR6の中の1つである。
【0035】
化合物のある実施形態においては、R1からR6の少なくとも1つがDである。ある実施形態においては、R1からR6の少なくとも2つがDである。ある実施形態においては、少なくとも3つがDであり;ある実施形態においては、少なくとも4つがDであり;ある実施形態においては、少なくとも5つがDである。ある実施形態においては、R1からR6のすべてがDである。
【0036】
ある実施形態においては、R1からR6はHおよびDから選択される。ある実施形態においては、R1からR6の1つがDであり、5つがHである。ある実施形態においては、R1からR6の2つがDであり、4つがHである。ある実施形態においては、R1からR6の3つがDであり、3つがHである。ある実施形態においては、R1からR6の4つがDであり、2つがHである。ある実施形態においては、R1からR6の5つがDであり、1つがHである。ある実施形態においては、R1からR6の6つがDである。
【0037】
ある実施形態においては、R1からR6の少なくとも1つが、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルから選択される。
【0038】
nのある実施形態においては、ヘテロアリール基が重水素化されている。ある実施形態においては、ヘテロアリール基は、少なくとも10%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。ある実施形態においては、ヘテロアリール基は100%が重水素化されている。
【0039】
ジルコニウム化合物の非限定的な例の1つとして以下のものが挙げられる:
【0040】
【化2】

【0041】
非重水素化類似化合物は、C−C結合またはC−N結合が形成されるあらゆる技術を使用して作製することができる。Suzukiカップリング、Yamamotoカップリング、Stilleカップリング、ならびにPd−またはNi−触媒C−Nカップリングなどの種々のそのような技術が周知である。次に、新規重水素化合物は、重水素化前駆体材料を使用した類似の方法によって、またはより一般的には、三塩化アルミニウムまたは塩化エチルアルミニウムなどのルイス酸H/D交換触媒の存在下でのd6−ベンゼンなどの重水素化溶媒による非重水素化化合物の処理、あるいはCF3COOD、DClなどの酸による非重水素化化合物の処理によって調製することができる。例となる調製は実施例に示している。重水素化の程度は、NMR分析、および大気圧固体分析プローブ質量分析(ASAP−MS)などの質量分析によって求めることができる。過重水素化または部分重水素化された芳香族化合物またはアルキ(alky)化合物の出発物質は、商業的供給元から購入することもできるし、周知の方法を用いて得ることもできる。そのような方法の一部の例は、a)“Efficient H/D Exchange Reactions of Alkyl−Substituted Benzene Derivatives by Means of the Pd/C−H2−D2O System” Hiroyoshi Esaki,Fumiyo Aoki,Miho Umemura,Masatsugu Kato, Tomohiro Maegawa, Yasunari Monguchi,and Hironao Sajiki Chem.Eur.J.2007,13,4052−4063.b)“Aromatic H/D Exchange Reaction Catalyzed by Groups 5 and 6 Metal Chlorides” GUO,Qiao−Xia,SHEN,Bao−Jian;GUO,Hai−Qing TAKAHASHI,Tamotsu Chinese Journal of Chemistry,2005,23,341−344;c)“A novel deuterium effect on dual charge−transfer and ligand−field emission of the cis−dichlorobis(2,2’−bipyridine)iridium(III) ion” Richard J.Watts,Shlomo Efrima,and Horia Metiu J.Am.Chem.Soc.,1979,101(10),2742−2743;d)“Efficient H−D Exchange of Aromatic Compounds in Near−Critical D20 Catalysed by a Polymer−Supported Sulphonic Acid” Carmen Boix and Martyn Poliakoff Tetrahedron Letters 40(1999)4433−4436;e)米国特許第3849458号明細書;f)“Efficient C−H/C−D Exchange Reaction on the Alkyl Side Chain of Aromatic Compounds Using Heterogeneous Pd/C in D2O” Hironao Sajiki,Fumiyo Aoki,Hiroyoshi Esaki,Tomohiro Maegawa,and Kosaku Hirota Org.Lett.,2004,6(9),1485−1487に見ることができる。
【0042】
本明細書に記載の化合物は、液相堆積技術を用いて膜に成形することができる。驚くべきことであり予期せぬことに、これらの化合物は、類似の非重水素化化合物よりも大きく改善された性質を有する。電子移動層とも呼ばれる電子輸送層を含む電子デバイスは、本明細書に記載の化合物を使用することで、寿命が改善される。さらに、寿命の増加は、高い量子効率および良好な彩度とともに実現される。さらに、本明細書に記載の重水素化合物は、非重水素化類似体よりも高い空気耐性を有する。これによって、材料の調製および精製と、その材料を使用した電子デバイスの形成との両方において、より優れた加工許容性を得ることができる。
【0043】
3.電子デバイス
本明細書に記載の重水素化されているジルコニウム材料を含む1つ以上の層を有することが有益となりうる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、またはダイオードレーザー)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
有機電子デバイス構造の一例を図1に示す。デバイス100は、第1の電気接触層であるアノード層110と、第2の電気接触層であるカソード層160と、それらの間の電気活性層140とを有する。アノードに隣接して、正孔注入層120が存在することもできる。正孔注入層に隣接して、正孔輸送材料を含む正孔輸送層130が存在することもできる。カソードに隣接して、電子輸送材料を含む電子輸送層150が存在することもできる。デバイスは、アノード110の隣に1つ以上の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)、および/またはカソード160の隣に1つ以上の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用することもできる。
【0045】
層120から150は、個別および集合的に活性層と呼ばれる。
【0046】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;正孔注入層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層130、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;電気活性層140、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;層150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0047】
デバイス100の用途に依存するが、電気活性層140は、印加電圧によって励起する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中など)であってよい。光検出器の例としては、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、および光電管、ならびに光起電力セルが挙げられ、これらの用語は、Markus、John、Electronics and Nucleonics Dictionary、470および476(McGraw−Hill, Inc.1966)に記載されている。
【0048】
本明細書に記載の1種類以上の新規重水素化材料は、デバイスの1つ以上の活性層中に存在することができ、特定の実施形態においては、電子移動層150とも呼ばれる電子輸送層150中に存在することができる。本発明の重水素化材料は、非重水素化材料と組み合わせて使用してもよいし、他の重水素化材料と組み合わせて使用してもよい。
【0049】
ある実施形態においては、発光材料も重水素化されている。ある実施形態においては、少なくとも1つの追加層が重水素化材料を含む。ある実施形態においては、追加層は正孔注入層120である。ある実施形態においては、追加層は正孔輸送層130である。
【0050】
ある実施形態においては、電子デバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、電気活性層、電子注入層、および電子輸送層からなる群から選択されるあらゆる組み合わせの層の中に重水素化材料を有する。
【0051】
ある実施形態においては、デバイスは、加工を促進したり機能性を改善したりするための追加層を有する。これらの層のいずれかまたはすべてが重水素化材料を含むことができる。ある実施形態においては、すべての有機デバイス層が重水素化材料を含む。ある実施形態においては、すべての有機デバイス層が重水素化材料から実質的になる。
【0052】
a.電気活性層
ホスト材料と電気活性ドーパント材料との組み合わせを層140中に使用することができる。ホスト化合物は、単独で使用される場合もあるし、第2のホスト材料と組み合わせて使用される場合もある。重水素化ホスト化合物は、あらゆる発光色を有するドーパントのホストとして使用することができる。ある実施形態においては、重水素化合物は、緑色または青色の発光材料のホストとして使用される。
【0053】
ある実施形態においては、電気活性層は、ホストとドーパントとの組み合わせから実質的になる。ホスト材料の例としては、クリセン類、フェナントレン類、トリフェニレン類、フェナントロリン類、ナフタレン類、アントラセン類、キノリン類、イソキノリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類、および金属キノレート錯体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
電気活性組成物中に存在するドーパント材料の量は、組成物の全重量を基準として、一般に3〜20重量%の範囲内であり;ある実施形態においては5〜15重量%の範囲内である。第2のホストが存在する場合、第1のホスト対第2のホストの比は一般に1:20〜20:1の範囲内であり;ある実施形態においては5:15〜15:5の範囲内である。ある実施形態においては、第1のホスト材料は、全ホスト材料の少なくとも50重量%であり;ある実施形態においては、少なくとも70重量%である。
【0055】
ドーパントは、380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性材料である。ある実施形態においては、ドーパントは赤色、緑色、または青色の光を発する。
【0056】
電気活性層中のドーパントとして使用できるエレクトロルミネッセンスの(「EL」)材料としては、小分子有機発光性化合物、発光性金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。小分子発光性化合物の例としては、クリセン類、ピレン類、ペリレン類、ルブレン類、クマリン類、アントラセン類、チアジアゾール類、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン)類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
赤色発光材料の例としては、ペリフランテン類、フルオランテン類、およびペリレン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。赤色発光材料は、たとえば、米国特許第6,875,524号明細書、および米国特許出願公開第2005−0158577号明細書に開示されている。
【0058】
緑色発光材料の例としては、ジアミノアントラセン類、およびポリフェニレンビニレンポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。緑色発光材料は、たとえば、国際公開第2007/021117号パンフレットに開示されている。
【0059】
青色発光材料の例としては、ジアリールアントラセン類、ジアミノクリセン類、ジアミノピレン類、およびポリフルオレンポリマー類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。青色発光材料は、たとえば、米国特許第6,875,524号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007−0292713号明細書、および米国特許出願公開第2007−0063638号明細書に開示されている。
【0060】
ある実施形態においては、ドーパントは有機化合物である。ある実施形態においては、ドーパントは、非ポリマーのスピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物からなる群から選択される。
【0061】
ある実施形態においては、ドーパントはアリールアミン基を有する化合物である。ある実施形態においては、電気活性ドーパントは以下の式:
【0062】
【化3】

【0063】
(式中:
Aは、出現ごとに同種または異種であり、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’は、単結合、または3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
pおよびqは独立して、1〜6の整数である)
から選択される。
【0064】
上記式のある実施形態においては、各式中のAおよびQ’の少なくとも1つは、少なくとも3つの縮合環を有する。ある実施形態においては、pおよびqは1である。
【0065】
ある実施形態においては、Q’は、スチリル基またはスチリルフェニル基である。
【0066】
ある実施形態においては、Q’は、少なくとも2つの縮合環を有する芳香族基である。ある実施形態においては、Q’は、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、およびルブレンからなる群から選択される。
【0067】
ある実施形態においては、Aは、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、およびアントラセニル基からなる群から選択される。
【0068】
ある実施形態においては、ドーパントは以下の式:
【0069】
【化4】

【0070】
(式中:
Yは、出現ごとに同種または異種であり、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’’は、芳香族基、二価のトリフェニルアミン残基、または単結合である)
で表される。
【0071】
ある実施形態においては、ドーパントはアリールアセンである。ある実施形態においては、ドーパントは非対称アリールアセンである。
【0072】
緑色ドーパントの一部の非限定的な例は、以下の示す化合物D1からD8である。
【0073】
【化5】

【0074】
【化6】

【0075】
【化7】

【0076】
【化8】

【0077】
青色ドーパントの一部の非限定的な例は、以下の示す化合物D9からD16である。
【0078】
【化9】

【0079】
【化10】

【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

【0082】
ある実施形態においては、電気活性ドーパントは、アミノ置換クリセン類およびアミノ置換アントラセン類からなる群から選択される。
【0083】
b.他のデバイス層
デバイス中の他の層は、そのような層中に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0084】
アノード110は、正電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。アノードは、たとえば金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する材料でできていいてもよいし、伝導性ポリマー、およびそれらの混合物であってもよい。好適な金属としては、11族金属、4〜6族の金属、および8〜10族の遷移金属が挙げられる。アノードが光透過性となるべき場合には、インジウムスズ酸化物などの12族、13族、および14族の金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノード110は、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」、Nature 第357巻、pp 477−479(1992年6月11日)に記載されるようなポリアニリンなどの有機材料を含むこともできる。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明であることが望ましい。
【0085】
正孔注入層120は正孔注入材料を含み、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる。正孔注入材料は、ポリマー、オリゴマー、または小分子であってよい。これらは、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物、またはその他の組成物の形態であってよい液体から気相堆積または堆積することができる。
【0086】
正孔注入層は、プロトン酸がドープされることが多いポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料で形成され得る。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。
【0087】
正孔注入層は、銅フタロシアニンやテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。
【0088】
ある実施形態においては、正孔注入層は、少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび少なくとも1種類のフッ素化酸ポリマーを含む。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/205860号明細書に記載されている。
【0089】
層130の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.Wangにより,Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第18巻、p.837−860、1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子は:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(□−NPB)、および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物である。一般に使用される正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、およびポリアニリンである。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。場合により、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。場合により、これらのポリマーおよびコポリマーは架橋性である。架橋性正孔輸送ポリマーの例は、たとえば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および国際公開第2005/052027号パンフレットに見ることができる。ある実施形態においては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントでドープされる。
【0090】
ある実施形態においては、電子輸送層150は、本発明が請求する新規重水素化合物を含む。層150中に使用可能な他の電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ);ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびにそれらの混合物が挙げられる。電子輸送層は、Csまたはその他のアルカリ金属などのn−ドーパントでドープすることもできる。層150は、電子輸送の促進と、層界面での励起子の消光を防止する緩衝層または閉じ込め層としての両方の機能を果たすことができる。好ましくは、この層は電子移動を促進し、励起子の消光を減少させる。
【0091】
カソード160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソードの材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Cs)、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、たとえば希土類元素およびランタニド、ならびにアクチニドから選択することができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウム、ならびに組み合わせた材料を使用することができる。動作電圧を低下させるために、Li−またはCs−含有有機金属化合物、LiF、CsFおよびLi2Oを有機層とカソード層との間に堆積することもできる。
【0092】
有機電子デバイス中に別の層を有することが知られている。たとえば、注入される正電荷量を制御するため、および/または層のバンドギャップの整合性を促進するため、あるいは保護層として機能させるために、アノード110と正孔注入層120との間に層(図示せず)が存在してもよい。銅フタロシアニン、ケイ素酸窒化物、フルオロカーボン類、シラン類、またはPtなどの金属の超薄層などの、当技術分野において周知の層を使用することができる。あるいは、アノード層110、活性層120、130、140、および150、あるいはカソード層160の一部またはすべては、電荷キャリア輸送効率を増加させるために表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、好ましくは、高いエレクトロルミネッセンス効率を有するデバイスを得るために発光層中の正電荷および負電荷の釣り合いを取ることによって決定される。
【0093】
各機能層は2つ以上の層で構成されてよいことを理解されたい。
【0094】
本発明のデバイスは、好適な基体上に個別の層を順次気相堆積するなどの種々の技術によって作製することができる。ガラス、プラスチック、および金属などの基体を使用することができる。熱蒸着、化学蒸着などの従来の気相堆積技術を使用することができる。あるいは、有機層は、限定するものではないが、スピンコーティング、浸漬コーティング、ロール・トゥ・ロール技術、スロット・ダイ・コーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの従来のコーティングまたは印刷技術を使用して、好適な溶媒中の溶液または分散体から適用することもできる。
【0095】
本発明は、2つの電気接触層の間に少なくとも1つの活性層を含む電子デバイスであって、デバイスの少なくとも1つの活性層が重水素化された化合物を含む電子デバイスにも関する。多くの場合デバイスは追加の正孔輸送および電子輸送層を有する。
【0096】
高効率LEDを実現するために、正孔輸送材料のHOMO(最高被占分子軌道)がアノードの仕事関数に合わせられることが望ましく、電子輸送材料のLUMO(最低空分子軌道)がカソードの仕事関数に合わせられることが望ましい。材料の化学的適合性および昇華温度も、電子輸送材料および正孔輸送材料の選択における重要な考慮事項である。
【0097】
デバイス中の別の層を最適化することによってデバイスを改善できることを理解されたい。たとえば、Ca、Ba、またはLiFなどのより効率的なカソードを使用することができる。動作電圧を下げたり量子効率を増加させたりする成形基体および新規な正孔輸送材料も利用可能である。種々の層のエネルギー準位を調整しエレクトロルミネッセンスを促進するために追加層を加えることもできる。
【0098】
本発明の化合物は、多くの場合、フォトルミネッセンスであり、酸素感受性インジケーターおよびバイオアッセイにおけるルミネッセンスインジケーターなど、OLED以外の用途において有用となりうる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例により、本発明の特定の特徴および利点を説明する。これらは、本発明の説明を意図するものであり、限定を意図するものではない。特に明記しない限り、すべてのパーセント値は重量を基準としている。
【0100】
配位子のD6−8−ヒドロキシキノリンの合成
【0101】
【化13】

【0102】
8−ヒドロキシキノリン93.00g、20.667mmol)、D2O(60mL)、および10%Pd/C(0.200g)の混合物を、窒素雰囲気下のParr反応器中に投入し、180Cで16時間加熱した。得られた混合物をジエチルエーテル(200mL)に加え、層を分離させ、その有機層をCeliteで濾過した。揮発分を蒸発させた後、得られた固体を、クロマトグラフィー(20%DCM/ヘキサン)を用いて精製して、2.4g(収率77%)のD6−8−ヒドロキシキノリン生成物を得た。
【0103】
重水素化ジルコニウム化合物の合成
【0104】
【化14】

【0105】
1.0gの量の塩化ジルコニウムをグローブボックス中に入れ、10mLの乾燥メタノールと混合する。この塩化ジルコニウムおよびメタノールの混合物に、10mLの乾燥メタノール中の3.2gの8−ヒドロキシキノリン−D6の撹拌溶液を加える。撹拌すると、ジルコニウム試薬およびヒドロキシキノリン試薬が混合されて濃い黄色の沈殿物が生成し、窒素で加熱還流しながら30分間攪拌を続ける。4.8gのトリ−n−ブチルアミンを加え、15分間還流し、続いて、グローブボックスの外で濃い黄色の沈殿物を濾過した。3段階の洗浄手順は、メタノール洗浄、続いて1Nアンモニア洗浄、続いて最後にメタノール洗浄を含む。塩化メチレンを使用した抽出物を減圧乾燥すると、黄緑色フォトルミネッセンス材料を有する淡黄色溶液が得られ、続いてメタノールを使用して沈殿させる。
【0106】
ヒドロキシキノリン出発物質は、最終化合物を生成するためのH、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルの構成要素のいずれかを含有することができる。
【0107】
ドーパント材料の合成
(1)ドーパントD6を以下のように調製した。
【0108】
中間体(a)の合成:
【0109】
【化15】

【0110】
35g(300mM)の2−メチル−2−ヘキサノールおよび17.8gのアントラセン(100mM)を50mLのトリフルオロ酢酸に加え、窒素下で終夜還流した。溶液の色は急速に濃くなり、褐色の不均一材料となった。これを室温まで冷却し、窒素流下で蒸発させ、塩化メチレン中に抽出した。有機層を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。ヘキサンを使用したシリカカラムに通して得られた固体を抽出し、淡黄色溶液を回収した。蒸発させると濃い黄色の油が得られ、ゆっくり冷却することによって、アセトン/メタノールから再結晶させ、メタノールから再結晶させた。NMR分析により構造を確認した。
【0111】
中間体(b)の合成:
【0112】
【化16】

【0113】
6.0g(16mM)の中間体(a)(純粋な2,6異性体)を100mLのジクロロエタン中に加え、室温で4時間攪拌しながら2.10mLの臭素(40mM)を滴下した。これを水中に注ぎ、亜硫酸ナトリウムを加えて残存する臭素を消費させた。次にこれを塩化メチレン中に抽出し、その有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。得られた材料を、塩化メチレン溶離液を用いたアルミナカラムに通し、次に蒸発させ、メタノールを加えると、淡黄色固体が沈殿した。収量約7.2g
【0114】
中間体(c)の合成:
【0115】
【化17】

【0116】
グローブボックス中の25gのブロモ−カルバゾール(77.7mM)に18.9g(155mM)のボロン酸を加えた。これに1.0gのPd2DBA3(1.0mM)、0.5gのP(t−Bu)3(2.1mM)、および20gの炭酸ナトリウム(200mM)を加え、すべてを50mLの水を含有する200mLのジオキサン中に溶解させた。これをグローブボックス中、50℃のマントル中で1時間加熱混合し、次に窒素下で終夜穏やかに加温した(最低のレオスタット設定)。溶液は直ちに暗紫色になり、約50Cに到達すると暗褐色になった。グローブボックスの外で褐色溶液に水を加えると、油状の黄色の層が分離した。DCMを加え、有機層を分離させた。濾液を硫酸マグネシウム上で乾燥させると、淡橙色の溶液が得られ、蒸発させると白色固体が得られた。低体積まで蒸発させた後、ヘキサンを加え、白色固体を濾過した。その固体を、洗液が無色になるまでメタノールで十分に洗浄し、次にエーテルで洗浄し、減圧乾燥して、21gの白色固体を得た。構造をNMR分析によって確認した。
【0117】
中間体(d)の合成:
【0118】
【化18】

【0119】
グローブボックス中で、0.4gのPd2DBA3、0.4gの1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン(DPPF)、および4.3gのナトリウムt−ブトキシドを互いに混合し、200mLのキシレン中に溶解させた。15分間攪拌し、次に25gの3−ヨード−ブロモベンゼンを加えた。15分間攪拌し、次に10gのカルバゾールを加え、その混合物を還流した。空気冷却器を使用して終夜(o/n)還流した。溶液は直ちに暗紫色/褐色になったが、約80Cに到達すると、暗赤褐色になり濁った。還流に近い状態で終夜加熱した後、溶液は暗褐色で透明になった。グローブボックスの外で窒素流中で蒸発させ、次にDCM中に溶解させ、シリカおよび塩基性アルミナの層(ソックスレー中に積層)でDCM/ヘキサンを使用して抽出(ソックスレー)した。暗橙色の溶液を回収し、蒸発乾固させた。暗橙色の油が残留した。これをメタノールで洗浄し、次にエーテル中に溶解させ、メタノールで再沈させた。得られた橙褐色油をエーテル中で低体積まで蒸発させ、次にアセトン/メタノールを加えると、オフホワイト固体が約6.4gの収量で沈殿した。これを濾過によって回収し、少量のアセトンで洗浄し、減圧乾燥した。構造をNMR分析によって確認した。
【0120】
中間体(e)の合成
【0121】
【化19】

【0122】
グローブボックス中で4.8gの中間体(d)(0.01M)に1.7gのアミン(0.01M)を加えた。これに、0.10gのPd2DBA3(0.11mM)、0.045gのP(t−Bu)3(0.22mM)、および1.1gのt−BuONaを加え、すべてを25mLのトルエン中に溶解させた。触媒材料を加えた後、穏やかな発熱が生じた。これをグローブボックス中80℃のマントル中、窒素下で2時間、暗褐色溶液(濃厚)として加熱した。冷却後、DCMで溶出させるβ−アルミナクロマトグラフィーによって溶液のワークアップを行った。鮮紫色/青色フォトルミネッセンスを有する暗黄色溶液が回収された。これを窒素中で低体積まで蒸発させると、粘稠な橙色油が形成され、これを冷却すると固化して暗黄色ガラス状物質が得られた。これをメタノール/DCM中で撹拌し、淡黄色/白色固体として結晶化させると、収量は約5gとなった。構造をNMR分析によって確認した。
【0123】
ドーパントD6の合成:
【0124】
【化20】

【0125】
グローブボックス中で1.32gの中間体(b)(2.5mM)に、2.81g(5mM)の中間体(e)および0.5gのt−BuONa(5mM)を50mLのトルエンとともに加えた。これに、10mLのトルエン中に溶解させた0.2gのPd2DBA3(0.2mM)、0.08gのP(t−Bu)3(0.4mM)を加えた。混合後、溶液はゆっくりと発熱し、黄褐色になった。これをグローブボックス中、約100℃のマントル中、窒素下で1時間加熱混合した。溶液は直ちに暗紫色になったが、約80℃に到達すると、顕著な緑色ルミネセンスを有する暗黄緑色になった。最低のレオスタット設定で終夜撹拌した。冷却後、材料をグローブボックスから取りだし、酸性アルミナプラグで濾過し、トルエンおよび塩化メチレンで溶出させた。得られた暗橙色溶液を低体積まで蒸発させた。これをシリカカラム(60:40のトルエン:ヘキサンを使用)に通した。黄橙色溶液を回収し、これはTLC上で青色の主スポットを示した。これをヘキサン:トルエン(80:20)中に再溶解させ、酸性アルミナ中に通し(passedn)、80%ヘキサン/トルエンで溶出させた。早く溶出した青色帯域(アントラセンおよびモノアミノ化(monaminated)アントラセン)は廃棄した。得られた黄色帯域を低体積まで蒸発させ、トルエン/アセトン/メタノールから結晶化させた。これをメタノールおよびヘキサンで洗浄し、減圧乾燥すると、易流動性微結晶黄色粉末が得られた。構造をNMR分析によって確認した。
【0126】
(2)ドーパントD12のN6,N12−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−N6,N12−ビス(4’’−イソプロピルターフェニル−4−イル)クリセン−6,12−ジアミンを以下のように調製した。
【0127】
【化21】

【0128】
ドライボックス中で、6,12−ジブロモクリセン(0.54g、1.38mmol)、N−(2,4−ジメチルフェニル)−N−(4’−イソプロピルターフェニル−4−イル)アミン(1.11g、2.82mmol)、トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.028g、0.14mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.063g、0.069mmol)を丸底フラスコ中で混合し、20mlの乾燥トルエン中に溶解させた。得られた溶液を1分間撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.29g、3.03mmol)および10mlの乾燥トルエンを加えた。マントルヒーターを取り付け、反応物を60Cで3日間加熱した。次に、反応混合物を室温まで冷却し、1インチのシリカゲルのプラグおよび1インチのセライトのプラグで濾過し、トルエン(500mL)で洗浄した。減圧下で揮発分を除去して黄色固体を得た。粗生成物を、ヘキサン中クロロホルムのグラジエント(0%から40%)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。DCMおよびアセトニトリルから再結晶して、0.540g(40%)の生成物を黄色固体として得た。1H NMR(CDCl3)は構造と一致している。
【0129】
(3)D12の合成と類似の手順を使用してドーパントD13のN6,N12−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−N6,N12−ビス(4’’−tert−オクチルターフェニル−4−イル)クリセン−6,12−ジアミンを作製した。
【0130】
【化22】

【0131】
【表1】

【0132】
OLEDデバイスは溶液処理と熱蒸着技術との組み合わせによって製造した。Thin Film Devices,Incのパターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITO基体は、30オーム/スクエアのシート抵抗および80%の光透過率を有するITOがコーティングされたCorning 1737ガラスを主とするものである。これらのパターン化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。次に、このパターン化されたITOを、アセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、窒素気流中で乾燥させた。
【0133】
デバイス製造の直前に、このパターン化されたITO基体を洗浄したものをUVオゾンで10分間処理した。冷却の直後に、HIJ1の水性分散体をITO表面上にスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次に基体に正孔輸送材料の溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、基体に発光層溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基体をマスクし、真空室に入れた。熱蒸着によって電子輸送層を堆積し、次にCsF層を堆積した。次に真空下でマスクを交換し、Al層を熱蒸着によって堆積した。真空室に通気し、ガラス蓋、デシカント(dessicant)、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。
【0134】
OLED試料の特性決定を、それらの(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス放射輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネッセンススペクトル対電圧を測定することによって行った。3つすべての測定を同時に行い、コンピュータで制御を行った。LEDのエレクトロルミネッセンス放射輝度を、デバイスを動作させるために必要な電流で割ることによって、ある電圧におけるデバイスの電流効率が求められる。この単位はcd/Aである。出力効率は、電流効率をpi倍し、動作電圧で割った値である。この単位はlm/Wである。デバイスデータを以下の表に示している。
【0135】
【表2】

【0136】
本発明の重水素化合物を用いると、デバイスの寿命が増加するが、他のデバイス特性は維持されることが分かる。
【0137】
実施例4
この実施例では、重水素化レベルが制御され、エレクトロニクスで使用可能な一部の重水素化中間化合物の調製を示す。
【0138】
中間体4A:
【0139】
【化23】

【0140】
アントラセン−d10(18.8g、0.10モル)のCCl4(500mL)中の溶液に、無水臭化第二銅(45g、0.202モル)を1回で加えた。反応混合物を還流下で12時間加熱撹拌した。褐色の塩化第二銅は徐々に白色の臭化第一銅に変化し、臭化水素が少しずつ発生した(塩基浴吸収装置に接続した)。反応終了後、臭化第一銅を濾過によって回収し、その四塩化炭素溶液を、200gのアルミナを充填した35−mmクロマトグラフィーカラムに通した。カラムは200mlのCH2Cl2で溶出させる。1つにまとめた溶出液を蒸発乾固させると、24g(87%)の9−ブロモアントラセン−d9がレモンイエローの固体として得られる。これは出発物質の不純物(約2%)およびジブロモ副生成物(約2%)を含有する。この材料を、精製することなくさらなるカップリング反応に直接使用した。この中間体は、ヘキサンまたはシクロヘキサンを使用して再結晶させることでさらに生成して、純化合物を得ることができる。
【0141】
中間体4B:
【0142】
【化24】

【0143】
d5−ブロモベンゼン(MW162、100g、0.617mol)に、93mLの50%H2SO4および494mLのHOAcの混合溶媒を室温(rt)で加えた。次に粉末I2(MW254、61.7g、0.243mol)を加え、次に粉末NaIO4(MW214、26.4g、0.123mol)を加えた。この混合物を激しく撹拌し、90℃で4時間加熱した。暗紫色の溶液は、非常に微細な白色沈殿物を含有する淡橙色混合物に変化した。この混合物を室温で終夜冷却した。この時間の間に、生成物は微結晶の板として沈殿した。混合物を濾過し、10%チオ硫酸ナトリウムNa223(50mL)で2回洗浄し、次に水で洗浄した。これをCH2Cl2中に溶解させ、フラッシュカラムに通した。淡黄色結晶材料が124g(70%)得られた。濾液をCH2Cl2(50mL×3)で抽出し、1つにまとめたCH2Cl2を10%チオ硫酸ナトリウムNa223(50mL)で2回洗浄し、次に水で洗浄した。溶媒を乾燥し、蒸発させた後、フラッシュカラムに通して、さらに32gの純生成物(17.5%)を得た。合計156g(収率88%)である。
【0144】
中間体4C:
【0145】
【化25】

【0146】
ナファレン(naphalene)−d8(MW136、68g、0.5モル)のCH2Cl2(800mL):H20(80mL)および臭化水素酸(MW:81、d=1.49、100g;67.5mLの49%水溶液;0.6mol)中の撹拌溶液に、過酸化水素(FW:34、d=1.1g/mL、56g;51.5mLの30%水溶液;0.5mol)を10〜15℃において30分かけてゆっくりと加えた。反応を室温で40時間維持しながら、反応の進行をTLCによって監視した。臭素化完了後、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を10%チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3(50mL)で2回洗浄し、次に水で洗浄した。シリカゲル(100〜200メッシュ)上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにヘキサン(100%)を使用して純生成物を単離し、続いて蒸留することによって、純粋な1−ブロモ−ナフテン−d7が85gの透明液体として得られ、収量は約80%である。
【0147】
中間体4D:
【0148】
【化26】

【0149】
1−ブロモナフタレン−d7(21.4g、0.10mol)、ビス(ピナコラト)二ホウ素(38g、0.15mol)、酢酸カリウム(19.6g、0.20mol)の300mlの乾燥1,4−ジオキサン中の混合物に、窒素を15分間バブリングした。次にPd(dppf)2Cl2−CH2Cl2(1.63g、0.002mol)を加えた。混合物 を100℃(油浴)で18時間加熱した。冷却後、混合物をCELITで濾過し、次に50mLまで濃縮し、次に水を加え、エーテルで3回抽出した(100mL×3)。その有機層を水(3回)およびブライン(1回)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン)に通すと、ナファレン(naphalene)およびジボロン酸エステルの副生成物を有する白色液体が得られた。このため、蒸留によるさらなる精製を行って、粘稠透明液体を得た。収量21g、82%。
【0150】
中間体4E:
【0151】
【化27】

【0152】
1−ブロモ−4−ヨード−ベンゼン−D4(10.95g、0.0382モル)および1−ナファレンボロン酸エステル(naphaleneboronic ester)−D7(10.0g、0.0383モル)のトルエン(300mL)中の混合物に、Na2CO3(12.6g、0.12モル)およびH2O(50mL)、アリクアント(aliquant)(3g)を加えた。混合物に窒素を15分間バブリングした。次にPd(PPh3)4(0.90g、2%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で12時間還流した。冷却後、反応混合物を分離し、その有機層を水で洗浄し、分離し、乾燥させ、濃縮した。シリカを加え、濃縮した。残留溶媒を蒸発させた後、ヘキサンを溶離液として使用するフラッシュカラムに通して、粗生成物を得た。蒸留によってさらに精製して(135〜140℃/100mtorrを回収)、透明粘稠液体(8.76g、収率78%)を得た。
【0153】
中間体4F:
【0154】
【化28】

【0155】
1−ブロモ−フェニル−4−ナフタレン−d11(22g、0.075モル)、ビス(ピナコラト)二ホウ素(23g、0.090mol)、酢酸カリウム22g、0.224mol)の200mlの乾燥1,4−ジオキサン中の混合物に窒素を15分間バブリングした。次にPd(dppf)2Cl2□CH2Cl2(1.20g、0.00147mol)を加えた。混合物を100℃(油浴)で18時間加熱した。冷却後、混合物をCELITで濾過し、次に50mLまで濃縮し、次に水を加え、エーテルで3回抽出した(100mL×3)。その有機層を水(3回)およびブライン(1回)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン)に通すと、ナファレン(naphalene)およびジボロン酸エステルの副生成物を有する白色液体が得られた。このため、ヘキサンを溶離液として使用したシリカゲルカラムに再び通すことで更なる精製を行った。溶媒を蒸発させ、約80mLのヘキサンまで濃縮すると、白色結晶生成物が得られ、これを濾過して20.1gの生成物が81%の収率で得られた。
【0156】
中間体4G:
【0157】
【化29】

【0158】
トルエン(500mL)中の中間体4A(18.2g)および中間体4Fのボロン酸エステル(25.5g)に、Na2CO3(31.8g)およびH2O(120mL)、アリクアント(aliquant)(5g)を加えた。混合物に窒素を15分間バブリングした。次にPd(PPh3)4(1.5g、1.3%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で12時間還流した。冷却後、反応混合物を分離し、その有機層を水で洗浄して、分離し、乾燥させ、約50mLまで濃縮し、MeOH中に注いだ。得られた固体を濾過すると、黄色の粗生成物(約28.0g)が得られた。この粗生成物を水、HCl(10%)、水、およびメタノールで洗浄した。これをCHCl3中に再溶解させ、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。濾液にシリカゲルを加え、濃縮し、乾燥させ、ヘキサンのみを溶離液として使用する(合計50Lのヘキサンが通され、5Lのみのヘキサンか再利用される)シリカゲル(0.5Kg)上で精製して、白色生成物を得た。
【0159】
中間体4H:
【0160】
【化30】

【0161】
中間体4Gの9−(4−ナフタレン−1−イル)フェニルアントラセン−D20(MW400.6、20.3g、0.05モル)のCH2Cl2(450mL)中の溶液を氷浴で冷却したものに、CH2Cl2(150mL)中に溶解させた臭素(MW160、8.0g、0.05モル)をゆっくりと(20分)加えた。直ちに反応が起こり、色が淡黄色に変化した。Na2S2O3(2M、100mL)の溶液を加え、15分間攪拌した。次に水層を分離し、有機相をNa2CO3(10%、50mL)で洗浄し、次に水で3回洗浄した。分離し、次にMgSO4で乾燥させた後、溶媒が100mL残留するまで蒸発させた。メタノール(200mL)中に注ぎ、濾過して、23.3gの純化合物(MW478.5、収率97.5%)が得られHPLCは純度100%を示している。
【0162】
中間体4I:
【0163】
【化31】

【0164】
ナフタレン−D8(13.6g、0.10モル)、ビス(ピナコラト)二ホウ素(27.93g、0.11モル)、ジ−μ−メトキソビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイラジウム(diiradium)(I)[Ir(OMe)COD]2(1.35g、2mmol、2%)、および4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン(1.1g、4mmol)の混合物を、シクロヘキサン(200mL)に加えた。混合物をN2で15分間脱気した後、85℃(油浴)で終夜加熱した(暗褐色溶液)。混合物をシリカゲルパッドに通した。複数の分画を回収し、乾燥するまで濃縮した。ヘキサンを加えた。濾液を濃縮し(液体)、シリカゲルカラムに通し、ヘキサンで洗浄すると、透明液体が得られ、これは純粋ではなく、シリカゲルカラムによって再度精製し、ヘキサンで洗浄した後、135℃/100mmtorrで蒸留すると、純粋な白色粘稠液体が得られ、これは固化して白色粉末(18.5g、収率70%)が得られた。
【0165】
中間体4J:
【0166】
【化32】

【0167】
RBF(100mL)中に、9−ブロモアントラセン−d9(MW266、2.66g、0.01モル)、ナフテレン(naphthelen)−2−ボロン酸(MW172、1.72g、0.01mol)を加え、続いてトルエン(30mL)を加えた、混合物にN2を10分間パージした。次に、水(10mL)中に溶解させたNa2CO3(2M、10mL(2.12g)0.02モル)を加えた。混合物のN2パージを10分間続けた。触媒量のPd(PPh34(0.25g、2.5%、0.025mmol)を加えた。混合物を終夜還流した。有機層を分離し、次にメタホール(metahol)中に注ぎ、水、HCl(10%)、水、およびメタノールで洗浄した。これより2.6gの純粋な白色生成物が得られる(収率:83%)。
【0168】
中間体4K:
【0169】
【化33】

【0170】
(2.6g、0.0083モル)の中間体4Jの9−2’−ナフチル−アンタセン(anthacene)−d9のCH2Cl2(50mL)中の溶液に、CH2Cl2(5mL)中の臭素溶液(1.33g、0.0083モル)を滴下し、30分間攪拌した。Na2S2O3溶液(2M、10mL)を加え、15分間攪拌した。次に水層を分離し、有機相をNa2CO3(10%、10mL)で洗浄し、続いて水で3回洗浄した。分離し、次にMgSO4で乾燥させた後、溶媒が20mL残留するまで蒸発させた。メタノール(100mL)中に注ぎ、濾過すると、純化合物(3.1g、収率96%)が得られた。
【0171】
中間体4L:
【0172】
【化34】

【0173】
中間体4Kの9−ブロモアントラセン−D9(2.66g、0.01モル)および4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−2−イル−D7)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.7g、0.011モル)のトルエン(約60mL)中の混合物に、Na2CO3(4.0g、0.04モル)およびH2O(20mL)を加えた。混合物に窒素を15分間バブリングした。次にPd(PPh34(0.20g、2.0%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で18時間還流した(黄色固体)。反応混合物を冷却した後、MeOH(200mL)中に注いだ。得られた固体を濾過して、黄色の粗生成物を得た。この粗生成物を水およびメタノールで洗浄した。これをCHCl3中に再溶解させ、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。濾液にシリカゲルを加え、濃縮し、乾燥させ、ヘキサンを溶離液として使用してシリカゲルで精製して、純生成物(3.0g、収率94%)を得た。
【0174】
中間体4M:
【0175】
【化35】

【0176】
中間体4Lの9−2’−ナフチル−アンタセン(anthacene)-d9(2.8g0.00875モル)のCH2Cl2(50mL)中の溶液に、CH2Cl2(5mL)中の臭素溶液(1.4g、0.00875モル)を滴下し、30分間攪拌した。次にNa2S2O3溶液(2M、10mL)を加え、混合物を15分間攪拌した。次に水層を分離し、有機相をNa2CO3(10%、10mL)で洗浄し、続いて水で3回洗浄した。分離し、次にMgSO4で乾燥させた後、溶媒が20mL残留するまで蒸発させた。メタノール(100mL)中に注ぎ、濾過して、純化合物(3.3g、収量95%)を得た。
【0177】
実施例5
この実施例では、中間体4Hおよび中間体4Iからのホスト化合物の合成を示す。
【0178】
【化36】

【0179】
中間体4Hの9ブロモ−10−(4−ナフタレン−1−イル)フェニルアントラセン−D19(14.84g、0.031モル)および2−ナフタレンボロン酸エステル中間体4I(10.0g、0.038mol)のDME(350mL)中の混合物に、K2CO3(12.8g、0.093モル)およびH2O(40mL)を加えた。混合物に窒素を15分間バブリングした。次にPd(PPh3)4(0.45g、1.3%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で12時間還流した。冷却後、反応混合物を約150mLまで濃縮し、MeOH中に注いだ。得られた固体を濾過して、淡黄色の粗生成物を得た。この粗生成物を水およびメタノールで洗浄した。これをCHCl3中に再溶解させ、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。その濾液にシリカゲルを加え、濃縮し、乾燥させ、ヘキサン:クロロホルム(3:1)を溶離液として使用してシリカゲル(0.5Kg)上で精製して、白色精製物(15g、収率91%)を得た。
【0180】
実施例6
この実施例では、中間体4Kからの別のホスト化合物の合成を示す。
【0181】
【化37】

【0182】
RBF(100mL)中に、9−ブロモ−10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン、中間体4K(1.96g、0.05mol)、4−(ナフタレン−1−イル)フェニルボロン酸(1.49g、0.06mol)を加え、続いてトルエン(30mL)を加えた。混合物にN2を10分間パージした。次に、水(8mL)中に溶解させたNa2CO3(1.90g、0.018モル)を加え、続いてAliquent(1mL)を加えた。混合物のN2パージを10分間続けた。触媒量のPd(PPh3)4(116mg)を加えた。混合物を終夜還流した。水相を分離した後、有機層をメタノール(100mL)中に注ぎ、白色固体を回収した。これを濾過し、クロロホルム:ヘキサン(1:3)を使用したシリカゲルカラムに通してさらに精製して、純粋な白色化合物(2.30g、収率90%)を得た。
【0183】
実施例7
この実施例では、中間体4Kおよび中間体4Fからの別のホスト材料の合成を示す。
【0184】
【化38】

【0185】
RBF(100mL)中に、9−ブロモ−10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−D8、中間体4K(0.70g、0.0018mol)、4−(ナフタレン−1−イル)フェニルボロン酸−D11、中間体4F(0.7g、0.002mol)を加え、続いてトルエン(10mL)を加えた。混合物にN2を10分間パージした。次に、水(3mL)中に溶解させたNa2CO3(0.64g、0.006モル)を加え、続いてAliquent 0.1mL)を加えた。混合物のN2パージを10分間続けた。触媒量のPd(PPh3)4(0.10g)を加えた。混合物を終夜還流した。水相を分離した後、有機層をメタノール(100mL)中に注ぎ、白色固体を回収した。これを濾過し、クロロホルム:ヘキサン(1:3)を使用したシリカゲルカラムに通してさらに精製して、純粋な白色化合物(0.90g、収率95%)を得た。
【0186】
他のホスト化合物も類似の方法で調製することができる。
【0187】
本発明の重水素化合物を有する組み合わせによって、デバイスの寿命が増加しながら、他のデバイスの性質は維持されることが分かる。
【0188】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つ以上のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0189】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0190】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0191】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、範囲内で記載される値に関する言及は、その範囲内の個別のそれぞれの値を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム化合物であって:
【化1】

(式中:
1からR6は、出現ごとに同種または異種であり、H、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;R1からR6の少なくとも1つが、少なくとも1つのDを含有する)
である、ジルコニウム化合物。
【請求項2】
少なくとも10%が重水素化されている、請求項1に記載のジルコニウム化合物。
【請求項3】
少なくとも50%が重水素化されている、請求項1に記載のジルコニウム化合物。
【請求項4】
100%が重水素化されている、請求項1に記載のジルコニウム化合物。
【請求項5】
1からR6の少なくとも2つがDである、請求項1に記載のジルコニウム化合物。
【請求項6】
1からR6がHおよびDから選択される、請求項1に記載のジルコニウム化合物。
【請求項7】
前記化合物が:
【化2】

からなる化合物である、請求項4または6のいずれか一項に記載のジルコニウム化合物。
【請求項8】
第1の電気接触層と、第2の電気接触層と、電子輸送層と、前記第1および第2の接触層の間の少なくとも1つの活性層とを含み、前記電子輸送層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機電子デバイス。
【請求項9】
前記活性層が、1種類以上のドーパント化合物を有するホスト/ドーパントの組み合わせ中に1種類以上のアリール置換アントラセンホスト化合物を含む電気活性層である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アントラセンホスト化合物が重水素化されている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ドーパント化合物が重水素化されている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の電気接触層と前記電気活性層との間に正孔注入層をさらに含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび少なくとも1種類のフッ素化酸ポリマーを含む正孔注入層をも含む、請求項12に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515011(P2013−515011A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544959(P2012−544959)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061677
【国際公開番号】WO2011/087815
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】