説明

電子端末装置

【課題】メールやインターネットへのアクセスなどが行えるPDAなどの電子端末装置で、表示画面の幅狭方向と幅広方向とでトラックボールの回転のさせ方を変化させる必要なく、常に適切且つ容易にポインタ(カーソル)を移動表示させる。
【解決手段】縦横比が大きく異なる表示装置(画面)15で表示されるポインタ(カーソル)Pをトラックボール部17のボール回転操作により移動表示させる際、表示短辺方向15Sに対応するボール操作(Y)の回転量Asよりも表示長辺方向15Lに対応するボール操作(X)の回転量Alに対して大きな補正値Blを乗算し、この補正後のボール回転量に応じた移動量でポインタPを移動表示させる。ポインタPを長辺方向15Lへ移動表示させる場合でもそのボール操作の仕方を短辺方向15Sへの移動表示に伴うボール操作の仕方と変えること無しにポインタPの移動表示を高速且つ容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メールやインターネットへのアクセスなど、PDA(Personal Digital Assistant)的な使い方が行える電子端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メールやインターネットへのアクセスが携帯電話・PDAなどの携帯端末装置から行えるようになっている。
【0003】
このような携帯端末装置において、WWWブラウザを利用して各種Webサイトのページを表示させる場合、従来の携帯電話にあるように小さな表示画面では非常に見辛いため、縦横比の大きな表示画面を、携帯性を損なわない構造にして搭載したものが実用化されている。
【0004】
そして、携帯端末装置では、通常片手でのキー操作によって画面上に表示されたポインタ(カーソル)の移動などを行うものであるが、例えばカーソルキーの連続操作によって表示画面上のポインタを縦または横の長い方向に移動表示させる場合、当該ポインタを長距離移動させるのが非常に面倒で時間の掛かる問題がある。
【0005】
このため、携帯端末装置にあっても、ポインティングデバイスとしてトラックボールを備えさせることにより、ポインタ移動操作の容易化を図ることが考えられる。そして、トラックボールの操作回転速度に応じてポインタ表示の移動距離を補正し、さらにポインタ移動操作の高速化・容易化を図ることが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−111760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記トラックボールの回転速度に応じてポインタ(カーソル)表示の移動距離を補正する従来のポインタ表示制御手法では、表示画面の縦横比に関係なく、高速にトラックボールを回転操作すればその回転量が同一であってもポインタは通常より長距離を移動して表示されるようになるため、ポインタを画面幅狭方向に適切に移動表示させる場合と幅広方向に適切に移動表示させる場合とで、トラックボールの回転のさせ方を変化させなければならない必要が生じてくる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、表示画面の幅狭方向と幅広方向とでトラックボールの回転のさせ方を変化させる必要なく、常に適切且つ容易にポインタ(カーソル)を移動表示させることが可能になる電子端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の電子端末装置は、表示部と、トラックボールと、このトラックボールのユーザ操作によるX方向及びY方向のボール回転方向とその各回転量を検出する回転検出手段と、この回転検出手段により検出された前記トラックボールのボール回転方向とその各回転量に応じて、当該ボール回転量をX方向の回転量とY方向の回転量とで異なる値の補正係数を設定して補正する回転量補正手段と、この回転量補正手段により補正された前記トラックボールのX方向及びY方向のボール回転方向とその各回転量に応じて前記表示部の表示画面に表示されるポインタを移動表示させるポインタ移動表示制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の電子端末装置は、前記請求項1に記載の電子端末装置において、前記表示部はその縦横比が異なる表示画面を有し、前記回転量補正手段は、前記表示画面の長辺方向に対応するX方向またはY方向のボール回転量を同表示画面の短辺方向に対応するY方向またはX方向のボール回転量よりも大きい補正係数を設定して補正することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の電子端末装置は、前記請求項2に記載の電子端末装置において、前記表示部の表示画面をその縦方向と横方向とで回転させる表示部回転手段と、この表示部回転手段による前記表示部の回転方向を検出する表示部回転検出手段とを備え、前記回転量補正手段は、前記表示部回転検出手段により検出された前記表示部の回転方向に従って、その表示画面の長辺方向に対応するX方向またはY方向のボール回転量を同表示画面の短辺方向に対応するY方向またはX方向のボール回転量よりも大きい補正係数を設定して補正することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の電子端末装置は、前記請求項3に記載の電子端末装置において、前記回転量補正手段により設定される補正係数は、第1の補正係数と第2の補正係数とからなり、当該第2の補正係数によるボール回転量の補正は、前記表示部回転検出手段により前記表示部の表示画面の長辺方向が前記トラックボールのX方向の回転方向と一致する方向として検出された場合にだけ追加で行われることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の電子端末装置は、前記請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電子端末装置において、外部PCと接続するPC接続手段と、前記外部PCの表示画面のサイズより前記表示部の表示画面のサイズの方が小さい場合に、当該表示部の表示画面サイズに対する前記外部PCの表示画面サイズの比率を算出する画面比率算出手段と、この画面比率算出手段により算出された表示画面サイズの比率に従って、前記回転検出手段により検出された前記トラックボールのX方向のボール回転量とY方向のボール回転量とを補正する回転量補正手段と、この回転量補正手段により補正された前記トラックボールのX方向及びY方向の各ボール回転量を前記外部PCへ出力するボール回転量出力手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の電子端末装置によれば、トラックボールのユーザ操作によるX方向及びY方向のボール回転方向とその各回転量を検出し、この検出されたトラックボールのボール回転方向とその各回転量に応じて、当該ボール回転量をX方向の回転量とY方向の回転量とで異なる値の補正係数を設定して補正する。そして、この補正されたトラックボールのX方向及びY方向のボール回転方向とその各回転量に応じて、表示部の表示画面に表示されるポインタを移動表示制御するので、表示部の長辺方向に対応する側のX方向またはY方向のボール回転量を大きな補正係数にて補正することで、表示短辺方向と変わらぬボール回転操作によって表示長辺方向でのポインタ移動表示も適切にストレスなく行うことができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の電子端末装置によれば、前記請求項1に記載の電子端末装置において、回転量補正手段では、表示画面の長辺方向に対応するX方向またはY方向のボール回転量を同表示画面の短辺方向に対応するY方向またはX方向のボール回転量よりも大きい補正係数を設定して補正するので、表示短辺方向と変わらぬボール回転操作によって表示長辺方向でのポインタ移動表示も適切にストレスなく行うことができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の電子端末装置によれば、前記請求項2に記載の電子端末装置において、回転量補正手段は、表示部回転検出手段により検出された表示部の回転方向に従って、その表示画面の長辺方向に対応するX方向またはY方向のボール回転量を同表示画面の短辺方向に対応するY方向またはX方向のボール回転量よりも大きい補正係数を設定して補正するので、縦横サイズが異なる表示画面を適宜ブラウザの種類によって縦長または横長に回転して使用できる場合でも、自動的に表示長辺方向でのポインタ移動表示を適切にストレスなく行わせることができる。
【0016】
本発明の請求項4に記載の電子端末装置によれば、前記請求項3に記載の電子端末装置において、回転量補正手段により設定される補正係数は、第1の補正係数と第2の補正係数とからなり、当該第2の補正係数によるボール回転量の補正は、表示部回転検出手段により表示部の表示画面の長辺方向がトラックボールのX方向の回転方向と一致する方向として検出された場合にだけ追加で行われるので、装置本体を例えば片手で持ってその親指によりトラックボールを回転操作する場合に、回転操作し難い親指幅方向(X方向)へのボール回転操作によって表示長辺方向へのポインタ移動制御を行うときには、更なる補正を行って当該表示長辺方向でのポインタ移動表示をより適切にストレスなく行うことができる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の電子端末装置によれば、前記請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電子端末装置において、さらに、外部PCのリモート端末として接続使用する際に、外部PCの表示画面のサイズより表示部の表示画面のサイズの方が小さい場合には、当該表示部の表示画面サイズに対する外部PCの表示画面サイズの比率を算出し、この算出された表示画面サイズの比率に従って、回転検出手段により検出されたトラックボールのX方向のボール回転量とY方向のボール回転量とを補正して外部PCへ出力するので、外部PC側の表示画面上に表示されたポインタを、リモート端末側でのトラックボールの回転操作によって違和感の無い移動量で移動表示させることができる。
【0018】
よって本発明によれば、表示画面の幅狭方向と幅広方向とでトラックボールの回転のさせ方を変化させる必要なく、常に適切且つ容易にポインタ(カーソル)を移動表示させることが可能になる電子端末装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る電子端末装置10の外観構成を示す図であり、同図(A)〜(D)は、縦長の装置本体11の正面に対して水平方向に回動可能に重ね合わせて設けられた表示ユニット12をそれぞれ0度回転(A)、90度回転(B)、180度回転(C)、270度回転(D)の状態にして示す正面図および上部側面図である。
【0021】
装置本体11の正面には、その下半分の領域にキー入力装置13が設けられ、また上半分の領域の中央に設けられた回転軸14を支持点として表示ユニット12が設けられる。
【0022】
この表示ユニット12は、縦長である装置本体11の平面縦横サイズと同一の平面サイズを有し、その表面のほぼ全域を占有して縦横比の大きく異なる表示装置(画面)15が設けられる。
【0023】
そして、前記図1(A)で示す表示ユニット12の正面上端部にはマイク16aが設けられ、正面下端部にはスピーカ16bが設けられる。このマイク16aおよびスピーカ16bは、図1(C)で示す表示ユニット12の180度回転状態でその上下位置が反転し、通話用のマイク16aおよびスピーカ16bとして機能する。
【0024】
前記表示ユニット12は、図1(A)〜(D)の矢印r1〜r3で示したように、装置本体11に対する0度回転、90度回転、180度回転、270度回転のそれぞれの回転位置において、回転軸14に設けられた図示しないラッチ機構によってラッチ保持され、同回転軸14に設けられたロータリエンコーダなどの表示部回転検出器14rによってその回転位置が検出される。
【0025】
図2は、前記電子端末装置10の表示ユニット12を0度回転位置にしたユーザ使用状態を示す正面図である。
【0026】
図3は、前記電子端末装置10の表示ユニット12を90度回転位置にしたユーザ使用状態を示す正面図である。
【0027】
図4は、前記電子端末装置10の表示ユニット12を180度回転位置にしたユーザ使用状態を示す正面図である。
【0028】
すなわちこの電子端末装置10において、図1(A)および図2で示すような表示ユニット12の0度回転位置では、携帯便利な最小形状となりビューアとして利用可能な状態になる。また、図1(B)および図3で示すような表示ユニット12の90度回転位置または図1(D)で示すような表示ユニット12の270度回転位置では、メール表示やWebサイトのページ表示に適した横長表示状態となる。さらにまた図1(C)および図4で示すような表示ユニット12の180度回転位置では、通話に適した本体形状になり、携帯電話用ブラウザのコンテンツ表示に適した縦長表示状態となる。
【0029】
そして、装置本体11の裏面側の一方の側端部には、例えば図2〜図4で示したように、装置本体11を把持するユーザの左手Hの親指に合わせた位置にトラックボール部17が設けられる。このトラックボール部17は、表示装置(画面)15に表示されるポインタ(カーソル)Pを移動させるためのポインティングデバイスとして機能する。
【0030】
表示装置(画面)15に表示されるポインタPは、前記トラックボール部17のX方向,Y方向へのボール回転動作に伴い、当該表示装置(画面)15の各回転位置に応じたX軸方向,Y軸方向へ移動表示される。図1(A)および図2で示す表示装置(画面)15の0度回転位置、図1(C)および図4で示す同180度回転位置では、その表示短辺方向15SがX軸方向、表示長辺方向15LがY軸方向に設定され、図1(B)および図3で示す表示装置(画面)15の90度回転位置、図1(D)で示す同270度回転位置では、その表示長辺方向15LがX軸方向、表示短辺方向15SがY軸方向に設定されて、ポインタPの移動表示制御が行われる。
【0031】
この電子端末装置10において、例えば図2〜図4で示したように、装置本体10をユーザの左手で把持し、その親指によってトラックボール部17を回転操作した場合、Y方向への回転は該親指の長さ方向の面を使用して一操作あたり長い回転量が得られる一方で、X方向への回転は同親指幅方向の面を使用するので、一操作あたりに得られる回転量は短くなる。
【0032】
図5は、前記電子端末装置10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0033】
この電子端末装置10は、インターネットとの通信機能を備えた携帯電話あるいはPDAとして機能するもので、コンピュータであるCPU20を備えている。
【0034】
このCPU20は、ROM21に予め記憶される装置制御プログラム、あるいは通信装置22を介して接続通信されるインターネット上のプログラムサーバ(図示せず)からダウンロードされて取り込まれた装置制御プログラム、あるいは外部I/O23を介して接続される電子機器やメモリカード(図示せず)から取り込まれた装置制御プログラムに従って、RAM24を作業用のメモリとして回路各部の動作を制御する。
【0035】
CPU20には、前記キー入力装置13、表示装置(画面)15の回転角度を検出する表示部回転検出器14r、トラックボール部17におけるトラックボール17BのX方向の時間あたりの回転動作量(回転角パルス数Ax)を検出する回転検出器(X)17X、同Y方向の時間あたりの回転動作量(回転角パルス数Ay)を検出する回転検出器(Y)17Y、ROM21、通信装置22、外部I/O23、RAM24が接続される他に、表示制御装置25を介して表示装置(画面)15が接続される。
【0036】
そして、この電子端末装置10の電子回路は、充電池などの2次電池電源26から電源制御部27を介して回路各部に供給される電源電圧によって駆動される。
【0037】
ROM21には、本装置10全体の動作を司るシステムプログラムが記憶されると共に、移動電話用通信制御プログラム、インターネット用通信制御プログラム、各種の通信接続に伴うブラウザ制御プログラム、メール制御プログラム、およびポインタの移動制御プログラムなどが記憶される。
【0038】
また、RAM24には、前記ポインタ移動制御プログラムの実行に伴いアクセスされるトラックボール回転動作量の補正値テーブル24L(図6(A)参照),24S(図6(B)参照),24E(図7参照)が予め記憶される。
【0039】
図6は、前記電子端末装置10に記憶されたトラックボール回転動作量の補正値テーブルを示す図であり、同図(A)は表示長辺方向15Lのボール回転量(回転角パルス数Al)と表示短辺方向15Sのボール回転量(回転角パルス数As)とに応じた当該長辺方向15Lのボール回転量(回転角パルス数Al)に対する補正値Blのテーブル24Lを示す図、同図(B)は表示長辺方向15Lのボール回転量(回転角パルス数Al)と表示短辺方向15Sのボール回転量(回転角パルス数As)とに応じた当該短辺方向15Sのボール回転量(回転角パルス数As)に対する補正値Bsのテーブル24Sを示す図である。
【0040】
この表示長辺方向15Lの補正値(Bl)テーブル24Lによれば、表示短辺方向15Sに対応したボール回転量(回転角パルス数As)の大小に関わらず、表示長辺方向15Lに対応したボール回転量(回転角パルス数Al)が大きくなるのに応じて当該長辺方向回転量Alに対する乗算補正値Blも大きくセットされる。
【0041】
一方、前記表示短辺方向15Sの補正値(Bs)テーブル24Sによれば、表示短辺方向15Sに対応したボール回転量(回転角パルス数As)が大きくなっても当該短辺方向回転量Asに対する乗算補正値Bsは小さな値に抑えられ、しかも表示長辺方向15Lに対応したボール回転量(回転角パルス数Al)が大きくなるのに応じてその短辺方向回転量Asに対する乗算補正値Bsはより小さな値に抑えられる。
【0042】
図7は、前記電子端末装置10に記憶された表示長辺方向15Lのトラックボール回転動作量(回転角パルス数Al)に対する端末表示形状に応じた追加の補正係数Beのテーブル24Eを示す図である。
【0043】
この表示長辺方向15Lの追加の補正係数(Be)テーブル24Eによれば、トラックボール部17のX方向に対応して表示装置15の長辺方向15LがX軸方向に設定される90度および270度の表示回転位置では、表示長辺方向15Lに対応したボール回転量(回転角パルス数Al)が大きくなるのに応じて前記長辺方向補正値Bl(図6(A)参照)で補正された長辺方向ボール回転量Al×Blに対する補正係数Beが1倍→1.5倍→2倍としてセットされる。
【0044】
すなわち、この第1実施形態の電子端末装置10では、トラックボール部17のボール回転動作に伴う表示装置(画面)15上でのポインタPの移動表示制御において、当該トラックボール部17で検出されたX方向およびY方向への回転量に対し、表示短辺方向15Sに対応する回転量よりも表示長辺方向15Lに対応する回転量に重み付けした補正値Bl,Bs(図6参照)を乗算する。
【0045】
そしてさらに、トラックボール部17のX方向に対応して表示装置(画面)15の長辺方向15LがX軸方向に設定される当該表示装置(画面)15の90度回転位置(図1(B)・図3参照)および270度回転位置(図1(D)参照)では、前記トラックボール17Bの表示長辺方向15Lへの補正後のボール回転量(Al×Bl)に対してさらに補正係数Beを乗算するよう制御する。
【0046】
これにより、表示装置(画面)15におけるポインタ(カーソル)Pの長辺方向15Lへの移動表示をトラックボール17Bの操作手法を変えること無しに高速且つ容易に行うことを可能とし、しかも表示長辺方向15LがX軸に設定される90度および270度回転位置では、親指の幅方向の面を使用した短いトラックボール17Bの回転操作量でも、高速且つ容易に前記ポインタ(カーソル)Pの長辺方向15Lへの移動表示を行うことを可能とする。
【0047】
次に、前記構成の第1実施形態の電子端末装置10によるポインタPの移動表示動作について説明する。
【0048】
図8は、前記電子端末装置10によるポインタPの移動表示制御処理を示すフローチャートである。
【0049】
トラックボール部17のトラックボール17Bがユーザによって回転操作されることにより、当該トラックボール17Bの時間あたりの回転量(回転角パルス数A)が各回転検出器(X)17X,(Y)17Yにて検出されると(ステップS1)、RAM24に記憶されている表示長辺方向15Lの補正値(Bl)テーブル24Lに従い設定された補正値Blが読み出され、この長辺方向補正値Blが当該表示長辺方向15Lに対応しているX方向またはY方向へのボール回転量(回転角パルス数Al)に対して乗算される(ステップS2)。
【0050】
また、前記RAM24に記憶されている表示短辺方向15Sの補正値(Bs)テーブル24Sに従い設定された補正値Bsが読み出され、この短辺方向補正値Bsが当該表示短辺方向15Sに対応しているX方向またはY方向へのボール回転量(回転角パルス数As)に対して乗算される(ステップS3)。
【0051】
例えば表示長辺方向15Lに対応するボール回転量(Al)が“10”、表示短辺方向15Sに対応するボール回転量(As)が“2”として検出された場合、前記テーブル24Lからは長辺方向補正値Bl=“4”が読み出され、検出された表示長辺方向15Lのボール回転量Al=“10”に乗算されて補正後の長辺方向ボール回転量Al×Bl=“40”が得られる。一方で、前記テーブル24Sからは短辺方向補正値Bs=“1”が読み出され、検出された表示短辺方向15Sのボール回転量As=“2”に乗算されて補正後の短辺方向ボール回転量As×Bs=“2”が得られる。
【0052】
つまりこのステップS2,S3においては、表示長辺方向15Lに対応するボール回転量Alがより大きな値に補正されるようになる。
【0053】
すると、表示部回転検出器14rからの検出信号に基づき、表示装置(画面)15の回転設定状態がその表示長辺方向15LがY軸方向に設定される0度回転または180度回転の状態であるか否か(90度回転または270度回転状態)が判断される(ステップS4)。
【0054】
ここで、表示装置(画面)15の回転設定状態がその表示長辺方向15LがY軸方向に設定される0度回転(図1(A)・図2参照)または180度回転(図1(C)・図4参照)の状態であると判断された場合には(ステップS4(Y))、端末表示形状に応じた前記表示長辺方向15Lのボール回転量Alに対する追加の補正処理は行われず(ステップS5)、前記ステップS2,S3にて得られた補正後の長辺方向ボール回転量Al×Bl=“40”と短辺方向ボール回転量As×Bs=“2”がそのままGUI(Graphical User Interface)に通知される(ステップS7)。そして、前記補正後の長辺方向ボール回転量Al×Bl(=“40”)と短辺方向ボール回転量As×Bs(=“2”)とに応じた移動量で、表示制御部25により表示装置(画面)15上のポインタ(カーソル)Pが移動表示される。
【0055】
これにより、表示装置(画面)15におけるポインタ(カーソル)Pの長辺方向15Lへの移動表示を行うためのトラックボール17Bの操作の仕方を、短辺方向15Sへの移動表示に伴うボール操作の仕方と変えること無しに、高速且つ容易に行うことができるようになる。
【0056】
一方、前記ステップS4において、表示装置(画面)15の回転設定状態がその表示長辺方向15LがX軸方向に設定される90度回転(図1(B)・図3参照)または270度回転(図1(D)参照)の状態であると判断された場合には(ステップS4(N))、RAM24に記憶されている表示長辺方向15Lの追加の補正係数(Be)テーブル24Eに従い設定された補正係数Beが読み出され、この長辺方向補正係数Beが前記ステップS2にて得られた補正後の長辺方向ボール回転量(Al×Bl)に対してさらに追加で乗算される(ステップS6)。
【0057】
すなわち、前記同様に、表示長辺方向15Lに対応して検出されたボール回転量(Al)が“10”である場合には、前記テーブル24Eからは長辺方向補正係数Be=“1.5”が読み出され、前記第1補正後の長辺方向ボール回転量Al×Bl=“40”に追加乗算されて第2補正後の長辺方向ボール回転量Al×Bl×Be=“60”が得られる。
【0058】
つまりこのステップS6においては、表示長辺方向15Lへのポインタ移動操作を、親指の幅方向の面を用いたトラックボール17BのX方向操作によって行わなければならない、表示90度回転(図1(B)・図3参照)または270度回転(図1(D)参照)の状態にある場合に、表示長辺方向15Lに対応する第1補正後のボール回転量(Al×Bl)がさらに大きな値(Al×Bl×Be)に補正されるようになる。
【0059】
すると、前記ステップS6にて得られた第2補正後の長辺方向ボール回転量Al×Bl×Be=“60”と前記ステップS3にて得られた第1補正後の短辺方向ボール回転量As×Bs=“2”がGUI(Graphical User Interface)に通知され(ステップS7)、これに応じた移動量で、表示制御部25により表示装置(画面)15上のポインタ(カーソル)Pが移動表示される。
【0060】
これにより、表示長辺方向15LがX軸に設定される表示90度または表示270度の表示回転位置状態にあって、親指の幅方向の面を使用した短いトラックボール17Bの回転操作量であっても、高速且つ容易にポインタ(カーソル)Pの長辺方向15Lへの移動表示を行うことができるようになる。
【0061】
したがって、前記構成の第1実施形態の電子端末装置10によるポインタPの移動表示制御機能によれば、縦横比が大きく異なる表示装置(画面)15にて表示されるポインタ(カーソル)Pをトラックボール17Bの回転操作によって移動表示させる際に、表示短辺方向15Sに対応するボール操作の回転量Asよりも表示長辺方向15Lに対応するボール操作の回転量Alに対して大きな補正値Blを乗算し、この補正後のボール回転量に応じた移動量でポインタPを移動表示させるようにしたので、当該ポインタPを長辺方向15Lへ移動表示させる場合でも、そのトラックボール17Bの操作の仕方を、短辺方向15Sへの移動表示に伴うボール操作の仕方と変えること無しに、ポインタPの移動表示を高速且つ容易に行うことができる。
【0062】
また、前記構成の第1実施形態の電子端末装置10によるポインタPの移動表示制御機能によれば、表示長辺方向15Lへのポインタ移動操作を、親指の幅方向の面を用いたトラックボール17BのX方向操作によって行わなければならない、表示90度回転位置または270度回転位置にある状態では、前記表示長辺方向15Lに対応する第1補正後のボール回転量(Al×Bl)に対してさらに補正係数Beを追加で乗算するようにしたので、前記親指の幅方向の面を使用した短いトラックボール17Bの回転操作量であっても、高速且つ容易にポインタ(カーソル)Pの長辺方向15Lへの移動表示を行うことができるようになる。
【0063】
また、前記構成の第1実施形態の電子端末装置10によるポインタPの移動表示制御機能によれば、前記表示長辺方向15Lに対応するボール操作の回転量Alに対する補正値Blや前記表示90度回転位置または270度回転位置にある状態での第1補正後の長辺方向ボール回転量(Al×Bl)に対する更なる乗算補正係数Beは、RAM24に記憶される長辺方向補正値テーブル24L(図6(A)参照)や追加補正係数テーブル24E(図7参照)に基づいて、当該表示長辺方向15Lに対応するボール操作の回転量Alが大きいほど大きな補正値Bl(補正係数Be)に設定するようにしたので、表示長辺方向15LへポインタPをより大きく移動表示させようとするユーザ操作の意思を適切に反映させて、当該ポインタPの移動表示を高速且つ容易に行うことができる。
【0064】
なお、前記第1実施形態の電子端末装置10には、さらに次の第2実施形態の電子端末装置10(図9・図10参照)において説明するように、当該電子端末装置10をホストPC30のリモート端末として使用する場合のトラックボール部17のユーザ操作に応じたPC30側ポインタ移動表示制御の補正機能を備える構成としてもよい。
【0065】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る電子端末装置10を使用したコンピュータシステムの構成を示す外観図である。
【0066】
この第2実施形態の電子端末装置10は、当該電子端末装置10をホストPC(Personal Computer)30のリモート端末として使用した場合のポインタPの移動表示制御に関する。
【0067】
ホストPC30の表示画面31は、SVGA(Super Video Graphics Array)の解像度を有し、電子端末装置(リモート端末)10の表示装置(画面)15は、800ピクセル×300ピクセルのハーフSVGAで構成されるものとする。
【0068】
電子端末装置(リモート端末)10のリモート端末機能によってホストPC30とリモート接続されると、当該ホストPC30の表示画面31に表示させているフル画像データGaがリモート端末10に転送される。
【0069】
すると、リモート端末10では、前記ホストPC30から転送されたフル画像データGaが当該リモート端末10における表示装置(画面)15とその表示回転位置とに応じた解像度に合わせて縦方向または横方向に2分の1圧縮されてハーフ画像データGbに変換され、その表示装置(画面)15に表示される。
【0070】
図10は、前記第2実施形態の電子端末装置10におけるリモート接続時のホストPC30に対するポインタ移動補正値設定処理を示すフローチャートである。
【0071】
電子端末装置(リモート端末)10がホストPC30とリモート接続されると、当該ホストPC30からその表示画面31の表示解像度(SVGA:800×600)の情報が取得され(ステップT1)、また本リモート端末10における表示装置15の表示解像度(ハーフSVGA:800×300)の情報および表示回転位置の情報が取得される(ステップT2)。
【0072】
ここで、前記ホストPC30から得られた表示画面31の表示解像度よりも本リモート端末10における表示装置15の表示解像度の方が小さく、縮小表示によるPC画像のリモート表示であると判断されると(ステップT3)、この縮小表示に伴うホストPC30側の表示解像度(SVGA:800×600)から本リモート端末10側の表示解像度(ハーフSVGA:800×300)への縦(Y)方向および横(X)方向の縮小比率(この場合は、縦2分の1)が算出される(ステップT4)。
【0073】
すると、このPC解像度からリモート端末解像度への縮小比率に応じて、トラックボール17BのX方向およびY方向の回転量Ax,Ayに対する補正係数が設定される(ステップT5)。
【0074】
すなわち、前記PC解像度からリモート端末解像度への縮小比率が縦(Y方向)2分の1である場合には、その逆の縦(Y方向)2倍とする補正係数Byが設定されるので、トラックボール17BのX方向の回転動作が検出された際には、その検出されたX方向のボール回転量AxがそのままホストPC30へ送信されて、当該ボール回転量Axに応じたポインタPのX方向移動表示制御が行われる一方で、トラックボール17BのY方向の回転動作が検出された際には、その検出されたY方向のボール回転量Ayは前記補正係数By(2倍)で補正された後ホストPC30へ送信され、当該補正後のボール回転量2Ayに応じたポインタPのY方向移動表示制御が行われる。
【0075】
したがって、前記構成の第2実施形態の電子端末装置10によれば、この電子端末装置10をホストPC30のリモート端末として使用する場合に、当該ホストPC30の表示解像度とリモート端末10の表示解像度との比率に応じて、ホストPC30側での表示画像データGaを縮小しリモート端末10側で表示させた場合でも、その縮小比率に応じた補正係数Bx,Byを設定すると共に、ポインタ(カーソル)操作に伴うトラックボール17Bの回転量Ax,Ayを前記補正係数Bx,Byを乗じた値としてホストPC30へ送信しそのポインタPの移動表示制御を行わせるようにしたので、ホストPC30側の表示画面31上に表示されたポインタPを、リモート端末10側でのトラックボール17Bの回転操作によって違和感の無い移動量で移動表示させることができる。
【0076】
なお、本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る電子端末装置10の外観構成を示す図であり、同図(A)〜(D)は、縦長の装置本体11の正面に対して水平方向に回動可能に重ね合わせて設けられた表示ユニット12をそれぞれ0度回転(A)、90度回転(B)、180度回転(C)、270度回転(D)の状態にして示す正面図および上部側面図。
【図2】前記電子端末装置10の表示ユニット12を0度回転位置にしたユーザ使用状態を示す正面図。
【図3】前記電子端末装置10の表示ユニット12を90度回転位置にしたユーザ使用状態を示す正面図。
【図4】前記電子端末装置10の表示ユニット12を180度回転位置にしたユーザ使用状態を示す正面図。
【図5】前記電子端末装置10の電子回路の構成を示すブロック図。
【図6】前記電子端末装置10に記憶されたトラックボール回転動作量の補正値テーブルを示す図であり、同図(A)は表示長辺方向15Lのボール回転量(回転角パルス数Al)と表示短辺方向15Sのボール回転量(回転角パルス数As)とに応じた当該長辺方向15Lのボール回転量(回転角パルス数Al)に対する補正値Blのテーブル24Lを示す図、同図(B)は表示長辺方向15Lのボール回転量(回転角パルス数Al)と表示短辺方向15Sのボール回転量(回転角パルス数As)とに応じた当該短辺方向15Sのボール回転量(回転角パルス数As)に対する補正値Bsのテーブル24Sを示す図。
【図7】前記電子端末装置10に記憶された表示長辺方向15Lのトラックボール回転動作量(回転角パルス数Al)に対する端末表示形状に応じた追加の補正係数Beのテーブル24Eを示す図。
【図8】前記電子端末装置10によるポインタPの移動表示制御処理を示すフローチャート。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電子端末装置10を使用したコンピュータシステムの構成を示す外観図。
【図10】前記第2実施形態の電子端末装置10におけるリモート接続時のホストPC30に対するポインタ移動補正値設定処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0078】
10 …電子端末装置
11 …装置本体
12 …表示ユニット
13 …キー入力装置
14 …回転軸
14r…表示部回転検出器
15 …表示装置(画面)
15L…表示長辺方向
15S…表示短辺方向
16a…マスク
16b…スピーカ
17 …トラックボール部
17B…トラックボール
17X…回転検出器(X方向)
17Y…回転検出器(Y方向)
20 …CPU
21 …ROM
22 …通信装置
23 …外部I/O
24 …RAM
24L…長辺方向補正値(Bl)テーブル
24S…短辺方向補正値(Bs)テーブル
24E…長辺方向追加補正係数(Be)テーブル
25 …表示制御装置
26 …2次電池電源
27 …電源制御部
30 …ホストPC
31 …PC表示画面
H …ユーザ左手
P …ポインタ(カーソル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
トラックボールと、
このトラックボールのユーザ操作によるX方向及びY方向のボール回転方向とその各回転量を検出する回転検出手段と、
この回転検出手段により検出された前記トラックボールのボール回転方向とその各回転量に応じて、当該ボール回転量をX方向の回転量とY方向の回転量とで異なる値の補正係数を設定して補正する回転量補正手段と、
この回転量補正手段により補正された前記トラックボールのX方向及びY方向のボール回転方向とその各回転量に応じて前記表示部の表示画面に表示されるポインタを移動表示させるポインタ移動表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子端末装置。
【請求項2】
前記表示部はその縦横比が異なる表示画面を有し、
前記回転量補正手段は、前記表示画面の長辺方向に対応するX方向またはY方向のボール回転量を同表示画面の短辺方向に対応するY方向またはX方向のボール回転量よりも大きい補正係数を設定して補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子端末装置。
【請求項3】
前記表示部の表示画面をその縦方向と横方向とで回転させる表示部回転手段と、
この表示部回転手段による前記表示部の回転方向を検出する表示部回転検出手段とを備え、
前記回転量補正手段は、前記表示部回転検出手段により検出された前記表示部の回転方向に従って、その表示画面の長辺方向に対応するX方向またはY方向のボール回転量を同表示画面の短辺方向に対応するY方向またはX方向のボール回転量よりも大きい補正係数を設定して補正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子端末装置。
【請求項4】
前記回転量補正手段により設定される補正係数は、第1の補正係数と第2の補正係数とからなり、当該第2の補正係数によるボール回転量の補正は、前記表示部回転検出手段により前記表示部の表示画面の長辺方向が前記トラックボールのX方向の回転方向と一致する方向として検出された場合にだけ追加で行われることを特徴とする請求項3に記載の電子端末装置。
【請求項5】
外部PCと接続するPC接続手段と、
前記外部PCの表示画面のサイズより前記表示部の表示画面のサイズの方が小さい場合に、当該表示部の表示画面サイズに対する前記外部PCの表示画面サイズの比率を算出する画面比率算出手段と、
この画面比率算出手段により算出された表示画面サイズの比率に従って、前記回転検出手段により検出された前記トラックボールのX方向のボール回転量とY方向のボール回転量とを補正する回転量補正手段と、
この回転量補正手段により補正された前記トラックボールのX方向及びY方向の各ボール回転量を前記外部PCへ出力するボール回転量出力手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電子端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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