説明

電子素子の検査装置

【課題】検査精度を悪化させることなく、作業効率を飛躍的に向上させることができる検査装置を提供する。
【解決手段】LDバーを分離して構成された複数のLDチップ1について、その劈開端面の良否を順次検査する検査装置である。複数のLDチップを保持する粘着シート3と、粘着シート3と共に移動する載置台2と、LDチップ1を撮影する捕捉カメラ4と、LDチップ1の劈開端面からの反射光を受ける検査カメラ5と、装置各部の動作を制御する制御部とを有する。捕捉カメラ4からの画像に基づいて、載置台2を移動させてLDチップ1を最適位置に位置決めし、最適位置のLDチップについて、粘着シート3を通過して劈開端面で反射される反射光に基づいて、劈開端面の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子の検査方法及びその装置に関し、典型的には、LDチップの劈開端面に形成された保護膜などの良否を確実に検出できる検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオード(laser diode:本明細書ではLDと略す)は、例えば、ウェハ上にレジスト膜を塗布しマスクパターンを形成する工程と、ウェハ上に複数の配列溝を形成する工程と、レジスト膜を除去する工程と、ウェハの両面に電極を形成する工程と、ウェハに劈開用のキズを付ける工程と、ウェハを劈開し複数のLDバーを形成する工程と、複数のLDバーの劈開端面に保護膜を形成する工程と、各LDバーを個々のLDチップに切断する工程と、を有して製造される(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−125994号公報
【0003】
このようにして切断されたLDチップについて、その劈開端面の良否が検査されていた。具体的には、Siウェハ上に配置されたサブマウント状態のLDチップについて、その劈開端面へのゴミ付着の有無、劈開端面のキズの有無、保護膜の不完全さ、チップの欠けの有無などについて良否判定をしていた。
【0004】
従来、この検査工程では、サブマウント状態のLDチップを1個ずつ検査台に配置し、LDチップの劈開端面の直交方向から撮影したカメラ画像に基づいて、LDチップの良否判定がされていた。図5は、検査工程の概略構成を図示したものであり、Siウェハに配置されたLDチップに対して、ほぼ水平方向から検査光を放射すると共に、劈開端面からの反射光を、ハーフミラーを経由してCCD素子などで取得する構成を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような検査方法によれば、確かに、細部まで鮮明な画像が得られる利点はある。しかし、LDチップを1個ずつ取り出す作業が煩雑であり、作業効率が非常に悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、検査精度を悪化させることなく、作業効率を飛躍的に向上させることができる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明者が種々検討したところ、必ずしも、精密な画像を取得しなくても、検査光のレベルを上げると共に、取得画像についてフィルタ処理などの画像処理を設けることで、LDチップの劈開端面などの側端面の良否を確実に判定することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、複数の電子素子の側端面の良否を順次検査する検査装置であって、前記複数の電子素子を保持するシート材と、前記複数の電子素子をシート材と共に移動させる移動機構と、前記シート材の上方位置から検査対象の電子素子を撮影する撮影部と、前記シート材の延設面に傾斜角度を有して検査光を放射し、前記検査対象の電子素子の側端面からの反射光を受ける検査部と、装置各部の動作を制御する制御部とを有すると共に、前記撮影部からの画像に基づいて、前記移動機構を動作させて検査対象の電子素子を最適位置に位置決めする位置決め手段と、前記最適位置における電子素子について、前記シート材から側端面を経由して受信される反射光に基づいて、前記側端面の良否を判定する判定手段と、を有して構成されている。
【0009】
本発明の検査光は、必ずシート材を反射又は透過するが、そのような経路を経ることによる減衰分は、検査光の強度を上げることで十分に対処可能である。また、本発明では、シート材から電子素子の側端面を経由して受信される反射光を使用するので、反射光には、シート材の傷や汚れを示す画像(ノイズ)が不可避的に重畳する。しかし、検査対象の側端面に、正確に撮影部の焦点を合わせると共に、取得した画像データにフィルタ処理などを施すことで、前記のノイズを確実に除去することができる。
【0010】
検査光をシート材の表面で反射させる実施態様では、シート材の表面を正反射面ではなく、適度に乱反射する反射面に構成するのが好適であり、この場合には、前記のノイズ除去が更に容易となる。一方、シート材に検査光を透過させる実施態様では、透光性(透明又は半透明)のシート材を使用するのは当然であるが、この場合にも、シート材の表面を乱反射表面とすることでノイズ除去が容易となる。
【0011】
本発明は、典型的には、LDチップの劈開端面の検査に使用されるが、特に、LDチップに限定されるものではなく、例えば、LEDチップの4端面を検査する場合にも使用することができる。この場合、側端面は鏡面ではないが、光量を上げることで、側端面の良否を正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明では、サブマウント状態のLDチップではなく、LDバーから切り出された複数のLDチップなどの電子素子について、これらをシート材に保持した状態のままで良否判定できるので作業効率を大幅に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<第1実施形態>
先ず、本発明の第1実施形態について、図1〜図2を参照しつつ説明する。なお、以下では、LDチップの検査装置について説明するが、LEDチップなどの半導体素子や、コンデンサなどの電子素子の検査装置にも適用可能である。
【0014】
図1〜図2は、LDバーから切り出された複数のLDチップ1・・・1について、その劈開端面の良否を判定する検査装置を説明する図面である。この検査装置は、同一平面上で任意の位置に移動する載置台2と、載置台2に固定配置される粘着シート3と、載置台2の垂直上方位置に配置される捕捉カメラ(撮影部)4と、載置台2の垂直斜め上方位置に配置される検査カメラ(検査部)5と、これらの動作を制御すると共に、検査カメラ5からの画像データに基づいてLDチップの良否判定をする制御部6(不図示)と、を有して構成されている。
【0015】
ここで、捕捉カメラ4は、検査対象のLDチップ1を捕捉し、捕捉したLDチップ1が所定の姿勢になるよう、制御部6が載置台2を制御するために使用される。一方、検査カメラ5は、検査対象のLDチップ1に検査光を放射する放射部5Aと、検査対象のLDチップ1の劈開端面からの反射光を受信する受光部5Bとを有して構成されている。
【0016】
本発明では、検査光や反射光は、粘着シート3の延設面に対して、傾斜角αを形成するよう構成されている。したがって、傾斜角αから大きくずれた散乱光などの反射光は検査カメラ5に取得されない。
【0017】
粘着シート3は、延性を有する円形状のシート材であって(図1(c)参照)、載置台2に接しない上面には粘着層が設けられている。そして、LDバーから切り出された複数のLDチップ1・・・1は、各々が粘着層によって保持されると共に、粘着シート3が径方向に延ばされることで(図1(a)エキスバンド処理)、隣接するLDチップ1との間に適度な隙間δが形成されるようになっている。
【0018】
図示のLDチップ1は、図1の左右の端面が、検査対象となる劈開端面であるが、隣接するLDチップ1の劈開端面との間隔δが、δ>2*h/tan(α)となるよう粘着シートが延ばされている(図1(b)、図2(a)参照)。ここで、hは、LDチップ1の高さ、αは、粘着シート3の延設面と検査光との角度である。
【0019】
載置台2は、不図示の移動機構に駆動されて、X−Y−θ方向に任意の量だけ移動するよう構成されている。X方向は、例えば図1(c)の平面図における横方向であり、Y方向は図1(c)の縦方向である。そして、この場合のθは、XY平面における回転角度を意味する。したがって、粘着シート3上の個々のLDチップ1は、捕捉カメラ4や検査カメラ5に対して、同一平面上で任意の姿勢をとることが可能となる。
【0020】
続いて、上記の構成からなる検査装置の動作内容を説明する。粘着シート3に保持された複数のLDチップ1は、先ず、粘着シート3と共に載置台2に載置される。そして、粘着シート3が引き伸ばされて固定されることで、隣接するLDチップ1との隙間δが、2*h/tan(α)よりやや大きく設定される。なお、隙間δは、隣接するLDチップ1の劈開端面との間隔である。
【0021】
ここでは、検査カメラ5は、平面視では左下位置であって(図1(c)参照)、正面視では粘着シート3の左斜め上方位置に、固定的に配置されていると仮定する(図1(b)参照)。捕捉カメラ4も、これに対応して、検査カメラ5に近接する所定位置に固定的に配置されていると仮定する。
【0022】
このような配置構成の場合には、制御部6は、検査ライン(1)の左端のLDチップが、捕捉カメラ4に捕捉されるよう、載置台2を−X方向に移動させる。そして、検査対象のLDチップ1が捕捉されたら、次に、載置台2を適宜にθ方向に回転させて、検査光の放射方向とLDチップの劈開端面とが、平面視において直交するようLDチップ1を位置決めする。続いて、制御部は、検査カメラ5の受光部5B(CCDイメージセンサ)から、撮影された劈開端面の画像データを取得する。
【0023】
本実施形態では、検査光が、スポット状の平行光で放射されるので、その反射光は、図2(a)と図2(b)に示す2つの経路を経るものに区分される。図2(a)は、粘着シート3で反射された検査光が、劈開端面(鏡面)で正反射される反射光を示している。一方、図2(b)は、劈開端面で正反射された検査光が、粘着シート3で反射される反射光を示している。
【0024】
何れの反射波も、粘着シート3の表面を経由するが、粘着シート3は、それなりの光沢を有しているので、粘着シート3において適度な乱反射が実現される。そして、乱反射による減衰分を見越したレベルの検査光を放射しているので、受光部5Bには、2つの経路の反射光によって、劈開端面についての2つの像が得られることになる。
【0025】
同一の劈開端面を示す2つの画像は、その結像位置の違いから明確に区別できるので、制御部では、図2(a)の経路で得られた画像に基づいて劈開端面の良否判定をしている。具体的には、劈開端面へのゴミ付着の有無、劈開端面のキズの有無、保護膜の不完全さ、チップの欠けの有無などについて良否判定をする。
【0026】
ところで、本実施形態では、粘着シート3の表面を経由する反射光を使用するので、例えば、粘着シートのB点の傷も、不可避的に取得されてしまう。そのため、傷のない劈開端面のA点に、傷があるような画像が取得されるとも思われる(図2(a)の鏡像B’参照)。また、劈開端面のA点にも傷があった場合には、2つの傷が重なることになる。このような事態は、図2(a)の経路による画像でも、図2(b)の経路による画像でも同様に生じるので(鏡像A’B’参照)、重大な弊害であるとも思われる。
【0027】
しかし、本実施形態では、検査カメラ5の焦点位置を、A点に特異的に一致させているので、実際には、A点だけが鮮明に映り、B点は不鮮明に映ることになって弊害は生じない。すなわち、フィルタ処理などの通常の画像処理によって、A点の良否を特異的に判定することができる。しかも、粘着シートの表面は、乱反射面として機能するので、B点の画像は、その分だけ弱く不鮮明となり、良否判定の画像処理には、何らの困難もない。
【0028】
以上のようにして、目的のLDチップの良否判定が終われば、その右隣のLDチップが捕捉カメラ4に捕捉されるまで、載置台2が更に−X方向に移動する。そして、最適に位置決めされた状態で、上記と同じ検査動作が実行される。以下同様にして検査ライン(1)上の全てのLDチップの良否判定が実行される。その後、載置台2が+X方向に戻り、−Y方向に移動した後、検査ライン(2)上のLDチップの良否判定が実行される。
【0029】
このようにして検査ライン(1)〜検査ライン(n)の処理が終われば、載置台2が180度回転されて、各LDチップの反対側の劈開端面について、同様の手順で良否判定が実行される。
【0030】
<第2実施形態>
以上、本発明の第1実施形態について説明した。しかし、この第1実施形態では、隣接するLDチップとの隙間δは、δ>2*h/tan(α)でなくてはならず、それ以上近づけることができない。この欠点は、傾斜角度αが小さい場合に、特に顕著である。また、第1実施形態では、同じ劈開端面について、2つの画像が得られる無駄もある。そこで、かかる問題を解消するためには、図3に示す第2実施形態を採用するのが好適である。
【0031】
図3に示す検査装置は、同一平面上で任意の位置に移動する透光性の載置台2と、載置台2に固定配置される透光性の粘着シート3と、載置台2の垂直上方位置に配置される捕捉カメラ(撮影部)4と、載置台2の垂直斜め下方位置に配置されて検査光を放射する放射部5Aと、載置台2の垂直斜め上方位置に配置されて、LDチップ1の劈開端面からの反射波を受ける受光部5Bと、これらの動作を制御すると共に、受光部5Bからの画像データに基づいて劈開端面の良否判定をする制御部6と、を有して構成されている。
【0032】
本実施形態は、載置台2と粘着シート3が透光性を有すること、及び、検査部5が放射部5Aと受光部5Bに分離構成されていることが特徴であり、それ以外は、実質的に第1実施形態と同じである。なお、載置台2はガラス製であり、粘着シート3は透明又は半透明の合成樹脂で構成される。
【0033】
この実施形態では、放射部5Aが載置台2の垂直斜め下方位置に配置されて、検査対象のLDチップの劈開端面に向けて検査光を放射するので、隣接するLDチップとの隙間δは、δ>h/tan(α)であれば良く、第1実施形態の場合より隣接するLDチップ1を近接させることができる。また、この実施形態では、第1実施形態のように2系統の光路が存在しないので、受光部5Bには単一の画像しか結像されず、この意味でも優れている。
【0034】
なお、第2実施形態の場合でも、放射部5AからLDチップ1に至るまでの光路に、傷や陰などが存在すると、その画像がLDチップの劈開端面に重なる(図3の鏡像B’参照)。しかし、受光部5Bのカメラの焦点位置を、A点に特異的に一致させているので、第1実施形態の場合と同様、フィルタ処理などの通常の画像処理によって、A点の良否を特異的に判定することができる。しかも、粘着シートの表面は、乱反射面として機能するので、B点などの画像は、その分だけ弱く不鮮明となり、良否判定の画像処理には、何らの困難もない。
【0035】
以上、本発明の2つの実施形態について説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定するものではない。例えば、実施形態では、粘着シート3を載置台2と共に一体的に移動させたが、第2実施形態と類似の構成において、透光性の粘着シート3だけを移動させても良い。
【0036】
図4は、この第3実施形態の構成を図示したものである。この検査装置は、固定的に配置される載置台2と、載置台2の上面を滑って移動する透光性の粘着シート3と、載置台2の垂直上方位置に配置される捕捉カメラ(撮影部)4と、載置台2の垂直斜め下方位置に配置されて検査光を放射する放射部5Aと、載置台2の垂直斜め上方位置に配置されて、LDチップ1の劈開端面からの反射波を受ける受光部5Bと、これらの動作を制御すると共に、受光部5Bからの画像データに基づいて劈開端面の良否判定をする制御部6と、を有して構成されている。
【0037】
この装置では、粘着シート3の外周が移動機構によって保持されており、移動機構の動作に基づいて粘着シート3全体が、X−Y−θ方向に適宜に移動するよう構成されている。したがって、移動機構の動作に基づいて粘着シート3が移動することで、図1(c)に示す検査ライン(1)〜検査ライン(n)について、順次、LRチップ1の良否判定が可能となる。なお、粘着シート3の外周は、載置台2の頂面より、やや下方位置において保持されている。したがって、粘着シート3には、常に、適宜なテンションが付与されることになり、移動機構による適宜な移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態の検査装置と、検査方法を説明する図面である。
【図2】図1の検査装置の動作を説明する図面である。
【図3】第2実施形態の検査装置を説明する図面である。
【図4】第3実施形態の検査装置を説明する図面である。
【図5】従来技術を説明する図面である。
【符号の説明】
【0039】
1 LDチップ
2 載置台
3 シート材(粘着シート)
4 撮影部(捕捉カメラ)
5 検査部(検査カメラ)
6 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子素子の側端面の良否を順次検査する検査装置であって、
前記複数の電子素子を保持するシート材と、前記複数の電子素子をシート材と共に移動させる移動機構と、前記シート材の上方位置から検査対象の電子素子を撮影する撮影部と、前記シート材の延設面に傾斜角度を有して検査光を放射し、前記検査対象の電子素子の側端面からの反射光を受ける検査部と、装置各部の動作を制御する制御部とを有すると共に、
前記撮影部からの画像に基づいて、前記移動機構を動作させて検査対象の電子素子を最適位置に位置決めする位置決め手段と、
前記最適位置における電子素子について、前記シート材から側端面を経由して受信される反射光に基づいて、前記側端面の良否を判定する判定手段と、を有して構成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記位置決め手段と前記判定手段の動作を繰り返すことで、複数の電子素子の側端面の良否を順次検査する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記判定手段が受ける反射光は、前記シート材で反射された後、前記側端面で反射されて受信される請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記判定手段が受ける反射光は、前記シート材を透過した後、前記側端面で反射されて受信される請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記シート材は、その下面の載置台と一体的に移動するよう構成されている請求項1〜4の何れかに記載の検査装置。
【請求項6】
前記シート材は透光性であって、固定状態の載置台の上面を滑って移動するよう構成されている請求項1〜4の何れかに記載の検査装置。
【請求項7】
前記判定手段が受ける反射光は、検査対象の電子素子の側端面に焦点を一致させて取得される請求項1〜5の何れかに記載の検査装置。
【請求項8】
前記電子素子は、LDチップであり、前記側端面は、劈開端面となっている請求項1〜7の何れかに記載の検査装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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