説明

電子線治療装置及び電子線治療方法

【課題】被照射体内において電子線を制御し照射対象に電子線線量を集中させることができる電子線照射装置を提供する。
【解決手段】電子線治療装置100は、電子線照射部200により患者Pの腫瘍等の病変部に対して電子線を照射するとともに、磁場印加部300により電子線の入射方向に対して磁力線が垂直又は平行になるようにそれぞれ患者の病変部を含む深部領域又は電子線照射領域に対して磁場を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射体内において電子線を制御し照射対象に電子線線量を集中させることができる電子線照射装置及び電子線治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の放射線治療では、様々な技術の進歩に伴って放射線線量を腫瘍に集中させることが可能となってきている。例えば、X線等の光子線を利用した強度変調放射線治療(IMRT)等や、陽子線や炭素線等の粒子線を利用したブロードビーム法やスポットスキャニング照射法等がそれに相当する。しかし、IMRTは光子線を利用するものであるため深部方向において腫瘍部分で光子線を停止させることができないという問題があり、粒子線治療は大掛かりな装置を用いる必要があるため設備的にも費用的にも一般病院に普及させることが困難であるという問題があった。
【0003】
一方、上記以外の放射線治療として、電子線を利用した治療方法が知られている。かかる電子線治療は、リアニック等の電子線発生装置を用いて発生させた高エネルギーの電子線を照射して癌等の腫瘍を治療するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる電子線治療では、電子線の基となる電子の質量はエネルギーにして511keVであり、患者の体内を構成している原子や分子の質量と比較して非常に軽量であることから、電子線が患者の体内で大きく散乱効果を受けることとなり、電子線の線量分布が広がってしまうという問題があった。また、電子線の線量分布の広がりから電子線の照射範囲に大きな幅が生じてしまうので、特に深部線量分布では、エッジのない線量分布形状となり、腫瘍へ線量を集中させることができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、被照射体内において電子線を制御し照射対象に電子線線量を集中させることができる電子線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)すなわち、本発明は、被照射体の照射対象に電子線を照射する電子線照射手段と、前記被照射体に磁場を印加する磁場印加手段と、を有し、前記電子線照射手段により照射された電子線を前記磁場印加手段により印加された磁場で制御することにより電子線線量を前記被照射体の前記照射対象に集中させることを特徴とする、電子線照射装置である。
【0008】
(2)本発明はまた、前記磁場印加手段は、前記電子線照射手段により照射された電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように前記被照射体の前記照射対象を含む深部領域に磁場を印加することを特徴とする、(1)に記載の電子線照射装置である。
【0009】
(3)本発明はまた、前記磁場印加手段は、前記電子線照射手段により照射された電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように前記被照射体の電子線被照射領域に磁場を印加することを特徴とする、(1)に記載の電子線照射装置である。
【0010】
(4)本発明はまた、前記磁場印加手段は、正弦波磁場を印加することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子線照射装置である。
【0011】
(5)本発明はまた、前記磁場印加手段は、直流磁場を印加することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子線照射装置である。
【0012】
(6)本発明はまた、磁力線が直交するように配設された少なくとも2つの前記磁場印加手段を有することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の電子線照射装置である。
【0013】
(7)本発明はまた、電子線治療装置である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の電子線照射装置である。
【0014】
(8)さらに、本発明は、被照射体の照射対象に電子線を照射する電子線照射ステップと、前記被照射体に磁場を印加する磁場印加ステップと、を有し、前記電子線照射ステップにより照射された電子線を前記磁場印加ステップにより印加された磁場で制御することにより電子線線量を前記被照射体の前記照射対象に集中させることを特徴とする、電子線照射方法である。
【0015】
(9)本発明はまた、前記磁場印加ステップは、前記電子線照射ステップにより照射された電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように前記被照射体の前記照射対象を含む深部領域に磁場を印加することを特徴とする、(8)に記載の電子線照射方法である。
【0016】
(10)本発明はまた、前記磁場印加ステップは、前記電子線照射ステップにより照射された電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように前記被照射体の電子線被照射領域に磁場を印加することを特徴とする、(8)に記載の電子線照射方法である。
【0017】
(11)本発明はまた、前記磁場印加ステップは、正弦波磁場を印加することを特徴とする、(8)〜(10)のいずれか1項に記載の電子線照射方法である。 (12)本発明はまた、前記磁場印加ステップは、直流磁場を印加することを特徴とする、(8)〜(10)のいずれか1項に記載の電子線照射方法である。
【0018】
(13)本発明はまた、前記磁場印加ステップは、磁力線が直交するように配設された少なくとも2つの磁場印加手段により磁場を印加することを特徴とする、(8)〜(12)のいずれか1項に記載の電子線照射方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子線照射装置によれば、電子線照射手段と磁場印加手段とを有し、電子線照射手段により照射された電子線を磁場印加手段により印加された磁場で制御することにより電子線線量を被照射体の照射対象に集中させることができるので、腫瘍等の照射対象を正確に捉え当該部分のみに電子線を照射することができ、省スペースかつ低コストで高精度な放射線治療等を実現することができる。
【0020】
特に、磁場印加手段により、電子線照射手段により照射された電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように被照射体の照射対象を含む深部領域に磁場を印加することによって、粒子線のような深部線量分布を形成することができ、照射対象への電子線の線量集中性を極めて高くすることができる。
【0021】
さらに、磁場印加手段により、電子線照射手段により照射された電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように被照射体の電子線被照射領域に磁場を印加することによって、電子線の線量分布の広がりを抑えて照射対象に線量を集中させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態にかかる電子線照射装置である電子線治療装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】入射エネルギーが10MeVの電子線における水中の深部ごとの運動エネルギーKに対する磁場Bと曲率半径ρの積の関係を示した図である。
【図3】電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場を印加した場合の電子線と磁力線の様子を説明するための概念図である。
【図4】電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場を印加した場合のモンテカルロ法による磁場強度ごとの深部線量分布及び側方向線量分布の計算結果を示す図である。
【図5】電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場を印加した場合のモンテカルロ法による電子線の運動エネルギー及び磁場強度ごとの深部線量分布の計算結果を示す図である。
【図6】電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加した場合の電子線と磁力線の様子を説明するための概念図である。
【図7】電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加した場合のモンテカルロ法による電子線の運動エネルギーが12MeVの場合における磁場強度ごとの深部側方2次元プロファイルの計算結果を示す図である。
【図8】電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加した場合のモンテカルロ法による電子線の運動エネルギーが15MeVの場合における磁場強度ごとの深部側方2次元プロファイルの計算結果を示す図である。
【図9】電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加した場合のモンテカルロ法による電子線の運動エネルギーが18MeVの場合における磁場強度ごとの深部側方2次元プロファイルの計算結果を示す図である。
【図10】電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加した場合のモンテカルロ法による電子線の運動エネルギー及び磁場強度ごとの深部線量分布の計算結果を示す図である。
【図11】電子線治療装置100における磁場印加部300の構成例を示す概念図である。
【図12】電子線治療装置100における磁場印加部300の他の構成例を示す概念図である。
【図13】電子線治療装置100における磁場印加部300の他の構成例を示す概念図である。
【図14】電子線治療装置100における磁場印加部300の他の構成例を示す概念図である。
【図15】電子線治療装置100における磁場印加部300の他の構成例を示す概念図である。
【図16】電子線治療装置100における磁場印加部300の他の構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる電子線照射装置である電子線治療装置100の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子線照射装置100は、被照射体(患者)の照射対象(病変部)に電子線を照射する電子線照射部200、被照射体に磁場を印加する磁場印加部300、電子線照射装置100全体の動作を制御する制御部400等から構成されている。
【0025】
電子線照射部200は、電子線を発生する電子線発生部210、発生した電子線を拡大する電子線拡大部220、電子線を変調して照射対象の厚さに合わせて生体内飛程分布を設定する飛程変調部230、電子線の生体内飛程分布が照射対象の位置と適合するよう調整する飛程調整部240、電子線の照射野を照射対象の照射平面形状に合わせて設定する照射野限定部250、照射対象の三次元形状に合わせて電子線の体内飛程分布を調整する飛程補償部260等を有して構成されている。
【0026】
磁場印加部300は、後述するように、少なくとも1対の電磁石を有し、交流電源又は直流電源に接続されて被照射体に正弦波磁場又は直流磁場を印加する。
【0027】
制御部400は、制御と演算の各種処理を行うCPU、各種プログラムを記憶するROM、作業領域として一時的にデータを記憶するRAM等から構成される。
【0028】
図2は、入射エネルギーが10MeVの電子線における水中の深部ごとの運動エネルギーKに対する磁場Bと曲率半径ρの積の関係を示した図である。図2に示すように、電子線の運動エネルギーと磁場強度の関係から電子線は磁力線に巻き付き、電子線の運動エネルギーが小さいほど、また高磁場であるほど強く絡み付く特性がある。その結果、磁力線に巻き付いた電子線はその場所で小さく回転しながら(この回転半径は曲率半径に相当する)、持っている運動エネルギーのすべてを放出する。本実施形態にかかる電子線治療装置100は、電子線照射部200と磁場印加部300とを有しているので、磁場印加部300により患者体内の腫瘍等の病変部近辺に磁場を印加することにより、電子線による病変部への線量集中性を高めた放射線治療を実現することができる。
【0029】
本実施形態の電子線治療装置100では、磁場印加部300による磁場の印加方法には、電子線照射部200による電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように印加する方法と、電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように印加する方法とがある。
【0030】
図3は、電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場を印加した場合の電子線と磁力線の様子を説明するための概念図である。図3に示すように、電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場を印加した場合、水タンクの磁場のない領域(深部距離L)を通過した電子線は、磁場領域に進入するとすぐに磁力線に絡まって巻き付き、回転しながら持っているエネルギーを放出する。
【0031】
図4は、15MeVの運動エネルギーを持つ電子線を50mm直径円形の照射野内で均一に水タンクに入射し、電子線の入射面から深部距離50mm以降に電子線の入射方向に対して垂直に均一の磁場0、1、2及び3Tを印加した場合のモンテカルロ法による線量分布の計算結果を示す図であり、(A)は側方向で積算した深部線量分布を表わし、(B)は電子線軸上10mm×10mmの照射野領域の深部線量分布を表わし、(C)は深部距離50mmにおける磁力線及び電子線と直交方向の側方向線量分布を表わし、(D)は深部距離50mmにおける磁力線と平行かつ電子線と直交方向の側方向線量分布を表わす。図4(A)及び(B)より、深部線量分布においては磁場強度が高くなると電子線が磁力線に絡まる作用が強くなり、電子線が磁場領域に進入してから停止するまでのレンジが短くなり、結果として深部線量分布は陽子線のような線量分布を形成することがわかる。また、深部線量分布のピークは磁場強度が強いほど高くなる。また、図4(C)及び(D)より、入射電子線及び磁力線に垂直な方向に関しては、磁場強度が高くなるにつれ線量分布の中心がローレンツ力により僅かに偏移するが、入射電子線に垂直で磁力線に平行な方向に関しては、磁場の影響をほとんど受けないことがわかる。
【0032】
図5は、12、15及び18MeVの運動エネルギーを持つ電子線を50mm直径円形の照射野内で均一に水タンクに入射し、電子線の入射面から深部距離50mm以降に電子線の入射方向に対して垂直に均一の磁場を印加した場合のモンテカルロ法による深部線量分布の計算結果を示す図であり、(A)は磁場強度0T、(B)は磁場強度1T、(C)は磁場強度2T及び(D)は磁場強度3Tの場合の深部線量分布を表わす。図5(A)〜(D)より、電子線の運動エネルギーが高いほど磁場領域での磁場による電子線の拘束量が多く、高いピークを持つ線量分布になることがわかる。
【0033】
以上より、本実施形態の電子線治療装置100において、電子線照射部200により所定の運動エネルギーを有する電子線を患者の腫瘍等の病変部に照射するとともに、病変部を含みそれより深い深部領域に対して、磁場印加部300により電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように所定強度の磁場を印加することにより、病変部に対して電子線線量を集中させることができ、粒子線治療等と同等の安全かつ正確な電子線治療を実現することができる。
【0034】
一方、図6は、電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加した場合の電子線と磁力線の様子を説明するための概念図である。電子は質量が軽いため、電子線の直進性は患者体内ではクーロン散乱により妨げられるが、図6に示すように、電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場を印加すると、電子線は磁力線に絡み付くように自転に近い螺旋回転をしながらピストルの弾丸のように深部方向に直進するようになる。
【0035】
図7〜9は、12、15及び18MeVの運動エネルギーを持つ電子線を50mm直径円形の照射野内で均一に水タンクに入射し、電子線の入射方向に対して平行に均一の磁場を印加した場合のモンテカルロ法による深部側方2次元プロファイルの計算結果を示す図であり、(A)は磁場強度0T、(B)は磁場強度1T、(C)は磁場強度2T及び(D)は磁場強度3Tの場合の深部側方2次元プロファイルを表わす。図7〜9より、電子線が水中で受ける多重散乱による線量分布の広がりは、磁場強度が強いほど抑制されることがわかる。
【0036】
図10は、12、15及び18MeVの運動エネルギーを持つ電子線を50mm直径円形の照射野内で均一に水タンクに入射し、電子線の入射方向に対して平行に均一の磁場を印加した場合のモンテカルロ法による電子線軸上1cm×1cm照射野領域での深部線量分布の計算結果を示す図であり、(A)は磁場強度0T、(B)は磁場強度1T、(C)は磁場強度2T及び(D)は磁場強度3Tの場合の深部線量分布を表わす。図10(A)〜(D)より、電子線が磁力線に沿って直進する効果により最深部の線量端が立ち上がっていることがわかる。
【0037】
従って、本実施形態の電子線治療装置100において、電子線照射部200により所定の運動エネルギーを有する電子線を患者の腫瘍等の病変部に照射するとともに、磁場印加部300により電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように電子線被照射領域に所定強度の磁場を印加することにより、電子線の線量分布の広がりを抑えて病変部に線量を集中させることができるものである。
【0038】
図11〜16は、本実施形態の電子線治療装置100における磁場印加部300の構成例を示す概念図である。
【0039】
図11及び図12に示す磁場印加部300A及び300Bは、いずれも1対の直流電磁石310からなり、患者Pの頭部に対して、図11の磁場印加部300Aでは左右方向に、図12の磁場印加部300Bでは上下方向に、それぞれ直流磁場が印加できるように構成されており、いずれも患者Pの正面から電子線照射部200により電子線が照射できるようになっている。磁場印加部300A及び300Bによれば、電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場が印加されるので図3〜5に示したような形状の線量分布が得られ、患者Pの病変部に対して電子線線量を集中させることができる。
【0040】
図13に示す磁場印加部300Cは、1対のドーナツ形状の直流電磁石320からなり、患者Pの頭部に対して上下方向に直流磁場が印加できるように構成されており、患者Pの頭頂から電子線照射部200により電子線が照射できるようになっている。磁場印加部300Cによれば、電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場が印加されるので図6〜10に示したような形状の線量分布が得られ、患者Pの病変部に対して電子線線量を集中させることができる。
【0041】
図14に示す磁場印加部300Dは、磁力線が直交するように配設された2対の直流電磁石310からなり、患者Pの頭部に対して前後方向に直流磁場が印加できるように構成されており、患者Pの正面から電子線照射部200により電子線が照射できるようになっている。磁場印加部300Dによれば、電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように磁場が印加されるので図6〜10に示したような形状の線量分布が得られ、患者Pの病変部に対して電子線線量を集中させることができる。
【0042】
図15及び図16に示す磁場印加部300E及び300Fは、いずれも磁力線が直交するように配設された2対の交流電磁石330からなり、患者Pの頭部に対して相互に位相がπ/2ずれた正弦波磁場を印加するように構成されており、図11の磁場印加部300Eでは患者Pの頭頂から、図12の磁場印加部300Fでは患者Pの正面から、それぞれ電子線照射部200により電子線が照射できるようになっている。磁場印加部300E及び300Fによれば、電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように磁場が印加されるので図3〜5に示したような形状の線量分布が得られ、患者Pの病変部に対して電子線線量を集中させることができるとともに、直交する相互に位相が半周期ずれた正弦波磁力線によって磁場強度が一定のままで正弦波の周波数に相当した回転する磁場が発生するので、図4(C)に示したような線量分布の偏移を抑制することができる。
【0043】
本発明の電子線照射装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、電子線治療装置は専用の電子線照射部と磁場印加部を備えるものであったが、本発明の電子線照射装置はかかる構成に限定されるものではなく、既存の電子線治療装置と既存のMRI診断装置等の磁場印加装置との組み合わせにより構成されるものであってもよい。例えば、磁場印加装置として既存のMRI診断装置を利用した場合、上記実施形態における磁場印加部300B又は300C(図12又は図13参照)と同様の磁場印加の態様により電子線治療装置を制御することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、本発明の電子線照射装置を電子線治療装置の例で説明したが、本発明の電子線照射装置は電子線治療装置に限定されるものではなく、各種の電子線照射装置に応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述したように、本発明の電子線照射装置は、電子線照射手段により照射された電子線を磁場印加手段により印加された磁場で制御することにより電子線線量を被照射体の照射対象に集中させることができ、腫瘍等の照射対象を正確に捉え当該部分のみに電子線を照射することができるので、電子線治療装置等として利用した場合極めて有用である。
【符号の説明】
【0047】
100 電子線照射装置
200 電子線照射部
210 電子線発生部
220 電子線拡大部
230 飛程変調部
240 飛程調整部
250 照射野限定部
260 飛程補償部
300 磁場印加部
310,320 直流電磁石
330 交流電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射体の照射対象に電子線を照射する電子線照射手段と、
前記被照射体に磁場を印加する磁場印加手段と、
を有し、
前記電子線照射手段により照射された電子線を前記磁場印加手段により印加された磁場で制御することにより電子線線量を前記被照射体の前記照射対象に集中させることを特徴とする、電子線照射装置。
【請求項2】
前記磁場印加手段は、前記電子線照射手段により照射された電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように前記被照射体の前記照射対象を含む深部領域に磁場を印加することを特徴とする、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記磁場印加手段は、前記電子線照射手段により照射された電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように前記被照射体の電子線被照射領域に磁場を印加することを特徴とする、請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項4】
前記磁場印加手段は、正弦波磁場を印加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子線照射装置。
【請求項5】
前記磁場印加手段は、直流磁場を印加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子線照射装置。
【請求項6】
磁力線が直交するように配設された少なくとも2つの前記磁場印加手段を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子線照射装置。
【請求項7】
電子線治療装置である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子線照射装置。
【請求項8】
被照射体の照射対象に電子線を照射する電子線照射ステップと、
前記被照射体に磁場を印加する磁場印加ステップと、
を有し、
前記電子線照射ステップにより照射された電子線を前記磁場印加ステップにより印加された磁場で制御することにより電子線線量を前記被照射体の前記照射対象に集中させることを特徴とする、
電子線照射方法。
【請求項9】
前記磁場印加ステップは、前記電子線照射ステップにより照射された電子線の入射方向に対して磁力線が垂直になるように前記被照射体の前記照射対象を含む深部領域に磁場を印加することを特徴とする、
請求項8に記載の電子線照射方法。
【請求項10】
前記磁場印加ステップは、前記電子線照射ステップにより照射された電子線の入射方向に対して磁力線が平行になるように前記被照射体の電子線被照射領域に磁場を印加することを特徴とする、
請求項8に記載の電子線照射方法。
【請求項11】
前記磁場印加ステップは、正弦波磁場を印加することを特徴とする、
請求項8〜10のいずれか1項に記載の電子線照射方法。
【請求項12】
前記磁場印加ステップは、直流磁場を印加することを特徴とする、
請求項8〜10のいずれか1項に記載の電子線照射方法。
【請求項13】
前記磁場印加ステップは、磁力線が直交するように配設された少なくとも2つの磁場印加手段により磁場を印加することを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の電子線照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−167137(P2010−167137A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13269(P2009−13269)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】