電子血圧計
【課題】想定以上の電力消費の推定を可能にする。
【解決手段】電子血圧計は、測定部位の周囲に巻付けられるカフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを制御することによりカフ圧を調整するための調整部と、調整部を駆動制御することにより、カフ圧を徐々に変化させるための駆動制御部33と、カフ圧を検出するための圧力検出部32と、検出されるカフ圧に基づいて血圧値を決定するための血圧決定部34と、測定部位の周囲長を検出するための周囲長検出部351と、各部に電力を供給するための電池と、血圧測定中の電池の電圧降下値を検出するための降下量検出部352と、を備え、周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定する。
【解決手段】電子血圧計は、測定部位の周囲に巻付けられるカフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを制御することによりカフ圧を調整するための調整部と、調整部を駆動制御することにより、カフ圧を徐々に変化させるための駆動制御部33と、カフ圧を検出するための圧力検出部32と、検出されるカフ圧に基づいて血圧値を決定するための血圧決定部34と、測定部位の周囲長を検出するための周囲長検出部351と、各部に電力を供給するための電池と、血圧測定中の電池の電圧降下値を検出するための降下量検出部352と、を備え、周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子血圧計に関し、特に、測定部位から検出される脈波を用いて血圧を測定する電子血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器系疾患を解析する指標の一つであり、血圧に基づいてリスク解析を行うことは、例えば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。従来は通院時や健康診断時などの医療機関で測定される血圧(随時血圧)により診断が行われていた。しかしながら近年の研究により、家庭で測定する血圧(家庭血圧)が随時血圧より循環器系疾患の診断に有用であることが判明してきた。それに伴い、家庭で使用する血圧計が普及している。
【0003】
家庭向けの血圧計の多くがオシロメトリック法による血圧測定方法を採用している。オシロメトリック法による血圧測定は、カフを上腕などの測定部位に巻付け、カフの内圧(カフ圧)を収縮期血圧より所定圧(例えば30mmHg)だけ高く加圧し、その後、徐々にまたは段階的にカフ圧を減圧していく。この減圧過程における動脈の容積変化をカフ圧に重畳した圧変化(脈波振幅)として検出し、この脈波振幅の変化より収縮期血圧および拡張期血圧を決定する方法である。オシロメトリック法では、カフ圧の加圧過程において発生する脈波振幅を検出して血圧を測定することも可能である。
【0004】
これらの血圧測定において正確に脈波振幅を検出するためには、ポンプまたは弁によりカフ圧を一定速度で、加圧または減圧する必要がある。具体的には、等速加圧制御、または等速減圧制御では平均速度と目標速度との差に基づいて、平均速度が目標速度となるようにポンプまたは弁の駆動電圧をフィードバック制御する。フィードバック制御される血圧測定用のポンプには、モータを駆動源として用いるポンプ、圧電素子を駆動源として用いた圧電マイクロポンプなどを適用することができる。圧電マイクロポンプの構造は、たとえば特許文献1(特開2009−74418号公報)に開示がある。
【0005】
また、ポンプの加圧速度を決定する方法として、特許文献2(特開平5−42114号公報)には、電池電圧から加圧速度を決定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−74418号公報
【特許文献2】特開平5−42114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の電池電圧により加圧速度を決定する方法は、血圧測定中の電池電圧が降下が考慮されていない。つまり、消費電力が大きいポンプでは、電池電圧降下が大きいため、加圧速度を精度よく決定することが困難となる。
【0008】
圧電マイクロポンプの場合には、圧電素子が完全に破壊されていなくても、落下衝撃によるひび割れ等により圧電素子のインピーダンスが変化した場合、ポンプが完全に破壊されていないが消費電力が大きくなることがある。このような状態で使用し続けると、電池寿命が短くなり、ポンプの故障により機器が使用できなくなる。
【0009】
それゆえに本発明の目的は、想定以上の電力消費の推定を可能にする電子血圧計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う電子血圧計は、被測定者の測定部位の周囲に巻付けられるカフと、カフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを制御することによりカフ内の圧力を調整するための調整部と、調整部を駆動制御することにより、カフ内の圧力を徐々に変化させるための駆動制御部と、カフ内の圧力を表わすカフ圧を検出するための圧力検出部と、圧力検出部より検出されるカフ圧に基づいて血圧値を決定するための血圧決定部と、測定部位の周囲長を検出するための周囲長検出部と、各部に電力を供給するための電池と、血圧測定中の電池の電圧降下値を検出するための降下検出部と、を備え、周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定することにより、想定以上の電力消費の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図2】実施の形態に係る電子血圧計の機能構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る周囲長を推定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図4】本実施の形態によるカフ圧−加圧時間特性(適切巻きの場合)のグラフである。
【図5】本実施の形態に係る環境温度と電池電圧の降下との関係を示すグラフである。
【図6】本実施の形態に係る環境温度と電池電圧の降下との関係に従うテーブルを示す図である。
【図7】本実施の形態に係る環境温度(低温、常温、高温)毎の周囲長に対応して、電池電圧降下値を判定するためテーブルを示す図である。
【図8】本実施の形態による推定した電池電圧の降下値の120%以上低下すると判定するケースを説明するためのグラフである。
【図9】本実施の形態に係る血圧測定処理のフローチャートである。
【図10】本実施の形態に係る環境温度によるBL電圧の可変変更を説明するための図である。
【図11】本実施の形態に係る環境温度による初期加圧電圧の可変変更を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る電子血圧計100のハードウェア構成を表わすブロック図である。図1を参照して、電子血圧計100は血圧測定部位に装着されるカフ40およびエア系を備える。カフ40は空気袋20を含む。空気袋20は、エアチューブ300を介して、エア系に接続される。
【0015】
電子血圧計100は、さらに表示部12、操作部13および各部を集中的に制御し、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)10、CPU10に所定の動作をさせるためのプログラムや各種データを記憶するためのメモリ11、各部に電力を供給するための着脱自在の電池15、計時動作を行なうためのタイマ14を含む。メモリ11は、測定された血圧を記憶するための不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)などを含む。不揮発メモリには、後述する周囲長検出部351により検索されるテーブル433、後述する降下量検出部352により検索されるテーブル434、および後述する電力推定部35により検索されるテーブル435が格納される。
【0016】
操作部13は、電源をONまたはOFFするための操作を受付ける電源スイッチ、測定開始の操作を受付けるための測定スイッチ、測定停止の指示の操作を受付けるための停止スイッチ、およびユーザ(被測定者)を選択的に指定する操作を受付けるための使用者選択スイッチを有する。操作部13は、フラッシュメモリに格納された測定血圧などの情報を読出し表示部に表示させる操作を受付けるためのスイッチも有する。
【0017】
本実施の形態では、電子血圧計100は複数の被測定者により共用されることから、使用者選択スイッチを備えるが、共用されない場合には使用者選択スイッチは省略されてよい。また、測定スイッチを、電源スイッチと兼用してもよい。その場合には、測定スイッチは省略することができる。
【0018】
エア系は、空気袋21内の圧力(以下、カフ圧という)を検出するための圧力センサ21、カフ圧を加圧するために、空気袋20に空気を供給するための圧電ポンプ26、および空気袋20の空気を排出しまたは封入するために開閉される排気弁24を含む。電子血圧計100は、エア系に関連して、増幅器22およびA/D(Analog/Digital)変換器23、圧電ポンプ駆動回路27、および排気弁駆動回路25を含む。ここでは、圧電ポンプ26、排気弁24、圧電ポンプ駆動回路27および排気弁駆動回路25などは、カフ圧を調整するための調整部に相当する。
【0019】
圧電ポンプ26は、圧電素子を駆動源として用いたマイクロポンプである。圧電ポンプ26は、振動制御電圧信号273によって駆動される圧電アクチュエータと、これに積層されたダイヤフラムと、ダイヤフラムの変位すなわち振動によって圧縮および膨張されるポンプ室とを有し、圧縮および膨張するポンプ室を介し空気が空気袋20へ供給される。
【0020】
圧電ポンプ駆動回路27は、CPU10からの電圧制御信号271および周波数制御信号272に基づき、振動制御電圧信号273を生成し出力する。周波数制御信号272は、圧電アクチュエータおよびこれに積層されたダイヤフラムの寸法から決定される共振周波数に一致し、予めメモリ11に格納される。また、電圧制御信号271は、上述したフィードバック制御により加圧速度目標に基づき決定される電圧値を指す。圧電ポンプ駆動回路27は、電圧制御信号271と周波数制御信号272に基づき、共振周波数付近の交流電圧信号である振動制御電圧信号273を生成し、圧電アクチュエータに印加する。
【0021】
排気弁駆動回路25はCPU10から与えられる制御信号に基づいて排気弁24の開閉を制御する。
【0022】
電池15に関連してA/D(Analog/Digital)変換器16を備える。A/D変換器16は電池15の電池電圧(電池15の端子間の電圧)を入力しデジタルデータに変換して、電池電圧値を指す電圧信号513をCPU10に出力する。電池15は、乾電池などの充電不可能な1次電池、または充電可能な2次電池を適用することができる。
【0023】
圧力センサ21は、静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。
圧力センサ21は、カフ圧に応じた信号を増幅器22に出力する。増幅器22は、圧力センサ21から入力した信号を増幅し、増幅後の信号をA/D変換器23に出力する。A/D変換器23は、増幅器22から入力した増幅後の信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をCPU10に出力する。これにより、CPU10は、カフ圧を検出する。CPU10は、A/D変換器23から得られる信号を圧力に変換することによってカフ圧を検知する。
【0024】
なお、カフ40に供給される流体は空気に限定されるものではなく、例えば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0025】
(機能構成)
図2は、本実施の形態に係る電子血圧計100の機能構成を示す機能ブロック図である。機能構成は、CPU10が有する機能と、その周辺部を用いて示される。
【0026】
図2を参照して、CPU10は、操作部13を介したユーザの操作を受付けるための操作受付部30、A/D変換器23からの圧力信号を入力する脈波検出部31および圧力検出部32、圧電ポンプ駆動回路27と排気弁駆動回路25とに制御信号を出力する駆動制御部33、オシロメトリック法に従って血圧値を決定する血圧決定部34、メモリ11のデータを読み書き(アクセス)するためのアクセス部36、表示部12の表示を制御する出力部37、および電池15の電圧降下値および電子血圧計100における消費電力量を推定する電力推定部35を備える。
【0027】
駆動制御部33は、血圧測定中に排気弁駆動回路25および圧電ポンプ駆動回路27を制御することにより、加圧速度目標に従ってカフ圧を加圧させるための機能を有する。駆動制御部33は、カフ圧を調整するために、排気弁駆動回路25および圧電ポンプ駆動回路27に制御信号を送信する。具体的には、カフ圧を加圧し、または減圧するための制御信号を出力する。取分け、圧電ポンプ駆動回路27に対する制御信号は、後述するフィードバック制御に従って出力される。
【0028】
脈波検出部31は、A/D変換器23からの圧力信号に重畳される動脈の容積変化を表す脈波信号を、フィルタ回路を用いて検出する。圧力検出部32は、カフ圧を検出するために、A/D変換器23からの圧力信号を圧力値に変換し、出力する。
【0029】
血圧決定部34は、オシロメトリック式に従い血圧を決定する。具体的には、血圧測定時に圧力検出部32から入力するカフ圧と、脈波検出部31により検出された脈波とを用いて、脈波振幅の推移とカフ圧とに基づき血圧を決定する。例えば、脈波振幅の最大値に対応するカフ圧を平均血圧、また脈波振幅の最大値の50%に相当する高カフ圧側の脈波振幅に対応するカフ圧を収縮期血圧、また脈波振幅の最大値の70%に相当する低カフ圧側の脈波振幅に対応するカフ圧を拡張期血圧と決定する。また、脈拍数を、脈波信号を用いて公知の手順に従って算出する。取得された血圧値および脈拍数の測定データは、出力部37を介して表示部12に表示され、または、アクセス部36を介してメモリ11に格納される。表示または格納される測定データには、タイマ14から入力した測定時間が含まれてよい。
【0030】
(圧電ポンプ26のフィードバック制御)
オシロメトリック式に従って血圧測定する場合には、測定精度を得るために、カフ圧を一定の加圧速度目標で加圧しなければならない。つまり、血圧測定開始時に駆動制御部33は、加圧目標値に基づいた電圧を指す電圧制御信号271、および前述の周波数制御信号272を生成し圧電ポンプ駆動回路27に出力する。これにより、圧電ポンプ駆動回路27は、加圧目標値に従って振動を制御するための振動制御電圧信号273を生成し圧電ポンプ26に出力する。
【0031】
初期の加圧速度目標に従って加圧開始後、駆動制御部33は、圧力検出部32から入力するカフ圧に基づきカフ圧の加圧速度を算出し、算出した加圧速度と、現在の加圧速度目標とを比較し、比較結果に従う両者の差に基づく電圧を指す電圧制御信号271を生成し、圧電ポンプ駆動回路27に出力する。このように電圧制御信号271を用いて、圧電ポンプ26は、加圧速度が加圧速度目標となるようにフィードバック制御される。
【0032】
圧電ポンプ26の吐出流量は、駆動回路53から与えられる電圧制御信号271が指す電圧または周波数制御信号272が指す周波数に比例することから、上述のフィードバック制御には、電圧制御信号271が指す電圧および周波数制御信号272が指す周波数の両方、または一方を変更することにより実現することができる。ここでは、説明を簡単にするために、上述のように、圧電ポンプ26を電圧制御信号271を用いてフィードバック制御すると想定する。
【0033】
電力推定部35は、カフ40が巻き付けられる測定部位の周囲長を検出する周囲長検出部351と電池15の電池電圧の降下量を検出するための降下量検出部352を含む。電力推定部35は、電池電圧の降下量と周囲長とに基づき、電子血圧計における電力の消費量を推定する。
【0034】
(周囲長推定)
本実施の形態の周囲長検出部351による測定部位の周囲長の推定について説明する。図3は、本実施の形態に係る測定部位周囲長Lを推定するために参照されるテーブル433の一例を示す図である。テーブル433には、カフ40の測定部位に対する巻付け状態が“適切巻き”の場合においてカフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する等速加圧の時間と、対応する周囲長Lが格納される。テーブル433のデータは、予め実験等により取得される。図4は、本実施の形態によるカフ圧‐加圧時間特性(適切巻きの場合)のグラフである。図3と図4のデータは、電子血圧計100を用いて多くの被験者からサンプリングしたデータに基づく値を指す。ここで、“適切巻き”とは、測定部位の周囲長に対して巻付けられたカフ40の内径(測定部位である腕の断面の径)による円周の長さにほぼ等しい状態を指す。本実施の形態では、適切巻きの状態において血圧測定がされると想定する。
【0035】
測定部位に巻付けたカフ40のカフ圧と、カフ40内へ供給される流体(本実施の形態では、空気)の容積変化に基づき、カフ圧が、圧力P2から圧力P3になるまでに必要な空気は、流体容積ΔV23であるとする(図4参照)。加圧過程で圧電ポンプ26が等速加圧(一定回転数)の下で流体容積ΔV23の空気を供給するのに要する加圧時間は、一定時間(ここでは、時刻V2〜時刻V3の時間V23)となる。しかしながら、時間V23は、測定部位の周囲長Lに依存して変化する。
【0036】
例えば、周囲長が異なる測定部位に対して、適切巻きでカフ40を巻付けた場合、図4のように、周囲長が小さい(細腕)ほど時間V23は小さくなり、周囲長が大きい(太腕)ほどV23は大きくなる。
【0037】
周囲長検出部351は、初期の加圧速度目標で加圧開始後、検出されるカフ圧に基づき、カフ圧が0mmHg(圧力P2)から20mmHg(圧力P3)まで変化するのに要した時間をタイマ14によって計測する。そして、計測した時間に基づき、アクセス部36を介してテーブル433を検索することにより、対応する周囲長Lを読出す。
【0038】
なお、ここでは血圧測定時に周囲長Lを推定(測定)するとしているが、被測定者が測定時に操作部41を操作して入力するとしてもよい。または、予めメモリ11に被測定者毎に周囲長Lが格納されるとしてもよい。
【0039】
(電圧降下値による温度の推定)
本実施の形態では電力消費量を検出するための電池電圧の降下値を検出する。ここで、電子血圧計100が配置される使用時の環境温度により電池15の内部抵抗値は、すなわち電圧降下値は相違する。つまり、環境温度が低い場合、電池15の内部抵抗は増加するため、加圧速度目標など同じ条件で動作させても常温の環境温度の場合に比べて電池電圧の降下値は大きくなる。そこで、本実施の形態では、降下量検出部352は、初期加圧時に電圧信号513に基づき電池電圧の降下値を検出することで、環境温度を推定する。
【0040】
図5は、本実施の形態に係る環境温度と電池電圧の降下との関係を示すグラフである。グラフは発明者らの実験により取得されたものであり、縦軸は電池電圧がとられ、横軸には測定時間がとられる。グラフによれば、同じ周囲長(標準腕周)および同じ加圧速度目標で血圧測定をした場合でも、環境温度が低温である場合には常温の場合に比較して電池電圧の降下値が大きいことがわかる。
【0041】
図5の実験結果に従って、テーブル434には、図6に示すように、初期の加圧速度目標で等速加圧を開始してから所定時間(カフ圧を所定圧だけ加圧する時間)を経過したときの各種の電池電圧の降下値と、これら降下値のそれぞれに対応して環境温度(低温、常温、高温)が予め格納される。所定時間は、上述した周囲長Lを推定するための加圧に要する時間にほぼ相当する。
【0042】
(周囲長による消費電力の推定)
また、図5のグラフによれば、同じ環境温度および同じ加圧速度目標で血圧測定をした場合には、周囲長により電池電圧の降下値が大きくなることがわかる。また、グラフによれば、同じ周囲長および同じ加圧速度目標で血圧測定をした場合には、環境温度により電池電圧の降下値が相違することがわかる。そこで、本実施の形態では、図5の実験結果に従って、メモリ11には環境温度(低温、常温、高温)毎に図7のテーブル435が格納されて、各テーブル435には、周囲長(小、標準、大)と、周囲長のそれぞれに対応して、時間と初期降下値をパラメータに用いた電池電圧降下値を判定するための演算式である電圧降下式と、消費電力を算出するための演算式である消費電力算出式が格納される。
【0043】
電圧降下式に、初期の加圧速度目標で等速加圧を開始してからの経過時間を代入して演算することにより、電池電圧の降下値を算出(推定)することができる。そこで、本実施の形態では、推定した電池電圧の降下値の例えば120%以上低下すると判定した場合は、圧電ポンプ26の圧電素子の異常と判定し、すなわち、電子血圧計100による消費電力が大きくなり、電池15の寿命が短くなると判定する。この場合には、消費電力が大きいことを被測定者に報知することで、被測定者は電子血圧計100の点検や買換えを早期に行うことができるようになる。
【0044】
図8には、本実施の形態による推定した電池電圧の降下値の120%以上低下すると判定するケースを説明するためのグラフである。このグラフは、縦軸に電池電圧がとられ、横軸に血圧測定の経過時間がとられている。図8では、1例として、常温で周囲長Lは標準という条件下において血圧測定する場合の電圧降下値の経過時間に従う変化が実線のグラフで示されて、その降下値の120%低下する場合が破線のグラフで示される。ここでは、破線のグラフを電圧降下の「想定範囲」と呼ぶ。したがって、実際の血圧測定において一点鎖線のグラのように電圧降下値が測定された場合には、血圧測定開始後の時間TAにおいて測定される電圧降下値は「想定範囲」以下であると判定されて、消費電力が異常に大きいことが被測定者に対し報知される。ここでは、テーブル435の電圧降下式は、実験により取得した演算式であって、周囲長Lと環境温度を異ならせたケース毎に実験により「想定範囲」のグラフ(図8の破線のグラフに相当)を取得し、取得したグラフを曲線近似して得た演算式を指す。
【0045】
(フローチャート)
図9は、本実施の形態に係る血圧測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ11に格納されて、CPU10によりメモリ11から読出されて、実行される。
【0046】
被測定者は、測定部位にカフ40を適切巻きで巻き付けた状態で、操作部13の電源スイッチ(または測定スイッチ)を操作すると、操作受付部30により当該操作が受付けられて、受付けた操作に従う測定開始の指示信号が出力される。指示信号に応じて初期化処理が行われる(ステップS3)。具体的には、電力推定部35は、電圧信号513を入力して初期の電池電圧である初期降下値を検出する。また、駆動制御部33は、電圧制御信号271および周波数制御信号272を圧電ポンプ駆動回路27に出力するとともに、排気弁駆動回路25に排気弁24を閉鎖するための制御信号を出力する。これにより、排気弁駆動回路25によって排気弁24は閉鎖される。
【0047】
圧電ポンプ駆動回路27は、入力する電圧制御信号271および周波数制御信号272に基づく振動制御電圧信号273を生成し圧電ポンプ26に出力する。これにより、血圧測定が開始されて初期の加圧速度目標(例えば、5.5mmHg/sec)に従って、カフ圧が等速加圧されるように圧電ポンプ26が動作する(ステップS5)。
【0048】
タイマ14を用いて等速加圧開始後から所定期間が経過したと判定されたとき、降下量検出部352は電圧信号513に基づき、初期降下値からの降下値を検出する(ステップS7)。そして、検出した電圧降下値に基づきメモリ11のテーブル434を検索し、検索によって対応する温度のデータを読出す(ステップS8)。これにより環境温度が推定される。
【0049】
また、等速加圧開始後において、周囲長検出部351は上述した手順に従い周囲長Lを推定する(ステップS9)。
【0050】
電力推定部35は、推定された環境温度に基づきメモリ11を検索し、検索により環境温度に対応するテーブル435を特定する。そして、特定したテーブル435を、推定した周囲長Lに基づき検索し、検索により対応する電圧降下式を読出す。これにより「想定範囲」を算出するための演算式を得ることができる。
【0051】
等速加圧と並行して、電力推定部35は電圧信号513に基づき電池電圧を推定する(ステップS13)。また、血圧決定部34によりオシロメトリック式に従う血圧の推定が行われ(ステップS15)、血圧が決定し測定完了と判定されると(ステップS17でYES)、駆動制御部33は圧電ポンプ26を停止し、且つ排気弁24を開くような制御信号を出力する。これにより、空気袋20の空気は排気されてカフ圧は減圧する。そして、測定結果はメモリ11に格納されるとともに、表示部12に表示され(ステップS23)、処理は終了する。
【0052】
まだ、十分に加圧されない期間は血圧を決定することができないので(ステップS17でNO)、処理はステップS19に移行する。
【0053】
電力推定部35は、ステップS3で測定した初期の電池電圧と、電圧信号513に基づく現在の電池電圧とに基づき初期からの電圧降下値を算出し、算出した現在の電圧降下値が、ステップS11で読出した電圧降下式により算出される「想定範囲」の値以下であるか否かを判定する。ここでは、電圧降下式のパラメータに、ステップS3で測定した初期電池電圧の値およびタイマ14が計時する測定時間を代入して、当該電圧降下式に従う電圧降下値が「想定範囲」として算出される。なお、環境温度により、圧電ポンプ26の圧電素子の流量特性が変化するため、電圧降下式のパラメータには、環境温度に依存した係数が含まれる。
【0054】
電力推定部35は、現在の電圧降下値が、「想定範囲」未満であると判定すると(ステップS19でYES)、処理はステップS13に戻り、以降の処理が同様に行われるが、以上であると判定すると(ステップS19でNO)、電力推定部35は、出力部37を介して消費電力量が多すぎる旨を報知する(ステップS21)。その後、処理はステップ13に戻り、以降の処理が繰返される。
【0055】
なお、消費電力が多すぎると判定されたときは、その判定結果を血圧測定結果と関連付けてメモリ11に格納するようにしてもよい。これにより、電圧降下が大きすぎる圧電ポンプ26は正常な制御ができないことから血圧測定精度が保障されないとの情報を格納し、または測定結果とともに表示することができる。
【0056】
(変形例1)
一般に電圧降下値が大きくなると消費電力量は多くなることが知られているから、上述の実施の形態では、電圧降下値(以下、電圧降下値ΔVと称する)を測定(検出)し、電圧降下値ΔVを用いて消費電力量が多いことを判定し報知していたが、電力推定部35は、これに代替し又は併せて、測定した電圧降下値から所定演算式を用いて消費電力量を算出し、算出した消費電力量の多少を判定し、判定結果を報知してもよい。この場合には、「想定範囲」は、図8の破線のグラフの電圧降下値ΔVに従い所定演算式で算出される消費電力量となる。
【0057】
消費電力量を算出するためにテーブル435から、周囲長に対応の消費電力算出式を読出し、これを上述の所定演算式として用いてもよい。消費電力を算出するための所定演算式は、たとえば、W=ΔV×α+βを指す。ただし、Wは消費電力量を指し、環境温度により電圧降下値ΔVは変化するためαとβは環境温度に依存した所定係数値を指す。
【0058】
(変形例2)
また、上述の実施の形態では環境温度を血圧測定開始後に検出したが、血圧測定開始前に基準抵抗を用いて、電池15の電圧降下値を測定することで環境温度を測定するようにしてもよい。または、温度センサを備えて、温度センサにより環境温度を測定してもよい。
【0059】
(変形例3)
本実施の形態では、駆動制御部33は、電圧制御信号271を用いて圧電ポンプ26をフィードバック制御することで加圧速度を制御する。フィードバック制御では、駆動制御部33は、電圧制御信号271が指す電圧値を、電池15について設定されたBL(バッテリローの略)電圧値よりも大きい範囲で可変に変更する。
【0060】
ここで、BL(バッテリロー)は、電子血圧計100の設計仕様により決まる要求電圧であって、電子血圧計100の正常動作を保証するために要求される電池電圧を指す。BL電圧の設定値を指すデータは常温時の値を指し、メモリ11に予め格納される。
【0061】
しかし、上述したように電池15の内部抵抗値は環境温度により変化することから、図10のように、環境温度によりBL電圧を可変に変更するようにしてもよい。図10には、本実施の形態によるBL電圧の環境温度に従う変更例のグラフが示される。
【0062】
図10の縦軸には電池電圧がとられ、横軸には血圧測定の経過時間がとられる。低温時の電池15の電圧降下は、常温時よりも急峻であることから、低温時の血圧測定において常温時のBL電圧を用いた場合には、血圧測定が完了しないうちに電池15の電圧降下値がBL電圧を超えてしまい、正確なフィードバック制御が困難となる。
【0063】
そこで、低温時はBL電圧の値を、常温時のBL電圧値よりも小さくなるように変更する。これにより、低温時であっても血圧測定完了まで、BL電圧が指す電圧範囲内でフィードバック制御をすることができる。
【0064】
また、周波数制御信号272の周波数は上述にように圧電素子のサイズに依存して決定するとしたが、そのサイズは環境温度により変化(伸縮)することに着目し、周波数制御信号272の周波数を環境温度に従って可変に変更するとしてもよい。
【0065】
(変形例4)
また、本実施の形態では、加圧速度目標(例えば、5.5mmHg/sec)となるように圧電ポンプ26に供給する電圧制御信号271が指す初期加圧電圧を決定しているが、図11のように環境温度により、初期加圧電圧を可変に変更してもよい。
【0066】
図11の縦軸には電池電圧がとられ、横軸には血圧測定の経過時間がとられる。低温時の電池15の電圧降下は、常温時よりも急峻であることから、低温時の血圧測定において常温時の加圧速度目標で加圧をした場合には、血圧測定が完了しないうちに電池15の電圧降下値が低温時のBL電圧を超えてしまい、正確なフィードバック制御が困難となる。
【0067】
そこで、血圧測定開始時の初期加圧において環境温度を検出し、環境温度により、圧電素子の流量特性が変化することに着目し、その後の加圧過程の加圧速度目標を決定する加圧電圧を環境温度毎に可変に変更する。図11では、低温時の加圧電圧を常温時よりも低くしている。これにより、低温時であっても血圧測定完了まで、BL電圧が指す電圧範囲内でフィードバック制御をすることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、所定圧力だけ加圧するのに要する時間から周囲長Lを判定するが、このように環境温度毎に加圧電圧を可変に変更することで、周囲長Lの判定についても高い精度を得ることができる。
【0069】
(変形例5)
電池15には異なる種類の電池を用いることができる。ここで、電池15として用いる2次電池と1次電池(乾電池)では電圧降下量が異なるため、操作部13から、被測定者は予め電池15の種類を入力させて、電力推定部35は入力した電池の種類によって「想定範囲」を変化させても良い。また、入力操作に代替して、基準抵抗により環境温度を測定した後、血圧測定による電圧降下量に基づき、2次電池と1次電池(乾電池)を判別するようにしてもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
26 圧電ポンプ、27 圧電ポンプ駆動回路、31 脈波検出部、32 圧力検出部、33 駆動制御部、34 血圧決定部、35 電力推定部、100 電子血圧計、271 電圧制御信号、272 周波数制御信号、273 振動制御電圧信号、351 周囲長検出部、352 降下量検出部、433,434,435 テーブル、513 電圧信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は電子血圧計に関し、特に、測定部位から検出される脈波を用いて血圧を測定する電子血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器系疾患を解析する指標の一つであり、血圧に基づいてリスク解析を行うことは、例えば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。従来は通院時や健康診断時などの医療機関で測定される血圧(随時血圧)により診断が行われていた。しかしながら近年の研究により、家庭で測定する血圧(家庭血圧)が随時血圧より循環器系疾患の診断に有用であることが判明してきた。それに伴い、家庭で使用する血圧計が普及している。
【0003】
家庭向けの血圧計の多くがオシロメトリック法による血圧測定方法を採用している。オシロメトリック法による血圧測定は、カフを上腕などの測定部位に巻付け、カフの内圧(カフ圧)を収縮期血圧より所定圧(例えば30mmHg)だけ高く加圧し、その後、徐々にまたは段階的にカフ圧を減圧していく。この減圧過程における動脈の容積変化をカフ圧に重畳した圧変化(脈波振幅)として検出し、この脈波振幅の変化より収縮期血圧および拡張期血圧を決定する方法である。オシロメトリック法では、カフ圧の加圧過程において発生する脈波振幅を検出して血圧を測定することも可能である。
【0004】
これらの血圧測定において正確に脈波振幅を検出するためには、ポンプまたは弁によりカフ圧を一定速度で、加圧または減圧する必要がある。具体的には、等速加圧制御、または等速減圧制御では平均速度と目標速度との差に基づいて、平均速度が目標速度となるようにポンプまたは弁の駆動電圧をフィードバック制御する。フィードバック制御される血圧測定用のポンプには、モータを駆動源として用いるポンプ、圧電素子を駆動源として用いた圧電マイクロポンプなどを適用することができる。圧電マイクロポンプの構造は、たとえば特許文献1(特開2009−74418号公報)に開示がある。
【0005】
また、ポンプの加圧速度を決定する方法として、特許文献2(特開平5−42114号公報)には、電池電圧から加圧速度を決定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−74418号公報
【特許文献2】特開平5−42114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の電池電圧により加圧速度を決定する方法は、血圧測定中の電池電圧が降下が考慮されていない。つまり、消費電力が大きいポンプでは、電池電圧降下が大きいため、加圧速度を精度よく決定することが困難となる。
【0008】
圧電マイクロポンプの場合には、圧電素子が完全に破壊されていなくても、落下衝撃によるひび割れ等により圧電素子のインピーダンスが変化した場合、ポンプが完全に破壊されていないが消費電力が大きくなることがある。このような状態で使用し続けると、電池寿命が短くなり、ポンプの故障により機器が使用できなくなる。
【0009】
それゆえに本発明の目的は、想定以上の電力消費の推定を可能にする電子血圧計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う電子血圧計は、被測定者の測定部位の周囲に巻付けられるカフと、カフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを制御することによりカフ内の圧力を調整するための調整部と、調整部を駆動制御することにより、カフ内の圧力を徐々に変化させるための駆動制御部と、カフ内の圧力を表わすカフ圧を検出するための圧力検出部と、圧力検出部より検出されるカフ圧に基づいて血圧値を決定するための血圧決定部と、測定部位の周囲長を検出するための周囲長検出部と、各部に電力を供給するための電池と、血圧測定中の電池の電圧降下値を検出するための降下検出部と、を備え、周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定することにより、想定以上の電力消費の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図2】実施の形態に係る電子血圧計の機能構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る周囲長を推定するために参照されるテーブルの一例を示す図である。
【図4】本実施の形態によるカフ圧−加圧時間特性(適切巻きの場合)のグラフである。
【図5】本実施の形態に係る環境温度と電池電圧の降下との関係を示すグラフである。
【図6】本実施の形態に係る環境温度と電池電圧の降下との関係に従うテーブルを示す図である。
【図7】本実施の形態に係る環境温度(低温、常温、高温)毎の周囲長に対応して、電池電圧降下値を判定するためテーブルを示す図である。
【図8】本実施の形態による推定した電池電圧の降下値の120%以上低下すると判定するケースを説明するためのグラフである。
【図9】本実施の形態に係る血圧測定処理のフローチャートである。
【図10】本実施の形態に係る環境温度によるBL電圧の可変変更を説明するための図である。
【図11】本実施の形態に係る環境温度による初期加圧電圧の可変変更を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る電子血圧計100のハードウェア構成を表わすブロック図である。図1を参照して、電子血圧計100は血圧測定部位に装着されるカフ40およびエア系を備える。カフ40は空気袋20を含む。空気袋20は、エアチューブ300を介して、エア系に接続される。
【0015】
電子血圧計100は、さらに表示部12、操作部13および各部を集中的に制御し、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)10、CPU10に所定の動作をさせるためのプログラムや各種データを記憶するためのメモリ11、各部に電力を供給するための着脱自在の電池15、計時動作を行なうためのタイマ14を含む。メモリ11は、測定された血圧を記憶するための不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)などを含む。不揮発メモリには、後述する周囲長検出部351により検索されるテーブル433、後述する降下量検出部352により検索されるテーブル434、および後述する電力推定部35により検索されるテーブル435が格納される。
【0016】
操作部13は、電源をONまたはOFFするための操作を受付ける電源スイッチ、測定開始の操作を受付けるための測定スイッチ、測定停止の指示の操作を受付けるための停止スイッチ、およびユーザ(被測定者)を選択的に指定する操作を受付けるための使用者選択スイッチを有する。操作部13は、フラッシュメモリに格納された測定血圧などの情報を読出し表示部に表示させる操作を受付けるためのスイッチも有する。
【0017】
本実施の形態では、電子血圧計100は複数の被測定者により共用されることから、使用者選択スイッチを備えるが、共用されない場合には使用者選択スイッチは省略されてよい。また、測定スイッチを、電源スイッチと兼用してもよい。その場合には、測定スイッチは省略することができる。
【0018】
エア系は、空気袋21内の圧力(以下、カフ圧という)を検出するための圧力センサ21、カフ圧を加圧するために、空気袋20に空気を供給するための圧電ポンプ26、および空気袋20の空気を排出しまたは封入するために開閉される排気弁24を含む。電子血圧計100は、エア系に関連して、増幅器22およびA/D(Analog/Digital)変換器23、圧電ポンプ駆動回路27、および排気弁駆動回路25を含む。ここでは、圧電ポンプ26、排気弁24、圧電ポンプ駆動回路27および排気弁駆動回路25などは、カフ圧を調整するための調整部に相当する。
【0019】
圧電ポンプ26は、圧電素子を駆動源として用いたマイクロポンプである。圧電ポンプ26は、振動制御電圧信号273によって駆動される圧電アクチュエータと、これに積層されたダイヤフラムと、ダイヤフラムの変位すなわち振動によって圧縮および膨張されるポンプ室とを有し、圧縮および膨張するポンプ室を介し空気が空気袋20へ供給される。
【0020】
圧電ポンプ駆動回路27は、CPU10からの電圧制御信号271および周波数制御信号272に基づき、振動制御電圧信号273を生成し出力する。周波数制御信号272は、圧電アクチュエータおよびこれに積層されたダイヤフラムの寸法から決定される共振周波数に一致し、予めメモリ11に格納される。また、電圧制御信号271は、上述したフィードバック制御により加圧速度目標に基づき決定される電圧値を指す。圧電ポンプ駆動回路27は、電圧制御信号271と周波数制御信号272に基づき、共振周波数付近の交流電圧信号である振動制御電圧信号273を生成し、圧電アクチュエータに印加する。
【0021】
排気弁駆動回路25はCPU10から与えられる制御信号に基づいて排気弁24の開閉を制御する。
【0022】
電池15に関連してA/D(Analog/Digital)変換器16を備える。A/D変換器16は電池15の電池電圧(電池15の端子間の電圧)を入力しデジタルデータに変換して、電池電圧値を指す電圧信号513をCPU10に出力する。電池15は、乾電池などの充電不可能な1次電池、または充電可能な2次電池を適用することができる。
【0023】
圧力センサ21は、静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。
圧力センサ21は、カフ圧に応じた信号を増幅器22に出力する。増幅器22は、圧力センサ21から入力した信号を増幅し、増幅後の信号をA/D変換器23に出力する。A/D変換器23は、増幅器22から入力した増幅後の信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をCPU10に出力する。これにより、CPU10は、カフ圧を検出する。CPU10は、A/D変換器23から得られる信号を圧力に変換することによってカフ圧を検知する。
【0024】
なお、カフ40に供給される流体は空気に限定されるものではなく、例えば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
【0025】
(機能構成)
図2は、本実施の形態に係る電子血圧計100の機能構成を示す機能ブロック図である。機能構成は、CPU10が有する機能と、その周辺部を用いて示される。
【0026】
図2を参照して、CPU10は、操作部13を介したユーザの操作を受付けるための操作受付部30、A/D変換器23からの圧力信号を入力する脈波検出部31および圧力検出部32、圧電ポンプ駆動回路27と排気弁駆動回路25とに制御信号を出力する駆動制御部33、オシロメトリック法に従って血圧値を決定する血圧決定部34、メモリ11のデータを読み書き(アクセス)するためのアクセス部36、表示部12の表示を制御する出力部37、および電池15の電圧降下値および電子血圧計100における消費電力量を推定する電力推定部35を備える。
【0027】
駆動制御部33は、血圧測定中に排気弁駆動回路25および圧電ポンプ駆動回路27を制御することにより、加圧速度目標に従ってカフ圧を加圧させるための機能を有する。駆動制御部33は、カフ圧を調整するために、排気弁駆動回路25および圧電ポンプ駆動回路27に制御信号を送信する。具体的には、カフ圧を加圧し、または減圧するための制御信号を出力する。取分け、圧電ポンプ駆動回路27に対する制御信号は、後述するフィードバック制御に従って出力される。
【0028】
脈波検出部31は、A/D変換器23からの圧力信号に重畳される動脈の容積変化を表す脈波信号を、フィルタ回路を用いて検出する。圧力検出部32は、カフ圧を検出するために、A/D変換器23からの圧力信号を圧力値に変換し、出力する。
【0029】
血圧決定部34は、オシロメトリック式に従い血圧を決定する。具体的には、血圧測定時に圧力検出部32から入力するカフ圧と、脈波検出部31により検出された脈波とを用いて、脈波振幅の推移とカフ圧とに基づき血圧を決定する。例えば、脈波振幅の最大値に対応するカフ圧を平均血圧、また脈波振幅の最大値の50%に相当する高カフ圧側の脈波振幅に対応するカフ圧を収縮期血圧、また脈波振幅の最大値の70%に相当する低カフ圧側の脈波振幅に対応するカフ圧を拡張期血圧と決定する。また、脈拍数を、脈波信号を用いて公知の手順に従って算出する。取得された血圧値および脈拍数の測定データは、出力部37を介して表示部12に表示され、または、アクセス部36を介してメモリ11に格納される。表示または格納される測定データには、タイマ14から入力した測定時間が含まれてよい。
【0030】
(圧電ポンプ26のフィードバック制御)
オシロメトリック式に従って血圧測定する場合には、測定精度を得るために、カフ圧を一定の加圧速度目標で加圧しなければならない。つまり、血圧測定開始時に駆動制御部33は、加圧目標値に基づいた電圧を指す電圧制御信号271、および前述の周波数制御信号272を生成し圧電ポンプ駆動回路27に出力する。これにより、圧電ポンプ駆動回路27は、加圧目標値に従って振動を制御するための振動制御電圧信号273を生成し圧電ポンプ26に出力する。
【0031】
初期の加圧速度目標に従って加圧開始後、駆動制御部33は、圧力検出部32から入力するカフ圧に基づきカフ圧の加圧速度を算出し、算出した加圧速度と、現在の加圧速度目標とを比較し、比較結果に従う両者の差に基づく電圧を指す電圧制御信号271を生成し、圧電ポンプ駆動回路27に出力する。このように電圧制御信号271を用いて、圧電ポンプ26は、加圧速度が加圧速度目標となるようにフィードバック制御される。
【0032】
圧電ポンプ26の吐出流量は、駆動回路53から与えられる電圧制御信号271が指す電圧または周波数制御信号272が指す周波数に比例することから、上述のフィードバック制御には、電圧制御信号271が指す電圧および周波数制御信号272が指す周波数の両方、または一方を変更することにより実現することができる。ここでは、説明を簡単にするために、上述のように、圧電ポンプ26を電圧制御信号271を用いてフィードバック制御すると想定する。
【0033】
電力推定部35は、カフ40が巻き付けられる測定部位の周囲長を検出する周囲長検出部351と電池15の電池電圧の降下量を検出するための降下量検出部352を含む。電力推定部35は、電池電圧の降下量と周囲長とに基づき、電子血圧計における電力の消費量を推定する。
【0034】
(周囲長推定)
本実施の形態の周囲長検出部351による測定部位の周囲長の推定について説明する。図3は、本実施の形態に係る測定部位周囲長Lを推定するために参照されるテーブル433の一例を示す図である。テーブル433には、カフ40の測定部位に対する巻付け状態が“適切巻き”の場合においてカフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する等速加圧の時間と、対応する周囲長Lが格納される。テーブル433のデータは、予め実験等により取得される。図4は、本実施の形態によるカフ圧‐加圧時間特性(適切巻きの場合)のグラフである。図3と図4のデータは、電子血圧計100を用いて多くの被験者からサンプリングしたデータに基づく値を指す。ここで、“適切巻き”とは、測定部位の周囲長に対して巻付けられたカフ40の内径(測定部位である腕の断面の径)による円周の長さにほぼ等しい状態を指す。本実施の形態では、適切巻きの状態において血圧測定がされると想定する。
【0035】
測定部位に巻付けたカフ40のカフ圧と、カフ40内へ供給される流体(本実施の形態では、空気)の容積変化に基づき、カフ圧が、圧力P2から圧力P3になるまでに必要な空気は、流体容積ΔV23であるとする(図4参照)。加圧過程で圧電ポンプ26が等速加圧(一定回転数)の下で流体容積ΔV23の空気を供給するのに要する加圧時間は、一定時間(ここでは、時刻V2〜時刻V3の時間V23)となる。しかしながら、時間V23は、測定部位の周囲長Lに依存して変化する。
【0036】
例えば、周囲長が異なる測定部位に対して、適切巻きでカフ40を巻付けた場合、図4のように、周囲長が小さい(細腕)ほど時間V23は小さくなり、周囲長が大きい(太腕)ほどV23は大きくなる。
【0037】
周囲長検出部351は、初期の加圧速度目標で加圧開始後、検出されるカフ圧に基づき、カフ圧が0mmHg(圧力P2)から20mmHg(圧力P3)まで変化するのに要した時間をタイマ14によって計測する。そして、計測した時間に基づき、アクセス部36を介してテーブル433を検索することにより、対応する周囲長Lを読出す。
【0038】
なお、ここでは血圧測定時に周囲長Lを推定(測定)するとしているが、被測定者が測定時に操作部41を操作して入力するとしてもよい。または、予めメモリ11に被測定者毎に周囲長Lが格納されるとしてもよい。
【0039】
(電圧降下値による温度の推定)
本実施の形態では電力消費量を検出するための電池電圧の降下値を検出する。ここで、電子血圧計100が配置される使用時の環境温度により電池15の内部抵抗値は、すなわち電圧降下値は相違する。つまり、環境温度が低い場合、電池15の内部抵抗は増加するため、加圧速度目標など同じ条件で動作させても常温の環境温度の場合に比べて電池電圧の降下値は大きくなる。そこで、本実施の形態では、降下量検出部352は、初期加圧時に電圧信号513に基づき電池電圧の降下値を検出することで、環境温度を推定する。
【0040】
図5は、本実施の形態に係る環境温度と電池電圧の降下との関係を示すグラフである。グラフは発明者らの実験により取得されたものであり、縦軸は電池電圧がとられ、横軸には測定時間がとられる。グラフによれば、同じ周囲長(標準腕周)および同じ加圧速度目標で血圧測定をした場合でも、環境温度が低温である場合には常温の場合に比較して電池電圧の降下値が大きいことがわかる。
【0041】
図5の実験結果に従って、テーブル434には、図6に示すように、初期の加圧速度目標で等速加圧を開始してから所定時間(カフ圧を所定圧だけ加圧する時間)を経過したときの各種の電池電圧の降下値と、これら降下値のそれぞれに対応して環境温度(低温、常温、高温)が予め格納される。所定時間は、上述した周囲長Lを推定するための加圧に要する時間にほぼ相当する。
【0042】
(周囲長による消費電力の推定)
また、図5のグラフによれば、同じ環境温度および同じ加圧速度目標で血圧測定をした場合には、周囲長により電池電圧の降下値が大きくなることがわかる。また、グラフによれば、同じ周囲長および同じ加圧速度目標で血圧測定をした場合には、環境温度により電池電圧の降下値が相違することがわかる。そこで、本実施の形態では、図5の実験結果に従って、メモリ11には環境温度(低温、常温、高温)毎に図7のテーブル435が格納されて、各テーブル435には、周囲長(小、標準、大)と、周囲長のそれぞれに対応して、時間と初期降下値をパラメータに用いた電池電圧降下値を判定するための演算式である電圧降下式と、消費電力を算出するための演算式である消費電力算出式が格納される。
【0043】
電圧降下式に、初期の加圧速度目標で等速加圧を開始してからの経過時間を代入して演算することにより、電池電圧の降下値を算出(推定)することができる。そこで、本実施の形態では、推定した電池電圧の降下値の例えば120%以上低下すると判定した場合は、圧電ポンプ26の圧電素子の異常と判定し、すなわち、電子血圧計100による消費電力が大きくなり、電池15の寿命が短くなると判定する。この場合には、消費電力が大きいことを被測定者に報知することで、被測定者は電子血圧計100の点検や買換えを早期に行うことができるようになる。
【0044】
図8には、本実施の形態による推定した電池電圧の降下値の120%以上低下すると判定するケースを説明するためのグラフである。このグラフは、縦軸に電池電圧がとられ、横軸に血圧測定の経過時間がとられている。図8では、1例として、常温で周囲長Lは標準という条件下において血圧測定する場合の電圧降下値の経過時間に従う変化が実線のグラフで示されて、その降下値の120%低下する場合が破線のグラフで示される。ここでは、破線のグラフを電圧降下の「想定範囲」と呼ぶ。したがって、実際の血圧測定において一点鎖線のグラのように電圧降下値が測定された場合には、血圧測定開始後の時間TAにおいて測定される電圧降下値は「想定範囲」以下であると判定されて、消費電力が異常に大きいことが被測定者に対し報知される。ここでは、テーブル435の電圧降下式は、実験により取得した演算式であって、周囲長Lと環境温度を異ならせたケース毎に実験により「想定範囲」のグラフ(図8の破線のグラフに相当)を取得し、取得したグラフを曲線近似して得た演算式を指す。
【0045】
(フローチャート)
図9は、本実施の形態に係る血圧測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ11に格納されて、CPU10によりメモリ11から読出されて、実行される。
【0046】
被測定者は、測定部位にカフ40を適切巻きで巻き付けた状態で、操作部13の電源スイッチ(または測定スイッチ)を操作すると、操作受付部30により当該操作が受付けられて、受付けた操作に従う測定開始の指示信号が出力される。指示信号に応じて初期化処理が行われる(ステップS3)。具体的には、電力推定部35は、電圧信号513を入力して初期の電池電圧である初期降下値を検出する。また、駆動制御部33は、電圧制御信号271および周波数制御信号272を圧電ポンプ駆動回路27に出力するとともに、排気弁駆動回路25に排気弁24を閉鎖するための制御信号を出力する。これにより、排気弁駆動回路25によって排気弁24は閉鎖される。
【0047】
圧電ポンプ駆動回路27は、入力する電圧制御信号271および周波数制御信号272に基づく振動制御電圧信号273を生成し圧電ポンプ26に出力する。これにより、血圧測定が開始されて初期の加圧速度目標(例えば、5.5mmHg/sec)に従って、カフ圧が等速加圧されるように圧電ポンプ26が動作する(ステップS5)。
【0048】
タイマ14を用いて等速加圧開始後から所定期間が経過したと判定されたとき、降下量検出部352は電圧信号513に基づき、初期降下値からの降下値を検出する(ステップS7)。そして、検出した電圧降下値に基づきメモリ11のテーブル434を検索し、検索によって対応する温度のデータを読出す(ステップS8)。これにより環境温度が推定される。
【0049】
また、等速加圧開始後において、周囲長検出部351は上述した手順に従い周囲長Lを推定する(ステップS9)。
【0050】
電力推定部35は、推定された環境温度に基づきメモリ11を検索し、検索により環境温度に対応するテーブル435を特定する。そして、特定したテーブル435を、推定した周囲長Lに基づき検索し、検索により対応する電圧降下式を読出す。これにより「想定範囲」を算出するための演算式を得ることができる。
【0051】
等速加圧と並行して、電力推定部35は電圧信号513に基づき電池電圧を推定する(ステップS13)。また、血圧決定部34によりオシロメトリック式に従う血圧の推定が行われ(ステップS15)、血圧が決定し測定完了と判定されると(ステップS17でYES)、駆動制御部33は圧電ポンプ26を停止し、且つ排気弁24を開くような制御信号を出力する。これにより、空気袋20の空気は排気されてカフ圧は減圧する。そして、測定結果はメモリ11に格納されるとともに、表示部12に表示され(ステップS23)、処理は終了する。
【0052】
まだ、十分に加圧されない期間は血圧を決定することができないので(ステップS17でNO)、処理はステップS19に移行する。
【0053】
電力推定部35は、ステップS3で測定した初期の電池電圧と、電圧信号513に基づく現在の電池電圧とに基づき初期からの電圧降下値を算出し、算出した現在の電圧降下値が、ステップS11で読出した電圧降下式により算出される「想定範囲」の値以下であるか否かを判定する。ここでは、電圧降下式のパラメータに、ステップS3で測定した初期電池電圧の値およびタイマ14が計時する測定時間を代入して、当該電圧降下式に従う電圧降下値が「想定範囲」として算出される。なお、環境温度により、圧電ポンプ26の圧電素子の流量特性が変化するため、電圧降下式のパラメータには、環境温度に依存した係数が含まれる。
【0054】
電力推定部35は、現在の電圧降下値が、「想定範囲」未満であると判定すると(ステップS19でYES)、処理はステップS13に戻り、以降の処理が同様に行われるが、以上であると判定すると(ステップS19でNO)、電力推定部35は、出力部37を介して消費電力量が多すぎる旨を報知する(ステップS21)。その後、処理はステップ13に戻り、以降の処理が繰返される。
【0055】
なお、消費電力が多すぎると判定されたときは、その判定結果を血圧測定結果と関連付けてメモリ11に格納するようにしてもよい。これにより、電圧降下が大きすぎる圧電ポンプ26は正常な制御ができないことから血圧測定精度が保障されないとの情報を格納し、または測定結果とともに表示することができる。
【0056】
(変形例1)
一般に電圧降下値が大きくなると消費電力量は多くなることが知られているから、上述の実施の形態では、電圧降下値(以下、電圧降下値ΔVと称する)を測定(検出)し、電圧降下値ΔVを用いて消費電力量が多いことを判定し報知していたが、電力推定部35は、これに代替し又は併せて、測定した電圧降下値から所定演算式を用いて消費電力量を算出し、算出した消費電力量の多少を判定し、判定結果を報知してもよい。この場合には、「想定範囲」は、図8の破線のグラフの電圧降下値ΔVに従い所定演算式で算出される消費電力量となる。
【0057】
消費電力量を算出するためにテーブル435から、周囲長に対応の消費電力算出式を読出し、これを上述の所定演算式として用いてもよい。消費電力を算出するための所定演算式は、たとえば、W=ΔV×α+βを指す。ただし、Wは消費電力量を指し、環境温度により電圧降下値ΔVは変化するためαとβは環境温度に依存した所定係数値を指す。
【0058】
(変形例2)
また、上述の実施の形態では環境温度を血圧測定開始後に検出したが、血圧測定開始前に基準抵抗を用いて、電池15の電圧降下値を測定することで環境温度を測定するようにしてもよい。または、温度センサを備えて、温度センサにより環境温度を測定してもよい。
【0059】
(変形例3)
本実施の形態では、駆動制御部33は、電圧制御信号271を用いて圧電ポンプ26をフィードバック制御することで加圧速度を制御する。フィードバック制御では、駆動制御部33は、電圧制御信号271が指す電圧値を、電池15について設定されたBL(バッテリローの略)電圧値よりも大きい範囲で可変に変更する。
【0060】
ここで、BL(バッテリロー)は、電子血圧計100の設計仕様により決まる要求電圧であって、電子血圧計100の正常動作を保証するために要求される電池電圧を指す。BL電圧の設定値を指すデータは常温時の値を指し、メモリ11に予め格納される。
【0061】
しかし、上述したように電池15の内部抵抗値は環境温度により変化することから、図10のように、環境温度によりBL電圧を可変に変更するようにしてもよい。図10には、本実施の形態によるBL電圧の環境温度に従う変更例のグラフが示される。
【0062】
図10の縦軸には電池電圧がとられ、横軸には血圧測定の経過時間がとられる。低温時の電池15の電圧降下は、常温時よりも急峻であることから、低温時の血圧測定において常温時のBL電圧を用いた場合には、血圧測定が完了しないうちに電池15の電圧降下値がBL電圧を超えてしまい、正確なフィードバック制御が困難となる。
【0063】
そこで、低温時はBL電圧の値を、常温時のBL電圧値よりも小さくなるように変更する。これにより、低温時であっても血圧測定完了まで、BL電圧が指す電圧範囲内でフィードバック制御をすることができる。
【0064】
また、周波数制御信号272の周波数は上述にように圧電素子のサイズに依存して決定するとしたが、そのサイズは環境温度により変化(伸縮)することに着目し、周波数制御信号272の周波数を環境温度に従って可変に変更するとしてもよい。
【0065】
(変形例4)
また、本実施の形態では、加圧速度目標(例えば、5.5mmHg/sec)となるように圧電ポンプ26に供給する電圧制御信号271が指す初期加圧電圧を決定しているが、図11のように環境温度により、初期加圧電圧を可変に変更してもよい。
【0066】
図11の縦軸には電池電圧がとられ、横軸には血圧測定の経過時間がとられる。低温時の電池15の電圧降下は、常温時よりも急峻であることから、低温時の血圧測定において常温時の加圧速度目標で加圧をした場合には、血圧測定が完了しないうちに電池15の電圧降下値が低温時のBL電圧を超えてしまい、正確なフィードバック制御が困難となる。
【0067】
そこで、血圧測定開始時の初期加圧において環境温度を検出し、環境温度により、圧電素子の流量特性が変化することに着目し、その後の加圧過程の加圧速度目標を決定する加圧電圧を環境温度毎に可変に変更する。図11では、低温時の加圧電圧を常温時よりも低くしている。これにより、低温時であっても血圧測定完了まで、BL電圧が指す電圧範囲内でフィードバック制御をすることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、所定圧力だけ加圧するのに要する時間から周囲長Lを判定するが、このように環境温度毎に加圧電圧を可変に変更することで、周囲長Lの判定についても高い精度を得ることができる。
【0069】
(変形例5)
電池15には異なる種類の電池を用いることができる。ここで、電池15として用いる2次電池と1次電池(乾電池)では電圧降下量が異なるため、操作部13から、被測定者は予め電池15の種類を入力させて、電力推定部35は入力した電池の種類によって「想定範囲」を変化させても良い。また、入力操作に代替して、基準抵抗により環境温度を測定した後、血圧測定による電圧降下量に基づき、2次電池と1次電池(乾電池)を判別するようにしてもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
26 圧電ポンプ、27 圧電ポンプ駆動回路、31 脈波検出部、32 圧力検出部、33 駆動制御部、34 血圧決定部、35 電力推定部、100 電子血圧計、271 電圧制御信号、272 周波数制御信号、273 振動制御電圧信号、351 周囲長検出部、352 降下量検出部、433,434,435 テーブル、513 電圧信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の測定部位の周囲に巻付けられるカフと、
カフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを制御することにより前記カフ内の圧力を調整するための調整部と、
前記調整部を駆動制御することにより、前記カフ内の圧力を徐々に変化させるための駆動制御部と、
前記カフ内の圧力を表わすカフ圧を検出するための圧力検出部と、
前記圧力検出部より検出されるカフ圧に基づいて血圧値を決定するための血圧決定部と、
前記測定部位の周囲長を検出するための周囲長検出部と、
各部に電力を供給するための電池と、
血圧測定中の前記電池の電圧降下値を検出するための降下検出部と、を備え、
前記周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定する、電子血圧計。
【請求項2】
検出される電圧降下値が前記範囲を超えると判定するときは、その旨を出力する請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における消費電力量の範囲を推定する、請求項1または2に記載の電子血圧計。
【請求項4】
検出される電圧降下値に基づき消費電力量を推定し、推定した消費電力量が前記範囲を超えると判定するときは、その旨を出力する、請求項3に記載の電子血圧計。
【請求項5】
前記電子血圧計の環境温度に基づき前記範囲を可変に変更する、請求項1から4のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項6】
前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記環境温度を検出する、請求項3に記載の電子血圧計。
【請求項7】
血圧測定開始時の初期加圧期間に、前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記環境温度を検出する、請求項6に記載の電子血圧計。
【請求項8】
前記周囲長検出部は、血圧測定開始時の初期加圧期間に、前記カフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する時間に基づき、前記周囲長を検出する、請求項1から7のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項9】
血圧測定開始時の初期加圧期間に、前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記駆動制御部による前記調整部を介したカフ圧の加圧速度を可変に変化させる、請求項1から8のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項10】
前記電池は1次電池および2次電池のいずれかであって、
前記範囲を、前記電池の種類に応じて可変に変更する、請求項1から9のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項11】
前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記種類を判別する、請求項10に記載の電子血圧計。
【請求項12】
被測定者の測定部位の周囲に巻付けられるカフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを用いる血圧計を制御する方法であって、
血圧測定のために前記圧電ポンプを制御することにより前記カフ内の圧力を徐々に変化させるステップと、
前記測定部位の周囲長を検出するステップと、
血圧測定中に前記血圧計の各部に電力を供給するための電池の電圧降下値を検出するステップと、
前記周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定するステップと、を備える、電子血圧計の制御方法。
【請求項1】
被測定者の測定部位の周囲に巻付けられるカフと、
カフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを制御することにより前記カフ内の圧力を調整するための調整部と、
前記調整部を駆動制御することにより、前記カフ内の圧力を徐々に変化させるための駆動制御部と、
前記カフ内の圧力を表わすカフ圧を検出するための圧力検出部と、
前記圧力検出部より検出されるカフ圧に基づいて血圧値を決定するための血圧決定部と、
前記測定部位の周囲長を検出するための周囲長検出部と、
各部に電力を供給するための電池と、
血圧測定中の前記電池の電圧降下値を検出するための降下検出部と、を備え、
前記周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定する、電子血圧計。
【請求項2】
検出される電圧降下値が前記範囲を超えると判定するときは、その旨を出力する請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における消費電力量の範囲を推定する、請求項1または2に記載の電子血圧計。
【請求項4】
検出される電圧降下値に基づき消費電力量を推定し、推定した消費電力量が前記範囲を超えると判定するときは、その旨を出力する、請求項3に記載の電子血圧計。
【請求項5】
前記電子血圧計の環境温度に基づき前記範囲を可変に変更する、請求項1から4のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項6】
前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記環境温度を検出する、請求項3に記載の電子血圧計。
【請求項7】
血圧測定開始時の初期加圧期間に、前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記環境温度を検出する、請求項6に記載の電子血圧計。
【請求項8】
前記周囲長検出部は、血圧測定開始時の初期加圧期間に、前記カフ圧を所定圧力だけ加圧するのに要する時間に基づき、前記周囲長を検出する、請求項1から7のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項9】
血圧測定開始時の初期加圧期間に、前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記駆動制御部による前記調整部を介したカフ圧の加圧速度を可変に変化させる、請求項1から8のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項10】
前記電池は1次電池および2次電池のいずれかであって、
前記範囲を、前記電池の種類に応じて可変に変更する、請求項1から9のいずれかに記載の電子血圧計。
【請求項11】
前記カフ圧を所定圧力だけ加圧したときに前記降下検出部が検出する電圧降下値に基づき、前記種類を判別する、請求項10に記載の電子血圧計。
【請求項12】
被測定者の測定部位の周囲に巻付けられるカフに流体を供給するための圧電振動子を利用した圧電ポンプを用いる血圧計を制御する方法であって、
血圧測定のために前記圧電ポンプを制御することにより前記カフ内の圧力を徐々に変化させるステップと、
前記測定部位の周囲長を検出するステップと、
血圧測定中に前記血圧計の各部に電力を供給するための電池の電圧降下値を検出するステップと、
前記周囲長と、血圧測定開始時の初期加圧期間に検出される電圧降下値とに基づき、その後の血圧測定中における電圧降下値の範囲を推定するステップと、を備える、電子血圧計の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−90826(P2013−90826A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235018(P2011−235018)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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