説明

電子表示システム

【課題】電子表示器の消費電力を抑えて、その電源となる電池の消耗を抑えることを可能な技術を提供する。
【解決手段】電子表示システムは、電池により駆動され、移動体にそれぞれ設置される複数の電子表示器1と、複数の電子表示器1が表示する情報を配信する情報配信装置10とを備える。情報配信装置10は、定められた送出周期TpでビーコンBを送出する。一方、各電子表示器1は、定められた検出周期TeでビーコンBの有無を検出する。情報配信装置10は、特定の電子表示器1に対してデータを送信する場合、ビーコンBにデータ予告コマンドCdを含ませて送出するとともに、当該データ予告コマンドCdを含むビーコンBに続いてデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池により駆動され、移動体にそれぞれ設置される複数の電子表示器と、当該複数の電子表示器が表示する情報を配信する情報配信装置とを備える電子表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子表示器を備える電子表示システムについては、従来から各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1、2には、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗において、商品の近くに配置した電子表示器に当該商品の売価を表示させるシステム(所謂、電子棚札システム)が開示されている。ここでは、電子表示器は、商品の売価を表示する電子棚札として機能している。
【0003】
一方、近年においては、例えばライン生産方式が導入されている工場において、ベルトコンベア等に載せられて工場内を順次移動していく作業対象物(あるいは、その容器)に電子表示器を設置し、当該電子表示器に作業対象物に対して行うべき作業内容を表示させる電子表示システムも提案されている。この電子表示システムにおいては、例えば、作業対象物が新たな作業エリアに移動すると、そこに設置されている電子表示器の表示が切りかわって当該新たな作業エリアにおいて作業対象物に対して施すべき作業内容を表示する、という構成とすることによって、電子表示器を、作業者に作業内容を伝達する作業指示装置として機能させることができる。
【0004】
上記の例のように、電子表示器を作業指示装置として機能させる電子表示システムにおいては、電子表示器が移動することが前提となっている。このような電子表示システムにおいては、各電子表示器と、各電子表示器に対して各種の情報(例えば、表示すべき画面のデータ)を配信する装置(情報配信装置)との間で定常的に通信が行われ続ける構成とされる場合がある。電子表示器が移動する場合、例えば、電子表示器が情報配信装置との間で良好な通信が行えないエリアに入ってしまう可能性もあるところ、情報配信装置と各電子表示器との間で定常的に通信を行い続けていれば、そのような事態が発生したことを直ちに検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−168057号公報
【特許文献2】特開平11−219148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子表示器は、これを可搬可能とするために、電池駆動とされることが多い。したがって、電子表示システムにおいては、電子表示器の消費電力を抑えて、電子表示器の電源となる電池の消耗を抑えるための工夫が必要となる。
【0007】
また、上記の例のように、電子表示器が移動することが前提となっている電子表示システムにおいて、各電子表示器が情報配信装置と定常的に通信を行い続ける場合は、電子表示器の電池の消耗が特に著しい。したがって、このような電子表示システムにおいては、電子表示器の消費電力を効果的に抑える技術が特に強く求められている。
【0008】
この発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、電子表示器が移動することが前提となっている電子表示器システムにおいて、電子表示器の消費電力を抑えて、その電源となる電池の消耗を抑えることを可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る電子表示システムは、電池により駆動され、移動体にそれぞれ設置される複数の電子表示器と、前記複数の電子表示器が表示する情報を前記複数の電子表示器に配信する情報配信装置とを備える電子表示システムであって、前記情報配信装置が、前記複数の電子表示器に対する第1信号を、定められた送出周期で送出する第1信号送信部と、前記複数の電子表示器のうちの特定の電子表示器に対して送信すべき情報が発生した場合に、当該情報を含む前記特定の電子表示器宛ての第2信号を生成し、生成した前記第2信号を前記第1信号に続けて送信する第2信号送信部と、前記第1信号に続けて前記第2信号を送信する場合に、前記第2信号に先行する前記第1信号に、前記第2信号の送信を予告する予告情報を含める予告情報付与部と、を備え、前記複数の電子表示器のそれぞれが、前記第1信号の受信の有無を定められた検出周期で検出する第1信号検出部と、前記第1信号検出部が検出した前記第1信号に前記予告情報が含められている場合に、前記第1信号に続いて送信される前記第2信号の受信処理を行う第2信号受信部と、を備える。
【0010】
第2の態様に係る電子表示システムは、第1の態様に係る電子表示システムであって、前記第1信号が、定められた周期で連続して送信される複数の単位信号により構成され、前記予告情報付与部が、前記第2信号に先行する前記第1信号を構成する前記複数の単位信号のそれぞれに前記予告情報を含め、前記第1信号検出部が、前記複数の単位信号のうちの少なくとも1個の単位信号を検出する。
【0011】
第3の態様に係る電子表示システムは、第2の態様に係る電子表示システムであって、前記複数の単位信号のそれぞれに、当該単位信号が、連続して送信される前記複数の単位信号のうちで何番目に送信された単位信号であるかを示す順位情報が付与されており、前記第2信号受信部が、前記第1信号に続いて前記第2信号が送信される場合に、前記第1信号検出部が検出した前記単位信号に付与された前記順位情報に基づいて、前記第2信号の受信タイミングを調整する。
【0012】
第4の態様に係る電子表示システムは、第2の態様に係る電子表示システムであって、前記複数の単位信号のそれぞれに、当該単位信号が、連続して送信される前記複数の単位信号のうちで何番目に送信された単位信号であるかを示す順位情報が付与されており、前記第1信号検出部が、前記単位信号を検出した場合に、当該単位信号に付与された前記順位情報に基づいて、前記第1信号を次に受信するタイミングを調整する。
【0013】
第5の態様に係る電子表示システムは、第1から第4のいずれかの態様に係る電子表示システムであって、前記情報配信装置が、複数の中継器と、前記複数の中継器を介して前記複数の電子表示器に情報を配信するサーバと、を備え、前記第1信号送信部が、前記複数の中継器のそれぞれを介して、当該中継器の通信エリア内にある1以上の前記電子表示器に対して、前記第1信号を送出し、前記複数の電子表示器のうち、特定エリア内にある電子表示器に共通の設定情報を、前記特定エリアに通信エリアをもつ前記中継器を介して送信される前記第1信号に含める。
【0014】
第6の態様に係る電子表示システムは、第1から第5のいずれかの態様に係る電子表示システムであって、前記第2信号がパケット化されており、前記第2信号受信部が、前記第2信号のパケットのヘッダ情報に基づいて、当該パケットのデータ部に含まれる情報が自装置宛の情報であるか否かを判断し、自装置宛の情報ではないと判断した場合には、当該パケットの受信処理を中断して、当該パケットのデータ部を受信しない。
【0015】
第7の態様に係る電子表示システムは、第6の態様に係る電子表示システムであって、前記第2信号受信部が、前記第2信号のパケットのデータ部に含まれる情報が自装置宛の情報ではないと判断して当該パケットの受信処理を中断した場合に、当該パケットのヘッダ部から、当該第2信号が何個のパケットに分割されているかを示す情報、当該パケットが前記第2信号を構成する複数のパケットのうちの何番目のパケットであるかを示す情報、および、当該パケットが何回目のリトライ送信に係るパケットであるかを示す情報、を取得して、当該取得した情報に基づいて、次に自装置宛のパケットが送信されてくるタイミングを予測し、当該予測したタイミングでパケットの受信処理を再開する。
【0016】
第8の態様に係る電子表示システムは、第2の態様に係る電子表示システムであって、前記情報配信装置が、複数の中継器と、前記複数の中継器を介して前記複数の電子表示器に情報を配信するサーバと、を備え、前記複数の中継器のそれぞれに互いに異なる周波数領域が割り当てられており、前記複数の中継器のそれぞれが、自装置に割り当てられた周波数領域の前記第1信号を送出し、前記電子表示器が、前記複数の中継器のそれぞれから送出される各前記第1信号のうち、受信可能な前記第1信号をサーチするにあたって、各前記第1信号について、これを受信できるか否かの判断処理を前記第1信号の送出周期のn分の1の間隔をあけてn回(ただし、nは2以上の整数)行う基本サーチ処理を、前記送出周期の間にm回(ただし、mは1以上の整数)以上行う場合において、前記複数の中継器のそれぞれからの前記第1信号の出力時間が、前記第1信号の送出周期をx、ceil(a)をa以上の最小の整数として、n=ceil(x/y)の関係を満たす最小のyの値に、定められた誤差吸収時間を加えた値である。
【0017】
第9の態様に係る電子表示システムは、第8の態様に係る電子表示システムであって、前記基本サーチ処理が、各前記第1信号について、これを受信できるか否かの判断処理を前記第1信号の送出周期の2分の1の間隔をあけて2回行う処理である。
【0018】
第10の態様に係る電子表示システムは、第2の態様に係る電子表示システムであって、前記情報配信装置が、複数の中継器と、前記複数の中継器を介して前記複数の電子表示器に情報を配信するサーバと、を備え、前記複数の中継器のそれぞれに互いに異なる周波数領域が割り当てられており、前記複数の中継器のそれぞれが、自装置に割り当てられた周波数領域の前記第1信号を送出し、前記電子表示器が、前記複数の中継器のそれぞれから送出される各前記第1信号のうち、受信可能な前記第1信号をサーチするにあたって、前記サーチの結果、受信可能な前記第1信号がないと判断された場合に、間隔をあけて前記サーチを繰り返して実行し、前記サーチを繰り返す際の前記間隔が、時間の経過とともに長くなる。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様に係る電子表示システムにおいては、情報配信装置から特定の電子表示器に対する第2信号が送信される場合は、第1信号に予告情報が含められる。この構成によると、電子表示器は、当該予告情報に基づいて第2信号の受信処理を行うべきタイミングを計ることができるので、第2信号を待ち受けることによる無駄な電力の消耗を抑えられる。すなわち、各電子表示器の消費電力を抑えて、その電源となる電池の消耗を抑えることができる。
【0020】
第2の態様においては、第1信号が、定められた周期で連続して送信される複数の単位信号により構成され、各電子表示器は第1信号を構成する複数の単位信号のうちの少なくとも1個を検出する。この構成によると、各電子表示器が第1信号を検出する際に消費する電力を抑えることができる。
【0021】
第3の態様においては、第1信号に続いて第2信号が送信される場合に、電子表示器は、自装置が検出した単位信号に付与された順位情報に基づいて、第2信号の受信タイミングを調整する。この構成によると、電子表示器は、単位信号に付与された順位情報に基づいて第2信号の受信処理を行うべきタイミングを正確に特定することができるので、第2信号を待ち受けるための無駄な電力の消耗をさらに抑えることができる。
【0022】
第4の態様においては、電子表示器は、自装置が検出した単位信号に付与された順位情報に基づいて、第1信号の受信タイミングを調整する。例えば、第1信号の中程(すなわち、第1信号を構成する単位信号のうち、中程に送出された単位信号)を検出するように、単位信号の受信タイミングを調整すれば、情報配信装置からの第1信号の送出タイミングが多少ずれたとしても、第1信号を検出し損なう可能性が低くなる。つまり、情報配信装置から定められた送出周期で送出され続ける第1信号を確実に追従して、これを検出することができる。
【0023】
第5の態様によると、特定エリア内にある電子表示器に共通の設定情報が、第1信号に含められて当該エリア内にある電子表示器に送出されるので、設定情報を効率的に電子表示器に配信することができる。
【0024】
第6の態様によると、各電子表示器は、第2信号のパケットのヘッダ情報に基づいて、当該パケットのデータ部に含まれる情報が自装置宛の情報であるか否かを判断し、他装置宛の情報であると判断した場合は、当該パケットのデータ部を受信しないので、他装置宛のパケットのデータ部を受信することによって電子表示器の電力が無駄に消費されることがない。
【0025】
第7の態様によると、各電子表示器は、第2信号のパケットの受信処理を中断した場合に、当該パケットのヘッダ部に含まれる情報に基づいて、次に自装置宛のパケットが送信されてくるタイミングを予測し、当該予測したタイミングでパケットの受信処理を再開するので、自装置宛のパケットを受信し損ねることが防止される。
【0026】
第8の態様によると、複数の中継器のそれぞれからの第1信号の出力時間が、第1信号の送出周期をx、ceil(a)をa以上の最小の整数として、n=ceil(x/y)の関係を満たす最小のyの値に、定められた誤差吸収時間を加えた値である。この構成によると、電子表示器が基本サーチ処理を行うタイミングに対して、中継器からの第1信号の出力タイミングがどのような関係にあっても、基本サーチ処理におけるn回の判断処理のうちの少なくとも1回が、確実に第1信号の送出時間と重なるように担保しつつ、中継器から第1信号を送出する時間を小さく抑えることができる。したがって、電子表示器におけるサーチの確実性を担保しつつ、中継器から電子表示器に第2信号を送出する時間を長く確保することができる。
【0027】
第9の態様によると、基本サーチ処理が、各第1信号について、これを受信できるか否かの判断処理を第1信号の送出周期の2分の1の間隔をあけて2回行う処理であるので、電子表示器が基本サーチ処理において消費する電力を小さく抑えることができる。
【0028】
第10の態様によると、電子表示器がサーチを繰り返す際の間隔が、時間の経過とともに長くなるので、各電子表示器の電力が無駄なサーチによって消費されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】電子表示システムの構成を示す図である。
【図2】電子表示器の構成を示す図である。
【図3】電子表示器をアクセスポイントとリンク付ける動作におけるデータ通信の様子を模式的に示す図である。
【図4】ビーコンを説明するための図である。
【図5】ハンドオフ制御に係る一連の動作におけるデータ通信の様子を模式的に示す図である。
【図6】情報配信装置から特定の電子表示器に情報を配信する動作におけるデータ通信の様子を模式的に示す図である。
【図7】情報配信装置から特定の電子表示器に情報を配信する動作におけるデータ通信の様子を模式的に示す図である。
【図8】順位情報に基づいて、送信データの受信処理を行うべきタイミングを特定する処理を説明するための図である。
【図9】電子表示器が他装置宛の送信データを受信した場合の処理を説明するための図である。
【図10】電子表示器が自装置宛の送信データを受信した場合の処理を説明するための図である。
【図11】電子表示器が送信データの受信を再開する処理を説明するための図である。
【図12】電子表示システムにおいて実現される各機能を表すブロック図である。
【図13】ビーコンの検出処理を行うタイミングを最適なタイミングに調整する処理を説明するための図である。
【図14】チャネルサーチにおける通信の様子を模式的に示す図である。
【図15】チャネルサーチにおける通信の様子を模式的に示す図である。
【図16】チャネルサーチにおける通信の様子を模式的に示す図である。
【図17】チャネルサーチにおける電子表示器の検出タイミングを模式的に示す図である。
【図18】チャネルサーチを行う間隔を、時間とともに大きくする処理の説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<1.電子表示システム100の構成>
この発明の実施の形態に係る電子表示システム100の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、電子表示システム100の構成を示す図である。図1には、作業エリア90内において、作業対象となる物品等(作業対象物)91がベルトコンベア92によって搬送されながら複数の作業場所を順に移動するような製造工場に電子表示システム100が導入された様子が示されている。
【0031】
電子表示システム100は複数の電子表示器1と、複数の電子表示器1に情報を配信する情報配信装置10とを備える。
【0032】
複数の電子表示器1のそれぞれは移動体に設置される。ただし、ここでいう「移動体」とは、自らを移動させるための機構を備える自力移動体(例えば、搬送車)に限らず、外力を受けて移動する他力移動体を含む。例えば、人、あるいは、自力移動体によって移動させられる物体(例えば、人によって運ばれる作業対象物、搬送車やベルトコンベアに載せられて移動される作業対象物)等も「移動体」に含まれる。図1に示される例においては、各電子表示器1は、ベルトコンベア92上に載置されて作業エリア90内の各作業場所を順に移動する作業対象物91(あるいは、それを収容する容器)に設置されている。したがって、この場合、各電子表示器1は、作業対象物91とともに作業エリア90内の各作業場所を順に移動することになる。
【0033】
情報配信装置10は、DMSサーバ3と、LAN等のネットワーク4を介してDMSサーバ3と接続された複数のアクセスポイント(AP)2とを備える。
【0034】
DMSサーバ3は、ネットワーク4を介して接続された複数のアクセスポイント2のそれぞれとの間でデータ通信を行うことができる。また、DMSサーバ3は、通信回線(例えば、インターネットなどの外部ネットワーク、あるいは、LAN等)6を介して、製造工場を統括管理する本部センターに配置されたサーバ装置等のコンピュータシステム(基幹システム)5と接続されており、基幹システム5との間でデータ通信を行うことができる。
【0035】
DMSサーバ3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。具体的には、DMSサーバ3は、バスラインなどにより互いに接続された各構成部(各種演算処理を行うCPU、ブートプログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク、各種表示を行うディスプレイ、キーボード及びマウスなどで構成される入力部、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部等)を備える。
【0036】
複数のアクセスポイント2は、例えば無線PAN用の電波中継器であり、作業エリア90の天井等に略一定距離ごとに配置されている。これによって、作業エリア90内にある全ての電子表示器1が、いずれかのアクセスポイント2との間で、電波方式(あるいは、赤外線方式等であってもよい)の無線通信を行うことができるようになっている。つまり、作業エリア90内にある全ての電子表示器1は、いずれかのアクセスポイント2を介して、DMSサーバ3との間で通信を行うことができるようになっている。
【0037】
電子表示システム100は、基幹システム5から情報配信装置10に送信される情報を、作業エリア90内を移動する電子表示器1に表示させるシステムである。例えば、図1に示される例において、作業対象物91が第1の作業場所を通過している間は、当該作業対象物91に設置された電子表示器1に第1の作業場所で行われるべき作業内容を表示させ、当該作業対象物91が第1の作業場所から第2の作業場所に移動すると、当該電子表示器1の表示を、第2の作業場所で行われるべき作業内容に切り換えさせる、といったシステム制御を行うことによって、電子表示システム100が備える各電子表示器1を、作業エリア90内で作業対象物91に対して作業を行う作業者に対してその作業内容を伝達する作業支援装置として機能させることができる。
【0038】
<2.電子表示器1>
電子表示器1の構成について図2を参照しながら説明する。図2は、電子表示器1の構成を示す図である。
【0039】
電子表示器1は、矩形の板形状に成形された筐体の前面に配置されたディスプレイ11と、各種の操作を受け付ける操作ボタン12とを備える。筐体の内部には、アクセスポイント2との通信を行う通信部13と、電子表示器1の動作を統括的に制御する制御部14と、電子表示器1の電源を供給する小型の電池15とが設けられている。
【0040】
ディスプレイ11は、各種の情報を表示する表示装置である。ディスプレイ11は、具体的には、例えば、ドットマトリクス方式の不揮発性表示部であって、例えば電子ペーパで構成されている。電子ペーパ等の不揮発性表示部では、駆動電力を与えることなく表示内容を保持することができる。ディスプレイ11は、ドットマトリクス方式の表示部であるため、文字、記号、図形などを表示することができる。なお、ディスプレイ11は、必ずしも不揮発性表示部である必要はなく、例えば揮発性の液晶パネルであってもよい。
【0041】
通信部13は、アクセスポイント2との間での、電波方式(あるいは、赤外線方式等であってもよい)の無線通信を担う機能部である。通信部13が、アクセスポイント2を介してDMSサーバ3からデータを受信すると、そのデータは制御部14に入力される。一方、制御部14で生成されたデータは、通信部13を通じてアクセスポイント2に送信される。
【0042】
制御部14は、CPUやメモリなどで構成される。このメモリには、自装置の装置コードが記憶される。ただし、「装置コード」とは、電子表示システム100が備える複数の電子表示器1のそれぞれに固有のハードウェアIDである。制御部14は、電子表示器1の各要素を制御することによって電子表示器1全体の動作を管理する。
【0043】
また、制御部14は、ディスプレイ11の表示を制御する表示制御部として機能する。すなわち、制御部14は、通信部13がDMSサーバ3から、後述する「表示画面データ」を受信した場合、当該受信した表示画面データを一旦メモリに記憶した後に、ディスプレイ11を制御して、メモリ内の表示画面データをディスプレイ11に表示させる。
【0044】
<3.電子表示システム100の動作の概要>
電子表示システム100において行われる動作について説明する。
【0045】
<3−1.リンク付け>
電子表示システム100は、その起動時において、各電子表示器1をいずれかのアクセスポイント2とデータ的に対応付ける(リンク付ける)動作を実行する。当該動作について、図3を参照しながら説明する。図3は、当該動作におけるデータ通信の様子を模式的に示す図である。
【0046】
電子表示システム100が起動されると、まず、DMSサーバ3が、各アクセスポイント2に起動指示を与える(ステップS1)。起動指示を受けた各アクセスポイント2は、電子表示器1に対する「ビーコンB」の送出を開始する。
【0047】
ビーコンBは、アクセスポイント2と電子表示器1との間のリンクを確立するための信号であり、各アクセスポイント2から定められた周期(以下「送出周期Tp」という)で、当該アクセスポイント2の通信エリア内にある1以上の電子表示器1に対して送出(ブロードキャスト)される。なお、複数のアクセスポイント2のそれぞれがビーコンBを送出するタイミングは互いに同期されていなくともよいが、各アクセスポイント2におけるビーコンBの送出周期Tpは共通の値に設定される。例えば、各アクセスポイント2のビーコンBの送出周期Tpは、全て「4(秒)」に設定される。
【0048】
上述したとおり、複数のアクセスポイント2は作業エリア90の天井等に略一定距離ごとに配置されている。したがって、作業エリア90内にある全ての電子表示器1は、少なくとも1個のアクセスポイント2から送出されるビーコンBを受信する。つまり、情報配信装置10は、作業エリア90内に配置された全ての電子表示器1に対して、送出周期TpでビーコンBを送信する。
【0049】
ただし、複数のアクセスポイント2のそれぞれから送出されるビーコンBは、互いに異なる周波数の信号となっている。このため、各電子表示器1は、自装置が受信したビーコンBを送出したアクセスポイント2を、当該ビーコンBの周波数に基づいて特定することができる。なお、ビーコンBには、当該ビーコンBを送出したアクセスポイント2の識別情報(例えば、アクセスポイント番号等)が含まれる構成としてもよく、当該構成の場合は、各電子表示器1は、自装置が受信したビーコンBを送出したアクセスポイント2を、当該ビーコンBに含まれるアクセスポイント2の識別番号に基づいて特定することもできる。
【0050】
ここで、ビーコンBの構成について、図4を参照しながらさらに具体的に説明する。図4は、ビーコンBを説明するための図である。各アクセスポイント2から送出周期Tpで送出されるビーコンBは、定められた周期(以下「単位信号送出周期Tm」)で連続して送信される複数の単位信号bにより構成される。
【0051】
したがって、ビーコンBは、連続して送出される単位信号bの個数に、単位信号送出周期Tmを乗じた値により規定される一定の時間(出力時間)Lを有する信号となっている。なお、後に明らかになるように、電子表示器1の消費電力を抑えつつ、情報配信装置10の通信効率を高めるためには、ビーコンBの出力時間Lは、下記(式1)を満たす最小の「L」の値よりも僅かに(例えば、「0.1(秒)」程度)大きな値とされることが好ましい。ただし、(式1)中、「ceil(a)」は、「a以上の最小の整数」を表す。
【0052】
2=ceil(Tp/L) ・・・・(式1)
送出周期Tpが「4(秒)」に設定されている場合、(式1)を満たす最小の「L」の値は「2(秒)」である。したがって、これよりも僅かに大きな値、例えば、「0.1(秒)」だけ大きな値をとって、「2.1(秒)」を出力時間Lの値とすることが好ましい。ビーコンBを構成する単位信号bの個数を例えば「525(個)」とし、この「525(個)」の単位信号bを、「0.004(秒)」の単位信号送出周期Tmで送出すれば、ビーコンBの出力時間Lは「2.1(秒)」となる。
【0053】
連続して送出される複数の単位信号bのそれぞれには、当該単位信号bが、複数の単位信号bのうちで、何番目に送出された単位信号bであるかを示す順位情報i(例えば、通し番号)が付与されている。つまり、1個のビーコンBが、連続して送出される例えば「525(個)」の単位信号bから構成される場合、各単位信号bには、その送出順位に応じて、例えば1〜525のいずれかの番号が、順位情報iとして付与される。
【0054】
再び図3を参照する。作業エリア90内に配置された複数のアクセスポイント2のそれぞれがビーコンBの送出を行う一方で、作業エリア90内にある各電子表示器1の制御部14は、チャネルサーチを繰り返して、検出強度Rが定められた閾値(以下「捕捉閾値Q1」という)以上のビーコンBが検出されるのを待つ(ステップS2)。ただし、チャネルサーチとは、受信周波数を次々と切り換えながら、複数のアクセスポイント2のそれぞれに割り当てられたビーコンBの周波数領域の全体にわたって受信周波数を掃引して、受信可能な周波数領域を検出する処理である。
【0055】
検出強度Rが捕捉閾値Q1以上のビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号b(図4参照))を検出すると、制御部14は、例えば検出したビーコンBの周波数に基づいて当該ビーコンBを送出しているアクセスポイント2を特定する。そして、当該特定されたアクセスポイント2を、自装置が所属するアクセスポイント(所属アクセスポイント)として認定する。制御部14は、さらに、自装置が当該アクセスポイント2に所属することを情報配信装置10に通知する。具体的には、自装置の装置コードと、自装置の所属アクセスポイントとして認定したアクセスポイント2の識別情報(APコード)とを含む信号(所属通知信号)を生成して、これを情報配信装置10に送信する(ステップS3)。ただし、所属通知信号の送信は、アクセスポイント2からのビーコンBの送出タイミングと重ならないように行われる必要があり、例えば、ビーコンBの出力後のタイミングで行われる。
【0056】
ここで、各アクセスポイント2に所属する電子表示器1は複数台存在する。したがって、チャネルサーチの際に発信されるこの所属通知信号等を含む各種信号を複数の電子表示器1が同時に発信すると、信号の衝突が発生する可能性が高くなる。このような事態を回避するべく、電子表示器1は、ビーコンBのオフ期間中の通信時間を複数個に分割したタイミングスロット(時間区分)の一つをランダムに選択して、当該選択したタイミングスロットで信号を発信する構成とすることが好ましい。ここで、各電子表示器1は、例えば、疑似乱数を生成し、得られた値に基づいて信号を発信するタイミングスロットを決定する構成とすることができる。より好ましくは、疑似乱数の値と、無線通信の電波強度の値とに基づいて、信号を発信するタイミングスロットを決定する構成とする。無線通信の電波強度は、電子表示器1のおかれた環境、位置等によって変化しやすいため、電波強度の値をタイミングスロットの選択に加味することで、タイミングスロットの選択におけるランダム性が増す。このように、複数の電子表示器1が、それぞれがランダムに選択したタイミングスロットで所属通知信号等の信号を発信する構成とすると、各電子表示器1から信号が発信されるタイミングが分散され、信号の衝突が発生しにくくなる。その結果、各電子表示器1とアクセスポイント2との間の通信効率が向上する。
【0057】
電子表示器1から送信された所属通知信号は、アクセスポイント2を介して、DMSサーバ3により受信される(ステップS4)。DMSサーバ3は、電子表示器1からの所属通知信号を受信すると、当該所属通知信号に含まれている装置コードと、APコードとを対応付けて記憶する。これによって、電子表示器1とアクセスポイント2とが、1対1の関係でデータ的に対応付けられる(リンク付けされる)。
【0058】
なお、所属通知信号を送信した後、電子表示器1の制御部14は、定められた周期(以下「検出周期Te」という)で、自装置が所属するアクセスポイント2から送出されるビーコンBの受信の有無を検出し続ける。具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号bの有無を検出し続ける(図3参照)。この実施の形態においては、検出周期Teは、アクセスポイント2の送出周期Tpと一致しているものとする(Te=Tp)。
【0059】
また、電子表示器1は、検出周期Teと同じ周期で、スリープ状態からウェイクアップ状態への遷移を繰り返している。具体的には、電子表示器1の制御部14は、単位信号bの有無を検出する検出処理を行うと、消費電力が比較的小さいスリープ状態に自装置を遷移させる。そして、単位信号bの検出処理を行ってから検出周期Teが経過して、次のビーコンBを構成する単位信号bの検出処理を行うべきタイミング到来すると、自装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させてビーコンBの検出処理を行う。つまり、制御部14は、単位信号bの有無を検出する処理を行うのに必要な時間だけウェイクアップ状態となり、それ以外の時間帯においては原則としてスリープ状態となっている。ただし、検出した単位信号bにコマンド(後述する「データ予告コマンドCd」等)が含まれている場合には、制御部14は、ビーコンBの検出処理以外の何らかの処理を行う必要があると判断し、当該処理を行うべきタイミングに合わせて、自装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させる。
【0060】
<3−2.ハンドオフ制御>
上述したとおり、電子表示システム100においては、各電子表示器1は、一のアクセスポイント2とリンク付けられており、このリンク情報はDMSサーバ3において管理される。後に説明するように、情報配信装置10は、特定の電子表示器1への情報の配信を、当該電子表示器1とリンク付けられたアクセスポイント2を介して行う。つまり、DMSサーバ3においてリンク付けが完了していない状態、あるいは、リンク付けされたアクセスポイント2との間で良好な通信が行えない状態にある電子表示器1は、情報配信装置10から配信される自装置宛の情報を受信することができない(以下、電子表示器1のこのような状態を「ハンドオフ状態」という)。
【0061】
例えば、図1に示される例において、作業対象物91とともに作業エリア90内を移動していく電子表示器1は、自装置が現在リンク付けられているアクセスポイント2の通信エリア圏外に出てしまうことがある。すると、当該電子表示器1はハンドオフ状態となってしまい、DMSサーバ3から配信される自装置宛の情報を受信することができない。このような状態になると、当該電子表示器1において、ディスプレイ11の更新等が適切に行われないことになってしまう。
【0062】
そこで、電子表示システム100においては、各電子表示器1の制御部14に、自装置がハンドオフ状態にあるか否かを常に確認させる構成を設けている。すなわち、上述したとおり、各電子表示器1の制御部14は、検出周期Te(この実施の形態においては「Te=Tp」)で自装置が所属するアクセスポイント2から送出されるビーコンBの受信の有無を検出し続けており、ビーコンBの検出強度Rが定められた閾値(以下「ハンドオフ閾値Q2」という)よりも小さくなった場合に、自装置が当該アクセスポイント2との間で良好な通信が行えない状態になった(すなわち、ハンドオフ状態になった)と判断する。これによって、各電子表示器1は、自装置がハンドオフ状態になったことを速やかに(具体的には、検出周期Te以下の応答時間で)検出することができる。ただし、ハンドオフ閾値Q2は捕捉閾値Q1よりも小さい値とされることが好ましい。このように設定しておけば、ヒステリシスが付与されることにより各電子表示器1は適切なアクセスポイント2に安定して所属することができる。なお、ハンドオフ状態となったか否かを判断する態様は、上記の態様に限られるものではなく、例えば、検出強度Rが所定回数連続で(例えば3回連続で)ハンドオフ閾値Q2よりも小さい場合にハンドオフ状態になったと判断する態様を採用してもよい。
【0063】
自装置がハンドオフ状態にあると判断した場合、電子表示器1の制御部14は、ハンドオフ状態を解消するための処理(ハンドオフ制御)を実行する。ハンドオフ制御について、図5を参照しながら説明する。図5には、当該制御に係る一連の動作におけるデータ通信の様子が模式的に示されている。
【0064】
上述したとおり、各電子表示器1の制御部14は、検出周期Teで自装置が所属するアクセスポイント2から送出されるビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号b(図4参照))の受信の有無を検出し続けており、ビーコンBの検出強度Rがハンドオフ閾値Q2よりも小さくなった場合に、自装置がハンドオフ状態になったと判断する。自装置がハンドオフ状態にあると判断した場合、制御部14は、直ちにチャネルサーチを開始する(ステップS11)。
【0065】
検出強度Rが捕捉閾値Q1以上のビーコンBを検出すると、制御部14は、検出したビーコンBの周波数に基づいて当該ビーコンBを送出しているアクセスポイント2を特定する。そして、当該特定されたアクセスポイント2を、自装置が新たに所属するアクセスポイントとして認定する。制御部14は、さらに、自装置が当該アクセスポイント2に所属することを情報配信装置10に通知するための所属通知信号を生成し、これを情報配信装置10に送信する(ステップS12)。なお、上述したとおり、所属通知信号の送信は、アクセスポイント2からのビーコンBの送出タイミングと重ならないように行われる必要があり、例えば、ビーコンBの出力後のタイミングで行われる。この際、上述したとおり、電子表示器1は、ビーコンBのオフ期間中の通信時間を複数個に分割したタイミングスロット(時間区分)の一つをランダムに選択して、当該選択したタイミングスロットで信号を発信する構成とすることが好ましい。
【0066】
電子表示器1から送信された所属通知信号は、アクセスポイント2を介して、DMSサーバ3により受信される(ステップS13)。DMSサーバ3は、電子表示器1からの所属通知信号を受信すると、当該所属通知信号に含まれている装置コードとAPコードとを対応付けて記憶する。当該装置コードと先に対応付けられている別のAPコードが存在する場合は、当該別のAPコードを破棄する。これによって、電子表示器1が新たなアクセスポイント2とリンク付けし直される。
【0067】
例えば、図1に示される例において、作業対象物91とともに作業エリア90内を移動して、自装置がリンク付けられているアクセスポイント2の通信エリア圏外に出た電子表示器1は、別のアクセスポイント2の通信エリア内に入ってくると、当該別のアクセスポイント2から送出されるビーコンBを強く検出するようになる。そして、当該別のアクセスポイント2から送出されるビーコンBの検出強度が捕捉閾値Q1を超えた時点で、当該別のアクセスポイント2と再リンク付けされることになる。
【0068】
このように、電子表示システム100においては、各電子表示器1の制御部14に、自装置がハンドオフ状態にあるか否かを常に確認させるとともに、ハンドオフ状態になった電子表示器1の制御部14にハンドオフ制御を実行させて、ハンドオフ状態を解消させる。したがって、各電子表示器1は、原則として常に、適切なアクセスポイント2(すなわち、自装置が通信可能なアクセスポイント2であり、別の言い方をすると、その通信エリア内に自装置が位置しているアクセスポイント2)とリンク付けられた状態(捕捉状態)となっている。これによって、情報配信装置10から各電子表示器1への情報の配信が確実に行われることになる。
【0069】
<3−3.送信データDの配信>
電子表示システム100においては、情報配信装置10から、特定の電子表示器1宛に各種の情報(例えば、当該電子表示器1に表示させるべき画面の情報、当該電子表示器1の設定を変更させるための指示情報等)が配信される。当該情報の配信に係る一連の動作について、図6を参照しながら説明する。図6は、当該動作におけるデータ通信の様子を模式的に示す図である。
【0070】
特定の電子表示器1(以下「対象電子表示器1」という)に送信すべき情報が発生した場合、DMSサーバ3は、そのデータ部に当該送信すべき情報を含み、そのヘッダ部に対象電子表示器1の装置コードを含むデータ(以下「送信データD」という)を生成する。例えば、基幹システム5から特定の電子表示器1に表示させるべき情報(表示情報)を受信した場合(ステップS21)、DMSサーバ3は、受信した表示情報を表す画面のデータ(表示画面データ)を生成し、当該生成した表示画面データをデータ部に含み、対象電子表示器1の装置コードをヘッダ部に含む送信データDを生成する。
【0071】
送信データDを生成すると、続いてDMSサーバ3は、対象電子表示器1の所属アクセスポイント2(すなわち、対象電子表示器1とリンク付けられているアクセスポイント2)を特定し、当該アクセスポイント2(以下「対象アクセスポイント2」という)に対して、生成した送信データDを送信する(ステップS22)。
【0072】
作業エリア90内に配置された複数のアクセスポイント2のそれぞれは、上述したとおり、電子表示システム100が起動された後は、送出周期TpでビーコンBを送出し続けている。ここで、DMSサーバ3から送信データDを受信した対象アクセスポイント2は、次のビーコンB(送信データDを受信した時刻の直近に送出するビーコンB)に「データ予告コマンドCd」を含めて送出する。より具体的には、当該ビーコンBを構成する複数の単位信号bのそれぞれに、データ予告コマンドCdを含めて送出する。さらに、対象アクセスポイント2は、データ予告コマンドCdを含めたビーコンBに続けて、DMSサーバ3から受信した送信データDを送出する。ここで、「データ予告コマンドCd」とは、当該ビーコンBに続いて送信データDが送出される旨を電子表示器1に通知するための識別コマンドであり、送信データDの送信を予告する予告情報としての役割を担っている。
【0073】
対象アクセスポイント2から送出された、データ予告コマンドCdを含むビーコンB(より具体的には、データ予告コマンドCdを含む単位信号b)は、当該対象アクセスポイント2を所属アクセスポイントとする全ての電子表示器1(すなわち、当該対象アクセスポイント2の通信エリア内にある全ての電子表示器1)により受信されることになる。ただし、これらの電子表示器1の中には、対象電子表示器1が含まれている。
【0074】
作業エリア90内に配置された複数の電子表示器1のそれぞれの制御部14は、上述したとおり、検出周期Teで、所属アクセスポイント2から送出されるビーコンBの検出を行い続けている。所属アクセスポイント2から送出されたビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号b)を検出した電子表示器1の制御部14は、そこにデータ予告コマンドCdが含まれている場合、当該ビーコンBに引き続いて送信データDが送られてくると判断する。この場合、制御部14は、当該送信データDの受信処理を行うべく当該送信データDが送信されてくるタイミングに合わせて自装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させる。そして、当該送信データDの受信処理を行う(ステップS23)。
【0075】
上述したとおり、対象アクセスポイント2から送出された、データ予告コマンドCdを含むビーコンBは、当該対象アクセスポイント2を所属アクセスポイントとする全ての電子表示器1により受信されており、対象アクセスポイント2から送出された送信データDも、当該全ての電子表示器1により受信されることになる。
【0076】
送信データDを受信した各電子表示器1の制御部14は、まず、取得した送信データDのヘッダ部に含まれる装置コードが、自装置のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。取得した装置コードが自装置のものと一致しない場合、制御部14は、当該送信データDは他の電子表示器1宛の信号と判断し、処理を終了する。
【0077】
一方、取得した装置コードが自装置のものと一致した場合、当該電子表示器1(すなわち、対象電子表示器1)の制御部14は、受信した送信データDは自装置宛の信号と判断し、当該送信データDのデータ部に含まれる更新画像データを一旦メモリに格納する。そして、メモリに格納された当該更新画像データを、自装置のディスプレイ11に表示させる。これによって、対象電子表示器1のディスプレイ11の表示が、基幹システム5から送信された表示情報を表示した画面に更新されることになる。
【0078】
なお、対象電子表示器1の制御部14は、自装置宛の送信データDを受信すると、当該送信データDを正常に受け取った旨を示す情報を含む信号(ACK信号)を通信部13に出力させる。ただし、後に明らかになるように、送信データDは複数のパケットDiに分割されている場合があり、この場合、制御部14は、各パケットDiを受ける毎に、ACK信号を通信部13に出力させる。対象電子表示器1からACK信号を受信した対象アクセスポイント2は、対象電子表示器1において送信データDが正常に受信された旨の通知(正常応答通知)をDMSサーバ3に送信する。正常応答通知を受けたDMSサーバ3は、送信した送信データDが対象電子表示器1において正常に受信されたと判断して、当該送信データDの送信処理を終了する。
【0079】
一方、対象電子表示器1からACK信号を受信しない場合、対象アクセスポイント2は、対象電子表示器1において送信データDが正常に受信されていない旨の通知(異常応答通知)をDMSサーバ3に送信する。異常応答通知を受けたDMSサーバ3は、送信した送信データDが対象電子表示器1において正常に受信されていないと判断して、当該送信データDを繰り返し送信する(リカバリー通信)。リカバリー通信を行うことによって、電子表示器1の表示を確実に更新でき、システムの信頼性を大幅に向上できる。
【0080】
以上が、電子表示システム100において、情報配信装置10から特定の電子表示器1宛に情報を配信する際に行われる一連の動作である。なお、上記の説明では、情報配信装置10から特定の電子表示器1宛に配信される情報は、当該電子表示器1に表示させるべき画面のデータであったが、配信される情報はこれに限られるものではない。例えば、当該電子表示器1の設定を変更させるための指示情報を、上記と同様の処理で特定の電子表示器1宛に配信することができる。
【0081】
また、上記の説明においては、データ予告コマンドCdが含められたビーコンBに続いて、1個の送信データDが送信される構成であったが、図7に示すように、データ予告コマンドCdが含められたビーコンBに続いて、複数の送信データDが続けて送信されてもよい。なお、この場合、当該複数の送信データDは、全て同じ電子表示器1に宛てられたものであってもよいし、別々の電子表示器1に宛てられたものであってもよい。複数の送信データDをまとめて送信することによって、通信効率が良好なものとなり、電子表示器1の消費電力の低減、表示更新等の応答性の向上、といった効果を得ることができる。
【0082】
<4.電子表示器1の処理の流れ>
<4−1.受信処理の開始タイミング>
上述したとおり、電子表示器1の制御部14は、データ予告コマンドCdが含まれる単位信号bを検出した場合、当該単位信号bを含むビーコンBに引き続いて送信データDが送られてくると判断する。そして、制御部14は、当該送信データDの受信処理を行うべく、当該送信データDが送信されてくるタイミングに合わせて自装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させて、当該送信データDの受信処理を行う。
【0083】
ここで、制御部14は、送信データDの受信処理を開始すべきタイミング(すなわち、ウェイクアップ状態に遷移すべきタイミング)を、検出した単位信号bに含まれる順位情報iに基づいて特定する。この処理について、図8を参照しながら説明する。図8は、当該処理を説明するための図である。
【0084】
例えば、検出した単位信号bが「y番目」に送出されたものである場合、ビーコンBを構成する単位信号bの総数を「x個」とすると、残り(x−y)個の単位信号bが単位信号送出周期Tmで送出されることになる。したがって、単位信号bを検出してから当該ビーコンBの送出が終了するまでの時間ΔTは、(x−y)に、単位信号送出周期Tmを乗じた値により与えられる(式2)。
【0085】
ΔT=(x−y)×Tm ・・・(式2)
送信データDはビーコンBに続いて送信されるため、制御部14が送信データDの受信処理を開始するべきタイミングは、単位信号bを検出してから時間ΔTが経過した時刻となる。制御部14は、検出した単位信号bに付与された順位情報iに基づいて、上記(式2)より時間ΔTを算出し、単位信号bを検出した時刻から時間ΔTが経過した時点で、ウェイクアップ状態に遷移して、送信データDの受信処理を開始する。
【0086】
<4−2.受信処理の中断>
上述したとおり、各電子表示器1は、情報配信装置10から送信されてくる送信データDが、自装置宛であるか他装置宛であるかに関係なく、当該送信データDの受信処理を開始する。送信されてきた送信データDが他装置宛の送信データDである場合、当該受信処理は無駄な処理ということになってしまう。そこで、電子表示器1の制御部14は、送信されてきた送信データDが他装置宛の送信データDであると判明した時点で、当該受信処理を中断する構成とすることが好ましい。当該処理の流れについて、図9、図10を参照しながら詳細に説明する。図9、図10は、当該処理を説明するための図である。
【0087】
情報配信装置10から電子表示器1に送信される送信データDは、サイズが大きい場合は、図9に示すように、複数のパケットDiに分割されて(すなわち、パケット化されて)送信される。この場合、送信データDを構成する複数のパケットDiのそれぞれは、定められた周期で順番に送信されることになる。
【0088】
1つの送信データDを構成する複数のパケットDiのそれぞれは、データ部dとヘッダ部hとからなり、データ部dには各種の情報(例えば、表示画面データの一部情報)が含まれている。一方、ヘッダ部hには当該パケットDiを送信する宛先となる電子表示器1の装置コードが含まれている。
【0089】
パケットDiのヘッダ部hを受信した各電子表示器1の制御部14は、まず、受信したヘッダ部hに含まれる装置コードが、自装置のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。
【0090】
ヘッダ部hに含まれる装置コードが自装置の装置コードと一致していない場合、制御部14は、当該パケットDiは他装置宛の信号であると判断し、図9に示すように、当該パケットDiのデータ部を受信することなく、直ちに受信処理を中断する。
【0091】
一方、ヘッダ部hに含まれる装置コードが自装置の装置コードと一致している場合、制御部14は、当該パケットDiは自装置宛の信号であると判断し、図10に示すように、続いて、当該パケットDiのデータ部dを受信する。例えば、当該パケットDiが、x個のパケットDiに分割された送信データDのうちの1番目のパケットDiであるとすると、当該パケットDiおよびこれに続いて連続して送信されてくる計x個のパケットDiの全てが自装置宛の信号となっている。したがってこの場合、制御部14は、同様の処理によって、続いて連続して送信されてくる(x−1)個のパケットDiのヘッダ部hおよびデータ部dを全て受信することになる。送信データDを構成するx個のパケットDiの全てが受信されることによって、1個の送信データDに含まれる情報の全部(例えば、1個の更新画像データ)が受信されることになる。
【0092】
<4−3.受信処理の再開>
上述したとおり、各電子表示器1は、情報配信装置10から送信されてくる送信データDを構成するパケットDiのヘッダ部に基づいて、当該パケットDiが自装置宛か否かを判断し、他装置宛であると判断した場合は、当該パケットDiのデータ部dを受信することなく、直ちに受信処理を中断する(図9参照)。
【0093】
ところで、上述したとおり、情報配信装置10は、1個のビーコンBに続いて、複数の送信データDを送信してくる場合がある(図7参照)。この場合、最初に受信した送信データDが他装置宛のデータであっても、次に送られてくる送信データDは自装置宛のデータであるかもしれない。そこで、電子表示器1の制御部14は、一旦、送信データDの受信処理を中断した場合であっても、必要な場合は、適切なタイミングで受信処理を再開する。当該処理について、図11を参照しながら詳細に説明する。図11は、当該処理を説明するための図である。
【0094】
上述したとおり、情報配信装置10から電子表示器1に送信される送信データDは、サイズが大きい場合は、複数のパケットDiに分割されて送信される。送信データDを構成する各パケットDiのヘッダ部hには、当該パケットDiを送信する宛先となる電子表示器1の装置コードの他に、当該送信データDが何個のパケットDiに分割されているかを示す情報(パケット総数情報)、および、当該パケットDiが送信データDを構成する複数のパケットDiのうち何番目のパケットDiであるかを示す情報(パケット番号情報)が含まれる。
【0095】
また、上述したとおり、情報配信装置10は、電子表示器1からのACK信号が得られない場合は、送信データDを繰り返して送信(リトライ送信)する構成となっている(リカバリー通信)。具体的には、パケットDiを送信した場合に、これに応答するACK信号が電子表示器1から得られない場合は、情報配信装置10(具体的には、アクセスポイント2)は、当該パケットDiをもう一度送信する(リトライ送信)。当該パケットDiを、「リトライ回数」として定められた回数だけ繰り返して送信しても電子表示器1からのACK信号が得られない場合、情報配信装置10(具体的には、アクセスポイント2)は、当該送信データDの送信を中止し(すなわち、当該送信データDの残りのパケットDiの送信を行わずに)、次に送信すべき別の送信データDの1番目のパケットDiを送信する。ただし、リトライ送信を行うべき回数(リトライ回数)は、DMSサーバ3においてシステムの管理者等が任意に設定可能とする。このように、情報配信装置10からは、リトライ送信により、同じパケットDiが繰り返して送信される可能性があり、各パケットDiのヘッダ部hには、当該パケットDiが送信された回数を示す情報(送信回数情報)が含まれている。つまり、送信回数情報は、当該パケットDiが、何回目のリトライ送信に係るものであるかを示す情報である。
【0096】
パケットDiのヘッダ部hを受信した各電子表示器1の制御部14は、上述したとおり、まず、受信したヘッダ部hに含まれる装置コードが自装置のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定し、自装置の装置コードと一致していない場合、当該パケットDiのデータ部dを受信することなく直ちに受信処理を中断する。
【0097】
受信処理を中断した場合、制御部14は、さらに、当該パケットDiのヘッダ部hに含まれる各種の情報(パケット総数情報、パケット番号情報、送信回数情報等)に基づいて、次に自装置宛のパケットDiが送信されてくるタイミングを予測し、当該予測したタイミングで、パケットの受信処理を再開する。パケットの受信処理を再開するタイミングを計る態様について、具体的に説明する。
【0098】
受信処理を中断した場合、制御部14は、当該パケットDiのヘッダ部hに含まれる情報に基づいて、当該パケットDiのリトライ送信が行われない場合に、当該パケットDiと同じ送信データDに所属するパケットDiがあと何個送信されてくるか(残りパケット数)を特定する。残りパケット数は、具体的には、ヘッダ部hに含まれるパケット総数情報から、同じくヘッダ部hに含まれるパケット番号情報を引いた数値で規定される。
【0099】
残りパケット数が「x1」であったとすると、リトライ送信が行われない場合は、続いて送信される(x1)個のパケットDiは、必ず他装置宛のパケットDiのはずである。換言すると、(x1+1)個目に送信されてくるパケットDiについては、これが他装置宛か自装置宛かを断定することは不可能であり、(x1+1)個目に自装置宛のパケットDiが送信されてくる可能性はゼロではない。そこで、制御部14は、当該(x1+1)個目のパケットDiが送信されてくるタイミングを、パケットDiの送出周期に基づいて算出し、これを第1のウェイクアップタイミング候補値として記憶する。
【0100】
一方で、制御部14は、当該パケットDiのヘッダ部hに含まれる情報に基づいて、当該パケットDiのリトライ送信が行われる場合に、当該パケットDiがあと何回送信されてくるか(残りリトライ数)を特定する。残りリトライ数は、具体的には、予め定められた値であるリトライ回数から、ヘッダ部hに含まれる送信回数情報を引いた数値で規定される。
【0101】
残りリトライ数が「x2」であったとすると、リトライ送信が行われる場合は、続いて送信される(x2)個のパケットDiは、必ず他装置宛のパケットDiのはずである。換言すると、(x2+1)個目に送信されてくるパケットDiについては、これが他装置宛か自装置宛かを断定することは不可能であり、(x2+1)個目に自装置宛のパケットDiが送信されてくる可能性はゼロではない。そこで、制御部14は、当該(x2+1)個目のパケットDiが送信されてくるタイミングを、パケットDiの送出周期に基づいて算出し、これを第2のウェイクアップタイミング候補値として記憶する。
【0102】
制御部14は、当該パケットDiのリトライ送信が行われるか否かを知り得ない。そこで、制御部14は、第1のウェイクアップタイミング候補値と、第2のウェイクアップタイミング候補値とのうち、早く訪れる方のタイミングで、自装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させて、パケットDiの受信処理を再開する。
【0103】
なお、実際は、リトライ回数に達するまでにリトライ送信が成功する場合もありうる。しかしながら、例えば上記の例において、n回目のリトライ送信において通信が成功した場合、当該成功したリトライ送信に続いて送信される(x1)個のパケットDiは、必ず他装置宛のパケットDiのはずである。つまり、リトライ回数に達するまでにリトライ送信が成功した場合、自装置宛の可能性があるパケットDiが送信されてくるタイミングは、必ず第1のウェイクアップタイミング候補値よりも遅く訪れることになる。したがって、このような場合を考慮する必要はない。
【0104】
上記の処理の流れを、図11を参照しながら具体例で説明する。いま、他装置宛のパケットDiを受信した際に、当該パケットDiのヘッダ部hから、当該パケットDiが、4分割された送信データDのうちの1番目のパケットDi(以下「パケットDi(1/4)」と示す)であるとの情報が得られたとする。また、当該パケットDi(1/4)が1回目のリトライ送信に係るパケットDi(1/4)であるとの情報が得られたとする。さらに、リトライ数は、「3」と設定されていたとする。
【0105】
この場合、残りパケット数は「x1=3(=4−1)」となる。つまり、リトライ送信が行われない場合、続いて送信される1個目のパケットDiは、当該送信データDの2番目のパケットDi(2/4)であり、2個目のパケットDiは、当該送信データDの3番目のパケットDi(3/4)であり、3個目のパケットDiは、当該送信データDの4番目のパケットDi(4/4)であり、4個目に別の送信データDの1番目のパケットDiが送信されてくると予測できる。したがって、リトライ送信が行われない場合は続いて送信される4個目のパケットDiが、自装置宛のパケットDiの可能性があり、制御部14は、当該4個目のパケットDiが送信されてくるタイミングをパケットDiの送出周期に基づいて算出し、これを第1のウェイクアップタイミング候補値T1として記憶する。
【0106】
一方、残りリトライ数は「x2=2(=3−1)」となる。つまり、リトライ送信が行われる場合は、続いて送信される1個目のパケットDiは、当該パケットDi(1/4)の2回目のリトライ送信であり、2個目のパケットDiは、当該パケットDi(1/4)の3回目のリトライ送信であり、3個目に別の送信データDの1番目のパケットDiが送信されてくると予測できる。したがって、リトライ送信が行われる場合は続いて送信される3個目のパケットDiが、自装置宛のパケットDiの可能性があり、制御部14は、当該3個目のパケットDiが送信されてくるタイミングをパケットDiの送出周期に基づいて算出し、これを第2のウェイクアップタイミング候補値T2として記憶する。
【0107】
そして、制御部14は、第1のウェイクアップタイミング候補値T1と、第2のウェイクアップタイミング候補値T2とのうち、早く訪れる方のタイミング、すなわち、3個目のパケットDiが送信されてくるタイミングT2で、自装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させて、当該3個目に送信されてくるパケットDiのヘッダ部hを受信する。
【0108】
<5.機能ブロック>
ここで、電子表示システム100において実現される各機能について、図12を参照しながら整理しておく。図12は、電子表示システム100において実現される各機能を表すブロック図である。
【0109】
上述した説明から明らかになった通り、電子表示システム100においては、情報配信装置10において、作業エリア90内に配置された複数の電子表示器1に対して定められた送出周期(送出周期Tp)でビーコンBを送出する「ビーコン送信部201」としての機能が実現されている。また、情報配信装置10において、特定の電子表示器1に対して送信すべき情報が発生した場合に、当該情報を含む、当該特定の電子表示器1宛ての送信データDを生成し、生成した送信データDをビーコンBに続けて送信する「データ送信部202」としての機能が実現されている。さらに、情報配信装置10において、送信データDをビーコンBに続けて送信する場合に、送信データDに先行するビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのそれぞれ)に、送信データDの送信を予告する情報(データ予告コマンドCd)を含める「予告情報付与部203」としての機能が実現されている。
【0110】
一方、各電子表示器1の制御部14において、ビーコン送信部201から送信されるビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号b)の受信の有無を、定められた検出周期(検出周期Te)で検出する「ビーコン検出部301」としての機能が実現されている。また、制御部14において、ビーコン検出部301が検出したビーコンB(具体的には、単位信号b)にデータ予告コマンドCdが含められている場合に、当該ビーコンB続いて送信される送信データDの受信処理を行う「送信データ受信部302」としての機能が実現されている。
【0111】
<6.効果>
上記の実施の形態に係る電子表示システム100においては、情報配信装置10から送出周期Tpで送出されるビーコンBを各電子表示器1が検出周期Teで検出することによって、情報配信装置10と各電子表示器1との間の通信が定期的に確立する。これによって、各電子表示器1は、自装置がハンドオフ状態となった場合に、これを速やかに検知して、ハンドオフ制御を行うことができる。その結果、電子表示システム100においては、複数の電子表示器1のそれぞれが、原則として常に、自装置が通信可能なアクセスポイント2とリンク付けられた状態となっており、これによって情報配信装置10から電子表示器1への情報の配信が確実に行われるようになっている。
【0112】
また、上記の実施の形態に係る電子表示システム100においては、情報配信装置10から特定の電子表示器1に対する送信データDが送信される場合は、ビーコンB(より具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのそれぞれ)に、送信データDの送信を予告する予告情報としての役割を担うデータ予告コマンドCdが含められる。この構成によると、電子表示器1は、当該データ予告コマンドCdに基づいて送信データDの受信処理を行うべきタイミングを計ることができるので、送信データDを待ち受けることによる無駄な電力の消耗を抑えられる。すなわち、各電子表示器1の消費電力を抑えて、その電源となる電池15の消耗を抑えることができる。例えば、受信処理を行うべきタイミングまで自装置をスリープモードとしておけば、消費電力のさらなる低減を図ることができる。
【0113】
また、上記の実施の形態に係る電子表示システム100においては、ビーコンBが、単位信号送出周期Tmで連続して送信される複数の単位信号bにより構成される。この構成によると、各電子表示器1は、当該複数の単位信号bを少なくとも1個検出すればよいので、ビーコンBの全体を検出する必要がない。すなわち、各電子表示器1がビーコンBを検出する際に消費する電力を抑えることができる。また、ビーコンBの全体でなく、これを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個を検出すればよいので、検出処理に要する時間を短時間に抑えることが可能となり、その分だけスリープモードとなっている時間が長くなる。その結果、消費電力が抑制される。
【0114】
なお、ビーコンBにデータ予告コマンドCdが含められる場合、当該データ予告コマンドCdはビーコンBを構成する複数の単位信号bのそれぞれに含められる。したがって、電子表示器1は、データ予告コマンドCdの検出にあたって、ビーコンBの全てを検出する必要がなく、少なくとも1個の単位信号bを検出すれば十分である。
【0115】
また、上記の実施の形態に係る電子表示システム100においては、ビーコンBに続いて送信データDが送信される場合に、電子表示器1は、自装置が検出した単位信号bに付与された順位情報iに基づいて、送信データDの受信タイミングを調整する。この構成によると、電子表示器1は、単位信号bに付与された順位情報iに基づいて送信データDの受信処理を行うべきタイミングを正確に特定することができるので、送信データDを待ち受けるための無駄な電力の消耗をさらに抑えることができる。
【0116】
また、上記の実施の形態に係る電子表示システム100によると、各電子表示器1は、パケットDiのヘッダ情報に基づいて、当該パケットDiのデータ部に含まれる情報が自装置宛の情報であるか否かを判断し、他装置宛の情報であると判断した場合は、当該パケットDiのデータ部を受信しないので、他装置宛のパケットのデータ部を受信することによる電子表示器1での無駄な電力消費を抑制できる。
【0117】
また、上記の実施の形態に係る電子表示システム100によると、各電子表示器1は、パケットDiのヘッダ情報に基づいて、次に自装置宛のパケットDiが送信されてくるタイミングを予測し、当該予測したタイミングでパケットの受信処理を再開するので、自装置宛のパケットを受信し損ねることが防止される。
【0118】
<7.第1の変形例>
上述したとおり、上記の実施の形態に係る電子表示システム100においては、各電子表示器1の制御部14は、ビーコンBの送出周期と同じ検出周期Teで、ビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号b(図4参照))の受信の有無を検出し続けており、ビーコンBの検出強度Rがハンドオフ閾値Q2よりも小さくなった場合に、自装置がハンドオフ状態になったと判断する。
【0119】
ところで、電子表示器1は、1回の検出処理で、1個のビーコンBを構成する複数の単位信号bのうちの少なくとも1個の単位信号bを検出する。したがって、例えばビーコンBが「x」個の単位信号bから構成されているとすると、電子表示器1は、1番目の単位信号bが送出されてから、x番目の単位信号bが送出されるまでのどこかのタイミングでビーコンBの検出処理を行えば、いずれかの単位信号bを検出できる。換言すると、電子表示器1がビーコンBの検出処理を行うタイミングは、原理的には、ビーコンBの出力時間L(ビーコンBを構成する1番目の単位信号bが送出されてから、x番目の単位信号bが送出されるまで)の間のどのタイミングであってもよい。
【0120】
しかしながら、最も好ましい検出処理のタイミングは、ビーコンBの送出が開始されてから(L/2)の時間が経過した時刻の付近である。このようなタイミングでビーコンBの検出処理を行えば、アクセスポイント2からのビーコンBの送出周期が乱れて、ビーコンBの送出タイミングが多少前後にずれたとしても、電子表示器1の側でビーコンBを検出し損なう可能性が低くなるからである。
【0121】
そこで、各電子表示器1の制御部14が、検出した単位信号bに付与されている順位情報iに基づいて、ビーコンBの検出処理を行うタイミングを最適なタイミングに調整する構成としてもよい。この場合に制御部14が実行する処理について、図13を参照しながら説明する。図13は、当該処理を説明するための図である。
【0122】
上述した通り、電子表示器1は、連続して送出される複数の単位信号bのうち、中程で送出される単位信号b(すなわち、ビーコンBの送出が開始されてから(L/2)の時間が経過した時刻の付近で送出される単位信号b)を検出することが好ましい。以下においては、この中程で送出される単位信号bを「目標単位信号b」という。
【0123】
制御部14は、ビーコンBの検出処理によって1個の単位信号bを検出すると、検出した単位信号bに付与されている順位情報iに基づいて、当該検出した単位信号bが目標単位信号bであるか否かを判断し、目標単位信号bでない場合は、タイミングの調整処理を行う。なお、ここで、検出した単位信号bが、目標単位信号bからのずれが所定の許容範囲内にある単位信号bである場合は、タイミングの調整処理は不要としてもよい。タイミングの調整処理が不要と判断した場合は、制御部14は、原則通り、単位信号bを検出してから「Te」後に、ウェイクアップ状態に遷移してビーコンBの検出処理を行う。
【0124】
タイミングの調整処理を行う場合、制御部14は、検出した単位信号bの順位情報iに基づいて、次に目標単位信号bが送出されるタイミングを予測し、当該タイミングに合わせてウェイクアップ状態に遷移して、ビーコンBの検出処理を行う。
【0125】
例えば、検出した単位信号bが「y番目」に送出されたものである場合、ビーコンBを構成する単位信号bの総数を「x個」とすると、単位信号bを検出してから、次に目標単位信号bが送出されるまでの時間Te’は、「Te’=(x/2−y)×Tm+Tp」により与えられる。制御部14は、検出した単位信号bに付与された順位情報iに基づいて、当該時間Te’を算出し、単位信号bを検出してから時間Te’が経過した後に、ウェイクアップ状態に遷移してビーコンBの検出処理を行う。
【0126】
上記の変形例によると、電子表示器1は、自装置が検出した単位信号bに付与された順位情報iに基づいて、ビーコンBの受信タイミングを調整する。例えば、上述したとおり、ビーコンBの中程で送出される単位信号bを検出するように、単位信号bの受信タイミングを調整する。このように調整しておけば、アクセスポイント2からのビーコンBの送出タイミングが多少前後にずれたとしても、電子表示器1の側でビーコンBを検出し損なう可能性が低くなる。つまり、電子表示器1は、自装置が所属するアクセスポイント2から送出周期Tpで送出され続けるビーコンBを確実に追従することができる。
【0127】
<8.第2の変形例>
上記の実施の形態に係る電子表示システム100において、それが導入された工場等の作業エリア90内の各所において、通信状態に差がある場合がある。このような場合、電子表示器1における各種の設定値を、当該電子表示器1が所属するアクセスポイント2に応じて異なる値とする構成が好ましい。
【0128】
例えば、通信状態が相対的に良好なアクセスポイント2については、ハンドオフ閾値Q2の値を相対的に高い値としておき、通信状態が相対的に悪いアクセスポイント2については、ハンドオフ閾値Q2の値を相対的に低い値としておく。この構成によると、各電子表示器1が所属アクセスポイント2を適切に切り換えることができる。また、アクセスポイント2間で所属する電子表示器1の枚数に差が出にくくなり、特定のアクセスポイント2に負荷が集中するといった事態を回避して電子表示システム100の運用をスムースに行うことができる。
【0129】
また例えば、通信状態が相対的に良好なアクセスポイント2については、上述したリトライ回数の値を相対的に小さな値としておき、通信状態が相対的に悪いアクセスポイント2については、リトライ回数の値を相対的に大きな値としておく。この構成によると、DMSサーバ3およびアクセスポイント2の負荷、および、各電子表示器1の消費電力を無駄に増大させることなく、確実に各電子表示器1に対して送信データDを受信させることができる。
【0130】
ここで、上記の各例のように、電子表示器1における各種の設定値を、当該電子表示器1が所属するアクセスポイント2に応じて異なる値とする場合、当該設定値は、各アクセスポイント2から送信されるビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する単位信号bのそれぞれ)にコマンドとして含められてもよい。すなわち、上記の実施の形態に係る電子表示システム100においては、ビーコンBにデータ予告コマンドCdを含める構成が示されていたが、ビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する単位信号bのそれぞれ)にはデータ予告コマンドCd以外のコマンド、例えば、アクセスポイント2に応じて異なる値とされるべき電子表示器1の設定値を含める構成としてもよい。
【0131】
ビーコンB(具体的には、ビーコンBを構成する単位信号bのそれぞれ)に、アクセスポイント2に応じて異なる値とされるべき電子表示器1の設定値を含める構成とした場合、電子表示システム100の起動時に所属するアクセスポイント2が決定された場合、あるいは、ハンドオフ制御により所属するアクセスポイント2が切り換えられた場合に、電子表示器1は、当該新たに所属するアクセスポイント2から受信したビーコンBに含まれるコマンドに応じて、自装置の設定値を切り換えることになり、これによって、各電子表示器1の設定値が、当該電子表示器1が所属するアクセスポイント2に応じた値とされることになる。上述したとおりビーコンBは、アクセスポイント2から、特定のエリア(当該アクセスポイント2の通信エリア)にある全ての電子表示器1に対して送出されるので、特定エリア内にある電子表示器1に共通の設定情報を、ビーコンBに含められて当該エリア内にある電子表示器1に送信する構成とすれば、設定情報を効率的に電子表示器1に配信することができる。
【0132】
<9.第3の変形例>
上述したとおり、電子表示システム100においては、各電子表示器1は、自装置がハンドオフ状態にあると判断した場合、各アクセスポイント2から送出されるビーコンBのうちから、受信可能なビーコンB(より具体的には、検出強度Rが捕捉閾値Q1以上のビーコンB)を検出する処理(チャネルサーチ)を行う。この処理は、例えば、上述したとおり、受信周波数を次々と切り換えながら、複数のアクセスポイント2のそれぞれに割り当てられたビーコンBの周波数領域の全体にわたって受信周波数を掃引して、ビーコンBを受信できるか否かの判断処理を行う(受信可能な周波数領域をサーチする)ことによって行われる。ただし、この判断処理においては、検出強度Rが捕捉閾値Q1以上の単位信号bが検出された場合に、ビーコンBを受信できたと判断する。
【0133】
いま、チャネルサーチにおいて、電子表示器1が、送出周期Tpの間に「基本サーチ処理」を、m回(ただし、mは1以上の整数)行うものとする。ここで、「基本サーチ処理」とは、各アクセスポイント2から送出される各ビーコンBについて、これを受信できるか否かの判断処理をビーコンBの送出周期Tpのn分の1の間隔(以下「間隔Tf」という。ただし、「Tf=Tp/n」)をあけてn回(ただし、nは正の整数)行う処理である。以下において、各ビーコンBの基本サーチ処理において電子表示器1が判断処理を行う回数を示す値「n」を「基本回数n」という。
【0134】
上述したとおり、アクセスポイント2からは、送出周期Tpの間に一定の送出時間LのビーコンBが送出される。換言すると、アクセスポイント2からは、ビーコンBが送出されていない時間帯が存在する。ここで、電子表示器1が、ビーコンBが送出されていない時間帯に判断処理を行ってしまった場合、実際は当該アクセスポイント2の通信エリア圏内に入っているにもかかわらず、当該アクセスポイント2からのビーコンBを受信できないとの誤った判断を下してしまうおそれがある。したがって、基本サーチ処理におけるn回の判断処理のうちの少なくとも1回において、ビーコンBの送出時間Lと重なるように担保されている必要がある。
【0135】
ところで、上述したとおり、電子表示システム100においては、各アクセスポイント2間で、ビーコンBの送出周期Tpは共通の値に設定されており、また、ビーコンBの出力時間Lも共通の値に設定されているが、ビーコンBの送出タイミングは同期されていない。つまり、各アクセスポイント2からはバラバラのタイミングでビーコンBが送出される。
【0136】
したがって、ビーコンBがどのようなタイミングで送出されようとも、基本サーチ処理におけるn回の判断処理のうちの少なくとも1回において、当該ビーコンBの送出時間Lと重なるように担保しておく必要がある。
【0137】
このためには、ビーコンBの出力時間Lが下記(式3)を満たす値となっている必要がある。ただし、(式3)中、「n」は基本サーチ処理における基本回数nの値であり、「Tp」は、アクセスポイント2からのビーコンBの送出周期Tpである。また、「ceil(a)」は、「a以上の最小の整数」を表す。
【0138】
n=ceil(Tp/L) ・・・・(式3)
一方で、アクセスポイント2は、ビーコンBを送出していない時間帯に電子表示器1とのデータ通信を行う必要があるため、通信効率を高めるためには、出力時間Lはなるべく小さい方が好ましい。つまり、上記(式3)を満たすLの値のうち、最小の値を出力時間Lとして採用することが最も好ましい。以下において、(式3)で取りうる最小の出力時間Lの値を、「最小出力時間Lm」という。
【0139】
ところで、電子表示器1の消費電力を小さく抑えるためには、基本サーチ処理に要する消費電力を小さく抑える必要があり、このためには、基本回数nの値はなるべく小さい方が好ましい。
【0140】
ところが、基本回数nを「1」とした場合、(式3)より、最小出力時間Lmの値は、「Lm=Tp」、つまり、送出周期Tpと等しい値となってしまう。この場合、常にビーコンBを送出し続けることになり、アクセスポイント2と電子表示器1との間のデータ通信が行えないことになってしまう。したがって、基本回数nを「1」とすることはできない。
【0141】
そこで、基本回数nを「2」とした場合、(式3)より、最小出力時間Lmの値は「Lm=Tp/2」、つまり、送出周期Tpの半分の値により与えられる。
【0142】
この場合、図14に示すように、電子表示器1が基本サーチ処理を行うタイミングに対して、アクセスポイント2からのビーコンBの出力タイミングがどのような関係にあっても、基本サーチ処理における2回の判断処理のうちの1回が、理論的には必ずビーコンBの送出時間Lと重なることになる。
【0143】
ただし、現実には、アクセスポイント2、あるいは、電子表示器1のサーチ間隔等を計測するタイマの誤差やバラツキ等が存在し、また、ビーコンBは単位信号bに分割されているため電子表示器1が受信動作を開始して直ちに単位信号bを受信できない場合も想定されうるため、この態様では安定した検出が担保されないおそれがある。
【0144】
そこで、図15に示すように、最小出力時間Lmに対して定められた誤差吸収時間Δtを加えた値を適正出力時間Lrとして取得することが好ましい(Lr=Lm+Δt)。なお、誤差吸収時間Δtは例えば「0.1(秒)」程度とすることができるが、機器のタイマ誤差等に基づいて規定することが好ましい。これにより、「±Δt」の時間分の誤差が、アクセスポイント2と電子表示器1との間に許容されることになる。したがって、ビーコンBの出力時間Lを、この適正出力時間Lrに設定しておけば、電子表示器1が基本サーチ処理を行うタイミングに対して、アクセスポイント2からのビーコンBの出力タイミングがどのような関係にあっても、基本サーチ処理における2回の判断処理のうちの少なくとも1回が、確実にビーコンBの送出時間Lと重なることになる。
【0145】
したがって、送出周期Tpの間に、基本サーチ処理をm回行う構成とすれば、少なくともm回の判断処理が、ビーコンBが送出されている時間帯に行われることになり、安定したチャネルサーチが担保される。
【0146】
例えば、送出周期Tpが「4(秒)」である場合、最小出力時間Lmの値は「Lm=Tp/2=2(秒)」となり、誤差時間Δtを「0.1(秒)」とすれば、適正出力時間Lrは、「Lr=Lm+Δt=2.1(秒)となる。したがって、ビーコンBの出力時間Lを、この「2.1(秒)」に設定し、電子表示器1が、基本サーチ処理において、送出周期Tp「4(秒)」の間に、各アクセスポイント2からのビーコンBを受信できるか否かの判断処理を、「Tf=Tp/2=2.0(秒)」の間隔をあけて2回行う構成とすれば、電子表示器1が基本サーチ処理を行うタイミングに対して、アクセスポイント2からのビーコンBの出力タイミングがどのような関係にあっても、基本サーチ処理における2回の判断処理のうちの少なくとも1回が、確実にビーコンBの送出時間Lと重なることになる。ここでさらに、送出周期Tpの間に、基本サーチ処理を例えば2回行う構成とすれば、図16に示すように、少なくとも2回の判断処理が、ビーコンBが送出されている時間帯に行われることになり、安定したチャネルサーチが担保される。なお、例えば、基本サーチ処理を行うタイミングを「ΔTf=Tf/2」だけずらしておけば、電子表示器1が判断処理を行うタイミングを周期的なものとすることができる。上記の例においてこの態様を適用した場合、送出周期Tp「4(秒)」の間に、各アクセスポイント2からのビーコンBを受信できるか否かの判断処理を、「Tf/2=Tp/4=1.0(秒)」の間隔をあけて4回行う構成となる。
【0147】
なお、上記の例では基本回数nを「2」としていたが、基本回数nの値は2以上の値であってもよい。例えば基本回数nを「3」とした場合、適正出力時間Lrは、(式3)より与えられる、最小出力時間Lmの値(「Lm=Tp/3」、つまり、送出周期Tpの3分の1)に、定められた誤差吸収時間Δtを加えた値となる。この場合、電子表示器1が基本サーチ処理を行うタイミングに対して、アクセスポイント2からのビーコンBの出力タイミングがどのような関係にあっても、基本サーチ処理における3回の判断処理のうちの1回が、理論的には必ずビーコンBの送出時間Lと重なることになる。基本回数nを増やしていくと、電子表示器1が基本サーチ処理に要する消費電力が大きくなってしまうという難点があるが、各アクセスポイント2における出力時間Lを小さく抑えることができる(すなわち、電子表示器1とのデータ通信を行う時間を長く確保できる)という利点が得られる。
【0148】
ただし、上述したとおり、チャネルサーチにおいては、複数のアクセスポイント2のそれぞれに割り当てられたビーコンB(すなわち、互いに周波数領域が異なる信号)のそれぞれについて、当該ビーコンBを受信できるか否かの判断処理を行う必要がある。したがって、各電子表示器1は、図17に模式的に示すように、各周波数領域に対するチャネルサーチを、タイミングをずらしながら行うことになる。
【0149】
<10.第4の変形例>
上述したとおり、電子表示システム100においては、各電子表示器1は、自装置がハンドオフ状態にある場合はチャネルサーチを行うところ、1回のチャネルサーチ(具体的には、例えば、上述した基本サーチ処理を、送出周期Tpの間にm回(ただし、mは1以上の整数)行う処理)の結果、検出強度Rが捕捉閾値Q1以上のビーコンBの受信を検出できないと判断された場合には、間隔をあけてもう一度チャネルサーチを繰り返して実行する構成とすることが好ましい。つまり、検出強度Rが捕捉閾値Q1以上のビーコンBの受信を検出できるまでチャネルサーチを繰り返し行い続けることが好ましい。
【0150】
ここで、図18に示すように、チャネルサーチを繰り返す際の間隔を、時間とともに大きくする構成とすることがさらに好ましい。例えば、各周波数領域について1回目のチャネルサーチCS(1)と2回目のチャネルサーチCS(2)と間隔ΔT(1)を「2(秒)」とし、2回目のチャネルサーチCS(2)と3回目のチャネルサーチCS(3)との間隔ΔT(2)を「4(秒)」とし、3回目のチャネルサーチCS(3)と4回目のチャネルサーチCS(4)との間隔ΔT(3)を「8(秒)」とし、といった具合に、n回目のチャネルサーチCS(n)と(n+1)回目のチャネルサーチCS(n+1)との間隔ΔT(n)を「2n(秒)」としてもよい。
【0151】
なお、チャネルサーチを繰り返す際の間隔を時間とともに大きくする場合、チャネルサーチを行う間隔が最大値として定められた値を超えた場合は、それ以降はチャネルサーチの間隔を一定とすることが好ましい。例えば上記の例において、チャネルサーチを行う間隔が「1024(秒)」となった場合は、それ以降はチャネルサーチの間隔は「1024(秒)」のままとすることができる。
【0152】
この構成によると、電子表示器1の電力が無駄なチャネルサーチによって消費されることを抑制することができる。例えば、電子表示器1が、いずれのアクセスポイント2の通信エリアからも外れた場所(例えば倉庫内)に移動されてしまった場合に、当該電子表示器1において頻繁に(例えば2(秒)間隔で)チャネルサーチが行われ続けると、電子表示器1の電力が無駄に消費されることになるが、上記の構成によると、時間とともにチャネルサーチの頻度が小さくなり、消費する電力も小さくなるので、上記のような場合に、電子表示器1の電池15が無駄に消耗されることを抑制することができる。
【0153】
<11.その他の変形例>
上記の実施の形態に係る電子表示システム100は、物品の製造工場に導入され、製造工場において各作業工程での作業を電子表示器を用いて支援する作業支援システムとして機能しており、各電子表示器1には、自装置がその時点で位置する作業場所90に応じた画面(例えば、当該作業場所で行うべき作業内容を説明する画面)が表示されていたが、電子表示システム100の導入態様はこれに限らない。
【0154】
例えば、電子表示システム100を、会社等に導入して会社等の予定管理を行う予定管理システムとして機能させることもできる。従来においては、会社等の予定管理は、例えば、管理者がコンピュータ上で会社全体の予定情報を管理しており、当該管理される予定情報を、用紙等にプリントアウトして掲示する(あるいは、管理者のコンピュータと通信回線等を介して接続されたコンピュータに送信して当該コンピュータのディスプレイに表示させる)ことによって、社内全体に周知化していた。この場合、最新の予定情報が出るたびに当該予定情報をプリントアウトし、当該用紙を掲示する作業が必要となる。あるいは、社内のあらゆる場所に管理者のコンピュータと通信回線を介して接続されたコンピュータが配置されていることが必要となる。
【0155】
電子表示システム100を予定管理システムとして会社に導入すれば、予定情報を簡易に社内全体に周知化することができる。
【0156】
電子表示システム100を予定管理システムとして会社に導入する場合、電子表示器1を会社内の各場所(例えば、会議室の入り口付近、各社員のデスク、各部署の窓口付近等)に配置する。そして、各電子表示器1に、自装置が位置する場所に関連する予定を表示する画面(例えば、会議室の入り口付近に配置された電子表示器1の場合、当該会議室の予約状況を表示する画面、また例えば、社員のデスクに配置された電子表示器1の場合、当該デスクに座る社員の予定(例えば、行き先、帰社時刻等)を表示する画面、また例えば、各部署の窓口付近に配置された電子表示器1の場合、当該部署のその日の予定を表示する画面)を表示させる。
【0157】
この構成によると、予定情報をプリントアウトして掲示する作業が不要であり、社内全体に通信回線網を整備しなくとも、社内全体に予定情報を表示することができる。すなわち、予定情報を簡易に社内全体に周知化することができる。
【0158】
また、予定情報が更新されると即座に各電子表示器1の表示も更新されるので、社員は常に最新の予定情報を把握することができる。
【符号の説明】
【0159】
1 電子表示器
2 アクセスポイント
3 DMSサーバ
5 基幹システム
10 情報配信装置
100 電子表示システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池により駆動され、移動体にそれぞれ設置される複数の電子表示器と、前記複数の電子表示器が表示する情報を前記複数の電子表示器に配信する情報配信装置とを備える電子表示システムであって、
前記情報配信装置が、
前記複数の電子表示器に対する第1信号を、定められた送出周期で送出する第1信号送信部と、
前記複数の電子表示器のうちの特定の電子表示器に対して送信すべき情報が発生した場合に、当該情報を含む前記特定の電子表示器宛ての第2信号を生成し、生成した前記第2信号を前記第1信号に続けて送信する第2信号送信部と、
前記第1信号に続けて前記第2信号を送信する場合に、前記第2信号に先行する前記第1信号に、前記第2信号の送信を予告する予告情報を含める予告情報付与部と、
を備え、
前記複数の電子表示器のそれぞれが、
前記第1信号の受信の有無を定められた検出周期で検出する第1信号検出部と、
前記第1信号検出部が検出した前記第1信号に前記予告情報が含められている場合に、前記第1信号に続いて送信される前記第2信号の受信処理を行う第2信号受信部と、
を備える電子表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子表示システムであって、
前記第1信号が、定められた周期で連続して送信される複数の単位信号により構成され、
前記予告情報付与部が、前記第2信号に先行する前記第1信号を構成する前記複数の単位信号のそれぞれに前記予告情報を含め、
前記第1信号検出部が、前記複数の単位信号のうちの少なくとも1個の単位信号を検出する電子表示システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子表示システムであって、
前記複数の単位信号のそれぞれに、当該単位信号が、連続して送信される前記複数の単位信号のうちで何番目に送信された単位信号であるかを示す順位情報が付与されており、
前記第2信号受信部が、前記第1信号に続いて前記第2信号が送信される場合に、前記第1信号検出部が検出した前記単位信号に付与された前記順位情報に基づいて、前記第2信号の受信タイミングを調整する電子表示システム。
【請求項4】
請求項2に記載の電子表示システムであって、
前記複数の単位信号のそれぞれに、当該単位信号が、連続して送信される前記複数の単位信号のうちで何番目に送信された単位信号であるかを示す順位情報が付与されており、
前記第1信号検出部が、前記単位信号を検出した場合に、当該単位信号に付与された前記順位情報に基づいて、前記第1信号を次に受信するタイミングを調整する電子表示システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記情報配信装置が、
複数の中継器と、
前記複数の中継器を介して前記複数の電子表示器に情報を配信するサーバと、
を備え、
前記第1信号送信部が、
前記複数の中継器のそれぞれを介して、当該中継器の通信エリア内にある1以上の前記電子表示器に対して、前記第1信号を送出し、
前記複数の電子表示器のうち、特定エリア内にある電子表示器に共通の設定情報を、前記特定エリアに通信エリアをもつ前記中継器を介して送信される前記第1信号に含める電子表示システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記第2信号がパケット化されており、
前記第2信号受信部が、
前記第2信号のパケットのヘッダ情報に基づいて、当該パケットのデータ部に含まれる情報が自装置宛の情報であるか否かを判断し、自装置宛の情報ではないと判断した場合には、当該パケットの受信処理を中断して、当該パケットのデータ部を受信しない電子表示システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電子表示システムであって、
前記第2信号受信部が、
前記第2信号のパケットのデータ部に含まれる情報が自装置宛の情報ではないと判断して当該パケットの受信処理を中断した場合に、当該パケットのヘッダ部から、当該第2信号が何個のパケットに分割されているかを示す情報、当該パケットが前記第2信号を構成する複数のパケットのうちの何番目のパケットであるかを示す情報、および、当該パケットが何回目のリトライ送信に係るパケットであるかを示す情報、を取得して、当該取得した情報に基づいて、次に自装置宛のパケットが送信されてくるタイミングを予測し、当該予測したタイミングでパケットの受信処理を再開する電子表示システム。
【請求項8】
請求項2に記載の電子表示システムであって、
前記情報配信装置が、
複数の中継器と、
前記複数の中継器を介して前記複数の電子表示器に情報を配信するサーバと、
を備え、
前記複数の中継器のそれぞれに互いに異なる周波数領域が割り当てられており、前記複数の中継器のそれぞれが、自装置に割り当てられた周波数領域の前記第1信号を送出し、
前記電子表示器が、
前記複数の中継器のそれぞれから送出される各前記第1信号のうち、受信可能な前記第1信号をサーチするにあたって、
各前記第1信号について、これを受信できるか否かの判断処理を前記第1信号の送出周期のn分の1の間隔をあけてn回(ただし、nは2以上の整数)行う基本サーチ処理を、前記送出周期の間にm回(ただし、mは1以上の整数)以上行う場合において、
前記複数の中継器のそれぞれからの前記第1信号の出力時間が、
前記第1信号の送出周期をx、ceil(a)をa以上の最小の整数として、
n=ceil(x/y)
の関係を満たす最小のyの値に、定められた誤差吸収時間を加えた値である電子表示システム。
【請求項9】
請求項8に記載の電子表示システムであって、
前記基本サーチ処理が、
各前記第1信号について、これを受信できるか否かの判断処理を前記第1信号の送出周期の2分の1の間隔をあけて2回行う処理である電子表示システム。
【請求項10】
請求項2に記載の電子表示システムであって、
前記情報配信装置が、
複数の中継器と、
前記複数の中継器を介して前記複数の電子表示器に情報を配信するサーバと、
を備え、
前記複数の中継器のそれぞれに互いに異なる周波数領域が割り当てられており、前記複数の中継器のそれぞれが、自装置に割り当てられた周波数領域の前記第1信号を送出し、
前記電子表示器が、
前記複数の中継器のそれぞれから送出される各前記第1信号のうち、受信可能な前記第1信号をサーチするにあたって、
前記サーチの結果、受信可能な前記第1信号がないと判断された場合に、間隔をあけて前記サーチを繰り返して実行し、
前記サーチを繰り返す際の前記間隔が、時間の経過とともに長くなる電子表示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−237843(P2012−237843A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106065(P2011−106065)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】