説明

電子装置の筺体構造

【課題】一方のケースを他方のケースに吊下げ可能に連結する構造を省スペースで且つ組立手順の制約を受けることなく製造でき、さらにはケースの開放時に連結が外れてしまうことがない電子装置の筺体構造を提供する。
【解決手段】ホームセキュリティ装置1の筺体を構成するロアケース2は壁面に固定されており、そのロアケース2の開口部4がアッパーケース3により閉鎖される。ロアケース2とアッパーケース3とにおいて互いに対向する側面2a,3aの内側には突起部8及び抜止部9が一体形成されており、突起部8に連結部材10の孔部10aが係止されている。突起部8の頂点には抜止部9が弾性的に当接しており、これにより連結部材10の抜け止めが図られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に固定される第1ケースの開口部を第2ケースにより閉鎖する構成の電子装置の筺体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、図11に示すような電子装置を製造している。この電子装置は、壁に固定されるロアケース101の開口部102をアッパーケース103により閉鎖することにより電子装置の筺体を構成するもので、ロアケース101に収納された図示しない電子機器とアッパーケース103に収納された図示しない電子機器とをケーブルにより接続するようにしている。従って、内部の電子機器を調整するためにアッパーケース103をロアケース101から取外す場合は、アッパーケース103をロアケース101から完全に取外すことができないことから、図12に示すようにロアケース101に形成したフック104と内カバー105の取付用脚部106とに紐107をそれぞれ引掛けることで、紐107によりアッパーケース103をロアケース101に対して吊下げ可能に連結するようにしている。
【0003】
尚、従来技術に相当する特許文献が見つからないことから、その記載を省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成のものでは、ロアケース101に設けられたフック104は比較的大形であることから、その配設スペースを確保する必要がある。また、アッパーケース103においては、ロアケース101の内カバー105の取付け用脚部106に紐107を引掛けてから内カバー105を取付ける必要があり、組立手順に制約を生じる。さらに、ロアケース101においては、紐107はフック104に引掛けられているだけであるので、アッパーケース103の開放時に紐107が外れてしまう虞がある(図12中に二点鎖線で示す)。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、一方のケースを他方のケースに吊下げ可能に連結する構造を省スペースで且つ組立手順の制約を受けることなく製造でき、さらにはケースの開放時に連結が外れてしまうことがない電子装置の筺体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、一方のケースを他方のケースに吊下げ可能に連結するには、連結部材の孔部を突起部に引掛けることにより係止する。この状態では、突起部に係止されている連結部材は、抜止部により抜止めされているので、ケースを開放する際に、連結部材が突起部から抜けてしまうことを防止できる。また、連結部材は薄肉帯状部材であることから、連結部材を係止するための突起部を小形に製作することができ、その配設スペースは小さくて済む。さらに、突起部及び抜止部は他の組立構成から独立してケースに設けられているので、組立手順の制約を受けることがない。
【0007】
請求項2の発明によれば、突起部及び抜止部はケースの側面内側に設けられているので、ケースに収納される電子機器の配置スペースを削減することなく実施できる。
請求項3の発明によれば、連結部材の孔部を突起部に係止するには、連結部材の端部を突起部と抜止部との間に挿入する。すると、抜止部が突起部から離間する方向に弾性変形して突起部と抜止部との間で間隙が形成されるので、連結部材の端部をさらに奥方に差込むと、連結部材の孔部を突起部に係止することができる。この状態では、抜止部が突起部に弾性的に当接するように復帰しているので、連結部材が突起部から抜けてしまうことを防止できる。
【0008】
請求項4の発明によれば、突起部及び抜止部をケースと一体に樹脂成型することができるので、突起部及び抜止部を低コストで製作することができる。
請求項5の発明によれば、連結部材を精度よく且つ低コストで生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図1ないし図6を参照して説明する。
図2は、ホームセキュリティ装置の筺体を開放した状態で示す概略的な正面図である。この図2において、ホームセキュリティ装置(電子装置に相当)1は、家屋に取付けられた各種センサを監視することにより不審者の侵入、或いは火災の発生などを検知して報知するために設置される。このホームセキュリティ装置1は、図示しない制御装置などの電子機器が収納されたロアケース(第1ケースに相当)2と図示しない操作部或いは表示部などの電子機器が収納されたアッパーケース(第2ケースに相当)3とから構成されており、それぞれの電子機器同士は図示しないケーブルで接続されている。つまり、アッパーケース3に収納された操作部は、アッパーケース3の表面に設けられた図示しないスイッチに対する操作を示す操作信号をロアケース2に設けられた制御装置に出力する。制御装置は、操作信号を処理したり、屋内に設けられた各種センサからの検出信号を処理したりすることにより、アッパーケース3に設けられた表示部の表示を制御したり、ブザーを鳴動したりするようになっている。
【0010】
ロアケース2は壁面に固定されるもので、アッパーケース3は、ロアケース2の開口部4を閉鎖した状態で固定されるようになっている。アッパーケース3には取付用脚部5が一体形成されており、その取付用脚部5に内カバー6が取付けられている。この内カバー6にも電子機器7が搭載されている。
【0011】
さて、上述したようにロアケース2に収納された制御装置とアッパーケース3に収納された操作部及び表示部とはケーブルで接続されていることから、例えば制御装置を点検するためにアッパーケース3を開放した場合は、アッパーケース3をロアケース2から完全に取外すのではなく、アッパーケース3をロアケース2に対して連結状態で吊下げるようにしており、その連結構造について説明する。
【0012】
図1は、開放した状態で示すケース2,3の断面図である。この図1において、ロアケース2とアッパーケース3とにおいて、開放した状態で互いに対向する側面2a,3aの内側には、突起部8及び抜止部9がそれぞれケース2,3と一体形成されている。
図3は突起部8及び抜止部9を示す平面図、図4はそれらの側面図である。これらの図3及び図4において、突起部8は直角三角形状をなしており、その突起部8に対応して抜止部9が形成されている。この抜止部9は、突起部8の奥方部位においてケース2,3から立設して突起部8の先端に弾性的に当接するように湾曲した弾性部9aと、この弾性部9aの先端に一体形成された摘み部9bとからなる。この抜止部9は、通常においては突起部8に弾性的に当接しており、突起部8から離間する方向に弾性変形可能となっている。
【0013】
上記形状の突起部8には連結部材10が係止されている。
図5は、連結部材10を示す平面図である。この連結部材10は、例えばポリカーボネートフィルムから形成された弾性を有する薄肉帯状部材からなり、その両端部には矩形状の孔部10aが形成されている。このような形状の連結部材10は、ポリカーボネートフィルムをプレスにより打ち抜き成型することにより精度よく且つ低コストで製作することができる。
【0014】
このような形状の連結部材10は薄肉であることから、連結部材10の孔部10aが係止される突起部8の高さは低くてよく、突起部8及び抜止部9を小形に形成することができる。このことは、図3に示すように突起部8及び抜止部9をロアケース2の側面2aの内側に形成するにしても、ロアケース2に収納される電子機器の配置に何の影響を受けることなく形成できることを意味している。
このような構成により、連結部材10の孔部10aが突起部8に係止された状態では、突起部8は抜止部9により閉鎖された形態となっており、連結部材10の抜止めが図られている。
【0015】
上記構成のホームセキュリティ装置1を製造するには、ロアケース2に制御装置などの電子機器を組付けると共に、アッパーケース3に操作部及び表示部などの電子機器を組付けてから、それらの間をケーブルで接続する。
次に、内蓋6を取付用脚部5に取付けてから、内蓋6に電子機器7を搭載する。
次に、連結部材10の先端を突起部8と抜止部9との間に差込む。すると、図6に示すように連結部材10の先端が抜止部9を突起部8から離間する方向に押圧するようになるので、抜止部9が弾性変形して突起部8と抜止部9との間に間隙が形成されるようになる。連結部材10をさらに突起部8の奥方に差込むと、連結部材10の先端が突起部8と抜止部9との間に形成された間隙を通過し、連結部材10の先端が突起部8の頂点を通過したところで、図1に示すように連結部材10の孔部10aが突起部8に係止されるようになる。この状態では、抜止部9が元形状に復帰することにより突起部8に弾性的に当接することにより突起部8を閉鎖するようになるので、連結部材10が突起部8から抜けてしまうことを防止できる。
【0016】
そして、アッパーケース3をロアケース2に例えばねじ止めして固定することによりホームセキュリティ装置1を組立てることができる。
尚、各ケース2,3の突起部8に連結部材10を係止してから、各ケース2,3に電子機器を組付けるようにしてもよく、要は連結部材10を任意の工程で突起部8に係止することが可能となっている。
【0017】
このようなホームセキュリティ装置1は、ロアケース2を壁面に固定すると共に、屋内に配置された各種センサを接続することにより各種警報機能を発揮することができる。
さて、担当者が例えばホームセキュリティ装置1の制御装置を調整するためにアッパーケース3を開放した場合、アッパーケース3は連結部材10によりロアケース2に吊下げられた状態となるので、ロアケース2に収納された電子機器とアッパーケース3に収納された電子機器とを接続する図示しないケーブルを取外すことなく制御装置を調整することができる。この場合、連結部材10は抜止部9により抜止めされた状態で突起部8に係止されているので、アッパーケース3を開放する際に連結部材10が突起部8から抜けてしまうことを防止できる。
尚、連結部材10を突起部8から外すには、抜止部9の先端に設けられている摘み部9bを持ち上げて突起部8と抜止部9との間に間隙を形成することにより、連結部材10を突起部8から外すことができる。
【0018】
このような実施例によれば、ロアケース2及びアッパーケース3に突起部8及び抜止部9を設け、連結部材10の孔部10aを突起部8に係止することにより両方のケース2,3を吊下げ可能に連結するようにしたので、任意の工程で連結部材10により両方のケース2,3を連結することができる。従って、両方のケースを紐で吊下げ状態で連結する従来例のものに比較して、組立手順の制約を受けることがない。また、連結部材10は薄肉帯状部材であることから、連結部材10を係止するための突起部8及び抜止部9は小形でよく省スペースで済む。また、連結部材10が突起部8に係止された状態では、連結部材10は抜止部9により抜止めされているので、アッパーケース3を開放する際に、連結部材10が突起部8から外れてしまうことを防止できる。
【0019】
さらに、突起部8及び連結部材10はアッパーケース3が開放された状態で各ケース2,3の対向する側面2a,3aの内側に設けられているので、各ケース2,3に収納される電子機器の配置の影響を受けることなく実施できる。
加えて、突起部8及び抜止部9は各ケース2,3と一体に樹脂成型されているので、突起部8及び抜止部9を製作するためのコストを抑制することができる。同様に、連結部材10はポリカーボネートフィルムをプレス成型することにより形成されているので、精度よく且つ低コストで生産することができる。
【0020】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
図7及び図8に示すように突起部11(上記実施例よりも幅が狭く設定されている)の両側に抜止部12を形成するようにしてもよい。この抜止部12は、弾性変形しないと共に、突起部11の頂点よりも低い位置となるように形成されている。このような構成によれば、連結部材10が差込まれると、連結部材10の端部が突起部11の斜面を滑りながら登り、連結部材10の両側が抜止部12の下面に当接した状態では、図7に示すように連結部材10が湾曲した状態となる。そして、連結部材10の先端部が突起部11の頂点を乗越えたところで、図9に示すように連結部材10の孔部10a(上記実施例よりも幅が狭く設定されている)が突起部11に係止され、図10に示すように連結部材10によりロアケース2とアッパーケース3とを吊下げ可能に連結することができる。
【0021】
突起部8の形状として、直角三角形状の垂直辺の上端が連結部材10の差込方向に傾斜するように形成してもよい。このような形状によれば、突起部8による連結部材10に対する係止能力を高めることができる。
連結部材10としてはポリカーボネートフィルム以外の樹脂フィルム、或いは金属フィルムを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例における筺体の縦断側面図
【図2】開放状態で示すホームセキュリティ装置の正面図
【図3】突起部及び抜止部の平面図
【図4】突起部及び抜止部の側面図
【図5】連結部材の平面図
【図6】連結部材の挿入状態で示す図4相当図
【図7】本発明の変形例を示す図3相当図
【図8】図4相当図
【図9】突起部及び抜止部の正面図
【図10】図1相当図
【図11】本発明の従来例を示す図2相当図
【図12】図1相当図
【符号の説明】
【0023】
図面中、1はホームセキュリティ装置(電子装置)、2はロアケース(第1ケース)、3はアッパーケース(第2ケース)、4は開口部、8は突起部、9は抜止部、10は連結部材、10aは孔部、11は突起部、12は抜止部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定される第1ケースと、
この第1ケースの開口部を閉鎖する第2ケースと、
この第2ケースが開放された状態で当該第2ケースを前記第1ケースに対して吊下げ状態で連結する連結部材とを備え、
前記第1ケース及び前記第2ケースには、突起部及び抜止部が設けられ、
前記連結部材は、両端に孔部を有した弾性変形可能な薄肉帯状部材からなり、前記孔部が前記突起部に係止された状態で前記抜止部により抜止めされていることを特徴とする電子装置の筺体構造。
【請求項2】
前記突起部及び前記抜止部は、前記連結部材により前記第2ケースが前記第1ケースに吊下げられた状態で、両方のケースにおいて対向する側面内側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子装置の筺体構造。
【請求項3】
前記抜止部は、前記突起部に弾性的に当接すると共に、前記突起部から離間する方向に弾性変形可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電子装置の筺体構造。
【請求項4】
前記第1ケース及び前記第2ケースは樹脂成型により形成され、
前記突起部及び抜止部は、前記第1ケース及び前記第2ケースと一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電子装置の筺体構造。
【請求項5】
前記連結部材は、樹脂部材をプレス成型して形成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の電子装置の筺体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−124201(P2008−124201A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305531(P2006−305531)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】