説明

電子装置の製造方法および電子装置

【課題】異物による電子装置の性能の低下を防止するとともに、位置認識マークを正確に認識することのできる電子装置の製造方法を提供する。
【解決手段】配線5を基板2の表面に形成する配線形成工程と、基板2の表面上で電極3と位置認識マーク4を形成する部分を除いて保護膜6を形成する保護膜形成工程と、基板2の表面上で電極3を形成すると共に、位置認識マーク4を電極3及び配線5から離間した位置に形成する電極及びマーク形成工程と、電極3にボンディングワイヤー9を接合させるボンディング工程と、配線5、電極3及び位置認識マーク4を形成した基板2を封止部材10で封止する封止工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LSIなどの電子装置の製造方法は、電極と配線とを基板に形成する配線形成工程と、電極や配線を形成した基板を保護する保護膜を形成する保護膜形成工程と、ボンディングワイヤーと電極とを接合させるボンディング工程と、基板を封止部材で封止する封止工程とを有することが知られている。
【0003】
ボンディング工程では、ボンディングワイヤーと基板の表面に形成された電極との接合に関して高い位置合わせ精度が必要となる。そこで、特許文献1では、配線の一部が保護膜から露出され、この露出した部分の形状を位置認識マークとして用いることが提案されている。このような位置認識マークを検出して電極の位置を認識することにより、上記位置合わせが行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3548462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献の方法では、位置認識マークのために露出した配線部分が剥離して異物となり、この異物によって電子装置が短絡することで、電子装置の性能が低下するおそれがある。また、配線の一部を保護膜から露出させ、この露出した部分を位置認識マークとして用いるため、保護膜との明暗の差が小さくなる場合がある。この場合には、この位置認識マークを正確に認識することができない。
【0006】
そこで、本発明は、異物による電子装置の性能の低下を防止するとともに、位置認識マークの誤認識を防止する電子装置の製造方法および電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子装置の製造方法は、配線を基板の表面に形成する配線形成工程と、前記基板の表面上で電極と位置認識マークを形成する部分を除いて保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記基板の表面上で前記電極を形成すると共に、前記位置認識マークを前記電極及び配線から離間した位置に形成する電極及びマーク形成工程と、前記電極にボンディングワイヤーを接合させるボンディング工程と、前記配線、電極及び位置認識マークを形成した基板を封止部材で封止する封止工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
又、本発明に係る電子装置は、電極と配線と前記電極の位置を認識するための位置認識マークとが表面に形成された基板と、前記電極と前記位置認識マークを除いた前記基板の表面上に形成された保護膜と、前記電極に接合されたボンディングワイヤーと、前記基板の表面上の前記電極及び配線から離間した位置で前記保護膜から露出して形成された位置認識マークとを備え、前記基板を封止部材で封止したものである。
【0009】
これらの発明によれば、位置認識マークは、配線の一部ではなく、配線から離間した位置で保護膜から露出した部分に形成されているので、配線の一部が剥離して異物となることがなく、電子装置の性能を低下させない。また、露出した位置認識マークと保護膜との間で明暗の差が小さくなることもなく、位置認識マークを正確に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の電子装置の電子回路板であって、基板の表面に電極と位置認識マークと配線とを形成した状態の平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】本実施形態の電子装置であって、封止部材による封止後の状態の平面図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】本実施形態の電子装置の製造方法の製造工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1、図2では、本実施形態の電子装置を構成する電子回路板1は、基板2と、電極3と、位置認識マーク4と、配線5と、保護膜6と、位置認識部7とを備える。
【0013】
基板2は、矩形の板からなり、例えばセラミック等で構成されている。また、電極3は矩形に形成され、基板2の表面の対角となる位置に2つ設けられている。電極3は金属で構成されている。また、配線5は、基板2の内部及び表面に形成されており、金属で構成されている。
【0014】
位置認識マーク4は円形に形成されており、金属で構成されている。位置認識マーク4は基板2の表面の対角となる位置に2つ設けられ、電極3が設けられた角部と反対側の角部に設けられる。位置認識マーク4は、電極3及び配線5から離間して形成されている。なお、位置認識マーク4の形状は、円形以外のものであってもよく、例えば、L字形や十字形に形成されたものであってもよい。
【0015】
保護膜6は、例えば透明の合成樹脂被膜であり、基板2の表面とこの基板2上に形成された配線5とを覆うように形成している。また、電極3、位置認識マーク4及び後述する位置認識部7は保護膜6により覆われずに露出している。
【0016】
位置認識部7は、位置認識マーク4と、位置認識マーク4の周囲の基板露出部8とで構成されている。なお、位置認識部7における基板露出部8の大きさはゼロであってもよい。このときは、保護膜6は位置認識マーク4に沿って形成される。
【0017】
図3、図4は、図1、図2に示す電子回路板1の電極3にボンディングワイヤー9が接合されて、封止部材10により封止がされた状態を示している。
【0018】
ボンディングワイヤー9は金属で構成されており、その一端部9aが電極3と接合されると共に他端部9bがリード11と接合されている。そのため、電極3とリード11とは電気的に接続されている。
【0019】
基板2と保護膜6と位置認識マーク4とボンディングワイヤー9とは、封止部材10に密着した状態で封止されており、位置認識マーク4は空気と触れないよう構成されている。封止された電子回路板1は、凹型に形成されたパッケージ12の凹部に設けられる。封止部材10には、例えばシリコン系絶縁樹脂やエポキシ樹脂などが用いられる。そして、電子装置13は、この電子回路板1とボンディングワイヤー9と封止部材10とリード11とパッケージ12とによって構成される。
【0020】
図5は、電子装置の製造工程を示すフローチャートである。まず、基板2の表面に薄膜を形成する薄膜形成工程が実行される(ステップS1)。ステップS1の次には、配線5を光の照射により特定する露光工程が実行される(ステップS2)。露光工程では、まず、基板2の表面に形成された薄膜の表面にフォトレジストが塗布される。次に、配線5を描画した図外のフォトマスクを通過した光が図外のフォトレジストを表面に塗布した基板2に照射される。
【0021】
光を照射した後に、フォトレジストに現像液を散布することによって、照射されたフォトレジストが現像される。この現像によって、照射されたフォトレジストが溶けて、基板2の表面に形成された薄膜が露わになる。
【0022】
その後、配線5を形成するエッチング工程が実行される(ステップS3)。このエッチング工程が配線形成工程に相当する。エッチング工程では、露わになった薄膜がエッチングによって除去されることで配線5が形成される。
【0023】
次に、基板2の表面上に保護膜6を形成する保護膜形成工程が実行される(ステップS4)。保護膜6は、次の印刷工程で印刷される位置認識マーク4及びその周囲の基板露出部8と、電極3の印刷位置を除いて形成される。保護膜6にはガラスペーストが用いられる。保護膜6は厚膜印刷によって形成されるが、フォトリソグラフィー技術を用いて形成することも可能である。
【0024】
次に、基板2の表面上に電極3や位置認識マーク4を印刷する印刷工程が実行される(ステップS5)。印刷工程では、エッチングによって除去された薄膜の場所であって保護膜6の形成されていない場所に、電極3と位置認識マーク4が印刷される。そのため、位置認識マーク4とその基板露出部8が基板2に露出される。電極3と配線5は連結されているが、位置認識マーク4は電極3、配線5のいずれとも接続されず、離間した所定位置に形成されている。この位置認識マーク4を形成する工程が電極及びマーク形成工程に相当する。また、保護膜6の形成されていない場所に、位置認識マーク4を印刷することで、位置認識マーク4を基板2の表面上に露出させる工程がマーク露出工程に相当する。なお、保護膜6の形成は、厚膜印刷で形成することも可能である。
【0025】
次に、電極3にボンディングワイヤー9を接合させるボンディング工程が実行される(ステップS6)。ボンディング工程は、上面が開放された方形のパッケージ12に基板2が挿入された状態で実行される。ボンディング工程では、まず、位置認識マーク4の位置が図外のボンディング装置によって検知される。位置認識マーク4の位置は、位置認識マーク4と位置認識部7とのコントラストで判断される。
【0026】
その後、電極3とボンディングワイヤー9の一端部9aとの接合が実行され、その後リード11とボンディングワイヤー9の他端部9bとの接合が実行される。これらの接合により、電極3とリード11とがボンディングワイヤー9を介して電気的に接続される。
【0027】
次に、基板2に封止部材10を密着させて封止する封止工程が実行される(ステップS7)。封止工程では、基板2を挿入したパッケージ12に封止部材10が流入される。パッケージ12に流入された封止部材10は、基板2や位置認識マーク4やボンディングワイヤー9と密着して固化する。この固化により、基板2の封止が完了して、電子装置13が製造される。
【0028】
以上のように、本実施形態の電子装置及び電子装置の製造方法では、位置認識マーク4は、配線5の一部ではなく、配線5から離間した位置で保護膜6から露出した部分に形成されているので、配線5の一部が剥離して異物となることがなく、電子装置13の性能を低下させない。また、露出した位置認識マーク4と保護膜6との間で明暗の差が小さくなることもなく、位置認識マーク4を正確に認識することができる。
【符号の説明】
【0029】
2…基板、3…電極、4…位置認識マーク、5…配線、6…保護膜、9…ボンディングワイヤー、10…封止部材、13…電子装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線を基板の表面に形成する配線形成工程と、
前記基板の表面上で電極と位置認識マークを形成する部分を除いて保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記基板の表面上で前記電極を形成すると共に、前記位置認識マークを前記電極及び配線から離間した位置に形成する電極及びマーク形成工程と、
前記電極にボンディングワイヤーを接合させるボンディング工程と、
前記配線、電極及び位置認識マークを形成した基板を封止部材で封止する封止工程とを備えることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
電極と配線と前記電極の位置を認識するための位置認識マークとが表面に形成された基板と、
前記電極と前記位置認識マークを除いた前記基板の表面上に形成された保護膜と、
前記電極に接合されたボンディングワイヤーと、
前記基板の表面上の前記電極及び配線から離間した位置で前記保護膜から露出して形成された位置認識マークとを備え、
前記基板を封止部材で封止した電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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