説明

電子装置

【課題】 金属細線の電気的接続不良を抑制し、電子装置の信頼性を向上させること。
【解決手段】 樹脂シート2と、樹脂シート2上に配置されたリード電極3と、樹脂シート2上にリード電極3と間隔を空けて配置された、電子部品4が実装された回路基板5と、回路基板5および電子部品4の少なくとも一方とリード電極3とを電気的に接続した金属細線6と、回路基板5上からリード電極3上にかけて、金属細線6を被覆するように設けられた被覆樹脂とを有している電子装置であって、樹脂シートおよび被覆樹脂7は無機質フィラーを含有しており、樹脂シート2は、被覆樹脂7より無機質フィラーの含有率が高い電子装置1である。樹脂シート2は被覆樹脂7より熱伝導率が高くなり、電子部品4で発生した熱はあまり被覆樹脂7を通らず、金属細線6の電気的接続不良を抑制でき、電子装置1の信頼性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、回路基板に電子部品が実装されるとともに、全体がエポキシ樹脂等の樹脂によって封止されてなる電子装置が、テレビ,オーディオ機器,自動車,船舶または航空機等で幅広く使用されている。
【0003】
そのような電子装置として、例えば、回路基板の一部に電子部品が実装されており、回路基板のうち、その一部と離間している他の部分と電子部品とが金属細線で電気的に接続されており、全体がエポキシ樹脂等の樹脂によって封止されたものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−99456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案された電子装置においては、通電時に電子部品から熱が発生し、この熱のほとんどが、この全体を封止している樹脂に伝導して樹脂が膨張することとなる。よって、この樹脂に被覆されている金属細線は、樹脂の膨張に伴って位置が移動することとなる。ここで、金属細線において位置が移動するのは、電子部品または回路基板との接続部以外の部分である。従って、金属細線の電子部品または回路基板との接続部は、樹脂の膨張に伴って位置が移動する部分に引っ張られる。この引っ張りによって、接続部における電気的接続不良が生じる場合がある。
【0006】
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、金属細線の電気的接続不良を抑止することが可能な信頼性の高い電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子装置は、樹脂シートと、該樹脂シート上に配置されたリード電極と、前記樹脂シート上に前記リード電極と間隔を空けて配置された、電子部品が実装された回路基板と、該回路基板および前記電子部品の少なくとも一方と前記リード電極とを電気的に接続した金属細線と、前記回路基板上から前記リード電極上にかけて、前記金属細線を被覆するように設けられた被覆樹脂とを有している電子装置であって、前記樹脂シートおよび前記被覆樹脂は無機質フィラーを含有しており、前記樹脂シートは、前記被覆樹脂より前記無機質フィラーの含有率が高いことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の電子装置は、樹脂シートと、該樹脂シート上に配置されたリード電極と、前記樹脂シート上に前記リード電極と間隔を空けて配置された、電子部品が実装された回路基板と、該回路基板および前記電子部品の少なくとも一方と前記リード電極とを電気的に接続した金属細線と、前記回路基板上から前記リード電極上にかけて、前記金属細線を被覆するように設けられた被覆樹脂とを有している電子装置であって、前記樹脂シートは、前記被覆樹脂よりも熱伝導率が高いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子装置によれば、樹脂シートと、樹脂シート上に配置されたリード電極と、樹脂シート上にリード電極と間隔を空けて配置された、電子部品が実装された回路基板と、回路基板および電子部品の少なくとも一方とリード電極とを電気的に接続した金属細線と、回路基板上からリード電極上にかけて、金属細線を被覆するように設けられた被覆樹脂とを有している電子装置であって、樹脂シートおよび被覆樹脂は無機質フィラーを含有しており、樹脂シートは、被覆樹脂より無機質フィラーの含有率が高いことから、樹脂シートは被覆樹脂より熱伝導率が高くなる。また、回路基板も被覆樹脂より熱伝導率が高い。従って、電子部品で発生した熱は、回路基板,樹脂シートを介してリード電極に伝導されるので、熱は被覆樹脂を迂回することとなり、被覆樹脂の熱膨張が抑えられる。そのため樹脂で被覆された金属細線は、あまり位置が移動せず、接続部における電気的接続不良を抑制し、電子装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、本発明の電子装置の実施の形態の一例を示す上面図であり、(b)は、(a)に示す電子装置のX−X線における断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の電子装置の製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す工程毎の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の電子装置の実施の形態の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1に示す例の電子装置1は、樹脂シート2と、樹脂シート2上に配置されたリード電極3と、樹脂シート2上にリード電極3と間隔を空けて配置された、電子部品4が実装された回路基板5と、回路基板5および電子部品4の少なくとも一方とリード電極3とを電気的に接続した金属細線6と、回路基板5上からリード電極3上にかけて、金属細線6を被覆するように設けられた被覆樹脂とを有している電子装置であって、樹脂シートおよび被覆樹脂7は無機質フィラーを含有しており、樹脂シート2は、被覆樹脂7より無機質フィラーの含有率が高い。
【0013】
このような構成により、樹脂シート2は被覆樹脂7より熱伝導率が高くなる。また、回路基板5も被覆樹脂7より熱伝導率が高い。従って、電子部品4で発生した熱は、回路基板5,樹脂シート2を介してリード電極3に伝導されるので、熱は被覆樹脂7を迂回することとなり、被覆樹脂7の熱膨張が抑えられる。そのため樹脂で被覆された金属細線6は、接続部の電気的接続不良が生じることを抑制し、電子装置1の信頼性を向上させることができる。
【0014】
このような電子装置1を外部の機器と接続する際には、リード電極3が、外部の機器と接続するための接続端子となる。
【0015】
樹脂シート2は、図1に示すように、その表面に回路基板5およびリード電極3が配置されている。
【0016】
この樹脂シート2の寸法は、例えば、長さが20〜50mmであり、幅が10〜30mmであり、厚みが0.1〜0.3mmである。また、樹脂シート2の材料は、例えば、エポキシ系樹脂,フェノール系樹脂またはシリコーン系樹脂等の樹脂材料が使用される。また、樹脂シート2には、無機質フィラーが含有されている。
【0017】
この無機質フィラーの材料は、例えば、シリカまたはアルミナ等が使用される。また、
無機質フィラーの粒径は、例えば、5〜15μmである。無機質フィラーの形状は、例えば、球形状,楕円形状または針形状等のいずれであってもよい。
【0018】
リード電極3は、図1に示すように、樹脂シート2上に配置されている。このリード電極3の材料は、例えば、銅,りん青銅,鉄等の金属材料が使用される。また、リード電極3の寸法は、例えば、長さが5〜20mmであり、幅が0.5〜2mmであり、厚みが0.25〜0.5mmである。
【0019】
なお、図1に示す例おいて、リード電極3の数は2つであるが、3つ以上あってもよい。また、図1に示す例おいて、リード電極3の形状は、長方形状であるが、これに限られず、例えば、正方形状,楕円形状または円形状等であってもよい。
【0020】
電子部品4は、回路基板5上に実装されている。電子部品4としては、例えば、パワートランジスタ,電源IC,チップ抵抗,IGBTまたはコンデンサ等が使用される。
【0021】
回路基板5は、図1に示すように、樹脂シート2上にリード電極3と間隔を空けて配置された、電子部品4が実装されている。
【0022】
この回路基板5の材料は、例えば、AlまたはAlN等を主成分とするセラミックスまたは、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂など、高強度で絶縁性に優れ、耐環境性にも優れた絶縁材料が使用されることが好ましい。特に、比較的入手しやすく、熱伝導率も十分なAlを用いるのが好ましい。
【0023】
なお、図1に図示していないが、回路基板5上には、前述した絶縁材料からなる板材に、配線導体または電極パッド等が配置されている。
【0024】
回路基板5の寸法は、例えば、長さが15〜45mmであり、幅が5〜25mmであり、厚みが0.5〜2mmである。
【0025】
なお、図1に示す例おいて、回路基板5の形状は、長方形状であるが、これに限られず、例えば、正方形状,楕円形状または円形状等であってもよい。
【0026】
金属細線6は、図1に示すように、回路基板5および電子部品4の少なくとも一方とリード電極3とを電気的に接続している。
【0027】
この金属細線6の材料は、例えば、銅,金またはアルミ等の金属材料が使用される。また、金属細線6の寸法は、例えば、長さが3〜10mmである。また、金属細線6の断面形状は、例えば、円形状,楕円形状または矩形状等である。また、金属細線6の断面形状が円形状である場合には、金属細線6の断面の直径は、例えば、100〜500μmである。
【0028】
なお、金属細線6の両端部は、回路基板5,電子部品4またはリード電極3に対して、超音波接合等によって接合されている。
【0029】
被覆樹脂7は、回路基板5上からリード電極3上にかけて、金属細線6を被覆するように設けられている。
【0030】
なお、図1(b)に示すように、被覆樹脂7は、樹脂シート2上における回路基板5とリード電極3との間の間隙を充填するように、回路基板5上からリード電極3上にかけて設けられている。
【0031】
この被覆樹脂7の材料は、例えば、エポキシ系樹脂またはポリイミド系樹脂等の樹脂材料が使用される。また、被覆樹脂7には、無機質フィラーが含有されている。
【0032】
この無機質フィラーの材料は、例えば、シリカまたはアルミナ等が使用される。また、無機質フィラーの粒径は、例えば、12〜22μmである。無機質フィラーの形状は、例えば、球形状,楕円形状または針形状等のいずれであってもよい。
【0033】
また、樹脂シート2は、被覆樹脂7よりも熱伝導率が高い。例えば、樹脂シート2の熱伝導率は、被覆樹脂7の熱伝導率の1.8〜2.3倍であることが好ましい。この熱伝導率の関係とするため、樹脂シート2は、被覆樹脂7より無機質フィラーの含有率が高い。例えば、樹脂シート2の無機質フィラーの含有率は、被覆樹脂7の無機質フィラーの含有率の1.1〜1.5倍であることが好ましい。
【0034】
1.1倍以上である場合には、樹脂シート2は被覆樹脂7より熱伝導率が大きくなるので
、電子部品4で生じた熱は、樹脂シート2を通りやすくなる。よって、熱はあまり被覆樹脂7を通らず、金属細線6に熱の影響が及びにくくなるので好ましい。
【0035】
また、1.5倍以下である場合には、樹脂シート2は無機質フィラーの含有率が大き過ぎ
ないので、回路基板5およびリード電極3との接着性を維持することができる。
【0036】
なお、前述した無機質フィラーの含有率とは、重量比のことを示している。
【0037】
なお、被覆樹脂7および樹脂シート2それぞれの熱伝導率の測定には、レーザーフラッシュ法を用いた。以下に、レーザーフラッシュ法の概要を説明する。
【0038】
試料表面にルビーレーザーのパルス光を均一に照射し、試料裏面の温度上昇を赤外線センサーまたは熱電対で測定し、温度応答曲線を作成する。次に、裏面の温度応答曲線から、最高温度の半分に達する時間を求めることにより熱拡散率を求める。また、最高温度と、予め比熱既知の標準試料より求めておいたレーザー照射による吸収熱量とから比熱を求める。そして、熱拡散率と比熱と密度とを掛け合わせることによって、熱伝導率を算出することができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良等が可能である。
【0040】
以下に、金属細線6の一方の端部に関する変形例を示す。
【0041】
例えば、金属細線6の一方の端部は、回路基板5と電気的に接続されていることが好ましい。このような構成によって、金属細線6の一方の端部を電子部品4と電気的に接続する場合と比較して、金属細線6の一方の端部を電子部品4とは離間させることができる。よって、電子部品4で発生した熱が金属細線6を直接被覆している部分の被覆樹脂まで到達しにくくなる。従って、この部分の被覆樹脂7はあまり膨張しないので、金属細線6は、あまり位置が移動せず、金属細線6の電気的接続不良を抑制することができる。その結果、電子装置1の信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、例えば、金属細線6の一方の端部は、回路基板5と電気的に接続されており、電子部品4は、金属細線6と回路基板5との接続部から離間していることが好ましい。このような構成によって、電子部品4で発生した熱が、金属細線6を直接被覆している部分の被覆樹脂まで到達しにくくなるのでさらに好ましい。
【0043】
また、例えば、金属細線6の一方の端部は、回路基板5と電気的に接続されており、被覆樹脂7と電子部品4とは離間していることが好ましい。このような構成によって、電子部品4で発生した熱が、被覆樹脂7を介して金属細線6を直接被覆している部分の被覆樹脂まで到達しにくくなるのでさらに好ましい。
【0044】
以下に、樹脂シート2および被覆樹脂7の関係に関する変形例を示す。
【0045】
例えば、樹脂シート2に含有されている無機質フィラーは、被覆樹脂7に含有されている無機質フィラーより、粒径が小さいことが好ましい。このような構成によって、樹脂シート2の表面に露出している無機質フィラーの表面積を比較的小さくすることができる。従って、樹脂シート2表面の樹脂の面積が大きくなり、回路基板5およびリード電極3の樹脂シート2の表面への接着力が強くすることができる。
【0046】
また、例えば、樹脂シート2および被覆樹脂7に使用される樹脂材料は同一の種類であることが好ましい。この場合には、樹脂シート2および被覆樹脂7の接着力が強くなるからである。
【0047】
以下に、リード電極3に関する変形例を示す。
【0048】
例えば、リード電極3は、回路基板5とは離間して樹脂シート2上に配置されていることが好ましい。このような構成によって、金属細線6とリード電極3との接続部と、回路基板5上の電子部品4とを離間させることができる。従って、電子部品4で発生した熱が、金属細線6のうちリード電極3側の端部を直接被覆している部分の被覆樹脂まで到達しにくくなるので好ましい。
【0049】
以下に、樹脂シート2に関する変形例を示す。
【0050】
例えば、樹脂シート2における、回路基板5またはリード電極3等と接着している側の主面は、反対側の主面に比べて、無機質フィラー含有率が小さいことが好ましい。この場合には、樹脂シート2における、回路基板またはリード電極3等と接着している主面は、接着力が高くなるので、回路基板またはリード電極3等との接着力が高くなる。また、樹脂シート2において、これと反対側の主面においては、無機質フィラー含有率が比較的高いので、電子部品で生じた熱は、この反対側の主面を通りやすくなる。従って、金属細線6から離れた経路を熱が通過することとなるため好ましい。
【0051】
以下に、被覆樹脂7に関する変形例を示す。
【0052】
例えば、回路基板5とリード電極3との間の間隙に充填された被覆樹脂7は、金属細線6を被覆している部分の被覆樹脂7より、無機質フィラーの含有率が高いことが好ましい。このような構成によって、電子部品4で発生した熱は、前述した間隙に充填された部分を通過し、金属細線6を被覆している部分はあまり通過しないこととなる。
【0053】
また、例えば、回路基板5とリード電極3との間の間隙に充填された被覆樹脂7は、金属細線6を被覆している部分の被覆樹脂7より、無機質フィラーの粒径が大きいことが好ましい。このような構成によって、電子部品4で発生した熱は、前述した間隙に充填された部分を通過し、金属細線6を被覆している部分はあまり通過しないこととなる。
【0054】
また、例えば、回路基板5とリード電極3との間の間隙に充填された被覆樹脂7は、回路基板5および樹脂シート2の接着面に入り込んでいることが好ましい。この場合には、被覆樹脂7は、樹脂シート2よりも無機質フィラー含有率が低く接着性も高いため、樹脂
シート2および回路基板5の接着力を大きくすることができる。
【0055】
また、例えば、回路基板5とリード電極3との間の間隙に充填された被覆樹脂7は、リード電極3および樹脂シート2の接着面に入り込んでいることが好ましい。この場合には、被覆樹脂7は、樹脂シート2よりも無機質フィラー含有率が低く接着性も高いため、樹脂シート2およびリード電極3の接着力を大きくすることができる。
【0056】
また、例えば、図1に示す被覆樹脂7は、各金属細線6をそれぞれ別個に被覆しているが、複数の金属細線6を1つの被覆樹脂7で同時に被覆する構成とすれば、電子装置1を作製する工程が簡略化されるので好ましい。
【0057】
また、例えば、電子部品4に最も近い位置の金属細線6のみ、別個の被覆樹脂7で被覆されており、他の金属細線6は全て1つの被覆樹脂7で同時に被覆されていることが好ましい。この場合には、電子部品で生じた熱が、被覆樹脂7を介して全ての金属細線6に伝導されることを防ぐことができる。また、他の金属細線6は全て1つの被覆樹脂7で同時に被覆するので、電子装置1を作製する工程が簡略化されるので好ましい。
【0058】
なお、電子装置1は、全体を封止樹脂によって覆ってもよい。以下に、この封止樹脂に関する変形例を示す。
【0059】
例えば、被覆樹脂7が金属細線6を被覆しており電子部品4を覆っていない構成の電子装置1全体を、封止樹脂で封止することが好ましい。この場合には、電子部品4は、被覆樹脂7と離間していることとなるので、電子部品4で生じた熱は、被覆樹脂7を介して金属細線6に伝導されにくくなる。また、電子部品4を、封止樹脂で覆うことにより外部からの衝撃等から保護できる。
【0060】
さらに、例えば、封止樹脂は被覆樹脂7より熱伝導率が大きいことが好ましい。この場合には、電子部品4で生じた熱は、被覆樹脂7をさらに通りにくくなり、封止樹脂を通って外部に放熱されやすくなるからである。
【0061】
さらに、例えば、被覆樹脂7は図1に示すように各金属細線6をそれぞれ別個に被覆していることがさらに好ましい。この場合には、電子部品4で生じた熱は、各被覆樹脂7間の封止樹脂を通って外部に放熱されるから、被覆樹脂7をさらに熱が通りにくくなるからである。
【0062】
また、例えば、封止樹脂において、電子部品4を覆っている部分は、厚みが小さいことが好ましい。この場合には、電子部品4および外部との間隔が小さくなるので、電子部品4で生じた熱は封止樹脂を介して外部に放熱されやすくなる。従って、電子部品4で生じた熱は被覆樹脂7をあまり通らなくなる。
【0063】
また、例えば、封止樹脂は、樹脂シート2を覆っていることが好ましい。この場合には、樹脂シート2の下部に位置する部分の封止樹脂の接着性を利用して、外部の機器等に取り付けることができる。
【0064】
さらに、例えば、封止樹脂は無機質フィラーを有しており、樹脂シート2よりも無機質フィラーの含有率が小さいことが好ましい。この場合には、封止樹脂は樹脂シート2よりも接着性が高くなり、外部の機器等にさらに取り付けやすくなる。また、樹脂シート2は、封止樹脂よりも熱伝導率が高くなるので電子部品4で生じた熱が、樹脂シート2を通りやすくなるので好ましい。
【0065】
また、例えば、封止樹脂は、エポキシ系の樹脂材料を使用することが好ましい。この場合には、封止樹脂は、例えば、シリコーン樹脂等に比較して、強度が高くなるので、電子部品4または金属細線6が外部からの衝撃を受けにくくなるからである。
【0066】
また、例えば、封止樹脂に使用される樹脂材料は、樹脂シート2および被覆樹脂7と同一の材料であることが好ましい。この場合には、封止樹脂と樹脂シート2および被覆樹脂7との接着力が大きくなるので、信頼性の高い電子装置1を提供することができる。
【0067】
なお、以上の説明では、電子装置1の全体が、封止樹脂によって覆われている例を示したが、封止樹脂は、電子部品4のみを覆うように、回路基板5上に配置されていてもよい。以下に、この封止樹脂に関する変形例を示す。
【0068】
例えば、この封止樹脂は、被覆樹脂7とは離間して、回路基板5上に配置されていることが好ましい。この場合には、封止樹脂および被覆樹脂7の間には空間が設けられているので、電子部品4で生じた熱の影響が金属細線6に及びにくくなるので好ましい。また、電子部品4を、封止樹脂で覆うことにより外部からの衝撃等から保護できる。
【実施例】
【0069】
図1および図2に示す例のような、電子装置1の実施例を以下に説明する。
【0070】
まず、図2(a)に示すように、樹脂シート2を準備した。この樹脂シート2の寸法は、長さが30mmであり、幅が20mmであり、厚みが0.2mmであった。なお、樹脂シート
2は、エポキシ樹脂に、球形状であって粒径が10μmである無機質フィラーを含有させた。なお、樹脂シート2における無機質フィラーの含有率は重量比89%であった。無機質フィラーはアルミナとした。
【0071】
次に、図2(b)に示すように、樹脂シート2の表面に、電子部品4を実装した回路基板5およびリード電極3を配置した。
【0072】
この回路基板5の寸法は、幅が10mmであり、長さが25mmであり、厚みが0.8mmで
あった。なお、回路基板5の材料はアルミナとした。
【0073】
また、リード電極3の寸法は、幅が1mmであり、長さが10mmであり、厚みが0.5m
mであった。なお、リード電極3の材料としてはニッケルめっきを施した銅を使用した。
【0074】
次に、図2(c)に示すように、回路基板5とリード電極3とを金属細線6によって電極的に接続した。金属細線6の材料としてはアルミを使用した。なお、金属細線6の端部と、回路基板5およびリード電極3のそれぞれとは、半田によって接合した。
【0075】
次に、図2(d)に示すように、被覆樹脂7を、回路基板5上からリード電極3上にかけて、金属細線6を被覆するように、樹脂シート2上に設けた。この被覆樹脂7は、エポキシ樹脂に、球形状であって粒径が17μmである無機質フィラーを含有させた。なお、被覆樹脂7における無機質フィラーの含有率は重量比80%であった。無機質フィラーはアルミナとした。
【0076】
しかる後に、電子装置1全体を加熱することによって、樹脂シート2および被覆樹脂7を硬化させることによって、実施例の電子装置1を得た。
【0077】
次に、比較例として、樹脂シート2および被覆樹脂7を有さず、電子部品を実装した回路基板,リード電極の一部および金属細線を覆っている封止樹脂を有する電子装置を作製
した。
【0078】
なお、この封止樹脂は、エポキシ樹脂に、球形状であって粒径が10μmである無機質フィラーを含有させた。なお、封止樹脂における無機質フィラーの含有率は重量比89%であった。無機質フィラーはアルミナとした。
【0079】
得られた実施例および比較例の電子装置に電流を入力し電子部品を通電させ、電子部品の温度を常温から125℃まで上昇させることを1サイクルとして1000サイクル繰り返す熱
サイクル試験を行なった。そして、熱サイクル試験が終わった実施例の電子装置1を切断して断面を観察したところ、金属細線6は接続部ではがれ等が見られなかった。
【0080】
しかしながら、比較例の電子装置では、金属細線は金属細線の一方の端部と回路基板との電気的な接続の確実性がやや損なわれていた。
【0081】
この結果から、実施例の電子装置1では、樹脂シート2は被覆樹脂7より熱伝導率が高くなるので、電子部品4によって発生した熱は、被覆樹脂7よりも、回路基板5を介して樹脂シート2に伝導されるので、金属細線6は、あまり位置が移動せず金属細線6の電気的接続不良を抑制することができ、電子装置1の信頼性を向上させることが可能となることが分かった。
【符号の説明】
【0082】
1:電子装置
2:樹脂シート
3:リード電極
4:電子部品
5:回路基板
6:金属細線
7:被覆樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートと、
該樹脂シート上に配置されたリード電極と、
前記樹脂シート上に前記リード電極と間隔を空けて配置された、電子部品が実装された回路基板と、
該回路基板および前記電子部品の少なくとも一方と前記リード電極とを電気的に接続した金属細線と、
前記回路基板上から前記リード電極上にかけて、前記金属細線を被覆するように設けられた被覆樹脂と
を有している電子装置であって、
前記樹脂シートおよび前記被覆樹脂は無機質フィラーを含有しており、前記樹脂シートは、前記被覆樹脂より前記無機質フィラーの含有率が高いことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
樹脂シートと、
該樹脂シート上に配置されたリード電極と、
前記樹脂シート上に前記リード電極と間隔を空けて配置された、電子部品が実装された回路基板と、
該回路基板および前記電子部品の少なくとも一方と前記リード電極とを電気的に接続した金属細線と、
前記回路基板上から前記リード電極上にかけて、前記金属細線を被覆するように設けられた被覆樹脂と
を有している電子装置であって、
前記樹脂シートは、前記被覆樹脂よりも熱伝導率が高いことを特徴とする電子装置。
【請求項3】
前記金属細線の一方の端部は、回路基板と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記電子部品は、前記金属細線と前記回路基板との接続部から離間していることを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記被覆樹脂と前記電子部品とは離間していることを特徴とする請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記樹脂シートに含有されている無機質フィラーは、前記被覆樹脂に含有されている無機質フィラーより、粒径が小さいことを特徴とする請求項1〜5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記樹脂シート中に存在する無機質フィラーの含有率は、前記回路基板および前記リード電極と接着する側に比し、反対側の方が大きいことを特徴とする請求項1〜6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記電子部品が封止樹脂によって封止されていることを特徴とする請求項1〜7に記載の電子装置。
【請求項9】
前記リード電極の上面から下に位置する部分の被覆樹脂は、前記リード電極の上面から上に位置する部分の被覆樹脂より無機質フィラーの含有率が高いことを特徴とする請求項1〜8に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−249524(P2011−249524A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120570(P2010−120570)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】