説明

電子部品の処理装置及びその処理方法

【課題】搬送制御の高速処理及び装置の簡易化を図ることができる電子部品の処理装置及びその処理方法を提供する。
【解決手段】電子部品の処理装置1は、ダイレクトドライブモータ2により進行と停止のサイクルを繰り返しながら回転するターンテーブル3と、パーツフィーダ等の搬送手段から送られる電子部品Sを供給する供給機構4と、ターンテーブル3の円周上等間隔に配置され電子部品Sに工程処理を施す各種の工程処理ユニット5a〜5kとを備える。電気特性検査、特性分類、マーキング、外観検査等の工程処理のうち処理時間が相対的に長いマーキングユニット5f及び外観検査ユニット5iとの間にはターンテーブル3からマーキングユニット5fと外観検査ユニット5iに電子部品Sを受け渡す衛星テーブル10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の小型電子部品の搬送過程において、各種の工程処理を行うための電子部品の処理装置及びその処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は、前工程と呼ばれるプロセスで、Siウエハ上に多数作成された後、後工程と呼ばれるプロセスにて個片に分離され、電気特性検査、特性分類、マーキング、外観検査等の工程を経た後、テープ、コンテナチューブ等に梱包されて出荷される。
【0003】
このような半導体素子は、個片に分離された後の工程において、保持機構に保持された状態で搬送機構により搬送されながら、搬送経路に設けられた各工程処理部において、電気特性検査等の上記各処理が施される。搬送機構による搬送方法としては、直線搬送、ターンテーブル搬送等があるが、いずれの場合でも、保持機構を所定の工程順に従って進行させるステップと、各工程処理部において半導体素子の処理開始から終了まで保持機構を停止させるステップを繰り返す、いわゆる間欠搬送が用いられることが多い。
【0004】
ところで、上記のような間欠搬送による工程処理には、長い処理時間への対応、高速化が困難となるという問題がある。まず、1搬送サイクル時間=搬送時間+搬送停止時間であり、停止時間>最大工程処理時間+受け渡し時間である。ここで、最大工程処理時間を70ms、停止時間中の受け渡し時間を20msとすると、停止時間の下限は90msとなる。そして、搬送時間を30msとすると、1搬送サイクル時間の下限は120msとなり、これ以上の高速化は困難である。
【0005】
このように、高速化が困難となる理由としては、以下のものが挙げられる。
(1)機構上の制約から、搬送、停止を搬送機構全体で同時に行う必要がある。このため、最大工程処理時間で停止時間を決めざるを得ず、搬送停止時間を律速する。
(2)搬送の高速化で生産性を向上させてきたが、限界に達しつつある。例えば、上記の例では、搬送時間は1サイクル120ms中30msしかなく、これ以上の搬送時間の短縮は困難である。
(3)例えば、複雑なテストサイクルが要求される電気特性検査のように、長い処理が必要な工程が含まれる場合には、最大処理時間が長くなり、1搬送サイクル時間はさらに長くなる。
【0006】
このような間欠搬送を行う搬送機構を備えた電子部品の工程処理装置として、特許文献1には、ターンテーブルを複数配置し、順次受け渡すことにより、電子部品に対して各種の処理を行う装置が提案されている。これは、複数の半導体素子を並行して搬送しながら、工程処理も並列で行う装置であり、搬送も工程処理も並列で行うために、全体としての生産性が高まるというものである。また、搬送経路上に同一工程の処理機構を複数配置し、並列して工程処理を行う方法、すなわち、搬送=1個毎、工程処理=並列で行う方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−229509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような従来技術のように、各工程を間欠的に搬送する処理では、時間の長い工程処理への個別的対応や、高速化及び装置構成の簡易化が困難である。例えば、図14に示すような、メインテーブルとサブテーブルとからなるターンテーブル搬送機構において、メインテーブルの円周等配の各位置に位置補正、方向転換、電気特性検査、外観検査、テーピング等の各処理を行う工程処理ユニットを配置し、サブテーブルの円周等配の各位置にマーキング、マーキング検査等の各処理を配置した場合を例にとる。
【0009】
このようなターンテーブル搬送機構の場合、メインテーブルとサブテーブル間での電子部品の受け渡し機構及びこれに伴う制御技術の問題や、サブテーブルにおけるマーキングユニットの配置スペースの関係から、装置の高速化や装置構成及び制御技術の簡易化は困難であった。
【0010】
また、並列処理を行う技術では、処理時間が短くて済む工程であっても、工程処理の長い工程と同数の処理機構を配置しなくてはならず、無駄が生じて装置のコストを増加させることになっていた。また、この並列処理のための高コスト化とともに、並列搬送のために搬送機構が複雑化し、装置稼働の信頼性の低下を招く可能性もあった。そして、個々の処理機構の処理条件にバラツキが発生するため、マッチング等の補正を定期的に行う必要も発生する可能性があった。搬送=1個毎、工程処理=並列で行う場合にも同様の問題が生じるとともに、搬送機構の慣性質量増大による駆動力増加、ランニングコスト増大につながっていた。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、1つのターンテーブル内に、位置補正、方向転換、電気特性検査、マーキング、外観検査、テーピング等のすべての工程処理ユニットを納めることにより、搬送制御の高速処理が可能となり、かつ、装置の機構簡易化及び制御容易化を図ることができる電子部品の処理装置及びその処理方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、ターンテーブル周囲に設けられた工程処理ユニットのうち、工程処理時間の長い処理を衛星テーブルを用いて処理することで、他の工程処理に影響を与えることなく工程処理時間を確保し、全体として処理時間の短縮化を図ることのできる電子部品の処理装置及びその処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、次の構成を有することを特徴とする。
(1) 電子部品を保持する保持機構を複数備え当該保持機構により電子部品を保持ながら回転と停止を1サイクルとして繰り返して間欠的に回転搬送するターンテーブルと、前記ターンテーブルの外周に設けられた複数の工程処理機構とを備える。
(2) 前記ターンテーブルと前記工程処理機構との間には、前記保持機構から電子部品を受取り前記工程処理機構の処理位置へ搬送し、当該工程処理機構において所定の複数種類の工程処理を終えた電子部品を再度保持機構へ受け渡す衛星テーブルが少なくとも一つ設けられている。
(3) 前記衛星テーブルは、前記保持機構から電子部品を受け取る位置と、前記工程処理機構において電子部品を処理する位置と、前記保持機構へ工程処理後の電子部品を受け渡す位置とを備えている。
(4) 前記衛星テーブルにおける電子部品の前記保持機構からの受け取り位置と前記保持機構への受渡し位置とは共通である。
(5) 前記衛星テーブルは、前記ターンテーブルと前記工程処理機構との間に、連続して複数設けられ、この複数の衛星テーブルは、同じタイミングで前記保持機構から電子部品を受取り前記工程処理機構の処理位置へ搬送し、当該工程処理機構において処理を終えた電子部品を再度保持機構へ受け渡すように構成されている。
(6) 前記衛星テーブルが、前記保持機構から電子部品を受け取り受け渡すのは、前記ターンテーブルが前記衛星テーブルの数分、前記サイクルを繰り返した後である。
【0014】
また、前記のような電子部品の処理装置における各処理を実施する電子部品の処理方法も、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つのターンテーブル内にすべての工程処理機構を納めることにより、また、電子部品の受渡し及び受取りの加工点を1ヵ所にすることにより、搬送制御の高速処理及び装置の簡易化を図ることができる電子部品の処理装置及びその処理方法を提供することができる。
【0016】
また、ターンテーブル周囲に設けられた工程処理ユニットのうち、工程処理時間の長い処理を衛星テーブルを用いて処理することで、他の工程処理に影響を与えることなく工程処理時間を確保し、全体として処理時間の短縮化を図ることができる。
【0017】
特に、衛星テーブルは、ターンテーブルの複数サイクルの動作のうち、最後のサイクルにおける停止時間内に、電子部品を受取り、工程処理位置に搬送することによって必要な工程処理を施す。そして、ターンテーブルが再び所定サイクル動作した後、回転しターンテーブルに処理の済んだ電子部品を受渡す。これにより、他の工程処理に比較して処理時間の長い電気特性検査において、その処理時間分衛星テーブルを用意し設置することによって、他の工程処理に影響を与えることなく工程処理時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における電子部品の処理装置の全体構成を示す平面図。
【図2】本発明の第1の実施形態における電子部品の処理装置の構成を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態における衛星テーブルの構成を示す断面図。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるマーキングユニットの構成を示す断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態における各装置のタイミングチャート。
【図6】本発明の第1の実施形態における衛星テーブルの作用を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態における電子部品の処理装置の全体構成を示す平面図。
【図8】本発明の第2の実施形態における衛星テーブルの構成を示す断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態における各装置のタイミングチャート。
【図10】本発明の第2の実施形態における電子部品の処理装置の作用を示す平面図。
【図11】本発明の他の実施形態における衛星テーブルの構成を示す図。
【図12】本発明の他の実施形態における各装置のタイミングチャート。
【図13】本発明の衛星テーブルと従来のサブテーブルとの構成の比較を示す図。
【図14】従来の工程処理装置の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の装置の全体構成を示す平面図であり、図2は図1におけるA−A断面図である。また、図3は本発明の特徴的部分である衛星テーブルの断面を表している。図4は、本発明の第2の特徴的部分であるマーキングユニットの構成を示す図である。
【0020】
[1.第1の実施形態]
[1−1.基本構成]
図1及び図2に示すように、本実施形態の電子部品の処理装置1は、ダイレクトドライブモータ2により進行及び停止する間欠搬送サイクルを繰り返しながら回転するターンテーブル3と、パーツフィーダ等の搬送手段から送られてくる電子部品Sを供給する供給機構4と、ターンテーブル3の円周上等間隔に配置され電子部品Sに工程処理を施す各種の工程処理ユニット5a〜5kとを備える。
【0021】
また、電気特性検査、特性分類、マーキング、外観検査等の各工程処理のうち、処理ユニットが設置スペースを要するあるいは処理時間が相対的に長いマーキング及び外観検査工程を、それぞれ、マーキングユニット5f及び外観検査ユニット5iとすると、このマーキングユニット5f及び外観検査ユニット5iとターンテーブル3との間には、ターンテーブル3からマーキングユニット5f又は外観検査ユニット5iに電子部品Sを受け渡す衛星テーブル10a又は10bがそれぞれ設けられている。
【0022】
ターンテーブル3の円周等配位置には、このターンテーブル3から各工程処理ユニット5に対して電子部品Sの受渡し及び受取りを行う保持ユニット6が設けられ、図2に示すようにターンテーブル3上には保持ユニット6を上下方向に運動させる駆動ユニット7が設けられている。
【0023】
また、保持ユニット6は、工程処理ユニット5に対して電子部品Sの受渡し及び受取りを行うため、吸着ノズル又はメカチャック等の吸着ノズル6aを備えている。これらの吸着ノズル6aは、ターンテーブル3が進行及び停止するサイクルに合わせて間欠回転するとともに、駆動ユニット7の上下に伴って搬送位置と処理位置とを上下動するように構成されている。
【0024】
[1−2.衛星テーブルの構成]
図3を用いて、衛星テーブル10a,10b(以下、まとめて衛星テーブル10という。)の具体的な構成を説明する。同図に示すように、衛星テーブル10は、中心軸をターンテーブル3の回転外側に傾け(ここでは、45度)、90度間隔で電子部品Sを搭載する搭載面21を4箇所備える(図1参照)。また、搭載面21は、さらに前記中心軸に対して45度外側に向けて設けられるとともに、電子部品Sを吸着保持する吸着孔22を備え、この吸着孔22から図示しないバキューム装置へ連通することによって、電子部品Sが吸着保持されるように構成されている。
【0025】
この衛星テーブル10は、図1又は図3に示すように、ターンテーブル3に設けられた吸着ノズル6aの中心位置と上下同位置に電子部品Sの受渡し位置Tと、そこから180度回転した位置にマーキング又は外観検査等を行う電子部品Sの処理位置Dとを備えている。
【0026】
[1−3.マーキングユニットの構成]
本実施形態の電子部品の処理装置1は、上記のような構成からなる衛星テーブル10との組合せで用いるマーキングユニット5fにおいても構成上の特徴を有する。図4を用いて説明すると、マーキングユニット5fは、照射部31aからの照射により電子部品Sにマーキング処理を行うレーザマーキング本体31と、このレーザマーキング本体31を固定するプレート32と、このプレート32と連結しレーザマーキング本体31の傾き角度を変更可能に支持する支持台33とを備える。
【0027】
また、支持台33に支持されるレーザマーキング本体31が照射角度に傾いた際に、プレート32に接して、レーザマーキング本体31の傾きを維持する受台34を備える。この受台34がプレート32と接する支持部位にはストッパ35が設けられている。すなわち、レーザマーキング本体31を下限位置まで下げた場合に、プレート32の下端がこのストッパ35に当たり、レーザマーキング本体31を支持するように構成されている。
【0028】
次に、プレート32と支持台33との連結構成について説明すると、プレート32は、支持台33に対して、ピン36が軸となって回動自在に連結されるとともに、固定ネジ37によってレーザマーキング本体31が照射角度で固定される。
【0029】
また、レーザマーキング本体31のレーザ照射側の面には、レーザマーキング時に発生するススがレーザマーキングのレンズに付着するのを防止する防塵用フィルム38及び防塵カバー39が設けられている。この防塵用フィルム38は、レーザマーキング本体31の照射部31aにおける照射レンズを覆うようにして、これに着脱可能に設けられている。
【0030】
また、防塵カバー39は、レーザマーキング本体31の照射部分をすっぽり包み込むようにボックス形状に構成されている。そして、この防塵カバー39からはチューブ40が引き出され、集塵機41にてススを吸収するように構成されている。
【0031】
[1−4.作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用について、図1乃至図6を参照して説明する。まず、前工程を終了し、パーツフィーダ等の搬送手段を介して、図2に示す供給機構4から、本実施形態の電子部品の処理装置1へ搬送されてきた電子部品Sは、ターンテーブル3がダイレクトドライブモータ2の駆動によって間欠回転し、各工程処理ユニット5a〜5kにおいて順次各工程処理が施される。
【0032】
次に、ターンテーブル3と衛星テーブル10を中心として、本実施形態の各機構の動作タイミングについて、図5のタイミングチャートと図6を用いて説明する。図5に示すように、ターンテーブル3は、1サイクルで回転と停止を繰返す間欠回転を行う。また、吸着ノズル6aは、このターンテーブル3が停止すると下降を開始し、停止中は下降位置を保持するとともに、ターンテーブル3が再度回転動作を再開する前に上昇して、回転時には上昇位置を保持するように構成されている。すなわち、吸着ノズル6aは、ターンテーブル3の回転が停止している間に、下降して供給機構や工程処理ユニットに電子部品を受渡し、また受け取る。
【0033】
次に、衛星テーブル10とターンテーブル3及び吸着ノズル6aの動作タイミングについてマーキングユニット5fの場合を例にとって説明する。まず、図5及び図6の(a)に示すように、吸着ノズル6aは、ターンテーブル3の回転によって電子部品S1を保持した状態で衛星テーブル10上の吸着ノズル6a上昇位置に移動する。このときターンテーブル3及び衛星テーブル10は停止している。
【0034】
両図(b)に示すように、吸着ノズル6aが下降動作を開始し下降位置に達すると、吸着ノズル6aから衛星テーブル10の搭載面21へ電子部品S1が受け渡される。そして、衛星テーブル10は4分の1回転し、すでにマーキングが済んだ電子部品S4が吸着ノズル6aの位置まで来る。この時の状態が両図(c)の状態である。次に、吸着ノズル6aは停止している衛星テーブル10から電子部品S4を受け取り、図の(d)に示すように上昇動作を行う。
【0035】
このように図5及び図6の(a)から(d)の状態までは、ターンテーブル3は停止しており、衛星テーブル10だけが1/4回転する。また、(d)から(a)に移る間は、ターンテーブル3は回転し、衛星テーブル10は停止している。そしてこのとき、マーキングユニット5fのマーキング位置にある電子部品S2がマーキングされる。
【0036】
ここで、マーキングユニット5fは、図4に示すように、電子部品Sに捺印処理を行うレーザマーキング本体31がプレート32に固定され、さらに、支持台33によりプレート32と連結してレーザマーキング本体31の傾き角度を変更可能に支持している。
【0037】
すなわち、レーザマーキング本体31は、レーザマーキング本体31の傾きを維持する受台34のストッパ35がプレート32に接することによって照射角度に傾いた状態で維持されている。そして、このプレート32と支持台33とは、ピン36が軸となって回動自在に連結されるとともに、固定ネジ37によってレーザマーキング本体31が照射角度で固定されている。
【0038】
このように、本実施形態のマーキングユニット5fは、レーザマーキング本体31を回転可能な支持機構により構成しているため、プレート32ごとピン36を中心に回転することができる。回転位置が決まると、固定ネジ37によりその位置及び角度を固定することができる。したがって、衛星テーブル10のメンテナンス時等、マーキングユニット5fを使用しない場合には、レーザマーキング本体31を上方に固定しておくことができるため、メンテナンスの邪魔となることがない。
【0039】
また、レーザマーキング本体31のレーザ照射側の面に設けられた防塵用フィルム38及び防塵カバー39によって、レーザマーキング時に発生するススがレーザマーキングのレンズに付着するのを防止する。防塵カバー39は、レーザマーキング本体31の照射部分をすっぽり包み込むようにボックス形状に構成され、この防塵カバー39から引き出されたチューブ40を介して、集塵機41にてススを吸収する。
【0040】
なお、上述の作用では、マーキングユニット5fにおけるマーキング工程を例にとって説明したが、外観検査ユニット5iの外観検査工程の場合も同様に行うことができる。
【0041】
[1−5.効果]
このように、本実施形態によれば、衛星テーブルにおいて、ターンテーブルの回転時に停止を維持し、ターンテーブルの停止時に回転動作を行うが、その動作時間はターンテーブルの動作時間と比較し、回転時間は短く停止時間は長い。そのため、ターンテーブルの停止時において、電子部品を受け取り、4分の1回転し、次の電子部品を受け渡す、という動作を行い得るとともに、ターンテーブルよりも停止時間を十分に確保することにより、この停止時間内に一連の動作を終了させればよいので、吸着ノズルの上昇・下降動作を緩やかにすることができ、衝撃の緩和を図ることができる。また、相対的に処理時間の長いマーキングあるいは外観検査を確実に行うことが可能となる。
【0042】
また、衛星テーブルは従来のサブテーブル機構に比べ、サイズ縮小化、機構簡単化及び制御簡易化により、高速処理が可能となる。このことを図13を用いて説明する。図13(a)に示すように、従来のメインテーブル・サブテーブル方式では、電子部品の受渡し及び受取りの加工点を2ヵ所必要としていたため、メインテーブルの回転タイミングでサブテーブルも回転しなければならなかった。したがって、電子部品の受渡し・受取りに伴う制御の高速化が困難であった。また、電子部品の受渡し・受取りの加工点を2ヵ所設けていたので、その分のスペースも必要であった。
【0043】
これに対し、図13(b)に示すように、本実施形態の衛星テーブルによれば、電子部品の受渡し・受取りの加工点を1ヵ所とし、保持機構1回の上昇・下降動作及び衛星テーブルの回転だけで済むので制御が簡単となり高速処理が可能となる。
【0044】
さらに、衛星テーブルの中心軸をターンテーブル円周方向外側に傾けて構成したことにより、水平面上にテーブルを設ける場合に比して、ターンテーブルと工程処理ユニットとの間隔を狭めることができ、装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0045】
このように、衛星テーブルを設け、1つのターンテーブル内にすべての工程処理ユニットを納めたことにより、サブテーブルを設ける必要がなく、電子部品の受渡し・受取りの加工点を、従来の2ヵ所から1ヵ所に簡易化することができる。また、受渡し・受取りに伴う制御の簡易化を図ることができるので、高速処理及び装置の簡易化を図ることができるようになる。さらに、広いスペースを必要とするマーキングユニットをターンテーブルから取り除き、別ユニット化することができる。
【0046】
また、本実施形態のマーキングユニット5fは、レーザマーキング本体31を回転可能な支持機構により構成しているため、プレート32ごとピン36を中心に回転することができる。回転位置が決まると、固定ネジ37によりその位置及び角度を固定することができる。したがって、衛星テーブル10のメンテナンス時等、マーキングユニット5fを使用しない場合には、レーザマーキング本体31を上方に固定しておくことができる。ため、メンテナンスの邪魔となることがない。
【0047】
また、レーザマーキング本体31のレーザ照射部に防塵用フィルム38及び防塵カバー39が設けられていることにより、レーザマーキング時に発生するススがレーザマーキングのレンズに付着するのを防止することができる。さらに、防塵用フィルム38は、レーザマーキング本体31に対して着脱可能に設けられているため、フィルムがススで汚れるたびにワンタッチで交換することができる。
【0048】
防塵カバー39は、レーザマーキング本体31の照射部分をすっぽり包み込むようにボックス形状に構成されており、この防塵カバー39からはチューブ40が引き出され、集塵機41にてススを吸収することができるため、レーザマーキング時に発生するススを効率よく吸収することが可能となっている。
【0049】
[2.第2の実施形態]
[2−1.構成]
第2の実施形態は、第1の実施形態における衛星テーブルの構成並びにターンテーブルと衛星テーブルとの動作タイミングに改良を加えたものである。なお、第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、特に変更がない場合は説明を省略する。
【0050】
図7に示すとおり、ターンテーブル3の周囲には、例えばマーキングユニット5fの下流側に、小型の衛星テーブル50a〜50dが4つ連続して設けられている。そして、この衛星テーブル50a〜50dのターンテーブル3からみて外延側には、電気特性検査ユニット(以下、「テストコンタクト」という。)5nが各衛星テーブルごとに設けられている。
【0051】
この衛星テーブル50a〜50dは、すべて同様の構成からなり、図8の断面図に示すとおり、電子部品Sを搭載する搭載面51がテーブルの直径上に一対、すなわち2つ設けられている。また、この搭載面51は電子部品Sを吸着保持する吸着孔52を備え、この吸着孔52から図示しないバキューム装置へ連通することによって、載置される電子部品Sが吸着保持されるように構成されている。
【0052】
また、この衛星テーブル50a〜50dは、図7又は図8に示すように、ターンテーブル3に設けられた吸着ノズル6aの中心位置と上下同位置に設けられた電子部品Sの受渡し位置Tと、そこから180度回転した位置にテストコンタクトに電子部品Sを受け渡す処理位置Dとを備えている。すなわち、この衛星テーブル50a〜50dは、ターンテーブル3の吸着ノズル6aに保持されて搬送されてくる電子部品Sを載置面51に載置することにより受け取り、受け取った電子部品Sを載置面51上で吸着保持したまま180度回転して、工程処理機構に受け渡すように構成されている。
【0053】
なお、本実施形態では、工程処理の一例としてテストコンタクト5nの処理に衛星テーブル50a〜50dを用いることとしているが、第1の実施形態と同様、マーキングユニット又は外観検査ユニット等、どの工程処理ユニットにおいても用いることは可能である。
【0054】
[2−2.作用]
次に、衛星テーブル50a〜50dの作用について、ターンテーブル3の間欠回転タイミング、吸着ノズル6aの上下動作のタイミング、テストコンタクトの処理タイミングとについて、図9のタイミングチャートと図10の概念図を用いて説明する。
【0055】
まず、前工程を終了し、パーツフィーダ等の搬送手段を介して、図7に示す供給機構4から、本実施形態の電子部品の処理装置1へ搬送されてきた電子部品Sは、吸着ノズル6aに保持された状態で、ダイレクトドライブモータ2の駆動によるターンテーブル3の間欠回転に伴って、各工程処理ユニット5において順次各工程処理が施されながら、電子部品Sは衛星テーブル50上まで搬送されてくる。
【0056】
図9に示すように、衛星テーブル50a〜50dは、ターンテーブル3が4サイクル回転するうち、1度のみ電子部品Sを受け取り、受渡し、また回転するものである。これを図10を用いて説明すると、仮に、電子部品aが処理開始後、最も最初に搬送される電子部品であるとすると、衛星テーブル50a〜50dは、ターンテーブル3が回転と停止を1サイクルとして4サイクルするまで、動作をしないため、初期状態には、電子部品aが衛星テーブル50aから衛星テーブル50dまで進んだ状態、すなわち図10の(1)に示した状態となる。これを図9においても、(1)として示す。
【0057】
次に、ターンテーブル3が4サイクル動作をした後であるため、図9に示すように、吸着ノズル6aが下降し、真空破壊して衛星テーブル50の載置面51に受け渡すと、載置面51の吸着孔52から電子部品は真空吸着される。そして、この状態で、衛星テーブル50a〜50dは、一斉に回転する。なお、この間、図9に示すようにテストコンタクトはOFFの状態となっている。
【0058】
衛星テーブル50a〜50dが、180度回転し、停止すると、衛星テーブル50は、電子部品a〜dをテストコンタクト5nに受渡し、テストコンタクト5nでは電気特性検査が行われる。次に、ターンテーブル3は、間欠回転し、図10に示す(2)の状態、すなわち、次の電子部品eが吸着ノズル6aに保持され、衛星テーブル50a上に搬送されてくる。
【0059】
衛星テーブル50a〜50dは、ターンテーブル3が4サイクル動作するまでは電子部品Sの受け取り、受渡し及び回転動作を行わない。すなわち、ターンテーブル3が4サイクル動作する間は、図9に示すように、テストコンタクトが電気特性検査を継続的に実行している。
【0060】
ターンテーブル3は、図9又は図10の(3),(4),(5)と進む。そうすると、図10に示すように、ターンテーブル3の吸着ノズル6a側、すなわち、受渡し位置Tには、電子部品e〜hが保持された状態となる。また、衛星テーブル50a〜50dの処理位置Dにおける載置面51上には、電子部品a〜dが保持された状態となる。
【0061】
この状態から、処理位置Dにおいて電子部品a〜dの電気特性検査がOFFになるとともに、衛星テーブル50a〜50dは吸着ノズル6aから電子部品e〜dを受渡し位置Tで載置面51に載置して受け取り、次に、180度回転して、図10(6)に示す状態となり、吸着ノズル6aに電気特性検査の終了した電子部品a〜dを受け渡す。電子部品a〜dを吸着ノズル6aに受け渡した後は、テストコンタクト5nが電子部品e〜hに対する電気特性検査を開始する。以上のように、処理がなされた電子部品a〜dは、次工程へと順次搬送されていくこととなる。また、電子部品e〜hに対しては、図9又は図10において示した(2)〜(6)の処理が繰り返される。
【0062】
[2−3.効果]
以上のような本実施形態によれば、衛星テーブルは、ターンテーブルの複数サイクル(ここでは、4サイクル。)の動作のうち、最後のサイクルにおける停止時間内に、電子部品を受取り、工程処理位置に搬送することによって電気特性検査処理を施す。そして、ターンテーブルが再び所定サイクル動作した後、回転しターンテーブルに処理の済んだ電子部品を受渡す。これにより、他の工程処理に比較して処理時間の長い電気特性検査において、その処理時間分衛星テーブルを用意し設置することによって、他の工程処理に影響を与えることなく工程処理時間を確保することができる。
【0063】
例えば、ターンテーブル周囲に、すべての工程処理ユニットを均等に並べて、特に衛星テーブルも設けず処理を行った場合には、ターンテーブルの停止時間を最も長い処理時間に合わせなければならなくなる。そのため、本来短時間で処理が終わる外観検査等では、必要以上に停止時間が長くなり、時間をもてあますこととなってしまう。一方で、本実施形態では、衛星テーブルを複数設け、ターンテーブルが複数回回転する間に1回回転して、工程処理ユニットに電子部品を受け渡すような構成とすることによって、ある特定の工程処理ユニットについてのみ処理時間を長くとることができるようになる。
【0064】
より具体的に言えば、衛星テーブルを3つ連続的に設け、これらの衛星テーブルにおける電子部品の受け取り、受渡し及び回転の処理をターンテーブルが3サイクル回転するうちの1回とすれば、ターンテーブルの3サイクル分の時間を工程処理ユニットによる工程処理に費やすことができる。また、衛星テーブルが2つであれば、ターンテーブルの2サイクル分の時間を工程処理に費やすことができるし、5つであれば5サイクル分の時間を工程処理に費やすことができる。
【0065】
このように、衛星テーブルの数を任意に設定することによって、各工程処理の処理時間に応じた柔軟な処理が可能となり、全体として処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0066】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、次のような他の実施の形態も包含するものである。すなわち、衛星テーブルを円形のターンテーブル状で構成したが、本発明では、この構成に限られることなく、受け取り位置及び受渡し位置を共通にしターンテーブルの停止中に保持機構から電子部品を受け取るとともに工程処理済みの電子部品を受け渡すことのできる構成であれば、例えば、三角形で構成する等、その形状あるいは搭載箇所の数は適宜変更可能である。
【0067】
また、第1の実施形態では、衛星テーブルの中心軸を傾け、より省スペース化を狙ったが、中心軸を垂直に設けても本発明の作用効果を奏することができることは言うまでもない。逆に、第2の実施形態では、衛星テーブルの中心軸を垂直に設ける態様を示したが、この実施形態においても、より省スペース化を狙って衛星テーブルの中心軸を傾けて構成することも可能である。
【0068】
上記実施形態では、マーキングユニットと外観検査ユニットを図1に示すように異なる位置に設け、それぞれの工程において衛星テーブルを設けていたが、本発明はこのような場合に限られるものではない。すなわち、図11に示すように、同一の衛星テーブル上に、複数種類の工程処理、例えば、マーキングユニット5lと外観検査ユニットmを衛星テーブル10上の異なる処理位置に設け、一つの衛星テーブル上で、複数種類の工程処理を同時に処理することも可能である。
【0069】
この場合のタイミングチャートは、図12に示すようになる。この場合、タイミングチャートに示すように、衛星テーブル上に設ける複数種類の工程処理は、処理時間が近似するものであることが望ましい。これにより、図1に示した外観検査ユニットをマーキングユニットとターンテーブルに対して同一の処理位置に設けることができ、結果として、工程処理位置の数を減少させることができるので、装置全体の簡易化・シンプル化を図ることができるようになる。
【0070】
さらに、上記実施形態では、衛星テーブルを介在させて設ける工程処理ユニットとしてマーキングユニットと外観検査ユニットを例に挙げたが、衛星テーブルを用いる工程処理を何にするかは、装置の目的等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…電子部品の処理装置
2…ダイレクトドライブモータ
3…ターンテーブル
4…供給機構
5,5a〜5k…工程処理ユニット
5f,5l…マーキングユニット
5i,5m…外観検査ユニット
5n…電気特性検査ユニット
6…保持ユニット
6a…保持機構
7…駆動ユニット
10,10a,10b…衛星テーブル
21…搭載面
22…吸着孔
31…レーザマーキング本体
32…プレート
33…支持台
34…受台
35…ストッパ
36…ピン
37…固定ネジ
38…防塵用フィルム
39…防塵カバー
40…チューブ
41…集塵機
D…電子部品の処理位置
S…電子部品
T…電子部品の受渡し位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を保持する保持機構を複数備え当該保持機構により電子部品を保持ながら回転と停止を1サイクルとして繰り返して間欠的に回転搬送するターンテーブルと、前記ターンテーブルの外周に設けられた複数の工程処理機構とを備える電子部品の処理装置において、
前記ターンテーブルと前記工程処理機構との間には、前記保持機構から電子部品を受取り前記工程処理機構の処理位置へ搬送し、当該工程処理機構において所定の複数種類の工程処理を終えた電子部品を再度保持機構へ受け渡す衛星テーブルが少なくとも一つ設けられ、
前記衛星テーブルは、前記保持機構から電子部品を受け取る位置と、前記工程処理機構において電子部品を処理する位置と、前記保持機構へ工程処理後の電子部品を受け渡す位置とを備え、
前記衛星テーブルにおける電子部品の前記保持機構からの受け取り位置と前記保持機構への受渡し位置とは共通であり、
前記衛星テーブルは、前記ターンテーブルと前記工程処理機構との間に、連続して複数設けられ、この複数の衛星テーブルは、同じタイミングで前記保持機構から電子部品を受取り前記工程処理機構の処理位置へ搬送し、当該工程処理機構において処理を終えた電子部品を再度保持機構へ受け渡すように構成され、
前記衛星テーブルが、前記保持機構から電子部品を受け取り受け渡すのは、前記ターンテーブルが前記衛星テーブルの数分、前記サイクルを繰り返した後であることを特徴とする電子部品の処理装置。
【請求項2】
電子部品を保持する保持機構を複数備え当該保持機構により電子部品を保持して回転と停止を1サイクルとして繰り返して間欠的に回転搬送するターンテーブルと、前記ターンテーブルの外周に設けられ電子部品に所定の処理を施す複数の工程処理機構と、前記ターンテーブルと前記工程処理機構との間に設けられ、電子部品の受取り位置において電子部品を受け取り、前記工程処理機構の処理位置へ電子部品を搬送する少なくとも一つの衛星テーブルと、を用いて行う電子部品の処理方法において、
前記衛星テーブルは、前記ターンテーブルが回転している間は停止し、前記工程処理機構の処理位置に電子部品を停止させる処理を行い、
前記衛星テーブルは、前記ターンテーブルがこの衛星テーブルの個数分前記サイクルを繰り返し最後のサイクルの停止時間において、前記保持機構から電子部品を受け取り、回転し、工程処理後の電子部品を前記受け取り位置と同じ位置で前記保持機構へ受け渡す処理を行うことを特徴とする電子部品の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−190114(P2011−190114A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151627(P2011−151627)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2005−302644(P2005−302644)の分割
【原出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(591048070)上野精機株式会社 (60)
【Fターム(参考)】