説明

電子部品の搬送フレームおよび電子部品の製造方法

【課題】簡単な構造で安価に製作でき、搬送時の発塵を抑制することができる搬送フレームおよび電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】ベース層材3と、枠層材2と、電子部品を収容する複数の開口1aを有する位置決め層材1とによりフレーム本体5が構成される。位置決め層材1とベース層材3との間の枠層材2で囲まれた中空部6にばね層材4が装着される。ばね層材4の各開口4aには、位置決め層材1の開口端との間で電子部品を挟圧する弾性力を付与する小ばね部4bがばね層材4と一体的に形成されている。また、ばね層材4の長手方向の一端部には、装着状態で枠層材2の内面に当接して長手方向に沿った弾性力を付与する大ばね部4eがばね層材4と一体的に形成されている。本構成では、ばね層材4のみで、全電子部品が一括して位置決め固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収納して搬送する搬送フレームおよび電子部品の製造方法に関し、特に、電子部品の製造工程において、光学部品や半導体装置等の電子部品の搬送に使用される搬送フレームおよび当該搬送フレームを使用した電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造工程では、ある工程で使用される製造装置から次の工程で使用される製造装置への部品の搬送や、ある工程で使用される1つの製造装置内での部品の搬送や投入、排出等の作業を容易に行うために、搬送フレームが使用されている。従来、搬送フレームは、支持板に形成した凹状の多数の窪み内にそれぞれ電子部品を収納し、この電子部品を収納した搬送フレームが製造装置へ搬送されている。
【0003】
搬送フレームを使用する場合、支持板に設けた凹状の窪みに電子部品を単純に収納すると、窪みの中で電子部品ががたついてしまう。このように窪みの中で電子部品ががたつくと、搬送フレームや電子部品が、互いの衝突により摩耗して発塵する恐れがある。例えば、電子部品が撮像素子を有する光学部品である場合、撮像素子に光を入射させるためにパッケージの光入射面は透明になっている。この場合、発塵により発生したダストが光入射面に付着すると、映像にダストが映り込むという問題を生じる。また、ガラスキャップを被せて撮像素子をパッケージ内部に封止する工程では、ガラスキャップを接着する前に撮像素子に既にダストが付着していると、ガラスキャップを密閉した後はダストの除去が不可能になる。
【0004】
搬送フレーム内での電子部品のがたつきを防止するため、従来技術では、電子部品を収納した際に当該電子部品を押圧固定する手段を備えた搬送フレームが提案されている。例えば、後掲の特許文献1は、位置決め部、押圧片および圧縮ばねにより構成された押圧固定手段が、多数の電子部品を収納する各々の位置決め部(窪み)に個別に設けられた搬送フレームを開示している。本構成では、圧縮ばねが位置決め部を構成する壁面方向に押圧片を付勢している。電子部品は押圧片により位置決め部を構成する壁面に押し付けられて固定される。また、電子部品は圧縮ばねを収縮させて押圧片を固定解除位置にスライドさせた状態で各位置決め部に収容または排出される。
【特許文献1】特開2000−49210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の従来の搬送フレームでは、各々の位置決め部に収納された電子部品が、各位置決め部に設けられた押圧固定手段によって押圧固定される。そのため、電子部品のがたつきに起因する搬送時の発塵が抑制される。しかしながら、電子部品に対する押圧固定手段は、電子部品の個数分だけ各位置決め部に設けられており、しかも、この押圧固定手段は、個々の位置決め部について少なくとも2個以上(特許文献1では、押圧片と圧縮ばね)の動作部品で構成されている。したがって、全体としての部品点数が多く、かつ複雑な構造であり、搬送フレームが高価になってしまう。
【0006】
また、個々の電子部品を搬送フレームに収納したり、搬送フレームから排出したりするためには、その都度、位置決め部に設けられた押圧固定手段を個々に動作させなければならず、電子部品の収納作業および搬出作業が非常に煩雑になる。
【0007】
さらに、上記のように、電子部品の押圧固定手段は部品点数が多いので、その動作の際に部品同士が摩擦し合って摩耗し、この磨耗によって発塵することも考えられる。すなわち、特許文献1に開示された搬送フレームでは、ダストの発生を完全に抑制することができないのである。したがって、特許文献1に記載された搬送フレームを上述のような光学部品の搬送に使用した場合であっても、上述のダスト付着の問題を完全に解決することはできない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、簡単な構造で安価に製作でき、搬送時の発塵を抑制することができる搬送フレームおよび電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明に係る、電子部品を複数収納して搬送する電子部品の搬送フレームは、ベース層材と枠層材と、位置決め層材と、ばね層材とを備える。ベース層材は、平面視において長方形状を有する、平板状の部材である。枠層材は、ベース層材の長手方向の一端側に開放端を有する枠状の部材であり、ベース層材の一方面に固定されている。位置決め層材は、平面視において長方形状を有し、電子部品を収納する複数の開口が長手方向に沿って設けられた平板状の部材であり、ベース層材と対向して枠層材に固定されている。また、ばね層材は、位置決め層材とベース層材との間の枠層材で囲まれた中空部に装着され、装着状態において位置決め層材の各開口と対向する位置に、電子部品を収納する開口を有する部材である。また、ばね層材の各開口には、位置決め層材の開口を通じて収納された電子部品を、位置決め層材の開口端との間で挟圧する弾性力を付与する第1弾性体がばね層材と一体的に突出形成されている。さらに、ばね層材の長手方向の一端部には、中空部に装着された状態で枠層材の内面に当接して長手方向に沿った弾性力を付与する第2弾性体がばね層材と一体的に形成されている。
【0010】
本構成によれば、複数の電子部品を位置決め固定するための部品点数が少なく、かつ簡単な構造であるため、搬送フレームを安価に製作することができる。また、ばね層材のみの付勢力によって全ての電子部品を一括固定する構成であるため、複数の電子部品の収納、排出作業を極めて簡単に行うことができる。さらに、各電子部品が一括固定されるため、搬送時の電子部品のがたつきに起因した発塵が抑制される。加えて、ばね層材が単一の部材により構成されているため、ばね層材の摩擦に起因する発塵も抑制される。また、ばね層材が消耗や破損したときには、ばね層材のみ交換すればよくメンテナンス性にも優れている。
【0011】
上記搬送フレームは、ばね層材の長手方向の他端側両側部にストッパが形成され、枠層材の開放端側の内面に当該ストッパを係止するストッパ受けが形成された構成であることが好ましい。本構成によれば、ばね層材を容易に装着することができるとともに、容易に取り外すことができる。
【0012】
また、ばね層材は、上記第2弾性体の変形量を規制する突起部をさらに備えた構成を採用することもできる。これにより、第2弾性体に過剰な応力が加わって塑性変形して付勢力が喪失するといった不具合の発生を防止することができる。さらに、ばね層材の開口が矩形状であり、上記第1弾性体が、ばね層材の開口の対角方向に弾性力を付与する構成を採用することもできる。これにより、電子部品の保持に寄与する、電子部品と開口内周面との接触面積が増大し、電子部品をより確実に保持することが可能となる。
【0013】
また、ベース層材は、位置決め層材の各開口に対応する位置に厚さ方向に貫通する貫通穴をさらに備えた構成を採用することもできる。これにより、空の搬送フレームあるいは搬送フレームに電子部品を収納する際に、外部から侵入するダストを、貫通穴を通して円滑に排出することができる。また、電子部品の露出面積が増大するため、電子部品を搬送フレームごと洗浄液で洗浄したり、乾燥したりする際の作業効率を向上させることができる。
【0014】
加えて、位置決め層材およびベース層材が、互いに対向する位置に、厚さ方向に貫通する貫通孔をさらに備えた構成を採用することもできる。本構成によれば、電子部品を搬送フレームごと加熱した場合にも、貫通孔により熱変形の発生を防止することができる。このため、例えばダイスボンドやワイヤボンド等を行う際に、予め加熱された加工ステージ上に搬送フレームを載置して真空引きする場合にも、確実に吸着固定することができる。
【0015】
また、電子部品が、半導体素子が搭載されたキャリアにキャップを接着封止する構成を有する場合、位置決め層の上面位置が位置決め層材の開口を通じで収納されたキャリアの上面位置よりも所定高さ分だけ低くなる状態で構成されていることが好ましい。これにより、半導体素子が搭載されたキャリアにキャップを接着封止する際に、接着剤が位置決め層材の表面に付着するといった不具合の発生を有効に防止することができる。
【0016】
さらに、ベース層材、枠層材および位置決め層材からなるフレーム本体が、側端面に、電子部品の種類に応じて本数または間隔が異なる溝状の識別マークをさらに備えた構成を採用することができる。これにより、搬送フレームや電子部品が多種類ある場合でもその識別が可能となり、電子部品や搬送フレームの管理が容易になる。
【0017】
なお、位置決め層材、枠層材、ベース層材およびばね層材は、例えば、ステンレス鋼をエッチング加工することにより、搬送フレームを高精度かつ安価に成形することができる。
【0018】
一方、他の観点では、本発明は、以上の搬送フレームを使用して、電子部品の組立を行う電子部品の製造方法を提供することができる。すなわち、本発明に係る電子部品の製造方法では、まず、上記搬送フレームに組立対象の被加工体が収納される。続いて、搬送フレームに被加工体を収納した状態で、連続する少なくとも2つの組立処理が実施される。
【0019】
例えば、電子部品が、半導体素子が搭載されたキャリアにキャップを接着封止する構成を有する場合、上記連続する少なくとも2つの組立処理は、半導体素子をキャリアにダイスボンドする工程、キャリアに固定された半導体素子に対しワイヤボンドをする工程、ダストを除去する洗浄工程、キャリアにキャップを接着封止する工程を実施する過程での、連続する少なくとも2つ処理である。ここで、連続する少なくとも2つ処理は、搬送フレームによる搬送をともなう処理であり、当該搬送は同一の組立装置内での搬送であるか、異なる組立装置間での搬送であるかは問わない。
【0020】
この電子部品の製造方法によれば、搬送フレームに電子部品を収納固定した状態のままで、搬送や組立を実施できるため、製造スループットを向上させることができる。また、搬送フレームに搭載した状態で組立を行うため、途中で電子部品を出し入れする必要がなく、電子部品の出し入れに起因する発塵も同時に抑制することができる。さらに、組立装置が各電子部品を個々に位置決め固定する機構を備える必要がなく、設備費を抑制することもできる。
【0021】
上記電子部品の製造方法において、連続する少なくとも2つの組立処理は、組立対象の被加工体を収納した搬送フレームを組立装置が備える加工ステージに、真空吸着により吸着固定した状態で実施される処理を含むことができる。当該加工ステージに吸着固定した状態で実施される処理は、例えば、超音波ドライクリーナにより、ダストを除去する処理である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、搬送時の発塵を抑制することができる搬送フレームを簡単な構造で安価に製作することができる。また、当該搬送フレームを使用して電子部品の製造することにより、ダストを発生させることなく電子部品を製造することができる。その結果、電子部品の製造歩留まりを向上させることができる。さらに、当該搬送フレームを使用して電子部品の製造することにより、製造スループットを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、電子部品とは、個片化された半導体チップや半導体チップが実装されたパッケージ状態の半導体装置等の半導体装置および撮像素子を有する撮像装置等の光学部品を含む。また、電子部品には組立途中の被加工体も含まれる。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態における搬送フレームの各構成部品を示す平面図である。また、図2は本実施形態の搬送フレームを示す側面図であり、図3は本実施形態の搬送フレームを示す平面図である。さらに、図4は図2に示すA−A線に沿う断面図である。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の搬送フレームは、位置決め層材1、枠層材2、ベース層材3、およびばね層材4とからなる。各層材1〜4は、例えば、いずれも薄肉平板状のステンレス鋼を用いて、外形を含め全ての形状をエッチング加工によって成形することができる。
【0026】
位置決め層材1は、図1(a)に示すように、平面視において長方形状の外形を有する板状部材であり、その長手方向に沿って電子部品を収納するための複数の開口1aが形成されている。各開口1aの内周部には、内方に向けて突出する部品係止片1bが3箇所に形成されている。また、位置決め層材1の長手方向の一端部には切り欠き1cが形成されている。なお、位置決め層材1の厚さは例えば0.2mmである。
【0027】
枠層材2は、図1(b)に示すように、平面視において位置決め層材1と略同一の外形を有する枠状の板状部材であり、その長手方向の一端側が開放端2aになっている。また、開放端2a側の幅方向両側内面には、凹状のストッパ受け2bが形成されている。なお、枠層材2の厚さは例えば0.4mmである。
【0028】
ベース層材3は、図1(c)に示すように、平面視において位置決め層材1と略同一の外形を有する板状部材であり、その長手方向の一端側に位置決め層材1の切り欠き1cに合致する形状の切り欠き3aが形成されている。なお、ベース層材3の厚さは例えば0.3mmである。
【0029】
フレーム本体5は、図2に示すように、下方から、ベース層材3、枠層材2および位置決め層材1を順次積層した構造を有している。ベース層材3、枠層材2および位置決め層材1は、例えば、熱圧着によって互いに一体的に固着されている。枠層材2は枠状であるので、フレーム本体5の内部に、上下が位置決め層材1とベース層材3により、周囲が枠層材2によりそれぞれ囲まれた中空部6が形成されている(図4参照)。この中空部6にばね層材4が挿入される。
【0030】
ばね層材4は、電子部品を固定する機能を有する部品であり、フレーム本体5の中空部6に着脱できるように、その厚さは枠層材2の厚さよりも幾分薄くなるように設定されている。例えば、枠層材2の厚さが0.4mmのときには、ばね層材4の厚さは0.3mmに形成される。また、ばね層材4は、図1(d)に示すように、平面視において長方形状の薄肉板材を加工することにより、長手方向に沿って複数の開口4aが形成されるとともに、各開口4aの一辺から内方に向けて第1弾性体としての小ばね部4bが突出形成されている。本実施形態では、小ばね部4bは、開口4aの内方に延びた棒状部4b1と、この棒状部4b1の先端部に形成された瘤状の押圧部4b2とからなる。各開口4aは、位置決め層材1の各開口1aに対応して設けられている。また、図3に示すように、フレーム本体5にばね層材4を装着した際には、小ばね部4bの押圧部4b2と位置決め層材1の開口1aに形成された3箇所の部品係止片1bとが、開口1aの内方に向かって4方向から4方向から突出する状態になる。
【0031】
さらに、ばね層材4の長手方向の一端側には第2弾性体としての大ばね部4eが形成されている。本実施形態では、大ばね部4eは、S字形に屈曲した屈曲部分が幅方向に左右対称にそれぞれ形成された構造を有しており、この屈曲部が弾性変形することによってばね性が付与されている。また、ばね層材4の他端側には切り欠き4fが形成されるとともに、幅方向外方に向けて楔状のストッパ4gが左右に突出形成されている。ばね層材4の切り欠き4fは、位置決め層材1の切り欠き1cおよびベース層材3の切り欠き3aよりも長手方向の形状(切り欠きの深さ)が小さくなる状態で形成されている。さらに、各ストッパ4gに近接して、ばね層材4の長手方向に伸びるスリットと幅方向(短手方向)に伸びるスリットとが一体に形成されたL字状の切り抜き部4hが形成されている。
【0032】
小ばね部4bは、前述の位置決め層材1の開口1a内に位置する1つの部品係止片1b(対向する部品係止片1b)との間で方形をした電子部品を挟圧する弾性力を付与する。また、大ばね部4eは、図4に示すように、枠層材2の内面に当接してフレーム本体5の長手方向に沿った弾性力を付与する。したがって、ばね層材4の小ばね部4bと大ばね部4eの付勢方向は共に一致している。
【0033】
図5は、ばね層材4のフレーム本体5への装着方法を示す説明図である。図5(a)に示すように、ばね層材4を、フレーム本体5の位置決め層材1とベース層材3とで上下挟まれた中空部6に枠層材2の開放端2a側から挿入していくと、枠層材2の内縁とばね層材4のストッパ4gとが接触する。当該状態からばね層材4を枠層材2の内方にさらに押し込むと、図5(b)のように、ストッパ4g近傍の切り抜き部4hがばね層材4を構成する板材の弾性によってつぶれることでストッパ4gが弾性変形する。
【0034】
さらに、ばね層材4を内方に押し込むと、図5(c)のように、大ばね部4eが枠層材2の端部内面に当接して変形するとともに、ストッパ4gが枠層材2のストッパ受け2bの部分に到達する。上述のように、ストッパ受け2bは凹状になっているため、弾性変形していたストッパ4gが自由状態となり、切り抜き部4hの形状が復元する。すなわち、ストッパ4gがストッパ受け2b内に進入する。
【0035】
その際、大ばね部4eの変形によって、ばね層材4は枠層材2の開放端2a側に付勢されるが、ストッパ4gがストッパ受け2bに係止されるため、ばね層材4がフレーム本体5から飛び出ることはなく、中空部6内に固定される。また、ばね層材4のストッパ4gがストッパ受け2bに係止された状態では、図3に示すように、小ばね部4bの一部が位置決め層材1の開口1aを通じて露出する。さらに、ばね層材4の切り欠き4fがフレーム本体5の切り欠き1c(3a)から露出する。
【0036】
図6は、上述の搬送フレームへの電子部品の収納方法を示す説明図である。搬送フレームに電子部品を収納する前の状態では、フレーム本体5の中空部6にばね層材4が装着されている。このため、図3に示したように、ばね層材4の小ばね部4bの一部が位置決め層材1の開口1aを通じて露出するとともに、切り欠き4fもフレーム本体5から露出している。
【0037】
搬送フレームへ電子部品の収納する場合、まず、フレーム本体5から露出しているばね層材4の切り欠き4fをフレーム本体5の内方に向けて押し込む。このとき、小ばね部4bは中空部6の内方に入り込み、図6(a)に示すように、平面視では、位置決め層材1の開口1aから見えなくなる。図6(b)は、当該状態での、枠層材2とばね層材4の様子を示す図である。図6(b)に示すように、大ばね部4eは枠層材2の端部内面に当接して圧縮変形している。また、本実施形態では、当該状態で、平面視において、位置決め層1の各開口1aがばね層材4の各開口4a内に位置するように、ばね層材4の各開口4aの長手方向の開口幅が、位置決め層1の各開口1aの長手方向の開口幅よりも大きくなっている。
【0038】
小ばね部4bが位置決め層材1の開口1aから見えなくなった状態で、図6(a)に示すように、電子部品7が位置決め層材1の開口1aへ収納される。上述のように、当該状態においても、位置決め層材1の開口1aとばね層材4の開口4aとが重なっているため、電子部品7は開口4aおよび開口1a通じて露出したベース層材3に接触した状態で、開口1aおよび開口4a内に収納される。なお、開口1aに既に電子部品7が収納されている場合には、当該状態で、電子部品7を開口1aから取り出すことが可能となる。
【0039】
電子部品7を位置決め層材1の開口1aを通じて搬送フレームに収納した状態で、ばね層材4の押し込みを解除すると、大ばね部4eの圧縮変形による付勢力により各開口4aの小ばね部4bは、ばね層材4の移動にともなって枠層材2の開放端2a側に向けて移動する。そして、小ばね部4bと位置決め層材1の部品係止片1bとの間で電子部品7が挟圧されて固定される。本実施形態では、押圧部4b2が電子部品と実質的に点接触する。この場合、電子部品7は、枠層材2の厚さを超えた分が位置決め層材1の部品係止片1bに係止されることになる。このため、本実施形態では、枠層材2の厚さは収納する電子部品7の厚みよりも小さくなるように予め設計されている。また、各電子部品7を位置決め層材1の各開口1a内に収納した場合に、小ばね部4bが位置決め層材1の部品係止片1bとの間で確実に各電子部品7を押圧してこの開口1a内でがたつきが生じないように、大ばね部4eの付勢力が予め設計される。
【0040】
一方、ばね層材4は、図5(b)に示したように、ばね層材4のストッパ4gを弾性変形させて枠層材2のストッパ受け2bによる係止を解除することにより、フレーム本体5から抜き取ることができる。したがって、電子部品7の収納、取り出し動作の繰り返しによって、ばね層材4が消耗(小ばね部4bまたは大ばね部4eの付勢力の低下)または破損等した場合にも、ばね層材4のみを容易に交換することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態の搬送フレームは、各層材1〜4がエッチングにより高精度に成形することができるとともに、位置決め層材1、枠層材2、ベース層材3を互いに熱圧着により一体化してフレーム本体5を形成し、このフレーム本体5にばね層材4を着脱可能に装着する構成を有している。このため、電子部品7を位置決め固定するための部品点数が少なくて済み、かつ簡単な構造であるため、搬送フレームを安価に製作することができる。また、多数の電子部品を一度に収納できるため、電子部品の搬送が容易になる。
【0042】
また、1枚で構成されたばね層材4のフレーム本体5内方への押し込み動作を繰り返すことで、搬送フレームに収納された全ての電子部品を一括して同時に固定あるいは開放することができるので、多数の電子部品7の収納、排出を簡単に行うことができる。
【0043】
また、各電子部品7は、位置決め層材1の開口1a内に確実に固定されるので、電子部品ががたついて発塵する恐れはなく、さらに、電子部品を固定するための可動部が少ないので、搬送フレームの構成部材の摩耗に起因したダスト発生の恐れも極めて少ない。このため、光学部品を搬送する際にも好適に使用することができる。
【0044】
さらに、位置決め層材1、枠層材2、ベース層材3が互いに熱圧着により一体化されているので、各層材1〜3間に隙間がなく、各層材1〜3間からのダストの侵入を防ぐことができる。したがって、従来のように、隙間に侵入したダストが再び飛散され、製造途中の電子部品を収納した搬送フレームごと処理する製造装置内部へダストが拡散することを防止できる。
【0045】
さらにまた、電子部品の製造工程中には、この搬送フレームに電子部品を収納した状態のままで液体洗浄するような処理工程が存在するが、その処理工程で洗浄した後に搬送フレームを構成する各層1〜3材間に洗浄液が残留することがなく、各層材1〜3間の最も乾燥しにくい細部にも水分が侵入し難いため、乾燥効率を向上させることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、複数の電子部品を一列に整列させて収納する搬送フレームを例示したが、複数列に整列させて収納する搬送フレームを構成することも可能である。また、上記では、電子部品を収容していない状態で、フレーム本体からばね層材が脱落することを防止するため、ばね層材にストッパを形成し、枠層材にストッパ受けを形成した。しかしながら、ストッパおよびストッパ受けを備えない構成であっても、電子部品を押圧固定することが可能である。また、電子部品を収容していない状態で、フレーム本体からばね層材が脱落することを防止する構造は、上述の構造に限らず、任意の構造を採用することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、ばね層材4の大ばね部4eとして、S字形に屈曲した屈曲部分が幅方向に左右対称に配置した構造を採用した。しかしながら、大ばね部は、当該構造に限定されるものではなく、他の構造によっても実現可能である。そこで、本実施形態では、異なる大ばね部の構造を有するばね層材4について説明する。図7は本発明の第2の実施形態における搬送フレームのばね層材4を示す要部平面図である。図7において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。
【0048】
大ばね部4eは、例えば、図7(a)に示すように、船底形に形成することができる。当該構造では、枠層材2に接触する先端部から伸びる2箇所の曲線部分が弾性変形して付勢力を得ることができる。また、大ばね部4eは、図7(b)に示すように、円弧状の一端を片持ちに形成し、1箇所の曲線部分(円弧部分)が弾性変形して付勢力を得る構成とすることもできる。さらに、大ばね部4eは、図7(c)に示すように、S字状の一端を片持ちに形成し、S字状を構成する3箇所の曲線部分が弾性変形して付勢力を得る構成とすることもできる。
【0049】
このように、ばね層材4の大ばね部4eの形状を種々設定することによって、大ばね部4eのばね定数と最大たわみ量とを異ならせることができる。したがって、大ばね部4eの形状を適宜選択することにより、電子部品7を収納保持する際の大ばね部4eによる付勢力を予め調整することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
第2の実施形態において説明したように、ばね層材4の大ばね部4eとして、種々の構造を採用することができる。大ばね部4eのばね定数と最大たわみ量は、上述のように、大ばね部4eの構造に依存して異なるが、ばね層材4をフレーム本体5内に押し込む際、大ばね部4eに弾性限度を超える荷重が加わると、大ばね部4eが塑性変形して所定の付勢力を得ることができなくなる恐れがある。そこで、本実施形態では、大ばね部4eの塑性変形を防止することができる大ばね部4eの構成について説明する。図8は本発明の第3の実施形態における搬送フレームのばね層材4を示す要部平面図である。図8において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。
【0051】
本実施形態のばね層材4は、図8(a)から図8(c)に示すように、大ばね部4eを支持するばね層材4の基端部に、大ばね部4eの形成側に向けて突出する突起部4iを備えている。突起部4iは、ばね層材4をフレーム本体5内に押し込む際、弾性変形した大ばね部4eに当接し、ばね層材4がそれ以上フレーム本体5内に押し込まれることを防止する機能を有する。すなわち、突起部4iの突出量は、ばね層材4をフレーム本体5内に押し込む際に、押し込み量が、大ばね部4eに塑性変形が生じない範囲となる長さに設定される。なお、図8(a)は、第1の実施形態で説明した大ばね部4eを備えたばね層材4に突起部4iを設けた状態を示している。また、図8(b)は、第2の実施形態で図7(a)を用いて説明した大ばね部4eを備えたばね層材4に突起部4iを設けた状態を示し、図8(c)は、第2の実施形態で図7(b)を用いて説明した大ばね部4eを備えたばね層材4に突起部4iを設けた状態を示している。
【0052】
本構成によれば、ばね層材4をフレーム本体5内に押し込む際に大ばね部4eが塑性変形することを防止することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
上記第1の実施形態では、ばね層材4の小ばね部4bが、開口4aの内方に延びた棒状部4b1と、棒状部4b1の先端部に形成された瘤状の押圧部4b2とからなる構造を採用した例を説明した。しかしながら、小ばね部4bは、当該構造に限定されるものではなく、他の構造によっても実現可能である。そこで、本実施形態では、第1の実施形態とは異なる小ばね部の構造を有するばね層材4について説明する。図9は本発明の第4の実施形態における搬送フレームのばね層材4を示す要部平面図である。図9において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。また、図9では、位置決め層材1の開口部1aを点線で示している。
【0054】
図9に示すように、本実施形態のばね層材4は、小ばね部4bが、第1の実施形態に比べて、開口4a内への突出長さが長い棒状部4b1と、開口4aの一隅に位置するように形成された押圧部4b2とにより構成されている。ここで、押圧部4b2の電子部品7と接触する面は、第1の実施形態とは異なり、平面により構成されている。本構成によれば、小ばね部4bは、ばね層材の矩形状開口の対角方向に弾性力を付与する。すなわち、押圧部4b2が電子部品7の角部を対角方向へ押圧し、位置決め層材1の開口1aの2つの部品係止片1bとの間で電子部品7を係止する。
【0055】
例えば、第1の実施形態において説明した、小ばね部4bの押圧部4b2が方形の電子部品7の一側面に点接触し、電子部品7を位置決め層材1の開口1a内に位置する1つの部品係止片1bに押圧して電子部品7を保持する構成では、搬送フレームに収納した状態で電子部品7を超音波洗浄すると、超音波振動のために電子部品7が搬送フレームから脱落する確率もゼロではないことが予想される。
【0056】
これに対し、本実施形態の小ばね部4bの形状によると、小ばね部4bの押圧部4b2が電子部品7を2つの部品係止片1bに押圧して電子部品7を保持するため、超音波洗浄時に、超音波振動で電子部品7が脱落する可能性をより低減することができる。
【0057】
(第5の実施形態)
上記第1の実施形態では、図1(c)に示したように、切り欠き3aの他には、特に何の加工も施されていない、平面視で長方形状のベース層材3を採用した。しかしながら、ベース層材3を採用することも可能である。図10は本発明の第5の実施形態における搬送フレームのベース層材3を示す平面図である。図10において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。また、図10では、位置決め層材1の開口部1aを点線で示している。
【0058】
本実施形態では、ベース層材3において、位置決め層材1の開口1aの中央に対応した位置に、位置決め層材1の厚さ方向に貫通する貫通穴3bが形成されている。また、位置決め層材1の開口1aの四隅に対応した位置に、位置決め層材1の厚さ方向に貫通した貫通穴3cが形成されている。
【0059】
この構成にすると、電子部品を取り出して空になった搬送フレームを別の工程へ搬送する際や、空の搬送フレームに電子部品を収納する際に、外部から侵入するダストをベース層材3の各貫通穴3b、3cを通して円滑に外部に排出することができる。このため、搬送フレーム内にダストが堆積することを防止することができる。
【0060】
また、搬送フレームに収納した電子部品を搬送フレームごと洗浄液で洗浄する際には、各貫通穴3b、3cを通して電子部品と洗浄液との接触面積を増加させることができ、また、乾燥時には、収納した電子部品と乾燥炉内の高温雰囲気との接触面積を増加させることができる。このため、洗浄時や乾燥時の作業効率を向上させることができる。
【0061】
(第6の実施形態)
ところで、電子部品の製造工程では、約230℃に加熱した加工ステージ上でダイスボンドやワイヤボンドなどの組立処理を行うことがある。その際、複数の電子部品を搬送フレームに搭載したままこれらの処理を行うと、各工程で電子部品を取り出したり再度収納したりする必要がなく、工程が簡略化されるという利点がある。
【0062】
しかしながら、搬送フレームに電子部品を搭載した状態のままで上記の処理を実施する場合、搬送フレームを加熱した加工ステージに載置した際、搬送フレームが凹型に円弧状に反り返る問題が新たに発生する。その対策として、機械的な手段で搬送フレームを固定することも可能であるが、ダスト発生を抑制する観点では、搬送フレームへの機械的な接触回数は極力少なくする必要がある。このため、機械的な手段を使用することなく、ダイボンダ(ダイボンディング装置)やワイヤボンダ(ワイヤボンディング装置)の加工ステージに設けた真空穴からの排気によって搬送フレームをステージに吸着固定することが好ましい。ところが、この方式では上記のように熱変形により搬送フレームにそりが発生すると、搬送フレームを加工ステージに確実に吸着させることができない。そこで、本実施形態では、加工ステージに確実に吸着固定できる搬送フレームの構成について説明する。
【0063】
図11は本発明の第6の実施形態における搬送フレームを示す平面図である。図11において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。図11に示すように、本実施形態では、熱変形対策として搬送フレームにスリット(貫通孔)を設けている。すなわち、本実施形態の搬送フレームは、位置決め層材1とベース層材3のそれぞれにおいて、互いに対向する位置に設けられた複数個の長方形のスリット8を備えている。例えば、図11(a)では、位置決め層材1の各開口1aの間に、スリット8を設けている。また、図11(b)では、位置決め層材1の各開口1aの周囲を囲む状態でスリット8を設けている。このように、スリット8の数および大きさは、搬送する電子部品の種類に応じて適宜変更することができる。
【0064】
このようにスリット8を設けることで、加工ステージと接するベース層材3の裏面と、加工ステージから最も離れている位置決め層材1の表面との温度変化を緩やかにするとともに、熱応力を逃がすことができる。その結果、搬送フレームが加熱された際の熱変形を抑制することができる。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、加熱した加工ステージ上でダイスボンドやワイヤボンドなどの処理を行うことができる。また、加熱変形が抑制されるため、加工ステージに真空穴を設け、真空によって搬送フレームを加工ステージに吸着しいて、加工ステージ上へ搬送フレームを確実に固定することができる。
【0066】
特に、電子部品が撮像素子や受発光素子などの光学素子を有する光学部品である場合、そのパッケージ部品としてセラミック製のキャリア(以下、単にセラミックキャリアと称する)が使用されることがある。このようなセラミックキャリアへのマーキング、セラミックキャリア内へ半導体素子を固定するダイスボンド、半導体素子をキャリア上の他の半導体素子あるいはセラミックキャリア上の配線と結線するワイヤボンディング、洗浄、乾燥およびガラスキャップの接着という一連の工程を、同一の搬送フレームに収納した状態で出し入れすることなく実施することが可能となる。
【0067】
(第7の実施形態)
図12は本発明の第7の実施形態における搬送フレームを示す説明図である。図12において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。なお、図12では、右方に平面図を示し、左方に側面図を示している。本実施形態の搬送フレームの特徴は、当該フレーム識別用の識別マークが施されていることである。
【0068】
搬送フレームの具体的な仕様、すなわち、位置決め層材1の開口1aのサイズやばね層材4の小ばね部4bの位置およびサイズは、収納される電子部品の品種に応じて異なる。そのため、電子部品の品種の数だけ搬送フレームの種類が存在する。しかし、電子部品は方形等の類似した形状であることが多く、また、外形寸法も類似していることが多い。そのため、搬送フレームに収納されている電子部品の外観や位置決め層材1の開口1aのサイズ等により搬送フレームに収容されている電子部品の品種や搬送フレームの種類を区別することは難しい。特に、搬送フレームは、各工程への投入、排出、洗浄等を容易にするためにマガジンなどに一時的に積み上げて整列収納されることがある。この場合、搬送フレームは、側面しか目視することができず、搬送フレームに収納された電子部品の寸法形状や電子部品のマーキング印字箇所を目視することが難しい。
【0069】
そこで、本実施形態では、図12に示すように、搬送フレームのフレーム本体5の一部、例えば位置決め層材1の一端部側の表面に数字、ローマ字等の各種の記号を刻印した識別マーク11を付すことで、どの品種の電子部品を収納、搬送するための搬送フレームであるか(あるいは、収納されている電子部品の品種)を容易に識別できるようにしている。なお、この場合の識別マーク11は、例えば位置決め層材1をエッチングで成形する際に同時に刻み込むことができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、フレーム本体5の長手方向の側端面に、厚さ方向に沿って溝状の識別マーク12が形成されている。このように、フレーム本体5の側端面に溝状の識別マーク12を設けておくと、上記のように搬送フレームをマガジンなどに一時的に積み上げて整列収納した場合でも目視による識別が可能である。
【0071】
溝状の識別マーク12は、収納する電子部品の種類ごとに、位置、本数、間隔を変えることができる。例えば、図12(a)に示すように、番号「1111」の識別マーク11が付された搬送フレームがある場合、溝状の識別マーク12として、溝1本をフレーム本体5の側端面の中央に設けている。なお、図12(a)に示す識別マーク11、12が施された搬送フレームは比較的サイズの大きい電子部品7を搬送するものである。また、加熱による反り防止用のスリットは設けられていない。
【0072】
一方、図12(b)に示すように、番号「6666」の識別記号11が付された搬送フレームがある場合、溝状の識別マーク12としては、溝3本をフレーム本体5の側端面に不等間隔にそれぞれ設けている。なお、図12(b)に示す識別マーク11、12が施された搬送フレームは比較的サイズの小さい電子部品7を搬送するものである。また、前述の加熱による反り防止用のスリット8が設けられている。
【0073】
このように、本実施形態の搬送フレームは、マガジンなどに一時的に積み上げて整列収納した場合でも、目視によって識別マーク12を観察することで各搬送フレームの種類の識別が可能である。このため、マガジンにどの品種の電子部品が収納されているか、また品種の異なる電子部品が混入していないかを目視で簡単に確認することができ、電子部品や搬送フレームの管理が容易になる。
【0074】
(第8の実施形態)
続いて、以上で説明した搬送フレームを使用した電子部品の製造方法について説明する。なお、以下では、電子部品が光学素子を有する光学部品であり、光学素子がセラミック製のキャリアに搭載され、その後、ガラス製のキャップで封止されて光学部品が製造される事例について説明する。
【0075】
図13は、上述の搬送フレームを使用した電子部品の製造工程の一部を示す図である。図13(a)は平面図であり、図13(b)は側面図である。また、図14は、図13で示した工程の後に続く製造工程の一部を示す図である。図14(a)は平面図であり、図14(b)は側面図である。図13および図14において、第1の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を付している。
【0076】
図13および図14は、光学素子7aが搭載されたセラミックキャリア7bをガラスキャップ7dで封止する一連の工程を示している。図13(a)および図13(b)は、セラミックキャリア7bの開口縁に沿って接着剤7cを塗布する工程を示し、図14(a)および図14(b)は、セラミックキャリア7b上にガラスキャップ7dを設置する工程を示している。
【0077】
図13(a)および図13(b)に示すように、搬送フレーム10には、撮像素子やフォトダイオード等の光学素子7aがダイスボンドされたセラミックキャリア7bが収納されている。各セラミックキャリア7bの光学素子7aは、同一の搬送フレーム10に収納されたままの状態で、既に洗浄やワイヤボンディングが完了している。そして、当該工程では、図13(a)および図13(b)の中央に示すように、図示しないディスペンサが、セラミックキャリア7bの開口縁に沿って相対的に移動し、開口縁の全周に接着剤7cが塗布される。本工程では、搬送フレーム10に収納された全てのセラミックキャリア7bに対して同一の処理が同時に行われるが、図13(a)および図13(b)では、説明のため、右端、中央、左端の順で処理され、中央のセラミックキャリア7bに接着剤7cが塗布されている状態を示している。
【0078】
搬送フレーム10上の全てのセラミックキャリア7bの開口縁に接着剤7cが塗布されると、図14(a)および図14(b)に示すように、ガラスキャップ7dがセラミックキャリア7bに重ねて配置されるとともに押圧され、ガラスキャップ7dが接着される。これにより、光学素子7aがセラミックキャリア7b内に密閉される。
【0079】
セラミックキャリア7bの開口縁の全周に塗布された接着剤7cの上にガラスキャップ7dを重ねて押圧する際、接着剤7cは押し広げられることになる。本実施形態では、押し広げられた接着剤7cが位置決め層材1の表面に付着するのを防止するため、位置決め層材1と枠層材2の厚さを最適化している。
【0080】
すなわち、位置決め層材1の表面の位置は、セラミックキャリア7bの上面の位置よりも幾分低くなって段差ΔHを生じるように予め設定されている(図14(b)参照)。例えば、0.2mmの段差ΔHを設ける場合、位置決め層材1の厚さと枠層材2の厚さとを加えた寸法をセラミックキャリア7bの厚さよりも0.2mm小さく設定すればよい。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、ガラスキャップの接着に関連する一連の工程を、同一の搬送フレームに収納した状態で実施することが可能となる。このため、製造スループットを向上させることができる。また、搬送フレームに搭載した状態で組立を行うため、途中でキャリアを出し入れする必要がなく、キャリアの出し入れに起因する発塵も同時に抑制することができる。さらに、組立装置が各キャリアを個々に位置決め固定する機構を備える必要がなく、設備費を抑制することもできる。
【0082】
(第9の実施形態)
図15は、搬送フレームに電子部品を搭載した状態で各種処理を行う場合に、搬送フレームを位置決め固定するための加工ステージを示す図である。図15(a)は縦断面図であり、図15(b)は図15(a)に示すB−B線における横断面図である。
【0083】
搬送フレーム10に電子部品を収納した状態で、半導体素子や光学素子をキャリアに対してダイスボンドやワイヤボンドを実施したり、キャリアにキャップを接着したりする場合、各工程で使用される組立装置の加工ステージとして、図15に示す構成の加工ステージを好適に使用することができる。
【0084】
すなわち、加工ステージ20は、支持台21内に真空引き配管22が形成されている。真空引き配管22は、本管22aと枝管22bとを有し、本管22aは、支持台21の長手方向に沿って延び、その一端が支持台21の端面に形成された真空口23に連通している。また、枝管22bは、その一端側が支持台21表面に開口された吸引口24に連通し、他端側が本管22aに連通している。そして、真空口23を通じて真空引きすることで、真空引き配管22内が負圧となり、支持台21上に載置された搬送フレーム10が吸引口24に吸引されて支持台21の表面に吸着固定される。
【0085】
したがって、このような構成の加工ステージ20を適用すれば、電子部品7を収納した搬送フレーム10ごと加工ステージ20に吸着固定することができる。また、搬送フレーム10上では、個々の電子部品が位置決めされた状態で整列しているため、搬送フレーム10を加工ステージ20に固定することにより複数の電子部品が同時に位置決めされる。このため、組立装置が、各電子部品を個々に位置決め固定する機構を備える必要がなく、設備費を抑制することができる。また、電子部品を固定、解除する時間を省くことができるため、製造スループットを向上させることができる。
【0086】
(第10の実施形態)
本実施形態では、第9の実施形態で説明した加工ステージに搬送フレームを吸着固定した状態で実施する工程の一例である超音波ドライクリーナを使用した洗浄について説明する。図16は超音波ドライクリーナを使用した洗浄の様子を示す説明図である。また、図17は、超音波ドライクリーナの構成を示す斜視図である。
【0087】
上記搬送フレーム10を用いて電子部品を搬送したり、各種の組立処理を行う際には、ダストが侵入するおそれがあるため、各種の組立処理を行う前に予め電子部品およびこれを搭載する搬送フレームを洗浄することが好ましい場合がある。
【0088】
例えば、第8の実施形態(図13、図14)において説明したように、撮像素子やフォトダイオード等の光学素子7aが収納されたセラミックキャリア7bを搬送フレーム10に搭載した状態で、セラミックキャリア7bに接着剤を塗布してガラスキャップ7dを接着する場合、ガラスキャップ7dによる密着後は、セラミックキャリア7b内に封じ込められたダストを除去することは不可能となる。このため、ガラスキャップ7dを接着する直前にセラミックキャリア7bおよび光学素子7aを洗浄する。
【0089】
当該洗浄には、図16、図17に示す超音波ドライクリーナ30を使用することができる。超音波ドライクリーナ30は、第8の実施形態で説明したガラスキャップの接着を実施するガラスキャップ接着装置内に設けられている。当該ガラスキャップ接着装置は、第9の実施形態で説明した構成の加工ステージ20を備え、当該加工ステージ20に搬送フレーム10を吸着固定した状態で洗浄が実施する。
【0090】
図16および図17に示すように、超音波ドライクリーナ30は、クリーナヘッド31を備える。クリーナヘッド31には高圧エアーを供給する高圧エアー配管32と、ダストを含んだエアーを吸引排出するエアー排出配管33とが接続されている。クリーナヘッド31は、図示しない超音波振動子が内蔵するとともに、図17に示すように、超音波振動が付与された高圧エアーを吐出する吐出口31aと、吐出後のダストを含むエアーを吸い込む吸込口31bとを備えている。
【0091】
ガラスキャップ接着装置は、加工ステージ20に搬送フレーム10を吸着固定した状態で、クリーナヘッド31の吐出口31aから搬送フレーム10に向けて超音波振動が付与された高圧エアーを噴出させ、光学素子やセラミックキャリア7b、搬送フレーム10に付着しているダストを吹き飛ばす。このとき、吹き飛ばされたダストを含んだエアーを吸込口31bから吸い込んでエアー排出配管33を経由して外部に排出する。その際、クリーナヘッド31または加工ステージ20を移動走査させることで搬送フレーム10の表面全体のダストを剥離、吸引することができる。
【0092】
この構成の超音波ドライクリーナ30を適用すれば、搬送フレーム10に複数の電子部品を搭載したまま洗浄を実施できるので、従来のように各電子部品を個々に位置決め固定する機構を必要としない。このため、設備費を抑制することができる。また、個々の電子部品を位置決め固定する機構がないため、吐出される高圧エアーや吸引されるエアーの気流を妨げることがなく、洗浄効果を低下させることがない。
【0093】
なお、本実施形態では、光学素子が収納されたセラミックキャリア7bを洗浄する場合について説明したが、これに限らず、搬送フレーム10に他の電子部品が搭載されている場合でも洗浄を行うことができる。
【0094】
また、第10の実施形態では、超音波ドライクリーナ30を適用して電子部品を洗浄する場合について説明したが、電子部品を有機溶剤で洗浄、乾燥する場合でも、本発明の搬送フレームに電子部品を搭載した状態のままで、洗浄機または乾燥炉に収納して洗浄、乾燥することが可能である。
【0095】
以上説明したように、本発明によれば、搬送時の発塵を抑制することができる搬送フレームを簡単な構造で安価に製作することができる。また、当該搬送フレームを使用して電子部品の製造することにより、ダストを発生させることなく電子部品を製造することができる。その結果、電子部品の製造歩留まりを向上させることができる。さらに、当該搬送フレームを使用して電子部品の製造することにより、製造スループットを向上させることができる。
【0096】
なお、以上で説明した各実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記で例示した組立処理に限らず、本発明の搬送フレームに電子部品となる被加工体を収納した状態で、搬送をともなって、連続する少なくとも2つの組立処理を実施すれば、従来に比べて製造スループットを向上させることができるとともに、従来に比べて発塵を抑制した製造工程を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、搬送時の発塵を抑制することができるという効果を有し、搬送フレームおよび電子部品の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態における搬送フレームの各構成部品を示す平面図
【図2】本発明の第1の実施形態における搬送フレームを示す側面図
【図3】本発明の第1の実施形態における搬送フレームを示す平面図
【図4】本発明の第1の実施形態における搬送フレームを示す断面図
【図5】本発明の第1の実施形態における搬送フレームのばね層材をフレーム本体へ組み込む過程を示す説明図
【図6】本発明の第1の実施形態における搬送フレームに電子部品を収納する過程を示す説明図
【図7】本発明の第2の実施形態における搬送フレームのばね層材を示す要部平面図
【図8】本発明の第3の実施形態における搬送フレームのばね層材を示す要部平面図
【図9】本発明の第4の実施形態における搬送フレームのばね層材を示す要部平面図
【図10】本発明の第5の実施形態における搬送フレームのベース層材を示す平面図
【図11】本発明の第6の実施形態における搬送フレームを示す平面図
【図12】本発明の第7の実施形態における搬送フレームを示す説明図
【図13】本発明の第8の実施形態における電子部品の製造過程を示す図
【図14】本発明の第8の実施形態における電子部品の製造過程を示す図
【図15】本発明の第9の実施形態における加工ステージを示す図
【図16】本発明の第10の実施形態における超音波ドライクリーナを使用した洗浄を示す説明図
【図17】超音波ドライクリーナを示す斜視図
【符号の説明】
【0099】
1 位置決め層材
1a 開口
1b 部品係止部
1c 切り欠き
2 枠層材
2a 開放端
2b ストッパ受け
3 ベース層材
3a 切り欠き
3b 貫通穴
3c 貫通穴
4 ばね層材
4a 開口
4b 小ばね部(第1弾性体)
4e 大ばね部(第2弾性体)
4f 切り欠き
4g ストッパ
4h 切り抜き部
4i 突起部
5 フレーム本体
6 中空部
7 電子部品
7a 光学素子
7b セラミックキャリア
7c 接着剤
7d ガラスキャップ
8 スリット(貫通孔)
10 搬送フレーム
11 識別マーク
12 識別マーク
20 加工ステージ
30 超音波ドライクリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を複数収納して搬送する電子部品の搬送フレームであって、
平面視において長方形状を有する、平板状のベース層材と、
前記ベース層材の一方面に固定された、前記ベース層材の長手方向の一端側に開放端を有する枠状の枠層材と、
前記ベース層材と対向して前記枠層材に固定された、平面視において長方形状を有し、電子部品を収納する複数の開口が長手方向に沿って設けられた平板状の位置決め層材と、
前記位置決め層材とベース層材との間の前記枠層材で囲まれた中空部に装着され、装着状態において前記位置決め層材の各開口と対向する位置に、前記電子部品を収納する開口を有するばね層材と、
前記ばね層材の各開口に、ばね層材と一体的に突出形成された、前記位置決め層材の開口を通じて収納された電子部品を、前記位置決め層材の開口端との間で挟圧する弾性力を付与する第1弾性体と、
前記ばね層材の長手方向の一端部に、ばね層材と一体的に形成された、前記中空部に装着された状態で前記枠層材の内面に当接して長手方向に沿った弾性力を付与する第2弾性体と、
を備えたことを特徴とする電子部品の搬送フレーム。
【請求項2】
前記ばね層材の長手方向の他端側両側部にストッパが形成され、前記枠層材の開放端側の内面に前記ストッパを係止するストッパ受けが形成された請求項1記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項3】
前記ばね層材が、前記第2弾性体の変形量を規制する突起部をさらに備えた請求項1または請求項2記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項4】
前記ばね層材の開口が矩形状であり、前記第1弾性体が、前記ばね層材の開口の対角方向に弾性力を付与する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項5】
前記ベース層材が、前記位置決め層材の各開口と対応する位置に厚さ方向に貫通する貫通穴をさらに備えた請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項6】
前記位置決め層材および前記ベース層材が、互いに対向する位置に、厚さ方向に貫通する貫通孔をさらに備えた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項7】
前記電子部品が、半導体素子が搭載されたキャリアにキャップを接着封止する構成を有し、前記位置決め層の上面位置が前記位置決め層材の開口を通じで収納されたキャリアの上面位置よりも所定高さ分だけ低くなる状態で構成された請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項8】
前記ベース層材、前記枠層材および前記位置決め層材からなるフレーム本体が、側端面に、電子部品の種類に応じて本数または間隔が異なる溝状の識別マークをさらに備えた請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項9】
前記位置決め層材、前記枠層材、前記ベース層材および前記ばね層材が、ステンレス鋼をエッチング加工することにより成形された請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子部品の搬送フレーム。
【請求項10】
請求項1記載の搬送フレームを使用して、電子部品の組立を行う電子部品の製造方法であって、
前記搬送フレームに組立対象の被加工体を収納する工程と、
前記搬送フレームに被加工体を収納した状態で、搬送をともなって、連続する少なくとも2つの組立処理を実施する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記電子部品が、半導体素子が搭載されたキャリアにキャップを接着封止する構成を有し、前記連続する少なくとも2つの組立処理が、半導体素子をキャリアにダイスボンドする工程、キャリアに固定された半導体素子に対しワイヤボンディングをする工程、ダストを除去する洗浄工程、キャリアにキャップを接着封止する工程を実施する過程での、連続する少なくとも2つ処理である請求項10記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記連続する少なくとも2つの組立処理が、組立対象の被加工体を収納した搬送フレームを組立装置が備える加工ステージに、真空吸着により吸着固定した状態で実施される処理を含む請求項10記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記加工ステージに吸着固定した状態で実施される処理が、超音波ドライクリーナにより、ダストを除去する処理である請求項12記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−96523(P2009−96523A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270644(P2007−270644)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】