説明

電子部品の気密封止装置

【課題】生産性を向上させかつ品質を向上させることのできる電子部品の気密封止装置を提供する。
【解決手段】気密封止装置1は、制御処理部11と気密チャンバ部12とからなる。気密チャンバ部内にはヒータ12aとヒータ12a上に設置される封止治具12bとを有し、またヒータ12aには熱電対等の温度センサ12cが取り付けられている。制御処理部11は制御部11aとポンプ11bと電源を有する構成である。当該制御処理部11には電気的な制御を行う入出力インターフェイス(制御用の端子)および雰囲気を制御する配管インターフェイス(配管口)の組を1以上有している。当該各インターフェイスを介して追加した気密チャンバ部(追加ユニット)を接続し、動作制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶振動子等のパッケージを気密封止する気密封止型電子部品の気密封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、表面実装型のATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子は、接続配線の施されたセラミックパッケージに励振電極形成された水晶振動板が搭載され、当該パッケージをリッドにより気密封止する構成が汎用されている。当該気密封止は抵抗溶接の一種であるシーム溶接封止や、電子ビーム等のエネルギービームを用いたビーム溶接封止方法を用いたり、金属ろう材や封止用ガラスを加熱炉で溶融接合する方法等が工業的に用いられている。またパッケージ内部は真空雰囲気や不活性ガス雰囲気中に保たれる。
【0003】
特に最近においてはモバイル機器等に代表されるように電子機器の小型化がさらに加速することにより電子部品の小型化が進んでおり、小型化にも適した前記加熱炉を用いた気密封止方法の適用が検討されている。
【0004】
気密封止を金属ろう材で行い、パッケージ内部を真空雰囲気にした例として、特開2000−307367号(特許文献1)をあげる。特許文献1には、水晶振動子を構成するパッケージのベースにシリコン系接着剤を塗布し、水晶片を支持固定し、10- 3 Torr以下の真空中で250℃以上400℃以下、1時間以上10時間以下の熱処理を行った後、真空中でハンダを用いて気密封止を行うことを特徴とする水晶振動子の製造方法が開示されている。
【0005】
またこのように真空中で封止を行うには真空雰囲気中で加熱を行う装置が必要となる。例えば特開2001−4282号(特許文献2)には、真空加熱装置が開示されている。当該真空加熱装置は、カセットに収容した被熱処理物品(ガラス基板)を加熱処理する装置であって、真空加熱室と、この真空加熱室の下方に真空加熱室とゲートバルブを介して連通して設けた冷却室を兼ねる排気室と、上記真空加熱室を覆うようにその外周に配置した加熱手段と、上記真空加熱室および上記冷却室を兼ねる排気室に配管された排気装置と、上記冷却室を兼ねる排気室の内部側壁周囲に配置した冷却手段と、上記真空加熱室と上記冷却室を兼ねる排気室との間で被熱処理物品を収容したカセットを移動させる駆動機構と、を備えていることを特徴とする真空加熱装置、である。この真空加熱装置は真空加熱室と排気室の2室を有する構成であり、これら各室を真空雰囲気にするためにそれぞれに真空ポンプが接続されている。
【0006】
ところで、前述のとおり水晶振動子等の電子部品は小型化が進んでおり、上述のような例えばガラス基板を処理するための大型の真空加熱装置を用いて気密封止を行うと、製造ロットが大きくなる。このような場合、真空加熱室内の温度分布ばらつきが大きくなり、多数個の電子部品において金属ろう材等の接合部材の溶融状況にばらつきが生じ、その結果生産性が低下するとともに、高品質の気密封止型電子部品が得られないという問題点があった。また生産数量に応じて気密封止装置を多数用意した場合、製造コストが増加するという問題点があった。
【特許文献1】特開2000−307367号
【特許文献2】特開2001−4282号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、生産性を向上させかつ品質を向上させることのできる電子部品の気密封止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、小型電子部品の周囲雰囲気を加熱する等電子部品全体を加熱して気密封止するにあたり、小さな気密チャンバ部(加熱処理室)を用い、製造数量に対応させて当該気密チャンバ部を1または複数用いるとともに、1または複数の気密チャンバ部の加熱処理を1つの制御処理部で動作制御する構成により、上記目的を達成しようとするもので、次の各構成により実現できる。
【0009】
請求項1は、ヒータと、当該ヒータと同室に配置される封止治具と、封止治具に設置され、気密封止される1または複数の電子部品と、ヒータまたは/および封止治具の温度を測定する温度センサと、ヒータまたは/および封止治具と接続される外部接続端子と、外部接続配管とを格納する気密チャンバ部と、前記外部接続配管と接続されるポンプと、前記温度センサからの温度情報に基づきヒータの温度を調整する温度調整とポンプの動作を制御する制御部とを有する制御処理部と、からなる電子部品の気密封止装置であって、前記制御処理部には、1以上の前記気密チャンバ部が追加的に接続可能な制御チャンネルを有していることを特徴とする電子部品の気密封止装置である。なお、温度センサはヒータと封止治具のいずれか一方または両方に設けられており、温度制御の方法に応じて設定すればよい。
【0010】
気密チャンバ部はヒータと温度センサを有し、これが外部接続端子を介して制御処理部に接続されているので、この温度センサの温度情報によりヒータの出力を調整することができる。また気密チャンバ部には外部接続配管が設けられ、制御処理部にあるポンプからの供給排出動作により、気密チャンバ部を所定雰囲気にすることができる。封止治具には電子部品(被加熱処理物)が搭載されるが、電子部品は例えばセラミックパッケージの開口部分にリッドが搭載された構成である。例えばセラミックパッケージとリッドとを金属ろう材により真空気密封止する場合には、気密チャンバ部内を真空雰囲気とし、この状態でヒータにより封止治具を加熱し前記金属ろう材を溶融させることにより、真空に気密封止をされた電子部品を得ることができる。
【0011】
ところで前記制御処理部には、1以上の前記気密チャンバ部が追加的に接続可能な制御チャンネルを有している。制御チャンネルは温度センサによる温度情報の取得、並びに当該温度情報に基づくヒータの制御、並びにポンプの動作制御等が一体となり、追加的に接続した気密チャンバ部の動作制御を行う。この制御チャンネルの数、処理能力は制御処理部にある制御部の処理能力に依存するが、例えば性能の高いプロセッサを用いることによりマルチタスクを実行することができる。また気密チャンバ部との接続のため、制御用の端子および配管口がインターフェイスとして用意されている。
【0012】
なお、本発明においては、気密チャンバ部の吸排気を行うポンプも複数の気密チャンバ部に対して共有することになるが、例えば真空ポンプを用いた場合、実務上ポンプ自体も通常荒びき用ポンプ、本びき用ポンプの2種類を用いることが多い。例えばロータリーポンプとクライオポンプを用い、これらに連結されたバルブの開閉制御により選択的に異なる気密チャンバ部に対して用いる等により、2種類のポンプをいずれかの気密チャンバ部に対して動作させることができるので、全体としての動作効率を向上させることができる。
【0013】
また請求項2に示すように、気密チャンバ部と制御処理部からなる電子部品の気密封止装置において、前記制御処理部に気密チャンバ部が追加的に1以上接続された構成であってもよい。1つ気密チャンバ部を追加接続した場合は、制御処理部が最初の気密チャンバ部を含めて、2つの気密チャンバ部の制御を行う。
【0014】
追加した気密チャンバ部は制御処理部に設けられた追加の制御チャンネル用のインターフェイスと接続される。このような構成では従来のように気密チャンバ部それぞれにポンプ等を含めた制御処理部を用意しなくてもよく、生産数量に応じて気密チャンバ部を追加的に接続することができるので、効率的な生産を行うことができる。また気密チャンバ部自体の容積を小さくすることができるので、1つのチャンバに対する雰囲気調整等の各種処理を速めることができ、生産性を向上させることができる。また気密チャンバ部が小さいことにより、チャンバ内の温度分布ばらつきを抑制することができ、電子部品の気密封止時の品質を向上させることができる。
【0015】
本発明は制御処理部と気密チャンバ部が一体となっておらず、基本構成として分離した構成についても提案している。すなわち、請求項3に示すように、複数の外部接続配管と接続可能なポンプと、複数の温度センサと接続可能で、当該温度センサからの温度情報に基づき複数のヒータの温度を調整する温度調整および複数のポンプの動作を制御する制御部とを有する制御処理部と、当該制御処理部に1以上の数の気密チャンバ部が接続された電子部品の気密封止装置であって、当該各気密チャンバ部はヒータと、当該ヒータと同室に配置される封止治具と、封止治具に設置され、気密封止される1または複数の電子部品と、ヒータまたは/および封止治具の温度を測定する温度センサと、ヒータまたは/および封止治具と接続される外部接続端子と、外部接続配管とを有する構成であることを特徴とする電子部品の気密封止装置である。
【0016】
このような構成であると、制御処理部には複数の制御チャンネルが設けられ、当該制御チャンネルのインターフェイスに気密チャンバ部を接続することにより、制御処理部を中心に放射状に気密チャンバ部を接続することができる。従って、上記各構成と同様にこのような構成では従来のように気密チャンバ部それぞれにポンプ等を含めた制御処理部を用意しなくてもよい。従って生産数量に応じて気密チャンバ部を追加的に接続することができるので、効率的な生産を行うことができる。また気密チャンバ部自体の容積を小さくすることができるので、1つのチャンバに対する処理を速めることができ、生産性を向上させることができるとともに、気密チャンバ部が小さいことによりチャンバ内の温度分布ばらつきを抑制することができ、電子部品の気密封止時の品質を向上させることができる。
【0017】
また請求項4に示すように、上記電子部品の気密封止装置において、気密チャンバ部には、温度センサからの温度情報に基づきヒータの温度を調整する温度調整部が組み込まれ、制御処理部には温度調整部が設けられていない構成としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、気密チャンバ部に温度センサからの温度情報に基づきヒータの温度を調整する温度調整部が組み込まれた構成となっているので、上記各構成で制御処理部が行っていた温度センサからの温度情報を取得し、当該温度情報に基づいてヒータの出力を調整する処理を、制御処理部から解放することができる。これにより制御処理部に対し気密チャンバ部が多数接続された場合でも、制御処理部にある制御部の処理能力を超え、システム停止事故になる可能性を抑制し、複数の気密チャンバ部の動作を安定化させることができる。なお、必要に応じてポンプの台数を増加させ、吸排気面での処理能力低下を抑制するよう配慮することも必要である。
【0019】
さらに請求項5に示すように、上記電子部品の気密封止装置において、気密チャンバ部のヒータまたは/および封止治具には冷却水配管が形成されている構成としてもよい。なお冷却水配管はヒータに設けてもよいし、封止治具に設けてもよいし、あるいは両者に設けてもよい。この設定は温度制御の方法に応じて行えばよい。この冷却水配管を封止治具に設ける場合は電子部品と近接しているために、電子部品の熱を効率的に低下させることができる。この冷却水配管は加熱された封止治具等を冷却したり、電子部品に対する加熱温度プロファイルを制御する場合にも用いることができる。封止治具等を冷却する場合は、加熱による気密封止作業が終了した後で、効率的に封止治具および電子部品を冷却するために冷却水配管に冷却水を送る。冷却水配管は例えば循環式となっており、冷却水が封止治具等にて吸熱し、排熱部や冷却部で冷却水を冷やすというサイクルを繰り返すことにより、効率よく冷却を行う。
【0020】
また請求項6に示すように、前記封止治具にヒータ機能が組み込まれている構成としてもよい。ヒータ機能を組み込む構成として、例えば封止治具内にヒータを複数設置する(組み込む)構成や、封止治具自体にヒータ材を採用し、封止治具に通電することにより封止治具を発熱させる構成をあげることができる。封止治具自体にヒータ機能を組み込むことにより、封止治具に設置される電子部品の加熱による封止効率を向上させることができる。またヒータと温度センサによる温度調整のタイムラグを小さくし、電子部品に対して高精度の熱制御を行うことができる。
【0021】
また請求項7に示すように、前記ポンプは真空ポンプであり、気密チャンバ部を真空雰囲気とすることにより電子部品の気密空間を真空雰囲気とした構成でもよい。当該構成により、電子部品を真空封止できるので、例えば水晶振動子等において直列共振抵抗を向上させる等電気的特性を向上させた電子部品を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容易にかつ安価なコストで気密チャンバ部を追加することができ、生産数にあわせてフレキシブルな生産を可能とする装置構成とすることができる。また生産性を向上させかつ品質を向上させることのできる電子部品の気密装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態について、電子部品として表面実装型水晶振動子を用い、これを水晶振動子の内部空間を真空雰囲気で気密封止する装置を例にとり図面とともに説明する。図1は本実施の形態による気密封止装置の概念図、図2は開蓋時の気密チャンバ部の内部平面図、図3は閉蓋時の気密チャンバ部の断面図、図4は封止治具を示す図、図5は気密チャンバ部の他の構成を示す図、図6は本発明による接続構成の概念を示す図である。
【0024】
図1において、1は気密封止装置(メインユニット)、11は制御処理部、12は気密チャンバ部、13、14,15はそれぞれ追加した気密チャンバ部(追加ユニット)である。
【0025】
気密封止装置1は、制御処理部11と気密チャンバ部12とからなる。気密チャンバ部12は、基台12hと基台を被覆するチャンバ蓋12dを有している。また気密チャンバ部内にはヒータ12aとヒータ12a上に設置される封止治具12bとを有し、またヒータ12aには熱電対等の温度センサ12cが取り付けられている。また気密チャンバ部には気密チャンバ部外部と電気的接続する接続端子12fが設けられるとともに、気密チャンバ部外部と空間的に接続する接続配管12gが設けられている。なお、接続配管12gにはバルブが設けられている。また前記温度センサ12cおよびヒータ12aは前記接続端子を介して制御処理部の制御部11aと接続されている。なお気密チャンバ部12についてのより具体的な構成は後述する。なお、温度センサ12cは、図1においてヒータ12aの下方に図示しているが、図3に示すようにヒータ12a内部に取り付ける構成でもよい。
【0026】
制御処理部11は制御部11aとポンプ11bと、図示していないが電源を有する構成である。ポンプ11bは例えばロータリーポンプ(機械ポンプ)とターボポンプやクライオポンプ(ドライポンプ)からなり、2つの真空ポンプを使い分けることにより、必要な真空度を効率的に得ている。このようなポンプは制御部11aと接続され、制御部11aにより各ポンプを運転制御するとともに、バルブ開閉制御により動作が制御される。なおポンプの構成は上記例に限定されるものではなく、他の機械ポンプ、蒸気噴射ポンプ、ドライポンプ等の真空ポンプを用いてもよい。気密チャンバ部を不活性ガス雰囲気で使用する場合はロータリーポンプ等を使用し、気密チャンバ部内を置換してもよい。
【0027】
また制御部11aは前述のとおり前記温度センサ12cおよびヒータ12aと接続されており、ヒータを所定温度に制御する。当該温度制御情報(温度プロファイル情報)は図示しない制御パネル(操作パネル)から人手により入力したり、あるいはPC等から所定の温度制御情報を受け取ることにより設定される。また前記温度センサからの温度情報に基づきヒータの温度制御を行う。また制御部11aはポンプ11bを制御するが、同時に前記接続配管12gにあるバルブに対しても開閉制御を行い、気密チャンバ部内を所定雰囲気に保つ。
【0028】
当該制御処理部11には電気的な制御を行う入出力インターフェイス(制御用の端子)および雰囲気を制御する配管インターフェイス(配管口)の組を1以上有している。当該各インターフェイスを介して追加した気密チャンバ部(追加ユニット)を接続し、動作制御する。追加した気密チャンバ部13,14,15は気密チャンバ部12と基本的には同じ構成であり、気密チャンバ部は、基台と基台を被覆するチャンバ蓋を有している。また追加した気密チャンバ部内には各々ヒータ13a,14a,15aと当該ヒータ上に設置される封止治具13b,14b,15bとを有し、ヒータ13a,14a,15aには各々温度センサ13c,14c,15cが取り付けられている。さらに気密チャンバ部には気密チャンバ部外部と電気的接続する接続端子13f,14f,15fが設けられるとともに、気密チャンバ部外部と空間的に接続する接続配管が設けられている。なお、各接続配管にはバルブが設けられている。気密チャンバ部12,13,14,15は前記入出力インターフェイスと各々接続線30,31,32,33により電気的接続されるとともに、配管インターフェイスと各々配管20,21,22,23により配管接続されている。なお、気密チャンバ部12は入出力インターフェイスや配管インターフェイスを介さずに内部接続されていてもよい。
【0029】
次に気密チャンバ部12のより具体的な構成について、図2、図3、図4を中心に説明する。基台12hには気密チャンバ部外部と電気的接続する接続端子12fが気密状態で設けられている。また、基台12hにはバルブが設けられ、当該バルブに外部と空間的に接続する接続配管12gが設けられている。基台12h上にはスペーサSが設けられ、当該スペーサ上にヒータ12aが設けられている。当該ヒータ12aは例えば平板状のカーボンヒータからなり、前記スペーサSに形成された導電材により通電される。なお、スペーサ自体を導電材で形成してもよい。
【0030】
またヒータ用の基板をアルミニウム等の熱伝導性の良好な材料で構成し、当該ヒータ用基板にヒータ素子を挿入しヒータ12aを構成してもよい。この場合、ヒータと温度センサをヒータ基板に取着する構成となる。さらに上記構成に加えて冷却水配管をヒータ基板の内部に設けてもよい。
【0031】
図2,図3において温度センサ12cはヒータ12aに形成された複数の孔部12a1に差し込み設置されているが、温度センサ12cの設置位置は当該構成に限定されるものではない。例えばヒータの表裏則面に形成したり内部に埋め込んでもよく、また設置数も複数箇所に設置してもよい等、製造ロットサイズ等に応じて任意に設定すればよい。
【0032】
ヒータ12aの上面には封止治具12bが設置される。図4(a)は封止治具12bの平面図を示しているが、封止治具12bは例えばアルミナ等のセラミックスあるいは金属からなり、平板に多数の電子部品Wを各々収納する格納孔Cがマトリクス状に設けられた構成である。
【0033】
電子部品WはセラミックパッケージW1とリッドW2とからなる。セラミックパッケージ内には水晶振動素子Qが励振可能な状態で保持されており、またリッドには例えばAu−Sn合金等の金属ろう材(図示せず)が形成されており、図4(b)に示すように当該金属ろう材とセラミックパッケージの気密接合部分が接触した状態で封止治具12bに格納されている。なお、金属ろう材はAu−Sn合金に限定されるものではなく、例えばSn−Ag合金等他の金属ろう材であってもよい。またリッドとパッケージの接合はガラス材により接合を行ってもよい。
【0034】
これら各構成要素をチャンバ蓋12dで被覆する。なお、Oリング12eにより気密チャンバ部の気密性が保たれる。
【0035】
次に上記構成により表面実装型水晶振動子(電子部品)を真空気密封止する方法について説明する。まず生産数量に応じて必要な気密チャンバ部(追加ユニット)を用意し、気密封止装置1(メインユニット)と電気的接続および配管接続する。処理数量が少ない場合は追加ユニットを接続しない。次に気密チャンバ部12のチャンバ蓋12dを開蓋し、電子部品(被加熱処理物)Wの搭載された封止治具12bを1または複数のヒータ12a上に設置する。その後チャンバ蓋12dを気密的に閉蓋する。次に制御パネルからの入力やPCからのデータ転送により運転情報を制御部11aに入力し、運転を開始する。運転情報は例えば真空度情報や真空加熱の際の温度プロファイル情報あるいは加熱完了後の冷却情報等の制御情報をあげることができる。
【0036】
まず気密チャンバ部内を所望の真空度にまで排気する。排気動作は例えば荒びき排気用としてロータリーポンプを用い、その後本びき排気用としてクライオポンプを用いる。この排気動作により気密チャンバ部内は電子部品Wの内部まで所定の真空度になる。その後この真空状態を保持して加熱動作を行う。加熱動作は制御部からの指令により、温度プロファイル情報に従ってヒータが加熱され、電子部品に形成された金属ろう材が溶融し、真空封止が行われる。その後冷却を行い真空破壊して、真空封止された電子部品を取り出す。なお、必要とされる真空度が低い場合は複数の真空ポンプによる排気を行わず、例えばロータリーポンプのみにより排気を行ってもよい。
【0037】
なお、気密チャンバ部のそれぞれの運転は全部を同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。順次行う例として例えば、気密チャンバ部12に対して排気動作を行い排気完了後、加熱動作を行うが、この際次の気密チャンバ部13に対して排気動作を行ってもよい。すなわち、一連の排気加熱冷却動作についてタイムラグを持たせた気密封止処理を行ってもよい。また、全部で4つの気密チャンバ部を制御する場合、2つの気密チャンバ部を1組とし、別の2つの気密チャンバ部を1組とし、これらの各組についてタイムラグを持たせて気密封止処理を行ってもよい。このような複数の気密チャンバ部に対してタイムラグを持たせた処理を行うことにより、例えば制御部の処理負荷やポンプ11bの動作負荷を低減することができる。また前述したように2種類の真空ポンプを用い、荒びき排気に続いて本びき排気を行う場合があるが、この場合、最初の気密チャンバ部の本びき排気時には次の気密チャンバ部に対し荒びき用ポンプにより荒びき排気を行う順次処理を行ってもよい。
【0038】
ところで、前記気密チャンバ部は、上記図2,図3に示した構成に限定されるものではない。例えば、ヒータと封止治具を多段構成としてもよい。図5は多段構成のヒータと封止治具を示す図であるが、基台22l上にスペーサSが設置され、当該スペーサ上にヒータ22aが設置され、当該ヒータ22a上に封止治具22bが設置されている。その上部にスペーサS,ヒータ22h、封止治具22iの順で設置し、さらにその上部にスペーサS,ヒータ22j、封止治具22kの順で設置する。これにより3段の封止治具が配置された構成となる。このような多段構成により、効率的な生産(気密封止)を行うことができる。
【0039】
なお、上記実施の形態においては、板状のヒータと封止治具を有する構成としたが、封止治具自体にヒータ機能を持たせてもよく、例えば封止治具の内部あるいは表面にヒータ取り付け部を設定し、当該部分にヒータ材を取り付ける構成を採用してもよい。あるいは電子部品の収納領域を複数設けた封止治具自体をカーボン材等の電機加熱部材で構成し、これに通電を行い封止治具とヒータを兼用する構成としてもよい。
【0040】
以上、小型電子部品の周囲雰囲気を加熱する等電子部品全体を加熱して気密封止する小さな気密チャンバ部(加熱処理室)を有する気密封止装置をメインユニットとし、製造数量に対応させて追加的に気密チャンバ部(追加ユニット)を1または複数用いることの可能な電子部品の気密封止装置を得ることができる。図6はメインユニットに対して追加ユニットを接続した構成を示す概念図であるが、メインユニットのインターフェイスに追加ユニットを放射状に接続することにより、フレキシブルな生産に対応することができる。
【0041】
なお、図1において、制御処理部と気密チャンバ部とからなる気密封止装置をメインユニットとして用い、気密チャンバ部(追加ユニット)を追加的に接続した構成であるが、制御処理部11のみをメインユニット(制御用のユニット)として用い、気密チャンバ部を1または複数接続する構成をとってもよい。このような構成であると、制御処理部11を中心に放射状に気密チャンバ部を接続することができ、上記各構成と同様にこのような構成では従来のように気密チャンバ部それぞれにポンプ等を含めた制御処理部を用意しなくてもよい。従って生産数量に応じて気密チャンバ部を追加的に接続することができるので、効率的な生産を行うことができる。また気密チャンバ部自体の容積を小さくすることができるので、1つのチャンバに対する処理を速めることができ、生産性を向上させることができるとともに、気密チャンバ部が小さいことによりチャンバ内の温度分布ばらつきを抑制することができ、電子部品の気密封止時の品質を向上させることができる。
【0042】
以上上記構成により、容易にかつ安価なコストで気密チャンバ部を追加することができ、生産数にあわせてフレキシブルな装置構成とすることができる。また生産性を向上させかつ品質を向上させることのできる電子部品の気密装置を得るという効果を奏することができる。
【0043】
本発明による他の実施の形態について、電子部品として表面実装型水晶振動子を用い、これを水晶振動子の内部空間を真空雰囲気で気密封止する装置を例にとり図面とともに説明する。図7は他の実施の形態を示すシステム構成図である。
【0044】
図7において、4は気密封止装置(メインユニット)、41は制御処理部、42は気密チャンバ部、43、44,45はそれぞれ追加した気密チャンバ部(追加ユニット)である。また
【0045】
気密封止装置4は、制御処理部41と気密チャンバ部42とからなる。気密チャンバ部42は、図示しないが基台と基台を被覆する略半球状のチャンバ蓋を有している。また気密チャンバ部内にはヒータ機能を有する封止治具42aが格納され、また封止治具42aには温度センサ42bが取り付けられている。また気密チャンバ部42には気密チャンバ部外部と電気的接続する接続端子が設けられるとともに、気密チャンバ部外部と空間的に接続する接続配管が設けられている。なお、接続配管にはバルブが設けられている。当該気密チャンバ部外部には温度調節部42cと電源42dが一体的に取り付けられている。温度調節部42cは前記ヒータ機能を有する封止治具42aおよび温度センサ42bと接続されており、温度センサからの封止治具の温度情報を受け取るとともに、ヒータ機能を有する封止治具42aに対して加熱用の通電を行う。なお、当該ヒータ機能を有する封止治具はカーボン材からなるヒータ兼用構成としてもよいし、封止治具にヒータ素子を取着した構成であってもよい。
【0046】
封止治具には複数の電子部品Wが搭載されている。電子部品WはセラミックパッケージW1とリッドW2とからなる。セラミックパッケージ内には水晶振動素子が励振可能な状態で保持されており、またリッドには例えばAu−Sn合金等の金属ろう材(図示せず)が形成されており、当該金属ろう材とセラミックパッケージの気密接合部分が接触した状態で封止治具12bに格納されている。(図4(b)参照)
【0047】
制御処理部41は制御部41aとポンプ41bと循環ポンプ41cを有する構成である。ポンプ41bは真空ポンプであり、例えばロータリーポンプ(機械ポンプ)とターボ分子ポンプ(機械ポンプ)からなり、2つの真空ポンプを使い分けることにより、必要な真空度を効率的に得ている。このようなポンプは制御部41aと接続され、制御部41aにより各ポンプを運転制御するとともに、バルブ開閉制御により動作が制御される。なおポンプの構成は上記例に限定されるものではなく、他の機械ポンプ、蒸気噴射ポンプ、ドライポンプ等の真空ポンプを用いてもよい。
【0048】
なお、制御部41aはポンプ41bを制御するが、同時に前記接続配管12gにあるバルブに対しても開閉制御を行い、気密チャンバ部内を所定雰囲気に保つ。さらに気密チャンバ部を不活性ガス雰囲気で使用してもよい。この場合、気密チャンバ部内の排気や必要なガス雰囲気形成をポンプを用いて行う。
【0049】
制御部41aは前記温度調節部42cあるいは電源42dと接続されている。本実施の形態では電源42dに接続されているが、温度調節部42cからの情報は制御部41aに送られる。従って、本実施の形態においては気密チャンバ部に温度調整部42cを設けているので、図1で示した構成に対して制御処理部に温度調整に係る機能を有さない構成となっている。ただし、温度制御情報(温度プロファイル情報)は、制御処理部にある図示しない制御パネル(操作パネル)から入力したり、あるいはPC等から所定の温度制御情報を受け取ることにより設定される。また制御部41aはポンプ41cおよび循環ポンプ41cとも電気的接続され、両者の動作を制御する。
【0050】
循環ポンプ41cは後述する冷却水配管51,52,53を介して冷却水を送り各封止治具を冷却する。この冷却により、加熱された封止治具等を冷却したり、電子部品Wに対する加熱温度プロファイルを制御する場合にも用いることができる。封止治具等を冷却する場合は、加熱による気密封止作業が終了した後で、効率的に封止治具および電子部品を冷却するために冷却水配管に冷却水を送る。冷却水配管は例えば循環式となっており、冷却水が封止治具等にて吸熱し、排熱部や冷却部で冷却水を冷やすというサイクルを繰り返すことにより、効率よく冷却を行う。
【0051】
当該制御処理部41には電気的な制御を行う入出力インターフェイスおよび雰囲気を制御する配管インターフェイスおよび冷却水配管インターフェイスを1以上有している。当該各インターフェイスを介して追加した気密チャンバ部(追加ユニット)を接続し、制御する。追加した気密チャンバ部43,44,45は気密チャンバ部42と基本的には同じ構成であり、気密チャンバ部43,44,45は、図示していないが基台と基台を被覆する略半球状のチャンバ蓋を有している。また気密チャンバ部内にはヒータ機能を有する封止治具43a,44a,45aが格納され、また封止治具には温度センサ43b,44b,45bが取り付けられている。また気密チャンバ部には気密チャンバ部外部と電気的接続する接続端子が設けられるとともに、気密チャンバ部外部と空間的に接続する接続配管が設けられている。なお、接続配管にはバルブが設けられている。当該気密チャンバ部外部には温度調節部43c,44c,45cと電源43d,44d,45dが一体的に取り付けられている。温度調節部43c,44c,45cは前記ヒータ機能を有する封止治具43a,44a,45aおよび温度センサ43b,44b,45bと接続されており、温度センサからの封止治具の温度情報を受け取るとともに、ヒータ機能を有する各封止治具に対して加熱用の通電を行う。
【0052】
各気密チャンバ部42,43,44,45は前記入出力インターフェイスと各々接続線30,31,32,33により電気的接続されるとともに、配管インターフェイスと各々接続配管20,21,22,23により配管接続され、さらに冷却水配管インターフェイスと各々冷却水配管50,51,52,53により配管接続されている。なお、気密チャンバ部42は入出力インターフェイスや配管インターフェイスおよび冷却水配管インターフェイスを介さずに内部接続されていてもよい。
【0053】
以上の構成により、各気密チャンバ部の封止治具42a,43a,44a,45aに電子部品Wを設置し、チャンバ蓋を閉蓋後所定の運転情報に従って気密封止を行う。運転情報は真空度情報、真空加熱の際の温度プロファイル情報あるいは冷却水送水等の冷却情報等の制御情報をあげることができる。
【0054】
なお、上記各実施の形態においては、板状のヒータやヒータ機能付き封止治具により電子部品の加熱を行ったが、電子部品を例えば窒素ガス等の不活性ガス気密封止を行う場合は不活性ガスの充填された気密チャンバ部内の温度をパネル状ヒータ等により上げ、電子部品の周囲温度を上げることにより電子部品の接合材に対して溶融加熱を行ってもよい。
【0055】
また本実施の形態においては、表面実装型の水晶振動子の製造装置例について説明したが、例えばSAW等他の気密封止を必要とする電子部品の気密封止装置に適用してもよい。
【0056】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形
で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎ
ず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであ
って、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属す
る変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
水晶振動デバイス等の電子部品の気密封止装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態による気密封止装置の概念図
【図2】開蓋時の気密チャンバ部の内部平面図
【図3】閉蓋時の気密チャンバ部の断面図
【図4】封止治具構成を示す図
【図5】気密チャンバ部の他の構成を示す図
【図6】本発明による接続構成を示す概念を示す図
【図7】本実施の形態による他の実施形態による気密封止装置の概念図
【符号の説明】
【0059】
1、4 気密封止装置
11,41 制御処理部
12,13,14,15,16,42,43,44,45 気密チャンバ部
11a,41a 制御部
11b、41b ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、当該ヒータと同室に配置される封止治具と、封止治具に設置され、気密封止される1または複数の電子部品と、ヒータまたは/および封止治具の温度を測定する温度センサと、ヒータまたは/および封止治具と接続される外部接続端子と、外部接続配管とを格納する気密チャンバ部と、
前記外部接続配管と接続されるポンプと、前記温度センサからの温度情報に基づきヒータの温度を調整する温度調整とポンプの動作を制御する制御部とを有する制御処理部と、からなる電子部品の気密封止装置であって、
前記制御処理部には、1以上の前記気密チャンバ部が追加的に接続可能な制御チャンネルを有していることを特徴とする電子部品の気密封止装置。
【請求項2】
気密チャンバ部と制御処理部からなる電子部品の気密封止装置において、前記制御処理部に気密チャンバ部が追加的に1以上接続された請求項1記載の電子部品の気密封止装置。
【請求項3】
複数の外部接続配管と接続可能なポンプと、複数の温度センサと接続可能で、当該温度センサからの温度情報に基づき複数のヒータの温度を調整する温度調整とポンプの動作を制御する制御部とを有する制御処理部と、当該制御処理部に1以上の数の気密チャンバ部が接続された電子部品の気密封止装置であって、
当該各気密チャンバ部はヒータと、当該ヒータと同室に配置される封止治具と、封止治具に設置され、気密封止される1または複数の電子部品と、ヒータまたは/および封止治具の温度を測定する温度センサと、ヒータまたは/および封止治具と接続される外部接続端子と、外部接続配管を有する構成であることを特徴とする電子部品の気密封止装置。
【請求項4】
気密チャンバ部には、温度センサからの温度情報に基づきヒータの温度を調整する温度調整部が組み込まれ、制御処理部には温度調整部が設けられていないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品の気密封止装置。
【請求項5】
気密チャンバ部のヒータまたは/および封止治具には冷却水配管が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品の気密封止装置。
【請求項6】
前記封止治具にヒータ機能が組み込まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電子部品の気密封止装置。
【請求項7】
前記ポンプは真空ポンプであり、気密チャンバ部を真空雰囲気とすることにより電子部品の気密空間を真空雰囲気としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電子部品の気密封止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−227689(P2007−227689A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47619(P2006−47619)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】