説明

電子部品の製造方法

【課題】良質な電子部品にクラック等を発生させることなく、スクリーングを簡便に行なうことが可能な電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】被検査体11の接地用内部電極9を、誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる。直流電源12に接続された一対の通電プローブ13を接地用端子電極5それぞれに接触させて、通電プローブ13間に通電する。これにより、各接地用端子電極5を通して各接地用内部電極9にも通電され、各接地用内部電極9は自らが有する電気抵抗により発熱する。そして、被検査体11の各接地用内部電極9を、誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、被検査体11の絶縁抵抗IRを測定する。絶縁抵抗IRは、信号用端子電極3と接地用端子電極5とに測定プローブをそれぞれ接触させ、測定プローブ間に直流電源から直流電圧を印加して、測定器により測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法、特に、電子部品をスクリーニングする工程を含む製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体材料を含む素体と当該素体の外表面に配置された端子電極とを備える電子部品の製造方法として、端子電極に測定プローブを接触させた状態で測定プローブに通電して電子部品の電気的特性を測定し、測定された電気的特性に基づいて電子部品の良否を判定する(スクリーニング)工程を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−227826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の誘電体材料は、常温では、電歪現象を伴う。このため、常温にて電子部品の電気的特性を測定する場合、電子部品に印加する電圧の大きさによっては、上記電歪現象により、内部構造欠陥のない良質な電子部品までクラック等を発生させてしまう懼れがある。
【0004】
本発明は、良質な電子部品にクラック等を発生させることなく、スクリーングを簡便に行なうことが可能な電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電子部品の製造方法は、第1及び第2の内部電極が配置されると共に誘電体材料を含む素体と、第1の内部電極に電気的に接続されると共に素体の外表面に配置された複数の第1の端子電極と、第2の内部電極に電気的に接続されると共に素体の外表面に配置された少なくとも一つの第2の端子電極と、を有する電子部品の製造方法であって、複数の第1の端子電極のうち少なくとも二つの第1の端子電極に通電プローブをそれぞれ接触させて、通電プローブ間に通電することにより、第1の内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる工程と、第1の内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、複数の第1の端子電極のうち少なくとも一つの第1の端子電極と少なくとも一つの第2の端子電極とに測定プローブをそれぞれ接触させて、測定プローブ間に通電することにより、電子部品の電気的特性を測定し、該電気的特性に基づいて電子部品の良否を判定する工程と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る電子部品の製造方法では、通電プローブ及び第1の端子電極を通して第1の内部電極に通電することにより、第1の内部電極が有する電気抵抗を利用して、第1の内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる。このとき、素体も、略キュリー温度以上の温度となる。そして、第1の内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、すなわち素体が略キュリー温度以上の温度である状態で、測定プローブ間に通電して電子部品の電気的特性を測定する。このため、素体に含まれる誘電体材料に電歪現象が起こり難く、測定プローブ間に通電して電子部品の電気的特性を測定する際に、良質な電子部品までクラック等を発生させてしまうことはない。
【0007】
ところで、素体(電子部品)を加熱する手法として、炉や恒温槽等を用いることが考えられる。炉や恒温槽等を用いて素体を加熱する場合、設備が大型化すると共に、素体を効率良く加熱することが難しい。これに対して、本発明では、第1の端子電極を通して第1の内部電極に通電することにより第1の内部電極を発熱させて、内部から素体を加熱している。したがって、炉や恒温槽等を用いて電子部品を加熱するものに比して、素体を効率良く加熱することができると共に、素体を加熱した状態で簡便に電気的特性を測定することができる。また、本発明では、スクリーニングのための設備が大型化することもない。
【0008】
好ましくは、通電プローブを少なくとも二つの第1の端子電極に接触させると共に測定プローブを少なくとも一つの第1の端子電極と少なくとも一つの第2の端子電極とに接触させた状態で通電プローブ間に通電することにより、内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させ、通電プローブを少なくとも二つの第1の端子電極に接触させると共に測定プローブを少なくとも一つの第1の端子電極と少なくとも一つの第2の端子電極とに接触させた状態で測定プローブ間に通電することにより、電子部品の電気的特性を測定する。この場合、通電プローブと測定プローブとを交互に接触させる必要がなく、第1の内部電極の発熱及び電気的特性の測定をより一層簡便に行なうことができる。
【0009】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、誘電体材料を含む素体と、素体内に配置された内部電極と、を有する電子部品の製造方法であって、内部電極に通電することにより、内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる工程と、内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、電子部品の電気的特性を測定し、該電気的特性に基づいて電子部品の良否を判定する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電子部品の製造方法では、内部電極に通電することにより、内部電極が有する電気抵抗を利用して、内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる。このとき、素体も、略キュリー温度以上の温度となる。そして、内部電極を誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、すなわち素体が略キュリー温度以上の温度である状態で、電子部品の電気的特性を測定する。このため、素体に含まれる誘電体材料に電歪現象が起こり難く、電子部品の電気的特性を測定する際に、良質な電子部品までクラック等を発生させてしまうことはない。
【0011】
また、本発明では、内部電極に通電することにより内部電極を発熱させて、内部電極が配置されている素体を内部から加熱している。したがって、炉や恒温槽等を用いて電子部品を加熱するものに比して、素体を効率良く加熱することができると共に、素体を加熱した状態で簡便に電気的特性を測定することができる。また、本発明では、スクリーニングのための設備が大型化することもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良質な電子部品にクラック等を発生させることなく、スクリーングを簡便に行なうことが可能な電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る製造方法が適用される積層セラミックスコンデンサの斜視図である。図2は、図1に示された積層セラミックスコンデンサの断面図である。
【0015】
積層セラミックスコンデンサ1は、いわゆる積層型貫通コンデンサであって、図1に示されるように、略直方体の素体2と、素体2の外表面に配置された信号用端子電極3と、素体2の外表面に配置された接地用端子電極5とを備えている。これらの信号用端子電極3及び接地用端子電極5は、素体2の表面上においては互いに電気的に絶縁されて形成されている。各端子電極3,5は多層化されており、素体2に接する部分では、例えば、Cu,Ni、Ag−Pdなどを用い、その外側にはNi−Snなどのめっきが施される。
【0016】
素体2は、図2に示されるように、複数の誘電体層7を有している。素体2には、信号用内部電極8と接地用内部電極9とが、1つの誘電体層7をそれぞれの間に挟んで対向するようにそれぞれ複数配置されている。
【0017】
誘電体層7は、電歪特性を有する例えば、BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系などの誘電体材料からなる。信号用内部電極8と接地用内部電極9とに挟まれる誘電体層7の厚みは、例えば、18.5μmに薄層化されている。
【0018】
信号用内部電極8及び接地用内部電極9は、誘電体材料の種類により異なるが、Ni、Cuなどの卑金属材料やPt,Agなどの貴金属材料からなる。信号用内部電極8及び接地用内部電極9は、各々別々の各側面に引き出され、対応する各端子電極3,5に電気的に接続される。すなわち、信号用内部電極8は信号用端子電極3に電気的に接続され、接地用内部電極9は接地用端子電極5に電気的に接続されている。
【0019】
続いて、図3を参照して、本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法のフローを示す図である。
【0020】
積層セラミックスコンデンサ1の製造においては、まず、誘電体層7を形成するためのセラミックスペースト、各内部電極8,9を形成するための内部電極ペーストをそれぞれ準備する。
【0021】
セラミックスペーストは、誘電体層7を構成する誘電体材料の原料に有機ビヒクルなどを混合・混錬して得ることができる。誘電体材料の原料としては、例えば、誘電体材料が上述したような各種の複合酸化物系材料である場合は、当該複合酸化物に含まれる各金属原子の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの組み合わせが挙げられる。
【0022】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などが挙げられる。また、溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤が挙げられる。
【0023】
また、セラミックスペーストは、上記以外に各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などが必要に応じて含有されていてもよい。
【0024】
内部電極ペーストは、各内部電極8,9を構成するための導電材料と有機ビヒクルとを混合・混錬したものである。導電材料としては、上述したような金属材料を用い、球状やリン片状などの種々の形状のものを適用できる。また、内部電極ペースト中には、必要に応じて無機化合物を適量含有させることが好ましい。これにより、後述する焼成時において、セラミックスグリーンシート及び内部電極ペースト層の体積変化の差を小さくして、これに起因する応力の発生を低減することができる。その結果、この応力に基づくクラックや反りなどの不具合を抑制することが可能となる。
【0025】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、またはこれらの共重合体などが挙げられる。溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトンなどが挙げられる。
【0026】
内部電極ペースト中には、適宜、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、リン酸エステル、グリコール類などが適用できる。
【0027】
続いて、上述したセラミックスペースト及び内部電極ペーストを準備した後、まず、例えば、PETなどからなるキャリアシート上にセラミックスペーストをドクターブレード法などの公知の方法でセラミックスグリーンシートを形成する(ステップS1:シート成形工程)。そして、セラミックスグリーンシート上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法などの公知の方法で複数の内部電極パターンを形成する(ステップS3:内部電極形成工程)。
【0028】
続いて、内部電極パターンが形成されたセラミックスグリーンシートを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る(ステップS5:積層・プレス工程)。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る(ステップS7:切断工程)。
【0029】
続いて、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する(ステップS9:焼成工程)。この焼成により、セラミックスグリーンシートから誘電体層7が、また、内部電極ペースト層から各内部電極8,9がそれぞれ形成された素体2が得られる。脱バインダーは、グリーンチップを、空気中、又は、N及びHの混合ガスなどの還元雰囲気中で、200〜600℃程度に加熱することにより行うことができる。また、焼成は、脱バインダー後のグリーンチップを、例えば、還元雰囲気下で1100〜1300℃程度に加熱することにより行うことができる。そして、かかるグリーンチップの焼成後、得られた焼成物に、必要に応じて800〜1100℃、2〜10時間保持するアニール処理を施す。
【0030】
続いて、素体2の各側面に導電性ペーストを塗布して焼付けし、さらにめっきを施すことにより端子電極3,5を形成する(ステップS11:端子電極形成工程)。導電性ペーストは、Cuを主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni、Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金,Sn−Ag合金,Sn−Bi合金などの金属めっきを施すことができる。また、金属めっきは、例えば、NiとSnとで2層以上形成した多層構造としても良い。以上により、図1及び図2に示されるような構成の複数の積層セラミックスコンデンサ1が得られる。
【0031】
続いて、得られた積層セラミックスコンデンサ1(被検査体)について、電気的特性の検査をする(ステップS13:電気的特性(絶縁抵抗)検査工程)。電気的特性の検査は、得られた被検査体が所定の電気的特性を備えているかを検査するものであり、被検査体の電気的特性を測定し、測定された電気的特性に基づいて被検査体の良否を判定する。電気的特性が不良であると判断された被検査体は除外され、当該検査によりスクリーニングされた被検査体のみ他の検査工程に移ることになる。電気的特性の検査には、例えば、積層セラミックスコンデンサの規格(JIS規格など)に基づく、耐電圧検査、絶縁抵抗検査、静電容量検査、静電正接検査などがある。
【0032】
以下、図4及び図5を参照して、絶縁抵抗検査工程について、詳細に説明する。絶縁抵抗検査以外の各工程については、既知であるため、詳細な説明は省略する。図4及び図5は、絶縁抵抗検査工程における測定装置の概略を示す図である。
【0033】
まず、被検査体11の内部電極(本実施形態では、接地用内部電極9)を、誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる。ここでは、図4に示されるように、直流電源12に接続された一対の通電プローブ13を接地用端子電極5それぞれに接触させて、通電プローブ13間に通電する。これにより、各接地用端子電極5を通して各接地用内部電極9にも通電され、各接地用内部電極9は自らが有する電気抵抗により発熱する。
【0034】
各接地用内部電極9への通電は、各接地用内部電極9が誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上の温度となるまで行う。各接地用内部電極9の熱は、誘電体層7に直接的に伝わり、誘電体層7も略キュリー温度以上の温度に加熱される。接地用内部電極9は、接地用端子電極5に接続する幅狭の引き出し部分を有しており、信号用内部電極8に比して電気抵抗が高く、信号用内部電極8よりも発熱し易い。誘電体材料のキュリー温度は、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry)等によって測定することができる。
【0035】
接地用内部電極9の温度が誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上であるか否かは、温度測定器を用いて接地用内部電極9の温度を測定することにより確認することができる。また、接地用内部電極9の電気抵抗等から誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上となる温度まで接地用内部電極9を発熱させるための電力を予め求めておき、直流電源12から予め求めた電力を供給することにより、接地用内部電極9の温度が誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上であるとしてもよい。
【0036】
そして、被検査体11の各接地用内部電極9を、誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、被検査体11の絶縁抵抗IRを測定する。絶縁抵抗IRは、図5に示されるように、信号用端子電極3と接地用端子電極5とに測定プローブ15をそれぞれ接触させ、測定プローブ15間に直流電源17,19から直流電圧を印加して、測定プローブ15間、すなわち信号用端子電極3と接地用端子電極5との間に通電し、測定器21により測定する。
【0037】
直流電圧を印加するステップは、第1のステップと、第2のステップとを含む。第1のステップでは、定格電圧の10倍程度の直流電圧V1(V/μm)を印加する。次に、第2のステップでは、第1のステップの後に、定格電圧の3〜5倍程度の直流電圧V2(V)を印加する。
【0038】
本実施形態では、電源装置として直流電源17,19を備え、直流電源17,19を切り替え回路23によって切り替えることにより、第1のステップ及び第2のステップを実行する例を示している。第1のステップでは、切り替え回路23の可動接片23aを、接点23bに接触させ、直流電源17の直流電圧V1を、信号用端子電極3と接地用端子電極5との間に印加する。印加時間は、例えば、10msec〜1.0secの範囲(好ましくは、10msec〜20msecの範囲)に設定することができる。
【0039】
第2のステップでは、第1のステップの終了後、切り替え回路23の可動接片23aを、接点23cに接触させ、直流電源19の直流電圧V2を、信号用端子電極3と接地用端子電極5との間に印加する。印加時間は、例えば、10msec〜1.0secの範囲(好ましくは、10msec〜20msecの範囲)に設定することができる。
【0040】
第1のステップで印加される直流電圧V1は、上述したように、定格電圧の10倍程度の電圧(例えば、20〜40(V/μm)の範囲内の電圧)とされている。この程度の電圧であれば、隣り合う信号用内部電極8と接地用内部電極9とに挟まれる誘電体層7に欠陥が存在する場合、この欠陥を顕在化させ、それによる絶縁抵抗IRの低下から、不良品としてスクリーニングすることができる。
【0041】
第1のステップで印加される直流電圧V1が低すぎる(例えば、20(V/μm未満)場合は、充分なスクリーニングがなされないため、サーマル評価及び信頼性評価において、クラックや不良品が発生する。第1のステップで印加される直流電圧V1が高すぎる(例えば、40(V/μm)より高い)場合は、過電圧となり、製品に内部クラックなどのダメージが残り、サーマル評価及び信頼性評価において、クラックや不良品が発生する。
【0042】
第2のステップで印加される直流電圧V2は、上述したように、定格電圧の3〜5倍程度の電圧とされている。直流電圧V2が定格電圧の3倍未満の場合は、第2のステップによる信頼性評価が不十分になる。直流電圧V2が定格電圧の5倍を超えると過電圧になる。これにより、使用期間中に寿命劣化の虞のある被検査体11を、前以て選別除去し、信頼性を保証することができる。
【0043】
続いて、電気的特性(絶縁抵抗)検査工程によりスクリーニングされた被検査体について、その外観を検査(ステップS15:外観検査工程)する。外観検査は、カメラや目視により被検査体の外観に欠けた部分などが存在しないかを確認するものである。外観検査によりスクリーニングされた良品被検査体が積層セラミックスコンデンサとして、出荷されることとなる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、通電プローブ13及び接地用端子電極5を通して接地用内部電極9に通電することにより、接地用内部電極9が有する電気抵抗を利用して、誘電体層7を構成する誘電体材料のキュリー温度以上の温度に接地用内部電極9を発熱させる。このとき、誘電体層7も、略キュリー温度以上の温度となる。そして、接地用内部電極9を上記誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、すなわち誘電体層7が略キュリー温度以上の温度である状態で、測定プローブ15間に通電して被検査体11(積層セラミックスコンデンサ1)の絶縁抵抗IRを測定する。このため、誘電体層7を構成する誘電体材料に電歪現象が起こり難く、測定プローブ15間に通電して絶縁抵抗IRを測定する際に、良質な被検査体11までクラック等を発生させてしまうことはない。
【0045】
ところで、被検査体11を加熱する手法として、炉や恒温槽等を用いることが考えられる。炉や恒温槽等を用いて被検査体11を加熱する場合、設備が大型化すると共に、被検査体11を効率良く加熱することが難しい。これに対して、本実施形態では、接地用端子電極5を通して接地用内部電極9に通電することにより接地用内部電極9を発熱させて、内部から誘電体層7(素体2)を加熱している。したがって、炉や恒温槽等を用いて被検査体11を加熱するものに比して、誘電体層7を効率良く加熱することができると共に、誘電体層7を加熱した状態で簡便に電気的特性を測定することができる。また、本実施形態では、スクリーニングのための設備が大型化することもない。
【0046】
次に、図6を参照して、本実施形態の変形例を説明する。図6は、絶縁抵抗検査工程における測定装置の概略を示す図である。
【0047】
図6に示された変形例では、絶縁抵抗検査工程において、通電プローブ13を接地用端子電極5に接触させると共に測定プローブ15を信号用端子電極3と接地用端子電極5に接触させている。通電プローブ13を接地用端子電極5に接触させると共に測定プローブ15を信号用端子電極3と接地用端子電極5に接触させた状態で通電プローブ13間に通電することにより、接地用内部電極9を誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させ、通電プローブ13を接地用端子電極5に接触させると共に測定プローブ15を信号用端子電極3と接地用端子電極5に接触させた状態で測定プローブ15間に通電することにより、被検査体11の絶縁抵抗IRを測定している。これにより、通電プローブ13と測定プローブ15とを交互に接触させる必要がなく、接地用内部電極9の発熱及び絶縁抵抗IRの測定をより一層簡便に行なうことができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0049】
本実施形態では、電子部品の一例として積層セラミックスコンデンサの製造方法を説明したが、電歪効果を有する誘電体材料を用いる電子部品であれば、特に限定されるものではなく、例えば、積層アクチュエータなどの製造方法としても適用できる。
【0050】
本実施形態では、絶縁抵抗検査工程において接地用内部電極9を発熱させて接地用内部電極9を誘電体材料のキュリー温度以上の温度としているが、絶縁抵抗検査工程以外の検査工程(例えば、耐電圧検査工程)において、接地用内部電極9を発熱させて接地用内部電極9を誘電体材料のキュリー温度以上の温度として検査を行ってもよい。
【0051】
本実施形態では、接地用内部電極9に通電して接地用内部電極9を発熱させているが、これに限られることなく、信号用内部電極8に通電して信号用内部電極8を発熱させてもよく、また、信号用内部電極8及び接地用内部電極9に通電してこれらの内部電極8,9を発熱させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る製造方法が適用される積層セラミックスコンデンサの斜視図である。
【図2】図1に示された積層セラミックスコンデンサの断面図である。
【図3】本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法のフローを示す図である。
【図4】本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法での絶縁抵抗検査工程における測定装置の概略を示す図である。
【図5】本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法での絶縁抵抗検査工程における測定装置の概略を示す図である。
【図6】本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法の変形例での絶縁抵抗検査工程における測定装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…積層セラミックスコンデンサ、2…素体、3…信号用端子電極、5…接地用端子電極、7…誘電体層、8…信号用内部電極、9…接地用内部電極、11…被検査体、12,17,19…直流電源、13…通電プローブ、15…測定プローブ、21…測定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の内部電極が配置されると共に誘電体材料を含む素体と、前記第1の内部電極に電気的に接続されると共に前記素体の外表面に配置された複数の第1の端子電極と、前記第2の内部電極に電気的に接続されると共に前記素体の外表面に配置された少なくとも一つの第2の端子電極と、を有する電子部品の製造方法であって、
前記複数の第1の端子電極のうち少なくとも二つの第1の端子電極に通電プローブをそれぞれ接触させて、前記通電プローブ間に通電することにより、前記第1の内部電極を前記誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる工程と、
前記第1の内部電極を前記誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、前記複数の第1の端子電極のうち少なくとも一つの第1の端子電極と前記少なくとも一つの第2の端子電極とに測定プローブをそれぞれ接触させて、前記測定プローブ間に通電することにより、前記電子部品の電気的特性を測定し、該電気的特性に基づいて前記電子部品の良否を判定する工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記通電プローブを前記少なくとも二つの第1の端子電極に接触させると共に測定プローブを前記少なくとも一つの第1の端子電極と前記少なくとも一つの第2の端子電極とに接触させた状態で前記通電プローブ間に通電することにより、前記内部電極を前記誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させ、
前記通電プローブを前記少なくとも二つの第1の端子電極に接触させると共に測定プローブを前記少なくとも一つの第1の端子電極と前記少なくとも一つの第2の端子電極とに接触させた状態で前記測定プローブ間に通電することにより、前記電子部品の電気的特性を測定することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記電気的特性として絶縁抵抗を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
誘電体材料を含む素体と、前記素体内に配置された内部電極と、を有する電子部品の製造方法であって、
前記内部電極に通電することにより、前記内部電極を前記誘電体材料のキュリー温度以上の温度に発熱させる工程と、
前記内部電極を前記誘電体材料のキュリー温度以上の温度とした状態で、前記電子部品の電気的特性を測定し、該電気的特性に基づいて前記電子部品の良否を判定する工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−198793(P2008−198793A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32436(P2007−32436)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】