説明

電子部品包装用カバーテープ

【課題】 耐衝撃性に優れ、高速の表面実装機を用いてキャリアテープより剥離してもテープ切断事故が発生せず、生産効率を落とすことなく電子部品の表面実装ができるカバーテープを提供する。
【解決手段】 電子部品を収納するポケットを連続的に形成したプラスチック製キャリアテープに熱シールし得るカバーテープであって、該カバーテープが、基層フィルム1、中間層2、接着層3から構成され、基層フィルム1の一部または全部が、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下のポリアミド樹脂フィルムであることを特徴とする電子部品包装用カバーテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の保管、輸送、装着に際し、電子部品を汚染から保護し、電子回路基板に実装するために整列させ、取り出せる機能を有する包装体のうち、収納ポケットを形成したプラスチック製キャリアテープに熱シールされ得るカバーテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICを始めとして、トランジスター、ダイオード、コンデンサー、圧電素子レジスターなどの表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて、収納し得るエンボス成形されたポケットを連続的に形成したプラスチック製キャリアテープと、このキャリアテープに熱シールし得るカバーテープとからなる包装体に包装されて供給されている。内容物の電子部品は、包装体のカバーテープを剥離した後、自動的に取り出され、電子回路基板に表面実装されている。
【0003】
カバーテープは、一般的には2軸延伸ポリエステルフィルムをベースとした基層フィルム1と、中間層2と、キャリアテープにヒートシールさせるために設ける接着層3とからなる。例えばポリエチレンテレフタレートからなる基層フィルム1に、中間層2としてポリエチレンと、接着層3としてエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)とを押し出しラミで積層したフィルムなどが主に使用されている。
【0004】
近年、コンピュータを初めとする電気製品の目覚ましい発展のため、前述した電子部品の需要がかなりの勢いで伸びている。それに伴い、該電子部品を電子回路基板に実装する表面実装機の高速化の要求が増え、現在の表面実装スピードは0.09秒/タクト(一つの電子部品の実装を始めて次の電子部品の実装を始める迄のサイクル)にまで至っている。その際、カバーテープは同様のスピードあるいはそれ以上のスピードで剥離されるため、カバーテープ自身に大きな負荷がかかってテープ切れが起こり、生産効率を落とす原因となっている。
【0005】
そのため、ポリエチレンテレフタレートフィルムの内側に、耐衝撃向上層としてヤング率の低いポリアミド樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルムをドライラミネーションで貼り合わせた複層フィルムを、基層フィルム1として使用する方法(特許文献1)が一般的になってきた。中でもポリアミド樹脂フィルムは、耐摩耗性、耐衝撃性、耐ピンホール性に優れており、ポリエチレンテレフタレートフィルムの内貼りフィルムとして優れている。
【0006】
基層フィルム1として複層フィルムを使用する方法では、ドライラミネート工程を経て製造するためにコストが高いという問題があるものの、ポリエチレンテレフタレートフィルム単層では耐衝撃性が悪く、帯電しやすい、またポリオレフィン樹脂フィルム単層では耐熱性が悪いという欠点があり、それぞれ単層で採用することは難しかった。また、ポリアミド樹脂フィルムは、中間層、接着層に使用する樹脂と比べて吸湿による寸法変化が大きいために、ポリアミド樹脂フィルム単層を基層フィルムとして、これに中間層、接着層と積層した場合、得られたカバーフィルムがカールしてしまい、その結果として、カバーフィルムをキャリアテープの幅にあわせてスリットする工程や、キャリアテープにヒートシールする工程において、操業性が著しく悪化するという問題がある。従って、基層フィルムを単層のフィルムに置き換えることは困難であった。
【0007】
これを解決するために、特許文献2ではポリエチレンテレフタレートに共重合成分を導入する方法が、また特許文献3では分子構造制御を施した強度、伸度の高いポリエチレンテレフタレートを使用する方法が提案されているが、いずれも基層フィルムの骨格にポリエチレンテレフタレートを使用しているために耐衝撃性の向上には限界があった。
【特許文献1】特許第3059370号公報
【特許文献2】特開2003−34355号公報
【特許文献3】特開2005−14955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決し、耐衝撃性に優れ、高速の表面実装機を用いてキャリアテープより剥離してもテープ切断事故が発生せず、生産効率を落とすことなく電子部品の表面実装ができるカバーテープを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、カバーテープの基層フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂ではなく、ポリアミド樹脂からなるフィルムに着目し、特殊なポリアミド樹脂フィルムを使用することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、電子部品を収納するポケットを連続的に形成したプラスチック製キャリアテープに熱シールし得るカバーテープであって、該カバーテープが、基層フィルム1、中間層2、接着層3から構成され、基層フィルム1の一部または全部が、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下のポリアミド樹脂フィルムであることを特徴とする電子部品包装用カバーテープである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、高湿度雰囲気下での吸湿伸びを低減した基層フィルム1を使用するので、これに中間層2と接着層3とを積層して得られるカバーフィルムは、カールを抑制することができる。また、基層フィルム1の主成分がポリアミド樹脂であるため、得られるカバーテープの衝撃強度が高く、高速の表面実装機を用いてキャリアテープより剥離してもテープ切断事故が発生せず、生産効率を落とすことなく電子部品の表面実装ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のカバーテープは、図1に示したように、基層フィルム1と、中間層2と、接着層3とから構成される。そして、基層フィルム1は、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率(以下、TD方向の吸湿伸び率と略称する。)が1.3%以下のポリアミド樹脂フィルムを含む、単層または二種以上のフィルムを積層したフィルムである。
【0012】
本発明において、ポリアミド樹脂フィルムを構成するポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミドを主成分とするものが好適に使用できる。脂肪族ポリアミドとしては、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られるポリアミド樹脂、具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどの重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどのジアミンと、アジピン酸、セバチン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などのジカルボン酸との塩を重縮合させて得られる重合体またはこれらの共重合体が挙げられ、中でもナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/12等が好適に使用でき、特に、機械的特性や熱的特性に優れることから、ナイロン6やナイロン66を主成分とする重合体がより好適に使用でき、ナイロン6が最適である。なお、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、メタキシリレンジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族成分を共重合したり、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等の芳香族ポリアミドを添加してもよい。
【0013】
本発明において上記ポリアミド樹脂フィルムは、TD方向の吸湿伸び率が1.3%以下であることが必要である。TD方向の吸湿伸び率が1.3%を超えると、吸湿によりカバーフィルムのポリアミド樹脂フィルム部分の寸法が変化する一方で、中間層2の部分は変化しないために、カバーフィルムがカールしてしまい、その結果として、スリット工程やヒートシール工程での操業性が著しく悪化して好ましくない。TD方向の吸湿伸び率が1.3%以下ならばカール現象を抑制することが可能となり、その結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどとドライラミする必要がないため、加工工程を省略でき、大幅なコストダウンができる。加えて、そもそもポリアミド樹脂フィルムは帯電しにくい性質を有しているため、ポリエチレンテレフタレートフィルムでは必須の帯電防止処理が不必要となったり、または軽減することが可能となる。
【0014】
TD方向の吸湿伸び率を1.3%以下に抑制するためには、製膜条件などを変更することによりある程度達成できるが、良好な機械強度を維持するためには、層状ケイ酸塩0.1〜2質量%が均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜したポリアミド樹脂フィルムを使用することが有効である。
【0015】
本発明で使用される層状ケイ酸塩としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロライト、ヘクトライト、スティブンサイトなどのスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト粘土鉱物、ハロイサイト粘土鉱物などが挙げられる。これらの層状ケイ酸塩は天然のものであっても合成されたものであってもよく、合成されたものとしては、例えば、膨潤性フッ素雲母系鉱物などが挙げられる。なかでも、層の厚みが6〜12Å、層の一辺の長さが0.001〜10μmの結晶単位からなるものが好ましい。
【0016】
上記層状ケイ酸塩をポリアミド樹脂に均一に分散させた樹脂組成物を得るには、層状ケイ酸塩を膨潤化剤、例えば、12アミドドデカン酸と接触させて、予め層状ケイ酸塩の層間を広げて、層間にモノマーを取り込みやすくした後、ポリアミドモノマーと混合し、重合すればよい。
【0017】
樹脂組成物における層状ケイ酸塩の配合割合が0.1質量%より少なくなると、得られるポリアミド樹脂フィルムの吸湿伸び率が大きく、寸法安定性に劣る。一方、2質量%より多くなると寸法安定性改善効果が飽和するだけでなく、ポリアミド樹脂フィルムの製膜性が悪化したり、フィルムに不均一なボイドが生成して著しく概観を損ねるため好ましくない。カバーフィルムとしては、中身が確認できるように透明性を要求される場合が多いので、該用途の場合は層状ケイ酸塩の配合割合は1質量%以下がより好ましい。
【0018】
本発明において、ポリアミド樹脂フィルムの面配向係数は0.05以上であることが好ましい。面配向係数を0.05以上とすることで、層状ケイ酸塩を配合しても、通常包装用途などに市販されているポリアミド延伸フィルムと同等以上の機械強力にすることができる。面配向係数が0.05未満であると機械強力に劣り、破袋などのトラブルが起きやすくなる。面配向係数を0.05以上とする方法としては、樹脂を溶融して作成した未延伸フィルムを、延伸倍率が面倍率で9倍以上となるように延伸する方法が挙げられる。
【0019】
また、本発明に使用するポリアミド樹脂フィルムを構成する樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、着色剤、離型剤、顔料等の添加剤を添加してもよく、これらは樹脂組成物の溶融混練時もしくは重合時に加えられる。
【0020】
上記のように構成されたポリアミド樹脂フィルムは、以下のような方法により製造される。例えば、ポリアミド樹脂に層状ケイ酸塩を上記の配合割合にて均一に分散させた樹脂組成物を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印可キャスト法など公知のキャスティング法により、回転する冷却ドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを製膜し、この未延伸フィルムに延伸処理を施すことで得られる。
未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
延伸処理には、縦方向に延伸した後、横方向に延伸処理する逐次二軸延伸と、縦横同時に延伸処理を行う同時二軸延伸のどちらの方法を用いてもよい。逐次二軸延伸を行う場合と同時二軸延伸を行う場合とでその延伸条件が異なるが、いずれの延伸方法においても、0.05以上の面配向係数が得られるように面倍率が9倍以上になるようにして延伸処理することが好ましい。
逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸が行われたフィルムは、同テンター内において150〜220℃の温度で熱固定し、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で縦方向および/または横方向の弛緩処理を施す。
【0021】
なお、ポリアミド樹脂フィルムには、機能性を付与するために、各種機能性コート液の塗布を行ってもよい。コーティングは、通常、逐次二軸延伸の場合には横延伸直前あるいは横延伸後のフィルムに、また、同時二軸延伸を行う場合には延伸直前あるいは延伸後のフィルムに施される。コーティングの方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、インバースロール法、またはこれらの組み合わせによる各種コーティング方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。
【0022】
基層フィルム1の厚みは10〜60μmであることが好ましい。基層フィルム1の厚みが10μm未満では得られるカバーテープが切れやすくなり、60μmを超えると硬すぎてシールが不安定となる。
【0023】
コスト面を考えると、基層フィルム1は上記ポリアミド樹脂フィルム単独であることが最も好ましいが、特に滑り性などの高度な要求がある場合は、その外側にポリエステルフィルムを貼り合わせることにより、より機械特性の優れたカバーフィルムが得られる。ポリエステルフィルムに使用するポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、またはこれらポリエステルの一部にイソフタル酸、ジエチレングリコール、マレイン酸、アジピン酸、乳酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメタノールなどが共重合された共重合ポリエステルなどが挙げられる。該ポリエステルフィルムは2軸延伸されていることが望ましい。
【0024】
本発明において、中間層2は、厚みが5〜50μmのフィルムであり、加工性、シール時のクッション性、コスト等を考慮すると、ポリエチレン系樹脂を用いるのが最も望ましいが、これに限定する必要はない。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルメタクリレート共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体或いはエチレン−アクリル酸共重合体に金属を含有したもの、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0025】
中間層2は基層フィルム1に樹脂を押出ラミネートすることにより得られる。中間層2の厚みが5μm未満では、厚みのバラツキが大きく、シール時適当なピールオフ強度が得られなくなる。50μmを超えると、押出ラミネート加工が難しく、別工程で中間層を作製しなければならなくなり、コストアップへつながる。外層と中間層とのラミネート強度を向上させる目的でイソシアネート系、イミン系等の熱硬化型の接着層を介して両者をラミネートしてもよい。
【0026】
本発明において、接着層3は、カバーフィルムをキャリアテープにヒートシールさせるために設ける層である。接着層3の材料としては前述した中間層に用いられるすべての樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリエステル系接着剤等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしてはスチレン−ブタジエン共重合体あるいはその水素添加物、スチレン−イソプレン共重合体或いはその水素添加物等が挙げられる。接着層3の厚みは、0.5〜55μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満であると、厚みのバラツキが大きくなり、ピールオフ強度がばらつく。厚みが55μmを超えると、中間層2の場合と同様に、押出ラミネート法では加工が難しく、別工程で該層を作製しなければならなくなりコストアップへつながる。また静電効果を設けるために接着層3の基層フィルム1側の表裏面に帯電防止処理層あるいは導電層を設けてもよい。
【0027】
接着層3の形成方法は接着層の厚みによって異なり、厚みが5μm以下の場合は、ヒートシールラッカーをコーティングする方法が望ましく、厚みが5μm以上の場合は、押出ラミネート法を用いるのが望ましい。
【0028】
本発明において、カバーテープの総厚みは30〜80μmであることが好ましい。30μm未満であると、表面実装機で高速剥離した時にテープ切れトラブルが起こり、80μmを超えると、剥離時ピールオフ強度のバラツキが大きくなる。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例を以下に示すがこれらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0030】
(測定方法)
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度:
96質量%濃硫酸中にそれぞれの樹脂の乾燥ペレットを濃度が1g/dlとなるように溶解し、温度25℃で測定した。
【0031】
(2)TD方向の吸湿伸び率(%):
ポリアミド樹脂フィルムを20℃、40%RHの雰囲気下で1日調湿し、MD方向×TD方向=10mm×150mmの試料を作成し、初期サンプルのTD方向の長さ(A)を測定した。続いて20℃、80%RH雰囲気下に湿度変化させ、1日調湿した後、サンプルのTD方向の長さ(B)を測定した。この測定結果を用いて下記式よりTD方向の吸湿伸び率(C)を算出した。
C(%)={(B−A)/A}×100
【0032】
(3)ヘーズ(%):
東京電色社製のヘーズメータを用いて、ASTM−D−1003に記載の方法に準じて測定した。
【0033】
(4)カール判定:
カバーフィルムを20℃、40%RHの雰囲気下で1日調湿し、MD方向×TD方向=200mm×200mmの試料を作成した。続いて20℃、80%RH雰囲気下に湿度変化させ、2日調湿した後、フィルムのカールの度合いを測定した。
◎:最大カール量 0.5mm未満
○:最大カール量 0.5mm以上、2mm未満
△:最大カール量 2mm以上、5mm未満
×:最大カール量 5mm以上
【0034】
(原料、フィルムの作成方法)
(1)モンモリナイトマスターチップの作成:
平均粒子径が1μmのモンモリナイト100gに対して、濃度1Nの12−アミドドデカン酸塩化物水溶液10リットルを混合し、攪拌した。次にこれを濾過水洗した後、乾燥し、モンモリロナイトと12−アミノドデカン酸アンモニウムイオンとの複合体を得た。攪拌機を備えた密閉反応容器にε−カプロラクタム10kgと水1kg、さらに樹脂組成物中のモンモリロナイト含有量が4質量%となるように所定量の複合体を混合し、80℃で反応系が均一な状態になるまで攪拌した。次に反応系を260℃まで加熱し、反応容器内の圧力が1.5MPaの状態で約1時間攪拌した。圧力を常圧に戻し、260℃で約1時間攪拌を行い、さらに窒素気流下で反応系内の水を除去しながら約1時間攪拌した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に水浴中に払い出し、冷却、固化後、切断して、モンモリロナイトが均一に分散したポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを95℃の温水中で約6時間処理し、可溶成分を抽出した後、温度80℃の減圧下で乾燥した。上記の方法により、モンモリロナイトを4質量%含有したマスターチップを得た。得られたマスターチップの相対粘度は2.7であった。
【0035】
(2)シリカマスターチップの作成:
攪拌機を備えた密閉反応容器に10kgのε−カプロラクタム、1kgの水、および500gのシリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア310P)を投入し、100℃に保持して、この温度で反応系内が均一になるまで攪拌した。引き続き攪拌しながら260℃に加熱し、圧力1.5MPaを1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに1時間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化した後、切断して、シリカが均一に分散したポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。次いで、このペレットを95℃の温水中で約8時間処理し、可溶成分を抽出した後、温度80℃の減圧下で乾燥した。上記の方法により、シリカを含有したマスターチップを得た。得られたマスターチップの相対粘度は2.7であった。
【0036】
(3)ポリアミド樹脂フィルムA〜Hの作成:
相対粘度が3.0であるナイロン6に、滑剤としてシリカが0.2質量%となるように、また層状ケイ酸塩としてモンモリロナイトが表1の値となるように、各マスターチップを混合して押出し温度260〜270℃で溶融混練し、幅が630mmのTダイよりシート状に溶融押出した。そして、エアーナイフキャスト法により、20℃の回転ドラムに密着させて急冷し、実質的に無定形で配向していない未延伸ポリアミドフィルムを作製した。次いでこの未延伸フィルムをテンター式同時二軸延伸機に導いてフィルム温度と縦延伸倍率、横延伸倍率を変えて延伸し、表1のようなポリアミド樹脂フィルムA〜Hを得た。このフィルムのTD方向の吸湿伸び率(%)、ヘーズを表1に示す。
【0037】
実施例1
フィルムAに、中間層2として低密度ポリエチレンを、接着層3としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を押出ラミネート法により製膜し、図1に示した積層構成のカバーフィルムロールを得た。得られたカバーフィルムのカール度を表1に示した。
【0038】
実施例2〜5、比較例1〜3
基層フィルム1として表1に記載したポリアミド樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてカバーフィルムを得た。得られたフィルムのカール度を表1に示した。
【0039】
実施例6、7、比較例4
基層フィルム1として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET−12」にポリアミド樹脂フィルムA、G、Eをドライラミネート法で積層したフィルムを用いた以外は実施例1と同様にしてカバーフィルムを得た。得られたフィルムのカール度を表1に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1で得られたフィルムロールは端部にしわやたるみがなく、外観は良好であった。得られたカバーフィルムを5.5mm幅にスリットした後、ポリエチレンテレフタレート製のキャリアテープとヒートシールを行い、高速剥離機(42000mm/min)で剥離試験を実施したところ、テープ切れは発生せず、良好であった。
実施例2〜5で得られたカバーフィルムロールは端部にしわやたるみがなかった。得られたカバーフィルムを5.5mm幅にスリットしたところ、格落ちもなく、操業性は良好であった。なお、実施例4のフィルムは不透明であり、フィルムを通して中身の確認をする用途には採用は難しいものであった。
比較例1〜3で得られたフィルムロールは端部にたるみが散見され、5.5mm幅にスリットしたところ、フィルムロール端部でフィルム切れや巻き姿の悪化が認められ、スリットロスが多かった。また、フィルムロール端部から採取したフィルムをキャリアテープにヒートシールしたところ、シール時にフィルムにカールが発生してシールした後の外観が悪かった。
実施例6、7で得られたフィルムロールは端部にしわやたるみがなかった。得られたフィルムを5.5mm幅にスリットしたところ、格落ちもなく、操業性は良好であった。
比較例4で得られたフィルムロールは端部に微小たるみが散見された。5.5mm幅にスリットしたところ、フィルムロール端部で巻き姿の悪化が認められた。また、フィルムロール端部から採取した積層フィルムをキャリアテープにヒートシールしたところ、シール後の外観は悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のカバーテープの層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基層フィルム1
2 中間層2
3 接着層3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納するポケットを連続的に形成したプラスチック製キャリアテープに熱シールし得るカバーテープであって、該カバーテープが、基層フィルム1、中間層2、接着層3から構成され、基層フィルム1の一部または全部が、20℃、40%RH雰囲気下から20℃、80%RH雰囲気下へ湿度変化させたときのTD方向の吸湿伸び率が1.3%以下のポリアミド樹脂フィルムであることを特徴とする電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
ポリアミド樹脂フィルムが、層状ケイ酸塩0.1〜2質量%が均一に分散された樹脂組成物を溶融製膜したフィルムであることを特徴とする請求項1記載の電子部品包装用カバーテープ。


【図1】
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【公開番号】特開2007−326602(P2007−326602A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158563(P2006−158563)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】