説明

電子部品及びその製造方法

【課題】外装ケース又は封口板の透孔に対する溶接による封止に関し、溶接を均一化し、封止劣化を防止する。
【解決手段】素子(コンデンサ素子4)を収容する外装ケース(6)又は該外装ケースの封口板(8)に形成された透孔(注液口32)と、透孔を封止する封止体(封止ピン44、封止板64)と、外装ケース又は封口板の透孔の周囲部に設けられ、又は周囲部に対して封止体に設けられた突起部(環状突起部50、60)とを備え、封止体と、封口板又は外装ケースとの間に溶接電流を流して少なくとも突起部の一部又は全部を溶融させることにより、封止体で透孔を封止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装ケースに素子封入後、電解液注入処理等のために注液口を備え、その注液口の封止処理を伴う電解コンデンサ等の電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットLCD・LEDTVでは、従来のブラウン管TV受像機に比較して大幅に薄型化されているが、このような薄型化機器では、搭載される電源装置にも小型化や薄型化が要求されている。このような電源装置では薄型平板形のコンデンサ等の電子部品が検討されている。
【0003】
薄型平板形のコンデンサでは一般的に金属ケースが使用され、電解液を含浸したコンデンサ素子を挿入した後、その金属ケースと開口部に金属製の封口板を溶接し、金属ケースを封止している。ところで、コンデンサ素子に含浸された電解液が、コンデンサ素子を金属ケースに挿入する際、金属ケースの開口部に付着するおそれがある。電解液が付着している開口部を溶接によって封止する場合、その電解液が金属ケースと封口板の溶接を妨げ、溶接状態の劣化や、気密性の低下等のおそれがある。
【0004】
電解液の含浸技術に関し、部品を収容した後、ケースを封口し、ケースに開口した注液口から電解液を含浸することが知られている(例えば、特許文献1)。このようにケースに注液口を形成している場合には、電解液の注液後、注液口の口径より大きい金属球を注液口に載せ、その金属球に電極棒を押し当てて電流を流して抵抗溶接を行い、溶けた金属球で注液口を塞いでいる。このように注液口からケースに電解液を注液し、ケースの封止部分に電解液を付着させなければ、その封止が電解液によって妨げられる不都合は回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−135082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような金属材料で形成された部材にある透孔を抵抗溶接によって塞ぐ場合、金属球が用いられる。この金属球に主電極を押し当てて溶接電流を流す抵抗溶接では、主電極を金属球から離す際溶融した金属球が表面張力により主電極側に付着してしまい、透孔の封止に失敗する場合がある。
【0007】
また、金属球を用いた場合、金属球と透孔側の部材との間の溶接強度に偏りが生じる。抵抗溶接では、金属球を押圧する主電極に対し、電流経路を確保する副電極が透孔の近傍に設置される。このため、溶接電流の多くが副電極側に流れるため、その電流経路に沿って溶接が進行し、副電極から遠ざかる位置では溶接電流が少なく、溶接状態が悪化し、これが溶接強度に偏りを生じさせる。場合によっては、封止劣化を生じる。
【0008】
斯かる要求や課題について、特許文献1にはその開示や示唆はなく、それを解決する構成等についての開示や示唆はない。
【0009】
そこで、本発明の電子部品及びその製造方法の目的は、外装ケース又は封口板にある透孔を溶接による封止に関し、溶接を均一化し、封止劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の電子部品は、素子を収容する外装ケース又は該外装ケースの封口板に形成された透孔と、前記透孔を封止する封止体と、前記外装ケース又は前記封口板の前記透孔の周囲部に設けられ、又は前記周囲部に対して前記封止体に設けられた突起部と、を備え、前記封止体と、前記封口板又は前記外装ケースとの間に溶接電流を流して少なくとも前記突起部の一部又は全部を溶融させることにより、前記封止体で前記透孔を封止している。
【0011】
上記目的を達成するためには、上記電子部品において、前記封止体は、前記透孔に挿入される挿入部を備えてもよい。
【0012】
上記目的を達成するためには、上記電子部品において、前記突起部は、前記透孔を包囲する環状突起であってもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の電子部品の製造方法は、素子を収容する外装ケース又は該外装ケースの封口板に形成された透孔の周囲部に突起部を接触させて封止体を設置する工程と、前記封止体と前記封口板又は前記外装ケースとの間に溶接電流を流して少なくとも前記突起部の一部又は全部を溶融させることにより、前記封止体で前記透孔を封止する工程とを含んでいる。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の電子部品の製造方法は、素子を収容する外装ケース又は該外装ケースの封口板に形成された透孔の周囲部に突起部を形成し、又は該周囲部に対して配置され前記透孔を封止する封止体に突起部を形成する工程と、前記透孔に対し、前記突起部を介して前記封口板に前記封止体を設置する工程と前記封止体と前記外装ケース又は封口板との間に溶接電流を流して少なくとも前記突起部の一部又は全部を溶融させることにより、前記封止体で前記透孔を封止する工程とを含んでいる。
【0015】
上記目的を達成するためには、上記電子部品の製造方法において、前記透孔を包囲する複数箇所に副電極を当てるとともに、前記封止体に主電極を当て、複数の前記副電極を用いて前記突起部に複数箇所から溶接電流を流してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0017】
(1) 外装ケース又は封口板にある透孔を溶接による封止に関し、溶接を均一化し、封止劣化を防止することができる。
【0018】
(2) 封止体の突起部を溶接電流によって溶融させ、封止体によって透孔を封止することができる。
【0019】
(3) 封止部分の偏りを防止でき、封止強度を向上させることができるとともに、封止精度を高めることができる。
【0020】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係るコンデンサの一例を示す分解斜視図である。
【図2】密閉された外装ケースへの電解液の注入を示す図である。
【図3】封止ピン及び封止ピンが設置された注液口の一例を示す図である。
【図4】溶接方法及び溶接状態を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る封口板側の環状突起部及び封止板の一例を示す図である。
【図6】金属球を用いた比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1の実施の形態〕
【0023】
第1の実施の形態は、電子部品の一例としてコンデンサの外装ケースを封口する封口板の注液口の封止を開示している。この実施の形態では、封止体側に環状突起部を備えている。
【0024】
このコンデンサについて、図1及び図2を参照する。図1はコンデンサの一例を示し、図2は密閉された外装ケースへの電解液の注入を示している。図1及び図2に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されない。
【0025】
コンデンサ2は、本発明の電子部品の一例である。図1に示すコンデンサ2は、電気二重層コンデンサ又は電解コンデンサの何れでもよく、コンデンサ素子4と、外装ケース6と、封口板8とを備える。コンデンサ素子4は複数の陽極箔10と、陰極箔12とを備え、これら陽極箔10と陰極箔12をセパレータ14を介在させて交互に重ね合わせた積層素子であって、偏平薄型である。陽極箔10及び陰極箔12には電極材料としてアルミニウム板やアルミニウム箔が用いられ、各陽極箔10の表面には拡面処理層及び酸化皮膜層が形成され、陰極箔12の表面には酸化被膜層及び必要に応じて拡面処理層が形成されている。
【0026】
各陽極箔10には陽極タブ18が形成され、コンデンサ素子4の素子端面20の同一箇所に引き出されている。また、各陰極箔12には陽極箔10側とは異なる位置に陰極タブ22が形成され、コンデンサ素子4の素子端面20の同一箇所に引き出されている。即ち、陽極タブ18及び陰極タブ22はそれぞれ個別に重ねられ、陽極タブ18と陰極タブ22との間に絶縁間隔24が設定され、コンデンサ素子4の素子端面20に設置されている。
【0027】
外装ケース6は、コンデンサ素子4を収容可能な容積空間を持った容器であり、その形態は、偏平な長方形状の開口部26を備えた有底角筒体である。この外装ケース6は、電極材料と同一の基材である例えば、アルミニウム板で形成されている。
【0028】
封口板8は、外装ケース6の開口部26を塞ぐ閉塞手段であって、この実施の形態では、外装ケース6の開口部26の内形状又は開口部26側の端面形状に応じて形成されている。この封口板8は、外装ケース6と同様に電極材料と同一の基材である例えば、アルミニウム板、即ち、外装ケース6と同一材料で形成されている。
【0029】
この封口板8には、陽極端子28と陰極端子30とが設置されているとともに、注液口32が形成されている。
【0030】
陽極端子28及び陰極端子30は外部接続のための端子であって、陽極端子28にはコンデンサ素子4の陽極タブ18が溶接により接続され、陰極端子30にはコンデンサ素子4の陰極タブ22が溶接により接続されている。陽極端子28及び陰極端子30は、封口板8に形成された端子口34、36に絶縁材料である例えば、ゴム環38を介在させて固定されている。
【0031】
注液口32は、封口板8を貫通させた円形の透孔であって、図2に示すように、コンデンサ素子4が収容された外装ケース6の開口部26を封口板8で封口した後、密閉状態にある外装ケース6内に電解液40の注入に用いられる。電解液40の注入にはディスペンサ42等の注入手段が用いられ、注入された電解液40がコンデンサ素子4に含浸される。
【0032】
そして、注液口32の封止には封止ピン44が用いられ、この封止ピン44は注液口32を封止する封止体の一例であって、封口板8と同一の金属材料で形成される。注液口32の封止処理には溶接が用いられる。溶接には抵抗溶接が用いられ、封口板8に封止ピン44を溶着させることによって注液口32を封止することができる。
【0033】
次に、封止ピン44及び封口板8の注液口32について、図3を参照する。図3は封止ピン及び封止ピンが設置された注液口の一例を示している。図3に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されない。
【0034】
この封止ピン44は図3のA及びBに示すように、例えば、円盤状のベース部46を備え、このベース部46の中心部に注液口32に挿入可能な支柱部48を備えている。図3のBは図3のAのIII B−III B線断面である。支柱部48は、注液口32に挿入可能な外径r1 を持つ円柱状部である。ベース部46には、支柱部48を中心に支柱部48を包囲する環状突起部50が形成され、この環状突起部50は断面三角形状であって、先端部径r2 は、図3Cに示す注液口32の内径r3 より大きく設定されている。従って、注液口32に封止ピン44の支柱部48を挿入すれば、図3のCに示すように、注液口32の周囲部に封止ピン44の環状突起部50を接触させて設置させることができる。
【0035】
次に、抵抗溶接処理について、図4を参照する。図4は溶接方法及び溶接状態を示している。図4に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されない。
【0036】
この抵抗溶接処理は、本発明の電子部品の製造方法の一例であって、この溶接処理では封口板8の注液口32に図4のAに示すように、封止ピン44を設置し、この封止ピン44のベース部46に溶接装置52の主電極54が設置される。封口板8には副電極56が設置されて、それぞれ電気的な導通が取られる。そして、主電極54と副電極56との間には溶接用電源として直流電源58が接続される。主電極54及び副電極56を構成する電極材料は、抵抗が低いものであればよい。材質は溶接材料である封止ピン44との相性で適宜決定すればよく、例えば、モリブデン、クロム鋼、タングステン等を用いることができる。
【0037】
主電極54を封止ピン44に押圧しながら通電すると、主電極54と副電極56との間に溶接電流Isが流れる。この溶接電流Isは直流電流であり、主電極54から封止ピン44側の環状突起部50と封口板8との接触部分を経て副電極56に至る。
【0038】
この溶接電流Isは、封止ピン44側の環状突起部50と封口板8との間はオーム接触であり、図4のBに示すように、主電極54から環状突起部50を介して副電極56に流れ、局所的な集中が生じない。
【0039】
この溶接電流Isによりジュール熱が発生し、ジュール熱で環状突起部50とともに、環状突起部50と封口板8の接触部及びその近傍が溶融する。この結果、図4のCに示すように、封止ピン44の環状突起部50が封口板8内に侵入して一体化され、注液口32が封止ピン44によって封止される。
【0040】
このような封止ピン44を用いれば、環状突起部50を備えているので、環状突起部50及びその近傍部分に溶接電流Isを集中させることができ、金属の溶融範囲を環状突起部50及びその近傍部分(封口板8の接触部分)に限定することができる。そして、溶接範囲が特定範囲に制御できるとともに、溶接不良を防止でき、封止ピン44による注液口32の封止強度を高め、外装ケース6の気密性を向上させることができ、コンデンサ2の信頼性が高められる。
【0041】
また、この実施の形態では、封止ピン44に支柱部48を備えているので、この支柱部48で封止ピン44が注液口32を塞ぐ位置に位置決めされて固定され、溶接の際に封止ピン44の位置的変位を防止でき、溶接の信頼性が高められる。
【0042】
〔第2の実施の形態〕
【0043】
第2の実施の形態は、封口板の注液口の周囲に環状突起部を備えている。
【0044】
この第2の実施の形態について、図5を参照する。図5は封口板側の環状突起部及び封止板の一例を示している。図5に示す構成は一例であって、本発明は斯かる構成に限定されない。図5において、図1〜図4と同一部分には同一符号を付してある。
【0045】
第1の実施の形態では、封止ピン44側に環状突起部50を備えたが、この環状突起部50に代えて、図5のAに示すように、封口板8の注液口32の周囲部に環状突起部60を備えてもよい。この環状突起部60は、注液口32を中心に注液口32を包囲する。この環状突起部60は図5のBに示すように、一例として、断面形状が三角形状であって、先端部径r2は注液口32の内径r3より大きく設定されている。
【0046】
このような環状突起部60を備えた場合、既述の封止ピン44に代え、円盤状の封止板64を用いればよい。封止板64は、注液口32を封止する封止体の一例である。この封止板64は、既述の封止ピン44のベース部46(図3)のみで構成された形状と同一又は近似である。
【0047】
このように、注液口32の周囲部に環状突起部60を備えれば、円盤状の封止板64を図5のBに示すように、注液口32の周囲部にある環状突起部60に封止板64を接触させて載置させればよい。
【0048】
なお、封止板64には、図5のCに示すように、封止ピン44と同様に支柱部66を中心部に備え、この支柱部66を注液口32に挿入させて支持する構成であってもよい。
【0049】
このように注液口32の周囲部に環状突起部60を備えた場合、その抵抗溶接処理では、注液口32の環状突起部60に封止板64を設置し、この封止板64上に第1の実施形態と同様に、溶接装置52の主電極54が設置される。封口板8には副電極56が設置されてそれぞれ電気的な導通が取られる。
【0050】
主電極54を封止板64に押圧しながら通電すれば、主電極54と副電極56との間に溶接電流Isが流れる。これにより、環状突起部60とともに、環状突起部60に接触している封止板64の接触部及びその近傍が溶融する。この結果、封口板8側の環状突起部60が封止板64内に侵入して一体化され、注液口32が封止板64によって封止される。
【0051】
このような封口板8を用いれば、環状突起部60を備えているので、環状突起部60及びその近傍部分に溶接電流Isを集中させることができ、金属の溶融範囲を上記実施の形態と同様に環状突起部60及びその近傍部分(封口板8の環状突起60の部分及び封止板64)に限定することができる。溶接範囲が特定範囲に制御できるとともに、溶接不良を防止でき、封止板64による注液口32の封止強度を高め、上記実施の形態と同様に、外装ケース6の気密性を向上させることができ、コンデンサ2の信頼性が高められる。
【0052】
〔第3の実施の形態〕
【0053】
第3の実施の形態は電子部品の製造方法の一例としてコンデンサの製造方法を開示している。

【0054】
この製造工程は、本発明の電子部品の製造方法の一例である。コンデンサ2の製造工程には、コンデンサ素子4の形成工程、外装ケース6への封入工程、電解液含浸工程及び注液口封止工程が含まれる。
【0055】
コンデンサ素子4の形成工程では、例えば図1に示すように、複数枚の長方形状の陽極箔10と、陰極箔12とを形成するとともに、各陽極箔10及び陰極箔12の例えば、長手方向の縁部に陽極タブ18及び陰極タブ22を形成し、陽極箔10と陰極箔12をセパレータ14を介在させて交互に重ね合わせ、コンデンサ素子4を形成する。
【0056】
このコンデンサ素子4の陽極タブ18及び陰極タブ22を封口板8に設けた陽極端子28及び陰極端子30と溶接等により接続する。即ち、コンデンサ素子4と封口板8とが連結された部品を形成する。封口板8には、既述の注液口32を予め形成しておく。
【0057】
外装ケース6への封入工程では、外装ケース6にコンデンサ素子4を収容し、外装ケース6の開口部26側に封口板8を設置し、外装ケース6と封口板8とを溶接により接続し、外装ケース6を密封する。
【0058】
電解液含浸工程では、外装ケース6に固定された封口板8の注液口32から図2に示すように、ディスペンサ42等により所定量の電解液40を注入する。
【0059】
注液口封止工程では、封止ピン44又は封止板64を用いることにより、溶接により注液口32を封止する。この詳細は図4に示した通りであるので、その詳細説明は省略する。
【0060】
〔他の実施の形態〕
【0061】
(1) 環状突起部50について
【0062】
封止ピン44の環状突起部50に関し、その断面が半球形又は放物面であってもよく、また、環状突起部50の先端部に幅の狭い立壁部を備えてもよい。封止ピン44の環状突起部50は、注液口を囲む形状に形成すればよく、例えば、多角形状であってもよい。
【0063】
このような環状突起部50の変形形態は、封口板8側にある環状突起部60についても同様である。
【0064】
また、ベース部46や封止板64の形状も、注液口32を塞ぐ形状であれば、円盤状に限らず、多角形状であってもよい。
【0065】
また、実施例において環状突起部60は、封止ピン44側若しくは封口板8側のどちらかに備えているが、これに限らず、封止ピン44側及び封口板8側の双方に備えてもよい。例えば、内径の異なる環状突起部60を封止ピン44と封口板8に備えることで、封止ピン44を封口板8に設置した際、お互いの環状突起部60によって、可動し難くなり、位置決めの精度が高くなる。また、封止ピン44側及び封口板8側に設けた双方の環状突起部60及びその近傍が溶融し、より密封精度を高めることができる。更に、封止ピン44側若しくは封口板8側の一方に、凹部を設けた環状突起部を形成し、もう一方の環状突起部の先端を前記環状突起部の凹部に嵌合するように設置してもよい。
【0066】
(2) 副電極56の設置数及びその位置について
【0067】
上記実施の形態では、主電極54に対して副電極56を単一電極で構成しているが、副電極56を複数化し、注液口32を中心にし、注液口32を挟む複数の位置に設置し、溶接電流の通流経路を複数化してもよい。斯かる構成とすれば、溶接電流の偏りをより防止できる。
【0068】
(3) 上記実施の形態では、封口板8に注液口32を形成しているが、外装ケース6に注液口32を形成し、電解液40の注液後、第1の実施の形態又は第2の実施の形態により注液口32を封止してもよい。
【0069】
(4) 上記実施の形態では、コンデンサ素子4に積層型素子を例示したが、帯状体の陽極10と陰極12とを、両者間に介在させたセパレータ14とともに巻回した巻回素子であってもよい。
【0070】
(5) 上記実施の形態では、電子部品の一例としてコンデンサ2を例示したが、コンデンサ2は電気二重層コンデンサ、電解コンデンサが含まれる。また、コンデンサ以外の電子部品、例えば、リチウムイオン電池等の電気化学デバイスであってもよい。
【0071】
(6) 上記実施の形態では、外装ケース6として有底角筒体を例示したが、開口部形状が楕円形状、長円形状等、コンデンサ素子4の形状によって適宜選択すれば良い。
【0072】
(7) 上記実施例では、封口板8と封止体を同一の金属材料としたが、異なる金属材料を用いてもよい。
【0073】
(8) 上記実施例では、透孔である注液口を単数としたが、複数個設けても良い。封口板8に複数の注液口32を形成することで、注液の際、外装ケース6からケース内空気を排出することができる。
【0074】
〔実験結果〕
【0075】
既述の第1の実施の形態についての実験では、封止ピン44を用いた抵抗溶接を行った。この実験には、封口板8及び封止ピン44にアルミニウム材を使用し、注液口32の口径は1.5〔mm〕とし、電極間ピッチ12.5mm、16mm、20mm)とし、加圧力を16〔kgf〕〜28〔kgf〕とし、溶接電流値を6.0〔kA〕〜9.0〔kA〕とし、通電時間を5〔msec〕とした。
【0076】
この実験の結果、溶接電流の片寄りは見られなかった。20ショット程度での、封止ピン44(AL)の電極側に対する付着の発生は確認されなかった。
【0077】
〔比較例〕
【0078】
比較例は、封口板8にある注液口32の抵抗溶接による封止に金属球を用いた場合を示している。
【0079】
この金属球による封止について、図6を参照する。図6は付着現象及び溶接電流の偏りを示している。
【0080】
注液口の封止に金属球を用いた場合には、封口板100の注液口102の口径より径大な金属球104を注液口102に挿入する。この金属球104に溶接装置106の主電極108を接触させ、封口板100には副電極110を接触させ、これら主電極108と副電極110に電源装置112から通電する。
【0081】
主電極108を金属球104に押圧しながら電流を流すと、溶接が進行するが、押圧後、主電極108を持ち上げた際に、溶融している金属球104が主電極108に付着し、注液口102の封止に失敗する場合がある。これは主電極108を押圧させて金属球104に電流を流すと、金属球104の溶融金属が図6のAに矢印で示すように、主電極108側に流れ込みやすいためであると考えられる。また、このような溶融金属の主電極108側への流れ込みは、金属球104の形状が球形であることにも起因する。
【0082】
また、金属球104を用いた注液口102の封止では、溶接強度に偏りが見られる。抵抗溶接を行う際、金属球104を押圧する主電極108と電流経路を確保する副電極110を注液口102の近傍に設置し、溶接電流Isを流して金属球104を溶融させる。この場合、副電極110に近い側には多くの溶接電流Isが流れ、副電極110が設置されていない側、即ち、副電極110から遠ざかった位置では溶接不良が生じる。
【0083】
このような金属球を用いた注液口封止における課題は上記実施の形態により解決されている。
【0084】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の電子部品及びその製造方法は、注液口等の外装部材にある透孔の封止強度を高めることができ、有益である。
【符号の説明】
【0086】
2 コンデンサ
4 コンデンサ素子
6 外装ケース
8 封口板
32 注液口
44 封止ピン
50、60 環状突起部
52 溶接装置
54 主電極
56 副電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子を収容する外装ケース又は該外装ケースの封口板に形成された透孔と、
前記透孔を封止する封止体と、
前記外装ケース又は前記封口板の前記透孔の周囲部に設けられ、又は前記周囲部に対して前記封止体に設けられた突起部と、
を備え、前記封止体と、前記封口板又は前記外装ケースとの間に溶接電流を流して少なくとも前記突起部の一部又は全部を溶融させることにより、前記封止体で前記透孔を封止したことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記封止体は、前記透孔に挿入される挿入部を備えたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項3】
前記突起部は、前記透孔を包囲する環状突起であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の電子部品。
【請求項4】
素子を収容する外装ケース又は該外装ケースの封口板に形成された透孔の周囲部に突起部を接触させて封止体を設置する工程と、
前記封止体と前記封口板又は前記外装ケースとの間に溶接電流を流して少なくとも前記突起部の一部又は全部を溶融させることにより、前記封止体で前記透孔を封止する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
素子を収容する外装ケース又は該外装ケースの封口板に形成された透孔の周囲部に突起部を形成し、又は該周囲部に対して配置され前記透孔を封止する封止体に突起部を形成する工程と、
前記透孔に対し、前記突起部を介して前記封口板に前記封止体を設置する工程と、
前記封止体と前記外装ケース又は封口板との間に溶接電流を流して少なくとも前記突起部の一部又は全部を溶融させることにより、前記封止体で前記透孔を封止する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記透孔を包囲する複数箇所に副電極を当てるとともに、前記封止体に主電極を当て、複数の前記副電極を用いて前記突起部に複数箇所から溶接電流を流すことを特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−104685(P2012−104685A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252588(P2010−252588)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】