説明

電子部品用ソケット

【課題】 ICチップなどの電子部品が装着される電子部品用ソケットにおいて、電子部品の電極部に対して、比較的長い端子部を適度な弾性力で接触させることができ、且つ端子部の配列ピッチも短くしやすい電子備品用ソケットを提供する。
【解決手段】 ハウジング2に金属板で形成された中間端子部10が複数保持されている。中間端子部10の保持片11は絶縁保持部15aに保持され、弾性片12が上方に延び出ている。電子部品30の部品電極部31で接触片12bが押されると、弾性片12が、第1の支点16で支持されて撓むとともに、中腹部が中間支点部15dで支持されて、第2の支点17を介してさらに撓む。その結果、自由長の長い弾性片12であっても変形時の水平方向への移動距離Waを短くでき、中間端子部10の配列ピッチを短くしやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの電子部品を支持する電子部品用ソケットに係り、特に、電子部品の底面に設けられた電極部とこれに接触する端子部のピッチを短くでき、且つ電極部と端子部とを安定した弾性力で接触させることができる電子部品用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1に、ICチップなどの電子部品を支持するソケットが開示されている。このソケットでは、プリント基板上に設置されるフレームの内部に絶縁基板が固定されており、この絶縁基板に板ばねで形成された複数の端子部(コンタクト)が設けられている。
【0003】
下面に複数の電極部を有する電子部品がフレームに装着されると、板ばねで形成された端子部(コンタクト)が電子部品の電極部で押されて撓み変形し、その弾性反力によって、端子部と電極部とが圧接されて導通状態となる。
【0004】
片持ち梁である板ばねの端子部に集中荷重が作用して撓みを発生するとき、端子部の断面積を一定にすると、自由長が長いとばね定数が小さくなり、自由長が短いとばね定数が大きくなる。
【0005】
したがって、端子部の自由長を短くすると、電子部品の電極部で押されたときの撓み量を小さくでき、端子部の配列ピッチを短くしやすくなる。ただし、端子部を曲げるのに大きな力が必要になり、多数設けられた端子部からの反力が過大になり、電子部品を装着しにくくなる。また、端子部を変形させるのに必要な力が大きくなるため、端子部の基端部の最大応力が大きくなり、端子部の強度が低下しやすい。
【0006】
一方、端子部の自由長を長くすると、個々の端子部を曲げるために必要な力が小さくなるため、電子部品を装着するときの弾性反力が小さくなり、電子部品を装着しやすくなる。また、端子部を曲げるのに必要な力が小さいため、端子部の基端部の曲げモーメントを小さくでき、基端部の最大応力を低下させやすくなる。
【0007】
しかし、端子部の自由長が長いと、端子部と電極部との弾圧力を十分に確保するために、端子部の撓み量を大きくすることが必要になる。その結果、端子部の配列ピッチを短くすることが難しくなり、電極部の配列密度が高い電子部品を支持するソケットに適用しにくくなる。また、端子部の自由長を長くすると、ばね定数が低下するために、端子部との接触力が低下しやすくなり、端子部と電極部との間での接触抵抗が大きくなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3284342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、電極部と端子部の配列ピッチを短くしても、電子部品が装着されるときの反力が過大になるのを防止でき、しかも端子部と電極部とを適切な力で接触させることができる電子部品用ソケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子部品が設置される部品支持部を有するハウジングと、前記ハウジングに固定されて前記電子部品の底面に設けられた複数の部品電極部に接触する端子部とが設けられた電子部品用ソケットにおいて、
前記端子部が、前記ハウジング内の絶縁保持部に保持された保持片と、前記絶縁保持部から前記部品支持部に向けて延びる弾性片とを有し、前記ハウジング内に、前記弾性片の中間部に対向する中間支点部が設けられており、
前記弾性片が前記部品電極部で押されると、前記弾性片が前記保持片との境界部を第1の支点として曲げられるともに、前記弾性片が前記中間支点部との当接部を第2の支点としてさらに曲げられることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、前記電子部品が前記部品支持部に設置されたときに、前記弾性片が、前記第1の支点と前記第2の支点との間の第1の湾曲部と、前記第2の支点と前記部品電極部との間の第2の湾曲部の双方で曲げられる。
【0012】
本発明の電子部品用ソケットは、端子部の弾性片を比較的長くでき、個々の弾性片の初期の反発力を小さくできるため、電子部品を装着しやすい。ただし、弾性片が撓み変形する過程で、弾性片が中間支点部で支持されて曲がるため、その後の弾性片の先部の変位量を小さくできる。その結果、部品電極部と端子部の配列ピッチを短く設定しやすくなる。また、電子部品が部品支持部に装着されたときの弾性片と部品電極部との接触圧力を適度に調整でき、導通抵抗を低減しやすくなる。
【0013】
本発明は、前記ハウジング内に、前記絶縁保持部から立ち上がって、前記中間支点部に至る壁面が設けられ、前記端子部に外力が作用していないとき、前記弾性片の少なくとも一部が前記壁面に当接していることが好ましい。
【0014】
上記のように構成すると、弾性片が変形したときに、その中腹部が中間端子部に確実に当たるようになる。
【0015】
本発明は、前記端子部に、前記絶縁保持部から前記部品支持部と逆の側に延びる基端片が設けられており、この基端片に、前記部品支持部と逆の側に対向する接続電極部に接続される導通片が形成されているものである。
【0016】
また、前記ハウジング内に金属板が保持されており、複数の前記端子部を保持した前記絶縁保持部が、前記金属板の貫通穴に保持されているものとすることができる。
【0017】
上記構成では、複数の端子部が金属板でシールドされるため、外部ノイズからの影響を受けにくくなる。
【0018】
なお、本発明は、絶縁保持部が合成樹脂製のハウジングに一体に形成されており、複数の端子部がハウジングに直接に固定されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、端子部の弾性片を長くしても、先端部の変形領域を狭くでき、端子部の配列ピッチを短くしやすくなって、部品電極部の配列密度の高い電子部品に適用できるようになる。また、電子部品を装着するときの抵抗力を小さくでき、しかも、端子部と部品電極部との接触圧力を適正な値に設定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の電子部品用ソケットの斜視図、
【図2】本発明の実施の形態の電子部品用ソケットと、その接続部材装着部に装着される接続部材を示すものであり、図1のII−II線の断面図、
【図3】本発明の実施の形態の電子部品用ソケットに接続部材が装着された状態を示す断面図、
【図4】接続部材と2枚の金属板を示す分解斜視図、
【図5】第1の金属板の平面図、
【図6】第1の金属板と、複数の中間端子部を保持した保持部材とを示す分解斜視図、
【図7】中間端子部の詳細を示す図2の一部分の拡大図、
【図8】電子部品の部品電極部が中間端子部に接触した状態を示す拡大図、
【図9】本発明の第2の実施の形態の電子部品用ソケットを示す断面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1ないし図3に示すように、本発明の実施の形態の電子部品用ソケット1は、絶縁性のハウジング2と、このハウジング2に埋設された第1の金属板3および第2の金属板4を有している。ハウジング2と2つの金属板3,4はいわゆるインサート成型法によって一体化されている。すなわち、第1の金属板3と第2の金属板4とが合わされて金型のキャビティの内部に支持された状態で、キャビティ内に溶融樹脂が射出され、2つの金属板3,4を埋設したハウジング2が形成される。
【0022】
図1ないし図3に示すように、ハウジング2の上部に支持側壁部2aが形成されており、この支持側壁部2aで4面が囲まれた上側凹部5が形成されている。4面の支持側壁部2aのそれぞれの内側面に段差底部2bが形成されており、上側凹部5は、段差底部2bよりも上側の部分が部品支持部5aとなり、段差底部2bよりも下側の部分が端子変形空間5bとなっている。第1の金属板3と第2の金属板4の一部は、上側凹部5の底部すなわち端子変形空間5bの底部に位置している。
【0023】
図2と図3に示すように、ハウジング2には、支持側壁部2aからさらに4方向の外側に張り出す天井壁部2cが形成され、天井壁部2cの周囲から下側に延びる装着側壁部2dが一体に形成されて、装着側壁部2dで4面が囲まれた下側凹部6が形成されている。下側凹部6は、天井壁部2cの下面2eよりも下側の部分が接続部材装着部6aとなり、前記下面2eよりも上側の部分が端子接続空間6bとなっている。ハウジング2は、接続部材装着部6aが部品支持部5aよりも外周側に張り出した構造である。
【0024】
合成樹脂製のハウジング2の内部では、上側凹部5と下側凹部6とが連通しており、上側凹部5と下側凹部6とが、第1の金属板3および第2の金属板4で仕切られている。
【0025】
第1の金属板3と第2の金属板4は、鋼板などの比較的低抵抗の金属板で構成されている。
【0026】
図4と図5に示すように、第1の金属板3は、平面で見た形状が矩形状である。第1の金属板3の中央部に、小さな面積の矩形状の中央開口部3aが形成され、中央開口部3aを囲む矩形状の領域が、端子保持部3bとなっている。端子保持部3bである矩形状の領域の全域に、複数の貫通穴7が規則的に並んで設けられている。貫通穴7は、第1の金属板3を貫通する長方形の穴である。
【0027】
図4と図5に示すように、第1の金属板3には、端子保持部3bと同一面で且つ端子保持部3bから4方向の側方に延びる天井シールド面3dが設けられている。天井シールド面3dには貫通穴7が形成されていない。端子保持部3bから4方向の側方へ離れた位置に、天井シールド面3dからほぼ直角に折り曲げられた4面の側部シールド面3cが形成されている。
【0028】
図4に示すように、第2の金属板4は平板であり、第1の金属板3から側部シールド面3cを削除したものと同じ形状で同じ大きさである。第2の金属板4は、中央部に矩形状の中央開口部4aが形成されている。中央開口部4aの周囲の矩形状の領域が端子保持部4bであり、その外周部に天井シールド面4dが一体に形成されている。中央開口部4aおよび端子保持部4bの形状と大きさは、第1の金属板3の中央開口部3aならびに端子保持部3bと同じである。
【0029】
図2と図3に示すように、第2の金属板4の端子保持部4bに複数の貫通穴8が形成されている。この貫通穴8の開口面積と形状、ならびに配列状態は、第1の金属板3の端子保持部3bに形成された貫通穴7と同じである。
【0030】
第1の金属板3と第2の金属板4は、中央開口部3aと中央開口部4aとが一致し、複数の貫通穴7と複数の貫通穴8が個別に一致するように重ねられて、互いに電気的に導通された状態で、金型のキャビティ内に保持される。なお、第2の金属板4は第1の金属板3の下面側に重ねられる。そして、キャビティ内に溶融樹脂が射出されてハウジング2が成型される。
【0031】
上記工程で成型された電子部品用ソケット1は、図1ないし図3に示すように、第1の金属板3の中央開口部3aおよび端子保持部3bと、第2の金属板4の中央開口部4aおよび端子保持部4bとが、上側凹部5と下側凹部6との境界部に位置する。
【0032】
第1の金属板3の天井シールド面3dと第2の金属板4の天井シールド面4dは、ハウジング2の天井壁部2cの上に位置し、第1の金属板3の天井シールド面3dが天井壁部2cの最表面に現れる。また、第1の金属板3の側部シールド面3cが、装着側壁部2dの表面に現れる。部品支持部5aよりも周囲に張り出した形状の接続部材装着部6aは、天井部と4面の側部が全て金属板で覆われることになる。
【0033】
ハウジング2に埋設された第1の金属板3の端子保持部3bと第2の金属板4の端子保持部4bに、端子部である複数の中間端子部10が保持されている。中間端子部10は、端子保持部3bおよび端子保持部4bの領域の全域に配置されているが、図2と図3などでは、図示の都合上一部の中間端子部10のみが示されている。
【0034】
図6に示すように、複数の中間端子部10は、合成樹脂材料で形成された保持部材15に保持されている。保持部材15は細長い棒形状である。図6ならびに図7と図8に示すように、保持部材15は、基部側に位置する絶縁保持部15aと、絶縁保持部15aから立ち上がる支持部15bとが一体に形成されている。支持部15bに、第1の金属板3と第2の金属板4の表面に対して垂直に立ち上がる平坦面の壁面15cが形成され、壁面15cの上端のエッジ部(ほぼ直角の角部)が中間支点部15dとなっている。絶縁保持部15aと壁面15cおよび中間支点部15dは、保持部材15の長手方向に沿って互いに平行に形成されている。
【0035】
前記中間端子部10は、絶縁保持部15aにおいて、長手方向へ一定のピッチで保持されている。中間端子部10と保持部材15は、インサート成型法で一体化されている。あるいは、中間端子部10が絶縁保持部15aに圧入されている。
【0036】
図6に示すように、保持部材15には、長手方向の幅寸法が一定の値Wとなるように区分されて下向きに突出する複数の凸部15eが一体に形成されている。それぞれの凸部15eには、2個の中間端子部10が保持されている。すなわち、保持部材15では、幅寸法Wの範囲にそれぞれ2組の中間端子部10が保持されている。
【0037】
前記凸部15eは、第1の金属板3の端子保持部3bに形成された貫通穴7および第2の金属板4の端子保持部4bに形成された貫通穴8に、個別に圧入できる寸法で形成されている。それぞれの凸部15eが、上下に並んでいる2つの貫通穴7,8に圧入されて、複数の中間端子部10が、端子保持部3bおよび端子保持部4bの領域に保持される。
【0038】
信号線を伝達するための中間端子部10と2つの金属板3,4との間は、合成樹脂製の保持部材15で絶縁されている。図6に示すように、保持部材15では、凸部15eの側部に、少なくともアース端子として機能する中間端子部10が露出する凹部15fが形成されている。この凹部15fに対向する部分に、一方の金属板3に形成された一部の貫通穴7の内縁部から一体に突出する導通突起7aが設けられている。保持部材15が貫通穴7,8に保持されると、導通突起7aが凹部15fの内部に入り込んで中間端子部10と接触し、第1の金属板3が、アース端子として機能する中間端子部10と同電位に設定される。
【0039】
また、第2の金属板4の貫通穴8の内縁部に導通突起を形成し、第2の金属板4をアース端子として機能する中間端子部10に導通させてもよい。
【0040】
第1の金属板3と第2の金属板4とが重ねられて導通しているため、第1の金属板3と第2の金属板4のいずれか一方を前記中間端子10に導通させることで、両金属板3,4を接地電位に設定することができる。
【0041】
あるいは、第1の金属板3の貫通穴7と第2の金属板4の貫通穴8の双方に導通突起を設け、それぞれの導通突起を、前記中間端子10に導通させてもよい。この場合に、第1の金属板3の導通突起7aと第2の金属板の導通突起を、互いに重なる位置に形成して、同じ中間端子10に導通させてもよいし、第1の金属板3の導通突起7aと第2の金属板の導通突起を異なる位置に形成して、別々の中間端子10に導通させてもよい。
【0042】
ハウジング2の上側凹部5と下側凹部6の境界部に、第1の金属板3の端子保持部3bと第2の金属板4の端子保持部4bが重ねられて位置しているため、ハウジング2の内部空間内に位置する端子保持部3b,4bの強度を高く維持でき、撓みなどが発生しにくくなる。また、中間端子部10を保持している保持部材15の凸部15eが、上下に重ねられた2つの金属板3,4の貫通穴7,8で保持されるため、保持部材15の保持強度が高くなる。
【0043】
中間端子部10を組み付ける工程としては、先に第1の金属板3と第2の金属板4が重ねられて、貫通穴7,8に保持部材15の凸部15eが圧入された後に、中間端子部10を保持した第1の金属板3と第2の金属板4とが金型のキャビティ内に保持された状態で、溶融樹脂が射出されてハウジング2が形成される。あるいは、第1の金属板3と第2の金属板4が埋設されたハウジング2が成型された後の工程で、端子保持部3b,4bの貫通穴7,8に、保持部材15の凸部15eが圧入されてもよい。
【0044】
それぞれの中間端子部10は、リン青銅板などの板ばね材料で形成され、表面にニッケルメッキ層がさらにその表面に金メッキ層が積層されている。
【0045】
図7と図8に拡大して示すように、中間端子部10は、保持片11を有しており、この保持片11が絶縁保持部15aに保持されている。中間端子部10に、保持片11と連続する弾性片12が設けられており、この弾性片12が絶縁保持部15aから上方へ突出している。図7には、外力が作用していないときの弾性片12の自由長がLaで示されている。弾性片12は、上方部分に湾曲部12aが形成され、先端部に湾曲成形された接触片12bが設けられている。
【0046】
図7に示すように、中間端子部10に外力が作用していないとき、弾性片12の下部が保持部材15の壁面15cに当接している。弾性片12は壁面15cの少なくとも一部に当接しており、好ましくは壁面15cの全長において弾性片12が当接している。弾性片12の下部の壁面15cに当接している部分と、それよりも右側に位置している隣の保持部材15の支持部15bとの間に幅寸法δの空間が形成されている。弾性片12の下部は、この空間内で撓み変形できるようになっている。
【0047】
弾性片12は、その変形方向がα方向である。弾性片12は、前記湾曲部12aにおいてα方向へ屈曲するように成形されており、先端部の接触片12bがα方向へ向けられている。図7に示すように、中間端子部10に外力が作用していないときに、弾性片12の先端部の接触片12bが、ハウジング2の部品支持部5aの内部に位置し、弾性片12の主な部分が端子変形空間5bに位置している。
【0048】
図7と図8に示すように、中間端子部10に絶縁保持部15aよりも下方へ突出する基端片13が一体に設けられ、基端片13の下端部が直角に折り曲げられて、導通片13aが形成されている。導通片13aは、ハウジング2の端子接続空間6bの内部に位置している。
【0049】
図2と図3に示すように、電子部品用ソケット1の接続部材装着部6aに、接続部材20が保持される。
【0050】
接続部材20は、コネクタ基板であり、上面20aに複数の上部接続電極部21が配列し、下面20bに複数の下部接続電極部22が配列している。上部接続電極部21は、表面に球形状の半田層を有している。下部接続電極部22も表面に球形状の半田層を有している。
【0051】
図4に示すように、接続部材20の上面20aに、矩形状の電極配列領域20cが形成され、この電極配列領域20cに複数の上部接続電極部21が規則的に配列している。電極配列領域20cの形状および面積は、第1の金属板3の端子保持部3bおよび第2の金属板4の端子保持部4bの領域の形状ならびに面積と同等である。また、上部接続電極部21の配列状態が、中間端子部10の配列状態と一致し、上部接続電極部21の配列ピッチP1が、中間端子部10の配列ピッチP1と一致している。
【0052】
接続部材20はいわゆる多層基板であり、厚さ方向に重ねられた複数の絶縁層によって構成されている。図2に示すように、接続部材20の内部の各層の表面に内部配線層23がパターン形成されており、上部接続電極部21と下部接続電極部22とが、内部配線層23を介して一対一の関係で導通している。そして、下部接続電極部22の配列ピッチP2が、上部接続電極部21の配列ピッチP1よりも広く形成されている。
【0053】
図3に示すように、接続部材20は、ハウジング2の接続部材装着部6aの内部に挿入される。接続部材20を装着側壁部2dの内部に挿入し、天井壁部2cの下面2eに突き当てることで、ハウジング2に対して接続部材20が位置決めされ、それぞれの中間端子部10の導通片13aと接続部材20の上部接続電極部21とが当接させられる。この状態で加熱炉に供給されると、上部接続電極部21の表面の半田層が溶融し、上部接続電極部21と中間端子部10の導通片13aとが個別に半田付けされて、ハウジング2に接続部材20が保持される。
【0054】
または、導通片12cの上部接続電極部21と対向する部分に、予め球状の半田層が付着して設けられ、前記半田層と上部接続電極部21とを当接させた状態で加熱炉に供給し、半田層を溶融させて上部接続電極部21と導通片12cとが半田付けされてもよい。
【0055】
電子部品用ソケット1が実装されるメイン基板(マザーボード)は、その表面にメイン電極部を有しており、メイン電極部は、接続部材20の下部接続電極部22の配列ピッチP2と同じピッチで配置されている。接続部材20の下部接続電極部22と、メイン電極部とを個別に対面させ、下部接続電極部22の半田層を溶融させることで、下部接続電極部22とメイン電極部とが個別に半田付けされ、電子部品用ソケット1が接続部材20を介してメイン基板に実装される。
【0056】
また、複数の中間端子部10のうちのアース端子が、図6に示される導通突起7aによって2つの金属板3,4に導通されるため、2つの金属板3,4が接地電位に設定される。
【0057】
中間端子部10の配列ピッチP1に対し、下部接続電極部22の配列ピッチP2が広いため、メイン基板のメイン電極部のピッチを広くでき、多層基板であるメイン基板の層の数を少なくして、メイン基板の製造コストを削減することが可能である。
【0058】
図3および図8に示すように、メイン基板に実装された電子部品用ソケット1に、電子部品30が装着される。電子部品30は、ICのベアチップ、あるいはICパッケージである。電子部品30の底面30aに、複数の部品電極部31が形成されている。部品電極部31は表面が平坦面の金属層で形成されている。電子部品30の底面30aにおける部品電極部31の配列領域は、多数の中間端子部10が配列している領域と同じである。部品電極部31の配列ピッチP1は、中間端子部10の配列ピッチP1と同じである。
【0059】
電子部品30は、電子部品用ソケット1の部品支持部5aに挿入されて、支持側壁部2aで囲まれて平面方向へ動かないように位置決めされ、部品電極部31と中間端子部10とが、上下に個別に対向する。そして、電子部品30が上方から図示しない押さえ部材で押さえられて固定される。
【0060】
電子部品30が部品支持部5aで位置決めされるときに、図7に示すように部品支持部5a内に突出している接触片12bに、電子部品30の部品電極部31が接触する。電子部品30が部品支持部5aの内部に押し込まれると、接触部12bに下向きの荷重Fが与えられ、中間端子部10の弾性片12に対して、絶縁保持部15aの上端からの突出部を支点とする(保持片11と弾性片12との境界部を第1の支点16とする)α方向への曲げモーメントが与えられる。
【0061】
この曲げモーメントによって、弾性片12がα方向へ曲げられるが、無荷重状態で弾性片12の基部が支持部材15の垂直な壁面15cに接触しているために、図8に示すように、弾性片12がα方向へ変形し始めると、すぐに支持部15bのエッジ部である中間支点部15dが弾性片12に当接する。その後、接触片12bが下向きに押されると、弾性片12の上部が、中間支点部15dとの接触部を第2の支点17として、さらにα方向へ曲げられる。
【0062】
弾性片12は、第1の支点16と第2の支点17との間の第1の湾曲部で撓み変形するとともに、第2の支点17から先部の第2の湾曲部でも撓み変形する。図8に示すように、弾性片12は、長さLbの範囲が第1の湾曲部で、長さLcの範囲が第2の湾曲部である。長さLbの第1の湾曲部は、隣り合う保持部材15の間の寸法δの空間内で撓み変形し、長さLcの第2の湾曲部は、第2の支点17よりも上方で撓み変形する。
【0063】
図7に示すように、弾性片12は第1の支点16から先の長さである自由長Laが十分に長いため、曲げ変形の際のばね定数が比較的小さくなり、中間端子部10から部品電極部31に作用する弾性反力を小さくしやすい。電子部品30が装着されるときに、その底面30aに設けられた多数の部品電極部31が中間端子部10と当たるのことになるが、個々の中間端子部10の反力を小さくすることで、電子部品30を装着するときの抵抗力の総和が小さくなる。その結果、電子部品30を部品支持部5aに装着しやすくなる。
【0064】
弾性片12の自由長が長いと、部品電極部31で押されたときに、弾性片12が倒れるときの水平方向への移動距離が長くなりやすい。しかし、弾性片12が、第2の支点17において中間支点部15dで支えられるため、弾性片12が撓むときの接触片12bの水平方向への移動距離Waを短くできる。その結果、中間端子部10の配列ピッチP1を短く設定しやすくなり、部品電極部31の配列ピッチP1が短い電子部品30を実装できるようになる。
【0065】
図8に示すように、弾性片12は、長さLbの第1の湾曲部と長さLcの第2の湾曲部の双方で撓むために、接触片12bから部品電極部31に作用する弾性反力が過大となることがない。ただし、弾性片12が中間支点部15dで支えられて、短い寸法Lcの第2の湾曲部が部品電極部31に弾圧されるため、接触片12bから部品電極部31に作用する弾性力を少しだけ増強でき、中間端子部10と部品電極部31との接触抵抗を低減することができる。
【0066】
弾性片12は、曲げ応力が第1の支点16と第2の支点17に分散して作用するため、弾性片12の強度と寿命も高めることができる。
【0067】
この電子部品用ソケット1は、複数の中間端子部10が2つの金属板3,4に形成された複数の貫通穴7,8を貫通しているため、2つの金属板3,4によって中間端子部10が相互にシールドされることになり、中間端子部10で伝送される信号に外部ノイズが重畳されにくくなる。
【0068】
接続部材20は、上面が2つの金属板3,4で覆われ、4面の側部が側部シールド面3cで覆われる構造であるため、接続部材20の上部接続電極部21と中間端子部10との導通部、および下部接続電極部22とメイン基板のメイン電極部との接続部、さらには内部配線層23をシールドすることができ、接続部材20を介して伝送される信号を外部ノイズから保護しやすくなる。
【0069】
図2と図3に示すように、接続部材20は、中間端子部10に接続される上部接続電極部21の配列ピッチP1よりも、メイン基板に接続される下部接続電極部22の配列ピッチP2が広くなっている。したがって、接続部材20が設置される接続部材装着部6aは、部品支持部5aよりも側方へ張り出した形状である。この張り出した部分の天井部が天井シールド面3d,4dで覆われ、側部が側部シールド面3cで覆われているため、接続部材20の電子部品30からはみ出した部分を効果的にシールドでき、接続部材20で伝送される信号を保護できるようになる。
【0070】
図9に示す第2の実施の形態の電子部品用ソケット101は、合成樹脂製のハウジング102に上側凹部105が形成され、その内部が部品支持部105aと端子変形空間105bとなっている。第1の金属板103と第2の金属板104さらに第3の金属板104が重ねられて、ハウジング102の底部に設置されて、金属板103,104,104Aとハウジング102とが一体に固定されている。第1の金属板103に貫通穴107が、第2の金属板104に貫通穴108が、第3の金属板104Aに貫通穴108A形成されて、両貫通穴107,108,108Aに保持部材15が保持されている。
【0071】
保持部材15に保持されている中間端子部10の構造は図6ないし図8に示したものと同じである。中間端子10の下端に一体に形成された導通片13aが第1の金属板103から下側に突出している。
【0072】
図9に示す電子部品用ソケット101には、接続部材装着部6aが設けられておらず、第1の金属板103がソケットの底面に現れている。この電子部品用ソケット101は、接続部材20を使用せずに、メイン基板(マザーボード)の上に直接に設置され、前記導通片13aが、メイン基板に設けられたメイン電極部に個別に半田付けされる。
【0073】
また、本発明は、ハウジング2に2つの金属板3,4または3つの金属板103,104,104Aが設けられておらず、中間端子部10を保持する保持部材15および絶縁保持部15aが、合成樹脂製のハウジング2と一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,101 電子部品用ソケット
2,102 ハウジング
2a 支持側壁部
2b 段差底部
2c 天井壁部
2d 装着側壁部
3,103 第1の金属板
3b 端子保持部
3c 側部シールド面
3d 天井シールド面
4,104 第2の金属板
4b 端子保持部
4d 天井シールド面
5,105 上側凹部
5a,105a 部品支持部
5b,105b 端子変形空間
6 下側凹部
6a 接続部材装着部
6b 端子接続空間
7,8,107,108,108A 貫通穴
7a 導通突起
10 中間端子部
11 保持片
12 弾性片
13 基端片
15 保持部材
15a 絶縁保持部
15b 支持部
15c 壁面
15d 中間支点部
16 第1の支点
17 第2の支点
20 接続部材
20c 電極配列領域
21 上部接続電極部
22 下部接続電極部
23 内部配線層
30 電子部品
31 部品電極部
104A 第3の金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が設置される部品支持部を有するハウジングと、前記ハウジングに固定されて前記電子部品の底面に設けられた複数の部品電極部に接触する端子部とが設けられた電子部品用ソケットにおいて、
前記端子部が、前記ハウジング内の絶縁保持部に保持された保持片と、前記絶縁保持部から前記部品支持部に向けて延びる弾性片とを有し、前記ハウジング内に、前記弾性片の中間部に対向する中間支点部が設けられており、
前記弾性片が前記部品電極部で押されると、前記弾性片が前記保持片との境界部を第1の支点として曲げられるともに、前記弾性片が前記中間支点部との当接部を第2の支点としてさらに曲げられることを特徴とする電子部品用ソケット。
【請求項2】
前記電子部品が前記部品支持部に設置されたときに、前記弾性片は、前記第1の支点と前記第2の支点との間の第1の湾曲部と、前記第2の支点と前記部品電極部との間の第2の湾曲部の双方で曲げられる請求項1記載の電子部品用ソケット。
【請求項3】
前記ハウジング内に、前記絶縁保持部から立ち上がって、前記中間支点部に至る壁面が設けられ、前記端子部に外力が作用していないとき、前記弾性片の少なくとも一部が前記壁面に当接している請求項1または2記載の電子部品用ソケット。
【請求項4】
前記端子部に、前記絶縁保持部から前記部品支持部と逆の側に延びる基端片が設けられており、この基端片に、前記部品支持部と逆の側に対向する接続電極部に接続される導通片が形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の電子部品用ソケット。
【請求項5】
前記ハウジング内に金属板が保持されており、複数の前記端子部を保持した前記絶縁保持部が、前記金属板の貫通穴に保持されている請求項1ないし4のいずれかに記載の電子部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−243489(P2012−243489A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110987(P2011−110987)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】