説明

電子部品用接着剤

【課題】ボイドの抑制効果に優れた電子部品用接着剤を提供する。
【解決手段】ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、エポキシ化合物と、硬化剤とを含有する電子部品用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイドの抑制効果に優れた電子部品用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、半導体チップを基板に接合する際には、接着剤又は接着フィルムが用いられることが多い。このような接着剤においては、従来、加熱硬化の際に基板に含まれる水分が蒸発することにより、硬化後にボイドが生じ、接合信頼性の低下を引き起こすことが問題であった。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、半導体チップの接合に先立って基板を乾燥させる処理(プリベーク処理)が行われている。例えば、特許文献1には、半導体装置の製造方法において、樹脂基板を予め乾燥させておき、疎水性の封止樹脂と親水性の封止樹脂とを混合した組成物からなる封止樹脂を樹脂基板上に、塗布することが記載されている。
しかしながら、半導体チップの接合に先立って基板を乾燥させる処理を行う場合には、乾燥後の基板が再び吸湿するため、基板を乾燥してから接着剤を基板に塗布するまでの工程管理を厳密に行わなければボイドの発生を充分に抑制することは困難である。例えば、特許文献1には、乾燥させた樹脂基板を室中に出してから20分以内に封止樹脂を塗布するのが好ましいことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、支持基板上に所定のダイボンディング用樹脂ペーストを所定量塗布する工程、塗布された前記樹脂ペーストを乾燥して、Bステージ化する工程、Bステージ化した前記樹脂ペースト上に半導体素子を搭載する工程、および前記樹脂ペーストを後硬化する工程を有する半導体装置の製造方法が記載されている。特許文献2には、このような方法によれば、ダイボンド前のプリベーク処理なしでも、後硬化後の樹脂ペースト層(ダイボンディング層)中にクラックやボイドは観察されなかったことが記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、ダイボンド前のプリベーク処理を行ったり、工程管理を厳密に行ったりする必要はないとしても、塗布後に樹脂ペーストをBステージ化する必要があり、特許文献1に記載の方法に比べてそれほど簡略化された方法であるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−128881号公報
【特許文献2】特開2007−246875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボイドの抑制効果に優れた電子部品用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、エポキシ化合物と、硬化剤とを含有する電子部品用接着剤である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
一般に、エピスルフィド化合物を用いることにより、硬化開始温度の比較的低い電子部品用接着剤が得られることが知られている。本発明者は、このようなエピスルフィド化合物のなかでも、ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物を用いることにより、硬化開始温度が低く、その結果、ボイドの抑制効果に優れた電子部品用接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の電子部品用接着剤は、ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物を含有する。
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物を含有することにより、本発明の電子部品用接着剤は、硬化開始温度が低く、その結果、ボイドの抑制効果に優れ、基板を乾燥してから電子部品用接着剤を基板に塗布するまでの時間が長くなった場合にもボイドの発生を充分に抑制することができる。これは以下の理由によると考えられる。
本発明の電子部品用接着剤は、硬化開始温度が低いため、基板に含まれる水分が蒸発する温度領域においてある程度以上硬化しており、硬化物中に水蒸気を一旦「閉じ込める」ことができる。このような「閉じ込められた」水蒸気は、透湿によって徐々に硬化物の外に発散されるため、寄り集まって広い体積を占めるボイドを形成することが抑制されると考えられる。
【0010】
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物は特に限定されないが、ナフタレン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物が好ましい。
上記ナフタレン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物は特に限定されず、例えば、1,3−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)−7−メチルナフタレン、1,5−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)ナフタレン、1,5−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)−7−メチルナフタレン、1,6−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)ナフタレン、1,6−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルナフタレン、1,6−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)−8−メチルナフタレン、1,6−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,8−ジメチルナフタレン、2,7−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)ナフタレン等が挙げられる。なかでも、立体障害が低く反応性が高いことから、ナフタレン骨格に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基のみが結合した構造を有する化合物が好ましい。これらのナフタレン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0011】
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物は、対応するエポキシ化合物をスルフィド化することにより合成されてもよい。
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物を、対応するエポキシ化合物をスルフィド化することにより合成する方法として、例えば、原料となるエポシキ化合物を、例えばチオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤とともに攪拌混合する方法等が挙げられる。
【0012】
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物の分子量は特に限定されないが、好ましい下限が288.08、好ましい上限が332.09である。上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物の分子量が288.08未満であると、得られる電子部品用接着剤は、揮発しやすくなって信頼性が低下したり、硬化物の腐食を防止できなかったりすることがある。上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物の分子量が332.09を超えると、得られる電子部品用接着剤の粘度が上昇して作業性が低下することがある。
【0013】
上記レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物は特に限定されないが、ベンゼン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物が好ましい。
上記ベンゼン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物は特に限定されず、例えば、1,3−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,4−ジ(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン等が挙げられる。なかでも、立体障害が低く反応性が高いことから、ベンゼン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基のみが結合した構造を有する化合物が好ましい。これらのベンゼン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物は、対応するエポキシ化合物をスルフィド化することにより合成されてもよい。
上記レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物を、対応するエポキシ化合物をスルフィド化することにより合成する方法として、上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物の場合と同様の方法等が挙げられる。
【0015】
上記レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の分子量は特に限定されないが、好ましい下限が238.07、好ましい上限が282.07である。上記レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の分子量が238.07未満であると、得られる電子部品用接着剤は、揮発しやすくなって信頼性が低下したり、硬化物の腐食を防止できなかったりすることがある。上記レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の分子量が282.07を超えると、得られる電子部品用接着剤の粘度が上昇して作業性が低下することがある。
【0016】
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の配合量は、後述するエポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる電子部品用接着剤の硬化開始温度が高くなり、基板を乾燥してから電子部品用接着剤を基板に塗布するまでの時間が長くなった場合にはボイドの発生を充分に抑制できないことがある。上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の配合量が30重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤の硬化物の弾性率が上昇し、リフロー工程等の高温に曝された場合に、接合した電子部品に反りが発生することがある。
上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物の配合量は、後述するエポキシ化合物100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0017】
本発明の電子部品用接着剤は、エポキシ化合物を含有する。
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ポリエーテル型エポキシ化合物、NBR変性エポキシ化合物、CTBN変性エポキシ化合物、及び、これらの水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記エポキシ化合物は、親水性エポキシ化合物を含有することが好ましい。
上記親水性エポキシ化合物は、電子部品用接着剤の加熱硬化の際に基板から蒸発した水蒸気を吸収して、水蒸気を硬化物の外に発散させる効果を高めることができる。従って、上記エポキシ化合物が上記親水性エポキシ化合物を含有することにより、得られる電子部品用接着剤は、ボイドの抑制効果が向上する。
【0019】
上述したエポキシ化合物のなかでは、上記親水性エポキシ化合物として、例えば、ポリエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。
上記ポリエーテル型エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリテトラメチレングリコール骨格を有するエポキシ化合物、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリプロピレングリコール骨格を有するエポキシ化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリエチレングリコールを有するエポキシ化合物、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリヘキサメチレングリコール骨格を有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0020】
上記親水性エポキシ化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物全体100重量部のうち、好ましい下限が60重量部、好ましい上限が96重量部である。上記親水性エポキシ化合物の配合量が60重量部未満であると、得られる電子部品用接着剤のボイドの抑制効果が低下し、基板を乾燥してから電子部品用接着剤を基板に塗布するまでの時間が長くなった場合にはボイドの発生を充分に抑制できないことがある。上記親水性エポキシ化合物の配合量が96重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤におけるエポキシ基の反応性が低下し、信頼性が低下することがある。
上記親水性エポキシ化合物の配合量は、上記エポキシ化合物全体100重量部のうち、より好ましい下限が70重量部、より好ましい上限が80重量部である。
【0021】
上記エポキシ化合物は、エポキシ基を有する高分子化合物を含有してもよい。
上記エポキシ化合物が上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することにより、得られる電子部品用接着剤の硬化物は優れた可撓性を有することができ、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性等に優れるものとなり、高い接着信頼性又は高い導通信頼性を発現する。
【0022】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含む高分子化合物を得ることができ、硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記エポキシ基を有する高分子化合物、特に、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の数平均分子量の好ましい下限は8000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の数平均分子量が8000未満であると、得られる電子部品用接着剤は、硬化物の可撓性が充分に向上しなかったり、造膜性が不充分となったりすることがある。
【0024】
上記エポキシ基を有する高分子化合物、特に、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が200未満であると、得られる電子部品用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が1000を超えると、得られる電子部品用接着剤の硬化物の機械的強度又は耐熱性が不充分となることがある。
【0025】
上記エポキシ基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物全体100重量部のうち、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる電子部品用接着剤は、熱ひずみに対する充分な信頼性が得られないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤の耐熱性が低下することがある。
【0026】
上記硬化剤は特に限定されないが、イミダゾール化合物を含有することが好ましい。
上記イミダゾール化合物は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール化合物(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。また、上記イミダゾール化合物として、例えば、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等も挙げられる。これらのイミダゾール化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記イミダゾール化合物の配合量は特に限定されないが、上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、上記エポキシ化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記イミダゾール化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる電子部品用接着剤の硬化速度又は接合信頼性が低下することがある。上記イミダゾール化合物の配合量が20重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤には、硬化後に未反応のイミダゾール化合物が残存することがある。
上記イミダゾール化合物の配合量は、上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、上記エポキシ化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が15重量部である。
【0028】
また、上記硬化剤は、上記イミダゾール化合物と酸無水物との両方を含有することが好ましい。
上記酸無水物の配合量は特に限定されないが、上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、上記エポキシ化合物との硬化性官能基の合計に対して、好ましい下限が30当量、好ましい上限が110当量である。上記酸無水物の配合量が30当量未満であると、得られる電子部品用接着剤の接合信頼性が低下することがある。上記酸無水物の配合量が110当量を超えると、得られる電子部品用接着剤には、硬化後に未反応の酸無水物が残存することがある。
上記酸無水物の配合量は、上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、上記エポキシ化合物との硬化性官能基の合計に対して、より好ましい下限が70当量、より好ましい上限が90当量である。
【0029】
本発明の電子部品用接着剤は、シリカ粒子等の無機充填材を含有してもよい。
上記無機充填材を含有することにより、得られる電子部品用接着剤の硬化物の熱膨張が抑制され、接合信頼性が向上する。
上記無機充填材の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が500nm、好ましい上限が20μmである。上記無機充填材の平均粒子径が500nm未満であると、得られる電子部品用接着剤の粘度が顕著に上昇することがある。上記無機充填材の平均粒子径が20μmを超えると、上記無機充填材の最大粒子径も大きくなり、得られる電子部品用接着剤は、電子部品を接合する際の厚みが必要以上に大きくなることがある。
【0030】
上記無機充填材の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限が50重量部、好ましい上限が400重量部である。上記無機充填材の配合量が50重量部未満であると、電子部品用接着剤の硬化物の熱膨張を抑制する効果が充分に得られないことがある。上記無機充填材の配合量が400重量部を超えると、得られる電子部品用接着剤の粘度が上昇して、塗布安定性が低下することがある。
上記無機充填材の配合量は、上記エポキシ化合物100重量部に対するより好ましい下限が100重量部、より好ましい上限が200重量部である。
【0031】
本発明の電子部品用接着剤は、更に、必要に応じて、シランカップリング剤、イミダゾールカップリング剤、接着性付与剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0032】
本発明の電子部品用接着剤は、上述のように、上記ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物を含有することにより、硬化開始温度が低く、その結果、ボイドの抑制効果に優れ、基板を乾燥してから電子部品用接着剤を基板に塗布するまでの時間が長くなった場合にもボイドの発生を充分に抑制することができる。
本発明の電子部品用接着剤の硬化開始温度は特に限定されないが、好ましい下限は40℃、好ましい上限は70℃である。上記硬化開始温度が40℃未満であると、電子部品用接着剤の保存安定性が低下し、保存時に硬化反応が開始してしまうことがある。上記硬化開始温度が70℃を超えると、基板を乾燥してから電子部品用接着剤を基板に塗布するまでの時間が長くなった場合にはボイドの発生を充分に抑制できないことがある。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ボイドの抑制効果に優れた電子部品用接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0035】
(合成例1)
フラスコ内に、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物(HP−4032(下記式(1)で表される構造を有する化合物)、DIC社製)を100g及びテトラヒドロフランを200g仕込み、室温にて攪拌してエポキシ化合物を溶解させた。得られた溶解液にチオ尿素を100g及びメタノールを200g添加し、温度30〜35℃で、攪拌しながら5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液にメチルイソブチルケトンを300g添加した後、反応溶液を純水250gで5回水洗した。水洗後、ロータリーエバポレーターにて減圧下、温度90℃でメチルイソブチルケトンを留去して、ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物(分子量304)を得た。
【0036】
【化1】

【0037】
(合成例2)
フラスコ内に、レゾルシノール骨格を有するエポキシ化合物(デナコールEX201(下記式(2)で表される構造を有する化合物)、ナガセケムテックス社製)を100g及びテトラヒドロフランを200g仕込み、室温にて攪拌してエポキシ化合物を溶解させた。得られた溶解液にチオ尿素を100g及びメタノールを200g添加し、温度30〜35℃で、攪拌しながら5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液にメチルイソブチルケトンを300g添加した後、反応溶液を純水250gで5回水洗した。水洗後、ロータリーエバポレーターにて減圧下、温度90℃でメチルイソブチルケトンを留去して、レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物(分子量254)を得た。
【0038】
【化2】

【0039】
(合成例3)
フラスコ内に、ポリテトラメチレングリコール骨格を有するエポキシ化合物(PTMG(下記式(3)で表される構造を有する化合物)、四日市合成社製)を100g及びテトラヒドロフランを200g仕込み、室温にて攪拌してエポキシ化合物を溶解させた。得られた溶解液にチオ尿素を100g及びメタノールを200g添加し、温度30〜35℃で、攪拌しながら5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液にメチルイソブチルケトンを300g添加した後、反応溶液を純水250gで5回水洗した。水洗後、ロータリーエバポレーターにて減圧下、温度90℃でメチルイソブチルケトンを留去して、ポリテトラメチレングリコール骨格を有するエピスルフィド化合物(数平均分子量932)を得た。
【0040】
【化3】

式(3)中、nは整数を表す。
【0041】
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
表1の組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料を攪拌混合し、電子部品用接着剤を作製した。
【0042】
1.エピスルフィド化合物
ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物(合成例1、分子量304)
レゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物(合成例2、分子量254)
YL7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、ジャパンエポキシレジン社製、分子量220)
ポリテトラメチレングリコール骨格を有するエピスルフィド化合物(合成例3、数平均分子量932)
【0043】
2.エポキシ化合物
CP30(エポキシ基含有アクリル樹脂、数平均分子量9000、エポキシ当量530、日油社製)
PTMG(ポリテトラメチレングリコール骨格を有するエポキシ化合物、数平均分子量900、エポキシ当量435、四日市合成社製)
【0044】
3.硬化剤
YH306(メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ジャパンエポキシレジン社製)
P−0505(エポキシアダクトイミダゾール、四国化成工業社製)
【0045】
4.シリカ粒子
SE−4050−SPE(フェニル基表面処理シリカ粒子、平均粒子径1μm、アドマテックス社製)
5.シランカップリング剤
SP1000(イミダゾールシランカップリング剤、日鉱金属社製)
6.増粘剤
MT10(疎水性ヒュームドシリカ、トクヤマ社製)
【0046】
<評価>
実施例及び比較例で得られた電子部品用接着剤について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0047】
(1)硬化開始温度
得られた電子部品用接着剤について、DSC装置(示差走査熱量測定装置、EXSTAR6000、セイコーインスツル社製)を用いて測定を行い、ピーク開始温度を読み取った。
【0048】
(2)ボイドの有無
170℃で1時間乾燥させたガラスエポキシ基板を、23℃、湿度50%のクリーン下で12時間、18時間、24時間又は36時間静置して吸湿させた後、エアーディスペンサー(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて電子部品用接着剤をガラスエポキシ基板に適量塗布した。次に、ダイボンダー(BESTEM−002、キヤノンマシナリー社製)を用いて、電子部品用接着剤を介してベアシリコンをガラスエポキシ基板に接合し、電子部品用接着剤が充分にぬれ広がったところで硬化させ、接合体を得た。
超音波測定装置(日立建機社製)用いて接合体を測定し、ボイドを全く検出できなかった場合を「○」、ボイドを1つ以上検出した場合を「×」と評価した。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、ボイドの抑制効果に優れた電子部品用接着剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物及び/又はレゾルシノール骨格を有するエピスルフィド化合物と、エポキシ化合物と、硬化剤とを含有することを特徴とする電子部品用接着剤。
【請求項2】
ナフタレン骨格を有するエピスルフィド化合物は、ナフタレン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
【請求項3】
レゾルシノール骨格を有する化合物は、ベンゼン環に2つの2,3−エピチオプロピルオキシ基が結合した構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品用接着剤。

【公開番号】特開2012−111798(P2012−111798A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259335(P2010−259335)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】