説明

電子部品

【課題】 電解コンデンサ等の電子部品に過電流が流れた場合の対策として、電流ヒューズや温度ヒューズ等の他の電子部品を用いずに信頼性を確保するとともに、他の電子部品を故障させる可能性が低い過電流の発熱対策を施した電子部品を提供すること。
【解決手段】 筒状ケース2内にコンデンサ素子1を納め、開口部をガスを透過する材料を用いた素子固定板3で固定し、間隙を設けてゴムキャップ4にて封止するとともに、コンデンサ素子1から延びたリード端子5a、5bに、素子固定板3とゴムキャップ4の間に導通遮断箇所6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ等の電子部品に関し、特に過電流流入による発熱の対策を施した電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路に組み込む電解コンデンサ等の電子部品は、製品の安全性を確保することが重要な設計課題のひとつとされている。たとえば、落雷や過大な異常電流の負荷を直接受けると、電気製品中の電解コンデンサはコンデンサ素子に電荷が急激に溜まるので、瞬時に発熱し高温となり臨界値を越えると絶縁破壊が発生する。そして、異常電流の発生によりコンデンサが発熱し外装材が赤熱し、電気製品中の他の電子部品にまで被害を及ぼすことがある。従って、電子回路に過大な異常電流が流れないように設計するのが基本である。
【0003】
但し、過電流に対応できることが望ましいので、例えば、特許文献1には、コンデンサに過電流が流れた場合の発熱対策として、電流ヒューズや温度ヒューズを用いてコンデンサへの導通を遮断する技術が記載されている。
【0004】
図5は、特許文献1に記載の従来の絶縁破壊対策としてヒューズを追加した電子部品の概略縦断面図である。51はコンデンサ素子、52a、52bはリード端子、53はケース、54はヒューズである。ここで、ヒューズ54は、抵抗素子からなる電流ヒューズ、あるいは温度感応型の温度ヒューズが用いられている。
【0005】
ヒューズ54が電流ヒューズの場合には、コンデンサ素子1に過電流が流れても、コンデンサ素子1が発熱する前に、抵抗素子からなる電流ヒューズが溶断してコンデンサ素子1への導通を遮断する。
【0006】
ヒューズ54が温度ヒューズの場合には、コンデンサ素子1に過電流が流れても、コンデンサ素子1が発熱する前に、温度感応型の温度ヒューズが溶断してコンデンサ素子1への導通を遮断する。
【0007】
また、コンデンサ等の電子部品の外装部品の構造において発熱に至らないよう、電子部品内部の上昇した圧力を逃がす目的で圧力弁を設置する構造もある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−135354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術による電子部品では、コンデンサ素子の信頼性特性とはいえず複合電子部品となり、電流ヒューズや温度ヒューズの信頼性特性となってしまう問題があった。
【0010】
さらに、電子部品に電流ヒューズや温度ヒューズを付加するとコスト高となり、かつ部品サイズも大型化してしまう問題があった。
【0011】
また、圧力弁の設置は電子部品内部において発生したガスを外部に逃がすことを前提にしており、電子部品内部の構成物質が電子部品外部に漏出することが前提となっている。したがって、実装された回路基板に電子部品内部の構成物質が外部に漏出するので、他の電子部品も故障させてしまう可能性があった。
【0012】
そこで、本発明の課題は、電解コンデンサ等の電子部品に過電流が流れた場合の対策として、電流ヒューズや温度ヒューズ等の他の電子部品を用いた複合電子部品とすることなく信頼性を確保するとともに、他の電子部品を故障させる可能性が低い、過電流への発熱対策を施した電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題の解決のため、電解コンデンサ等の電子部品の構造を検討した結果なされたものである。
【0014】
本発明は、一端側に開口部を有し他端側が閉じられた筒状ケースと、2本のリード端子を有する電解コンデンサ素子もしくは電気二重層コンデンサ素子と、前記リード端子を貫通させて前記筒状ケース内に前記コンデンサ素子を固定する素子固定板と、前記リード端子を貫通させて前記筒状ケースの開口部を封止するゴムキャップからなり、前記素子固定板はガスを透過させる材料からなり、前記リード端子は前記素子固定板と前記ゴムキャップの間に導通遮断箇所を有することを特徴とする電子部品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過電流が流れ電子部品が発熱する対策として電流ヒューズや温度ヒューズ等の他の部品を追加した複合部品とすることなく、コストアップをせずに電子部品の安全性を高めることができる。
【0016】
また、本発明品に過電流が流れた場合でも、他の電子部品を故障させる可能性を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明による電子部品の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明による電子部品の外観斜視図である。5a、5bはリード端子、2は筒状ケースである。筒状ケース2の外周には、凹部7が形成されている。
【0019】
図2は、本発明による電子部品の概略縦断面図である。図2を用いて各部について説明する。1はコンデンサ素子、2は筒状ケース、3は素子固定板、4はゴムキャップ、5a、5bはリード端子である。
【0020】
図2において、コンデンサ素子1を筒状ケース2の内部に納めた後、コンデンサ素子1に絶縁破壊が発生した場合の熱によって素子の位置がリード端子5a、5b側に移動しないよう素子固定板3を用いて固定する。
【0021】
ここで、素子固定板3は、絶縁体でガスを透過させる材料とする。例えば絶縁破壊時に発生する熱により発生したガスを透過させるよう孔を開けたセラミック板を用いることができる。コンデンサ素子1に接続されたリード端子5a、5bを貫通させて筒状ケース2内に納めた後、外周部を内側方向に絞り凹部7を設けることにより固定する。
【0022】
次に、ゴムキャップ4をリード端子5a、5bに貫通させて、ケース2の開口部に固定する。もし絶縁破壊が発生しても、その際の熱により発生したガスは、素子固定板3を透過し圧力が直接ゴムキャップ4にかかる構造となる。したがって、ゴムキャップ4には、ガスの圧力を直接受けて筒状ケース2から抜ける方向に力が加わる。
【0023】
ここで、筒状ケース2には凹部7があるために、素子固定板3とゴムキャップ4は接触することが無く、間隙が生じる構造となっている。そして、リード端子5a、5bには、素子固定板3とゴムキャップ4の間隙の位置に導通遮断箇所6が設けられている。図3は導通遮断箇所6の拡大図であり、リード端子に切れ目が入れてある。
【0024】
コンデンサ素子1の絶縁破壊が起きた場合には、その際に発生する熱によりガスが発生すると、ゴムキャップ4が筒状ケース2から抜ける方向に力が加わり、リード端子5a、5bには引っ張り応力が働く、そして導通遮断箇所6から切断されて、コンデンサ素子1はオープンとなり、発熱やガスの発生が停止する。
【0025】
ここで、リード端子5a、5bを構成する金属の材質や断面積により接合強度を調整することによって、導通遮断レベルを調整することが可能である。
【実施例】
【0026】
次に、本発明による電子部品について具体的な実施例として電気二重層コンデンサを例にして説明する。
【0027】
電気二重層コンデンサは、活性炭を電極としてアルミ箔に結着剤等を用いて接合した電極シートを作製し、リード端子を接続した電極シートとセパレータを捲回して電解液を含浸したコンデンサ素子と筒状ケースを用いて構成した。
【0028】
電気二重層コンデンサ素子は、活性炭をアルミ箔に結着剤等を用いて接合した電極シート2枚をセパレータを挟んで捲回し、プロピレンカーボネート(PC)の溶媒にテトラエチルアンモニウムテロラフルオロボレートを電解質として溶解した電解液を含浸して作製した。
【0029】
コンデンサ素子1をアルミ製の筒状ケース2の中に収納し、リード端子5a、5b部分に貫通孔をつけ、ガスを透過させるよう孔を開けたセラミック製の素子固定板3を筒状ケース2内に納め、外周部を内側方向に絞り凹部7を設けてコンデンサ素子1を素子固定版3によって筒状ケース2に固定した。
【0030】
さらに、リード端子5a、5b部分に貫通孔をつけたゴムキャップ4にて開口部を封止し、コンデンサ素子1をアルミ製の筒状ケース2の中に密封した。
【0031】
また、素子固定板3とゴムキャップ4の間に位置するリード端子5a、5bにはV字形の切れ目を入れ、引っ張り強度を低下させ導通遮断箇所6を作製した。作製したコンデンサの形状および電気特性を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
図4は、本発明による電気二重層コンデンサにおいて直流電流10(A)での定電流充電時の経過時間(秒)に対するリード端子間電圧(V)の測定結果を示すグラフである。定電流充電開始後、リード端子間電圧は18(V)付近で過充電となり、絶縁破壊が生じ、一気に電圧降下が生じると共に端子間が短絡し、コンデンサ素子自体が発熱した。この発熱により電解液が気化して筒状ケース2内の圧力が上昇してゴムキャップ4が筒状ケース2から押し出され、約45秒で導通遮断箇所6が切断した。導通遮断箇所6が切断することによりコンデンサ素子1への電流流入が停止し、電気二重層コンデンサのこれ以上の発熱が回避された。ゴムキャップ4が筒状ケース2から押し出された寸法は、0.3mmで電解液が外部に漏出することはなかった。比較のため、リード端子に導通遮断箇所6を設けずに電気二重層コンデンサを作製し、同様に直流10(A)にて定電流充電した場合には約45秒にて発熱に至った。したがって、本発明によりコンデンサ素子に過電流が流れ電子部品が過剰に発熱することを回避することができた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による電子部品の外観斜視図。
【図2】本発明による電子部品の概略縦断面図。
【図3】導通遮断箇所の拡大図。
【図4】本発明による電気二重層コンデンサにおいて直流電流10(A)での定電流充電時の経過時間(秒)に対するリード端子間電圧(V)の測定結果を示すグラフ。
【図5】従来の絶縁破壊対策としてヒューズを追加した電子部品の概略縦断面図。
【符号の説明】
【0035】
1 コンデンサ素子
2 筒状ケース
3 素子固定板
4 ゴムキャップ
5a、5b リード端子
6 導通遮断箇所
7 凹部
51 コンデンサ素子
52a、52b リード端子
53 ケース
54 ヒューズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口部を有し他端側が閉じられた筒状ケースと、2本のリード端子を有する電解コンデンサ素子もしくは電気二重層コンデンサ素子と、前記リード端子を貫通させて前記筒状ケース内に前記コンデンサ素子を固定する素子固定板と、前記リード端子を貫通させて前記筒状ケースの開口部を封止するゴムキャップからなり、前記素子固定板はガスを透過させる材料からなり、前記リード端子は前記素子固定板と前記ゴムキャップの間に導通遮断箇所を有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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